樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法
【課題】 樹脂中に含まれている他の添加剤と測定対象の添加剤である臭素系難燃剤を常温下で確実に分離して定性・定量分析を非常に精度よく、かつ、効率よく行えるようにする。
【解決手段】 臭素系難燃剤及びこれ以外の添加剤を含有する樹脂をTHF等の有機溶剤で溶解し溶液化した後、その溶液の上澄みを平面板上に滴下して乾燥固化し、その後、乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を試料として赤外分光分析またはラマン分光分析によりスペクトルを測定して樹脂中の臭素系難燃剤を定性・定量分析する。
【解決手段】 臭素系難燃剤及びこれ以外の添加剤を含有する樹脂をTHF等の有機溶剤で溶解し溶液化した後、その溶液の上澄みを平面板上に滴下して乾燥固化し、その後、乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を試料として赤外分光分析またはラマン分光分析によりスペクトルを測定して樹脂中の臭素系難燃剤を定性・定量分析する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家電製品に多用されるプラスチックやゴム等の可燃性樹脂の燃焼速度を減少する、あるいは、燃焼反応を抑制するために当該樹脂中に添加されている臭素系難燃剤の定性・定量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂中には、充填剤(増量剤)、硬化剤、強化剤、色素などの他に臭素系難燃剤などの難燃剤が添加されており、臭素系難燃剤には、複数種のものが存在する。代表的な臭素系難燃剤としては、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ビフェニルエーテル(PBDE)、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)が挙げられる。
【0003】
これら代表的な臭素系難燃剤のうち、PBBやPBDE等は、それらを含有する樹脂の燃焼時の副生成物としてポリ臭化ダイオキシン類を発生したり、魚介類等の生体内に蓄積されたりするといった環境問題を提起する恐れがあることから、RoHS指令(有害物質使用制限指令)の対象となっており、それら臭素系難燃剤を使用(添加)している樹脂製品の品質を管理したり、製品を廃棄したり、製品素材をリサイクルしたりするにあたっては、樹脂中の臭素系難燃剤の種類を知るための定性分析およびそれの含有量を求めるための定量分析が重要不可欠となっている。
【0004】
このような樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法として、従来一般には、図8の原理図に示すように、塊状の試料(臭素系難燃剤含有樹脂)21を高屈折率の結晶(例えばZnSe)22に加圧して密着させた上、結晶22の裏面側から試料21に向けて赤外線IRを照射し、その赤外光を前記結晶22と試料21との接触界面で全反射させることにより、試料21表面から深さ数μmの吸収スペクトルを測定する赤外分光分析(FT−IR)の全反射吸収法(ATR法)、及び、図9の原理図に示すように、塊状の試料(臭素系難燃剤含有樹脂)21を加圧して薄膜状に成形し、その成形された薄膜状試料21Aに向けて赤外線IRを照射して赤外光を透過させることにより、吸収スペクトルを測定する赤外分光分析(FT−IR)の透過法が知られている。
【0005】
また、樹脂中の臭素系難燃剤の定量分析方法として、樹脂中に臭素が含まれているか否かを蛍光X線測定により確認(スクリーニング)し、臭素の存在が確認されたならば、X線回折により臭素系難燃剤を同定し、同定が不能な場合は、樹脂を粉砕してアセトンとクロロホルムの混合溶液を還流溶媒として還流して難燃剤を析出し、該析出物をFT−IRにより同定して樹脂中の臭素系難燃剤の定性分析を行う。しかる後、定性された臭素系難燃剤を添加した樹脂を作成し、この臭素系難燃剤を含有する樹脂を試料としてX線マイクロアナライザやFT−IR、蛍光X線分析、原子吸光分析等の分光分析により検量線を作成し、この検量線を用いて前記臭素系難燃剤の分光分析による定量分析を行う方法も従来より提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−60705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来方法のうち、FT−IRのATR法では、試料21の結晶22への加圧力(密着度合い)のばらつきや試料21の赤外光照射面の凹凸の差異によってスペクトル強度が変動しやすく、また、FT−IRの透過法では、充填剤(増量剤)や硬化剤、強化剤など臭素系難燃剤以外に他の添加剤が含まれている試料21の場合、それを薄膜状に成形することが困難で、適用樹脂に制約があるといった問題がある。加えて、ATR法および透過法の両方法ともに、樹脂中に臭素系難燃剤の他に、ガラス繊維や炭酸カルシウム等といった他の添加剤が含まれている場合、その添加剤のスペクトルが臭素系難燃剤のスペクトルに重なり、分析目的成分である臭素系難燃剤の定量値がばらつき、定量分析精度の低下はさけられない。さらに、臭素系難燃剤が樹脂中に不均一に存在している偏析状態では、精度のよい分析が行えないという問題がある。
【0008】
すなわち、図10は、ポリスチレン(PS)に、RoHS指令の対象の臭素系難燃剤であるPBDEのうち現今において最も多く需要されているDeca(デカ)−BDEを0%,2.5%,5%,10%添加した場合のFT−IRによる赤外吸収スペクトルを示し、Deca−BDEの添加量によって1350cm-1 付近に異なる強度のピークを呈するものであり、このDeca−BDEのピークとポリスチレンのピークとが重ならない波数域で検量線を作成することにより、ポリスチレン中のDeca−BDEの定性・定量分析を行うのである。
【0009】
ところで、ポリスチレンにDeca−BDE(一例として、10%で示す)以外に添加剤として炭酸カルシウム(CaCO3 )が添加された試料を作成し、この試料のスペクトルを上述した従来一般のFT−IRのATR法または透過法で測定したところ、図11に示すように、炭酸カルシウムのピークがDeca−BDEのピークと重なることになり、その結果、炭酸カルシウムがDeca−BDEの定量分析に対する妨害成分として大きな悪影響を及ぼし、精度のよい分析が行えないという問題があった。
【0010】
また、特開平5−60705号公報にて提案されている従来の臭素系難燃剤の定量分析方法では、X線回折による同定、あるいは、樹脂の粉砕、還流溶媒による臭素系難燃剤の析出および該析出物のFT−IRによる同定して樹脂中の臭素系難燃剤を定性分析した後、その定性された臭素系難燃剤を添加した樹脂を作成し、この臭素系難燃剤を含有する樹脂を試料としてX線マイクロアナライザやFT−IR、蛍光X線分析、原子吸光分析等の分光分析により臭素系難燃剤を定量分析するといったように、樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析に煩雑な手数並びに多大な機器および工程を要し、従来一般のFT−IRのATR法や透過法に比べても分析コストが非常に高くつくのみならず、分析効率も非常に悪く、実用的でないという問題があった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、分析目的成分の偏析や臭素系難燃剤以外の添加剤による妨害要因を簡単、確実に取り除いて、樹脂中の臭素系難燃剤を非常に高精度に、しかも、効率よく定性・定量分析することができる樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法は、臭素系難燃剤を含有する樹脂を、有機溶剤を用いて常温下で溶解して溶液化した後、その溶液化した上澄みを平面板上に滴下し乾燥固化させ、しかる後、その乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を試料として赤外分光分析またはラマン分光分析によりスペクトルを測定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有する本発明によれば、有機溶剤を用いて樹脂を溶解し溶液化することで、樹脂に添加されている他の添加剤の沈降により該添加剤と臭素系難燃剤とを分離することができるとともに、樹脂中に不均一に存在している臭素系難燃剤を均一化することができる。また、他の添加剤と分離され、かつ、樹脂中に均一に分散された臭素系難燃剤を含む溶液の上澄みを平面板上に滴下乾燥させることで、試料の加圧圧力のばらつきや試料面の凹凸の差異によるスペクトル強度の変動を低減することができる。したがって、常温下で樹脂を溶解するといった極く簡便かつ経済的な事前処理を行うだけで、目的成分の偏析や他の添加剤による妨害要因、スペクトル強度の変動要因を確実に取り除くことが可能で、樹脂中の臭素系難燃剤の定性および定量分析精度並びに分析効率の著しい向上を達成できるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法において、前記のスペクトル測定対象試料として、請求項2に記載のように、前記平面板上に滴下される上澄みをフィルム状に乾燥固化されたものを用いることにより、試料の厚みに比例してスペクトルのピーク強度が大きくなるために、臭素系難燃剤の添加量の少ない低濃度の樹脂であっても、所定の定性・定量分析を精度よく行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法において、上澄みを滴下乾燥させる平面板としては、ガラス板やステンレス板などを用い、乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂をその平面板から剥がし取ってFT−IRの透過法またはラマン分光分析によりスペクトルを測定してもよいが、特に、請求項3に記載のように、平面板としてアルミ箔、ステンレス板、高屈折率の結晶のいずれかを使用することが望ましい。この場合は、平面板自体が赤外の吸収のないものであるから、その平面板がアルミ箔やステンレス板である場合、その上面の試料に向けて赤外光を直接に照射する、いわゆる、FT−IRの反射法を採用することが可能であり、また、その平面板が高屈折率の結晶である場合、試料面を直接結晶に密接させて測定するATR法を採用することが可能であり、したがって、乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を平面板から剥がし取る手間をなくして、事前処理を含む分析効率全体を一層向上することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法において、請求項4に記載のように、臭素系難燃剤を含有する樹脂および有機溶剤を収容した容器に超音波振動または遠心力を付与して前記樹脂を溶解し溶液化することにより、充填剤の沈降分離および臭素系難燃剤の分散を促進して妨害要因の取り除き時間を短縮化し、分析効率のさらなる向上を図ることができる。
【0017】
なお、本発明方法に用いる有機溶媒としては、樹脂を常温下でも溶解可能であること及び分光分析時の妨害成分にならないことから、テトラヒドロフラン(以下、THFと称する)が最も好ましいが、このTHF以外に、トルエンやクロロホルム、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)など樹脂を常温下で溶解可能で、かつ、上澄み中に残留していたとしても、それが分光分析時の妨害成分とならないものであればどのようなものを用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法の概略フローを示し、臭素系難燃剤およびガラス繊維や炭酸カルシウム等々といった添加剤を含む樹脂を、有機溶剤の一例であるTHFを用いて常温下で溶解して溶液化する工程10と、その溶液化した上澄みを平面板(後述する)上に滴下して乾燥固化する工程20と、その乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を試料として分光分析により吸収スペクトルを測定する工程30と、その測定された吸収スペクトルに基づいて目的成分である臭素系難燃剤を定性・定量分析する工程40とをメインルーチンとする一方、前記溶液化工程10で得られた上澄みを用いて樹脂中の臭素の全含有量を測定する工程50をサブルーチンとし、これらメインルーチンおよびサブルーチンで得られた結果を記録しファイル化60するものであり、以下、前記メインルーチンおよびサブルーチンにおける各工程毎の構成、動作について詳述する。
【0019】
溶液化工程10:
図2に示すように、一定量、例えば0.1g程度に測られた臭素系難燃剤を含有する樹脂1をビーカなどの容器2に収容するとともに、この容器2内に1mL程度のTHF7を注入した上、その容器2を、図3に示すように、超音波発生器3を備えた水槽4中に浸漬させて該容器2に超音波振動を付与することにより、前記樹脂1は常温下で溶解され、約5分程度で溶液化される。このような樹脂1の溶液化に伴い、図4に示すように、樹脂1中に添加されている前記充填剤等の添加剤5は容器2の底部に沈降して臭素系難燃剤から分離されるとともに、臭素系難燃剤は液中に均一に分散される。
なお、本実施の形態では、容器2に超音波振動を付与したが、これに代えて、容器2に遠心力を付与する場合も約5分程度で樹脂を同様に溶液化することが可能である。また、超音波振動や遠心力を付与しなくとも、約10分程度の時間をかけて樹脂を自然に溶液化し、添加剤5と臭素系難燃剤とを分離することが可能である。
【0020】
上澄み乾燥固化工程20:
溶液化した上澄み、すなわち、THF7および臭素系難燃剤が均一な分散状態に存在している溶解樹脂液1Aの一部を、図5に示すように、平面板6上に滴下し常温下で自然乾燥させて固化させる。この乾燥固化により、前記溶解樹脂液1Aは、図6に示すように、膜状の臭素系難燃剤含有樹脂1Bとなる。ここで、膜状に乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂1Bは、その外周部分1bが中央部分1aよりも厚みが大きくなり、その厚みの大きい外周部分1bには一部のTHFが残留しているため、中央部分1aを測定することが好ましい。
【0021】
吸収スペクトル測定工程30:
前記平面板6として、ガラス板など赤外吸収のある材料を用いる場合は、その平面板6上で乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂1Bを剥がし取り、これを対象試料としてFT−IRの透過法もしくはATR法またはラマン分光分析法によりスペクトルを測定する。 また、前記平面板6として、赤外の吸収のないステンレス板やアルミ箔、ZnSeなどの高屈折率の結晶を用いる場合は、その平面板6上の試料(臭素系難燃剤含有樹脂1B)の中央部分1aに向けて赤外光を照射してFT−IRの反射法もしくはATR法またはラマン分光分析法によりスペクトルを測定する。ここで、FT−IRの反射法、透過法、ATR法およびラマン分光分析法は、従来より周知であるため、それらの具体的な構成、動作についての詳細な説明は省略する。
なお、FT−IRの透過法の場合は、測定対象試料の厚みに比例して吸収スペクトルのピーク強度が大きくなるので、均一な厚さのフィルム状に成形された臭素系難燃剤含有樹脂1Bを用いることが好ましく、また、臭素系難燃剤の含有量が少ない樹脂の場合は、ラマン分光分析を用いることが好ましい。
【0022】
臭素系難燃剤の定性・定量分析工程40:
上記のように測定された吸収スペクトルに基づいて、そのピーク位置から臭素系難燃剤の種類を同定し定性分析するとともに、各臭素系難燃剤のピーク強度からそれら臭素系難燃剤の含有量を求める定量分析を行う。
【0023】
臭素の全含有量測定工程50:
前記溶液化工程10で得られた上澄みを誘導結合高周波プラズマ(ICP)分光分析もしくは蛍光X線分析する、または、前記上澄みを滴下・乾燥した後に蛍光X線分析して、樹脂中の臭素の全量を測定する。
【0024】
以上のとおり、本発明方法では、THFなどの有機溶剤を用いて樹脂を常温下で溶解し、かつ、その上澄みを乾燥固化するといった極く簡便な事前処理を行うだけでよく、特開平5−60705号公報にて提案されている従来方法のような煩雑な手数並びに多大な機器および工程が不要で、分析コストの低減および分析効率の著しい向上を達成することができる上に、樹脂に含まれている他の添加剤および臭素系難燃剤の偏析による妨害要因を取り除き、かつ、測定対象試料の加圧圧力のばらつきや試料面の凹凸の差異によるスペクトル強度の変動要因を低減することが可能で、分光分析による樹脂中の臭素系難燃剤の定性分析および定量分析精度の著しい向上を達成することができる。
【0025】
因みに、図7は、Deca−BDE(10%)および添加剤として炭酸カルシウムが添加されたポリスチレンをTHFにより溶解し溶液化し、その溶液の上澄みを乾燥固化したフィルム状の試料をFT−IRの透過法で測定した場合の吸収スペクトルを示す。この場合は、溶液化に伴い炭酸カルシウムが沈降しているために、その炭酸カルシウムのピークがDeca−BDEのピークと重なることがなくなり、スペクトルにはポリスチレンとDeca−BDEのピークのみが現れており、したがって、炭酸カルシウムの妨害による定量値のばらつきがなく、精度のよい定量分析を行えることが分かる。
【0026】
また、上記実施の形態で述べたように、溶液化工程10で得られた上澄みを用いて樹脂中の臭素の全含有量を測定する工程50をサブルーチンとして追加することによって、分析対象の樹脂中の全臭素量も容易かつ簡便に測定することが可能で、樹脂製品の品質管理あるいは製品廃棄処理や製品素材のリサイクル処理をより適切有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法の概略フローを示す図である。
【図2】溶液化工程の第一段階を示す概略縦断面図である。
【図3】溶液化工程の第二段階を示す概略縦断面図である。
【図4】溶液化工程の完了状態を示す概略縦断面図である。
【図5】上澄み乾燥固化工程を示す要部の拡大縦断面図である。
【図6】上澄み乾燥固化工程の完了状態を示す要部の拡大縦断面図である。
【図7】Deca−BDEおよび炭酸カルシウムが添加されたポリスチレンをTHFで溶解し溶液化し、その上澄みを乾燥固化したフィルム状試料の吸収スペクトルを示す図である。
【図8】従来のFT−IRのATR法を説明する概略原理図である。
【図9】従来のFT−IRの透過法を説明する概略原理図である。
【図10】ポリスチレンにDeca−BDEを0%,2.5%,5%,10%添加した場合のFT−IRによる吸収スペクトルを示す図である。
【図11】従来のFT−IRのATR法および透過法による吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 樹脂
1B 臭素系難燃剤含有樹脂(測定対象試料)
2 容器
3 超音波発生器
5 充填剤
6 平面板
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家電製品に多用されるプラスチックやゴム等の可燃性樹脂の燃焼速度を減少する、あるいは、燃焼反応を抑制するために当該樹脂中に添加されている臭素系難燃剤の定性・定量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂中には、充填剤(増量剤)、硬化剤、強化剤、色素などの他に臭素系難燃剤などの難燃剤が添加されており、臭素系難燃剤には、複数種のものが存在する。代表的な臭素系難燃剤としては、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ビフェニルエーテル(PBDE)、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)が挙げられる。
【0003】
これら代表的な臭素系難燃剤のうち、PBBやPBDE等は、それらを含有する樹脂の燃焼時の副生成物としてポリ臭化ダイオキシン類を発生したり、魚介類等の生体内に蓄積されたりするといった環境問題を提起する恐れがあることから、RoHS指令(有害物質使用制限指令)の対象となっており、それら臭素系難燃剤を使用(添加)している樹脂製品の品質を管理したり、製品を廃棄したり、製品素材をリサイクルしたりするにあたっては、樹脂中の臭素系難燃剤の種類を知るための定性分析およびそれの含有量を求めるための定量分析が重要不可欠となっている。
【0004】
このような樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法として、従来一般には、図8の原理図に示すように、塊状の試料(臭素系難燃剤含有樹脂)21を高屈折率の結晶(例えばZnSe)22に加圧して密着させた上、結晶22の裏面側から試料21に向けて赤外線IRを照射し、その赤外光を前記結晶22と試料21との接触界面で全反射させることにより、試料21表面から深さ数μmの吸収スペクトルを測定する赤外分光分析(FT−IR)の全反射吸収法(ATR法)、及び、図9の原理図に示すように、塊状の試料(臭素系難燃剤含有樹脂)21を加圧して薄膜状に成形し、その成形された薄膜状試料21Aに向けて赤外線IRを照射して赤外光を透過させることにより、吸収スペクトルを測定する赤外分光分析(FT−IR)の透過法が知られている。
【0005】
また、樹脂中の臭素系難燃剤の定量分析方法として、樹脂中に臭素が含まれているか否かを蛍光X線測定により確認(スクリーニング)し、臭素の存在が確認されたならば、X線回折により臭素系難燃剤を同定し、同定が不能な場合は、樹脂を粉砕してアセトンとクロロホルムの混合溶液を還流溶媒として還流して難燃剤を析出し、該析出物をFT−IRにより同定して樹脂中の臭素系難燃剤の定性分析を行う。しかる後、定性された臭素系難燃剤を添加した樹脂を作成し、この臭素系難燃剤を含有する樹脂を試料としてX線マイクロアナライザやFT−IR、蛍光X線分析、原子吸光分析等の分光分析により検量線を作成し、この検量線を用いて前記臭素系難燃剤の分光分析による定量分析を行う方法も従来より提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−60705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来方法のうち、FT−IRのATR法では、試料21の結晶22への加圧力(密着度合い)のばらつきや試料21の赤外光照射面の凹凸の差異によってスペクトル強度が変動しやすく、また、FT−IRの透過法では、充填剤(増量剤)や硬化剤、強化剤など臭素系難燃剤以外に他の添加剤が含まれている試料21の場合、それを薄膜状に成形することが困難で、適用樹脂に制約があるといった問題がある。加えて、ATR法および透過法の両方法ともに、樹脂中に臭素系難燃剤の他に、ガラス繊維や炭酸カルシウム等といった他の添加剤が含まれている場合、その添加剤のスペクトルが臭素系難燃剤のスペクトルに重なり、分析目的成分である臭素系難燃剤の定量値がばらつき、定量分析精度の低下はさけられない。さらに、臭素系難燃剤が樹脂中に不均一に存在している偏析状態では、精度のよい分析が行えないという問題がある。
【0008】
すなわち、図10は、ポリスチレン(PS)に、RoHS指令の対象の臭素系難燃剤であるPBDEのうち現今において最も多く需要されているDeca(デカ)−BDEを0%,2.5%,5%,10%添加した場合のFT−IRによる赤外吸収スペクトルを示し、Deca−BDEの添加量によって1350cm-1 付近に異なる強度のピークを呈するものであり、このDeca−BDEのピークとポリスチレンのピークとが重ならない波数域で検量線を作成することにより、ポリスチレン中のDeca−BDEの定性・定量分析を行うのである。
【0009】
ところで、ポリスチレンにDeca−BDE(一例として、10%で示す)以外に添加剤として炭酸カルシウム(CaCO3 )が添加された試料を作成し、この試料のスペクトルを上述した従来一般のFT−IRのATR法または透過法で測定したところ、図11に示すように、炭酸カルシウムのピークがDeca−BDEのピークと重なることになり、その結果、炭酸カルシウムがDeca−BDEの定量分析に対する妨害成分として大きな悪影響を及ぼし、精度のよい分析が行えないという問題があった。
【0010】
また、特開平5−60705号公報にて提案されている従来の臭素系難燃剤の定量分析方法では、X線回折による同定、あるいは、樹脂の粉砕、還流溶媒による臭素系難燃剤の析出および該析出物のFT−IRによる同定して樹脂中の臭素系難燃剤を定性分析した後、その定性された臭素系難燃剤を添加した樹脂を作成し、この臭素系難燃剤を含有する樹脂を試料としてX線マイクロアナライザやFT−IR、蛍光X線分析、原子吸光分析等の分光分析により臭素系難燃剤を定量分析するといったように、樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析に煩雑な手数並びに多大な機器および工程を要し、従来一般のFT−IRのATR法や透過法に比べても分析コストが非常に高くつくのみならず、分析効率も非常に悪く、実用的でないという問題があった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、分析目的成分の偏析や臭素系難燃剤以外の添加剤による妨害要因を簡単、確実に取り除いて、樹脂中の臭素系難燃剤を非常に高精度に、しかも、効率よく定性・定量分析することができる樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法は、臭素系難燃剤を含有する樹脂を、有機溶剤を用いて常温下で溶解して溶液化した後、その溶液化した上澄みを平面板上に滴下し乾燥固化させ、しかる後、その乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を試料として赤外分光分析またはラマン分光分析によりスペクトルを測定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有する本発明によれば、有機溶剤を用いて樹脂を溶解し溶液化することで、樹脂に添加されている他の添加剤の沈降により該添加剤と臭素系難燃剤とを分離することができるとともに、樹脂中に不均一に存在している臭素系難燃剤を均一化することができる。また、他の添加剤と分離され、かつ、樹脂中に均一に分散された臭素系難燃剤を含む溶液の上澄みを平面板上に滴下乾燥させることで、試料の加圧圧力のばらつきや試料面の凹凸の差異によるスペクトル強度の変動を低減することができる。したがって、常温下で樹脂を溶解するといった極く簡便かつ経済的な事前処理を行うだけで、目的成分の偏析や他の添加剤による妨害要因、スペクトル強度の変動要因を確実に取り除くことが可能で、樹脂中の臭素系難燃剤の定性および定量分析精度並びに分析効率の著しい向上を達成できるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法において、前記のスペクトル測定対象試料として、請求項2に記載のように、前記平面板上に滴下される上澄みをフィルム状に乾燥固化されたものを用いることにより、試料の厚みに比例してスペクトルのピーク強度が大きくなるために、臭素系難燃剤の添加量の少ない低濃度の樹脂であっても、所定の定性・定量分析を精度よく行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法において、上澄みを滴下乾燥させる平面板としては、ガラス板やステンレス板などを用い、乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂をその平面板から剥がし取ってFT−IRの透過法またはラマン分光分析によりスペクトルを測定してもよいが、特に、請求項3に記載のように、平面板としてアルミ箔、ステンレス板、高屈折率の結晶のいずれかを使用することが望ましい。この場合は、平面板自体が赤外の吸収のないものであるから、その平面板がアルミ箔やステンレス板である場合、その上面の試料に向けて赤外光を直接に照射する、いわゆる、FT−IRの反射法を採用することが可能であり、また、その平面板が高屈折率の結晶である場合、試料面を直接結晶に密接させて測定するATR法を採用することが可能であり、したがって、乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を平面板から剥がし取る手間をなくして、事前処理を含む分析効率全体を一層向上することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法において、請求項4に記載のように、臭素系難燃剤を含有する樹脂および有機溶剤を収容した容器に超音波振動または遠心力を付与して前記樹脂を溶解し溶液化することにより、充填剤の沈降分離および臭素系難燃剤の分散を促進して妨害要因の取り除き時間を短縮化し、分析効率のさらなる向上を図ることができる。
【0017】
なお、本発明方法に用いる有機溶媒としては、樹脂を常温下でも溶解可能であること及び分光分析時の妨害成分にならないことから、テトラヒドロフラン(以下、THFと称する)が最も好ましいが、このTHF以外に、トルエンやクロロホルム、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)など樹脂を常温下で溶解可能で、かつ、上澄み中に残留していたとしても、それが分光分析時の妨害成分とならないものであればどのようなものを用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法の概略フローを示し、臭素系難燃剤およびガラス繊維や炭酸カルシウム等々といった添加剤を含む樹脂を、有機溶剤の一例であるTHFを用いて常温下で溶解して溶液化する工程10と、その溶液化した上澄みを平面板(後述する)上に滴下して乾燥固化する工程20と、その乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を試料として分光分析により吸収スペクトルを測定する工程30と、その測定された吸収スペクトルに基づいて目的成分である臭素系難燃剤を定性・定量分析する工程40とをメインルーチンとする一方、前記溶液化工程10で得られた上澄みを用いて樹脂中の臭素の全含有量を測定する工程50をサブルーチンとし、これらメインルーチンおよびサブルーチンで得られた結果を記録しファイル化60するものであり、以下、前記メインルーチンおよびサブルーチンにおける各工程毎の構成、動作について詳述する。
【0019】
溶液化工程10:
図2に示すように、一定量、例えば0.1g程度に測られた臭素系難燃剤を含有する樹脂1をビーカなどの容器2に収容するとともに、この容器2内に1mL程度のTHF7を注入した上、その容器2を、図3に示すように、超音波発生器3を備えた水槽4中に浸漬させて該容器2に超音波振動を付与することにより、前記樹脂1は常温下で溶解され、約5分程度で溶液化される。このような樹脂1の溶液化に伴い、図4に示すように、樹脂1中に添加されている前記充填剤等の添加剤5は容器2の底部に沈降して臭素系難燃剤から分離されるとともに、臭素系難燃剤は液中に均一に分散される。
なお、本実施の形態では、容器2に超音波振動を付与したが、これに代えて、容器2に遠心力を付与する場合も約5分程度で樹脂を同様に溶液化することが可能である。また、超音波振動や遠心力を付与しなくとも、約10分程度の時間をかけて樹脂を自然に溶液化し、添加剤5と臭素系難燃剤とを分離することが可能である。
【0020】
上澄み乾燥固化工程20:
溶液化した上澄み、すなわち、THF7および臭素系難燃剤が均一な分散状態に存在している溶解樹脂液1Aの一部を、図5に示すように、平面板6上に滴下し常温下で自然乾燥させて固化させる。この乾燥固化により、前記溶解樹脂液1Aは、図6に示すように、膜状の臭素系難燃剤含有樹脂1Bとなる。ここで、膜状に乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂1Bは、その外周部分1bが中央部分1aよりも厚みが大きくなり、その厚みの大きい外周部分1bには一部のTHFが残留しているため、中央部分1aを測定することが好ましい。
【0021】
吸収スペクトル測定工程30:
前記平面板6として、ガラス板など赤外吸収のある材料を用いる場合は、その平面板6上で乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂1Bを剥がし取り、これを対象試料としてFT−IRの透過法もしくはATR法またはラマン分光分析法によりスペクトルを測定する。 また、前記平面板6として、赤外の吸収のないステンレス板やアルミ箔、ZnSeなどの高屈折率の結晶を用いる場合は、その平面板6上の試料(臭素系難燃剤含有樹脂1B)の中央部分1aに向けて赤外光を照射してFT−IRの反射法もしくはATR法またはラマン分光分析法によりスペクトルを測定する。ここで、FT−IRの反射法、透過法、ATR法およびラマン分光分析法は、従来より周知であるため、それらの具体的な構成、動作についての詳細な説明は省略する。
なお、FT−IRの透過法の場合は、測定対象試料の厚みに比例して吸収スペクトルのピーク強度が大きくなるので、均一な厚さのフィルム状に成形された臭素系難燃剤含有樹脂1Bを用いることが好ましく、また、臭素系難燃剤の含有量が少ない樹脂の場合は、ラマン分光分析を用いることが好ましい。
【0022】
臭素系難燃剤の定性・定量分析工程40:
上記のように測定された吸収スペクトルに基づいて、そのピーク位置から臭素系難燃剤の種類を同定し定性分析するとともに、各臭素系難燃剤のピーク強度からそれら臭素系難燃剤の含有量を求める定量分析を行う。
【0023】
臭素の全含有量測定工程50:
前記溶液化工程10で得られた上澄みを誘導結合高周波プラズマ(ICP)分光分析もしくは蛍光X線分析する、または、前記上澄みを滴下・乾燥した後に蛍光X線分析して、樹脂中の臭素の全量を測定する。
【0024】
以上のとおり、本発明方法では、THFなどの有機溶剤を用いて樹脂を常温下で溶解し、かつ、その上澄みを乾燥固化するといった極く簡便な事前処理を行うだけでよく、特開平5−60705号公報にて提案されている従来方法のような煩雑な手数並びに多大な機器および工程が不要で、分析コストの低減および分析効率の著しい向上を達成することができる上に、樹脂に含まれている他の添加剤および臭素系難燃剤の偏析による妨害要因を取り除き、かつ、測定対象試料の加圧圧力のばらつきや試料面の凹凸の差異によるスペクトル強度の変動要因を低減することが可能で、分光分析による樹脂中の臭素系難燃剤の定性分析および定量分析精度の著しい向上を達成することができる。
【0025】
因みに、図7は、Deca−BDE(10%)および添加剤として炭酸カルシウムが添加されたポリスチレンをTHFにより溶解し溶液化し、その溶液の上澄みを乾燥固化したフィルム状の試料をFT−IRの透過法で測定した場合の吸収スペクトルを示す。この場合は、溶液化に伴い炭酸カルシウムが沈降しているために、その炭酸カルシウムのピークがDeca−BDEのピークと重なることがなくなり、スペクトルにはポリスチレンとDeca−BDEのピークのみが現れており、したがって、炭酸カルシウムの妨害による定量値のばらつきがなく、精度のよい定量分析を行えることが分かる。
【0026】
また、上記実施の形態で述べたように、溶液化工程10で得られた上澄みを用いて樹脂中の臭素の全含有量を測定する工程50をサブルーチンとして追加することによって、分析対象の樹脂中の全臭素量も容易かつ簡便に測定することが可能で、樹脂製品の品質管理あるいは製品廃棄処理や製品素材のリサイクル処理をより適切有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法の概略フローを示す図である。
【図2】溶液化工程の第一段階を示す概略縦断面図である。
【図3】溶液化工程の第二段階を示す概略縦断面図である。
【図4】溶液化工程の完了状態を示す概略縦断面図である。
【図5】上澄み乾燥固化工程を示す要部の拡大縦断面図である。
【図6】上澄み乾燥固化工程の完了状態を示す要部の拡大縦断面図である。
【図7】Deca−BDEおよび炭酸カルシウムが添加されたポリスチレンをTHFで溶解し溶液化し、その上澄みを乾燥固化したフィルム状試料の吸収スペクトルを示す図である。
【図8】従来のFT−IRのATR法を説明する概略原理図である。
【図9】従来のFT−IRの透過法を説明する概略原理図である。
【図10】ポリスチレンにDeca−BDEを0%,2.5%,5%,10%添加した場合のFT−IRによる吸収スペクトルを示す図である。
【図11】従来のFT−IRのATR法および透過法による吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 樹脂
1B 臭素系難燃剤含有樹脂(測定対象試料)
2 容器
3 超音波発生器
5 充填剤
6 平面板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭素系難燃剤を含有する樹脂を、有機溶剤を用いて常温下で溶解して溶液化した後、その溶液化した上澄みを平面板上に滴下し乾燥固化させ、しかる後、その乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を試料として赤外分光分析またはラマン分光分析によりスペクトルを測定することを特徴とする樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法。
【請求項2】
前記のスペクトル測定対象試料が、前記平面板上に滴下される上澄みをフィルム状に乾燥固化されたものである請求項1に記載の樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法。
【請求項3】
前記平面板として、アルミ箔、ステンレス板、高屈折率の結晶のいずれかを使用する請求項1または2に記載の樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法。
【請求項4】
前記臭素系難燃剤を含有する樹脂および有機溶剤を収容した容器に超音波振動または遠心力を付与して前記樹脂を溶解し溶液化する請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法。
【請求項1】
臭素系難燃剤を含有する樹脂を、有機溶剤を用いて常温下で溶解して溶液化した後、その溶液化した上澄みを平面板上に滴下し乾燥固化させ、しかる後、その乾燥固化された臭素系難燃剤含有樹脂を試料として赤外分光分析またはラマン分光分析によりスペクトルを測定することを特徴とする樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法。
【請求項2】
前記のスペクトル測定対象試料が、前記平面板上に滴下される上澄みをフィルム状に乾燥固化されたものである請求項1に記載の樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法。
【請求項3】
前記平面板として、アルミ箔、ステンレス板、高屈折率の結晶のいずれかを使用する請求項1または2に記載の樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法。
【請求項4】
前記臭素系難燃剤を含有する樹脂および有機溶剤を収容した容器に超音波振動または遠心力を付与して前記樹脂を溶解し溶液化する請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂中の臭素系難燃剤の定性・定量分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−322817(P2006−322817A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146547(P2005−146547)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
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