説明

樹脂組成物、封止剤、接着フィルムまたはシート

【課題】耐衝撃性に優れる樹脂組成物、封止剤、接着フィルムまたはシートを提供する。
【解決手段】エポキシ基を0.03〜10重量%含有し、190℃におけるメルトフローレートが100g/10min以上であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、前記(A)とは異なるエポキシ樹脂(B)とを含む樹脂組成物。該樹脂組成物と、硬化剤を混合して得られる封止剤。該樹脂組成物と硬化剤との混合物から形成されている、接着フィルムまたはシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、封止剤、接着フィルムまたはシートに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は一般に耐熱性、耐薬品性が高いことから、電気部品、塗料、接着剤等に用いられている。エポキシ樹脂に、耐衝撃性が求められる場合には、耐衝撃性付与剤を添加することが検討されている。このような耐衝撃性付与剤としては、エチレン−不飽和カルボン酸誘導体や(特許文献1参照)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体ゴムが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−240838
【特許文献2】特開平9−255848
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1または2に記載された樹脂組成物は、耐衝撃性付与剤の分子量が高く、エポキシ樹脂との相溶性が十分ではなく、さらなる耐衝撃性の改良が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討の結果、以下に記載の手段により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、エポキシ基を0.03〜10重量%含有し(ただし(A)を100重量%とする)、190℃におけるメルトフローレートが100g/10min以上であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、前記(A)とは異なるエポキシ樹脂(B)とを含む樹脂組成物である。
さらに本発明は、前記樹脂組成物と、硬化剤を混合して得られる封止剤である。
さらに本発明は、前記樹脂組成物と硬化剤との混合物から形成されている、接着フィルムまたはシートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物、封止剤、接着フィルムまたはシートは、耐衝撃性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ基を0.03〜10重量%含有し、190℃におけるメルトフローレートが100g/10min以上であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、前記(A)とは異なるエポキシ樹脂(B)とを含む樹脂組成物である。
【0010】
本発明におけるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)とは、エチレンと、アクリル酸エステルおよび/またはメタアクリル酸エステルとを共重合して得られる共重合体である。
【0011】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して得られる。エチレンと共重合する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルとを共重合することにより、エポキシ基を含むエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を得ることができる。その他にエチレンと共重合可能な(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸アリルなどのアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシなどの芳香族炭化水素エステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステルが挙げられる。
【0012】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、エチレンと、(メタ)アクリル酸グリシジルと、(メタ)アクリル酸グリシジルとは異なる(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも3種類のモノマーを共重合して得られる共重合体であることが好ましい。好ましいエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としては、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル−(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル−(メタ)アクリル酸ブチルが挙げられ、中でもエチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル−(メタ)アクリル酸メチルが特に好ましい。
【0013】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)に含まれる、(メタ)アクリル酸エステル由来の単量体単位の含有量は、該共重合体(A)の重量を100重量%とするとき、0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜45重量%であることがより好ましく、5〜40重量%であることがさらに好ましい。
【0014】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、該共重合体(A)の重量を100重量%とするとき、エポキシ基を0.03〜10重量%含有し、0.1〜8重量%含有することが好ましく、0.5〜7重量%含有することがより好ましい。共重合体(A)に含まれるエポキシ基が0.03重量%以上であると、後述するエポキシ樹脂(B)との混合性が良好となり、10重量%以下であると、該共重合体(A)を含む樹脂組成物は耐衝撃性に優れる。
【0015】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の190℃におけるメルトフローレートは、100g/10min以上であり、120g/10min以上800g/10min以下であることが好ましく、150g/10min以上500g/10min以下であることがより好ましい。メルトフローレートが100g/10min以上であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、後述するエポキシ樹脂(B)や、エポキシ樹脂(B)と混合する際に用いる有機溶剤への溶解性に優れる。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、前記(A)とは異なるエポキシ樹脂(B)を含む。エポキシ樹脂(B)としては、特に制限はないが、例えば特開2003−201458やWO/1998/03047に示されるエポキシ樹脂を使用することができる。
【0017】
エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、100〜5000g/eq.の範囲であることが好ましく、100〜1000g/eq.がより好ましい。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、該樹脂組成物の重量を100重量%とするとき、耐衝撃性の観点から、前記エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の含有量が30〜1重量%であり、エポキシ樹脂(B)の含有量が70〜99重量%であることが好ましく、(A)の含有量が25〜1重量%であり、(B)の含有量が75〜99重量%であることがより好ましく、(A)の含有量が20〜5重量%であり、(B)の含有量が80〜95重量%であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明の樹脂組成物を得る方法としては、一般的にエポキシ樹脂に対して用いる有機溶媒を用いて溶液混合する手法を用いることができる。ここで、溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、フラン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メタノール、ブタノール、ポリエチレングリコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールなどのアルコール類、塩化メチレンなどの塩素化炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素が挙げられる。
また、(A)および(B)を融解混練する手法を用いることもできる。混練機としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールが挙げられ、押出機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機が挙げられる。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、硬化剤と混合して電気部品、塗料および接着剤として好適に使用できる。硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミンなどのアミン系硬化剤、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系硬化剤、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などのフェノール系硬化剤、2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールなどのイミダゾール系硬化剤、トリフェニルホスフィンなどのリン系硬化剤、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩などの光・紫外線硬化剤が挙げられる。本発明の樹脂組成物100質量部に対する硬化剤の添加量は、光・紫外線硬化剤を用いた場合に0.1〜10質量部、それ以外の硬化剤を用いた場合に1〜200重量部であることが好ましい。
さらに本発明の樹脂組成物には、硬化促進剤、顔料、充填材、増感剤、反応希釈剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐侯剤、光安定剤、核剤、滑剤、離型剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、粘着性付与剤、帯電防止剤、補強剤等の配合剤を添加して用いてもよい。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性に優れることから、半導体やLEDの封止剤用として、凹凸を有する基盤上に塗布して用いることもできる。また、本発明の樹脂組成物と硬化剤とを混合して得られる封止剤は、半導体やLEDの封止剤として好適に使用できる。
【0022】
さらに本発明の樹脂組成物と硬化剤との混合物から形成されているフィルムまたはシートは、接着フィルムまたはシートとして使用できる。該フィルムまたはシートの製造方法としては、例えば、溶液キャスト法、押出成形法、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法、ラミネーション成形、プレス成形が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
1.メルトフローレート
JIS K 7210に従って190℃、21.2Nで測定を行った。
【0025】
2.エポキシ基含量
WO/2008/081791に示される方法に準じて測定を行った。
【0026】
3.トルエン溶解性
110ccのスクリュー瓶にエチレン−(メタ)アクリレート共重合体1gと、トルエン50gを計量した。上記スクリュー瓶を40℃に設定した水バス中に設置し、5分おきに取り出して振盪するとともに、溶解状態の確認を行い、溶解に要した時間(分)を記録した。
【0027】
実施例、比較例に用いた(A)、(B)の樹脂、重合体について、物性などを下記に示す。
【0028】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)
(A−1):エチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体(メタクリル酸メチル=27重量%、メタクリル酸グリシジル=5wt%)、MFR(190℃)=380g/10min
(A−2):エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(メタクリル酸グリシジル=12重量%)、MFR(190℃)=3g/10min
(A−3):エチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体(メタクリル酸メチル=27重量%、メタクリル酸グリシジル=6重量%)、MFR(190℃)=7g/10min
【0029】
エポキシ樹脂(B)
(B):スミエポキシESCN220−HH(住友化学(株)製クレゾールノボラックエポキシ樹脂)
【0030】
(実施例1−1、比較例1、2)
(A−1)、(A−2)、(A−3)の溶解試験の結果を表1に示す。(A−2)、(A−3)は(A−1)に比べて溶解に時間を要した。
【0031】
【表1】

【0032】
トルエンに対し溶解した(A−1)をエポキシ樹脂と混合して、樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を用いて、接着強度の測定を行った。
【0033】
接着強度は以下の方法で行った。110ccのスクリュー瓶にエポキシ樹脂(B)、(A−1)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化剤、以後イミダゾールと記す)、トルエンを、各例に記載したように計量した。固形分濃度は30wt%とした。上記スクリュー瓶を40℃に設定した水バス中に1時間置き、各成分をトルエンに溶解させた。
得られたトルエン溶液をアルミニウムシート(200μmt)上に塗布し、トルエンを揮散させた後、別のアルミニウムシート(200μmt)を塗布面に載せて150℃に設定したヒートシーラーで1時間硬化させた。ヒートシールの圧力は3kg/cmであった。
ヒートシール後1日置いたサンプル(1cm幅)を、2枚のアルミニウムシートをそれぞれチャックで掴むように引張試験機にセットして180°剥離を行い、その剥離強度を測定し、サンプルの接着強度(kg/cm)とした。
【0034】
(実施例1−2)
(A−1) 0.83g、(B) 7.7g、イミダゾール 0.17g、トルエン 19gを用いた。結果を表2に示す。
【0035】
(比較例3)
(B) 8.1g、イミダゾール 0.17g、トルエン 19gを用い、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は用いなかった。結果を表2に示す。実施例1−2に比べて接着強度が低かった。
【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を0.03〜10重量%含有し、190℃におけるメルトフローレートが100g/10min以上であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、前記(A)とは異なるエポキシ樹脂(B)とを含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)が、エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルとを共重合して得られるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)が、エチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル、および(メタ)アクリル酸グリシジルとは異なるアクリル酸エステルの少なくとも3種類のモノマーを共重合して得られるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)の含有量が30〜1重量%であり、(B)の含有量が70〜99重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物(ただし該樹脂組成物を100重量%とする)。
【請求項5】
封止剤用である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の封止剤用樹脂組成物と、硬化剤を混合して得られる封止剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物と硬化剤との混合物から形成されている、接着フィルムまたはシート。

【公開番号】特開2011−46798(P2011−46798A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195306(P2009−195306)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】