説明

樹脂基板表面処理方法

【課題】 樹脂基板と導体層の界面の平坦性を維持しつつ、両層の密着性を向上させ、ならびに光照射中の光触媒微粒子の凝集沈殿を抑制できる樹脂基板の表面処理方法を提供する。
【解決手段】ゲル化された水、アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択される媒体、該ゲル化された媒体中に分散された光触媒微粒子を含む光触媒シートを、樹脂基板と接触させ、紫外光又は可視光を照射することにより、樹脂基板表面を改質する。その後、該光触媒シートを洗浄除去し、表面改質樹脂基板を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基板表面の改質方法、特に、プリント配線基板に使用する樹脂基板表面の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を搭載するためのプリント配線基板においては、樹脂層と導体層を交互に積層することで高密度化、高集積化を図っている。樹脂層と導体層は接着剤で貼り付けるか、もしくは導体層に数ミクロンレベルの凹凸を形成し(粗化)、直接樹脂基板と接着する方法が主として採用されている。後者は樹脂層と導体層の間に物理的な投錨効果を狙ったもので、これまで基板積層手法として広く採用されてきた。
【0003】
今後、デバイスの高速化に伴い、1GHz以上の高周波信号を扱うケースが多くなることが予測される。扱う信号の周波数が高くなると、電気信号は導体層全体を流れるのではなく、導体表面の数ミクロンあるいはサブミクロン領域のみしか流れないようになる。これは表皮効果と呼ばれる。導体層表面に数ミクロン程度の凹凸があると、実質的な伝送路長が増え、信号の遅延および信号を損失する可能性が高くなるといった問題がある。従って、高周波信号を扱うデバイスでは、樹脂層と導体層の界面はできるだけ平坦にする必要がある。その反面、導体表面の凹凸は樹脂層と導体層を密着させるという重要な役割も担っているため、単に界面を平坦にすると、密着性信頼性が低下するという問題が新たに生じる。従って、樹脂層と導体層界面の平坦性を可能な限り維持しながら、密着性を確保するという技術が必要とされている。
【0004】
このような背景から、近年、光触媒技術を用いた表面親水化処理が盛んに研究されている。例えば、特許文献1によると、光触媒機能を有する微粒子を、チタン化合物、シラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー等のバインダー成分により無機材料又は樹脂から形成される基材に固定してなるシートが使用されている。この方法では、該シートと樹脂基板表面との間に、親水化するのに十分な量の水が存在するように、該シートを樹脂基板表面に対向して貼り合わせ、上記シートの表面又は裏面から放射線を照射することにより、樹脂基板表面を親水化する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、この特許文献1の方法では上記シートと樹脂基板との間に充填された水によりわずかながら間隙が生じるため、光触媒効果が低下するという問題がある。また、微粒子を固定したシートによって紫外光などが遮られ、光触媒効果が低下することも懸念される。
【0006】
また、光触媒効果を有する微粒子を純水などの媒質中に分散させ、その媒質に表面処理を行う樹脂基板を浸漬し、紫外光等を照射する方法も提案されている(例えば、非特許文献1)。この方法によれば、樹脂基板を直接媒質に浸漬するため、樹脂基板表面の改質効果は高くなる。
【0007】
しかしながら、非特許文献1の様な方法では、例えば、酸化チタンなどの光触媒微粒子は、紫外光の照射によって凝集沈殿し、光触媒効果が大幅に低下するという問題がある。また、この方法では、水性媒質中に浸漬することを要するため、取り扱い上不便である。さらに、微粒子濃度が同じであっても、そのサイズが小さいほど樹脂基板表面における近接確率が高くなる反面、紫外線照射による凝集沈殿も顕著になるという問題がある。
【特許文献1】特開2005−15599号公報
【非特許文献1】表面技術協会第111回講演大会要旨集(2005年3月7日発行)第106頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、樹脂基板表面の改質方法であって、樹脂基板と導体層との界面の平坦性を向上すると共に、両層の密着信頼性を向上し、しかも、光照射中の光触媒微粒子の凝集沈殿を抑制できる方法を提供することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、次の知見を得た。
1)ゲル化した水、アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の媒体中に、光触媒微粒子を分散させて光触媒シートとすることにより、紫外光等の照射中の微粒子の凝集沈殿を抑制できる。
2)該光触媒シートを樹脂基板に接触させて紫外光等を照射することにより、光触媒効果によって、該光触媒シート中の水分子及び/又はアルコール分子が分解されて活性酸素が発生する。おそらくは、この活性酸素が樹脂基板表面を攻撃することによってナノレベルの凹凸が樹脂基板表面に形成されると推測される。
3)光触媒による水分子及び/又はアルコール分子の分解により生成した水酸基が、樹脂基板表面上に付与され、親水性が付与される。
4)上記1)〜3)により、樹脂層の表面の平坦性が確保できると共に、樹脂基板表面の化学的修飾及び粗化により樹脂基板上に形成される導体層との密着性が向上する。
5)また、2)において光照射の際に、レーザ光を使用すれば、樹脂基板表面にサブミクロンの凹凸が形成され、導体層との密着性をさらに高めることができる。
【0010】
本発明は、これらの知見を基礎としてさらに研究を重ねた結果、完成されたものであり、以下の樹脂基板表面処理方法、光触媒シート及び表面改質樹脂基板等を提供するものである。
項1.樹脂基板表面処理方法であって、
(1)ゲル化された水、アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択される媒体、及び、該ゲル化された媒体中に分散された光触媒微粒子を含む光触媒シートと樹脂基板とを接触させる工程;
(2)該樹脂基板表面と光触媒シートとの界面に、紫外光又は可視光を照射する工程;及び
(3)該光触媒シートを除去する工程
を含むことを特徴とする方法。
項2.紫外光又は可視光の波長が100nm〜800nmである、項1に記載の方法。
項3.紫外光又は可視光が、一般光である、項1又は2に記載の方法。
項4.紫外光又は可視光が、レーザ光である、項1又は2に記載の方法。
項5.レーザ光が、YAGレーザの第3高調波又は第4高調波である、項4に記載の方法。
項6.レーザ光が、エキシマレーザであることを特徴とする、項4に記載の方法。
項7.光触媒微粒子が、酸化チタン、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化亜鉛及び酸化タングステンからなる群から選択される少なくともいずれか1種である、項1に記載の方法。
項8.樹脂基板の導体回路を形成する箇所のみにレーザ光を照射することにより、回路パターンに対応して樹脂基板表面の改質を行う項4〜7のいずれかに記載の方法。
項9.ゲル化された水、アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択される媒体、及び、該ゲル化された媒体中に分散された光触媒微粒子を含むことを特徴とする、光触媒シート。
項10.光触媒微粒子が、酸化チタン、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化亜鉛及び酸化タングステンからなる群から選択される少なくともいずれか1種である、項9に記載の光触媒シート。
項11.項1〜8のいずれかに記載の方法にて作製された、表面改質樹脂基板。
項12.項11に記載の表面改質樹脂基板及びその上に形成された導体金属薄膜を備えていることを特徴とする金属張積層体。
【0011】
1.樹脂基板表面処理方法
本発明の表面処理方法は、前記のように、次の工程を備えている:
(1)ゲル化された水、アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択される媒体、及び、該ゲル化した媒体中に分散された光触媒微粒子を含む光触媒シートと樹脂基板とを接触させる第1工程;
(2)該樹脂基板表面と光触媒シートとの界面に、紫外光又は可視光を照射する第2工程;及び
(3)該光触媒シートを除去する第3工程。
【0012】
これらの工程について、説明する。
【0013】
(1)第1工程
媒体
本発明において光触媒微粒子を分散させる媒体としては、水又はアルコール、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
水としては、特に限定されず、イオン交換水、超純水、蒸留水、水道水等を用いることができる。また、アルコールとしては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のC〜C8(特にC〜C)の従来公知のアルコールを使用することができる。これらのアルコールの2種以上を混合して用いてもよい。水及びアルコールを混合して使用する場合、アルコールの濃度は、特に限定されず、広い範囲から選択されるが、水とアルコールとが均質な混合物を形成する混合比とするのが好ましい。必要であれば、媒体は、塩酸、硝酸等の添加剤を微量含んでいてもよい。
【0015】
光触媒微粒子
本発明において使用される光触媒微粒子は、光触媒機能を有する公知の金属化合物、金属酸化物であり、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化タングステン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、酸化チタン(特に、アナターゼ型)が好ましい。
【0016】
光触媒微粒子の平均粒子径は、広い範囲から選択され得るが、通常、3nm〜100μm程度、好ましくは5nm〜10μm程度、より好ましくは7nm〜2μm程度である。なお、本発明において、光微粒子の平均粒子径は、X線散乱法によって測定されたものである。
【0017】
上記光触媒微粒子は、公知であり、公知の方法により容易に製造できる。また、各種の光触媒微粒子が市販されており、入手容易である。また、酸化チタン等の光触媒微粒子を、イオン交換水、超純水、蒸留水等の分散媒に均一に分散させたスラリー(コロイド又はゾル)も使用できる。このようなスラリーも、公知であり、商業的にも入手可能であって、例えば、酸化チタンスラリー(石原産業株式会社製:STS−21(平均粒子径20nm);STS−01(平均粒子径7nm);STS−100(平均粒子径5nm))等が挙げられる(平均粒子径は、X線散乱法によって測定された値である)。これらスラリーは、水、アルコール及びこれらの混合物から選ばれる媒体に容易に均一分散させることができるので、有利である。
【0018】
ゲル化剤
ゲル化剤としては、上記媒体をゲル化できるものであれば特に限定されず、例えば、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ペクチン等の従来公知のものを使用することができる。
【0019】
光触媒シート
本発明の光触媒シートは、上記媒体および光触媒微粒子を含む系を、ゲル化剤でゲル化させてなるシートである。かかる光触媒シートは、種々の方法により製造でき、各成分の添加順序はどのような順序であってもよい。典型的には、本発明の光触媒シートは、媒体中に光触媒微粒子を均一分散させ、これにゲル化剤を添加して溶解させ、得られる光触媒微粒子分散液を冷却し、ゲル化させることにより製造するのが有利である。以下、この方法について、詳述する。
【0020】
まず、光触媒微粒子を前記媒体中に分散させる。この媒体中に分散される光触媒微粒子の濃度は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、0.001〜100g/l程度、好ましくは0.01〜10g/l程度、より好ましくは0.05〜1.0g/l程度であることが推奨される。光触媒微粒子の濃度が、0.001g/l程度以上であれば、光触媒効果を発揮するのに充分な量の光触媒微粒子が、樹脂基板と近接することが可能である。また、光触媒微粒子の濃度が、100g/l程度以下であれば、紫外光等の光照射の際、入射光が樹脂基板表面まで充分に到達することができ、光触媒微粒子の光触媒作用を発揮させることができる。
【0021】
次いで、前記媒体中に光触媒微粒子を分散させた分散液に、ゲル化剤を添加し、好ましくは加熱して、ゲル化剤を均一に溶解させる。ゲル化剤の濃度は、所望のゲル化した光触媒シートを得られる限り特に限定されず、広い範囲から選択すればよいが、例えば、ゲル化剤として寒天を用いる場合、10〜100g/l程度、好ましくは12〜75g/l程度、より好ましくは14〜50g/l程度である。ゲル化剤の濃度は、光触媒シートの厚みを考慮して、樹脂基板表面処理の間シート状の形状を維持できる程度の固さになるように、調節することが好ましい。また、加熱する場合、加熱温度は、ゲル化剤が溶解するに足る温度であれば、特に限定されないが、例えば、ゲル化剤として寒天を用いる場合、60〜100℃程度、特に80〜100℃程度が好ましい。
【0022】
ゲル化剤を溶解させた光触媒微粒子分散液を、例えば、底の平坦なバット等に移し、冷却して、固化させることによって本発明の光触媒シートを得る。
【0023】
従って、本発明の光触媒シートは、前記媒体中に、光触媒微粒子を、0.001〜100g/l程度、好ましくは0.01〜10g/l程度、より好ましくは0.05〜1.0g/l程度含有し、ゲル化剤を10〜100g/l程度、好ましくは12〜75g/l程度、より好ましくは14〜50g/l程度含有しており、該媒体は該ゲル化剤によりゲル化している。
【0024】
該ゲル化剤を溶解させた光触媒微粒子分散液のバット等における深さ、つまり光触媒シート厚さは、特に限定されず、広い範囲から選択されるが、通常、0.01〜10mm程度、好ましくは0.1〜5.0mm程度、より好ましくは0.2〜3.0mm程度である。光触媒シートの厚さが上記範囲内であれば、上記バット等から取り出す際等にシートの取り扱いが容易であり、光照射の際に入射光が減衰することもほとんどない。
【0025】
こうして得られた光触媒シートは、そのまま、又は、表面処理を行う樹脂基板のサイズに合わせて切断して使用する。また、樹脂基板上で、上記媒体、光触媒微粒子及びゲル化剤を含む分散液を、冷却固化させて光触媒シートを基板上に直接形成してもよい。
【0026】
樹脂基板
本発明の表面処理を施す樹脂基板を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミド、ABS樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。上記液晶ポリマーとしては、プリント配線基盤の分野で公知の物を、特に限定されることなく使用でき、例えば、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリエステルアミド等を例示できる。
【0027】
これらの樹脂基板の形状は特に限定されず、例えば、フィルム、シート、板状、スラブ状、3次元立体構造等が挙げられる。本発明で使用される樹脂基板としては、特にフレキシブル基板が好ましいが、リジッドタイプの基板を用いても良い。例えば、特に巨大サイズの3次元立体構造を有する基体(例えば、自動車のバンパー等)については、従来の混濁液浸漬法の適用が困難であるが、本発明の樹脂基板表面改質方法は基体と光触媒シートを接触させるだけで良いので、有利である。
【0028】
光触媒シートを樹脂基板と接触させる前に、必要に応じて、樹脂基板に脱脂、超音波洗浄等の公知の前処理を行ってもよい。
【0029】
光触媒シートと樹脂基板との接触
上記本発明の光触媒シートと樹脂基板との接触状態は、表面処理ないし改質されるべき樹脂基板表面に光触媒シートが接触ないし密着していれば、特に限定されない。典型的には、図1に示すように、樹脂基板2の表面処理ないし改質されるべき表面上に、光触媒シート1を置く方法が使用できる。この場合、樹脂基板2の表面と光触媒シートの下面との界面に空隙ができないように全面にわたって密着させることが好ましい。また、樹脂基板上で、前記の様に上記媒体、光触媒微粒子及びゲル化剤を含む分散液を、冷却固化させて光触媒シートを基板上に直接形成することにより、光触媒シートと樹脂基板とを密着させてもよい。
【0030】
本発明では、図1に示すような接触状態に限らず、他の接触状態であってもよい。例えば、光触媒シート上に樹脂基板を置く態様、光触媒シートと樹脂基板とを接触ないし密着させた状態で垂直乃至それに近い状態に保持する態様、3次元立体構造を有する物体の表面の一部あるいは全部を、光触媒シートで被覆する様態等を採用することも可能である。
【0031】
(2)第2工程
第2工程においては、上記第1工程で接触ないし密着された光触媒シートと樹脂基板に対して、特に光触媒シートと樹脂基板との界面ないし接触面に対して、光照射する。
【0032】
光照射工程は、各種の態様で行うことができるが、例えば、図1に示すように、上記の方法によって作製した光触媒シート1を、樹脂基板2に置き、光触媒シート1を樹脂基板2の表面処理すべき表面に密着させ、その後、光触媒シート1上から光照射を行うことによって行われる。これにより、光触媒効果によって樹脂基板2の光触媒シート1に接触している表面が改質される。
【0033】
この改質の詳細は未だ完全には解明されていないが、上記光触媒効果により、光触媒シートを構成する水及び/又はアルコールが分解されて活性酸素が発生する。おそらくは、この活性酸素が樹脂基板表面を攻撃することによってナノレベルの凹凸が樹脂基板表面に形成され、樹脂基板表面がナノレベルで粗面化されるものと推測される。また、光触媒による水分子及び/又はアルコール分子の分解により生成した水酸基イオンにより、水酸基が樹脂基板表面上に付与され、親水性が付与されると推測される。そして、上記ナノレベルの粗面化が生じるので、樹脂基板表面は平坦性が高く、表皮効果に伴う信号の遅延及び損失が抑制されると共に、該ナノレベルの粗面化と水酸基付与による親水化により、導体層との密着性向上にも寄与するものと推察される。また、樹脂基板表面に水酸基が付与されて親水化されることによって、後のめっき工程でめっき液が樹脂表面になじみやすくなり、樹脂基板表面においてめっき反応(樹脂基板上でのめっきの形成)が起こりやすくなる。
【0034】
照射する光としては、種々の光が使用できるが、通常は、紫外光又は可視光が好ましい。なかでも、波長が100nm〜800nm程度、特に200〜500nm程度の光が好ましい。
【0035】
光触媒シートを密着させた樹脂基板に照射する光の波長は、使用する光触媒微粒子の種類に応じて、各微粒子のバンドギャップの値に基づいて適宜選択すればよい。例えば、アナターゼ型の酸化チタンの微粒子を使用する場合、バンドギャップが約3.2eVであることから、約390nm以下の波長の紫外光を照射すると光触媒効果が発現する。
【0036】
光の照射時間は、照射光の強度に依存する。光照射に一般光を用いる場合、例えば、殺菌灯(波長254nm)、ブラックライト(同300〜400nm)等の蛍光管を光源とする光は、光触媒シートの単位面積当りに照射される光強度が比較的小さいため、照射時間は、最短で1秒程度、通常は1分〜5時間程度、特に5分〜1時間程度である。本発明において一般光とは、レーザ光以外の光を指す。
【0037】
また、光照射に使用する光は、レーザ光であってもよい。レーザ光としては、公知のものを使用でき、例えば、エキシマレーザ(KrF,ArF)、YAGレーザ等が挙げられる。YAGレーザの場合、その第3高調波又は第4高調波が好ましい。
【0038】
レーザ光の出力は、照射時間、所望の改質の程度、樹脂基板の材質等に応じて適宜決定することができるが、一般には、0.05〜5W程度である。
【0039】
レーザ光を用いれば、最短でナノ秒オーダーの照射時間でも光触媒効果が発現し、本発明の表面処理を行うことができる。例えば、YAGレーザの第3高調波を使用する場合の照射時間は、100mm×100mmの樹脂基板及び光触媒シートの全面に照射する場合、通常、10〜200秒程度、特に20〜50秒程度である。照射時間は、装置構成・光学系によって適宜決定することができる。
【0040】
レーザ光を使用すると、前記光触媒効果に基づく、ナノレベルの粗面化と水酸基付与による親水化が生じるだけでなく、更に、レーザ光自体のエネルギーによるサブミクロンレベルの表面粗化も達成されると思われる。サブミクロンレベルの表面粗化を行う場合は、レンズ等を用いて集光されたレーザ光を使用することが好ましい。
【0041】
本発明の表面処理方法は、一般に、樹脂の種類を問わず適用することが可能であるが、特に樹脂基板としてABS樹脂、エポキシ樹脂等を用いる場合であれば、一般光の照射によって形成されるナノレベルの凹凸と、樹脂基板表面の親水化によって顕著な密着性の向上が実現され得る。
【0042】
その他の樹脂、例えば、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂等を樹脂基板として用いる場合は、光照射としてレーザ光照射を行うのが好ましく、これによるサブミクロンレベルの表面粗化と樹脂基板表面の親水化の両方を行うことが好ましい。
【0043】
今後は、デバイスの高速化に伴い、プリント配線基板上に形成される配線幅がさらに微細化(<100μm)すると予想され、樹脂基板と積層体間の密着強度の向上が従来以上に重要になると考えられる。従って、より強固な密着を実現できる、レーザ光を用いた表面粗化を行うことが有利である。
【0044】
光照射するべき位置は、光触媒シートと樹脂基板の表面処理すべき表面との界面であるが、該界面が光照射される限り、どのような方法で光照射してもよい。例えば、図1に示すように、光触媒シート1を樹脂基板2の表面処理すべき表面に密着させ、その後、光触媒シート1上から、樹脂基板の全面にわたって光照射すればよい。
【0045】
また、レーザ光を使用する場合であれば、樹脂基板の全面にわたって光照射することもできるが、樹脂基板の特定の部位にのみ光照射を行うことができる。従来から、全面銅箔をエッチングで部分的に除去し、パターンを形成する方法(サブトラクティブ法)、または逆に樹脂上にレジスト膜をドライフィルムなどに形成し、無電解および電解めっき法でパターン形成する方法(アディディブ法)などが実施されてきたが、パターン精度の面からは必ずしも十分とは言えなかった。しかしながら、本発明の樹脂表面改質方法において、集光されたレーザを用いて局所的に表面改質を行うことにより、例えば、ラインピッチが1〜10μm程度の微細回路パターンであっても容易に形成することができる。
【0046】
このように、レーザ光で樹脂基板の特定の部位にのみ光照射を行う場合、レーザ光により、導体回路を形成する箇所のみに光照射することにより、回路パターンに対応して樹脂基板表面の改質を行うことも可能である。
【0047】
しかも、レーザ光を用いて光照射することにより、サブミクロンレベルの凹凸が形成されるため、さらに密着性が向上し、配線パターンが微細化しても密着信頼性が確保できる。
【0048】
上記いずれの態様の光照射を行う場合であっても、光触媒微粒子は、ゲル化された媒体のマトリックス中に保持されているため、従来の非特許文献1に記載の方法のように、光照射に伴い光触媒微粒子が凝集・沈降するおそれがないので、安定した光触媒能を維持できる。
【0049】
(3)第3工程
光照射の後、樹脂基板表面に付着した光触媒シートを除去することによって、本発明の表面改質樹脂基板を得ることができる。光触媒シートの除去は、100℃程度の温度に保持することで、光触媒ゲルを溶解させるといった方法により行うこともできるが、一般には、洗浄により除去する。
【0050】
洗浄は、水等を用いて、流水洗浄、超音波洗浄等の従来公知の方法を利用すればよく、これらの方法を2種以上組み合わせて用いてもよい。洗浄工程において、表面が改質された樹脂基板上に光触媒微粒子が残存しないようにすることが望ましく、例えば、流水洗浄の後、超音波洗浄を行えば光触媒微粒子をほぼ完全に除去することが可能である。樹脂層と導体層の間に光触媒微粒子が残存すると、電気特性(誘電率、誘電正接)の劣化、密着性の劣化等を引き起こす恐れがあるため、光触媒微粒子を完全に除去することが好ましい。
【0051】
2.表面改質樹脂基板及び金属張積層体
本発明の表面処理方法により得られる表面改質樹脂基板は、前述のように表面に親水基が形成されているため濡れ性が非常に向上している。樹脂基板表面の濡れ性が向上すると、樹脂層上に形成される導体金属薄膜(導体層)との密着性が良くなる。
【0052】
本発明の表面処理方法により得られる表面改質樹脂基板は、前述のように表面にナノレベルの凹凸が形成されており、その上に導体金属薄膜を形成すると、該表面改質樹脂基板と導体金属薄膜との物理的な密着性が非常に向上している。従来は、樹脂基板と導体金属薄膜(導体層)の密着性を高めるために樹脂基板表面に数ミクロンレベルの凹凸を形成する方法がとられていたが、表皮効果によって信号の遅延及び損失を招くという問題があった。これに対し、本発明の樹脂基板表面改質方法によれば、樹脂基板表面にごく微細な凹凸を形成できることから、樹脂層と導体層の界面の平坦性を維持しつつ、投錨効果及び表面親水化効果によるこれらの層間の高い密着性を実現することができる。
【0053】
また、光照射の際、レーザ光を使用することで樹脂基板表面への親水基の付与と共に、樹脂基板表面のサブミクロンレベルの粗化も同時に行うことができる。このように、本発明の樹脂基板表面処理方法によれば、樹脂基板表面に化学的な修飾に加え、サブミクロンレベルの粗化が施されることによって、さらに強固な樹脂層と導体層の密着を実現させることも可能である。
【0054】
このとき、樹脂基板表面の粗化の程度が大きすぎると、信号の伝送路長を実質的に増加し、信号の遅延、損失等を招く恐れがあるため、樹脂基板表面の粗度(10点平均高さ:JIS B 0601−1994)を、0.05〜2.0μm程度、好ましくは0.05〜1.5μm程度、より好ましくは0.05〜1.2μm程度の範囲とすることが推奨される。本発明において、樹脂基板の上記粗度は、レーザ顕微鏡(Keyence製VK−9500)を用い、レーザ顕微鏡の対物レンズ(150倍)を50nm刻みでZ軸方向に移動させて3次元画像を合成して、基材表面の粗度を数値化することによって測定された。このときの光源は、紫色レーザ(波長408nm、出力0.9mW)である。
【0055】
このようにして得られた表面改質樹脂基板は、例えば、プリント配線板に使用される樹脂基板、自動車のバンパーなどの3次元立体構造を有する樹脂材料等として従来公知の用途に使用され得る。例えば、本発明の方法によって得られた樹脂基板上に、アディティブ法(めっき法)等の従来公知の方法によって、銅、ニッケル、クロム、金、銀、パラジウム、亜鉛、はんだ等の導体金属薄膜を形成することができる。導体金属薄膜の厚さは、この分野で通常採用されている厚さでよいが、1nm〜1mm程度、好ましくは10nm〜500μm程度、より好ましくは20nm〜100μm程度である。従って、本発明は、本発明の上記表面改質樹脂基板及びその上に形成された導体金属薄膜を備えた金属張積層体を提供するものでもある。
【0056】
本発明の金属張積層体は、樹脂基板上に形成される導体金属薄膜と樹脂基板の密着性が高く、信号の損失、遅延等が生じにくいことから、高周波領域を扱うデバイスにおいて、好ましく適用され得る。
【発明の効果】
【0057】
本発明の樹脂基板表面処理方法によれば、プリント配線板等に使用される樹脂基板と導体層の界面の平坦性を維持しつつ、これらの層間の高い密着性を実現することができる。
【0058】
また、レーザ光を用いて光照射を行うことにより、樹脂基板表面に対して化学的修飾とサブミクロンレベルの粗化の両方を同時に付与することで、これらの層の密着性をより強固なものとすることができる。従って、本発明の方法によって得られる表面改質樹脂基板及び金属張積層体は、樹脂層と導体層の平坦性及び密着性を同時に要求される高周波領域のデバイス等にも好適に使用できるものである。
【0059】
また、本発明の方法において使用される本発明の光触媒シートは、光照射処理中であっても光触媒微粒子が凝集沈殿することなく安定した光触媒作用を維持できるものである。
【0060】
さらに、本発明の樹脂基板表面処理方法における光照射の際、レーザ光を用いることにより光照射時間を大幅に短縮することができ、生産性の向上も期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
本発明を、実施例及び比較例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0062】
実施例1
(A)樹脂基板表面の改質
(1)光触媒微粒子としては、アナターゼ型の酸化チタン(石原産業株式会社製STS−21:粒子径20nm)スラリー原液を使用した。該スラリーをイオン交換水で1000倍に希釈した。このときの酸化チタンの濃度は、0.61g/lであった。この混濁液に寒天をその濃度が20.8g/lとなるような量で加え、100℃に加熱し、寒天を溶解させた。次に、寒天が溶解した状態の混濁液をステンレス製の底面が平坦なバット(約20cm×30cm)に移した。バット中の混濁液の深さは0.5mmとした。該混濁液を室温まで冷却して固化させた。こうして本発明の光触媒シートを得た。
【0063】
得られた光触媒シートをカッターで約5cm×5cmのサイズに切断した。次にその光触媒シートを、同じく約5cm×5cmのサイズに切断したポリイミドフィルムに密着させた。
【0064】
(2)さらに、光触媒シートを密着させた樹脂基板の上方20mmの位置から、波長が254nmの殺菌灯(出力4W)を用いて光照射を行った。照射時間は10〜180分間とした。
【0065】
(3)光照射後、ポリイミドフィルムを流水及び超音波にて洗浄した。こうして本発明の表面改質樹脂基板を得た。
【0066】
(B) 密着性試験
上記(A)で得られた本発明の表面改質樹脂基板に銅めっきを作製した。より詳しくは、光触媒シートを洗浄除去した後、表面改質された樹脂基板上に、公知の無電解、電解銅めっき処理法で厚さ20μmの銅めっき層(全面めっき)を形成した。実際のめっき処理工程を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
カッターでめっき層に長さ50mm、幅10mmの切れ込みを入れた後、JIS C6481−1996に従い、強度試験機(島津製作所製EZ−TEST)を用いてめっき層の剥離強度を測定した。測定方法の概略を、図2に図示する。図2において、11は、幅方向の切れ込みを表し、その長さDは10mmである。また、12及び13は、長さ方向の切れ込みを表し、その長さLは50mmである。測定時には、白抜き矢印の方向に試験機で剥離する。めっき層の剥離強度の測定結果を図3に示す。
【0069】
実施例2〜4
ポリイミドフィルムに代えて、液晶ポリマーフィルム(実施例2)、エポキシ樹脂(実施例3)及びABS樹脂(実施例4)を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の表面改質樹脂基板を得、密着性試験を行った。結果を図3に示す。なお、実施例2で用いた液晶ポリマーフィルムは、全芳香族ポリエステルフィルムである。
【0070】
比較例1〜4
光照射を行わなかった以外は実施例1〜4と同様にして、比較の表面改質樹脂基板を得、密着性試験を行った。結果を図3に示す(光照射時間0時間)。
【0071】
図3から判るように、実施例1〜4で得られた表面改質樹脂基板はいずれも、光触媒処理を行わなかった比較例1〜4(光照射時間0時間)に比べて、改善された密着強度を示した。また、実施例1〜4で得られた表面改質樹脂基板のいずれも、光照射時間を長くするほど、密着強度は増大した。
【0072】
実施例5
実施例1(A)に記載の方法で光触媒シートを作製し、ポリイミド、液晶ポリマー(全芳香族ポリエステル)のフィルムにそれぞれ密着させ、その上方から、集光したレーザ光を照射した。レーザ光として、YAGレーザの第3高調波(353nm)、第4高調波(265nm)及びArFレーザ(193nm)を用いた。レーザ照射後に、両フィルム表面の粗度をレーザ顕微鏡(キーエンス製VK−9500)で測定した。結果を表2に示す。表2中、レーザを照射しなかったものを“未処理”と示す。
【0073】
表2に示すように、レーザ光を用いることで、樹脂基板表面にサブミクロンオーダー(0.1〜1μm)の微細凹凸を形成することができる。
【0074】
こうして得られた表面改質樹脂基板を用いる以外は実施例1(B)と同様にして銅めっきを施し、剥離強度を測定した。結果を図4に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
高周波信号を扱う基材としては、樹脂基板−導体層界面はできるだけ平坦であるほうが好ましいが、表2に示す程度の凹凸であれば伝送ロスの心配はほとんどないと考えてよい。扱う周波数がさらに高くなり、これよりも平坦度が要求される状況になった場合でも、レーザ出力を適宜調整することで対応可能である。図4に示すように、剥離強度に関しても全く問題のないレベルであると言える。なお、未処理の(すなわち、レーザ光を照射していない)ポリイミド及び液晶ポリマーのフィルムを用いた場合は、めっき工程において剥離が生じ、剥離強度の測定ができなかった。
【0077】
実施例6
酸化チタンに代えて、酸化スズ(バンドギャップ3.5eV)、酸化ニオブ(同3.4eV)、酸化亜鉛(同3.2eV)、酸化タングステン(同2.5eV)を用いた以外は実施例1と同様にして光触媒シートを作製し、それを樹脂基板表面改質に適用した。光触媒微粒子の平均粒子径は、いずれも400〜600nm(X線散乱法による測定)であった。いずれの光触媒も樹脂基板の密着性を向上させることが確認できた。
【0078】
比較例5
特許文献1(特開2005−15599号公報)の実施例1に示されている方法に従い、PET基材上に酸化チタンの微粒子を固定させ、光触媒シートを得た。この光触媒シートをポリイミド基板又は液晶ポリマー基板に対向させ、その間に水を充填した。
【0079】
さらに上記実施例1(A)(2)と同じ条件で、光照射を行い比較用の表面改質樹脂基板を得た。そして、実施例1(B)と同様にして剥離強度を測定した。
【0080】
結果を図5に示す。図5中、○は特許文献1に記載の方法で得られたポリイミド樹脂基板についての結果を、△は特許文献1に記載の方法で得られた液晶ポリマー基板についての結果を示す。参考のために、図3中の本発明に従い改質したポリイミド樹脂基板(●)及び液晶ポリマー基板(▲)についての結果(実施例1及び2の結果)を図5に併せて示す。
【0081】
図5に示すように、特許文献1の方法では、光照射時間を長くしても密着性はある程度向上するが、本発明方法ほどは向上しないことが判明した。これは樹脂基板と光触媒シートの間に水が介在するため、樹脂表面が効率的に改質されていないためと推定される。
【0082】
比較例6
非特許文献1(表面技術協会第111回講演大会要旨集 第106頁)に記載される方法(混濁液浸漬法)に従い、酸化チタンの微粒子(X線散乱法による平均粒径20nm)を純水中で撹拌して混濁液とし、ガラス皿にポリイミドおよび液晶ポリマーフィルムを設置して、混濁液をガラス皿に注いで浸漬させた。浸漬深さは約1.5mmとした。
【0083】
混濁液の液面上方2mmから実施例1(A)(2)と同様の方法で光照射を行い、実施例1(B)の方法に従って、銅めっき皮膜形成後に剥離強度を測定した。結果を図6に示す。
【0084】
図6中、○は特許文献1に記載の方法で得られたポリイミド樹脂基板についての結果を、△は非特許文献1に記載の方法で得られた液晶ポリマー基板についての結果を表す。参考のために、図3中の本発明に従って改質されたポリイミド樹脂基板(●)及び液晶ポリマー基板(▲)についての結果(実施例1及び2の結果)を図6に併せて示す。
【0085】
図6に示すように、非特許文献1の方法では、照射開始後30分までは密着性の向上が確認できたが、それ以上照射時間を延長しても密着強度はほとんど変わらない結果となった。これは、はじめの30分で酸化チタンの微粒子が凝集するため、それ以降はほとんど光触媒効果を発揮できなかったためと推定される。
【0086】
以上より、本発明の処理方法を樹脂基板の表面改質に適用すれば、従来法に比べて、より効率的に樹脂基板表面の親水性を向上させることが判る。
【0087】
また、レーザ光を用いて光照射を行うことによってサブミクロンレベルの粗化を行うことができ、樹脂層と導体層の密着性が顕著に向上することも判る。
【0088】
さらに、使用した光触媒シートは光照射処理中に凝集沈殿することもなく、安定した光触媒能を維持できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の樹脂基板表面処理方法を模式的に示した図面である。
【図2】めっき層の剥離強度の測定方法の概略を示した図面である。
【図3】実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた表面改質基板上に、銅めっきを施し、得られためっきの剥離強度を測定した結果を示すグラフである。
【図4】実施例5で得られた表面改質基板上に、銅めっきを施し、得られためっきの剥離強度を測定した結果を示すグラフである。
【図5】比較例5で得られた比較用の表面改質樹脂基板に、銅めっきを施し、得られためっきの剥離強度を測定した結果を、実施例1及び2の剥離強度測定結果と併せて示すグラフである。
【図6】比較例6で得られた比較用の表面改質樹脂基板に、銅めっきを施し、得られためっきの剥離強度を、実施例1及び2の剥離強度測定結果と併せて測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0090】
1 光触媒シート
2 樹脂基板
10 めっきサンプル
11 幅方向の切れ込み
12 長さ方向の切れ込み
13 長さ方向の切れ込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板表面処理方法であって、
(1)ゲル化された水、アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択される媒体、及び、該ゲル化された媒体中に分散された光触媒微粒子を含む光触媒シートと樹脂基板とを接触させる工程;
(2)該樹脂基板表面と光触媒シートとの界面に、紫外光又は可視光を照射する工程;及び
(3)該光触媒シートを除去する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
紫外光又は可視光の波長が100nm〜800nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
紫外光又は可視光が、一般光である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
紫外光又は可視光が、レーザ光である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
レーザ光が、YAGレーザの第3高調波又は第4高調波である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
レーザ光が、エキシマレーザであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
光触媒微粒子が、酸化チタン、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化亜鉛及び酸化タングステンからなる群から選択される少なくともいずれか1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
樹脂基板の導体回路を形成する箇所のみにレーザ光を照射することにより、回路パターンに対応して樹脂基板表面の改質を行う請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ゲル化された水、アルコール及びこれらの混合物からなる群より選択される媒体、及び、該ゲル化された媒体中に分散された光触媒微粒子を含むことを特徴とする、光触媒シート。
【請求項10】
光触媒微粒子が、酸化チタン、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化亜鉛及び酸化タングステンからなる群から選択される少なくともいずれか1種である、請求項9に記載の光触媒シート。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法にて作製された、表面改質樹脂基板。
【請求項12】
請求項11に記載の表面改質樹脂基板及びその上に形成された導体金属薄膜を備えていることを特徴とする金属張積層体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−39547(P2007−39547A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225151(P2005−225151)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(598014825)株式会社クオルテック (2)
【Fターム(参考)】