説明

樹脂組成物および透明複合基板

【課題】 本発明の目的は、透明複合基板とした際に、保管時や使用時における表面凹凸の発生が抑制できる樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、保管時や使用時における表面凹凸の発生が抑制できる透明複合基板を提供することにある。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、透明性樹脂と、ガラス繊維基材と、無機充填剤とで構成される透明複合基板に用いる樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、透明性樹脂と、無機充填剤とを含み、該無機充填材が、前記ガラス繊維基材と同じ組成を有するガラスで構成されていることを特徴とする。また、本発明の透明複合基板は、上記に記載の樹脂組成物と、ガラス繊維基材とで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および透明複合基板に関する。本発明の複合体組成物および透明複合基板は、例えば、透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
樹脂と繊維基材とを複合することで、樹脂組成物の剛性、強度、熱膨張率、寸法安定性、吸水率など種々の特性の改善が図られている。しかしながら、樹脂と繊維基材の複合体はほとんどの場合、透明性が損なわれる。透明な樹脂と透明な繊維基材との複合体において透明性が損なわれる原因は、繊維基材の屈折率と樹脂の屈折率が異なるため、樹脂中を透過した光が散乱することにあると考えられる。良好な透明性を得るためには、400nm〜800nmの広い波長範囲で屈折率が一致する必要がある。屈折率の波長依存性は、アッベ数で示されるので、樹脂とアッベ数の近いものが選択できれば、広い波長範囲で屈折率を合わせることが可能と考えられる。
【0003】
特許文献1にも記載されているように、樹脂と繊維基材の複合体の表面には、繊維基材の形状を反映した凹凸が形成される場合がある。また、樹脂含有率に面内分布があるため、凹凸の環境変化には場所依存性が見られる。凹凸の環境変化を改善する方法として、樹脂層への無機充填材添加が考えられる。ただし、平均粒子径が1μm以下の無機充填材では、添加によるワニス添加時の粘度上昇が大きく、また、樹脂の吸湿特性が悪化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−133761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、透明複合基板とした際に、保管時や使用時における表面凹凸の発生が抑制できる樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、保管時や使用時における表面凹凸の発生が抑制できる透明複合基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(8)に記載の本発明により達成される。
(1)透明性樹脂と、ガラス繊維基材と、無機充填剤とで構成される透明複合基板に用いる樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、透明性樹脂と、無機充填剤とを含み、該無機充填材が、前記ガラス繊維基材と同じ組成を有するガラスで構成されていることを特徴とする樹脂組成物。
(2)前記無機充填剤は、前記ガラス繊維基材の粉砕物である上記(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記無機充填剤の平均粒子径が、1〜50μmである上記(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)前記無機充填剤の含有量は、前記透明性樹脂100容量部に対して10〜100容量部である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)前記透明樹脂の屈折率を(n)、前記ガラス繊維基材の屈折率を(n)、前記無機充填材の屈折率を(n)としたときに、以下の関係式を充足するものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
|n−n|≦0.01、かつ|n−n|≦0.01
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物と、ガラス繊維基材とで構成されることを特徴とする透明複合基板。
(7)波長400nmでの光線透過率が70%以上である上記(6)に記載の透明複合基板。
(8)23℃で、相対湿度0%〜100%まで処理した際における凹凸量の変化が250nm以下である上記(6)または(7)に記載の透明複合基板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透明複合基板とした際に、保管時や使用時における表面凹凸の発生が抑制できる樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、保管時や使用時における表面凹凸の発生が抑制できる透明複合基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の樹脂組成物および複合透明基板について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、透明性樹脂と、ガラス繊維基材と、無機充填剤とで構成される透明複合基板に用いる樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、透明性樹脂と、無機充填剤とを含み、該無機充填材が、前記ガラス繊維基材と同じ組成を有するガラスで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の透明複合基板は、上記に記載の樹脂組成物と、ガラス繊維基材とで構成されることを特徴とする。
【0009】
(樹脂組成物)
まず、樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維基材との透明複合基板を形成するために用いるものである。このガラス繊維基材としては、例えばガラス繊維を編んで布状にしたガラスクロスや、ガラス繊維をからみ合わせて布状にしたガラス不織布などが挙げられる。ガラス繊維基材の厚さとしては特に制限はないが、30〜300μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。ガラス繊維基材の厚さが前記範囲内であると、特に透明性に優れる。
【0010】
このようなガラス繊維基材を構成するガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、石英ガラスなどが挙げられる。中でも、入手が容易であるという観点からNEガラス、Tガラス、Sガラス、Eガラスが好ましく、透明性樹脂との屈折率差を小さくしやすいという観点からはNEガラス、Tガラス、Sガラスがより好ましく、経済的な観点からはEガラスがより好ましい。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、透明性樹脂を含む。
前記透明性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化物;(メタ)アクリル系モノマーおよびオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系モノマーおよびオリゴマーなどの紫外線硬化性モノマーおよびオリゴマー(以下、これらをまとめて「紫外線硬化性樹脂」という)の硬化物が挙げられる。前記熱硬化性樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、前記紫外線硬化性樹脂も1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0012】
なお、本明細書においては、「熱硬化性樹脂」および「紫外線硬化性樹脂」は未硬化のものを意味し、硬化後のものを「樹脂硬化物」という。また、「樹脂」には、未硬化の樹脂(オリゴマーを含む)の他に、「硬化可能なモノマー」も含まれる。
【0013】
本発明においては、上述したような熱硬化性樹脂のうち、耐熱性、耐薬品性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式構造を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
このようなエポキシ樹脂の中でも、樹脂硬化物の透明性の観点から、脂環式構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、下記式(1)〜(4):
【0014】
【化1】

【0015】
で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。
また、このような熱硬化性樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲において、オキセタニル基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物などを併用してもよい。
【0016】
上述したような熱硬化性樹脂を硬化させる場合、必要に応じて硬化剤および硬化促進剤を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、このような硬化剤としては、アミン系硬化剤(例えば、ジシアンジアミド、芳香族アミン)、フェノールノボラック系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸)、テトラメチレンヘキサミンが好ましい。また、硬化促進剤としては、有機リン系硬化促進剤(例えば、トリフェニルホスフィン)、イミダゾール系硬化促進剤(例えば、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)、オニウム塩系カチオン硬化触媒(例えば、ジアルキル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム塩などの芳香族スルホニウム塩)、アルミニウムキレート系カチオン硬化触媒(例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート))が好ましい。このような硬化剤または硬化促進剤の添加量としては、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。硬化剤または硬化促進剤の添加量が前記下限未満になると硬化反応の速度が遅く、エポキシ樹脂が十分に硬化しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬化反応が急激に進行し、樹脂硬化物に着色や割れなどの不具合が発生しやすい傾向にある。
【0017】
また、紫外線硬化性樹脂として用いられる(メタ)アクリル系モノマーおよびオリゴマーとしては2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する公知の多官能の(メタ)アクリレートおよびその部分重合体が挙げられる。また、この多官能(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸などの単官能の(メタ)アクリル系モノマーとを併用してもよい。
【0018】
前記多官能(メタ)アクリレートとしては特に制限はないが、樹脂硬化物の透明性の観点から、芳香族環または脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが好ましく、ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートおよびフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0019】
また、本発明に用いられるエポキシ(メタ)アクリレート系モノマーおよびオリゴマーとしては、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて合成したものが挙げられる。中でも、樹脂硬化物の透明性の観点から、脂環式構造を有するエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて合成したものが好ましく、前記式(1)〜(4)で表されるエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて合成したものがより好ましい。
【0020】
上述したような前記紫外線硬化性樹脂を硬化させる場合、必要に応じて光重合開始剤を使用することが好ましい。このような光重合開始剤としては、紫外線照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤(例えば、アリールアルキルケトン)、紫外線照射によってカチオンを発生する光カチオン重合開始剤(例えば、アリールジアゾニウム塩)などが挙げられる。また、このような光カチオン重合開始剤を前記エポキシ樹脂に添加することによってエポキシ樹脂を紫外線硬化性樹脂として使用することも可能である。
【0021】
光重合開始剤の添加量としては、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、0.02〜1質量部がより好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。光重合開始剤の添加量が前記下限未満になると硬化反応の速度が遅く、紫外線硬化性樹脂が十分に硬化しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬化反応が急激に進行し、樹脂硬化物に着色や割れなどの不具合が発生しやすい傾向にある。
【0022】
このような紫外線硬化性樹脂は、通常、紫外線を照射して硬化させるが、電子線照射や加熱処理によっても硬化させることが可能である。したがって、本発明においては、前記紫外線硬化性樹脂を硬化させる場合、紫外線照射、電子線照射および加熱処理のうちの少なくとも1つの硬化手段を使用すればよいが、樹脂硬化物の架橋密度を十分に高めるために、紫外線照射または電子線照射と加熱処理とを併用することが好ましい。なお、前記加熱処理の条件としては特に制限はないが、窒素雰囲気下または真空条件下、250〜300℃で1〜24時間加熱することが好ましい。
【0023】
前記透明性樹脂の含有量は、前記樹脂組成物全体の25〜50体積%が好ましく、特に28〜40体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に寸法安定性に優れる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、前記ガラス繊維基材と同じ組成を有するガラスで構成されている無機充填剤を用いる。これにより、透明性を維持したまま、保管時や使用時における表面凹凸の発生が抑制できる。
ガラス繊維基材と同じ組成を有するガラスとは、上述したようなガラス繊維を構成するガラスと同じ組成を有することを意味する。具体的には、ガラス繊維基材を構成するガラスが、それぞれEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、石英ガラスである場合、無機充填剤もそれぞれEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、石英ガラスで構成されることになる。
【0025】
上述したような組合せの中でも特に、ガラス繊維基材および無機充填剤を構成するガラスが共にNEガラスである場合、ガラス繊維基材および無機充填剤を構成するガラスが共にTガラスである場合、ガラス繊維基材および無機充填剤を構成するガラスが共にSガラスである場合、ガラス繊維基材および無機充填剤を構成するガラスが共にEガラスである場合のいずれか1つ組合せが好ましい。これにより、寸法安定性および透明性をより向上することができる。さらには、前記ガラス繊維基材を粉砕して得られる粉砕物であることが好ましい。これにより、ガラス繊維基材に含まれる表面処理剤等についても同じとなるため、特に透明性に優れる。
【0026】
前記無機充填剤の平均粒子径は、特に限定されないが、1〜50μmであることとが好ましく、特に4〜15μmであることが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、特に透明性に優れる。
このような平均粒子径は、例えばレーザー回折・散乱式粒度分布形(日機装(株)製「マイクロトラックMT3300」)で評価することができる。
【0027】
また、前記無機充填剤の形状としては、球状無機充填剤、繊維状無機充填剤、板状無機充填剤等を用いることができる。このような無機充填剤の中でも板状無機充填剤、繊維状無機充填剤が好ましく、具体的には、アスペクト比が1.5〜10であり、且つ平均短軸直径が4〜15μmである無機充填剤が好ましい。これにより、透明複合基板の透明性が確保されるとともに、透明樹脂の体積分率が減少して吸湿による膨張や乾燥による収縮が抑制され、保管時や使用時における透明複合基板の表面の凹凸の発生を特に抑制できる。前記無機充填剤の平均短軸直径は、8〜12μmであることが好ましい。
【0028】
前記無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、前記透明樹脂100容量部に対して10〜100容量部が好ましくと、特に30〜85容量部が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に寸法安定性に優れる。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、上述したような透明樹脂の屈折率を(n)、前記ガラス繊維基材の屈折率を(n)、前記無機充填材の屈折率を(n)としたときに、以下の関係式を充足するものであることが好ましい。
|n−n|≦0.01、かつ|n−n|≦0.01
これにより、透明性を特に向上することができる。
【0030】
前記樹脂組成物部には、上述した透明樹脂、無機充填剤以外に、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等を添加してもよい。
【0031】
(透明複合基板)
本発明の透明複合基板は、上述した樹脂組成物と、ガラス繊維基材とで構成されることを特徴とする。これにより、透明性および保管時や使用時における表面凹凸の発生の抑制効果に優れた透明複合基板を得ることができる。
【0032】
前記ガラス繊維基材としては、上述したものを用いることができるが、その屈折率(波長589nm)は、1.45〜1.55であることが好ましい。ガラス繊維基材の屈折率が1.45未満のガラスは組成が特殊であり、コストの面で好ましくない傾向にあり、他方、ガラス繊維基材の屈折率が1.55を超えると樹脂硬化物との屈折率差を小さくすることが困難となり、透明複合基板の透明性が低下する傾向にある。また、比較的容易に入手できるという観点から、屈折率(波長589nm)が1.50〜1.54のガラス繊維基材を使用することが好ましい。
【0033】
また、ガラス繊維基材は、波長589nmにおける樹脂硬化物との屈折率差が−0.01〜+0.01(より好ましくは、−0.005〜+0.005)であるガラス繊維基材を使用することが好ましい。樹脂硬化物との屈折率差が前記範囲外になると透明複合基板の透明性が低下する傾向にある。
【0034】
樹脂硬化物とガラス繊維基材との屈折率差を調整する方法としては、屈折率差が前記範囲内となるように樹脂硬化物とガラス繊維基材とを選択する方法が挙げられるが、屈折率差を容易に調整できるという観点から、樹脂硬化物の屈折率がガラス繊維基材よりも高い樹脂と低い樹脂を併用し、これらの混合比を調整して樹脂硬化物の屈折率をガラス繊維基材の屈折率に近づける方法が好ましい。
【0035】
また、無機充填剤も上述したものを用いることができるが、波長589nmにおけるガラス繊維基材との屈折率差が−0.01〜+0.01の無機充填剤を使用することが好ましい。ガラス繊維基材との屈折率差が前記範囲外になると透明複合基板の透明性が低下する。また、透明複合基板の透明性がより向上するという観点から、波長589nmにおけるガラス繊維基材と無機充填剤との屈折率差は−0.005〜+0.005であることが好ましい。
【0036】
また、前記無機充填剤の屈折率(波長589nm)は1.45〜1.55であることが好ましい。無機充填剤の屈折率が1.45未満のガラスは組成が特殊であり、コストの面で好ましくない傾向にあり、他方、無機充填剤の屈折率が1.55を超えると樹脂硬化物との屈折率差を小さくすることが困難となり、透明複合基板の透明性が低下する傾向にある。また、比較的容易に入手できるという観点から、屈折率(波長589nm)が1.50〜1.54の無機充填剤を使用することが好ましい。
【0037】
さらに、前記無機充填剤は、波長589nmにおける樹脂硬化物との屈折率差が−0.01〜+0.01(より好ましくは、−0.005〜+0.005)である無機充填剤を使用することが好ましい。樹脂硬化物との屈折率差が前記範囲外になると透明複合基板の透明性が低下する傾向にある。樹脂硬化物と無機充填剤との屈折率差を調整する方法としては、屈折率差が前記範囲内となるように樹脂硬化物とガラスフィラー無機充填剤とを選択する方法が挙げられるが、屈折率差を容易に調整できるという観点から、樹脂硬化物の屈折率が無機充填剤よりも高い樹脂と低い樹脂を併用し、これらの混合比を調整して樹脂硬化物の屈折率を無機充填剤の屈折率に近づける方法が好ましい。
【0038】
このような樹脂組成物を、例えばガラス繊維基材に含浸させたり、塗布したりした後、加熱処理や紫外線照射を施して樹脂を硬化させる。これにより樹脂硬化物、ガラス繊維基材および無機充填剤を含有する透明複合基板が得られる。
このようにして得られた透明複合基板は、透明性に優れたものであり、保管時や使用時に表面に発生する凹凸が低減されたものである。例えば、この透明複合基板の表面凹凸の高さの変化量は、好ましくは250nmであり、より好ましくは180nm以下である。また、このような透明複合基板の厚さとしては特に制限はなく、例えば、40〜400μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。
【0039】
また、本発明の透明複合基板には、その少なくとも一方、好ましくは両方の面に無機層または有機層を形成しても良い。このような無機層としてはシリカ層が好ましく、これによりバリア性が付与される。また、有機層としてはアクリル系樹脂層、エポキシ樹脂層などの耐熱性、透明性および耐薬品性を有する樹脂層が好ましく、これにより平滑性が向上する。
従来の透明複合基板においては、保管時や使用時の吸湿および乾燥により表面凹凸が発生するものであったため、無機層または有機層を形成すると表面凹凸が増大するという問題があった。一方、本発明の透明複合基板においては、上述したように、保管時や使用時における表面凹凸の発生が低減されたものであるから、無機層または有機層を形成しても表面凹凸の増大は起こりにくい。
【0040】
このような透明複合基板を透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に用いるためには、波長400nmでの光線透過率は、特に限定されないが、70%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。このような光線透過率は、例えば、分光光度計((株)島津製作所製、UV−2400PC)で評価することができる。
【0041】
また、前記透明複合基板の23℃で、相対湿度0%〜100%まで処理した際における凹凸量の変化は、特に限定されないが、250nm以下であることが好ましく、特に180nm以下であることが好ましい。変化が前記範囲内であれば、特に表示用プラスチックとして使用したときの表示性能に優れる。
このような凹凸の変化は、例えば非接触3次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製「NewView5500」)で測定することができる。
【0042】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
下記式(1)で表される水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂((3,3’4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド8000」)96質量部、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロンEXA−1514」)4質量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(三新化学工業(株)製「サンエイドSI−100L」)1質量部を混合し、この混合物にTガラス系ガラスクロス(日東紡(株)製、厚さ90μm、屈折率(波長589nm)1.525)を粉砕することで得られたガラスフィラーを186重量部(樹脂硬化物100容量部に対して85容量部に相当)分散させて樹脂組成物を調製した。
この樹脂組成物を、前記Tガラス系ガラスクロスに含浸させ、脱泡した。この樹脂含浸ガラスクロスを、離型処理したガラス板に挟み込み、80℃で2時間加熱後、250℃でさらに2時間加熱し、透明複合基板を得た。
【0044】
【化2】

【0045】
(実施例2)
ノルボルナンジメチロールジアクリレート(東亞合成(株)試作品 TO−2111)90重量部とヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンのアセタール化合物のジアクリレート(日本化薬(株)製KAYARAD R−604)10重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカル製イルガキュア184)0.5重量部を混合し、この混合物にNEガラスクロス(日東紡(株)製、厚さ90μm、屈折率(波長589nm)1.510)を粉砕することで得られたガラスフィラーを186重量部(樹脂硬化物100容量部に対して85容量部に相当)分散させて樹脂組成物を調整した。
この樹脂組成物を前記NEガラス系ガラスクロスに含浸させ、脱法した。この樹脂含浸ガラスクロスを離型処理したガラス板に挟み込み、両面から約1,000mJ/cmのUV光を照射した後、250℃でさらに2時間加熱し、透明複合基板を得た。
【0046】
(実施例3)
ガラスフィラーの添加量を67重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして透明複合基板を得た。
【0047】
(比較例1)
NEガラスクロス(日東紡(株)製、厚さ90μm、屈折率(波長589nm)1.510)を粉砕することで得られたガラスフィラーを使用したこと以外は、実施例1と同様にして透明複合基板を得た。
【0048】
得られた透明複合基板について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
【0049】
1.透明性<ヘイズ>
透明性は、ヘーズメーター(日本電色工業(株)製「NDH5000」)を使用してヘイズを測定した。
【0050】
2.表面凹凸高さの変化量
透明複合基板を150℃で3時間加熱して乾燥させた後、この透明複合基板の厚さ方向にガラスクロスが存在しない部分(以下、「バスケットホール部」という)の高さHdryを、非接触3次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製「NewView5500」)を用いて測定した。次に、この透明複合基板を純水に24時間浸漬した後、この透明複合基板のバスケットホール部の高さHwetを、前記非接触3次元表面構造解析顕微鏡を用いて測定した。なお、前記HdryおよびHwetは、透明複合基板のガラス繊維束が交差している部分の表面を基準面(高さ=0)として測定し、この基準面に対して膨らんだ場合をマイナス、凹んだ場合をプラスとした。このようにして測定したHdryおよびHwetから、透明複合基板の吸湿および乾燥による表面凹凸高さの変化量(Hdry−Hwet)を求めた。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から明らかなように、実施例1〜3は、透明性に優れた状態で、吸湿および乾燥による表面凹凸高さの変化量が小さかった。これにより、保管時や使用時における表面凹凸の発生が抑制できることが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性樹脂と、ガラス繊維基材と、無機充填剤とで構成される透明複合基板に用いる樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、透明性樹脂と、無機充填剤とを含み、該無機充填材が、前記ガラス繊維基材と同じ組成を有するガラスで構成されていることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填剤は、前記ガラス繊維基材の粉砕物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機充填剤の平均粒子径が、1〜50μmである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填剤の含有量は、前記透明性樹脂100容量部に対して10〜100容量部である請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記透明樹脂の屈折率を(n)、前記ガラス繊維基材の屈折率を(n)、前記無機充填材の屈折率を(n)としたときに、以下の関係式を充足するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物。
|n−n|≦0.01、かつ|n−n|≦0.01
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂組成物と、ガラス繊維基材とで構成されることを特徴とする透明複合基板。
【請求項7】
波長400nmでの光線透過率が70%以上である請求項6に記載の透明複合基板。
【請求項8】
23℃で、相対湿度0%〜100%まで処理した際における凹凸量の変化が、250nm以下である請求項6または7に記載の透明複合基板。

【公開番号】特開2011−144214(P2011−144214A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3663(P2010−3663)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】