説明

横引きノイズ補正方法

【課題】デジタル処理により横引きノイズ補正を行う。
【解決手段】映像入力からライン平均値算出回路により1ライン平均値を計算し、この信号から補正ゲイン制御回路により補正ゲインを算出し、一方で映像入力を、映像クリップ回路で所定のクリップレベルでクリップし、これからライン平均値算出回路により1ライン平均値を計算し、この信号をフレーム巡回型フィルタに通すことで横引きノイズ成分を除去した信号を得て、フレーム巡回型フィルタの入力と出力信号から横引きノイズ成分を求め、これに補正ゲインを乗じたものを横引きノイズ補正信号とし、映像入力からこれを減算することで横引きノイズを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョンカメラに関し、特にテレビジョンカメラの映像信号に発生する横引きノイズの低減方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
はじめにテレビジョンカメラの信号処理について、図1を用いて説明する。図1は、従来のテレビジョンカメラの構成を示すブロック図である。11はテレビジョンカメラ、12はレンズ部である。テレビジョンカメラにおいて、101は撮像素子、102はCDS( Correlated Double Sampling 、相関2重サンプリング)部、103はVGA( Variable Gain Amplifier )部、104はA/D( Analog to Digital )変換部、105は映像信号処理部、106は映像信号出力部、107はCPU( Central Processing Unit )である。
【0003】
図1において、被写体像は、レンズ部12を通り、テレビジョンカメラ11の撮像素子101に入射する。撮像素子101は、入射された被写体像を電気信号に変換して、CDS部102に出力する。CDS部102は、入力された電気信号から雑音を除去し、VGA部103に出力する。VGA部103は、入力された信号のレベルを調整して、A/D変換部104に出力する。A/D変換部104は、入力された電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して映像信号処理部105に出力する。映像信号処理部105は、入力された信号に対して、色分離、レベル補正、輪郭強調、等の様々な処理を施した後、映像信号出力部106を介してテレビジョンカメラ11の映像信号として出力する。
CPU107は、システムコントローラとして、テレビジョンカメラ11内の各部の回路を制御している。
【0004】
ノイズの影響により、ライン毎に黒レベルが変化する。これによって映像に横線が発生する。この現象を横引きノイズという。横引きノイズは、撮像素子101で発生するノイズで、従来は、CDS部102で補正を行っていた。なお、横引きノイズとは、周波数が数kHz程度の低周波ノイズにより、表示画面上において横引き状のノイズが見える現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−210774号公報
【特許文献2】特開2002−77704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、撮像素子101で発生する低周波ノイズを、CDS部102等により低減している。しかし、CDS部102、以降で発生する横引きノイズについては低減していなかった。
特許文献1には、テレビジョン信号の同期部分におけるノイズの大きさを1つのしきい値によって複数種類に分類し、制御回路は複数値の制御信号を作成し、ノイズの大きさに応じて補正係数を変化させる発明が開示されている。しかし、アナログ信号処理でノイズ補正されるため、上記の問題は解決していない。
特許文献2には、映像信号をフィールド間で信号処理し、被写体の動き検出結果に応じて、ノイズ抑制量を可変するテレビジョン回路技術が開示されている。そして、映像信号処理から出力されるデジタル信号についてノイズ補正処理を行っている。しかし、ノイズ補正に関して、被写体に動きがあるときには補正せず、動きが無い時に補正するとする発明であり、本願発明の課題を解決できるような技術の開示は無い。
本発明は、上記の問題に鑑み、CDS部102、VGA部103、及びA/D変換部104で発生する横引きノイズの補正を行う横引きノイズ補正方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、CDS部、VGA部、及びA/D変換部の後段の、映像信号処理部内でデジタル信号処理を行い、横引きノイズを含む映像信号から、横引きノイズ成分だけを抽出し、元の信号から、横引きノイズ成分を減算することにより、横引きノイズの無い映像信号を得るものであり、横引きノイズ補正方法及び横引きノイズ補正回路並びにそれを用いたテレビジョン回路として適用される。
好ましくは、本発明の横引きノイズ補正方法は、1ライン分の映像データの輝度信号レベルの画素毎の平均値データを算出し、前記算出された平均値データにフレーム巡回型フィルタによって前記1ライン分の映像データの1フレーム前の輝度信号レベルとの差分データから横引ノイズ成分を除去したデータを算出し、前記平均値データから前記横引ノイズ成分を除去したデータを減算した減算データを算出し、前記算出された減算データを前記1ライン分の映像データの画素毎に減算することによって、横引きノイズ成分を除去するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CDS部、VGA部、及びA/D変換部で発生する横引きノイズを、それら後段(ノイズが発生した後の段階)で補正することができ、しかもデジタル信号処理によって補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のテレビジョンカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のテレビジョンカメラの一実施例の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の横引きノイズ補正回路の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の補正ゲイン算出回路の入出力特性の一実施例を示す図である。
【図5】本発明のフレーム巡回型フィルタの一実施例の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の横引きノイズ補正回路の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の横引きノイズ補正処理動作の一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の横引きノイズ補正処理動作の一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の横引きノイズ補正処理動作の一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の横引きノイズ補正処理動作の一実施例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の横引きノイズ補正方法及び横引きノイズ補正回路並びにそれを用いたテレビジョン回路は、1ライン分の映像データの輝度信号レベルの画素毎の平均値データを算出し、算出された平均値データにフレーム巡回型フィルタによって1ライン分の映像データの1フレーム前の輝度信号レベルとの差分データから横引ノイズ成分を除去したデータを算出し、平均値データから横引ノイズ成分を除去したデータを減算した減算データを算出し、算出された減算データを1ライン分の映像データの画素毎に減算することによって、横引きノイズ成分を除去する。
好ましくは、上記本発明は、1ライン分の映像データの画素毎の輝度信号レベルが所定のレベルを超えた場合に、所定のレベルにクリップし、クリップ後の映像データについて、1ライン分の映像データの画素毎の輝度信号レベルの平均値データaを算出する。
また好ましくは、上記本発明は、横引ノイズ成分を除去したデータに基づいて、少なくとも1つのパラメータによる補正係数を算出し、算出された補正係数で補正することによって減算データから補正減算データを算出し、算出された補正減算データを1ライン分の映像データの画素毎に減算することによって、横引きノイズ成分を除去する。
さらに好ましくは、上記発明は、横引きノイズ補正は、1水平ライン毎に実行する。
またさらに好ましくは、上記発明は、パラメータは、横引ノイズ成分を除去したデータのレベルが所定のレベル以上の場合には、横引ノイズ成分を除去したデータのレベルを漸減して出力する。
【0011】
本発明の一実施例を、図2を用いて説明する。図2は、本発明のテレビジョンカメラの構成を示すブロック図である。205は映像信号処理部、207はCPUである。図2のテレビジョンカメラは、図1のテレビジョンカメラの構成に対して、映像信号処理部105の替わりに映像信号処理部205を用い、このため制御プログラムが変更されるため、CPU107の替わりにCPU207を用いる構成としている。
従って、図2の実施例では、図1のテレビジョンカメラに比べて、CDS部102でのノイズ補正の他、映像信号処理部205内で横引きノイズ補正処理を行う。即ち、アナログの映像信号ではなく、デジタルの映像信号に対して、横引きノイズ補正処理がなされる。
【0012】
なお、図2のテレビジョンカメラは、例えば、1080/60i、1080/50i、1080/24p、720/60p、720/50p、720/24p等のHD( High Definition )方式のテレビジョンカメラである。
また、撮像素子101は、例えばCCD( Charge Couppled Device )イメージセンサ、CMOS( Complementary Metal Oxide Semiconductor )イメージセンサ、等の固体撮像素子である。
ただし、以降では、横(水平)1920画素×縦1080画素のHD方式のテレビジョンカメラとして説明する。
【0013】
図3を用いて、図2のテレビジョンカメラにおける横引きノイズ補正処理を実行する横引きノイズ補正回路について説明する。図3は、本発明の横引きノイズ補正回路の一実施例の構成を示すブロック図である。図3の横引きノイズ補正回路は、図2のテレビジョンカメラにおける映像信号処理回路205の構成の一部である。300は横引きノイズ補正回路、301はライン平均値算出回路、302はフレーム巡回型フィルタ、303は減算器、304は補正ゲイン算出回路、305は乗算器、306はラインメモリ、307は減算器である。小文字のa〜f,gi,goは出力信号データである。また、必要構成部に入力される係数やパラメータについては角が丸みをおびた枠で囲んだ。
【0014】
図3において、映像信号処理部205内の横引きノイズ補正回路300に、デジタルの映像信号データgiが画素毎に入力される。この1水平ライン分の映像信号データgiは、ラインメモリ306とライン平均値算出回路301とに入力される。なお、映像信号データgiは、例えば、画素毎の輝度信号レベルを14bitで表す。
ライン平均値算出回路301は、式(1)のように、水平ラインの映像信号の平均値aを算出する。即ち、ライン平均値算出回路301は、画素毎にその輝度値が入力される都度、入力される輝度値を加算する。1水平ライン分の輝度値を加算した後、加算された値を水平画素数で除算する。除算結果(商)をその水平ラインの映像信号の平均値a、映像信号データgiの水平1ライン分ずつ算出し、1ライン平均値データaとして算出した順(通常は、画面上側のラインから下側のラインの順)にフレーム巡回型フィルタ302と減算器303の一方の入力端に出力する。
【0015】
【数1】

nは、1水平ライン分の画素数で、例えば、フルハイビジョンカメラでは、1920である(nは自然数)。
なお、平均値ではなく、中央値等、他の代表値を算出し、算出した代表値によって処理を行っても良い。
【0016】
フレーム巡回型フィルタ302は、横引きノイズ成分が除去された信号データbを算出し、減算器303の他方の入力端と補正ゲイン算出回路304に出力する。なお、フレーム巡回型フィルタの詳細の説明は、後述する(図5参照)。
【0017】
減算器303は、1ライン平均値データaから横引きノイズ成分が除去された信号bを減算して横引きノイズ成分データcを算出し、乗算器305に出力する(c=a−b)。
補正ゲイン算出回路304は、横引きノイズ成分が除去された信号データbのレベルから、別途入力されるパラメータ(例えば、後述の図4参照)に基づいてゲイン係数データdを算出し、乗算器305に出力する。
【0018】
補正ゲイン算出回路304に別途入力されるパラメータは、例えば、CPU207が設定し、補正ゲイン算出回路304に出力する。例えばパラメータは、Level値、Gain値、Slope値の3個のパラメータである。また、CPU207は、パラメータではなく、このパラメータに基づく演算式を補正ゲイン算出回路304に出力し、補正ゲイン算出回路304はこの演算式に基づいて、入力される信号データbから信号データcを演算しても良い。
【0019】
補正ゲイン算出回路304のゲイン特性(若しくは演算式)の、一実施例を図4に示す。図4は、本発明の補正ゲイン算出回路の入出力特性の一実施例を示す図である。横軸は入力される信号データb、縦軸は出力信号データdであり、この特性若しくは演算式を決定するパラメータは、Gain値、Level値、及びSlope値である。
図4において、入力信号データbがLevel値以下のときは、ゲイン係数データd=Gain値となり、入力信号データbがLevel値を超えるときは、Slope値で設定された傾きにより、徐々にゲイン係数データdが下がるようになっている。
【0020】
次に、乗算器305は、横引きノイズ成分データcにゲイン係数データdを乗じ、その積値を横引きノイズ補正信号データeとして算出し、減算器707の一方の入力端に出力する(e=c×d)。
【0021】
一方、ラインメモリ306は、入力される映像信号データを1ライン分遅延することによって、補正信号と映像入力のタイミングを合わせた映像信号のデータfを減算器307の他方の入力端に出力する。
なお、ラインメモリ306は、垂直エンハンサと共用しても良い。
【0022】
減算器307は、1フレーム分遅延された同じラインの画素毎の遅延映像信号データfから、横引きノイズ補正信号データeを減算し、横引きノイズが補正された信号データgoを出力する。
なお、上述のように、横引きノイズ補正信号データeは、1水平ラインについて同一の値である。
【0023】
横引きノイズは、表示画面上では、暗い画面において、視聴者が見て目立つことが多い。そこで、補正ゲイン算出回路304と乗算器305では、図4において、入力信号のレベルが低い(映像が暗い:入力信号データb≦Level値)時には補正を強く行い(出力ゲイン係数データd=Gain値)、入力信号のレベルが高い(映像が明るい:入力信号データb>Level値)時には、補正を徐々に弱くし(出力ゲイン係数データdをGain値からSlope値の傾斜に沿って徐々に下げる)、そして最終的に、入力信号のレベルが所定の値LMを超える(入力信号データb>LM)時には、補正を切る(出力ゲイン係数データd=0)処理を行う。
なお、Slope値の傾斜特性は、画質に合わせた漸減線であれば良く、図4に示すような1つの直線で表わされる特性でも良いし、複数の直線で成りたっても良く、さらに、2次曲線、多項式等でも良くそれらの組み合わせでも良い。
【0024】
ここで、本発明のフレーム巡回型フィルタ302の動作を、図5によって説明する。図5は、図2と図3で説明した横引きノイズ補正回路のフレーム巡回型フィルタ302の一実施例の構成を示すブロック図である。501は減算器、502は乗算器、503は加算器、504は1ライン毎の映像データの平均値が1フレーム分格納されるメモリである。また,aは、図3で説明したように、入力信号(1ライン平均値)データであり、Kはフィルタの重み付け係数、メモリ504の出力データをa’である。
【0025】
このとき、図5のフレーム巡回型フィルタ302においては、式(2)の演算を行う。
b=(a−a’)×K+a’・・・式(2)
【0026】
即ち、まず減算器501の一方の入力端には、1ライン平均値データaが入力される。減算器501の他方の入力端には、前回のフレームの同じラインのデータで演算されたメモリ504の出力信号a’が入力される。
減算器501は、1ライン平均値データaからメモリ504の出力信号a’を減算(p=a−a’)し、その差分結果(データp)を乗算器502の一方の入力端に出力する。乗算器502の他方の入力端には、フィルタの重み付け係数K(0≦K≦1)が入力される。係数Kは、CPU207から任意の値を設定できる。
【0027】
乗算器502は、データpにフィルタの重み付け係数Kを乗算し、積(データq=p×K=(a−a’)×K)を加算器503の他方の入力端に出力する。
加算器503は、データa’とデータqを加算し、その和(データb)をメモリ504に出力すると共に、フレーム巡回型フィルタ302の出力データbとして出力する。
【0028】
メモリ504は、1ライン毎の横引きノイズ成分が除去された信号データbが1フレーム(水平ラインの数)分格納されるメモリである。例えば、フルハイビジョンカメラでは、1080個のデータが格納される。
即ち、メモリ504は、入力されたデータbを、1フレーム分遅延したデータa’として、減算器501及び加算器503に出力する。従って、減算器501には、水平ラインの輝度レベルの平均値aが入力されるが、その入力に同期して、同時に当該入力水平ラインの1フレーム前の同じ水平ラインの、横引きノイズ成分が除去された信号データbが、データa’として入力される。
【0029】
横引きノイズ成分は、フレーム間で相関性の無い信号である。このため、上記の演算により、フレーム巡回型フィルタ302の出力データbは、横引きノイズ成分が除去された信号になっている。
以上のようにして横引きノイズを補正する。
【0030】
図2、図3の実施例によれば、テレビジョンカメラのデジタル信号を映像信号処理する映像信号処理部内において、映像信号データの1ライン分の平均値を算出する手段と、フレーム巡回型フィルタを備え、前記1ライン分の平均値を算出する手段により得た1ライン平均値と、フレーム巡回型フィルタを通過した1ライン平均値との差分を計算し、横引きノイズ成分とする、横引きノイズ補正回路を実現した。
【0031】
上述の図2、図3の実施例では、横引きノイズ補正回路がハードウエア構成であった。しかし、本発明のテレビジョンカメラにおいて、横引きノイズ補正回路を含む映像信号処理回路が、DSP( Digtal Signal Processor )やFPGA( Field Programmable Gate Array )等で構成され、ソフトウエア構成であっても良いことは勿論である。
【0032】
以下、図3の実施例に相当するソフトウエアプログラムによる実行処理動作について、図7を用いて説明する。図7のステップ701〜711は、DSP若しくはFPGAで構成されたテレビジョンの映像信号処理部における、本発明の横引きノイズ補正処理動作の一実施例を説明するためのフローチャートである。
【0033】
ステップ701では、1ライン分の映像信号データgiを画素毎に入力し、1水平ラインの平均値aを算出する。例えば、ステップ701では、画素毎にその輝度値が入力される都度、入力される輝度値を加算する。そして、1水平ライン分の輝度値を加算した後、加算された値を水平画素数で除算し、除算結果(商)をその水平ラインの映像信号の平均値aとする。
次に、ステップ702では、遅延処理を行い、入力される映像信号データを1ライン分遅延する。これによって、補正信号と映像入力のタイミングを合わせた映像信号のデータfが算出される。
【0034】
次に、ステップ703では、算出された1水平ラインの平均値のデータaを使って、CPU207等の外部から入力された係数Kに基づいて、フレーム巡回型フィルタ処理による処理を実行する。そして、1水平ラインの映像データの横引きノイズ成分が除去されたデータbを出力し、ステップ704に処理を移行する。
ステップ704では、ステップ702で算出されたデータaから、ステップ703が出力したデータbを減算し、データcとして出力し、ステップ705に処理を移行する。
ステップ705では、ステップ703から出力されたデータbについて、CPU207等の外部から入力されたパラメータ(例えば、Level値、Gain値、Slope値)に基づいて、ゲイン係数データを算出し、ゲイン補正係数データdとして出力し、ステップ706に処理を移行する。
なお、ステップ704とステップ705の処理は、どちらを先に処理しても良く、同時処理でも良い。
【0035】
ステップ706では、ステップ704から出力された映像データcに、ステップ705が出力したゲイン補正係数データdを乗算し、その積をその水平1ラインの横引きノイズ成分の平均値データeとして出力し、ステップ707に処理を移行する。
ステップ707では、ステップ702で1ライン分遅延処理された画素毎のデータfにデータeを減算し、その差分を映像データgoとして出力する。この出力された映像信号データgoが、画素毎に、横引きノイズ補正処理された1ライン分の映像データである。
【0036】
上記図2、図7の実施例によれば、入力された映像信号の1ライン分の代表値(例えば、平均値)を算出し、フレーム巡回型フィルタにより算出された前回のフレームの同じ1ライン分の差分データを算出し、上記1ライン平均値から上記差分を減算することによって、デジタル信号処理によって横引きノイズを補正可能な、横引きノイズ補正回路及び横引きノイズ補正方法、並びにそれを用いたテレビジョンカメラを実現した。
なお、ステップ702の処理は、減算処理ステップ707の前であれば、どこでも良い。例えば、図8に示すように、ステップ702の処理をステップ701、ステップ703〜ステップ706と並行処理しても良い。
また、図2〜図5、図7、及び図8の実施例によれば、CDS部、VGA部、及びA/D変換部で発生する横引きノイズを、それら後段(ノイズが発生した後の段階)で補正することができ、しかもデジタル信号処理によって補正することができる。
【0037】
本発明の、別の実施例を図6を用いて説明する。図6は、本発明の横引きノイズ補正回路の一実施例の構成を示すブロック図である。600は横引きノイズ補正回路、304’は補正ゲイン算出回路、601は映像クリップ回路、602はライン平均値算出回路、603はメモリ、604は減算器、605は比較器である。小文字のa〜f,gi,go,j,mは出力信号データであり、必要構成部に入力される、係数やパラメータについては角が丸みをおびた枠で囲んだ。
図6の横引きノイズ補正回路600は、図3の横引きノイズ補正回路300に対して、補正ゲイン算出回路304を補正ゲイン算出回路304’に替えた。その他、映像クリップ回路601、ライン平均値算出回路602、メモリ603、減算器604、及び比較器605を追加したものである。
以下、変更した回路について説明し、他は図3と同様なので、説明を省略する。
【0038】
図6において、映像クリップ回路601は、入力される映像信号giが所定の映像レベルCLを超えた場合に、出力信号を所定の映像レベルCLに抑える機能を備えている。所定の映像レベルCLの値は、CPU207から任意の値を設定できるようになっており、本実施例では、まず、映像信号giを映像クリップ回路601に入力し、1画素毎に所定の映像レベルCLを超える信号をクリップし、クリップした信号gi’をライン平均値算出回路301に出力する。
【0039】
通常、減算器303の出力データcには、横引きノイズ成分のみが現れる。このため、図3で説明した横引きノイズ補正回路300に入力される映像信号が急激に変化した場合には、この映像信号の変化分までが減算器303の出力データcの中に現れ、その結果、過剰な補正が行われてしまう場合がある。本実施例では、入力信号の変化量に応じて補正ゲインを制御する回路を追加している。
図6の実施例では、映像クリップ回路601により、この過剰補正を防いでいる。しかし、一方で、映像クリップ回路601の追加により、補正ゲイン算出回路304は所定の映像レベルCLを超えた領域での入力信号の明暗の判定が行えなくなる。このため、図6の実施例の補正ゲイン算出回路304’は、処理系統を別系統にしている。
【0040】
まず、横引きノイズ補正回路600に入力される映像信号は、ラインメモリ306及び映像クリップ回路601に入力されると共に、ライン平均値算出回路602にも入力される。ライン平均値算出回路602は、入力された映像信号の水平1ライン分の映像信号の平均レベルを算出し、1水平ラインの画素毎の輝度値の平均値のデータhとして補正ゲイン算出回路304’、減算器604の一方の入力端、及びメモリ603に出力する。
メモリ603は、前のフレームの1ライン平均値データをライン毎に格納しており、1フレーム前の同じラインの平均値データiを減算器304の他方の入力端に出力する。
減算器304は、1ライン平均値データhと前のフレームの1ライン平均値データiの差分を計算し、信号変化量データjとして比較器305に出力する。
比較器305は、信号変化量データjと、CPU207から設定されるしきい値Thとを比較して、比較結果データmを補正ゲイン算出回路304’に出力する。即ち、信号変化量データjがしきい値Th以下(j≦Th)である場合にはm=1とし、信号変化量データjがしきい値Thを超える(j>Th)の場合にはm=0とする。
【0041】
補正ゲイン算出回路304’は、比較結果データmを入力されるデータhに乗算してから、その積について、図3と同様の処理を行うか、若しくは図3と同様の処理後のデータdにmを乗算して出力する。
即ち、信号変化量データjがしきい値Th以下(j≦Th)である場合には、1ライン平均値データhについて、別途入力されるパラメータ(Level値、Gain値、Slope値)に基づいてゲイン係数データdを算出し、乗算器305に出力する。補正ゲイン算出回路304’に別途入力されるパラメータについては、図3で説明したので省略する。
また補正ゲイン算出回路304’は、比較結果データmが、しきい値Thを超える(j>Th)の場合には、ゲイン係数データdを所定の値にして、乗算器305に出力する。例えば、m=0とすると、乗算器305の出力である横引きノイズ補正信号データeは0(ゼロ)となり、補正が行われない。また例えば、m=0.3とすると、弱い補正ができる。
【0042】
図2、図6の実施例によれば、図3の実施例に加えて、さらに、1ライン平均値計算をする前に、所定の映像レベルを超えたレベルをクリップする回路を備えた横引きノイズ補正回路及びそれを備えテレビジョンカメラを提供し、映像信号レベルが急激に変化し、所定の値を超えた場合にも、過剰な補正が行われないようにした横引きノイズ補正回路及びそれを用いたテレビジョンカメラを提供することができる。
またさらに、上記図2、図6の実施例の横引きノイズ補正回路及びそれを用いたテレビジョンカメラにおいて、前回のフレームの1ライン平均値を格納しておくメモリを備え、このメモリに格納された、1フレーム前の平均値と現在の平均値との差から、映像入力が変化量を判定する回路を備え、映像信号レベルが急激に変化し、所定の値を超えた場合にも、さらに過剰な補正が行われないようにした横引きノイズ補正回路及びそれを用いたテレビジョンカメラを提供することができる。
【0043】
上述の図6の実施例では、横引きノイズ補正回路がハードウエア構成であった。しかし、本発明のテレビジョンカメラにおいて、横引きノイズ補正回路を含む映像信号処理回路が、DSPやFPGA等で構成され、ソフトウエア構成であっても良いことは勿論である。
【0044】
以下、図6の実施例に相当するソフトウエアプログラムによる実行処理動作について、図9を用いて説明する。図9は、DSP若しくはFPGAで構成されたテレビジョンの映像信号処理部における、本発明の横引きノイズ補正処理動作の一実施例を説明するためのフローチャートである。図7若しくは図8と同一の処理には同一のステップ番号を付し、処理動作説明を省略する。
【0045】
図9において、まず、ステップ702、ステップ901、及びステップ902の処理を並行して実行する。
即ち、ステップ702では、図7と同様に、1ライン分の映像信号データgiを画素毎に入力し、遅延処理を行う。これによって、補正信号と映像入力のタイミングを合わせた映像信号のデータfが算出され、ステップ707に処理を移行る。
また、ステップ902では、1ライン分の映像信号データgiを画素毎に入力し、図7のステップ701と同様に、1水平ラインの画素の輝度値の平均値hを算出し、ステップ903に処理を移行する。
【0046】
またさらに、1ライン分の映像信号データgiを画素毎に入力し、入力される映像信号giが所定の映像レベルCLを超えた場合に、出力信号を所定の映像レベルCLにクリップした信号gi’を出力し、ステップ701に処理を移行する。
ステップ701、ステップ703、及びステップ704の処理は、図7で説明した通りである。
【0047】
ステップ903では、ステップ902から出力されたデータhについて、CPU207等の外部から入力されたパラメータ(例えば、Level値、Gain値、Slope値)に基づいて、かつ、入力信号giの変化量に応じて補正ゲインを制御し、ゲイン係数データを算出し、ゲイン補正係数データdとして出力し、ステップ706に処理を移行する。
【0048】
ステップ706では、ステップ704から出力された映像データcに、ステップ903が出力したゲイン補正係数データdを乗算し、その積をその水平1ラインの横引きノイズ成分の平均値データeとして出力し、ステップ707に処理を移行する。
ステップ707では、ステップ702で1ライン分遅延処理された画素毎のデータfにデータeを減算し、その差分を映像データgoとして出力する。この出力された映像信号データgoが、画素毎に、横引きノイズ補正処理された1ライン分の映像データである。
【0049】
次に、図9のステップ903の処理動作についてさらに説明する。図10は、ステップ903の補正ゲインd算出ステップの一実施例を説明するためのフローチャートである。
まず、図9のフローチャートのステップ902の処理に続いて、ステップ1001が実行される。ステップ1001では、ライン平均値データhとデータiの差分jを算出(j=h−i)し、ステップ1002に処理を移行する。
【0050】
ステップ1002では、差分データjと所定のしきい値Thとを比較し、信号変化量データjがしきい値Th以下(j≦Th)である場合には、比較結果データmを“1”とし(m=1)、ステップ1003に処理を移行する。
また、信号変化量データjがしきい値Th以下(j>Th)である場合には、比較結果データmを所定の値とし、ステップ1003に処理を移行する。例えば、所定の値mは“0”とし(m=0)である。
ただし、mは、0≦m≦1の自然数である。
【0051】
ステップ1003では、データhに所定の値mを乗算し、図7若しくは図8で説明したステップ705の処理を実行し、図10の処理を終了し、図9のステップ706の処理に移行する。
【0052】
図9、図10の実施例によれば、図6の実施例のハードウエア構成に対し、ソフトウエアでも同様に、横引ノイズ補正を実行可能な横引ノイズ補正方法及びそれを用いたテレビジョンカメラを実現できる。
また、図2、図6、図9、及び図10の実施例によれば、CDS部、VGA部、及びA/D変換部で発生する横引きノイズを、それら後段(ノイズが発生した後の段階)で補正することができ、しかもデジタル信号処理によって補正することができる。
【0053】
以上、図2〜図10によって本発明の一実施例を示したが、これらはいずれもフレーム毎に処理を行っているが、フィールド毎に処理しても同様の結果が得られる。
また、平均値計算以外の計算処理は、全てブランキング期間内で行っている。
【符号の説明】
【0054】
11:テレビジョンカメラ、 12:レンズ部、 21:テレビジョンカメラ、 101:撮像素子、 102:CDS部、 103:VGA部、 104:A/D変換部、 105:映像信号処理部、 106:映像信号出力部、 107:CPU、 205:映像信号処理部、 207:CPU、 300:横引きノイズ補正回路、 301:ライン平均値算出回路、 302:フレーム巡回型フィルタ、 303:減算器、 304,304’:補正ゲイン算出回路、 305:乗算器、 306:ラインメモリ、 307:減算器、 501:減算器、 502:乗算器、 503:加算器、 504:メモリ、 600:横引きノイズ補正回路、 601:映像クリップ回路、 602:ライン平均値算出回路、 603:メモリ、 604:減算器、 605:比較器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ライン分の映像データの輝度信号レベルの画素毎の平均値データを算出し、
前記算出された平均値データにフレーム巡回型フィルタによって前記1ライン分の映像データの1フレーム前の輝度信号レベルとの差分データから横引ノイズ成分を除去したデータを算出し、
前記平均値データから前記横引ノイズ成分を除去したデータを減算した減算データを算出し、前記算出された減算データを前記1ライン分の映像データの画素毎に減算することによって、横引きノイズ成分を除去することを特徴とする横引きノイズ補正方法。
【請求項2】
請求項1記載の横引きノイズ補正方法において、前記1ライン分の映像データの画素毎の輝度信号レベルが所定のレベルを超えた場合に前記所定のレベルにクリップし、前記クリップ後の映像データについて、前記1ライン分の映像データの画素毎の輝度信号レベルの平均値データaを算出することを特徴とする横引きノイズ補正方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の横引きノイズ補正方法において、前記横引ノイズ成分を除去したデータに基づいて、少なくとも1つのパラメータによる補正係数を算出し、前記算出された補正係数で補正することによって前記減算データから補正減算データを算出し、前記算出された補正減算データを前記1ライン分の映像データの画素毎に減算することによって、横引きノイズ成分を除去することを特徴とする横引きノイズ補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−200236(P2010−200236A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45624(P2009−45624)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】