説明

樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法

【課題】成形する樹脂成形品の形状によらず、充填完了時にキャビティ内に発生させる圧力を適切に維持することができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法を提供すること。
【解決手段】樹脂成形用のゴム型2は、樹脂成形品を成形するための空間であるキャビティ22内に、所定の圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂6を充填するよう構成したゴム製の成形型である。ゴム型2は、複数の分割型部21を組み合わせてなると共に、分割型部21同士が対面する分割面20にキャビティ22を形成してなる。ゴム型2には、キャビティ22内へ熱可塑性樹脂6を導くためのランナー23と、キャビティ22に連通する余剰空間24とが形成してある。余剰空間24は、キャビティ22内において熱可塑性樹脂6が最後に到達する末端部位220に連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ゴム型内に熱可塑性樹脂を充填して樹脂成形品を得るためのゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、種々の成形方法によって、所定形状の成形品に成形している。結晶性、非晶性、あるいは溶融粘度の高低に応じて、更に成形品の形状に応じて射出成形、ブロー成形、押し出し成形、プレス成形等種々の成形方法が実用化されている。
例えば、特許文献1においては、ゴム製の成形型を用いて熱可塑性樹脂を成形する樹脂成形方法が開示されている。この樹脂成形方法においては、成形型内に熱可塑性樹脂を充填する際に、成形型の表面から熱可塑性樹脂にピーク波長が0.4〜2μmの電磁波を照射することにより、成形型に対して熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる。これにより、熱可塑性樹脂の温度が低下して、その粘度が増加することを防止している。
【0003】
また、例えば、特許文献2においては、シリコーンゴム型を用いて熱可塑性樹脂の射出成形を行う樹脂成形方法が開示されている。この樹脂成形方法においては、液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させてシリコーンゴム型を成形し、このシリコーンゴム型をバックアップ体に据え付け、シリコーンゴム型内へ溶融した熱可塑性樹脂を射出成形している。これにより、表面精度及び表面光沢が良好な樹脂成形品を簡便に成形することができる。
【0004】
ところで、熱可塑性樹脂の射出成形は、金型を用いて行う場合がほとんどである。この場合、金型には十分な強度があるため、射出成形時に金型に変形が生じることはほとんどなく、熱可塑性樹脂の射出圧力を高くすることができる。これに対し、ゴム型を用いて射出成形を行う場合には、その強度が金型に比べて低いため、バックアップ体(型締め手段)によってゴム型の型締めを行う。
【0005】
しかしながら、キャビティ内への熱可塑性樹脂の充填が完了した直後には、充填が完了したにも拘らず、キャビティ内の熱可塑性樹脂には射出シリンダーによる射出圧力が直接加わることになる。このとき、キャビティ内の圧力は、それまでの動的な圧力状態から静的な圧力状態に変化し、急激に上昇する。そのため、ゴム型の型締めを行うだけでは、ゴム型の変形を防止することが難しく、新たな技術の開発が望まれる。
【0006】
なお、キャビティの全体に熱可塑性樹脂が到達したときには、射出シリンダーによる射出圧力を制御することにより、キャビティ内の圧力が必要以上に高くならないよう制御することも考えられる。しかしながら、この場合には、射出シリンダーの電気的制御が必要になるだけでなく、成形する樹脂成形品の形状によっては(特に、熱可塑性樹脂が最後に到達するキャビティの末端部位の数、位置等によって)、キャビティ内の圧力の制御が困難になることがある。
【0007】
【特許文献1】特開2007−136747号公報
【特許文献2】特許第2906969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、成形する樹脂成形品の形状によらず、充填完了時にキャビティ内に発生させる圧力を適切に維持することができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、樹脂成形品を成形するための空間であるキャビティ内に、所定の圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂を充填するよう構成したゴム製のゴム型であって、
該ゴム型は、複数の分割型部を組み合わせてなると共に、該分割型部同士が対面する分割面に上記キャビティを形成してなり、かつ上記ゴム型には、上記キャビティ内へ上記熱可塑性樹脂を導くためのランナーと、上記キャビティに連通する余剰空間とが形成してあり、
該余剰空間は、上記キャビティ内において上記熱可塑性樹脂が最後に到達する末端部位に連通していることを特徴とする樹脂成形用のゴム型にある(請求項1)。
【0010】
本発明の樹脂成形用のゴム型においては、上記キャビティの末端部位に、余剰の熱可塑性樹脂を流出させることができる余剰空間を形成している。
そして、ゴム型を用いて樹脂成形品を成形する際には、ランナーを介してキャビティ内へ熱可塑性樹脂が充填され、キャビティの末端部位には、最も遅く熱可塑性樹脂が到達する。このとき、キャビティ内における圧力状態は動的な圧力状態から静的な圧力状態に変化しようとするのに対し、本発明においては、キャビティの末端部位に到達した熱可塑性樹脂を、余剰空間へ流出させることができる。
これにより、本発明においては、熱可塑性樹脂がキャビティの末端部位に到達するときのキャビティ内の圧力を適切に維持することができると共に、キャビティ内の圧力状態が静的な圧力状態に変化するときに生ずる急激な圧力上昇を緩和することができる。
【0011】
また、本発明においては、射出シリンダーの圧力制御を行うことなく、充填完了時におけるキャビティ内の圧力を適切に維持することができる。そのため、種々の複雑な形状の樹脂成形品に対して、例えば、キャビティの末端部位の数、位置等が異なる場合においても、充填完了時におけるキャビティ内の圧力を適切に維持することができる。
さらに、急激な圧力上昇を緩和できることにより、熱可塑性樹脂からゴム型に加わる圧力を低く抑えることができる。そのため、ゴム型に生ずる変形を小さく抑えることができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる。
【0012】
それ故、本発明の樹脂成形用のゴム型によれば、成形する樹脂成形品の形状によらず、充填完了時にキャビティ内に発生させる圧力を適切に維持することができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる。
【0013】
第2の発明は、上記樹脂成形用のゴム型を用いた成形装置であって、
上記ランナーを介して上記キャビティ内へ、溶融状態の熱可塑性樹脂を所定の圧力で射出する射出手段と、
上記ゴム型の上記分割面が開かないよう上記分割型部同士の型締めを行う型締め手段と、
上記ゴム型に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射する電磁波発生手段とを有していることを特徴とするゴム型を用いた成形装置にある(請求項9)。
【0014】
本発明のゴム型を用いた成形装置は、上記ゴム型の使用に適した成形装置である。そして、本発明においては、特に上記電磁波発生手段を用いることにより、ゴム型に比べてキャビティ内へ充填する熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができ、ゴム型に対する熱可塑性樹脂の充填性を向上させることができる。
また、樹脂成形品を成形する際には、型締め手段によって、ゴム型の分割面が開かないよう分割型部同士の型締めを行い、射出手段によって、ランナーを介してキャビティ内へ、溶融状態の熱可塑性樹脂を所定の圧力で射出することができる。
【0015】
それ故、本発明のゴム型を用いた成形装置によれば、成形する樹脂成形品の形状によらず、充填完了時にキャビティ内に発生させる圧力を適切に維持することができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる。
【0016】
また、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波により、ゴム型に比べて、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる理由としては、以下のように考える。
すなわち、ゴム型の表面に照射された0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波は、ゴム型に吸収される割合に比べて、ゴム型を透過して熱可塑性樹脂に吸収される割合が多いと考える。そのため、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波による光のエネルギーが熱可塑性樹脂に優先的に吸収されて、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができると考える。
【0017】
第3の発明は、上記樹脂成形用のゴム型を用いた成形方法であって、
上記キャビティ内へ溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程と、上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る冷却工程と、上記複数の分割型部を分離して上記樹脂成形品を上記キャビティ内から取り出す取出工程とを行うに際し、
上記充填工程においては、上記ランナーを介して上記キャビティ内へ充填した上記熱可塑性樹脂の一部を、上記余剰空間へ流出させることにより、上記キャビティの全体に上記熱可塑性樹脂が充填されたときに生ずる上記キャビティ内の圧力上昇を緩和することを特徴とするゴム型を用いた成形方法にある(請求項10)。
【0018】
本発明のゴム型を用いた成形方法は、上記ゴム型の使用に適した成形方法である。そして、本発明の充填工程においては、ランナーを介してキャビティ内へ充填した熱可塑性樹脂が、上記キャビティの末端部位に到達したときには、この熱可塑性樹脂の一部が、余剰空間へ流出する。これにより、キャビティの全体に熱可塑性樹脂が充填されたときに生ずるキャビティ内の急激な圧力上昇を緩和することができる。そのため、射出シリンダーの圧力制御を行うことなく、充填完了時におけるキャビティ内の圧力を適切に維持することができる。
その他、本発明においても、上記第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0019】
それ故、本発明のゴム型を用いた成形方法によれば、成形する樹脂成形品の形状によらず、充填完了時にキャビティ内に発生させる圧力を適切に維持することができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる。
【0020】
第4の発明は、上記樹脂成形用のゴム型を用いた成形方法であって、
上記キャビティ内へ溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程と、上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る冷却工程と、上記複数の分割型部を分離して上記樹脂成形品を上記キャビティ内から取り出す取出工程とを行うに際し、
上記充填工程においては、上記キャビティの全体に上記熱可塑性樹脂が充填されたときには、上記圧力上昇緩和手段が開口して、上記熱可塑性樹脂の一部を上記余剰空間へ流出させることにより、上記キャビティ内の急激な圧力上昇を緩和することを特徴とするゴム型を用いた成形方法にある(請求項11)。
【0021】
本発明のゴム型を用いた成形方法も、上記ゴム型の使用に適した成形方法である。そして、本発明の充填工程においては、ランナーを介してキャビティ内へ導入される熱可塑性樹脂が、上記キャビティの末端部位まで到達して、キャビティの全体に充填されたときには、キャビティ内の圧力が所定の圧力に上昇し、上記圧力上昇緩和手段が開口する。これにより、キャビティの末端部位に到達した熱可塑性樹脂の一部を、余剰空間へ流出させることができ、充填完了時におけるキャビティ内の急激な圧力上昇を緩和することができる。そして、射出シリンダーの圧力制御を行うことなく、圧力緩和手段が開口するときの所定の圧力によって、充填完了時におけるキャビティ内の圧力を適切に維持することができる。
その他、本発明においても、上記第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
それ故、本発明のゴム型を用いた成形方法によっても、成形する樹脂成形品の形状によらず、充填完了時にキャビティ内に発生させる圧力を適切に維持することができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、上記余剰空間には、上記キャビティにおける上記熱可塑性樹脂の流動方向に直交する方向の断面積よりも小さい断面積を有する導入路が形成してあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、導入路の断面積を適切に設定することによって、充填完了時におけるキャビティ内の圧力を、適宜目標とする圧力に設定することができる。そのため、充填完了時におけるキャビティ内の圧力をより適切に維持することができる。
【0024】
また、上記導入路は、上記余剰空間が上記キャビティに連通する部位に形成してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記キャビティの末端部位に到達した熱可塑性樹脂を余剰空間へ流出させる量を最小限にすることができる。
【0025】
また、上記余剰空間には、上記キャビティ内の圧力が所定の圧力になったときに開口して、上記キャビティの全体に上記熱可塑性樹脂が充填されたときに生ずる上記キャビティ内の圧力上昇を緩和する圧力上昇緩和手段を設けることもできる(請求項4)。
この場合には、圧力緩和手段が開口するときの圧力を適宜設定することができ、充填完了時におけるキャビティ内の圧力を、より適切な圧力に設定することができる。
【0026】
また、上記圧力上昇緩和手段は、上記キャビティ内の圧力が所定の圧力になったときに変形又は破損して開口するよう構成した圧力開口壁とすることができる(請求項5)。
この場合には、圧力上昇緩和手段を簡単に形成することができる。また、圧力開口壁の大きさ、厚み、圧力開口壁に設けた開口用切込み等を適宜調整することによって、圧力開口壁が変形又は破損するときの圧力を適切に設定することができる。そして、充填完了時におけるキャビティ内の圧力を、より適切な圧力に設定することができる。
【0027】
また、上記圧力開口壁は、上記ゴム型の一部によって直接形成することができる(請求項6)。
この場合には、金型よりも格段に強度が低いゴム型の性質を利用して、圧力上昇緩和手段を極めて簡単に形成することができる。
【0028】
また、上記圧力開口壁は、上記余剰空間に、上記ゴム型とは別の部材として設けた圧力開口部材によって形成することもできる(請求項7)。
この場合には、ゴム型において樹脂成形品の成形を行うごとに、圧力開口部材を取り替えることにより、同じゴム型を繰り返し使用することができる。
【0029】
また、上記圧力上昇緩和手段は、上記キャビティ内の圧力が所定の圧力になったときに開口するよう構成した圧力バルブとすることもできる(請求項8)。
この場合には、種々の圧力バルブを用いることによって、圧力上昇緩和手段を形成することができる。また、ゴム型において樹脂成形品の成形を行うごとに、圧力バルブを取り替えることにより、同じゴム型を繰り返し使用することができる。
なお、圧力バルブとしては、いわゆる安全弁等のバネ力を調整することによって動作時の圧力を設定することができるもの等を用いることができる。
【0030】
また、上記ゴム型は、透明又は半透明のシリコーンゴムから構成することができる。
この場合には、特に、ゴム型を介して熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射して、熱可塑性樹脂を加熱する際に、当該電磁波の多くを、ゴム型を透過させて、キャビティ内及びランナー内の熱可塑性樹脂に吸収させることが容易になる。
また、ゴム型に用いるシリコーンゴムの硬度は、JIS−A規格測定において25〜80であることが好ましい。
【0031】
また、第2〜第4の発明において、上記ゴム型を介して上記熱可塑性樹脂に照射する電磁波としては、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波だけでなく、これ以外の領域の電磁波も含まれていてもよい。この場合において、ゴム型を介して熱可塑性樹脂に照射する電磁波又は透過電磁波は、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波を、これ以外の領域の電磁波よりも多く含むことが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂の加熱に、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波を用いる理由は、この波長の領域の電磁波は、ゴム型を透過し易い性質を有する一方、熱可塑性樹脂に吸収され易い性質を有するためである。
【0032】
また、上記電磁波は、0.78〜2μmの波長領域に強度のピークを有していることが好ましい。この場合には、電磁波発生手段等の電磁波発生源として、出射する電磁波の波長に所定の分布特性を有するハロゲンヒータ、赤外線ランプ等を用いることができる。
【0033】
また、上記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)等のABS系樹脂であることが好ましい。この場合には、上記電磁波により、ゴム型をほとんど加熱することなく上記ABS系樹脂を選択的に加熱することができる。
【0034】
また、上記熱可塑性樹脂は、非晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
ところで、熱可塑性樹脂の冷却速度は比較的遅くすることが多い。そのため、冷却中に熱可塑性樹脂の結晶性が高くなることがあり、これによって、樹脂成形品の寸法精度が低下したり、樹脂成形品の耐衝撃性が低下したりすることがある。これに対し、熱可塑性樹脂を非晶性熱可塑性樹脂にしたことにより、上記樹脂成形品の寸法精度の低下及び耐衝撃性の低下等を防止することができる。
【0035】
非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)、HIPS樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂、特にブタジエンを含有するもの)、変性ポリフェニレンエーテル等のゴム変性熱可塑性樹脂、又はポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂(PC)、PC/ゴム変性熱可塑性樹脂アロイ等を用いることができる。その中でも、特にゴム変性熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
また、上記熱可塑性樹脂は、ゴム変性熱可塑性樹脂とすることができ、ゴム変性熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体をグラフト重合させた重合体を1種又は2種以上含むものが好ましい。
上記ゴム質重合体としては、特に限定されないが、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム等が挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
また、上記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、アクリルゴムを用いることが好ましく、上記ゴム変性熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等のABS系樹脂を用いることがさらに好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例の樹脂成形用のゴム型2は、図1、図2に示すごとく、樹脂成形品を成形するための空間であるキャビティ22内に、所定の圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂6を充填するよう構成したゴム製の成形型である。
このゴム型2は、複数の分割型部21を組み合わせてなると共に、分割型部21同士が対面する分割面20にキャビティ22を形成してなる。また、ゴム型2には、キャビティ22内へ熱可塑性樹脂6を導くためのランナー23と、キャビティ22に連通する余剰空間24とが形成してある。そして、余剰空間24は、キャビティ22内において熱可塑性樹脂6が最後に到達する末端部位220に連通している。
【0039】
以下に、本例の樹脂成形用のゴム型2、並びにこれを用いた成形装置1及び成形方法につき、図1〜図4を参照して詳説する。
本例においては、熱可塑性樹脂6として、非晶性熱可塑性樹脂であると共にゴム変性熱可塑性樹脂であるABS樹脂を用いる。
また、本例のゴム型2は、透明又は半透明のシリコーンゴムからなる。このゴム型2は、成形する樹脂成形品のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムを切り開いて、このシリコーンゴムからマスターモデルを取り出すことによって作製することができる。
また、図2に示すごとく、本例のゴム型2は、1つの分割面20を形成して2つの分割型部21を組み合わせて形成した。これに対し、ゴム型2は、成形する樹脂成形品の形状が複雑な場合は、3つ以上の分割型部21を組み合わせて形成することもできる。
【0040】
本例の成形装置1は、ゴム型2に対して熱可塑性樹脂6の射出成形を行う。成形装置1は、図3に示すごとく、ランナー23を介してキャビティ22内へ、溶融状態の熱可塑性樹脂6を所定の圧力で射出する射出シリンダー52と、ゴム型2の分割面20が開かないよう分割型部21同士の型締めを行う型締め手段51と、ゴム型2に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射する電磁波発生手段4とを有している。本例においては、射出シリンダー52からゴム型2内へ射出する溶融状態の熱可塑性樹脂6の圧力は、0.5〜5MPaとする。
【0041】
型締め手段51は、一対の型締め用プレート511の間にゴム型2を配置し、加圧シリンダー等の加圧手段によって、一対の型締め用プレート511を介してゴム型2に加圧する構成とすることができる。なお、型締め用プレート511を電磁波発生手段4とゴム型2との間に配置する場合は、型締め用プレート511は、電磁波発生手段4による電磁波(特に近赤外線領域の電磁波)を透過させるために、透明又は半透明のガラス等から構成することができる。
また、図3において、電磁波発生手段4から出射する電磁波を矢印Xで示し、型締め手段51による型締め力を矢印Fによって示す。
【0042】
本例の電磁波発生手段4は、電磁波(光)の発生源41と、この発生源41による電磁波をゴム型2の方向へ導くリフレクタ(反射板)42とを有している。本例の電磁波発生手段4としては、近赤外線領域内の約1.2μmの付近に光強度のピークを有する近赤外線ハロゲンヒータを用いる。
【0043】
また、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波(光)に対する吸光度(特定の波長の光に対する吸収強度を示す尺度)は、熱可塑性樹脂6として用いるABS樹脂の方が、ゴム製のゴム型2として用いるシリコーンゴムよりも大きくなっている。なお、吸光度は、例えば、島津製作所製UV3100を用いて測定することができる。
また、本例においては、溶融した状態の熱可塑性樹脂6をゴム型2のキャビティ22内に注入し、ゴム型2に上記電磁波を照射することにより、上記溶融した状態の熱可塑性樹脂6の粘度が5000Poise以上になることを防止して、樹脂成形品を得る。
【0044】
図4は、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについて、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、各シリコーンゴムにおける光の透過率を示すグラフである。同図において、各シリコーンゴムは、200〜2200(nm)の間の波長の光を透過させることがわかる。そのため、この波長の領域である近赤外線(0.78〜2μmの波長領域の光)をシリコーンゴム製のゴム型2の表面に照射すると、当該近赤外線の多くを、ゴム型2を透過させて熱可塑性樹脂6に吸収させることができる。そして、ゴム型2に比べて熱可塑性樹脂6を選択的に加熱できることがわかる。
【0045】
図1、図2に示すごとく、本例の余剰空間24には、キャビティ22における熱可塑性樹脂6の流動方向に直交する方向の断面積よりも小さな断面積を有する導入路241が形成してある。また、導入路241は、余剰空間24がキャビティ22に連通する部位に形成してある。
また、キャビティ22と導入路241との間に生ずる圧力損失は、導入路241の開口形状及び長さ、熱可塑性樹脂6の充填速度、充填温度及び特性等によって決定される。そのため、特に、導入路241の断面積及び長さを適切に調整することによって、充填完了時におけるキャビティ22内の圧力を、適宜目標とする圧力に設定することができる。
【0046】
また、図1に示すごとく、本例のゴム型2のキャビティ22においては、熱可塑性樹脂6が最後に到達する末端部位220が複数(本例では2つ)形成されている。そして、各末端部位220に対して、余剰空間24及び導入路241が形成されている。なお、導入路241を各末端部位220に形成し、余剰空間24は、まとめて1つ形成することもできる。
【0047】
また、本例の余剰空間24は、分割面20に形成されている。これに対し、余剰空間24は、分割面20以外にも形成することができる。この場合には、余剰空間24を、成形後の樹脂成形品を取り出すことができる形状にする必要がある。
また、図3に示すごとく、ゴム型2の表面には、射出シリンダー52の先端が係合する係合凹部231が形成してあり、ランナー23は、係合凹部231とキャビティ22とを連通する形状に形成してある。
【0048】
次に、上記ゴム型2及び成形装置1を用いて、樹脂成形品を成形する方法及び本例における作用効果につき説明する。
まず、準備工程として、図2に示すごとく、一対の分割型部21を閉じてゴム型2の分割面20を閉じる。そして、ゴム型2の分割面20が開かないよう、一対の分割型部21を対面させる方向に加圧する型締め手段51によって型締めを行う(図3参照)。
次いで、充填工程として、図3に示すごとく、ゴム型2の係合凹部231に射出シリンダー52を係合し、射出シリンダー52からランナー23を介してキャビティ22内へ溶融状態の熱可塑性樹脂6を射出する。そして、キャビティ22及びランナー23の全体に、熱可塑性樹脂6を充填する。
【0049】
また、上記充填を行う際には、電磁波発生手段4によって、ゴム型2を介して熱可塑性樹脂6に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、熱可塑性樹脂6を加熱する。このとき、ゴム型2に比べてキャビティ22内へ充填する熱可塑性樹脂6を選択的に加熱することができ、熱可塑性樹脂6の温度を高く維持し、その溶融粘度が増加することを防止して、充填性を向上させることができる。
そして、ゴム型2を透明又は半透明のシリコーンゴムから形成していることにより、電磁波発生手段4から出射した電磁波の多くを、ゴム型2を透過させ、キャビティ22内及びランナー23内の熱可塑性樹脂6に吸収させることができる。
【0050】
また、充填工程においては、図3に示すごとく、ランナー23を介してキャビティ22内へ充填した熱可塑性樹脂6が、キャビティ22の末端部位220に到達したときには、この熱可塑性樹脂6の一部が、余剰空間24へ流出する。これにより、キャビティ22の全体に熱可塑性樹脂6が充填されたときに生ずるキャビティ22内の急激な圧力上昇を緩和することができる。そのため、射出シリンダー52の圧力制御を行うことなく、充填完了時におけるキャビティ22内の圧力を適切に維持することができる。
【0051】
次いで、冷却工程として、キャビティ22内の熱可塑性樹脂6を冷却して樹脂成形品を得る。このとき、型締め手段51によってゴム型2の型締めを行った状態を維持して、自然冷却により、ゴム型2、並びにキャビティ22内及びランナー23内に充填した熱可塑性樹脂6を冷却する。
次いで、取出工程においては、分割面20を開けて樹脂成形品を取り出すと共に、ランナー23内に成形されたランナー成形物及び余剰空間24に成形された余剰成形物を取り出す。その後、樹脂成形品からランナー成形物及び余剰成形物を切除して、最終製品となる樹脂成形品を得ることができる。
【0052】
本例の樹脂成形用のゴム型2においては、キャビティ22の末端部位220に、余剰の熱可塑性樹脂6を流出させることができる余剰空間24を形成している。
そして、ゴム型2を用いて樹脂成形品を成形する際には、ランナー23を介してキャビティ22内へ熱可塑性樹脂6が充填され、キャビティ22の末端部位220には、最も遅く熱可塑性樹脂6が到達する。このとき、キャビティ22内における圧力状態は動的な圧力状態から静的な圧力状態に変化しようとするのに対し、本例においては、キャビティ22の末端部位220に到達した熱可塑性樹脂6を、余剰空間24へ流出させることができる。
これにより、本例においては、熱可塑性樹脂6がキャビティ22の末端部位220に到達するときのキャビティ22内の圧力を適切に維持することができると共に、キャビティ22内の圧力状態が静的な圧力状態に変化するときに生ずる急激な圧力上昇を緩和することができる。
【0053】
また、本例においては、射出シリンダー52の圧力制御を行うことなく、充填完了時におけるキャビティ22内の圧力を適切に維持することができる。そのため、種々の複雑な形状の樹脂成形品に対して、例えば、キャビティ22の末端部位220の数、位置等が異なる場合においても、充填完了時におけるキャビティ22内の圧力を適切に維持することができる。
さらに、急激な圧力上昇を緩和できることにより、熱可塑性樹脂6からゴム型2に加わる圧力を低く抑えることができる。そのため、ゴム型2に生ずる変形を小さく抑えることができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる。
【0054】
それ故、本例の樹脂成形用のゴム型2、並びにこれを用いた成形装置1及び成形方法によれば、成形する樹脂成形品の形状によらず、充填完了時にキャビティ22内に発生させる圧力を適切に維持することができ、精度よく樹脂成形品を成形することができる。
【0055】
(実施例2)
本例は、上記余剰空間24に、キャビティ22内の圧力が所定の圧力になったときに開口して、キャビティ22の全体に熱可塑性樹脂6が充填されたときに生ずるキャビティ22内の圧力上昇を緩和する圧力上昇緩和手段を設けた例である。
本例の圧力上昇緩和手段は、図5に示すごとく、キャビティ22内の圧力が所定の圧力になったときに変形又は破損して開口するよう構成した圧力開口壁25である。この圧力開口壁25は、金型よりも格段に強度が低いゴム型2の性質を利用して、圧力上昇緩和手段を極めて簡単に形成するために、ゴム型2の一部によって直接形成してある。
【0056】
また、圧力開口壁25は、一方の分割型部21における分割面20に形成してある。そして、圧力開口壁25は、キャビティ22の末端部位220に充填された熱可塑性樹脂6から加わる圧力が所定の圧力を超えたときには、変形又は破損して開口し、熱可塑性樹脂6の一部を余剰空間24へ流出させるよう構成されている。図5においては、熱可塑性樹脂6の圧力を受けて変形した後の圧力開口壁25を示しており、変形前の圧力開口壁は2点鎖線で示す。また、圧力開口壁25の変形により、キャビティ22と余剰空間24とを連通するよう形成された開口部分を符号Sで示す。
【0057】
本例においては、上記充填工程を行う際に、キャビティ22の末端部まで熱可塑性樹脂6が到達したときには、キャビティ22内の圧力が急激に上昇する。そして、キャビティ22内の圧力が所定の圧力になったとき、圧力開口壁25が変形又は破損して開口し、キャビティ22の末端部位220と余剰空間24とが連通される。これにより、末端部位220に到達した熱可塑性樹脂6が余剰空間24へ流出し、キャビティ22内の圧力が適切な圧力まで上昇した後に、射出シリンダー52によるキャビティ22内への熱可塑性樹脂6の充填を完了することができる。
【0058】
このように、本例においては、圧力上昇緩和手段を簡単に形成することができ、圧力開口壁25の大きさ、厚み等を適宜調整することによって、圧力開口壁25が変形又破損するときの圧力を適切に設定することができる。そして、充填完了時におけるキャビティ22内の圧力を、より適切な圧力に設定することができる。
【0059】
また、圧力開口壁25は、図6に示すごとく、余剰空間24に、ゴム型2とは別の部材として設けた圧力開口部材31によって形成することもできる。この圧力開口部材31は、ゴム型2における余剰空間24の形成位置において、この余剰空間24に嵌入して設けることができる。また、圧力開口部材31には、開口用切込み311を形成することができる。そして、キャビティ22の末端部位220に充填された熱可塑性樹脂6から圧力開口部材31へ加わる圧力が所定の圧力を超えたときには、開口用切込み311が破れて開口し、熱可塑性樹脂6の一部を余剰空間24へ流出させることができる。
また、図示は省略するが、圧力開口部材31は、シート状の部材から形成し、このシート状の部材を余剰空間24の形成位置に貼着することによって設けることもできる。
【0060】
圧力開口壁25を圧力開口部材31によって形成した場合には、ゴム型2において樹脂成形品の成形を行うごとに、圧力開口部材31を取り替えることにより、同じゴム型2を繰り返し使用することができる。また、開口用切込み311の形成状態を適宜調整することによって、圧力開口壁25が変形又は破損するときの圧力を適宜設定することができる。
【0061】
また、圧力上昇緩和手段は、図7に示すごとく、キャビティ22内の圧力が所定の圧力になったときに開口するよう構成した圧力バルブ32とすることもできる。圧力バルブ32は、種々の構造とすることができるが、例えば、圧力を受ける受圧板321と受圧板321を付勢するバネ322とをケース323内に収容したものとすることができる。なお、図7は、ゴム型2の分割面20の面方向から見た状態で示す。
そして、図8に示すごとく、熱可塑性樹脂6による圧力が受圧板321に加わり、この圧力がバネ322の付勢力に打ち勝ったときには、受圧板321がケース323内に押されて、ケース323の側面に形成した開口穴324を開口し、キャビティ22内の熱可塑性樹脂6を余剰空間24へ流出させるよう構成することができる。なお、図8は、ゴム型2の分割面20の面方向に直交する方向から見た状態で示す。
【0062】
この場合には、ゴム型2において樹脂成形品の成形を行うごとに、圧力バルブ32を取り替えることにより、同じゴム型2を繰り返し使用することができる。また、使用するバネ322の反発強度を適宜選択することによって、圧力バルブ32の動作時の圧力を適切に設定することができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1における、樹脂成形用のゴム型を示す斜視図。
【図2】実施例1における、樹脂成形用のゴム型を示す断面説明図。
【図3】実施例1における、樹脂成形用のゴム型を用いた成形装置を示す断面説明図。
【図4】実施例1において、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについての光の透過率を示すグラフ。
【図5】実施例2における、樹脂成形用のゴム型の要部を拡大して示す断面説明図。
【図6】実施例2における、圧力開口部材を用いた樹脂成形用のゴム型の要部を拡大して示す断面説明図。
【図7】実施例2における、圧力バルブを用いた樹脂成形用のゴム型の要部であって、熱可塑性樹脂の充填前の状態を拡大して示す断面説明図。
【図8】実施例2における、圧力バルブを用いた樹脂成形用のゴム型の要部であって、熱可塑性樹脂の充填後の状態を拡大して示す断面説明図。
【符号の説明】
【0064】
1 成形装置
2 ゴム型
20 分割面
21 分割型部
22 キャビティ
220 末端部位
23 ランナー
24 余剰空間
241 導入路
25 圧力開口壁(圧力上昇緩和手段)
31 圧力開口部材
32 圧力バルブ
4 電磁波発生手段
51 型締め手段
52 シリンダー
6 熱可塑性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品を成形するための空間であるキャビティ内に、所定の圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂を充填するよう構成したゴム製のゴム型であって、
該ゴム型は、複数の分割型部を組み合わせてなると共に、該分割型部同士が対面する分割面に上記キャビティを形成してなり、かつ上記ゴム型には、上記キャビティ内へ上記熱可塑性樹脂を導くためのランナーと、上記キャビティに連通する余剰空間とが形成してあり、
該余剰空間は、上記キャビティ内において上記熱可塑性樹脂が最後に到達する末端部位に連通していることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
【請求項2】
請求項1において、上記余剰空間には、上記キャビティにおける上記熱可塑性樹脂の流動方向に直交する方向の断面積よりも小さい断面積を有する導入路が形成してあることを特徴とすることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
【請求項3】
請求項2において、上記導入路は、上記余剰空間が上記キャビティに連通する部位に形成してあることを特徴とすることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
【請求項4】
請求項1において、上記余剰空間には、上記キャビティ内の圧力が所定の圧力になったときに開口して、上記キャビティの全体に上記熱可塑性樹脂が充填されたときに生ずる上記キャビティ内の圧力上昇を緩和する圧力上昇緩和手段が設けてあることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
【請求項5】
請求項4において、上記圧力上昇緩和手段は、上記キャビティ内の圧力が所定の圧力になったときに変形又は破損して開口するよう構成した圧力開口壁であることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
【請求項6】
請求項5において、上記圧力開口壁は、上記ゴム型の一部によって直接形成してあることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
【請求項7】
請求項5において、上記圧力開口壁は、上記余剰空間に、上記ゴム型とは別の部材として設けた圧力開口部材によって形成してあることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
【請求項8】
請求項4において、上記圧力上昇緩和手段は、上記キャビティ内の圧力が所定の圧力になったときに開口するよう構成した圧力バルブであることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂成形用のゴム型を用いた成形装置であって、
上記ランナーを介して上記キャビティ内へ、溶融状態の熱可塑性樹脂を所定の圧力で射出する射出手段と、
上記ゴム型の上記分割面が開かないよう上記分割型部同士の型締めを行う型締め手段と、
上記ゴム型に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射する電磁波発生手段とを有していることを特徴とするゴム型を用いた成形装置。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂成形用のゴム型を用いた成形方法であって、
上記キャビティ内へ溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程と、上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る冷却工程と、上記複数の分割型部を分離して上記樹脂成形品を上記キャビティ内から取り出す取出工程とを行うに際し、
上記充填工程においては、上記ランナーを介して上記キャビティ内へ充填した上記熱可塑性樹脂の一部を、上記余剰空間へ流出させることにより、上記キャビティの全体に上記熱可塑性樹脂が充填されたときに生ずる上記キャビティ内の圧力上昇を緩和することを特徴とするゴム型を用いた成形方法。
【請求項11】
請求項4〜8のいずれか一項に記載の樹脂成形用のゴム型を用いた成形方法であって、
上記キャビティ内へ溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程と、上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る冷却工程と、上記複数の分割型部を分離して上記樹脂成形品を上記キャビティ内から取り出す取出工程とを行うに際し、
上記充填工程においては、上記キャビティの全体に上記熱可塑性樹脂が充填されたときには、上記圧力上昇緩和手段が開口して、上記熱可塑性樹脂の一部を上記余剰空間へ流出させることにより、上記キャビティ内の急激な圧力上昇を緩和することを特徴とするゴム型を用いた成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−154367(P2009−154367A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334233(P2007−334233)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【出願人】(594014638)日本レックス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】