説明

極性脂質強化乳成分およびその適用

極性脂質、特にリン脂質およびスフィンゴ脂質を強化した乳成分であって、リン脂質の割合が、前記成分の固体の重量に対して10重量%より多い乳成分、殺菌したクリームから開始して、前記乳成分を得る方法、ならびに、食品および/または医薬製品中における、前記乳成分の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳脂肪球の膜成分を強化した、すなわち極性脂質(特に、リン脂質およびスフィンゴ脂質)を強化した、乳成分に関する。
【0002】
本発明は、また、殺菌したミルククリームから、乳脂肪球の膜成分を強化した乳成分を製造する方法に関する。
【0003】
本発明の最後の態様は、また、前記の乳成分の、食品組成物、医薬組成物または化粧品組成物中の栄養補助食品としての有利な適用に関する。
【背景技術】
【0004】
長年の間、食品は、消費者の健康に関わりあいがあることが知られている。
【0005】
特に、ヒトの食事における脂肪の過剰消費は、血中コレステロールおよびトリグリセリド(より具体的にはコレステロール)の増加によって著しく生じる重篤な病状の発生をもたらしうる。
【0006】
消費者の健康状態を改善するために、新規の低脂肪製品が提案されているが、残念ながら、標準的な製品に比べて同等の官能特性を有しない。
【0007】
異なる病変(骨粗鬆症、循環器疾患、ガン等)の治療および/または予防の補完の範囲において治療または予防効果を有する食品製品から構成される「機能性食品」として定義される製品の使用も提案されている。
【0008】
このような成分は、例えば、ヒトの健康を改善または維持することができる糖、タンパク質、ミネラルまたはビタミンからなる。
【0009】
文献WO02/34062には、5000から20000 Daのカットオフ値を有する膜での限外濾過によってリン脂質およびスフィンゴ脂質を強化し、好ましくは、カゼインが枯渇したまたはカゼインが含まない、生成物の製造方法が開示されている。この文献においては、バター工場に由来する(任意に除タンパクされている)バターミルク、またはチーズ産業/新鮮なチーズ乳清の限外濾過によって得られるスフィンゴ脂質(リン脂質、スフィンゴミエリン)の濃縮により、極性脂質が強化された乳成分を得ることができるが、そのリン脂質のパーセンテージは、成分の乾燥重量に対して3重量%未満である。この特許文献には、また、得られたリン脂質およびスフィンゴ脂質が強化された製品を含む食品製品または補助食品が開示されている。
【0010】
国際公開公報WO03/071875には、チーズ工場の乳清から、牛乳極性脂質が強化された濃縮物、特にチーズ工場の乳清に由来する牛乳スフィンゴ脂質が強化された濃縮物を製造する方法が開示されている。この文献には、並行して、30000 Daまたは10000 Da膜を用いた限外濾過および膜分離(diafiltration)方法を使用することが開示されている。この方法は、使用した原料(限外濾過したチーズ工場の乳清)の予備的なタンパク質分解工程(酵素によるタンパク質の加水分解)を必要とする。この方法を用いれば、得られたスフィンゴ脂質を精製するために、事後的にホスホリパーゼを用いて処理することができる、スフィンゴ脂質が強化された濃縮物(Ultra High Fat Concentrate - UHFC)を得ることができる。しかしながら、得られた乳成分中のリン脂質の濃度は、(成分の乾燥重量に対する重量%で)20%未満である。
【0011】
加えて、得られた濃縮生成物は、タンパク質分解に由来するペプチド化合物の存在が原因で、官能特性が劣化していた。
【0012】
更にその上、この文献は、また、タンパク質の酵素による加水分解後に行う限外濾過(並列)による濃縮方法を開示している。この酵素による加水分解により、タンパク質画分(ペプチド)が、限外濾過膜を通過し、この膜によって保持される脂質画分から分離することとなる。
【0013】
SACHDEVA et al.(KIELER WIRTSCHAFTLICHE FORSCHUNGSBERICHTE VERLAG TH. MANN GELSENKIRCHEN, Volume 49, No.1, 1997, pp. 47-68)には、化学的または物理的処理方法による、バターミルクからのリン脂質の回収方法が開示されている。この方法においては、原料が、スウィートクリーム(sweetcream)バターミルク粉末であり、レンネット、クエン酸または乳酸および塩化カルシウムの添加による凝固後に、限外濾過または精密濾過による膜処理を介した乳清の分離および濃縮に供する。得られた濃縮物は、リン脂質が強化された乳成分であり、そのリン脂質のパーセンテージは、成分の乾燥重量に対して20重量%未満である。
【0014】
日本国出願JP03/047192には、遠心液々分配(またはsharing)クロマトグラフィー工程を使用することによって、牛乳または乳製品から、リン脂質画分を分画化および精製する方法が開示されている。
【0015】
この特許出願において開示されている抽出物は、80%より高い純度、または90%の純度さえ有しているが、溶媒(エーテルまたはアセトン)を用いた抽出によって得られたものである。最初のバターミルクのリン脂質濃度は不明なので、その収率は不明である。
【0016】
他の溶媒の存在下で遠心液々分配クロマトグラフィーを使用することにより、リン脂質を分離することができ、97-98%に精製された化合物が得られるが、回収した量は、1mg未満である(実験室レベルの手法)。
【0017】
日本国特許出願2005 027 621には、牛乳または乳製品から、これらの製品を1から2μmの膜孔の膜を使用した精密濾過処理に供することによって、リン脂質を精製する方法が開示されている。この方法を用いれば、組成物の乾燥物質(トータルの乾燥抽出物)に基づいて計算した、30重量%より多いリン脂質、任意には35重量%より多いリン脂質を有する生成物を得ることができる。更にその上、この文献には、リン脂質の濃度が35重量%を超える場合は、乳化剤として、発明対象の組成物を使用することができることが開示されている。
【0018】
この特許出願には、スキムミルク(脱脂牛乳)の精密濾過によるリン脂質を濃縮する方法が開示されており、スキムミルクは、「表面積/体積」比率がより大きな、小さな脂肪球のみを含んでおり、それ故、膜脂質よりもリン脂質が豊富である。牛乳を精密濾過する方法は、一般的に、微生物を除去するために用いる。得られた抽出物を洗浄し、エマルジョンを破壊した後に、リン脂質に富む画分を回収する。しかしながら、全乳の精密濾過を役立つことはない、なぜなら、この方法は、脂肪を濃縮するからである(トータルのリン脂質/脂肪比率は増加しない)。更に、少量の回収したリン脂質を得るためには、非常に多量のスキムミルク(0.1%の脂肪しか含まない)を処理することにより、その方法によって、2μmより大きなサイズの脂肪球の塊のみを回収する(200gのリン脂質が豊富な抽出物を回収するためには20トンのスキムミルク)。更にその上、この処理により、微生物の毒素をも濃縮し、義務的な洗浄が必要となるが、この洗浄によっては、恐らくは、あらゆる危険性が抑えられるわけではない。
【0019】
日本国特許出願2001 27 56 14には、血中コレステロールおよびトリグリセリドを減少する有用な作用、および、肝臓での中性脂肪の蓄積に対して阻害作用を有することができる、リン脂質を含む組成物が開示されている。加えて、脂質代謝の疾患と糖尿病との間の関連性をも、この文献で示唆されている。この文献で使用されるリン脂質は、溶媒を用いた抽出や異なるクロマトグラフィー手段を使用した分画などの既知の方法によって、任意に得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】WO02/34062
【特許文献2】WO03/071875
【特許文献3】日本国出願JP03/047192
【特許文献4】日本国特許出願2005 027 621
【特許文献5】日本国特許出願2001 27 56 14
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】SACHDEVA et al.(KIELER WIRTSCHAFTLICHE FORSCHUNGSBERICHTE VERLAG TH. MANN GELSENKIRCHEN, Volume 49, No.1, 1997, pp. 47-68
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、乳脂肪球膜の脂質成分を強化した、すなわち極性脂質を強化した、具体的にはリン脂質およびスフィンゴ脂質を強化した乳成分であって、特に独特の物理的性質を有するが、常に乳成分の特徴を含み、すなわち、実質的には加水分解タンパク質を含まず、乳成分の一般的な官能特性を維持または改善する、乳成分を得ることを対象とする。
【0023】
本発明は、また、これらの成分を組み込んだ食品組成物の官能または構造特性を改善すること、および、消費者の満足な健康状態を維持または改善するのに適切な一日量の前記極性脂質(特に、スフィンゴ脂質)を提供することを目的とする。
【0024】
本発明の特定の目的は、消費者が、血中コレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ガン(特に大腸)に対する予防効果を得ることができ、消費者の免疫および腸内細菌叢を強化することができ、抗糖尿病効果(糖尿病の治療および/または予防)を得ることができ、そして、消費者の肝臓の保護を確かなものとすることができる食品組成物を提供することである。
【0025】
本発明の最後の目的は、この乳成分を得るための(物理的な)方法であって、得られた乳成分の官能特性を顧慮し、単純で高価ではない着想であり、そして、極性脂質(具体的には、特に有利であるリン脂質およびスフィンゴ脂質)を産生するのに改善した収率(乾燥物質のパーセンテージを比較して、高い重量%として表される)を有する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、乳脂肪球膜の成分を強化した、すなわち、極性脂質(特に、リン脂質およびトリグリセリド)を強化し、更に、タンパク質が枯渇した、具体的には、カゼインが枯渇したか含まれない乳成分であって、この乳成分が由来する乳製品の官能特性を確実に保つ、乳成分に関する。
【0027】
極性脂質については、その末端のいずれかに頭部基または極性基を有する脂質を意味する。最も一般的な極性脂質は、リン酸基を含むリン脂質である。これらの脂質として、ホスホグリセリド、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルイノシトールを挙げることができる。スフィンゴ脂質も、極性基を含むが、グリセロール基を含まない。
【0028】
スフィンゴ脂質の3つのサブクラスは、以下のように区別される:スフィンゴミエリン、セレブロシドおよびガングリオシド。スフィンゴミエリンのみが、リン酸基を含む。
【0029】
牛乳に主に存在するスフィンゴ脂質は、スフィンゴミエリン(SPH、またはセラミドホスホリルコリン)、セラミドグルコシド、ラクトシルセラミドおよびガングリオシドである。
【0030】
主に存在するリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)およびホスファチジルイノシトール(PI)である。本発明の乳成分に存在する他の脂質は、中性脂質(トリグリセリド)およびコレステロールである。
【0031】
本発明の生成物に存在するタンパク質は、乳タンパク質、すなわち、主にカゼイン、ラクトアルブミンおよびラクトグロブリンである。
【0032】
本発明の目的は、乳脂肪球の膜に由来するこれらの成分(特に、極性脂質)を強化した乳成分、すなわち、組成物の乾燥物質(トータルの乾燥抽出物)のパーセンテージで計算した場合に、これらのリン脂質(極性脂質の主要な成分)の濃度が、10重量%より多く、好ましくは20重量%より多く、好ましくは30重量%より多く、より特には35重量%、36重量%、37重量%、38重量%または39重量%より多く、好ましくは約39.4重量%である組成物に関する。
【0033】
本発明の組成物に存在する他の成分は、水、タンパク質、炭水化物、例えば、ラクトース、水溶性ビタミン、酵素および灰分(ミネラル)である。以後の文脈においては、ラクトースおよび灰分を、非-タンパク質の脱脂した乾燥抽出物の定義のもと、同じグループに属するとする。
【0034】
本発明の乳成分は、高濃度の極性脂質(特に、リン脂質およびスフィンゴ脂質)と、比較的に低濃度の他の乳成分(すなわち、ラクトース、ミネラル塩だけでなく、極性脂質を増加させる方法で好ましくは部分的に抽出するタンパク質)とによって特徴付けられる。
【0035】
好ましくは、本発明の生成物品は、また、低い割合のタンパク質、(成分の乾燥物質の含量に対して)好ましくは40%未満、より具体的には30%未満、好ましくは20%未満のタンパク質を含む。更には、この組成物は、また、特定の割合の糖類(ラクトース)を含むが、これは組成物から抽出されてもよい。
【0036】
有利には、本発明の組成物のタンパク質は、最終的に得られた製品(食品、医薬製品等)の官能特性に悪影響を及ぼすのを避けるために、酵素プロテアーゼおよび/またはペプチダーゼの作用による加水分解を受けていない形態である。
【0037】
本発明の乳成分は、より安定で、より容易に取り扱いや投与を行うことができ、生物学的変性をほとんどもたらされない製品を得るために、固体形態で、好ましくは、本発明の組成物に存在する水の(熱濃縮および乾燥)エボポレーションによって得られる固体形態で存在しうる。
【0038】
本発明の他の態様は、好ましくは3μm未満の、約1μmから約2.5μmのサイズを有する脂質の(脂肪球)粒子を含む、乳脂肪球膜に由来する成分を強化した乳成分、具体的には極性脂質(すなわち、リン脂質およびスフィンゴ脂質)を強化した乳成分、好ましくは本発明の乳成分を得るための方法に関する。特に、極性脂質を強化した乳成分、すなわち、主に極性脂質からなるリン脂質の濃度が、組成物の乾燥物質(トータルの乾燥抽出物)のパーセンテージで計算した場合に、10重量%より多く、好ましくは20重量%より多く、好ましくは30重量%より多く、より特には35重量%、36重量%、37重量%、38重量%または39重量%より多く、好ましくは約39.4重量%である組成物である。
【0039】
本発明の方法を用いれば、得られた濃縮生成物および生じた副産物の官能特性を変えることがない操作である、異なる単一操作を組合わせることによって、好ましくは殺菌されたミルククリームから、極性脂質を強化した乳成分、すなわち、リン脂質濃度が、組成物の乾燥物質(トータルの乾燥抽出物)のパーセンテージで計算した場合に、10重量%より多く、好ましくは20重量%より多く、好ましくは30重量%より多く、より特には35重量%、36重量%、37重量%、38重量%または39重量%より多く、好ましくは約39.4重量%である組成物を得ることができる。この方法は、少なくとも2つの連続した以下の、殺菌したミルククリームの処理工程:
- 遠心による濃縮:
- 膜上での分離(限外濾過および/または限外濾過/膜分離法の組合せ)
を含む。
【0040】
好ましくは、本発明の方法は、極性脂質を強化した組成物の遠心による濃縮工程、および、限外濾過/膜分離工程の少なくとも1つを含む。
【0041】
本発明の方法の代替的な実施態様によれば、この方法は、遠心および幾つかの限外濾過/膜分離工程による、1つまたは複数の濃縮工程を含む。
【0042】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、更に、純粋な(バッファーではない)水を、好ましくは遠心による新たな濃縮工程の前に、加えることによる、1つまたは複数の濃縮した抽出物の洗浄工程を含む。
【0043】
有利には、本発明の方法は、また、最初に存在したタンパク質の濃度を極めて著しく減少させることができる、1つまたは複数の、いわゆる(連続)除タンパク工程を、含む。
【0044】
好ましくは、この除タンパク(凝析)工程は、カゼインを沈殿させ、カゼインを培地から分離するための熱-カルシウム処理を含む;熱-カルシウム処理は、約0.1%(w/w)の塩化カルシウムの添加に続く、約70℃で約40分間の熱処理、食品用の酸(クエン酸または乳酸またはリン酸または塩酸)を加えることによるpHを約5.2に調整することを含む;沈殿タンパク質のその後の分離は、遠心によるデカンテーションによって実施する(液相から固相の分離装置による)。
【0045】
本発明の熱-カルシウム処理においては、クエン酸の添加が好ましいが、タンパク質を凝析するためのこの工程は、また、レンネットおよび前記した酸の作用によっても実施することができる。
【0046】
好ましくは、本発明の方法においては、殺菌したミルククリームを、予備的な加熱処理、例えば、約60℃から約75℃の温度に(好ましくは、約65℃から約70℃の温度に)、適切な時間(約5から約20分、すなわち連続遠心の期間)加熱することによる予備的な加熱処理に供する。本発明者は、予期せぬことに、リン脂質の乳清への通過の結果として、乳成分中の特に高いリン脂質濃度が、本発明の方法によって得られることを見出した。この効果は、以下に示す実施例において特に顕著であり、背景技術の欄に記載したように、この効果は、ソフトバターミルク粉末を原料として使用した場合には得られない。更に、本発明者は、また、特定の酸性化薬の使用が、凝集工程に特に有効であるが、従来技術と異なり、凝析を得るために適したレンネットを添加することによる凝析(除タンパク工程)は、中間生成物を形成するのに有効ではないことを見出した。
【0047】
本発明の最後の態様は、(適切な製薬用または食品用担体に加えて)本発明による極性脂質(特にリン脂質およびスフィンゴ脂質)を強化した乳成分、特に極性脂質を強化した乳成分、すなわち、組成物の乾燥物質(トータルの乾燥抽出物)のパーセンテージで計算した場合に、10重量%より多い、好ましくは20重量%より多い、好ましくは30重量%より多い、35重量%より多い、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%より多い、より更には約39.4重量%のリン脂質濃度を有する組成物を含む、医薬組成物(機能性食品)、化粧品組成物、食品組成物または食品添加物に関する。前記食品組成物または食品組成物のための前記添加物は、この成分を用いないで調製した標準的な食品製品の官能特性または構造特性と比較して、同等または改善された官能特性または構造特性を呈する。
【0048】
医薬組成物は、適切な製薬用担体および(活性成分として)前記成分を、適切な割合で、特定の病変(具体的には実施例に開示する病変)に対して治療または予防効果を誘導するために、含む。
【0049】
本発明を、以下の例示的な態様において、添付の図面を参照に、本発明の非限定的な例示として、より詳細に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】図1Aおよび図1Bは、殺菌したミルククリームから、本発明の乳成分を調製する方法の異なる2つの工程を図示するものである。この成分は、濃縮クリーム乳清(図1A)と称され、有利には、限外濾過/膜分離処理によって濃縮される(図1B)。
【図1B】図1A参照。
【図2】図2は、図1Aに記載した処理によって得られた濃縮クリーム乳清から、本発明の乳成分を調製する方法の工程を図示するものである。除タンパク工程、ならびに、限外濾過および膜分離による濃縮工程により、除タンパク処理し、限外濾過および膜分離した、濃縮クリームの乳清を得ることが可能となる。
【図3A】図3Aおよび図3Bは、図2に記載したのと同じ方法であるが、総乾燥抽出物に富む濃縮クリームの乳清から実施した方法を図示するものである;この方法は、また、極性脂質の濃縮係数を低下させずに、図2に記載した処理によって得られる生成物と同一の、除タンパクし、限外濾過および膜分離し、濃縮した、濃縮クリームの乳清を提供する。
【図3B】図3A参照。
【図4A】図4Aおよび図4Bは、濃縮ミルククリームから、水で希釈して、本発明の乳成分を調製する方法の異なる工程を図示するものである。この成分は、濃縮および洗浄したクリームの乳清(図4A)と称し、有利には、限外濾過によって、または場合によっては膜分離処理によって濃縮する(図4B)。
【図4B】図4A参照。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
図1Aに示すように、好ましくは殺菌したミルククリーム(A1)から、本発明の乳成分を有利には得ることができる。
【0052】
約1000kgの殺菌したミルククリーム(A1)を、理想的には約65℃から約70℃の温度に加熱する(連続して実施する全体の工程については、この期間は5から20分のオーダーである)
【0053】
加熱したミルククリームを、第1の遠心分離に供し、軽い濃縮クリーム相(A2)および重いスキムクリーム相(A3)への濃縮が可能となる。軽相および重相の割合は、基本的に同等である(約530kgの軽相(A2)および約470kgの重相(A3))。
【0054】
「水中油型」エマルジョンとしての、濃縮クリーム(A2)を含む軽相を、その後、いわゆるエマルジョンの相反転工程により、「油中水型」エマルジョンへと転換させる;この工程の後に、第2の遠心に供し、軽相(A2)を新たな軽相(A2)および新たな重相(A5)へと再濃縮することが可能となる。
【0055】
いわゆる軽相(A4)は、基本的に乳脂肪を含み、重相は、濃縮クリームの乳清を形成する。
【0056】
この軽相(A4)とこの重相(A5)との割合は、ほぼ3/4から1/4である(約397kgの軽い乳脂肪相(A4)および約133kgの重い相(濃縮クリームの乳清(A5))。
【0057】
次に、重相(A5)を、有利には、乾燥工程に供し、濃縮クリーム乳清を固体形態(A6)(濃縮クリーム乳清の粉末)として、約14kg(13.6kg)の重さで提供する。
【0058】
本発明の第1の代替的な実施態様によれば(図1B)、濃縮クリーム乳清(A5)を含む前記重相を回収し、限外濾過を含む追加の工程によって処理し、同時に非透過物と透過物とを回収することが可能となる。
【0059】
非透過物は、限外濾過した、濃縮クリームの乳清(A7)を含み、透過物は、濃縮クリーム乳清の透過液(A8)を含む。非透過物と透過物との割合は、約1/3から2/3である(約44kgの非透過物および約89kgの透過物)。
【0060】
本発明の代替的な方法によれば、限外濾過した濃縮クリームの乳清(A7)を直接乾燥させて、固体生成物(限外濾過した、濃縮クリームの乳清の粉末(A9))を得ることも可能である。得られた粉末の量は、約8kgである(7.90kg)。
【0061】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、限外濾過した、濃縮クリームの乳清(A7)を、水で希釈して、限外濾過した濃縮クリームの乳清の希釈物(A10)を得て、再度、この希釈物を、限外濾過(膜分離)によって濃縮する。
【0062】
希釈は、約44kg(43.90kg)の、限外濾過した濃縮クリームの乳清(A7)に加えた、約65kgの水(すなわち、65.10kg)によって実施し、総重量が109kgである、限外濾過した濃縮クリームの乳清の希釈物の溶液(A10)を得る。
【0063】
限外濾過した濃縮クリームの乳清の希釈物(A10)を、第2の限外濾過(膜分離)工程に供し、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清を含む新たな非透過液(A11)、および、濃縮クリーム乳清の透過液の希釈物を含む新たな透過液(A12)を得る。
【0064】
非透過物(A11)と透過物(A12)との割合は、約30/70である(35.50kgの非透過物(A11)および75.50kgの透過物(A12))。
【0065】
非透過物(A11)は、再度、乾燥工程に供し、固体生成物(限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清の粉末(A13))を得ることができる。この粉末の総重量は、約6kgである(6.10kg)。
【0066】
表1は、前記した方法によって実施した異なる工程後に得られた異なる生成物の組成の特徴を示す。
【0067】
表1は、重量パーセントとして、水、総脂肪、リン脂質(総脂肪中に含まれる極性脂質の主な部分)、脱脂した乾燥抽出物、およびこの脱脂した乾燥抽出物の構成物質(すなわち、タンパク質、ラクトースおよび灰分)の含量を示す。
【0068】
追加の限外濾過および膜分離工程に供した濃縮クリームの乳清(A5)は、乳脂肪球膜に由来する成分が強化されている、すなわち、極性脂質(リン脂質)だけでなく総脂質(中性脂質を含む)およびタンパク質が強化されていることが観察された。この強化は、基本的には、とりわけラクトース含量の損失、そして、それほどでもないにせよ灰分の損失により、得られる。
【0069】
得られた生成物は、極性脂質が豊富な乳成分である。これらの乳成分は、それぞれ、7%より多い、11%より多い、そして14%より多い乳リン脂質を含む(これらのパーセンテージは、乾燥物質に対して表される)。
【0070】
有利には、本発明の乳成分は、固体形態として生じ、濃縮クリーム乳清の、熱濃縮および乾燥(好ましくは噴霧乾燥)の結果である乾燥によって得られる。
【0071】
図2で示した本発明の第2の好ましい実施態様によれば、0.1重量%の塩化カルシウムの添加に続く、約70℃の温度への加熱、そして、クエン酸の添加による約5.2への乳清pHの調整、更には乳清をこの温度で約40分間維持することを含む、いわゆる「熱-カルシウム」処理によって、133kgの濃縮クリーム乳清(A5)を、タンパク質の抽出工程(「除タンパク」)に供する。
【0072】
次に、沈殿したタンパク質を、追加の遠心によるデカンテーション工程(固-液分離装置)によって抽出する。これにより、濃縮クリーム乳清のタンパク質を含む約21kg(20.76kg)の沈殿物(C2)、および、約113kg(113.20kg)の除タンパクした濃縮クリームの乳清の上清(C1)が得られる。
【0073】
その後、除タンパクした濃縮クリームの乳清の上清(C1)を、約49kg(48.6kg)の水を用いた希釈とともに、限外濾過/膜分離に供する。この操作により、除タンパク、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清からなる16kgの非透過物(C3)と、除タンパクした濃縮クリームの乳清の希釈透過物(C4)が提供される。
【0074】
非透過物を、更なる乾燥工程(噴霧乾燥)に供し、約2.2kg(2.19kg)の、除タンパク、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清(C5)を得る。得られた生成物の特徴を表2に示す。除タンパク、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清は、乳極性脂質に非常に富む乳成分であり、そのリン脂質含量は、乾燥物質に対して表したパーセンテージで、35重量%より多い。
【0075】
図3Aで示した本発明の第3の好ましい実施態様によれば、濃縮クリームの乳清(A5)(133kg)を、濃縮した乳清の粉末(A6)(13.4kg)と組み合わせて、より高い乾燥物質含量を有する約146kg(146.4kg)の濃縮クリームの乳清(C6)を得る。
【0076】
この生成物を、前記したような除タンパク工程に供し、濃縮および除タンパクした濃縮クリームの乳清を含む約108kg(108.3kg)の上清(C7)と、濃縮した、濃縮クリームの乳清タンパク質を含む約39kg(39.05kg)の沈殿物(C8)とを得る。
【0077】
その後、上清を、約77kgの水(77.3kg)とともに限外濾過/膜分離工程に供し、濃縮し、除タンパク、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清を含む約31kgの非透過物(C9)と、約154kg(154.6kg)の、濃縮し、除タンパクした濃縮クリームの乳清の希釈透過物(C10)とを得る。非透過物は、有利には、更なる噴霧乾燥工程に供し、わずか4kg(4.25kg)の、濃縮し、除タンパク、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清の粉末(C11)を得る。得られた生成物の特徴を、表3に示す。再度、得られた、濃縮し、除タンパク、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清は、乳極性脂質に非常に富む乳成分であり、そのリン脂質の含量は、乾燥物質に対して表したパーセンテージで、35重量%より多い。濃縮クリームの乳清の乾燥物質の増加は、除タンパクおよび限外濾過/膜分離後に回収した極性脂質の濃縮因子に影響を及ぼさなかった。
【0078】
代替的に、限外濾過/膜分離した濃縮クリームの乳清粉末(A13)(9.38kg)を、水(90.62kg)を添加することによって処理し、9%の乾燥物質を有する、限外濾過/膜分離した濃縮クリームの乳清(C12)を100kg得ることができる。この生成物を、前記したような除タンパク工程に供し(図3B)、限外濾過/膜分離および除タンパクした濃縮クリームの乳清からなる76kgの上清(C13)と、限外濾過、膜分離した濃縮クリームの乳清タンパク質を含む24kgの沈殿物(C14)とを得る。これらの生成物の特徴を、表4に示す。限外濾過、膜分離および除タンパクした濃縮クリームの乳清(C13)は、この方法の極性脂質が濃縮された乳成分であり、その乳リン脂質含量は、0.95 %、すなわち、乾燥物質に基づいて表した場合、20重量%を超えている。
【0079】
(実施例2)
図4Aに示すように、実施例1で示した実施態様の代替的な実施態様により、本発明の乳成分を得ることもできる。約1000kgの殺菌したミルククリーム(B1)を、実施例1と類似の熱処理に供し、その後、実施例1と類似の第1の遠心分離に供し、軽い濃縮クリーム相(B2)および重いスキームミルク相(B3)を得る。割合は、実施例1の割合と同等である。軽相(B2)を、類似の量の純粋な(バッファーではない)水で希釈し、希釈した濃縮クリーム(B4)(約1000kg)を得る。この希釈した濃縮クリーム(B4)を、遠心による第2の濃縮に供し、濃縮および洗浄したクリームを含む軽相(B5)と、希釈したスキムミルクを含む重相(B6)を得る(約537kgの濃縮および洗浄したクリーム(B5)および約463kgの希釈したスキムミルク(B6))。
【0080】
濃縮および希釈したクリーム(B6)を、その後、実施例1に示すように、エマルジョン相反転工程および遠心による新たな濃縮に供する。濃縮および洗浄したクリーム(B5)から、乳脂肪からなる軽相(B7)(約396kg)と、濃縮および洗浄したクリーム乳清からなる重相(B8)(約140kg)とを得る。この濃縮および洗浄したクリームの乳清を、実施例1に示した乾燥工程に供し、濃縮および洗浄したクリームの乳清の粉末(B9)を、約4.50kgの総重量で得ることができる。
【0081】
前記濃縮および洗浄したクリームの乳清(B8)を、再度、実施例4Bで示す(既に実施例4で開示した)限外濾過工程に供し、限外濾過した、濃縮および洗浄したクリームの乳精を含む21.50kgの非透過物(B10)と、約118kgの濃縮および洗浄したクリームの乳清の透過物(B11)を得ることができる。非透過物(限外濾過した、濃縮および洗浄したクリームの乳清(B10))を、実施例1で示した新たな乾燥工程に供し、固体形態として、限外濾過した、濃縮および洗浄したクリームの乳清粉末(B12)も、総重量約3.00kgで、得ることができる。
【0082】
表5は、図4Aおよび4Bで示した実施例2の方法により得られた生成物の組成の特徴を示す。分析したパラメーターは、表1で示したパラメーターと同じである。濃縮および洗浄したクリームの乳清(B8)と、限外濾過した、濃縮および洗浄したクリームの乳清(B10)とは、乳脂肪球膜に由来する極性脂質に非常に富む乳成分である。生成物の乳リン脂質含量は、それぞれ、0.62%および3.90%、すなわち、乾燥物質に基づいて表わした場合、19%および27%より多い。これらの極性脂質の濃度は、クリーム洗浄操作による脱脂した乾燥抽出物の損失、そして、限外濾過による脱脂乾燥抽出物の非タンパク質成分の損失により、得られる。
【0083】
有利には、乳脂肪球膜に由来する極性脂質に富む、液体形態、および/または、場合によっては固体形態の、実施例1および2に記載した方法により得た、以下の生成物:
・濃縮クリームの乳清、
・限外濾過し、場合によっては膜分離した、濃縮クリームの乳清、
・除タンパクし、限外濾過し、場合によっては膜分離した、濃縮クリームの乳清、
・濃縮および洗浄したクリームの乳清、および
・限外濾過した、濃縮および洗浄したクリームの乳清
は、食品組成物に使用でき、ヒトまたは動物用の食品組成物の一般的な食品成分と組み合わせることができる。
【0084】
それ故、標準的な製品の官能特性を維持し、または、標準的な製品と比較して官能特性が改善された、食品組成物(場合によっては、健康に悪影響を及ぼす特定の脂肪が低下した、特に非-極性脂質が低下した食品組成物)を得ることができる。
【0085】
エマルジョン効果によって特徴づけられる、本発明の食品成分は、(低脂肪製品であるか、または、そうでない)食品製品(特に、クリーム、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、チーズ、特に、チーズスプレッドまたは乳製品デザートなどの乳製品)のクリームを改善するために使用することができる。
【0086】
加えて、本発明の食品成分は、パン/ペストリー製品(ミルクロールおよびブリオッシュ)中の水の良好な保持を備え、これにより、この食品成分を使用せずに調製した標準的な製品と比較して、これらの製品の柔らかさの保持を改善する。実際に、本発明者は、予期せぬことに、得られた生成物中の水の保持が改善され、乾燥を防ぎながら、これらの生成物の柔らかさをより良好に維持できることを見出している。
【0087】
本発明の乳成分は、また、UHT滅菌熱処理に供した、または供さなかった、本発明の乳成分を導入した脂肪分の高いミルククリームおよび低脂肪のミルククリームの泡立ち性(whippability)を改善するために使用することができる。
【0088】
「水中油型」のエマルジョンを促進する、牛乳の本来のエマルジョン効果も見出されており、これは、水中での分散粉末としての製品、または本発明の液体乳清製品を用いて得られた。
【0089】
本発明者は、乳脂肪、スキムミルク粉末、水および濃縮クリーム乳清粉末(A6)またはリン脂質を強化した抽出物(C5:除タンパク、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清の粉末、もしくは、C11:除タンパク、限外濾過および膜分離し、濃縮した、濃縮クリームの乳清の粉末)を用いて最初に再生した、5%脂肪クリームが、脂肪球のサイズの差異が原因で、同じ安定性を有さなかったことを示した。含量を0.3から1.5%に変化させた濃縮クリーム乳清粉末(A6)については、脂肪球の平均サイズは、それぞれ、5から3μmであった。リン脂質源を、同じ濃度の(0.3から1.5%)の、C5抽出物(除タンパク、限外濾過および膜分離した濃縮クリームの乳清の粉末)またはC11抽出物(除タンパク、限外濾過および膜分離し、濃縮した、濃縮クリームの乳清の粉末)とした場合、脂肪球の平均サイズは、それぞれ、約2.5から約1μmの範囲であった。
【0090】
更にその上、本発明の乳成分は、極性脂質、特にリン脂質およびスフィンゴ脂質が高い濃度であり、これにより、患者の健康状態を、顕著に、または、この成分もしくはこの成分を含む食品製品を直接消費する患者の健康状態を維持することについて、改善することができる(H. Vesper et al. American Society for Nutritional Sciences, p. 1239-1250 (1999))。
【0091】
スフィンゴ脂質(スフィンゴミエリン等)を強化したこの成分を用いて、有利には、血中VLDLおよびLDLコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ガン(特に大腸ガン)に対する予防効果をもたらすことができ、病原性腸内細菌叢と比較して、免疫および腸内細菌叢を増強(特に、プレバイオティクス効果を誘導、すなわち、有益な腸内細菌叢(特にはBifidusタイプの細菌)の増殖を促進)し、消化器疾患(下痢)を予防または治療することができる。
【0092】
加えて、乳成分中の高い濃度のリン脂質およびスフィンゴ脂質により、抗糖尿病効果(糖尿病の治療および/または予防)がもたらされ、肝臓の保護を確かなものとする。
【0093】
本発明の最後の態様は、適切な製薬用担体および本発明の乳清を含む、具体的には前記疾患の治療および/または予防用の、化粧品組成物または医薬組成物(栄養補助食品または「機能性食品」)、ならびに、十分量の前記組成物を、前記疾患に罹患することができる(ヒトを含む)哺乳動物に投与する、(ヒトを含む)哺乳動物において前記疾患の1つの予防または治療処理方法に関する。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性脂質を強化した、特にリン脂質およびスフィンゴ脂質を強化した乳成分であって、リン脂質の重量%が、前記成分の乾燥物質中の脂肪含量と比較して、20%より多い、乳成分。
【請求項2】
リン脂質型に由来する極性脂質の割合が、前記成分の乾燥物質中の脂肪含量と比較して、30%より多い、請求項1に記載の乳成分。
【請求項3】
リン脂質型に由来する極性脂質の割合が、前記成分の乾燥物質中の脂肪含量と比較して、35%より多い、好ましくは36%、37%、38%、39%より多い、請求項1に記載の乳成分。
【請求項4】
タンパク質、炭水化物、ミネラル、水溶性ビタミン、酵素および場合によっては灰分からなる群から選択される少なくとも1つの成分をも含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の乳成分。
【請求項5】
タンパク質の割合が、前記乳成分の乾燥物質中の含量と比較して、40%未満、より具体的には30%未満、特には10%未満である、請求項4に記載の乳成分。
【請求項6】
タンパク質が、酵素により加水分解されたタンパク質ではない、請求項4または5に記載の乳成分。
【請求項7】
極性脂質が、1μmから2.5μmの直径を有する脂肪球の形態で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の乳成分。
【請求項8】
液体形態である、請求項1から7のいずれか一項に記載の乳成分。
【請求項9】
固体形態(粉末)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の乳成分。
【請求項10】
極性脂質を強化した、特にリン脂質およびスフィンゴ脂質を強化した乳成分を製造する方法であって、リン脂質の重量%が、前記成分の乾燥物質中の脂肪含量と比較して、20%より多く、そして、殺菌したクリームミルクを、遠心による濃縮、限外濾過工程、および限外濾過/膜分離工程からなる群から選択される少なくとも2つの工程を含む物理的処理に供する、方法。
【請求項11】
前記乳成分から、タンパク質を抽出する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
タンパク質の抽出が、塩化カルシウムを添加する工程、次いで、70℃で40分間熱処理する工程、次いで、酸の添加によってpHを5.2に調整する工程、次いで、遠心によるデカンテーションを用いて沈殿タンパク質を分離する工程を含む熱カルシウム処理を介して、得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
酸が、クエン酸および/または乳酸および/またはリン酸および/または塩酸で構成されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水を用いた洗浄工程、好ましくは、遠心による濃縮工程に先行する洗浄工程をも含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の乳成分、または請求項10から14のいずれか一項に記載の方法によって得られる乳成分を含む、食品組成物または食品添加物。
【請求項16】
乳製品、例えば、クリーム、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、チーズ、チーズスプレッド、乳製品デザート、スープ、パンおよびペストリー製品、特には、ブリオッシュまたはスコーンからなる群から選択される、請求項15に記載の食品組成物。
【請求項17】
適切な製薬用担体、および請求項1から9のいずれか一項に記載の乳成分を含む医薬組成物。
【請求項18】
ガンまたは糖尿病の治療または予防用の医薬の調製のための、請求項17に記載の医薬組成物の使用。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公表番号】特表2009−543568(P2009−543568A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519951(P2009−519951)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057247
【国際公開番号】WO2008/009636
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(509017479)
【Fターム(参考)】