説明

横型の食材加熱攪拌装置

【課題】
食材収容タンクの底面全体が均一に電磁誘導加熱される横型の食材加熱攪拌装置を提供する。
【解決手段】
ほぼ半円筒型の食材収容タンク(T)に収容された食材(M)を電磁誘導加熱し乍ら、攪拌羽根(A)により攪拌する横型の食材加熱攪拌装置において、上記食材収容タンク(T)の底面へ複数の電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)を、そのタンク(T)の軸線方向又は/及び円周方向に沿って延在する並列状態に取り付けると共に、そのコイル(34a)(34b)(34c)同志の隣り合う相互間に介在する磁性体の仕切りリブ(7)(7)を、上記タンク(T)の底面から一定高さ(h)だけ一体的に突出させて、その仕切りリブ(7)(7)により上記コイル(34a)(34b)(34c)同志の磁力線が干渉しないように遮断した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は餡やクリーム、ジャム、シチュー、ミンチ肉、その他の各種食材を電磁誘導加熱し乍ら攪拌する横型の食材加熱攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の出願人は電磁誘導加熱し乍ら攪拌する横型の食材加熱攪拌装置として、先に特開2002−238756号を提出した。
【0003】
茲に、特開2002−238756号発明の図8、9に記載された変形実施形態では、巻き径の小さい複数の電磁誘導加熱コイル(36a)(36b)(36c)が、食材収容タンク(T)の底面を分担する状態に並列設置されている点で、本発明に最も近似する公知技術であると言うことができる。
【特許文献1】特開2002−238756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公知発明の構成によれば、業務用としての大容量な食材収容タンク(T)を、汎用性に富む比較的小出力(例えば約15〜20Kw)の安価な加熱用インバーター(38a)(38b)(38c)を使って加熱できる利点があるけれども、複数の電磁誘導加熱コイル(36a)(36b)(36c)を並列設置する際、その隣り合う間隔を狭く詰め過ぎると、磁力線同志が干渉し合って、加熱用インバーター(38a)(38b)(38c)に破壊やその他の悪影響を与えることになるため、通例約60〜100mmの間隔(S2)を確保する必要がある。
【0005】
そうすると、食材収容タンク(T)の底面が上記間隔(S2)と対応する位置において、言わば加熱上のデッドスペースとなり、その底面全体の温度分布を均一に保つことができず、食材(M)の加熱ムラを招来すると共に、いたづらに長時間の加熱調理を余儀なくされるのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題の解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では据付フレームへ左右一対の軸受アームを介して支持されたほぼ半円筒型の食材収容タンクと、その食材収容タンクの底面に臨む電磁誘導加熱器と、上記軸受アームの左右何れか一方に軸受けされた駆動軸により、食材収容タンクの内部を回転駆動される攪拌羽根とを備え、
【0007】
上記食材収容タンクに収容された食材をその電磁誘導加熱器により加熱し乍ら、上記攪拌羽根により攪拌する横型の食材加熱攪拌装置において、
【0008】
上記電磁誘導加熱器となる電磁誘導加熱コイルの複数を、食材収容タンクにおける底面の軸線方向又は/及び円周方向に沿って延在する並列状態に取り付けると共に、
【0009】
上記電磁誘導加熱コイル同志の隣り合う相互間に介在することとなる磁性体の仕切りリブを、上記食材収容タンクの底面から一定高さだけ一体的に突出させて、その電磁誘導加熱コイル同志の磁力線が干渉しないように遮断したことを特徴とする。
【0010】
又、上記請求項1に従属する請求項2では、仕切りリブを食材収容タンクの軸線方向又は/及び円周方向に沿い延在する軌条形態として、その食材収容タンクの底面へ溶接一体化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の上記構成によれば、食材収容タンクの底面へ複数の並列状態に取り付けられた電磁誘導加熱コイル同志の隣り合う相互間が、そのタンクの底面から一定高さだけ一体的に突出する仕切りリブにより遮断されるようになっているため、その磁力線同志の干渉に起因する加熱用インバーターの破壊や違和音の発生などを予防でき、しかも仕切りリブがこれと隣接する電磁誘導加熱コイルからの磁力線を集中的に吸収して、食材収容タンクの底面へ伝熱作用することになる結果、あたかも1個の電磁誘導加熱コイルを使用した如く、そのタンクの底面全体を均一な温度分布状態に加熱し得る効果があり、熱効率に著しく優れる。
【0012】
特に、請求項2の構成を採用するならば、ほぼ半円筒型の食材収容タンクの軸線方向(長手方向)又は/及び円周方向に沿い延在する軌条形態の仕切りリブにより、そのタンクを物理的に増強できるほか、その仕切りリブの厚みや溶接上の肉盛りによって、食材収容タンクの底面に対する伝熱面積の調整を容易に行なえる効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、図1〜10はその第1実施形態に係る1軸式の食材加熱攪拌装置を示しており、(F)は作業床への据付フレームであって、ベース盤(1)とその両端部から一体的に垂立する左右一対のタンク支持ボックス(2a)(2b)とを備えている。
【0014】
その場合、図例の両タンク支持ボックス(2a)(2b)は枠支柱(3)により固定支持されているが、その全体的なボックス型として、上記ベース盤(1)から一体的に背高く立設しても良く、何れにしても左右何れか一方(図例では前方から見て左側)のタンク支持ボックス(2a)は後述する攪拌羽根(A)の駆動側をなし、残る他方のタンク支持ボックス(2b)は従動側をなす。
【0015】
そして、その従動側タンク支持ボックス(2b)の中途高さ位置には、タンク転倒ハンドル軸(4)が前後方向への貫通状態に軸受けされており、その前方に露出する手動操作ハンドル(5)を外部から回動操作できるようになっている。(6)はそのタンク転倒ハンドル軸(4)の中途部に嵌め付け一体化された食材収容タンク転倒用のウォームギヤである。
【0016】
(T)は一定な厚み(t1)(例えば約3mm)のステンレス鋼板や銅板から、左右方向へ細長く延在するほぼ半円筒型に作成された食材収容タンクであり、例えば約100リットルの容量を有する。しかも、その円弧状の底面には同じ素材のステンレス鋼板や銅板から成る仕切りリブ(7)の複数(図例では2本)が、食材収容タンク(T)の軸線方向(長手方向)に沿い並列する軌条形態として溶接一体化されており、その底面から一定高さ(h)(例えば約25mm)だけ突出している。但し、仕切りリブ(7)は食材収容タンク(T)と一体に鋳造しても良い。茲に、各仕切りリブ(7)の一定な厚み(t2)は例えば約6mmとして、食材収容タンク(T)自身の厚み(t1)よりも厚く定めることが好ましい。
【0017】
このような食材収容タンク(T)の底面から一体的に突出する仕切りリブ(7)は、後述のコイル支持ベースに固定支持された電磁誘導加熱コイル同志の隣り合う相互間を遮断できる対応的な位置関係として、その相互間へ介在されることにより、電磁誘導加熱コイル同志の磁力線が干渉し合う悪影響を無くすためのものである。
【0018】
上記食材収容タンク(T)の底面とこれから一体的に突出する仕切りリブ(7)には、磁性体である鉄粉などの発熱被膜(8)が溶着一体化されることにより、導電性が与えられている。但し、その導電性を有する限り、上記食材収容タンク(T)と仕切りリブ(7)を鉄板や、鉄とステンレスとのクラッド鋼板、アルミとステンレスとのクラッド鋼板、その他の磁性体である金属板から作成しても良い。
【0019】
(9a)(9b)は上記食材収容タンク(T)を受け持つ駆動軸受アームと従動軸受アームとの左右一対であり、その何れも基端部の径大な張出しフランジ(10)が食材収容タンク(T)のフラットな左右両側面へ、各々ボルト(11)を介して取り付け固定されている。
【0020】
他方、同じく駆動軸受アーム(9a)並びに従動軸受アーム(9b)の先端部は何れもベアリングケース(12a)(12b)として、そのピローブロック(13)により上記据付フレーム(F)側のタンク支持ボックス(2a)(2b)内へ固定支持されている。
【0021】
(14)は上記駆動軸受アーム(9a)と従動軸受アーム(9b)に各々内蔵されたグランドパッキング(15)の押えプレートであり、その左右一対の何れも各軸受アーム(9a)(9b)の張出しフランジ(10)から横向きに植立する水平なネジ杆(16)へ、調整ナット(17)を介して締結された状態にある。
【0022】
又、(18a)(18b)は上記駆動軸受アーム(9a)並びに従動軸受アーム(9b)と対応して、そのベアリングケース(12a)(12b)内のボールベアリング(19)により回転自在に支持された攪拌羽根用駆動軸と従動軸との左右一対であり、その何れも軸受アーム(9a)(9b)を貫通する水平な横架状態として、その基端部だけが食材収容タンク(T)の内部へ張り出し露呈している。
【0023】
そして、攪拌羽根用駆動軸(18a)がその駆動軸受アーム(9a)から上記据付フレーム(F)の駆動側タンク支持ボックス(2a)内へ張り出す先端部には、伝動スプロケット(20)が嵌め付け一体化されている。(21)は上記据付フレーム(F)のベース盤(1)上又は駆動側タンク支持ボックス(2a)内に固定設置された攪拌羽根用回転駆動モーター、(22)はこれと伝動ベルト(23)を介して連結された減速機であり、その減速機(22)の出力スプロケット(24)と上記駆動軸(18a)上の伝動スプロケット(20)との上下相互間には、伝動チェン(25)が巻き掛けられている。
【0024】
そのため、後述する食材(M)の攪拌羽根(A)はその回転駆動モーター(21)により、上記伝動チェン(25)と駆動軸(18a)を介して回転駆動されることになる。その回転羽根(A)の回転速度は、例えば約30〜40r.p.m である。尚、上記回転駆動モーター(21)としては減速機(22)付きのギヤードモーターを採用しても勿論良い。
【0025】
他方、従動軸受アーム(9b)のベアリングケース(12b)が上記据付フレーム(F)の従動側タンク支持ボックス(2b)内へ張り出す先端部には、上記食材収容タンク転倒用のウォームギヤ(6)と噛合回転するウォームホイール(26)が嵌め付け一体化されている。
【0026】
その結果、上記食材収容タンク(T)を受け持つ駆動軸受アーム(9a)並びに従動軸受アーム(9b)と、その攪拌羽根用駆動軸(18a)並びに従動軸(18b)との相互間に、各々ボールベアリング(19)が介在していることとも相俟って、作業者が上記手動操作ハンドル(5)を前方から回動操作すれば、食材収容タンク(T)が駆動軸(18a)と従動軸(18b)との水平な同一軸線(X−X)廻りに、図3の鎖線で示す一定角度(α)だけ前下がり傾斜姿勢に転倒することとなり、その食材収容タンク(T)の内部から加熱攪拌済みの食材(M)を洩れなく安楽に取り出すことができる。
【0027】
その傾斜姿勢の一定角度(α)は、ほぼ扇型をなす上記ウォームホイール(26)の回転角度規制ボルト(27)の進退操作によって、大小に調整セットすることもできるようになっている。尚、食材収容タンク(T)はその食材(M)の加熱攪拌中、図外の開閉蓋によって上方から施蓋される。
【0028】
先に一言した食材(M)の攪拌羽根(A)は、ステンレス鋼板から食材収容タンク(T)の内部に納まる大きさとして、図5、6のようなクランク形態に作成されている。
【0029】
つまり、攪拌羽根(A)は向かい合う左右一対の軸受ボス(28)から相反する上下方向へ張り出す平行な垂立板(29)と、その各垂立板(29)の張り出し先端部から内向きに張り出す平行な水平板(30)と、更にその各水平板(30)の張り出し先端部と各垂立板(29)の基端部とを連結する如く、相反方向へ張り出し屈曲された円弧板(31)とを備えた一体品であり、その軸受ボス(28)が食材収容タンク(T)の内部に張り出し露呈している攪拌羽根用駆動軸(18a)と従動軸(18b)との基端部へ、各々キー(32)を介して着脱自在に嵌め付け一体化されるようになっている。
【0030】
上記食材収容タンク(T)を貫通横架しない左右一対の短かい駆動軸(18a)と従動軸(18b)によって、回転駆動されることになるクランク形態の攪拌羽根(A)を採用するならば、その左右一対の円弧板(31)によって食材収容タンク(T)内の中央部に堆積する食材(M)を相反方向へ効率良く切り返し流動させることができ、その両円弧板(31)と交叉する方向関係の上記垂立板(29)並びに水平板(30)の左右一対づつとも相俟って、食材(M)をその収容タンク(T)内の隅々に至るまで洩れなく、全体的な均一に攪拌することが容易となり、又駆動軸(18a)並びに従動軸(18b)との着脱作業もすばやく便利に行なえるため、その攪拌羽根(A)の交換や保守点検などに著しく有効である。
【0031】
但し、上記攪拌羽根用駆動軸(18a)と従動軸(18b)との左右一対を食材収容タンク(T)の貫通横架状態に1本化して、その長い1本へ着脱自在に嵌め付けた攪拌羽根(A)を、上記モーター(21)によって回転駆動するように構成してもさしつかえない。
【0032】
更に、(H)は食材(M)の電磁誘導加熱器であって、上記食材収容タンク(T)の底面に臨む複数(図例では3個)のコイル支持ベース(33a)(33b)(33c)と、その各個へ渦巻状態に定着された電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)の複数(図例では3本)とから成り、その複数の電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)が食材収容タンク(T)における底面の加熱を分担する。
【0033】
茲に、複数の電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)は何れも、一例として直径:約5〜8mmの銅線(リッツ線)から成り、他方そのコイル支持ベース(33a)(33b)(33c)は何れも耐熱性を有する合成樹脂やベークライトなどの電気絶縁材から、上記食材収容タンク(T)の軸線方向(長手方向)に沿って延在する帯状を呈している。
【0034】
そして、このような電磁誘導加熱器(H)は複数のコイル支持ベース(33a)(33b)(33c)に共通する1個のベース包囲カバー(35)と、複数の固定ボルト(36)などを介して上記食材収容タンク(T)の底面へ、その電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)が上記発熱被膜(8)と向かい合うように、且つ好ましくは着脱自在に取り付けられている。(S1)は食材収容タンク(T)の底面と電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)との向かい合う相互間隙、(S2)は同じく食材収容タンク(T)の上記仕切りリブ(7)と電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)との隣り合う相互間隙を示しており、その何れも一例として約10mmである。
【0035】
つまり、上記コイル支持ベース(33a)(33b)(33c)は食材収容タンク(T)の仕切りリブ(7)により挟まれた中央部へ臨む中央電磁誘導加熱コイル支持ベース(33a)と、前後一対の周辺部へ臨む周辺電磁誘導加熱コイル支持ベース(33b)(33c)とに分割された複数として並列しており、その両周辺電磁誘導加熱コイル支持ベース(33b)(33c)と中央電磁誘導加熱コイル支持ベース(33a)との隣り合う相互間には、一定な開口幅(W)(例えば約17mm)の仕切りリブ用逃し入れスリット(37)が区成されている。(38)はその逃し入れスリット(37)と対応位置して、上記ベース包囲カバー(35)の中途部に形成された仕切りリブ用逃し入れ凹段面である。
【0036】
このような食材収容タンク(T)の底面へ臨むコイル支持ベース(33a)(33b)(33c)のうち、その中央電磁誘導加熱コイル支持ベース(33a)には食材収容タンク(T)の底面中央部を加熱する中央電磁誘導加熱コイル(34a)が、又周辺電磁誘導加熱コイル支持ベース(33b)(33c)には同じく食材収容タンク(T)の底面周辺部を加熱する周辺電磁誘導加熱コイル(34b)(34c)が、図6、8のような渦巻状態に定着されており、その食材収容タンク(T)の軸線方向(長手方向)に沿って並列する分布状態にある。
【0037】
しかも、上記中央電磁誘導加熱コイル(34a)と周辺電磁誘導加熱コイル(34b)(34c)は図10の制御回路から明白なように、その対応的に並列する加熱用インバーター(39a)(39b)(39c)と電気的に接続配線されており、これらから高周波電流の供給を受けるようになっている。尚、その加熱用インバーター(39a)(39b)(39c)は上記据付フレーム(F)のベース盤(1)上へ、並列状態に据え付けられている。(40)は攪拌羽根用回転駆動モーター(21)を制御するインバーター、(41)は操作パネルである。
【0038】
そのため、加熱用インバーター(39a)(39b)(39c)から上記中央電磁誘導加熱コイル(34a)と周辺電磁誘導加熱コイル(34b)(34c)へ各別に高周波電流を供給して、食材収容タンク(T)の底面と交差する磁束を発生させれば、そのタンク(T)の底面に渦電流が流れ、これが通路となる食材収容タンク(T)の抵抗によって電力損失を生じ、その発生したジュール熱により食材収容タンク(T)の底面が加熱されることとなる。
【0039】
その際、中央電磁誘導加熱コイル(34a)と周辺電磁誘導加熱コイル(34b)(34c)との隣り合う相互間は、食材収容タンク(T)の底面から一体的に突出する仕切りリブ(7)によって遮断されているため、その仕切りリブ(7)が中央電磁誘導加熱コイル(34a)と周辺電磁誘導加熱コイル(34b)(34c)の磁力線(Z)を吸収して集中的に加熱され、これからの伝熱作用により食材収容タンク(T)の底面全体を図9のように、あたかも1本の電磁誘導加熱コイルにより加熱した如く、その均一な温度分布状態に保つことができる。
【0040】
殊更、図例の上記数値から示唆されるように、仕切りリブ(7)の厚み(t2)を食材収容タンク(T)の底面よりも厚肉化すると共に、その底面からの突出高さ(h)を低くともコイル支持ベース(33a)(33b)(33c)による電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)の支持面まで到達する寸法として、食材収容タンク(T)の底面へ溶接一体化するならば、これと隣り合う電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)の磁力線(Z)を仕切りリブ(7)が確実に吸収し尽して、その加熱コイル(34a)(34b)(34c)同志の隣り合う間隙と対応位置する食材収容タンク(T)の底面中央部も安定良く加熱することができ、その底面の部分的な加熱ムラを生じるおそれがない。
【0041】
又、上記仕切りリブ(7)から食材収容タンク(T)の底面に波及する伝熱作用は、その仕切りリブ(7)の面積のみならず、タンク(T)の底面に対する溶接の肉盛り面積によっても調整することができる。
【0042】
他方、食材収容タンク(T)の底面を分担する複数の電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)は、並列する各別の加熱用インバーター(39a)(39b)(39c)に接続配線されているため、例えば食材収容タンク(T)の底面中央部のみをその中央電磁誘導加熱コイル(34a)によって、単独に加熱したり、食材収容タンク(T)の底面中央部と底面周辺部とを意図的に異なる温度として加熱したり、或いは逆に中央電磁誘導加熱コイル(34a)に対する加熱用インバーター(39a)の出力を低く、周辺電磁誘導加熱コイル(34b)(34c)に対する加熱用インバーター(39b)(39c)の出力を高く相違変化させて、食材(M)の全体を均一に加熱したりすることも可能となり、食材(M)の種類やその調理方法などに広く対応し得る利点がある。
【0043】
次に、図11〜13は先の図1〜10と対応する本発明の第2実施形態を示しており、この食材加熱装置の場合ほぼ半円筒型食材収容タンク(T)の底面から一定高さ(h)だけ突出する複数の仕切りリブ(7)を、そのタンク(T)の円周方向に沿い並列する軌条形態として溶接一体化している。
【0044】
そして、食材(M)の電磁誘導加熱器(H)となる複数の電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)(34c)を、中央電磁誘導加熱コイル(34a)並びに左右一対の周辺電磁誘導加熱コイル(34b)(34c)として分割し、その対応的な中央電磁誘導加熱コイル支持ベース(33a)と左右一対の周辺電磁誘導加熱コイル支持ベース(33b)(33c)に固定支持させて、やはり共通する1個のベース包囲カバー(35)により、食材収容タンク(T)の円周方向へ延在する並列状態に取り付けている。
【0045】
このような第2実施形態の構成でも、第1実施形態と同じ上記作用効果を達成することができる。尚、第2実施形態におけるその他の構成は上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図11〜13に図1〜10との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0046】
先の第1、2実施形態では、攪拌羽根用駆動軸(18a)と従動軸(18b)との左右一対が水平な同一軸線(X−X)上に並ぶ所謂1軸式の食材加熱攪拌装置を示しているが、図14〜22の第3実施形態に係る2軸式の食材加熱攪拌装置としても、本発明を適用実施することができる。
【0047】
即ち、その第3実施形態の食材加熱攪拌装置では前後一対の攪拌羽根軸(42)が、ほぼ半円筒型の食材収容タンク(T)を水平に貫通横架しており、そのタンク(T)から張り出し並列する左右両端部が各々軸受フランジ(43)によって、食材収容タンク(T)のフラットな左右両側面へ回転自在に支持されている。
【0048】
しかも、このような軸受け状態にある両攪拌羽根軸(42)の左右両端部は、食材収容タンク(T)との一体物である駆動側ギヤケース(44a)と従動側ギヤケース(44b)によって包囲されており、その駆動側ギヤケース(44a)の中心部から一体的に張り出す駆動軸受アーム(ベアリングケース)(9a)が、攪拌羽根用回転駆動モーター(21)を内蔵した据付フレーム(F)の駆動側タンク支持ボックス(2a)へ差し込まれた内部において、ピローブロック(13)により支持されている。
【0049】
他方、従動側ギヤケース(44b)の中心部から一体的に張り出す従動軸受アーム(軸筒)(9b)が、同じく据付フレーム(F)の従動側タンク支持ボックス(2b)へ差し込まれた内部において、やはりピローブロック(13)により支持されていると共に、その従動軸受アーム(9b)の張り出し先端部に食材収容タンク転倒用のウォームホイール(26)が嵌め付け一体化されている。
【0050】
又、上記従動軸受アーム(9b)との水平な同一軸線(X−X)上に位置する攪拌羽根用駆動軸(18a)が、その対応的な駆動軸受アーム(ベアリングケース)(9a)内のボールベアリング(19)によって、回転自在に軸受けされており、その駆動軸(18a)が上記駆動側ギヤケース(44a)内へ臨む先端部と、食材収容タンク(T)からの逆向きとして同じ駆動側ギヤケース(44a)内へ臨む攪拌羽根軸(42)の対応的な先端部には、互いに噛合回転する伝動ギヤ(45)(46)の一対が各々嵌め付け一体化されている。
【0051】
更に、前後一対の攪拌羽根軸(42)が従動側ギヤケース(44b)内へ臨む先端部には、互いに噛合して等速回転する減速ギヤ(47)(48)の一対も嵌め付け一体化されており、そのため据付フレーム(F)の駆動側タンク支持ボックス(2a)内に内蔵設置された攪拌羽根用回転駆動モーター(21)から、伝動チェン(25)と上記駆動軸(18a)、伝動ギヤ(45)(46)並びに減速ギヤ(47)(48)を経て、両攪拌羽根軸(42)が回転駆動されることとなる。
【0052】
その場合、攪拌羽根(A)の複数はその攪拌羽根軸(42)と別個独立しており、その各攪拌羽根(A)の取付ボス(49)が攪拌羽根軸(42)へ通し込まれた上、押圧ボルト(50)によって取り付け一体化されている。攪拌羽根(A)同志の方向性が干渉しないように、その交互の振り分け状態にあることは言うまでもない。
【0053】
このような2軸式の食材加熱攪拌装置では、食材収容タンク(T)の底面が2連の円弧状に造形されているが、その底面からも上記第1、2実施形態に準じて、電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)同志の隣り合う相互間に介在することとなる一定高さ(h)の仕切りリブ(7)を、一体的に突出させることができる。
【0054】
この点、図21では2連の円弧状をなす底面の中央部から一定高さ(h)だけ突出する1個の仕切りリブ(7)を、その食材収容タンク(T)の軸線方向(長手方向)に沿い延在する軌条形態として溶接一体化しており、しかもその円弧状の底面へ臨む前後一対のコイル支持ベース(33a)(33b)によって、対応的な前後一対の電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)を固定支持している。
【0055】
そして、その並列する前後一対の電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)を図22のように、対応的な加熱用インバーター(39a)(39b)と電気的に接続配線して、これから高周波電流を供給するようになっている。そのため、第3実施形態の構成でも上記第1、2実施形態と同じく、仕切りリブ(7)が両電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)の磁力線(Z)を集中的に吸収して、その電磁誘導加熱コイル(34a)(34b)同志の隣り合う間隙も確実に加熱することができ、食材収容タンク(T)の底面全体を均一な温度分布状態に保てるのである。
【0056】
第3実施形態におけるその他の構成は上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図14〜22に図1〜10との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を割愛する。尚、第1〜3実施形態の何れにあっても、食材収容タンク(T)が大容量となる場合には、その底面から一定高さ(h)だけ突出する仕切りリブ(7)の複数を、食材収容タンク(T)の軸線方向(長手方向)と円周方向との双方へ、互いに交叉する配列関係の軌条形態として延在させてもさしつかえない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る食材加熱攪拌装置の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の部分拡大断面図である。
【図5】食材収容タンクの平面図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】食材収容タンクを抽出して示す斜面図である。
【図8】図7の展開底面図である。
【図9】仕切りリブの加熱作用を示す模式図である。
【図10】加熱温度制御回路図である。
【図11】本発明に係る食材加熱攪拌装置の第2実施形態を示す図6に対応する断面図である。
【図12】図11の食材収容タンクを抽出して示す斜面図である。
【図13】図12の展開底面図である。
【図14】本発明に係る食材加熱攪拌装置の第3実施形態を示す図1に対応する正面図である。
【図15】図14の右側面図である。
【図16】図14の部分拡大正面図である。
【図17】図16の左側面図である。
【図18】図16の右側面図である。
【図19】図14の平面図である。
【図20】図19の部分拡大平面図である。
【図21】図20の21−21線に沿う拡大断面図である。
【図22】加熱温度制御回路図である。
【符号の説明】
【0058】
(1)・ベース盤
(2a)(2b)・タンク支持ボックス
(4)・タンク転倒ハンドル軸
(5)・手動操作ハンドル
(6)・ウォームギヤ
(7)・仕切りリブ
(8)・発熱被膜
(9a)・駆動軸受アーム
(9b)・従動軸受アーム
(10)・張出しフランジ
(12a)(12b)・ベアリングケース
(18a)・駆動軸
(18b)・従動軸
(20)・伝動スプロケット
(21)・攪拌羽根用回転駆動モーター
(23)・伝動ベルト
(24)・出力スプロケット
(25)・伝動チェン
(26)・ウォームホイール
(29)・垂立板
(30)・水平板
(31)・円弧板
(33a)(33b)(33c)・コイル支持ベース
(34a)(34b)(34c)・電磁誘導加熱コイル
(35)・ベース包囲カバー
(37)・仕切りリブ逃し入れスリット
(38)・仕切りリブ逃し入れ凹段面
(39a)(39b)(39c)・加熱用インバーター
(42)・攪拌羽根軸
(43)・軸受フランジ
(44a)・駆動側ギヤケース
(44b)・従動側ギヤケース
(45)(46)・伝動ギヤ
(47)(48)・減速ギヤ
(A)・攪拌羽根
(F)・据付フレーム
(H)・電磁誘導加熱器
(M)・食材
(T)・食材収容タンク
(W)・開口幅
(Z)・磁力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
据付フレームへ左右一対の軸受アームを介して支持されたほぼ半円筒型の食材収容タンクと、その食材収容タンクの底面に臨む電磁誘導加熱器と、上記軸受アームの左右何れか一方に軸受けされた駆動軸により、食材収容タンクの内部を回転駆動される攪拌羽根とを備え、
上記食材収容タンクに収容された食材をその電磁誘導加熱器により加熱し乍ら、上記攪拌羽根により攪拌する横型の食材加熱攪拌装置において、
上記電磁誘導加熱器となる電磁誘導加熱コイルの複数を、食材収容タンクにおける底面の軸線方向又は/及び円周方向に沿って延在する並列状態に取り付けると共に、
上記電磁誘導加熱コイル同志の隣り合う相互間に介在することとなる磁性体の仕切りリブを、上記食材収容タンクの底面から一定高さだけ一体的に突出させて、その電磁誘導加熱コイル同志の磁力線が干渉しないように遮断したことを特徴とする横型の食材加熱攪拌装置。
【請求項2】
仕切りリブを食材収容タンクの軸線方向又は/及び円周方向に沿い延在する軌条形態として、その食材収容タンクの底面へ溶接一体化したことを特徴とする請求項1記載の横型の食材加熱攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−346112(P2006−346112A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175427(P2005−175427)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000247247)有限会社ナカイ (22)
【Fターム(参考)】