説明

構造内の対象物の位置を決定する方法

本発明は、構造内の対象物の位置を決定する方法に関する。対象物は、構造内に配される複数の光源から変調光波を受け取る。変調は個別に符号化され、構造内の光源の位置は既知である。変調信号は同期され、これにより各受け取った変調光波の位相と比較位相との間の位相差の測定に基づいて対象物の位置を決定することが可能である。前記位相差は、距離計算のために用いられ、次に対象物の位置を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別に符号化変調信号により変調される変調光波を放射する複数の光源を有する、構造内の対象物の位置を決定する方法に関し、ここで、構造内の各光源の位置は既知である。当該方法は、変調信号を同期するステップと、対象物で、少なくとも幾つかの前記光源からの変調された光波を受けるステップとを含む。
【背景技術】
【0002】
カスタマイズされた照明環境が作れる、制御可能な光源は、屋内及び屋外の照明アプリケーションのための照明の主源となっていくと広く認識されている。良好な制御能力を得るために、光源は、個別に光源を符号化する変調信号の形で、個別の識別子を具備している。すなわち、光源から放射される光は、符号化される。通常、各光源の位置は、決定されていて、よって既知である。
【0003】
次に、個別に識別可能な斯様な光源は、構造の中にあって光源により放射される光を検出するための検出器を具備する対象物の位置を決定するために有効である。幾つかの光源から符号化されている光を受けて、既知の位置を持つ各光源までの距離を決定することによって、対象物の位置だけでなく、2D又は3Dの位置を決定することは可能である。
【0004】
既知の位置を持つ符号化光源により対象物の位置を決定するための既知の解決案の幾つかの例は、米国特許第6,865,347号に開示されている。開示された解決案のうちの1つは、符号化されている光の受信信号強度と組み合わせて、幾つかの光源からの符号化されている光を利用する。距離にしたがって減衰する受信信号強度に依存することは、どちらかといえば不正確な位置を与えるだけでなく、送信された信号強度についての付加的な知識を必要とする。米国特許第6,865、347号において提案される他の解決案は、特別に設計された光検出器であり、当該光検出器は、その幾何学的な構成によって、3D位置を決定するために単一の光源から光を検出することを可能にする角度データを生成する。この他の解決案も、光源までの距離を決定するために受信信号の強さ(RSS)を使用するので、比較的複雑な構成を持つ。与えられたさらに他の代替の解決案は、時間遅延測定を実施することであり、すなわち符号化されている光が光源から検出器まで進むためにかかる時間が、幾つかの光源に対して決定される。この解決案は、伝播時間を検出し、その時間を良い精度で距離に変換するために完全に同期したシステム及び超短波測定を必要とする欠点を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の上述の欠点を軽減し、適度に高い周波数での正確な位置の決定のための方法を提供する、構造内の対象物の位置を決定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の本発明による対象物の位置を決定する方法により達成される。
【0007】
このように、本発明の態様によると、個別に符号化されている変調信号により変調される変調光波を放射する複数の光源を有する構造内の対象物の位置を決定する方法が提供され、ここにおいて、構造の各光源の位置は既知である。当該方法は、−変調信号を同期させるステップと、−少なくとも幾つかの前記光源からそれぞれの変調光波を対象物で受け取るステップと、−各受け取った変調光波の位相と比較位相との間の位相差の測定に基づいて対象物の位置を決定し、前記位相差によって距離を決定するステップとを有する。
【0008】
位置の決定に使用されるべき距離を決定するために変調信号と位相基準との間の位相差を測定することにより、関係する動作周波数が、RF測定値又は上述伝播時間測定と同じくらい高い必要はない。本発明の方法は、高い位置精度を依然提供する。
【0009】
用語「構造」は、ビルディング、ビルディングの部屋、車両、壁はないが屋根がある領域等を含むがこれらに制限されるものではない対象の光源を坦持するように設けられた如何なる構造も意味する点に留意されたい。
【0010】
請求項2に規定された当該方法の実施例では、変調信号と同期する、基準信号から比較位相を得ることを含む。当業者に容易に理解されるように、同期は位相差の比較的単純な決定を提供する。
【0011】
請求項3に記載の方法の実施例によると、距離は、関連する変調光波を放射した光源と対象物との間の距離である。正に言及した同期が利用されるならば、これは、対象物の位置を決定するための最も直接的で簡単な、よって有利な態様である。さらにまた、3D位置を決定するために、複数の光源の少なくとも3つの異なる光源と対象物との間の決定された距離が使用される。
【0012】
請求項5に規定された方法の実施例によると、比較位相は、他の受け取った変調光波から得られる。本実施例において、変調信号は相互に比較されるので、(外部的な)同期基準信号に対するニーズがない。
【0013】
請求項6に規定される方法の実施例によると、変調信号の間の正に言及した比較が使用されるならば、対象物の位置の決定は、好ましくは、−少なくとも3つの距離を決定するために使われる、少なくとも3つの異なる位相差を測定するため少なくとも4つの異なる光源からの変調光波を使用するステップと、−前記対象物の3D位置を決定するため決定された距離を使用するステップとを有する。
【0014】
請求項7に規定される方法の実施例によると、幾つかの3D位置は変調光波の異なる組合せによって決定され、これらの幾つかの3D位置が推定された3D位置を最適化するために使われる。これは、さらに増大された精度を提供する。
【0015】
本発明のこれら及び他の態様、特徴及び効果は、これ以降説明される実施例を参照して、明らかに説明されるだろう。
【0016】
本発明は、添付の図面を参照して詳細に説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、取り付けられた幾つかの光源を持つ構造の対象物を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明による構造内の対象物の位置を決定する方法の実施例を例示するフローチャートである。
【図3】図3は、本発明による構造内の対象物の位置を決定する方法の実施例を例示するフローチャートである。
【図4】図4は、本発明による対象物及びシステムを検出する光の実施例の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示されるように、構造内の対象物の位置を決定する方法の第1の実施例は、幾つかの光源103が例えば部屋の天井(又は、壁)に配置される構造101に適用できる。対象物107は、構造101内にある。対象物107に供給される位置決定装置109の実施例は、図4に図示されるように、DSP又はCPUのようなプロセッサ113及びフォトダイオードのような光検出器111を有する。典型的にはLEDでありえる光源103は、基準クロック信号発生器105により生成される基準クロック信号、又は単に基準クロックにより同期される。更に、光検出器111も、基準クロックにより同期される。同期は当業者に知られている何らかの適切な方法でなされることができ、基準信号発生器105は構造101に配置される独立したデバイスでありえるし、又は共通基準クロックを表す仮想デバイスでありえる。よって、例えば、専用のワイヤが、各デバイス(すなわち光源又は検出器)に基準クロックを供給するために用いられるか、基準クロックは、電力ライン(すなわちメイン)の上に伝送されるか、電力ラインの一般の50又は60Hzは、基準クロックを生成するのに用いられるか、又は、基準クロックは、デバイスに無線で伝送される。
【0019】
さらに、各光源103は固有のアイデンティティを持ち、これは光源103から放射される光に個々のコードを埋め込むことにより供給される。好ましくは、個々の符号化は、個別の符号化変調信号、好ましくはCDMA信号で光を変調することにより得られる。
【0020】
更に、構造101の各光源103の位置は、前もって知られている。この知識は、当業者に知られている種々異なる態様で入手できる。通常は、光源103がマウントされるべき位置は、構造101のレイアウトにすでに特定され、個々の光源103のどの一つがどの位置においてマウントされたかを決定するための種々異なる技術がある。
【0021】
図2のフローチャートで例示されるように、対象物107の位置は以下のように決定される。3D位置、すなわち3D座標が決定されるべきであるとする。少なくとも3つの異なる光源の光は、検出器111に到達しなければならない。ステップ201で、検出光を放射した異なる光源103は、それらの個々の符号化信号により識別される。ステップ202で、少なくとも3つの異なる光源に関連する符号化信号の位相が基準クロックと各々比較され、位相差が決定される。ステップ203で、CDMA変調周波数のような符号化信号周波数が既知であるので、少なくとも3つの光源のそれぞれまでの距離を計算することは可能である。光源103の既知の位置及び距離は、検出器111、すなわち対象物107の3D位置を決定するために用いられる。これらの計算それ自体は、本願明細書に説明されている全般的な発明の概念についての知識を得た当業者により実行することはむしろ容易なので、従って詳述されない。3D位置は、位置の決定装置109からマスター・コントローラ115まで伝送され、これは監視するため又は何らかの他の適切な目的のために表示されるか、使われる。加えて、又は、あるいは、対象物自体は、その位置を示すディスプレイを具備する。たとえば貴重品追跡、ビジターガイダンス、盲人のための誘導装置等の本発明の幾つかの可能なアプリケーションがある。
【0022】
方法の第2の実施例において、光源103は、光検出器111と同期されるのではなく、依然相互に同期されている。このとき、正確な位置を決定することは、やや複雑である。3D位置が達成されるべきであると依然仮定する。少なくとも4つの光源103から放射される光が必要である。2つの符号化信号間の位相差を測定することにより、これら対応する光源と検出器111との間の長さの違いが計算される。少なくとも3つの斯様な位相差、すなわち前記少なくとも4つの光源103間の位相差を計算することにより、対象物107と光源との間の距離を与える方程式系を解くことが可能であり、これによって、対象物の3D位置は上述のように決定される。
【0023】
しかしながら、より正確な結果を得るために、第3の実施例によると、以下のステップが実行される。先ずステップ301(図3)で、検出光の個々の符号化信号全てが識別される。次にステップ302で、符号化信号のすべての可能性がある対の2Dマトリクスが設けられる。ステップ303で、位相差が各対に対して計算される。3つの位相差の任意の組合せが、最初の3D位置を計算するために使われる。最初の3D位置から他の全ての可能性がある位置各々までの距離を計算するための数的手順を使用することは、距離の合計に対する最小値を持つ位置を見つける結果となる。
【0024】
検出器111が光源103と同期しないとき、位置を決定するための第2実施例の幾つかの代替方法がある。よって、代替方法は、4つの光源103のすべての可能性がある組合せのために上記の第2の実施例のステップを繰り返し、それからその結果の平均をとる。他の実施例は、各々の検出された光源の光の強度を検出することを含む。第2の実施例のステップは、4つの光源103の種々異なる対に対して実行され、計算された座標の差が決定され、当該差の各決定に対して、最も高い検出強度の光源が残される。平均が安定するまで、この手順が続けられる。
【0025】
光源103の、すなわち変調信号の上記の同期が、好ましくは位相同期を構成する又は有することは留意されるべきである。上述のように、添付の請求の範囲に記載の本発明による方法の実施例が説明された。これらは、単に非限定的な例示的とみなされるべきである。当業者には理解されるように、多くの変更態様及び別の実施例が、本発明の範囲内で可能である。
【0026】
例えば、本発明の方法は、構造101内の照明システムを制御する(例えば色安定化)際に用いられるべきカラーセンサを有する検出器に適用されてもよい。しばしば、斯様なカラーセンサは、相当な入射角依存を持つフィルタリング技術を使用する。斯様な入射角依存フィルタ技術の例は、交互の高い/低い屈折率を持つ積層を有する干渉フィルタである。斯様なフィルタは、異なる角度の下でフィルタをたたく光に対して異なる光学反応を持つ。光源103の既知の位置及び対象物107/検出器の決定された位置で、光源から発する光の入射角は推定できる。したがって、本発明の方法は、適用フィルタの入射角依存に対する補正を可能にする。好適には、これは、光源103の色設定の正確な決定及び制御を改善する。
【0027】
よって、上記の実施例により説明されるように、本発明は、構造の対象物の位置を決定する方法に注意する。対象物は、構造内に配される幾つかの光源からの変調光波を受ける。変調は個別に符号化され、構造内の光源の位置は既知である。変調信号は同期され、これにより、各受け取った変調光波の位相と比較位相との位相差の測定に基づいて、対象物の位置を決定することが可能である。位相差が距離計算のために用いられ、次に対象物の位置を与える。
【0028】
このアプリケーションに対して、特に添付の請求の範囲に関して、「を有する」という語は、他の素子又はステップを除外しないし、「a」又は「an」という語は、複数を除外しないことは当業者に明らかであることは留意されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に符号化されている変調信号により変調される変調光波を放射する複数の光源を有する構造内の対象物の位置を決定する方法であって、前記構造内の各光源の位置は既知であり、−前記変調信号を同期させるステップと、−少なくとも幾つかの前記光源からそれぞれの変調光波を対象物で受け取るステップと、−各受け取った変調光波の位相と比較位相との間の位相差の測定に基づいて前記対象物の位置を決定し、前記位相差によって距離を決定するステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記変調信号と同期する基準信号から前記比較位相を得るステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記距離は、関連する変調光波を放射した光源と前記対象物との間の距離である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象物の位置の決定は、前記対象物の3D位置を決定するための前記複数の光源の少なくとも3つの異なる光源と前記対象物との間の決定された距離を使用するステップを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
他の受け取った変調光波から前記比較位相を得るステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対象物の位置の決定は、−少なくとも3つの距離を決定するために使われる、少なくとも3つの異なる位相差を測定するため少なくとも4つの異なる光源からの変調光波を使用するステップと、−前記対象物の3D位置を決定するため決定された距離を使用するステップとを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
変調光波の異なる組合せに基づいて幾つかの3D位置を決定するステップと、これらの幾つかの3D位置に基づいて推定された3D位置を最適化するステップとを有する、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−535335(P2010−535335A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518797(P2010−518797)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053017
【国際公開番号】WO2009/016578
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】