説明

樹脂組成物、Bステージシート、樹脂付金属箔、金属基板、及びLED基板

【課題】高い熱伝導率と高い電気絶縁性を有する樹脂硬化物を形成可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物に、ビフェニル骨格を有する2官能のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、含有率が60体積%以上であるアルミナ粒子群とを含有させ、硬化物とした場合に、前記硬化物の実比重の理論比重からの乖離率が5.0%以内となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、Bステージシート、樹脂付金属箔、金属基板、及びLED基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高密度化、コンパクト化の進行に伴い、半導体等の電子部品の放熱が大きな課題となっている。そのため高い熱伝導率と高い電気絶縁性を有する樹脂組成物が要求されるようになり、熱伝導性封止材や熱伝導性接着剤として実用化されている。
【0003】
上記に関連して、液晶性を示すエポキシ樹脂とアルミナ粉末とを含むエポキシ樹脂組成物が開示され、高い熱伝導率と優れた加工性を有するとされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−13759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物では、十分な電気絶縁性が得られない場合があった。
本発明は、高い熱伝導率と高い電気絶縁性を有する樹脂硬化物を形成可能な樹脂組成物、並びにこれを用いて形成されるBステージシート、樹脂付金属箔、金属基板、及びLED基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ビフェニル骨格を有する2官能のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、含有率が60体積%以上であるアルミナ粒子群と、を含み、硬化物とした場合に、前記硬化物の実比重の理論比重からの乖離率が5.0%以内である樹脂組成物。
【0007】
<2> 前記アルミナ粒子群は、粒子径D50が7μm以上30μm以下である第一のアルミナ粒子群と、粒子径D50が7μm未満である第二のアルミナ粒子群の少なくとも1種とを含み、前記第二のアルミナ粒子群の総含有量に対する第一のアルミナ粒子群の含有比率(第一のアルミナ粒子群/第二のアルミナ粒子群)が質量基準で1.0以上12.0以下である前記<1>に記載の樹脂組成物。
【0008】
<3> 前記<1>又は<2>に記載の樹脂組成物の半硬化物からなるBステージシート。
【0009】
<4> 金属箔と、前記金属箔上に配置された前記<1>又は<2>に記載の樹脂組成物の半硬化体である半硬化樹脂層と、を備える樹脂付金属箔。
【0010】
<5> 金属支持体と、前記金属支持体上に配置された前記<1>又は<2>に記載の樹脂組成物の硬化体である硬化樹脂層と、前記硬化樹脂層上に配置された金属箔と、を備える金属基板。
【0011】
<6> 金属支持体と、前記金属支持体上に配置された前記<1>又は<2>に記載の樹脂組成物の硬化体である硬化樹脂層と、前記硬化樹脂層上に配置された金属箔からなる回路層と、前記回路層上に配置されたLED素子と、を備えるLED基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、高い熱伝導率と高い電気絶縁性を有する樹脂硬化物を形成可能な樹脂組成物、並びにこれを用いて形成されるBステージシート、樹脂付金属箔、金属基板、及びLED基板を提供することを課題とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、ビフェニル骨格を有する2官能のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、含有率が60体積%以上であるアルミナ粒子群と、を含み、硬化物とした場合に、前記硬化物の実比重の理論比重からの乖離率が5.0%以内である。
さらに前記樹脂組成物は、上記必須成分に加えて必要に応じて、その他の成分を含んで構成される。
【0015】
前記樹脂組成物に特定の含有率で含まれるアルミナ粒子群が特定の粒子径分布を有していることで、アルミナが高密度に充填される。これに加えて特定の骨格を有するエポキシ樹脂を含み、硬化物の実比重の理論比重からの乖離率が5.0%以内であることで、高い熱伝導性と高い電気絶縁性が達成される。さらに前記樹脂組成物は、例えば、Bステージシートを構成した場合に優れたシート可とう性を示す。
【0016】
前記樹脂組成物は、加熱加圧処理することで硬化物とすることができる。前記硬化物の実測される比重(実比重)は、所定の効果条件の下では、樹脂組成物の硬化反応の進行に伴って増加し、樹脂組成物の構成に応じた一定の値に収束する。
前記樹脂組成物は、硬化物にした場合の実比重の理論比重からの乖離率が5.0%以内であるが、熱伝導性の観点から、3.0%以内であることが好ましく、2.5%以内であることがより好ましい。
【0017】
ここで、本発明における前記樹脂組成物の硬化物は、以下の加熱加圧処理条件で得られるものとする。
すなわち加熱処理の条件として、30℃から170℃まで毎分3℃の昇温という一定の割合で昇温し、170℃に達した時点からさらに1時間保持した後、室温まで急冷して得られるものとする。なお、前記加熱処理は、2MPaの圧力下で開始し、加熱開始の100分後から5分間で0.7MPaまで一定の割合で圧力を低下させ、0.7MPaに達した後は加熱処理の終了までその圧力を保持するという加圧条件下で行われる。
【0018】
硬化物の比重とは密度としても理解することができる。従って、樹脂組成物の硬化物の実比重dとは、実測される硬化物の密度を意味し、アルキメデス法によって測定することができる。
また硬化物の理論比重dは、樹脂組成物の硬化物が、アルミナ粒子群と樹脂組成物中のアルミナ粒子群以外の成分(以下、「樹脂成分」ともいう)の硬化物とからなるとし、前記アルミナ粒子群の体積含有率がv体積%、且つ比重がdであり、前記樹脂成分の体積含有率がv体積%、且つ比重がdである場合に、下記式(1)で算出される。
= d×v/100+d×v/100 (1)
【0019】
具体例を挙げると、比重が3.98であるアルミナ粒子群を74体積%含み、アルミナ粒子群以外の樹脂成分由来の硬化物の比重が1.20である樹脂硬化物の理論比重は、下式により3.26となる。
3.98×0.74+1.20×0.26=3.26 (g/cm
なお、アルミナ粒子群及びアルミナ粒子群以外の樹脂組成物由来の硬化物の比重は実測値を使用する。また前記樹脂成分由来の硬化物は、アルミナ粒子群を配合しないこと以外は同様にして調製した樹脂組成物を所定の硬化方法により硬化することで得られる。
【0020】
また、前記理論比重からの減少を「乖離」と示すこととし、前記理論比重を基にしてアルキメデス法で求められた前記樹脂組成物の硬化物の実比重との差を理論比重で割ったものを乖離率とする。すなわち、乖離率は次の式(2)で表される。
乖離率={(理論比重−実比重)÷理論比重}(%) (2)
【0021】
前記乖離率を所定の範囲とする方法としては、例えば、後述するように粒子径D50が異なる複数種のアルミナ粒子群を適宜混合する方法や、分散剤やカップリング剤等の添加剤を適宜選択して用いる方法等を挙げることができる。
【0022】
[アルミナ]
前記樹脂組成物は、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50(以下、単に「粒子径D50」ともいう)が0.1μm以上30μm以下であるアルミナ粒子群を、前記樹脂組成物の全体積中に60体積%以上含んでいる。
前記アルミナ粒子群の含有率は、熱伝導性、電気絶縁性及びBステージシートの可とう性の観点から、樹脂組成物の総固形分中に、70体積%以上であることが好ましく、72体積%以上であることがより好ましい。
尚、樹脂組成物中の固形分とは、樹脂組成物を構成する成分から揮発性の成分を除去した残分を意味する。
【0023】
なお、アルミナ粒子群の粒子径D50は、レーザー回折法を用いて測定され、重量累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、重量累積が50%となる粒子径に対応する。
レーザー回折法を用いた粒度分布測定は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS230)を用いて行なうことができる。
【0024】
前記アルミナ粒子群は、粒子径D50が7μm以上30μm以下である第一のアルミナ粒子群と、粒子径D50が7μm未満である第二のアルミナ粒子群の少なくとも1種とを含むことが好ましく、前記第二のアルミナ粒子群の総含有量に対する第一のアルミナ粒子群の含有比率(第一のアルミナ粒子群/第二のアルミナ粒子群)が、質量基準で1.0以上12.0以下であることがより好ましい。
アルミナ粒子群が、粒子径D50が互いに異なる少なくとも2種のアルミナ粒子群を、特定の含有比率で含むことで樹脂硬化物の熱伝導性がより向上する。
【0025】
前記アルミナ粒子群が、互いに粒子径D50が異なる第二のアルミナ粒子群を2種以上含む場合、2種以上の第二のアルミナ粒子群の総含有量に対する第一のアルミナ粒子群の含有量の比率が1.0以上12.0以下であることが好ましい。
【0026】
前記第二のアルミナ粒子群に対する第一のアルミナ粒子群の含有比率(第一のアルミナ粒子群/第二のアルミナ粒子群)は、質量基準で1.0以上12.0以下であることが好ましいが、1.0以上8.0以下であることがより好ましく、1.0以上5.0以下であることがさらに好ましい。
前記含有比率がかかる範囲であることで、樹脂硬化物の熱伝導性がより向上する。また実比重の理論比重からの乖離率をより小さくすることができる。
【0027】
前記樹脂組成物に含まれるアルミナ粒子群が、互いに粒子径D50が異なる2種以上のアルミナ粒子群を含む場合、その粒子径分布は、2種以上のアルミナ粒子群の粒子径D50にそれぞれ対応する2つ以上のピークを有することになる。また、それぞれのピークのピーク面積は、それぞれのアルミナ粒子群の含有率に応じたものとなる。
【0028】
前記第1のアルミナ粒子群は、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が7μm以上30μm以下であることが好ましいが、7μm以上25μm以下であることがより好ましく、熱伝導性と電気絶縁性の観点から、10μm以上22μm以下であることがより好ましく、シートの平坦性を保つ観点から、15μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
また前記第2のアルミナ粒子群は、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が7μm未満であることが好ましいが、熱伝導性と電気絶縁性の観点から、0.1μm以上7μm未満であることが好ましく、シート中の空隙を低減する観点から、0.2μm以上7μm未満であることがより好ましい。
【0030】
前記第二のアルミナ粒子群の粒子径D50に対する第一アルミナ粒子群の粒子径D50の比は特に制限されない。熱伝導性とBステージシートの可とう性の観点から、前記第二のアルミナ粒子群の粒子径D50に対する第一アルミナ粒子群の粒子径D50の比は1.0以上10.0以下であることが好ましく、2.0以上8.0以下であることがより好ましい。
なお、前記第二のアルミナ粒子群が、粒子径D50が異なる2種以上のアルミナ粒子群からなる場合は、第二のアルミナ粒子群の粒子径D50は、第二のアルミナ粒子群全体としての粒子径D50を意味する
【0031】
前記アルミナ粒子群は、熱伝導性と電気絶縁性の観点から、第二のアルミナ粒子群の粒子径D50に対する第一アルミナ粒子群の粒子径D50の比が1.0以上10.0以下であって、第二のアルミナ粒子群の総含有量に対する第一のアルミナ粒子群の含有量の比率が1.0以上8.0以下であることが好ましく、第二のアルミナ粒子群の粒子径D50に対する第一アルミナ粒子群の粒子径D50の比が2.0以上8.0以下であって、第二のアルミナ粒子群の総含有量に対する第一のアルミナ粒子群の含有量の比率が1.0以上5.0以下であることがより好ましい。
【0032】
本発明におけるアルミナ粒子群は既述の粒子径分布を有するものであれば、結晶構造等に特に制限はなく、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ等のいずれからなるものであってもよい。中でも前記第一のアルミナ粒子群及び第二のアルミナ粒子群の少なくとも1種はα−アルミナであることが好ましく、α−アルミナのみから構成されることがより好ましく、α−アルミナの単結晶粒子からなるアルミナであることがさらに好ましい。
【0033】
前記第一のアルミナ粒子群及び第二のアルミナ粒子群は、市販のものから適宜選択することができる。また、遷移アルミナ又は熱処理することにより遷移アルミナとなるアルミナ粉末を、塩化水素を含有する雰囲気ガス中で焼成すること(例えば、特開平6−191833号公報、特開平6−191836号公報等参照)により製造したものであってもよい。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、前記アルミナ粒子群に加えて、アルミナを主成分とし、その数平均繊維径が1μm〜50μmである無機繊維を含んでいてもよい。本発明において「アルミナを主成分とする無機繊維」とは、アルミナを50質量%以上含む無機繊維を意味する。なかでも、アルミナを70質量%以上含む無機繊維であることが好ましく、アルミナを90質量%以上含む無機繊維であることがより好ましい。かかる無機繊維の数平均繊維径は、1μm〜50μmであるが、好ましくは1μm〜30μmであり、より好ましくは1μm〜20μmである。また、かかる無機繊維の繊維長は、通常0.1mm〜100mmである。
かかる無機繊維としては、通常、市販されているものが使用され、具体的には、アルテックス(住友化学株式会社製)、デンカアルセン(電気化学工業株式会社製)、マフテックバルクファイバー(三菱化学産資株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
かかる無機繊維を用いる場合のその含有量は、前記アルミナ粒子群の質量に対して、通常5質量%〜70質量%、好ましくは5質量%〜50質量%であり、アルミナと無機繊維の合計質量が、樹脂組成物の固形分中、通常30質量%〜95質量%となる量が用いられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物は前記アルミナに加えて、必要に応じてアルミナ以外の無機充填材をさらに含んでいてもよい。無機充填材としては例えば、非導電性のものとして、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等を挙げることができる。また導電性のものとして、金、銀、ニッケル、銅等を挙げることができる。これらの無機充填材は1種類又は2種類以上の混合系で使用することができる。
【0037】
[エポキシ樹脂]
本発明の樹脂組成物は、ビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂の少なくとも1種を含有する。前記エポキシ樹脂は、少なくとも1つのビフェニル骨格を含み、2つのエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はない。
具体的には例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂やビフェニレン型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0038】
前記ビフェニル型エポキシ樹脂としては、下記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
【0039】
【化1】

【0040】
一般式(III)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜10の置換もしくは非置換の炭化水素基を表し、nは0〜3の整数を表わす。
炭素数1〜10の置換もしくは非置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、及びイソブチル基等を挙げることができる。
なかでもR〜Rは、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0041】
上記一般式(III)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。このような化合物としてはYX−4000(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、YL−6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、YSLV−80XY(東都化成株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0042】
また前記ビフェニレン型エポキシ樹脂としては、下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0043】
【化2】

【0044】
一般式(IV)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数6〜10のアラルキル基を表し、nは0〜10の整数を示す。
【0045】
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、及びイソブチル基等を挙げることができる。炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基等を挙げることができる。炭素数6〜10のアリール基としては例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等を挙げることができる。また炭素数7〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、及びフェネチル基等を挙げることができる。
なかでもR〜Rは、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0046】
上記一般式(IV)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては例えば、NC−3000(日本化薬株式会社製商品名)が市販品として入手可能である。
【0047】
本発明におけるビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂としては、熱伝導性、電気絶縁性及びBステージシートの可とう性の観点から、前記一般式(III)又は一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を含むことが好ましく、一般式(III)で表される化合物の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物の全固形分における前記ビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂の含有率としては、特に制限はないが、熱伝導性、電気絶縁性及びBステージシートの可とう性の観点から、3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、4質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、前記ビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂に加えて、その他のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。その他のエポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有しないものであれば、従来公知のエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。
【0050】
具体的には例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの。
【0051】
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を含有するフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて併用して用いてもよい。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、Bステージシートを構成した場合の可とう性の観点から、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0053】
前記ナフタレン環を有するエポキシ樹脂としては少なくとも1つのナフタレン環と少なくとも1つのエポキシ基とを有する化合物であれば特に制限されない。例えば、HP4032D(DIC株式会社製)を挙げることができる。
【0054】
本発明の樹脂組成物が、その他のエポキシ樹脂(好ましくは、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂)を含む場合、その含有率には特に制限はないが、例えば、前記ビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂に対して0.01質量%以上15質量%以下とすることができ、0.01質量%以上12質量%以下であることが好ましい。かかる含有率であることで熱伝導率、電気絶縁性及びBステージシートの可とう性がより効果的に向上する。
【0055】
本発明の樹脂組成物が、その他のエポキシ樹脂(好ましくは、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂)を含む場合、ビフェニル骨格を有する2官能のエポキシ樹脂とその他のエポキシ樹脂の含有比(ビフェニル骨格を有する2官能のエポキシ樹脂/その他のエポキシ樹脂)には特に制限はない。例えば、可とう性の観点から、80/20以上とすることができ、90/10以上であることが好ましく、95/5以上であることがより好ましい。
【0056】
[フェノール樹脂]
前記樹脂組成物は、フェノール樹脂の少なくとも1種を含む。前記フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられるものから適宜選択して用いることができる。中でも熱伝導性と電気絶縁性の観点から、下記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物の少なくとも1種を含むフェノール樹脂(以下、「ノボラック樹脂」ということがある)を含むことが好ましい。前記フェノール樹脂は、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する。
特定の構造を有するフェノール樹脂を含むことで、熱伝導性がより効果的に向上し、さらに硬化前の状態における可使時間を十分に長くすることができる。
【0057】
【化3】

【0058】
一般式(I)においてRは、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、フェニル基又はアラルキル基を表し、mは0〜2の整数を表す。
【0059】
上記一般式(I)においてRは、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rで表されるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、可能であれば置換基をさらに有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、及び水酸基等を挙げることができる。
mは0〜2の整数を表し、mが2の場合、2つのRは同一であっても異なってもよい。本発明において、mは0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0060】
前記フェノール樹脂は、上記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物の少なくとも1種を含むものが好ましいが、上記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物の2種以上を含むものであってもよい。
【0061】
前記フェノール樹脂は、フェノール性化合物としてレゾルシノールに由来する部分構造を含むことが好ましいが、レゾルシノール以外のフェノール性化合物に由来する部分構造の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。レゾルシノール以外のフェノール性化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン等を挙げることができる。前記フェノール樹脂は、これらに由来する部分構造を1種単独でも、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
ここでフェノール性化合物に由来する部分構造とは、フェノール性化合物のベンゼン環部分から水素原子を1個又は2個取り除いて構成される1価又は2価の基を意味する。尚、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
【0062】
前記レゾルシノール以外のフェノール性化合物に由来する部分構造としては、熱伝導率、接着性、保存安定性の観点から、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる少なくとも1種に由来する部分構造であることが好ましく、カテコール及びヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種に由来する部分構造であることがより好ましい。
【0063】
また前記フェノール樹脂におけるレゾルシノールに由来する部分構造の含有比率については特に制限はないが、熱伝導率と保存安定性の観点から、フェノール樹脂の全質量中に、レゾルシノールに由来する部分構造の含有比率が55質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0064】
一般式(I)においてR及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、フェニル基又はアラルキル基を表す。R及びRで表されるアルキル基、フェニル基、アリール基及びアラルキル基は、可能であれば置換基をさらに有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、及び水酸基等を挙げることができる。
【0065】
本発明におけるR及びRとしては、保存安定性と熱伝導率の観点から、水素原子、アルキル基、フェニル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1から4のアルキル基又は炭素数3から6のアリール基、フェニル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
さらに耐熱性の観点から、R及びRの少なくとも一方はアリール基であることもまた好ましい。
【0066】
本発明におけるフェノール樹脂として、具体的には、以下に示す一般式(Ia)〜一般式(If)のいずれかで表される部分構造を有する化合物を含むフェノール樹脂であることが好ましい。
【0067】
【化4】



【0068】
一般式(Ia)〜一般式(If)において、i、jはそれぞれのフェノール性化合物に由来する構造単位の含有比率(質量%)を表し、iは5質量%〜30質量%、jは70質量%〜95質量%であり、iとjの合計は100質量%である。
本発明におけるフェノール樹脂は、熱伝導率と保存安定性の観点から、一般式(Ia)、一般式(Ie)のいずれかで表される構造単位を含み、iが5質量%〜20質量%であって、jが80質量%〜95質量%であることが好ましく、一般式(Ia)で表される構造単位を含み、iが2質量%〜10質量%であって、jが90質量%〜98質量%であることがより好ましい。
【0069】
前記フェノール樹脂は上記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物を含むことが好ましいが、下記一般式(II)で表される化合物の少なくとも1種を含むものであることがより好ましい
【0070】
【化5】

【0071】
一般式(II)中、R11は水素原子又は下記一般式(IIp)で表されるフェノール性化合物に由来する1価の基を表し、R12はフェノール性化合物に由来する1価の基を表す。また、R、R、R、mおよびnは、一般式(I)におけるR、R、R、mおよびnとそれぞれ同義である。
11およびR12で表されるフェノール性化合物に由来する1価の基は、フェノール性化合物のベンゼン環部分から水素原子を1個取り除いて構成される1価の基であり、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
【0072】
【化6】

【0073】
一般式(IIp)中、pは1〜3の整数を表わす。また、R、R及びRは一般式(I)におけるR、R及びRとそれぞれ同義であり、mは0〜2の整数を表す。
【0074】
11及びR12におけるフェノール性化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されない。具体的には例えば、フェノール、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等を挙げることができる。中でも熱伝導率と保存安定性の観点から、クレゾール、カテコール、レゾルシノールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0075】
前記フェノール樹脂の数平均分子量としては熱伝導率の観点から、800以下であることが好ましく、300以上700以下であることがより好ましく、350以上550以下であることがより好ましい。
【0076】
前記樹脂組成物が、上記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物を含むフェノール樹脂を含む場合、フェノール樹脂を構成するフェノール性化合物であるモノマーをさらに含んでいてもよい。フェノール樹脂を構成するフェノール性化合物であるモノマーの含有比率(以下、「モノマー含有比率」ということがある)としては特に制限はないが、5質量%〜80質量%であることが好ましく、15質量%〜60質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0077】
モノマー含有比率が5質量%以上であることで、フェノール樹脂の粘度上昇を抑制し、無機充填剤の密着性がより向上する。また80質量%以下であることで、硬化の際における架橋反応により、より高密度な高次構造が形成され、優れた熱伝導率と耐熱性が達成できる。
【0078】
尚、フェノール樹脂を構成するフェノール性化合物のモノマーとしては、レゾルシノール、カテコール、及びヒドロキノンを挙げることができ、少なくともレゾルシノールをモノマーとして含むことが好ましい。
【0079】
また前記樹脂組成物の全固形分における前記フェノール樹脂の含有比率としては、特に制限はないが、熱伝導率、電気絶縁性、Bステージシートの可とう性及び可使時間の観点から、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
また前記樹脂組成物における前記ビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂と前記フェノール樹脂の含有比(エポキシ樹脂/フェノール樹脂)としては例えば、当量比基準で、0.6以上1.5以下とすることができ、熱伝導率、Bステージシートの可とう性及び可使時間の観点から、0.8以上1.25以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましい。
尚、当量基準の含有比率は具体的には、下記式より算出される。
式 含有比率(エポキシ樹脂/フェノール樹脂) = Σ(エポキシ樹脂量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)/Σ(フェノール樹脂量/フェノール樹脂のフェノール当量)
【0081】
前記樹脂組成物は、前記フェノール樹脂に加え、必要に応じて、フェノール樹脂以外のその他の硬化剤を含んでいてもよい。その他の硬化剤としては従来公知の硬化剤を特に制限なく用いることができる。具体的には例えば、アミン系硬化剤、メルカプタン系硬化剤などの重付加型硬化剤や、イミダゾールなどの潜在性硬化剤などを用いることができる。
【0082】
前記樹脂組成物は上記必須成分に加えて、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては例えば、溶剤、シランカップリング剤、分散剤、沈降防止剤等を挙げることができる。
前記溶剤としては樹脂組成物の硬化反応を阻害しないものであれば特に制限なく、通常用いられる有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
有機溶剤として具体的には、2-ブタノン、シクロヘキサンノン等のケトン系溶剤、シクロヘキサノール等のアルコール系溶剤などが挙げられる。
【0083】
(シランカップリング剤)
前記樹脂組成物はシランカップリング剤の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。シランカップリング剤を含むことで、アルミナ粒子の表面とその周りを取り囲む有機樹脂の間で共有結合を形成する役割(バインダ剤に相当)を果たすことによって、熱を効率よく伝達する働きや、更には水分の浸入を妨げることにより、絶縁信頼性の向上にも寄与する。さらに硬化物の実比重の理論比重からの乖離率をより低下させることができる。
【0084】
シランカップリング剤としては、市販のものを通常使用できるが、エポキシ樹脂やフェノール樹脂との相溶性及び樹脂層とアルミナとの界面での熱伝導ロスを低減することを考慮すると、末端にエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、水酸基を有するシランカップリング剤を用いることが好適である。
【0085】
具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のスルファニル基(メルカプト基)を有するシランカップリング剤;、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するシランカップリング剤などを挙げることができ、またSC−6000KS2に代表されるシランカップリング剤オリゴマ(日立化成コーテットサンド株式会社製)等も挙げられる。
これらシランカップリング剤は1種単独で又は2種類以上を併用することもできる。
【0086】
これらのシランカップリング剤の中でも、熱伝導性と硬化物の実比重の理論比重からの乖離率の観点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤、及びアルキル基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、エポキシ基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0087】
前記樹脂組成物がシランカップリング剤を含む場合、樹脂組成物中のシランカップリング剤の含有率は、熱伝導性と硬化物の実比重の理論比重からの乖離率の観点から、アルミナ粒子群の総含有量に対して0.01質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上質量3.00%以下であることがより好ましい。
さらに前記樹脂組成物がシランカップリング剤を含む場合、熱伝導性と硬化物の実比重の理論比重からの乖離率の観点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤、及びアルキル基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を、アルミナ粒子群の総含有量に対して0.01質量%以上5.00質量%以下含むことが好ましく、エポキシ基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を、アルミナ粒子群の総含有量に対して0.10質量%以上3.00質量%以下含むことがより好ましい。
【0088】
(分散剤)
前記樹脂組成物は、分散剤の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。分散剤を含むことで、熱伝導性がより向上し、さらに硬化物の実比重の理論比重からの乖離率をより低下することができる。分散剤を使用することでアルミナの凝集を抑制することができる。これによりアルミナ凝集体に物理的に閉じ込められる空隙(ボイド)の発生を抑制することができ、結果としてアルミナ粒子を60体積%以上も含む樹脂硬化物としての実比重が向上する。すなわち硬化物の実比重を理論比重に近づけることができる。
【0089】
前記分散剤としてはアルミナ粒子の分散性向上に効果のある分散剤であれば特に制限なく通常用いられる分散剤から適宜選択して使用することができる。
分散剤として具体的には、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、ポリカルボン酸のアミドアミン塩、ポリエステル酸のアミン塩、高級脂肪酸のアルキルアミン塩、リン酸エステルのアミン塩などが挙げられる。これらの中には界面活性剤に分類されるものがある。界面活性剤としてみた場合、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などのいずれであってもよい。
【0090】
アニオン界面活性剤としては、オレイン酸・N−メチルタウリン塩、オレイン酸・カリウム・ジエタノールアミン塩、アルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、特殊変成ポリエーテルエステル酸のアミン塩、高級脂肪酸誘導体のアミン塩、特殊変成ポリエステル酸のアミン塩、高分子量ポリエーテルエステル酸のアミン塩、特殊変成燐酸エステルのアミン塩、高分子量ポリエステル酸アミドアミン塩、特殊脂肪酸誘導体のアミドアミン塩、高級脂肪酸のアルキルアミン塩、高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、高級アルコールリン酸ジエステルジナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0091】
またカチオン界面活性剤としては、ベンジルジメチル{2−[2−(P−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノオキシ)エトキシ]エチル}アンモニウムクロライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂トリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−2−牛脂イミダゾリン4級塩、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩、アルキルピリジウム塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリアクリルアミドアミン塩、変成ポリアクリルアミドアミン塩、パーフルオロアルキル第4級アンモニウムヨウ化物などが挙げられる。
【0092】
また両性界面活性剤としては、ジメチルヤシベタイン、ジメチルラウリルベタイン、ラウリルアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、アミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、3−[ω−フルオロアルカノイルーN−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタインなどが挙げられる。
【0093】
また非イオン界面活性剤としては、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1型)、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールヤシアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコール牛脂アミン、ポリエチレングリコール牛脂プロピレンジアミン、ポリエチレングリコールジオレイルアミン、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、ポリビニルピロリドン、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、砂糖の脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0094】
分散剤として具体的には、味の素ファインテック株式会社製アジスパーシリーズ、楠本化成株式会社製HIPLAADシリーズ、株式会社花王製ホモゲノールシリーズ等が挙げられる。これら分散剤は1種単独でも2種類以上を併用することもできる。
これらの中でも、硬化物の実比重が理論値に近くなるという観点から、楠本化成株式会社製HIPLAADシリーズから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0095】
前記樹脂組成物が分散剤を含む場合、樹脂組成物中の分散剤の含有率は、熱伝導性と硬化物の実比重の理論比重からの乖離率の観点から、アルミナ粒子群の総含有量に対して0.03質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上0.3質量%以下の範囲がさらに好ましい。
さらに前記樹脂組成物が分散剤を含む場合、伝導性と硬化物の実比重の理論比重からの乖離率の観点から、脂肪酸及びその誘導体の塩から選ばれる少なくとも1種を、アルミナ粒子群の総含有量に対して0.03質量%以上1.0質量%以下含むことが好ましく、0.03質量%以上0.5質量%以下含むことがより好ましく、0.03質量%以上0.3質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0096】
<Bステージシート>
本発明のBステージシートは、前記樹脂組成物の半硬化物からなり、シート状の形状を有する。
Bステージシートは、例えば、前記樹脂組成物を離型フィルム上に塗布・乾燥して樹脂フィルムを形成する工程と、前記樹脂フィルムをBステージ状態まで加熱処理する工程とを含む製造方法で製造できる。
前記樹脂組成物を加熱処理して形成されることで、熱伝導率および電気絶縁性に優れ、Bステージシートとしての可とう性および可使時間に優れる。
本発明のBステージシートとは樹脂シートの粘度として、動的粘弾性測定時に(周波数1ヘルツ、荷重40g、昇温速度3℃/分)常温(25℃)においては10〜10mPa・sであるのに対して、100℃で10〜10mPa・sに粘度が低下するものである。また、後述する硬化後の硬化樹脂層は加温によっても溶融することはない。
【0097】
具体的には例えば、PETフィルム等の離型フィルム上に、メチルエチルケトンやシクロヘキサンノン等の溶剤を添加したワニス状の樹脂組成物(以下、「樹脂ワニス」ともいう)を、塗布後、乾燥することで離型フィルム上に樹脂層が設けられた樹脂フィルムを得ることができる。
塗布は、公知の方法により実施することができる。塗布方法として、具体的には、コンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法が挙げられる。所定の厚みに樹脂層を形成するための塗布方法としては、ギャップ間に被塗工物を通過させるコンマコート法、ノズルから流量を調整した樹脂ワニスを塗布するダイコート法等を適用することができる。例えば、乾燥前の樹脂層の厚みが50μm〜500μmである場合、コンマコート法を用いることが好ましい。
【0098】
塗工後の樹脂層は硬化反応がほとんど進行していないため、可とう性を有するものの、シートとしての柔軟性に乏しく、支持体である前記PETフィルムを除去した状態ではシート自立性に乏しく、取り扱いが困難である。そこで、本発明においては後述する加熱処理により樹脂組成物をBステージ化する。
得られた樹脂フィルムを加熱処理する条件は、樹脂組成物をBステージ状態にまで半硬化することができれば特に制限されず、樹脂組成物の構成に応じて適宜選択することができる。具体的には例えば、加熱温度80℃〜130℃で、1秒間〜30秒間とすることができる。
加熱処理の方法としては、熱真空プレス、および熱ロールラミネート等から選択されることが好ましい。これにより塗工の際に生じた樹脂層中の空隙(ボイド)を低減することができ、平坦なBステージシートを効率よく製造することができる。
【0099】
前記Bステージシートの厚みは、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、50μm以上200μm以下とすることができ、熱伝導率、電気絶縁性およびシート可とう性の観点から、60μm以上150μm以下であることが好ましい。また、2層以上の樹脂フィルムを積層しながら熱プレスすることにより作製することもできる。
【0100】
<樹脂付金属箔>
本発明の樹脂付金属箔は、金属箔と、前記金属箔上に配置された前記樹脂組成物の半硬化体である半硬化樹脂層とを備える。前記樹脂組成物に由来する半硬化樹脂層を有することで、熱伝導率、電気絶縁性、可とう性に優れる。
前記半硬化樹脂層は前記樹脂組成物をBステージ状態になるように加熱処理して得られるものである。
【0101】
前記金属箔としては、金箔、銅箔、アルミニウム箔など特に制限されないが、一般的には銅箔が用いられる。
前記金属箔の厚みとしては、1μm〜35μmであれば特に制限されないが、20μm以下の金属箔を用いることで可とう性がより向上する。
また、金属箔として、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5μm〜15μmの銅層と10μm〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔、又はアルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
【0102】
樹脂付金属箔は、前記樹脂組成物を金属箔上に塗布・乾燥することにより樹脂層を形成することで製造することができ、樹脂層の形成方法は既述の通りである。
【0103】
樹脂付金属箔の製造条件は特に制限されないが、乾燥後の樹脂層において、樹脂ワニスに使用した有機溶媒が80質量%以上揮発していることが好ましい。乾燥温度は80℃〜180℃程度であり、乾燥時間はワニスのゲル化時間との兼ね合いで決めることができ、特に制限はない。樹脂ワニスの塗布量は、乾燥後の樹脂層の厚みが30μm〜100μmとなるように塗布することが好ましく、30μm〜80μmとなることがより好ましい。
前記乾燥後の樹脂層は、加熱処理されることでBステージ状態になる。前記樹脂組成物を加熱処理する条件はBステージシートにおける加熱処理条件と同様である。
【0104】
<金属基板>
本発明の金属基板は、金属支持体と、前記金属支持体上に配置された前記樹脂組成物の硬化体である硬化樹脂層と、前記硬化樹脂層上に配置された金属箔とを備える。金属支持体と金属箔との間に配置された硬化樹脂層が、前記樹脂組成物を硬化状態になるように加熱処理して形成されたものであることで、接着性、熱伝導率、電気絶縁性に優れる。
【0105】
前記金属支持体は目的に応じて、その素材及び厚み等が適宜選択される。具体的には例えば、アルミニウム、鉄等の金属を用い、厚みを0.5mm以上5mm以下とすることができる。
【0106】
また樹脂層上に配置される金属箔は、前記樹脂付金属箔における金属箔と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0107】
前記金属基板は、例えば以下のようにして製造することができる。アルミニウム等の金属支持体上に、前記樹脂組成物を上記と同様にして塗布・乾燥することで樹脂層を形成し、さらに樹脂層上に金属箔を配置して、これを加熱・加圧処理して、樹脂層を硬化することで製造することができる。また、金属支持体上に、前記樹脂付金属箔を樹脂層が金属支持体に対向するように張り合わせた後、これを加熱・加圧処理して、樹脂層を硬化することで製造することもできる。
【0108】
前記樹脂層を硬化する加熱・加圧処理の条件は、樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。例えば、加熱温度が80℃〜250℃で、圧力が0.5MPa〜8.0MPaであることが好ましく、加熱温度が130℃〜230℃で、圧力が1.5MPa〜5.0MPaであることがより好ましい。
【0109】
<LED基板>
本発明のLED基板は、金属支持体と、前記金属支持体上に配置された前記樹脂組成物の硬化体である硬化樹脂層と、前記硬化樹脂層上に配置された銅箔からなる回路層と、前記回路層上に配置されたLED素子と、を備える。
金属支持体上に接着性、熱伝導率および電気絶縁性に優れる前記硬化樹脂層が形成されていることで、LED素子から放出される熱を効率的に放熱することが可能になる。
【0110】
本発明のLED基板は、例えば、上記のようにして得られる金属基板上の金属箔に回路加工して回路層を形成する工程と、形成された回路層上にLED素子を配置する工程と、を含む製造方法で製造することができる。
金属基板上の金属箔に回路加工する工程には、フォトリソ等の通常用いられる方法を適用することができる。また回路層上にLED素子を配置する工程についても、通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0112】
(フェノール樹脂合成例1)
撹拌機、冷却器、温度計を備えた3Lのセパラブルフラスコにレゾルシノール594g、カテコール66g、37%ホルマリン316.2g、シュウ酸15g、水100gを入れ、オイルバスで加温しながら100℃に昇温した。還流温度で4時間反応を続けた。
その後水を留去しながら、フラスコ内の温度を170℃に昇温した。170℃を保持しながら8時間反応を続けた。その後減圧下、20分間濃縮を行い系内の水等を除去して、一般式(I)で表される構造単位を有するフェノール樹脂を取り出した。得られたフェノール樹脂の数平均分子量は530、重量平均分子量は930であった。またフェノール樹脂のフェノール当量は65g/eq.であった。
【0113】
<実施例1>
プライミクス社製のTKホモミクサ40L蓋付き容器中に、上記で得られたフェノール樹脂を2743g、ビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、YL6121H、エポキシ当量172g/eq.)を6531g、ナフタレン系エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP4032D、エポキシ当量140g/eq.)を726g、溶剤として2−ブタノン(和光純薬株式会社製)を5250g秤量し、7000rpmで150分間攪拌を行った。
次にプライミクス社製プラネタリミキサ50L蓋付き容器中に上記で得られた溶液16500g投入し、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM403)を95.3g、分散剤(楠本化成株式会社製、ED−113)を173.2g投入し、46rpmで10分間攪拌を行った。
ここにアルミナ粒子の含有率が樹脂組成物の全固形分中において74体積%となるようにアルミナ粒子を投入した。具体的には粒子径D50が18μmであるアルミナ(住友化学株式会社製、スミコランダムAA18、第一のアルミナ粒子群)を54540g(63%(対アルミナ総質量))と、粒子径D50が3μmであるアルミナ(住友化学株式会社製、スミコランダムAA3、第二のアルミナ粒子群)を19479g(22.5%(対アルミナ総質量))と、粒子径D50が0.4μmであるアルミナ(住友化学株式会社製、スミコランダムAA04、第二のアルミナ粒子群)を12553g(14.5%(対アルミナ総質量))を秤量、投入し46rpmで30分間攪拌を行った。その後、溶剤として2−ブタノン(和光純薬株式会社製)を3439g加え再度46rpmで60分間攪拌した後、目開き95μmのナイロンメッシュで濾別し、ワニス状の樹脂組成物1を得た。
【0114】
上記で得られた樹脂組成物1を、80μmのギャップを有するコンマコーターを用いて、PETフィルム(帝人デュポンフィルム社製、A53)上に毎分3mの速度で塗布して樹脂層を形成し、炉長6mの乾燥炉において前半3mは100℃で、後半3m120℃で乾燥を行なって樹脂層付きPETフィルムを得た。乾燥後の樹脂層の膜厚は38μm〜40μmであった。
乾燥後の樹脂層上に同様にして得た樹脂層付きPETフィルムの樹脂層側を張り合わせ、ロールラミネータを用いて、100℃、0.3MPa下においてシート成形物(Bステージシート)を得た。得られたシート成形物は可とう性に優れていた。
【0115】
[評価]
上記で得られたシート成形物の両面からPETフィルムを剥がし、1mm厚のアルミ基板(表面をジェットスクラブ処理したもの)と35μmの片面粗化電解銅箔(日本電解社製)の粗化面とで挟んだ。これを真空加圧プレス機において30℃から170℃まで毎分3℃で上昇させ、170℃で1時間、加熱加圧処理を行った後、常温まで急冷をおこなった。なお、加熱加圧処理時の圧力は2MPaで開始し、100分後に0.7MPaまで5分間かけて変化させ、その後は0.7MPaを保持して本硬化処理を行って、アルミ基板と硬化樹脂層と銅箔とがこの順に積層された金属基板を得た。
得られた金属基板について以下の評価を行なった。評価結果を表1に示した。
【0116】
(乖離率)
硬化樹脂層の実比重の理論比重からの乖離率を以下のようにして算出した。
上記で得られた金属基板の銅箔とアルミ板をエッチングして除去し、硬化樹脂層を得た。なお、銅箔のエッチングには過硫酸アンモニウム水溶液を用いた。アルミ板のエッチングには塩酸を用いた。
得られた硬化樹脂層について、電子比重計(アルファミラージュ社製、SD−200L)を用い、アルキメデス法によって硬化樹脂層の実比重を測定したところ、3.25(g/cm)であった。
【0117】
一方、アルミナ粒子を添加しなかったこと以外は上記と同様にして金属基板を得て、さらに同様にしてアルミナ粒子を含まない硬化樹脂層を得た。得られた硬化樹脂層について同様にして比重を測定したところ1.20(g/cm)であった。またアルミナ粒子の比重は3.98(g/cm)であった。
硬化樹脂層中のアルミナ粒子の含有率を74体積%として、理論比重を算出したところ、3.26(g/cm)であった。
【0118】
硬化樹脂層の実比重と理論比重から、乖離率を次の式で算出したところ、上記で得られた金属基板中の硬化樹脂層の実比重の理論比重からの乖離率は、0.3%であった。
乖離率=(理論比重−実比重)÷理論比重
【0119】
(熱伝導率)
上記で得られた金属基板の銅箔とアルミ板をエッチングして除去し、硬化樹脂層を得た。なお、銅箔のエッチングには過硫酸アンモニウム水溶液を用いた。アルミ板のエッチングには塩酸を用いた。
得られた熱伝導性絶縁層の熱伝導率は次のようにして求めた。まず、熱拡散率測定装置(メッチ社製 キセノンフラッシュ測定法)にて熱拡散係数を求めた。
次いで、比熱を示差走査熱量計(Perkin Elmer社製 DSC Ryris1)にて測定した。また硬化物の実比重を電子比重計(アルファミラージュ社製、SD−200L)にて測定した。
これを元に熱伝導率[W/mK]を、拡散率[mm/s]×比熱[J/kg・K]×実比重[g/cm]から求めた。熱伝導率は5.6W/mKであった。
【0120】
<電気絶縁性>
得られた金属基板の銅箔を直径20mmの丸型パターンを残し、過硫酸アンモニウム水溶液にてエッチングして、測定用サンプルを作製した。
次いで絶縁破壊電圧測定装置(TOA Electronics Ltd. Japan社製、Puncture Tester PT−1011)を用いて、交流印加(500V/秒)の条件で最低絶縁耐圧を50個測定し、最も低かった測定値を最低絶縁破壊電圧とした。最低絶縁破壊電圧は6.4kVであった。
【0121】
<実施例2>
実施例1において、第一のアルミナ粒子群であるアルミナ(昭和電工株式会社製、AS−20、粒子径D50:22μm)を82947g(92.0%(対アルミナ総質量))と、第二のアルミナ粒子群であるアルミナ(住友化学製、スミコランダムAA04、粒子径D50:0.4μm)を7212g(8%(対アルミナ総質量))と、を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ワニス状の樹脂組成物2を調製し、同様にして評価した。評価結果を表1に示した。
得られた金属基板の硬化樹脂層の実比重は理論比重3.26に対して2.1%の乖離にとどまり熱伝導率・絶縁破壊電圧供に優れていた。
【0122】
<比較例1>
実施例1において、第一のアルミナ粒子群であるアルミナ(昭和電工株式会社製、AS−30、粒子径D50:18μm)を82947g(92.0%(対アルミナ総質量))と、第二のアルミナ粒子群であるアルミナ(住友化学製、スミコランダムAA04、粒子径D50:0.4μm)を7212g(8%(対アルミナ総質量))と、を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ワニス状の樹脂組成物を調製し、同様にして評価した。評価結果を表1に示した。
得られた金属基板の硬化樹脂層の実比重は理論比重3.26に対して5.5%の乖離となり熱伝導率・絶縁破壊電圧供に非常に劣るものとなった。
【0123】
<比較例2>
実施例1において、第一のアルミナ粒子群であるアルミナ(昭和電工株式会社製、AS−30、粒子径D50:18μm)を82947g(92.0%(対アルミナ総質量))と、第二のアルミナ粒子群であるアルミナ(住友化学製、スミコランダムAA04、粒子径D50:0.4μm)を7212g(8%(対アルミナ総質量))と、を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ワニス状の樹脂組成物を調製し、同様にして評価した。評価結果を表1に示した。
得られた金属基板の硬化樹脂層の実比重は理論比重3.26に対して10.4%の乖離となり熱伝導率・絶縁破壊電圧供に非常に劣るものとなった。
【0124】
【表1】



【0125】
表1から、本発明の樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物は、熱伝導性と電気絶縁性に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフェニル骨格を有する2官能のエポキシ樹脂と、
フェノール樹脂と、
重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、含有率が60体積%以上であるアルミナ粒子群と、を含み、
硬化物とした場合に、前記硬化物の実比重の理論比重からの乖離率が5.0%以内である樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルミナ粒子群は、粒子径D50が7μm以上30μm以下である第一のアルミナ粒子群と、粒子径D50が7μm未満である第二のアルミナ粒子群の少なくとも1種とを含み、前記第二のアルミナ粒子群の総含有量に対する第一のアルミナ粒子群の含有比率(第一のアルミナ粒子群/第二のアルミナ粒子群)が質量基準で1.0以上12.0以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物の半硬化物からなるBステージシート。
【請求項4】
金属箔と、前記金属箔上に配置された請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物の半硬化体である半硬化樹脂層と、を備える樹脂付金属箔。
【請求項5】
金属支持体と、前記金属支持体上に配置された請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物の硬化体である硬化樹脂層と、前記硬化樹脂層上に配置された金属箔と、を備える金属基板。
【請求項6】
金属支持体と、前記金属支持体上に配置された請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物の硬化体である硬化樹脂層と、前記硬化樹脂層上に配置された金属箔からなる回路層と、前記回路層上に配置されたLED素子と、を備えるLED基板。

【公開番号】特開2013−71991(P2013−71991A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211643(P2011−211643)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】