説明

樹脂組成物、樹脂成形物及びその製造方法、ベルト張架装置、プロセスカートリッジ、並びに画像形成装置

【課題】樹脂成形物を成形したときに、初期における抵抗値の調整が容易で、かつ、経時における抵抗値の上昇を抑制できる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸と、無機プロトン酸と、導電性高分子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物および該樹脂組成物を用いて成形される画像形成装置用の樹脂成形物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂成形物及びその製造方法、ベルト張架装置、プロセスカートリッジ、並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転写ベルト等の電子写真機器部材に用いる導電性組成物は、好適に使用するためには電気抵抗の制御が必須である。
従来、導電性組成物には、イオン導電剤、カーボンブラック等の導電剤を添加して抵抗の制御を行なってきた。
【0003】
また、抵抗変動の原因となる水分の影響を受けにくく、かつ、電圧を変化させた場合の抵抗変動も小さい導電剤として、酸を添加することにより導電性を発現するポリアニリンが知られている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3409232号公報
【特許文献2】特開2005−194528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ポリアニリンのような導電性高分子を用いる場合、添加する酸の種類によっては、初期において適切な抵抗値が得られなかったり、初期の抵抗値は適切でも経時において抵抗値が上昇したりすることが明らかとなった。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、樹脂成形物を成形したときに、初期おける抵抗値の調整が容易で、かつ、繰り返し使用時における抵抗値の上昇を抑制できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記樹脂組成物を利用した樹脂成形物及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記樹脂組成物を利用した画像形成装置用プロセスカートリッジ、ベルト張架装置及び画像形成装置を提供することをも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
請求項1に係る発明は、
酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸と、無機プロトン酸と、導電性高分子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸と前記無機プロトン酸との配合比(モル比〔前記酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸/前記無機プロトン酸〕)が、3/7以上7/3以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物を用いて成形されることを特徴とする画像形成装置用の樹脂成形物である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
ロール形状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置用の樹脂成形物である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
ベルト形状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置用の樹脂成形物である。
【0011】
請求項6に係る発明は、
帯電ロール、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト、又は転写ロールに用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置用の樹脂成形物である。
【0012】
請求項7に係る発明は、
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置用の樹脂成形物を製造する方法であって、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物を200℃以上300℃以下の温度で熱処理する工程を含むことを特徴とする画像形成装置用の樹脂成形物の製造方法である。
【0013】
請求項8に係る発明は、
請求項5に記載のベルト形状の樹脂成形物と、該ベルト形状の樹脂成形物を内面側から張架する複数の張架部材と、を備えることを特徴とする画像形成装置用のベルト張架装置である。
【0014】
請求項9に係る発明は、
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形物を備えることを特徴とする画像形成装置用のプロセスカートリッジである。
【0015】
請求項10に係る発明は、
請求項9に記載のプロセスカートリッジを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
請求項11に係る発明は、
請求項8に記載のベルト張架装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂成形物を成形したときに、初期おける抵抗値の調整が容易で、かつ、経時における抵抗値の上昇を抑制できる樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記樹脂組成物を利用した樹脂成形物及びその製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、前記樹脂組成物を利用した画像形成装置用プロセスカートリッジ、ベルト張架装置及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸と、無機プロトン酸と、導電性高分子と、樹脂と、を含有して構成される。
樹脂組成物を上記構成とすることで、前記樹脂組成物を用いて樹脂成形物を成形した際、初期おける抵抗値の調整が容易となり、かつ、繰り返し使用時における抵抗値の上昇を抑制できる効果を奏する。
【0019】
上記効果が得られる原因の1つとして以下の理由が推定される。
即ち、抵抗調整に優れる無機プロトン酸は前記導電性高分子の内部にまで浸透するため、樹脂成形物を成形した際、初期の抵抗値を調整しやすい利点を有する一方で、前記導電性高分子の表面付近に結合した場合、外乱の影響を受けやすく、ドーピング効果を維持しづらく、加熱時や繰り返し使用時に抵抗上昇を引き起こしやすい欠点を有する。一方、酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸は、そのかさ高さにより、樹脂成形物を成形した際、外乱の影響を防ぐことができ、抵抗値を維持しやすい利点を有する一方、導電性高分子内部へは浸透しにくく初期の抵抗値には寄与しづらい欠点を有する。そこで、これらの酸を組み合わせて用いることで、各々の有する利点を同時に得るに留まらず、各々の有する欠点を相互に補うことも可能となり、その結果、初期抵抗値調整の容易性と繰り返し使用時の抵抗値上昇抑制との両立を図ることできるものと推定される。
【0020】
以下、樹脂組成物の各成分について説明する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、導電性高分子に対するドーパントとして、酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸の少なくとも1種と、無機プロトン酸の少なくとも1種と、を含有する。
【0021】
〔酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸(以下、「ドーパントA」ともいう)を少なくとも1種含有する。
即ち、前記ドーパントAは、1分子内に、少なくとも1つの酸基を有する。酸基は前記ドーパントAの1分子内に複数含まれていてもよい。
前記酸基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が挙げられる。中でも、前記効果をより効果的に得る観点からは、スルホ基が好ましい。
【0022】
さらに、ドーパントAは、1分子内に、総炭素数が10以上である炭化水素基を少なくとも1つ有することが好ましい。
前記総炭素数が10以上である炭化水素基としては、直鎖若しくは分岐の鎖状若しくは環状アルキル基、直鎖若しくは分岐の鎖状若しくは環状アルケニル基、直鎖若しくは分岐の鎖状若しくは環状アルキニル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基であって、総炭素数が10以上の基が挙げられる。
中でも、前記効果をより効果的に得る観点からは、直鎖若しくは分岐のアルキル基で置換されたアリール基であって、総炭素数が10以上の基が好ましく、直鎖アルキル基で置換されたアリール基であって、総炭素数が10以上の基がより好ましい。
【0023】
また、前記総炭素数が10以上である炭化水素基は、酸基及び炭化水素基以外の置換基で置換されていてもよい。
【0024】
酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
例えば、アミノナフトールスルホン酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、チモールブルー等を挙げることができる。
更に、多塩基酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、等を挙げることができる。
これらのうち、特に、ドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0025】
〔無機プロトン酸〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、無機プロトン酸(以下、「ドーパントB」ともいう)を少なくとも1種含有する。
無機プロトン酸の種類としては特に限定はなく、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ホウ酸、炭酸、過塩素酸等を挙げることができる。
中でも、リン酸、塩酸、硫酸が好ましく、リン酸がより好ましい。
【0026】
前述のドーパントA又は前述のドーパントBとしては、以下の酸解離定数を示す酸を少なくとも1種含むことが好ましい。
即ち、酸解離定数pKaが5以下であるプロトン酸を用いることが好ましく、pKaが1以上4以下の範囲のプロトン酸が特に好ましく用いられる。プロトン酸の形態としては1塩基酸、2塩基酸、3塩基酸、多塩基酸などいかなる形態の酸も用いることができる。例えば、3塩基酸であるリン酸の場合、リン酸に含まれる3個のプロトンのpKaは:pKa1=2.1,pKa2=7.2,pKa3=12.3であり、プロトンの2個分はpKaが5を超えるため、本実施形態においては、リン酸は、プロトン1個のみが有効なプロトン酸としてポリアニリンの構成単位ユニットに対して使用されるよう制御して添加する。プロトン酸の種類としては、例えば、スルホン酸化合物、カルボン酸化合物、ホスホン酸化合物が好適に用いられる。
【0027】
〔ドーパントの好ましい形態〕
以上で説明したドーパントAとドーパントBとの好ましい組み合わせとしては、前記効果をより効果的に得る観点からは、ドーパントAが、直鎖アルキル基で置換されたアリール基を有する有機酸(より好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸)であって、ドーパントBが、リン酸である組み合わせが好ましい。
【0028】
次に、前記効果をより効果的に得る観点から、ドーパントAとドーパントBとの好ましい添加量について説明する。
即ち、前記樹脂組成物中における、前記ドーパントAと前記ドーパントBとのモル比〔前記ドーパントA/前記ドーパントB〕は、3/7以上7/3以下が好ましく、5/5以上7/3以下がより好ましい。
また、前記樹脂組成物中における、ドーパントA及びドーパントBの総添加量は、導電性高分子の繰り返し単位1モルに対し、0.25モル以上1.2モル以下が好ましく、0.25モル以上0.75モル以下がより好ましい。
【0029】
〔導電性高分子〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、導電性高分子を少なくとも1種含有する。
前記導電性高分子の粒径としては、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
前記導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等を挙げることができるが、中でも、ポリアニリンが好ましい。本実施形態におけるポリアニリンは、上述の通り、導電材料として用いられるもので、該ポリアニリンの合成・構造については、特開平3−28229号公報に詳しく述べられている。
本実施形態におけるポリアニリンは、アニリン又はアニリン誘導体から酸化重合法にて容易に製造することができる。以下に示すように、ポリアニリンの主鎖中の構造単位は、酸化還元により、A:ロイコエメラルジン、B:エメラルジン、C:ペルニグラニリン、D:エメラルジン塩の4構造を取るとされている。
【0030】
【化1】

【0031】
この中でも、エメラルジン構造を持つポリアニリンがドーピングの時に一番高い電気伝導度を持ち、空気の中で安定なので一番有用である。ポリアニリンは通常においては酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはパーニグルアニリン構造がより少ないことが好ましく、より還元状態からドーピング処理することで効率よくドーピングすることができる。本実施形態では還元剤を用いて還元処理し、溶媒中に溶解し、ドーピング処理を行なうことで本実施形態の中間転写体を形成しうる樹脂組成物が得られる。
ここで、上記還元剤としては、フェニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等が好適に用いられる。
【0032】
ポリアニリンの合成は、特開平3−28229号公報に詳細に記載されているように、プロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度を保持しつつ、酸化剤を作用させて酸化重合を行い、プロトン酸を用いてドープされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポリアニリンという。)を生成させる。次いで、このドープされたポリアニリンを塩基性物質によって脱ドープすることによって得ることができる。
また、市販品としては、パニポール社製「Panipol PA」が挙げられる。
【0033】
なお、ポリアニリンは通常においては酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはパーニグルアニリン構造がより少ないことが好ましく、より還元状態からドーピング処理することで効率よくドーピングすることができる。本実施形態では、フェニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物や、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等の還元剤を用いて還元処理し、溶媒中に溶解し、ドーピング処理を行なうことで、脱ドープ状態のポリアニリンを得る。
【0034】
樹脂組成物中の脱ドープ状態のポリアニリンの添加量(使用量)は、発現させる導電度によって適宜調整される。一般的には、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対して、添加されるポリアニリンは、3質量部以上20質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
また、脱ドープ状態のポリアニリンの数平均分子量は、4000以上400000以下であることが好ましい。
【0035】
〔樹脂〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂を少なくとも1種含有する。
前記樹脂としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネートが挙げられる。
【0036】
(ポリアミドイミド)
前記ポリアミドイミドは、酸クロリド法またはイソシアネート法など公知の方法で製造することができる。
例えば、ポリアミドイミドは、酸成分と、ジアミンと、を有機極性溶媒中で、60℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上180℃以下に加熱しながら攪拌することで容易に製造することができる。
【0037】
上記酸成分としてはトリメリット酸およびその酸無水物または酸塩化物、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸およびこれらの酸無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、これらの中では反応性、耐熱性、溶解性などの点からトリメリット酸無水物および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等のシクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
【0038】
上記ジアミン(ジイソシアネート)としてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンおよびこれらのジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミンおよびこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンおよびこれらのジイソシアネート等が挙げられ、これらの中では耐熱性、機械的特性、溶解性などから4,4’−ジアミノジフェニルメタン(ジイソシアネート)、イソホロンジアミン(ジイソシアネート)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(ジイソシアネート)等が好ましい。
【0039】
前記有機極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド等を挙げることができる。これらの有機極性溶媒には、必要に応じて、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類を混合することができる、これらの溶剤も、単独で又は2種類以上の混合物として用いることができる。
【0040】
(ポリアミック酸)
前記ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重縮合させてなるものであり、例えば、前記両性分を実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られるものである。なお、ポリアミック酸は、部分イミド化していてもよい。
以下、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物について説明する。
【0041】
〜テトラカルボン酸二無水物〜
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
【0042】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0043】
本実施形態に使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
〜ジアミン化合物〜
次に、ポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’ −ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’ −ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’ −(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’ −(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’ −メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
【0045】
本実施形態に使用されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’ −ジアミノジフェニルエーテル、4,4’ −ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’ −ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
〜テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との好ましい組み合わせ〜
本実施形態におけるポリアミック酸としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとからなるものが好ましい。さらにはビフェニルテトラカルボン酸二無水物とオキシジアニリンからなるものが好ましい。
【0047】
〜合成溶媒〜
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更には、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。
【0048】
〜ポリアミック酸重合時の固形分濃度〜
ポリアミック酸重合時の反応溶液中の固形分濃度は特に規定されるものではないが、5質量%以上50質量%以下が好ましく、特に10質量%以上30質量%以下が好適である。固形分濃度が5質量%未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する場合がある。また、重合時の固形分濃度が、50質量%より高いと原料モノマーの不溶部が生じ反応が進行しない場合がある。
【0049】
〜ポリアミック酸重合温度〜
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃以上80℃以下の範囲で行われることが好ましい。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなる場合があり、反応系の攪拌が十分に行うことができなくなる場合がある。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合と平行して、一部イミド化反応が起こる場合があるため、反応制御の点で問題がある場合がある。
【0050】
〔溶媒〕
本実施形態にかかる樹脂組成物は、溶媒の少なくとも1種を含有してもよい。
前記溶媒としては特に限定はないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更には、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。
【0051】
この溶媒は樹脂組成物を調製する際に用いられてもよい。また、この溶媒は、上述のポリアミック酸重合時から使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸重合後の溶液に、所定量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリイミドポリマーを再沈殿した後に、所定の溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら所定の溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれでもよい。
ポリアミック酸組成物中のポリアミック酸の濃度は、10質量部以上50質量部以下の範囲で調整されることが好ましい。
【0052】
また、この溶媒はポリアニリン液を調製する際に用いられてもよい。その場合、ポリアニリン液中のポリアニリンの含有量は、0.1質量%以上30質量%以下の範囲で調整されることが好ましい。
【0053】
〔添加剤〕
また、樹脂組成物に添加することができる任意成分(添加剤)としては、カーボンブラック等が挙げられる。
【0054】
(カーボンブラック)
任意成分であるカーボンブラックは、例えば、樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形物の抵抗値を調整する目的で用いられる。
例えば、ポリアミック酸組成物を用いて、電子写真方式の画像形成装置に適用されるポリイミド無端ベルトを得る場合、カーボンブラックの添加量は、ポリアミック酸組成物中のポリアミック酸100質量部に対して、0質量部以上20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。カーボンブラックの添加量が20質量部を超えると所望の抵抗値が得られ難くなる。更に、カーボンブラックを5質量部以上10質量部以下含有させることにより、その効果が最大限発揮させることができ、表面抵抗率の面内ムラや電界依存性を顕著に向上させることができる。
【0055】
以上、樹脂組成物について説明したが、これらの実施の態様のみについて限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0056】
<画像形成装置用の樹脂成形物及びその製造方法>
本実施形態に係る画像形成装置用の樹脂成形物は、前述の樹脂組成物を用いて成形される。この際、ロール形状やベルト形状に成形される形態が好適である。
【0057】
ロール形状の画像形成装置用の樹脂成形物は、帯電ロール、又は転写ロールなどに適用することができる。
また、ベルト形状の画像形成装置用の樹脂成形物は、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、又は定着ベルトなどに適用することができる。当該ベルトを複数の回転可能な張架部材に張架させて、ベルト張架装置とすることができる。
【0058】
以下、樹脂成形物の製造方法の例として、無端ベルトの製造方法の例について説明する。
無端ベルトの製造方法は、以下(1)〜(4)の4つの形態に大別することができる。
(1) 前述の樹脂組成物を塗布液状に構成し、円筒状の金型を用い、その内側または外側に、前記樹脂組成物を塗布し、熱処理して乾燥あるいは硬化させた後、金型から取り出し、継目のない無端ベルトとする形態である。
(2) 前述の樹脂組成物を熱処理し、リングダイ等よりチューブ押し出し成形し、適当な長さに切り取り、継目のない無端ベルトとする形態である。
(3) 前述の樹脂組成物を熱処理し、Tダイなどよりフィルム状に押出し成形し、適当な大きさに切り出し、対向する両端部を互いに継ぎ合せ、無端状ベルトとする形態である。
(4) 前述の樹脂組成物を塗布液状に構成し、前記樹脂組成物をTダイ等の押し出しコートにより成膜し、熱処理して乾燥あるいは硬化させてシート状に成形した後、該シートを必要な大きさに切り出し、対向する両端部を互いに継ぎ合せて無端状ベルトとする形態である。
【0059】
以下、上記(1)の形態について、ポリアミドイミド樹脂組成物を用いた場合の具体例について説明する。
この形態は、ポリアミドイミド樹脂組成物を、200℃以上300℃以下の最高温度で加熱する加熱工程を有する形態である。
【0060】
詳細には、まず、ポリアミドイミド樹脂組成物を、円筒形基材である円筒状金型の内面若しくは外面に塗布する(塗布工程)。
なお、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の円筒形の成形型を用いることもできる。また、金型や成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。
なお、円筒状金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒形金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し、円筒状金型上の溶液の厚みを均一にする方法を適用してもよい。ここで、円筒状金型上へ塗布液を塗布する段階で、塗布液の均一な厚み制御がなされていれば、特に、膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
【0061】
次に、ポリアミドイミド樹脂組成物が塗布された円筒状金型を、回転しながら加熱する環境に置き、ポリアミドイミド樹脂組成物中の溶媒の30質量%以上好ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行う(1次乾燥処理)。
この際、乾燥温度は50℃以上150℃以下の範囲であることが好ましい。
【0062】
更に、この円筒状金型を、少なくとも200℃以上300℃以下の最高温度で10分間以上60分間以下加熱して、溶剤を揮発させる(2次乾燥処理)。
なお、この2次乾燥処理が、樹脂成形物の製造方法の熱処理する工程に相当する。なお、以下では、この2次乾燥処理を適宜、加熱工程と称する。
【0063】
加熱工程において、最高温度が200℃を下回ると、得られる半導電性部材の1次乾燥処理及び2次乾燥処理が不十分となる場合があり、機械的特性が低下する場合がある。加熱工程において、最高温度が300℃を上回る場合には、ポリアニリンの分解劣化を生じることにより、得られる半導電性部材の機械的特性が低下する場合があると共に、導電効率が低下する場合がある。
【0064】
この加熱工程における最高温度を、200℃以上300℃以下内の何れの温度に設定するかは、得られる部材の膜厚や金型の伝熱状況に応じて適宜設定することが好ましい。
【0065】
なお、円筒形金型上に塗布したポリアミドイミド組成物による塗膜中に、溶剤が残留していると、塗膜に膨れを生じることがあるため、上記最高温度に達するまでに、完全に残留溶剤を除去することが好ましい。このため、この加熱工程では、温度を最高温度まで段階的に上昇させたり、ゆっくりと上昇させたりすることが好ましい。
【0066】
また、この加熱工程における最高温度の保持時間は、得られる部材の膜厚や金型の伝熱状況や、最高温度により異なるが、10分以上であればよく、具体的には下記関係を満たせばよい。
すなわち、上記加熱工程における、ポリアミドイミド樹脂組成物を加熱するときの最高温度X(℃)と、この最高温度の保持時間Y(hr)と、は、アレニウス則の反応速度と温度との関係に基づき、
(式) Y・2(X−200)/10≦128の関係を満たしていればよい。
【0067】
上記「Y・2(X−200)/10」によって示される値が128より大きいと、ポリアニリンの導電効率が悪く、ポリアニリンが熱劣化するという問題が生じることがある。
【0068】
上記加熱工程の後に、円筒状金型からポリアミドイミド樹脂を取り外し、半導電性部材を得ることができる。
【0069】
次に、上記(3)、(4)の方法において、対向する両端部を継ぎ合わせる構成について説明する。
当該構成としては、(a)一端部及び他端部を互いに噛合させるパズルカットシーム(例えば、特開平11−325189号公報、特開平8−99737号公報、特開2000−145895参照)や、(b)一端部及び他端部を互いに重ね合わせるオーバーラップシーム(例えば、特開2000−66907号公報参照)、(c)一端部及び他端部を互いに突き合わせる突き合せシーム(例えば、実開平4−70668号公報参照、特開平11−282260号公報参照、特開2001−215817号公報参照)、等が挙げられる。
上記のうち、継ぎ合わせ部の段差低減の観点、継ぎ合わせ部の強度の観点、形成された無端ベルトを繰り返し使用したときの位置精度向上及びバンディング低減の観点、等からは、(a)パズルカットシームが好ましい。
【0070】
ここで、(a)パズルカットシームの好ましい形態について、図1から図3を参照して説明する。
図1は、ベルト状樹脂成形物の一端部1及び他端部2に、パズルカットシームを設けた様子を示す図である。パズルカットシームにより、一端部1及び他端部2が互いに噛み合って結合し、無端ベルトが形成される。
この際、図2に示すように、噛合部(継ぎ合わせ部)3に補助シート剤4を沿わせて補強することができる。補助シート剤4としては、熱可塑性又は熱硬化性のシート状接着剤を用いてもよいが、生産性の観点等からは、樹脂成形物と同一素材の補助シート剤を用い、超音波溶着にて、一端部1と他端部2と補助シート剤4とを一体に溶着することが好ましい。
また、図3に示すように、噛合部(継ぎ合わせ部)3がベルト状樹脂成形物周方向Lに対して傾斜する構成とすることが好ましい。このときのベルト状樹脂成形物幅方向に対する噛合部(継ぎ合わせ部)3の傾斜角θ(鋭角)としては2°以上5°以下が好適である。
【0071】
また、上記(3)、(4)の方法において、継ぎ合わせ部を固定する手段としては、(A)継ぎ合わせ部を、熱可塑性又は熱硬化性のシート状接着剤により、熱圧を用いて固定する手段(例えば、特開平11−325189号公報、特開平8−99737号公報、特開2000−145895参照)、(B)継ぎ合わせ部を、超音波を用いて溶着して固定する超音波溶着手段(例えば、特開2001−187423号公報、実開平4−70668号公報参照、特開平11−282260号公報参照、特開2001−215817号公報参照)が挙げられる。
上記のうち、継ぎ合わせ部の段差低減の観点、継ぎ合わせ部の強度の観点、形成された無端ベルトを繰り返し使用したときの位置精度向上及びバンディング低減の観点、等からは、(B)超音波溶着手段が好ましい。
(B)超音波溶着手段に用いる超音波溶着機としては、ブランソン社(日本エマソン(株))やプロソニック(株)から提供されている各種の超音波溶着機を用いることができる。超音波溶着機の振動子(コンバータ)の周波数は高い方がよく、40kHz以上が望ましい。出力は大きい方が良く、800W以上が好ましく、1000W以上がより好ましい。
【0072】
以上、無端ベルトの製造方法について説明したが、前記製造方法は無端ベルトに限らず、帯電ロール、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト等、その他の樹脂成形物にも同様に適用できる。
即ち、本実施形態に係る樹脂成形物は、前記樹脂組成物を200℃以上300℃以下で熱処理する工程を含んで製造できる。樹脂組成物中に前記ドーパントAを含有せず、前記ドーパントBのみを含有した場合、前記温度範囲の熱処理によりドーピング効果が失われ、形成された樹脂成形物の抵抗値が上昇することがあるが、ドーパントAとドーパントBとを併用することで、抵抗値上昇を抑制することができる。
【0073】
前記熱処理の温度は、200℃以上300℃以下であることが必要であり、200℃以上250℃以下であることがより好ましい。
また熱処理は、樹脂組成物を調製した後であれば、いかなる時期に行なってもよいが、好ましくは、150℃以下の1次乾燥処理後、200℃以上300℃以下(好ましくは200以上250℃以下)の熱処理を行うことが好ましい。
【0074】
以上で説明した樹脂成形物は、前述の樹脂組成物を用いて形成されるため、初期において適切な抵抗値を示し、繰り返し使用時における抵抗値上昇が抑制される。このため、画像形成装置に適用した場合、初期及び繰り返し使用時における画質の向上に寄与する。
【0075】
<画像形成装置用プロセスカートリッジ、画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、上記樹脂成形物を具備するものであれば如何なる構成であってもよい。具体的には、例えば、装置内に単色(通常は黒色)画像を形成するモノカラー電子写真装置や、感光体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、色毎の現像器を備えた複数の感光体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。
上記樹脂成形物を備えた画像形成装置用プロセスカートリッジおよび画像形成装置は、上記樹脂成形物を備えるため、初期及び繰り返し使用時において優れた画像性能を発揮することができる。
【0076】
図4は、画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。図4に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体(図示せず)に、電子写真感光体10を備えるプロセスカートリッジ20と、露光装置(潜像形成装置)30と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体10に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体10に対向する位置に配置されており、中間転写体50は電子写真感光体10に突き当たった状態で接触できるように配置されている。
【0077】
プロセスカートリッジ20は、ケース内に電子写真感光体10とともに、帯電装置21、現像装置25、クリーニング装置27及び繊維状部材(平ブラシ状)29を組み合わせて一体化し、画像形成装置本体に取り付けレールにより取り付けられるものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
【0078】
図4における帯電装置21に、前述の樹脂成形物を適用することができる。
また、現像装置25は、電子写真感光体10上の静電潜像を現像してトナー像を形成するものである。
【0079】
クリーニング装置27は、繊維状部材(ロール形状)27aやクリーニングブレード(ブレード部材)27bを備える。図4に示すクリーニング装置27では、繊維状部材27a及びクリーニングブレード27bが設けられているが、クリーニング装置としてはどちらか一方を備えるものでもよい。繊維状部材27aとしては、ロール形状の他に歯ブラシ状としてもよい。また、繊維状部材27aは、クリーニング装置本体に固定してもよく、回転可能に支持されていてもよく、さらに感光体軸方向に往復動作可能に支持されていてもよい。
【0080】
クリーニング装置27には、クリーニングブレード、クリーニングブラシで感光体表面の付着物(例えば、放電生成物)を除去することが求められ、繊維状部材27aに、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイルなどの潤滑性物質(潤滑成分)14を接触させ、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することが好適である。

【0081】
以上説明したプロセスカートリッジ20は、画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0082】
露光装置30としては、帯電した電子写真感光体10を露光して静電潜像を形成させるものであればよい。また、露光装置30の光源としては、マルチビーム方式の面発光レーザーを用いることが好ましい。
【0083】
転写装置40としては、電子写真感光体10上のトナー像を被転写媒体(図4では被転写媒体として中間転写体50を示しているが、中間転写体50の代わりに記録媒体搬送ベルト(図示せず)を用い、その記録媒体搬送ベルトに保持された用紙や、中間転写体50を用いずに、直接転写するための用紙であってもよい。)に転写するものであればよく、例えば、ロール形状の通常使用されるものが使用される。
【0084】
中間転写体50としては、前述の樹脂成形物を適用し、ベルト形状(例えば、前述の無端ベルト)に構成することができる。中間転写体50の形態としては、ベルト形状以外にドラム形状のものを用いることもできる。
また、中間転写体50の代わりに記録媒体搬送ベルトを用いた場合、この記録媒体搬送ベルトには、前述の樹脂成形物を適用することができる。
【0085】
本実施態様でいう被転写媒体とは、電子写真感光体10上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体10から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体50を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
【0086】
図5は、画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。図5に示す画像形成装置110は、電子写真感光体10が画像形成装置本体に固定され、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。なお、図5における帯電装置22は、コロナ放電方式により帯電させる帯電装置を備えているが、接触方式の帯電装置であってもよい。
【0087】
画像形成装置110においては、電子写真感光体10とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27が画像形成装置本体に固定されることなく、例えば引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
【0088】
本実施態様の電子写真感光体では、カートリッジ化することが不要となる場合がある。したがって、帯電装置22、現像装置25又はクリーニング装置27をそれぞれ本体に固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもできる。
【0089】
なお、画像形成装置110は、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されている以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0090】
図6は、画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。画像形成装置120は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
【0092】
〔実施例1〕
<ポリアニリン溶液の調製>
10L−セパラブル・フラスコに、イオン交換水6000g、35%塩酸400ml、及びアニリン400g(4.295モル)を仕込み、攪拌を行ってアニリンを溶解させた。
ビーカー容器に、氷水にて冷却しながら、イオン交換水1493gに、酸解離定数pka値4.0以下のプロトン酸である濃硫酸434g(4.295モル、97%濃硫酸)を添加・混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液をアニリン溶液に氷冷しながら徐々に加えた。
【0093】
次に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モル)をイオン交換水2300gに溶解させた酸化剤水溶液を、アニリン溶液に−4℃以下に氷冷しながら徐々に滴下した。滴下後、無色透明の溶液は、酸化重合の進行に伴って緑青色から黒緑色となり、次いで、黒緑色の粉末が析出した。そして、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下後、更に1時間、攪拌を続けた。
得られた粉末を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、硫酸にてドープされた導電性ポリアニリン430gを黒緑色の粉末として得た。
【0094】
続いて、ドープ状態の導電性ポリアニリン粉末350gを、2Nアンモニア水4L中に加え、オートホモミキサーにて回転数5000rpmにて5時間攪拌することにより、脱ドープ状態のポリアニリン分散液(濃度7質量%)を得た。この分散液を、ブフナー漏斗にて濾別し、蒸留水にて洗浄し、更に中性になるまでアセトンにて洗浄した。その後粉末を10時間乾燥し、黒褐色の脱ドープ粉体280gを得た。この粉末50gをN−メチル−2ピロリドン950gに溶解して5質量%の脱ドープ状態のポリアニリン溶液を得た。
【0095】
<塗液(ポリアミドイミド樹脂組成物)の調製>
上記の方法で調製した脱ドープ状態のポリアニリン溶液300gに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.7モル及びリン酸0.3モルを加えた溶液を、ポリアミドイミド樹脂のN−メチル−2ピロリドン溶液(東洋紡績(株)バイロマックス HR16NN 濃度15質量%)900gに加え、攪拌羽根付き容器を用いて30分間攪拌した。これにより、脱ドープ状態のポリアニリンと、ドーパントAであるドデシルベンゼンスルホン酸と、ドーパントBであるリン酸と、ポリアミドイミドとからなる塗液(ポリアミドイミド樹脂組成物)を得た。
【0096】
<ポリアミドイミド無端ベルトの製造>
上記で得られた塗液(ポリアミドイミド樹脂組成物)を、Φ170mm、長さ500mmのアルミ製円筒状金型表面に厚さ640μmに均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にシリコーン系の離型剤を予め塗布することで、成形後の半導電性部材の剥離性を向上させている。
その後、円筒状金型を回転させながら、温度120℃の条件で30分間乾燥処理(一次乾燥処理)を行った。一次乾燥処理後、円筒状金型をオーブンに入れ、200℃で30分、260℃で30分、と段階的に昇温して二次乾燥処理(加熱工程)を行った。
続いて、円筒状金型を室温で放冷し、金型から半導電性部材を取り外し、厚さ80μmのポリアミドイミド無端ベルトを得た。
【0097】
<評価>
【0098】
(表面抵抗率の測定)
上記で得られたポリアミドイミド無端ベルトについて、初期(下記装置に組み込む前)の表面抵抗率及び富士ゼロックス社製電子写真装置(DocuCentreColor400CP)に中間転写ベルトとして組み込み10万枚通紙した後の表面抵抗率を、それぞれ測定した。
表面抵抗率は、ベルトの表面に沿って流れる電流と平行方向の電位傾度を、表面の単位幅当たりの電流で除した数値である。この数値は、各辺1cmの正方形の相対する辺を電極とする二つの電極間の表面抵抗に等しい。表面抵抗率の単位は、正式には(Ω)だが、単なる抵抗と区別するため(Ω/□)と記載されるのが一般的である。従って、本願においては、(Ω/□)と(Ω/cm2)は同等の単位である。
得られたポリアミドイミド無端ベルトの表面抵抗率の測定には、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト社製)、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP−HTP12、及びレジテーブルUFL MCP−ST03(何れも、株式会社ダイアインスツルメンツ社製)を用い、JIS K6911(1995)に準拠して行った。
なお、測定の際の試験片は、実施例・比較例にて製造したベルト片を用いた。
【0099】
レジテーブルUFL MCP−ST03(フッ素樹脂面を使用)上に、測定面を上にして、試験片を置き、測定面に接するようにURプローブMCP−HTP12の二重電極を当てた。なお、URプローブMCP−HTP12の上部には質量2.00kg±0.10kg(19.6N±1.0N)の錘を取り付け、試験片に一様な荷重がかかるようにした。
【0100】
R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の測定条件は、チャージタイムを30sec、ディスチャージタイムを1sec、印加電圧を100Vとした。
この時、試験片の表面抵抗率をρs、R8340Aデジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、URプローブMCP−HTP12の表面抵抗率補正係数をRCF(S)とすると、三菱化学「抵抗率計シリーズ」カタログによればRCF(S)=10.00なので、下記式(1)のようになる。
すなわち、式(1):ρs[Ω/□]=R×RCF(S)=R×10.00となる。
【0101】
本実施例の条件下では、初期の表面抵抗率(logΩ/□)が9.0以上13.0以下であれば実用上許容範囲内である。また、本実施例の条件下では、10万枚処理後の表面抵抗率(logΩ/□)−初期の表面抵抗率(logΩ/□)が1.0以下であれば、実用上許容範囲内である。
【0102】
(画質評価)
得られたポリアミドイミド無端ベルトを富士ゼロックス社製電子写真装置(DocuCentreColor400CP)に中間転写ベルトとして組み込み、100,000枚通紙後に画質評価を行った。
画質評価の項目としては、ブラーの有無および黒点の有無を、目視にて確認した。評価基準は以下の通りである。
【0103】
−ブラーの有無−
A:ブラーの存在が全く確認されない。
B:ブラーの存在は確認されたが、実用上問題の無い範囲。
C:ブラーが多数存在し、実用上問題がある。
なお、ブラーとは、画像のエッジ部のトナーの飛散をいう。
【0104】
−黒点の有無−
A:黒点の存在が全く確認されない。
B:黒点の存在は確認されたが(1個以上5個以下)、実用上問題の無い範囲。
C:黒点が多数存在し(6個以上)、実用上問題がある。
なお、黒点については、100,000枚通紙後に、全面が白の画像をプリントし、この画像中の黒点を確認することにより評価した。
【0105】
〔実施例2〜12、比較例1〜3〕
実施例1において、樹脂組成物の各成分を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして無端ベルトを作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。

【0106】
【表1】

【0107】
〜表1中の用語の説明〜
・ドーパントA ・・・ 酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸
・ドーパントB・・・ 無機プロトン酸
・PAI ・・・ ポリアミドイミド
・PI ・・・ ポリイミド
【0108】
表1に示すように、実施例1〜実施例12では、樹脂成形物を成形したときに、初期おける抵抗値が適切で、かつ、経時における抵抗値の上昇を抑制できた。実施例3、4は、20万枚処理した後も、ブラー、黒点の発生が見られなかった。
一方、ドーパントAを含有しなかった比較例1、ドーパントAの代わりに酸基を除く部位の総炭素数が10未満である有機酸を用いた比較例3では、経時における抵抗値の上昇が認められ、ドーパントBを含有しなかった比較例2では、初期における抵抗値が高く、いずれも実用上の許容範囲を超えていた。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施形態に係るベルト形状の樹脂成形物の好ましい形態を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るベルト形状の樹脂成形物の好ましい形態を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係るベルト形状の樹脂成形物の好ましい形態を示す模式図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置を示す模式図である。
【図5】他の実施形態に係る画像形成装置を示す模式図である。
【図6】他の実施形態に係る画像形成装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0110】
10 電子写真感光体
20 プロセスカートリッジ
21、22 帯電装置
25 現像装置
27 クリーニング装置
30 露光装置
40 転写装置
50 中間転写体
100、110、120 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸と、無機プロトン酸と、導電性高分子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸と前記無機プロトン酸との配合比(モル比〔前記酸基を除く部位の総炭素数が10以上である有機酸/前記無機プロトン酸〕)が、3/7以上7/3以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物を用いて成形されることを特徴とする画像形成装置用の樹脂成形物。
【請求項4】
ロール形状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置用の樹脂成形物。
【請求項5】
ベルト形状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置用の樹脂成形物。
【請求項6】
帯電ロール、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト、又は転写ロールに用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置用の樹脂成形物。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置用の樹脂成形物を製造する方法であって、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物を200℃以上300℃以下の温度で熱処理する工程を含むことを特徴とする画像形成装置用の樹脂成形物の製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載のベルト形状の樹脂成形物と、該ベルト形状の樹脂成形物を内面側から張架する複数の張架部材と、を備えることを特徴とする画像形成装置用のベルト張架装置。
【請求項9】
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形物を備えることを特徴とする画像形成装置用のプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスカートリッジを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8に記載のベルト張架装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−96867(P2009−96867A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269101(P2007−269101)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】