説明

構造体、及びそれを用いた電池、並びに電子装置

【課題】無線受信による電力供給ができなくなった場合にも、装置に安定的に電力を供給させることができる構造体、及びそれを用いた電池を提供すること。
【解決手段】構造体10は、誘電体からなるとともに、上面に蓄電体が搭載されるべき領域(搭載部1a)を有する基体1と、蓄電体が搭載されるべき領域に設けられ、蓄電体と電気的に接続する導体(第1の導体1b及び第2の導体1c)と、軸方向が上下方向に対し角度を有するとともに、導体と電気的に接続され、蓄電体に電力を供給するためのコイル3と、を具備している。また、電池100は上記構成の構造体10と、基体1上面に搭載された蓄電体と、基体1に被着され、蓄電体を封止するための蓋体4と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、及びそれを用いた電池、並びに電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの無線送電によって電力の供給を行ない、その電力によって作動する装置があった。そのような装置の一例として、外部からの無線送電をコイルで受信し、その電力で作動するカプセル内視鏡があった。
【特許文献1】特開2004−344256号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の構成では、無線送電の際、受信が困難となり、無線送電による電力供給が不安定となる場合があった。
【0004】
そこで、安定して無線送電を受信できる構造体、及びそれを用いた電池、並びに電子装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態にかかる構造体は、誘電体から成り、外部回路基板上に搭載するための基体と、前記基体に設けられた導体と、軸方向が上下方向に対し角度を有するとともに、前記導体と電気的に接続され、該導体に電力を供給するためのコイルと、を具備した。
【発明の効果】
【0006】
本実施形態にかかる構造体によれば、構造体の下方に、外部電気回路基板が配された場合であっても、無線送電した電力が外部電気回路基板に設けられた電極や配線等を介して漏電することを抑制できる。その結果、無線送電した電力を有効に利用することができる構造体となる。
【0007】
また、上記構造体に蓄電体を備えれば、上記電力を蓄電体に安定して、安全に蓄電することができる。
【0008】
また、上記構造体に電子部品を備えれば、上記電力を安定して電子部品に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる構造体10、及びそれを用いた電池200、並びに電子装置300について、以下に詳細に説明する。
【0010】
本実施形態にかかる電池200は、誘電体から成り、外部回路基板上に搭載するための基体1と、基体1に設けられた導体2と、軸方向が上下方向に対し角度を有するとともに、導体2と電気的に接続され、該導体2に電力を供給するためのコイル3と、を備える。また、基体1上面に搭載された蓄電体5と、基体1に被着され、蓄電体5を封止するための蓋体4と、を具備する。
【0011】
また、本発明の他の実施形態にかかる電子装置300は、上述した蓄電体5に代えて電子部品6を具備する。
【0012】
この場合、電池200又は電子装置300の下面に、外部電気回路基板(不図示)が配された場合であっても、無線送電した電力が外部電気回路基板に設けられた電極や配線等を介して漏電することを抑制できる。その結果、無線送電した電力を有効に利用し、上記電力を蓄電体5に安定して、安全に蓄電することが可能な電池200を提供することができる。又は、上記電力を電子部品6に安定に供給して正常かつ安定に作動させることが可能な電子装置を提供することができる。
【0013】
以下、本実施形態にかかる構造体10について、各構成要素について詳細に説明する。
【0014】
<構造体>
(基体)
基体1は、アルミナ(酸化アルミニウム,Al)質焼結体等のセラミックス,ガラス,樹脂等の誘電体から成るものである。基体1は、従来周知の手法により、直方体状、円柱状、多角柱状に形成される。
【0015】
基体1は、図1(b)に示すように、基板30と蓄電体5を搭載するための容器体とを別体で構成されたものでもよいし、図2(b)に示すように、基板30と蓄電体5を搭載するための容器体とを一体成型したものであってもよい。
【0016】
基板30と蓄電体5を搭載するための容器体とを別体で基体1を構成した場合、基板30によって配線の引き回しの自由度が向上するという効果を有する。
【0017】
基板30と蓄電体5を搭載するための容器体とを一体成型して基体1を構成した場合、基板30を基体1に一体化して小型化できるという効果を有する。
【0018】
(導体)
導体2は、例えば、Al、Zn等を主成分とする金属を用いることができる。また、導体2の形成方法は、従来周知の吸引印刷法や、スクリーン印刷法を用いることができる。なお、外部雰囲気に露出する導体2の表面には、Ni−Auめっき等を施せば、導体2が腐食劣化することを抑制できるため好ましい。
【0019】
また、後述するコイル3と導体2とを電気的に接続するためには、例えばビアホール導体で導体2を引き回したり、基体1に導電体を内層して導体2を引き回せばよい。
【0020】
この場合、導電体は、基体1内部で引き回され、外部雰囲気に接触することを抑制できるため、導電体の腐食劣化を抑制できる。
【0021】
(コイル)
コイル3は、導体2と電気的に接続され、導体2に電力を供給するためのものである。コイル3の軸方向に向かって無線電力を送電すれば、当該コイル3内部で起電力を発生することができる。すなわち、コイル3の軸方向に磁場を通過させることにより、電磁誘導によって磁場の通過方向に対して垂直方向に起電力が発生し、コイル3には、電流が流れる。
【0022】
この構成により、例えば、構造体10に蓄電体5を備えて電池200とした場合は、コイル3にて無線送電した電力を受電した後、蓄電体5に蓄電することができる。また、無線送電を受電できない場合は、蓄電体5の電力を利用することができる。
【0023】
また、構造体10に電子部品6を備えて電子装置300とした場合は、電子部品6に安定して電力を供給することができるため、電力を安定して電子部品6に供給することができる。
【0024】
コイル3の形成方法は、例えば、図1(a)に示すように、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料から成る金属線を螺旋状に形成すればよい。なお、金属線には金属線同士の接触によるショートを防止するため、金属線表面に絶縁皮膜を形成しておくことが好ましい。
【0025】
この場合、金属線を螺旋状に巻くだけで良いことから、コイル3を少量作製する場合においても、低コストで作業効率良くコイル3を作製することができる。なお、図1(a)に示す構造体は、導体2とコイル3とは、基板30内部に設けられた導電体を介して電気的に接続されるものである。
【0026】
また、図2(b)に示すように、コイル3をメタライズ層、及びビアホール導体にて形成してもよい。この場合、所定の配線形状を有するメタライズ層、及びビアホール導体によって、所定の性能を有するコイル3を効率良く製造できる。なお、ここでは、導体2とコイル3とは、基体1内部に設けた導体2を介して電気的に接続される。
【0027】
ここで、コイル3は軸方向が上下方向に対し角度を有するように形成されている。この構成により、以下の効果を奏する。
【0028】
すなわち、基体1の下面に、プリント板等から成る外部回路基板が配された場合、無線送電によって発生する磁場は、その軸方向が上下方向に対して、角度を有する。それゆえ、無線送電した電力が外部回路基板に設けられた電極や配線等へ漏電することを抑制できる。その結果、無線送電した電力を有効に利用することができる構造体10となる。
【0029】
また、コイル3は軸方向が上下方向に対し角度を有する例として、図1(b)、図2(b)ではコイル3が上下方向に対し90°傾くように構成したものを示す。換言すれば、コイル3は、その軸方向が、蓄電体5が搭載される搭載部1aと平行に配されたものである。この場合、磁場が外部電気回路基板の電極や配線等に対して平行になり、電極や配線等が受ける磁場の量が大幅に低減するため好ましい。
【0030】
さらに、コイル3は、図2(a)、図2(b)に示すように、誘電体に形成されたものであることが好ましく、隣接する巻き線部がショートするのを抑制できる。例えば、基体1がセラミックスから成り、セラミックグリーンシート積層法によって作製される場合、コイル3は内層導体とビアホール導体とでW,Mo,Mn等から成るメタライズ層を螺旋状に配線することによって形成すればよく、基体1が樹脂から成る場合はCu等の金属層を螺旋状に配線することによって形成すればよい。
【0031】
その結果、基体1とコイル3とを同一工程で製造することができ、基体1とコイル3とを効率良く製造することができるとともに、基体1とコイル3とを一体とすることで小型化が可能となる。また、コイル3と蓄電体5とを電気的に接続するための接続導体を基体1内部に第1導体1aと第2導体1bと一体的に形成することができる。従って、図1に示すような、基体1とコイル3とを接続させるための基板30が不要となる。
【0032】
以下、本実施形態にかかるコイル構造における変形例を示す。
【0033】
図3に示すように、コイル3は、一本の導線から成り、該コイル3の軸方向において、その一端側に導線の両端を有し、且つ、導線の相互に間隔を有する構造とすれば、導線を伝送する電力信号のノイズを互いに打ち消しあうことができる。その結果、ノイズによって、磁場に対する感度が低下するのを防止し、受電効率の低下を抑制できる。したがって、コイル3の受電効率を向上させることができる。
【0034】
また、図4に示すように、コイル3は、複数の導線から成り、該コイル3の軸方向と直交する方向において、導線が同心状に複数有する構造であることが好ましい。コイル3の軸方向と直交する方向におけるコイル3の巻数に応じて、受電効率が増加する。すなわち、コイル3の巻き数が多いほどコイル3で磁場を受け易くすることができ、無線によって送電された電力の受電の漏れを防止することができる。
【0035】
図4のように、複数の導線をメタライズで形成すれば、所定の位置に所定の配線形状を有するメタライズ層、及びビアホール導体によって、所定の性能を有するコイル3を同心状に効率よく製造できるという理由で作業性良く同心状のコイル構造を作製することができる。
【0036】
次に、本実施形態にかかるコイル3の配置方法において変形例を示す。
【0037】
構造体10において、コイル3を複数備え、それぞれ異なる軸方向を有することが好ましい。
例えば、図5に示すように、3方向に対してコイル3の軸方向を有することで、無線送電した電力を受電する際の自由度が高まる。
【0038】
例えば、図6(a)に示すように筒状の誘電体2aの内面にメタライズ層や金属層から成るコイル3が形成されたり、図6(b)に示すように柱状の誘電体2aの表面にメタライズ層や金属層から成るコイル3が形成されたりしたものであってもよい。
【0039】
この場合、単に誘電体2aがコイル3のショートを抑制する役目を有するだけではなく、コイル3の直径,長さを所定の寸法に規定することができ、所定の性能を有するコイル3を作製できるため好ましい。
【0040】
<電池、電子装置>
以下に、上述した構造体10を用いた電池200について説明する。 本発明にかかる電池200は、上記構成の構造体10と、基体1上面に搭載された蓄電体5と、基体1に被着され、蓄電体5を封止するための蓋体4と、を具備したものである。
【0041】
図7は、本実施形態にかかる電池200の断面を示す構造図であり、図7は図1の構造体10を用いた電池200である。
【0042】
(蓄電体)
以下、蓄電体5として電気二重層キャパシタを用いた例を示す。
【0043】
蓄電体5として、電気二重層キャパシタを用いた場合は、コイル3で受電した電力の極性が変化した場合であっても、蓄電体5に蓄電させることができる。すなわち、電気二重層キャパシタには極性がないため、無線送電した電力をさらに有効に利用することができる。
【0044】
電気二重層キャパシタを有する電池200の具体的な構成を以下に示す。
【0045】
電池200は、第2導体2bに電気的に接続された第1の分極性電極B−1と、この第1の分極性電極B−1の上面に電解液B−4を含浸したセパレータB−3を介して載置された第2の分極性電極B−2と、を備える。
【0046】
その後、電解液B−4とから成る電気二重層キャパシタ要素を収納するとともに、この第2の分極性電極B−2の上面に蓋体4を当接する。蓋体4は、搭載部1aの開口部を塞ぐようにして基体1の上面にロウ付けされる。このとき、蓋体4は、少なくとも下面が導電性とされており、第2の分極性電極B−2に当接されて第2の分極性電極B−2と電気的に接続されるとともに、枠状部材4aの上面にまたは直接第1の導体1aの上面にロウ材等で接合されることによって第2の分極性電極B−2と第1の導体1aとを電気的に接続する。
【0047】
以上のようにして、本実施形態にかかる電池200が完成する。
【0048】
なお、蓄電体5は、電気二重層キャパシタに限定されるものではなく、リチウム電池、ニッケル水素電池等の電池であってもよい。
【0049】
例えば、リチウム電池、ニッケル水素電池等の電池の場合は、極性を有するため、第1の導体1aと第2導体1bに極性を持たせ、電流の流れる方向を規定できるという効果を有する。
【0050】
また、本実施形態にかかる電池200をカプセル内視鏡用として用いる場合、カプセル内視鏡がコイル3による受電が困難な箇所を通過しても、電池200に蓄えられた電力を用いることができるという理由により、カプセル内視鏡を正常に作動させ続けることができるという効果を有する。
【0051】
なお、図8に示すように、構造体10に電子部品6を備えて電子装置300とした場合は、以下の電子部品6を用いることができる。
【0052】
(電子部品)
電子部品6としては、集積回路素子(IC),半導体レーザー(LD),フォトダイオード(PD),発光ダイオード(LED)等の半導体素子や電界効果型トランジスタ(FET),コンデンサ,抵抗等を用いることができる。
【0053】
また、特に、電子部品6としてコンデンサを用いた場合は、コイル3による受電が不安定である場合においても、一定電力をコンデンサに蓄えることができるため、安定した電力供給に寄与することができる。
【0054】
(蓋体)
蓋体4は、基体1に被着され、蓄電体5又は電子部品6を封止するためのものである。
【0055】
蓋体4を構成する材料は、例えば、従来周知のセラミックスや樹脂等の誘電体、若しくは金属を用いることができる。
【0056】
蓋体4と基体1との接着方法は、従来周知手法を用いることができる。例えば、ロウ材を用いて蓋体4と基体1とを接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は本発明の構造体の実施の形態の一例を示す平面図であり、(b)は(a)に示す構造体のX−X’線における断面図である。
【図2】(a)は本発明の構造体の実施の形態の他の例を示す平面図であり、(b)は(a)に示す構造体のY−Y’線における断面図である。
【図3】本発明の構造体に用いられるコイルの実施の形態の他の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の構造体に用いられるコイルの実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の構造体の実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図6】(a),(b)は本発明の構造体に用いられるコイルの実施の形態の他の例を示す斜視図である。
【図7】本実施形態にかかる電池の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図8】他の実施形態にかかる電子装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1:基体
2:導体
2a:第1導体
2b:第2導体
3:コイル
4:蓋体
5:蓄電体
6:電子部品
10:構造体
200:電池
300:電子装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体から成り、外部回路基板上に搭載するための基体と、
前記基体に設けられた導体と、
軸方向が上下方向に対し角度を有するとともに、前記導体と電気的に接続され、該導体に電力を供給するためのコイルと、
を具備した構造体。
【請求項2】
前記コイルは、その軸方向が、前記上下方向に対して直交する方向であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記コイルは、一本の導線から成り、
該コイルの軸方向において、その一端側に前記導線の両端を有し、且つ、前記導線の相互に間隔を有する構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記コイルは、複数の導線から成り、
該コイルの軸方向と直交する方向において、前記導線が同心状に複数有する構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造体。
【請求項5】
前記コイルを複数備え、それぞれ異なる軸方向を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の構造体。
【請求項6】
前記コイルは、誘電体に形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の構造体。
【請求項7】
前記コイルは、誘電体内部に設けられたメタライズ層から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の構造体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の構造体と、
前記基体上面に搭載された蓄電体と、
前記基体に被着され、前記蓄電体を封止するための蓋体と、
を具備した電池。
【請求項9】
前記蓄電体は、電気二重層キャパシタであることを特徴とする請求項8に記載の電池。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の構造体と、
前記基体上面に搭載された電子部品と、
前記基体に被着され、前記電子部品を封止するための蓋体と、
を具備した電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−267572(P2009−267572A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112280(P2008−112280)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】