説明

樹脂製フィルムを用いた凹凸パターンの形成方法、その方法に使用する装置

【課題】樹脂製フィルムを用いて基板上に微細な凹凸パターンを形成する方法であって、樹脂製フィルムの収縮率のバラつきや位置合わせ工程における温度変化等があっても、基板上の凹凸パターンを形成すべき位置に精確に凹凸パターンを形成する方法を提供する。
【解決手段】表面に微細な凹凸パターンが形成された樹脂製フィルム11の当該凹凸パターンを、基板15上に形成された光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層16に転写し、光硬化性樹脂層16に微細な反転凹凸パターンを形成する方法であって、樹脂製フィルム11の凹凸パターンを、基板15上の光硬化性樹脂層16の反転凹凸パターンを形成すべき位置に配置するために、樹脂製フィルム11と基板15とを位置合わせする工程を含み、当該位置合わせ工程が、樹脂製フィルム11を平面方向に伸張する伸張手段を用いる工程を含むことを特徴とする凹凸パターンの形成方法、及びそれに用いる装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパー等の情報表示用パネル、電子デバイス、光学部品、記録媒体等の製造に利用できるインプリント法による凹凸パターンを形成する方法に関し、特に樹脂製の中間スタンパ等の樹脂製フィルムを用いた微細な凹凸パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノインプリント技術(インプリント法ともいう)によるシリコン基板等に所望の回路パターン等を形成する方法が確立されつつある。ナノインプリント技術は、モールド(金型、テンプレートともいう)のナノ又はマイクロメータオーダーの凹凸パターンの反転したコピーを形成するための方法であり、従来のプレス加工技術と比較して、より微小な構造を実現するための微細加工技術である。この技術自体には解像度に限界がなく、解像度はモールドの作製精度によって決まる。したがって、モールドさえ作製できれば、従来のフォトリソグラフィーより容易に、且つはるかに安価な装置により、極微細構造を形成することが可能である。
【0003】
ナノインプリント技術には転写される材料により2種類に大別される。一方は、転写される材料を加熱し、モールドにより塑性変形させた後、冷却してパターンを形成する熱インプリント技術である。もう一方は、基板上に室温で液状の光(一般に紫外線(UV))硬化性樹脂を塗布した後、光透過性のモールドを樹脂に押し当て、光照射することで基板上の樹脂を硬化させパターンを形成するUVインプリント技術である。特にUVインプリント技術は室温にてパターン形成できるため熱による基板、モールド間の線膨張係数差による歪が発生しにくく、高精度のパターン形成が可能であり、半導体等のリソグラフィ技術の代替技術として注目を集めている。
【0004】
但し、ナノインプリント技術は、パターン成形を安価に行うことができるが、マザースタンパであるモールドに樹脂が付着し易く、樹脂が付着した場合、そのモールドを補修することは極めて困難である。また、通常、モールドは可塑性を有さないため、パターン形成すべき基板が可塑性材料でない場合、基板又はモールドが物理的に損傷する場合がある。モールド(マザースタンパ)が非常に高価なため、樹脂の付着や、物理的損傷によりモールドを交換すると大幅なコストアップとなり、製造全体として安価とは言えない場合が多い。
【0005】
その課題を解決する方法として、特許文献1には、2工程によるインプリント法が開示されている。即ち、第1工程で、マイクロメータ又はナノメータのオーダの微細な凹凸のパターンニングがなされた表面を有するテンプレート(マザースタンパ)に、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィン等の熱可塑性樹脂製のポリマーフォイル(樹脂製フィルム)の表面と表面が向かい合い接触するように置かれ、インプリント処理により、テンプレート表面のパターンが反転されたものがポリマーフォイルの表面に形成される。そして、第2工程で、得られたポリマースタンパ(中間スタンパ)が、基板上の感光性材料(紫外線硬化性樹脂等)に、テンプレートの反転パターンが向かい合い接触するように配置され、感光性材料が露光されることにより、基板上に第二の反転パターン(テンプレートと同一のパターン)が形成される。
【0006】
この方法では、製品が中間スタンパを用いて成形されるため、テンプレート(マザースタンパ)には深刻な損傷が発生することを防止することができる。
【0007】
一方、ナノインプリント技術において、通常、金型及び金型の凹凸パターンを転写すべき基板は同じ材料ではないため、金型及び基板は異なった熱膨張率を有している。従って、金型と基板とが加熱や冷却等により同様な環境変化を受けた場合であっても、寸法変化する割合が異なることになる。
【0008】
これは、特許文献1で示したような樹脂製の中間スタンパを用いたインプリント法により、ガラスやシリコン等からなる基板に微細な凹凸パターンを形成する場合にも問題となる。ガラスやシリコン、及び樹脂製フィルムの熱膨張率は大きく異なるからである。
【0009】
例えば、基板に形成された電極パターン等に合わせて凹凸パターンを形成する場合、まず、基板のパターンに合わせて作製したマザースタンパを用いて、樹脂製の中間スタンパを得る。次いで、基板上に凹凸パターンを転写するため、その樹脂製の中間スタンパと基板とを精確に位置合わせする。この場合、一般に、中間スタンパと基板に2個以上の位置合わせ用パターン(アライメントマークともいう)が形成されており、これらのマークを2点以上の位置合わせ用のカメラ(アライメントカメラともいう)で観察し、マークを合わせることで位置合わせを行う。しかしながら、マザースタンパから中間スタンパへの転写工程における中間スタンパの収縮率のバラつきや、中間スタンパと基板とを位置合わせする工程におけるわずかな温度変化による基板と中間スタンパの寸法変化の差によって、2点以上のアライメントマークが合わなくなり、精確な位置合わせができなくなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−165812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、樹脂製の中間スタンパ等の樹脂製フィルムを用いて基板上に微細な凹凸パターンを形成する方法であって、樹脂製フィルムの収縮率のバラつきや位置合わせ工程における温度変化等があっても、基板上の凹凸パターンを形成すべき位置に精確に凹凸パターンを形成することができる凹凸パターンの形成方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、その凹凸パターンの形成方法に使用する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
樹脂フィルムに形成された微細な凹凸パターンの平面方向の大きさの調整は、通常、凹凸パターンを形成する工程で行われる。例えば、金属製スタンパから中間スタンパである樹脂製フィルムに転写する工程において、樹脂製フィルムの収縮率等を考慮して金属製スタンパの凹凸パターンを作製することで樹脂フィルムの凹凸パターンが調整される。このため、上述のような位置合わせする工程におけるわずかな温度変化による基板と樹脂フィルムの寸法変化の差によって位置合せができなくなるという課題に対応することには限界があった。本発明者らは、樹脂フィルムと基板とを位置合わせする段階で、凹凸パターンの平面方向の大きさまで調整する方法を検討した結果、本発明に至った。
【0014】
即ち、上記目的は、表面に微細な凹凸パターンが形成された樹脂製フィルムの当該凹凸パターンを、基板上に形成された光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層に転写し、前記光硬化性樹脂層に微細な反転凹凸パターンを形成する方法であって、
前記樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを、前記基板上の光硬化製樹脂層の反転凹凸パターンを形成すべき位置に配置するために、前記樹脂製フィルムと前記基板とを位置合わせするための位置合せ工程、前記樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを前記基板上の光硬化性樹脂層に載置、押圧するための押圧工程、前記光硬化性樹脂層に光照射して、前記光硬化性樹脂層を硬化又は半硬化するための光照射工程を含み、且つ前記位置合せ工程において、前記樹脂製フィルムを平面方向に伸張する伸張手段を用いる工程を含むことを特徴とする凹凸パターンの形成方法によって達成される。
【0015】
これにより、従来よりも樹脂フィルムと基板とを精確に位置合せすることができる。
【0016】
本発明の凹凸パターンの形成方法の好ましい態様は以下の通りである。
【0017】
(1)前記伸張手段が、前記樹脂製フィルムを縦方向及び横方向の二軸方向に伸張する手段である。これにより、平面方向のどの方向にも伸張することが可能になり、樹脂製フィルムと基板とをより精確に位置合わせをして、より精確な位置に凹凸パターンを形成することができる。
(2)前記伸張手段が、前記樹脂製フィルムの弾性変形範囲で伸張する手段である。これにより、樹脂製フィルムの破損や凹凸パターンの形状の大きな変形による反転凹凸パターンの形成不良が生じないように、樹脂製フィルムと基板とを位置合わせすることができる。
(3)前記伸張手段が、前記樹脂製フィルムの縁部を着脱可能に固定することができ、当該樹脂製フィルムの平面方向に、それぞれ独立して移動及び静止自在である少なくとも2基のクランプ部を有するフィルム保持部の当該クランプ部に、前記樹脂製フィルムの縁部を固定し、前記クランプ部を移動させることにより前記樹脂製フィルムを伸張する手段である。樹脂製フィルムの縁部をクランプ部で固定し、このクランプ部を移動させることで、樹脂製フィルムの平面方向の伸張を容易にすることができる。
(4)前記樹脂製フィルムの縁部の縦方向及び/又は横方向に互いに対向する位置を、前記クランプ部に固定する。これにより、樹脂製フィルムに歪みを生じること無く、効率的に樹脂製フィルムを平面方向に伸張することができる。
(5)前記樹脂製フィルムが矩形状であり、当該樹脂製フィルムの各辺の縁部を、それぞれ少なくとも1基の前記クランプ部に固定する。樹脂製フィルムが矩形状の場合、樹脂製フィルムの各辺の縁部を、それぞれ少なくとも1基のクランプ部で固定し、クランプ部を移動させることで、効率良く、樹脂製フィルムを平面方向に伸張することができる。
(6)前記矩形状の樹脂製フィルムの各辺の縁部を、それぞれ2基以上の前記クランプ部に固定する。これにより、樹脂製フィルムの各辺を分割して伸張することで平面方向の伸張の微調整を行うことができ、より高精度に樹脂製フィルムと基板とを位置合わせすることができる。樹脂製フィルムの各辺の縁部を固定するクランプ部は、3基以上が更に好ましく、3〜10基が特に好ましい。
(7)前記位置合わせ工程が、前記樹脂製フィルムと前記基板とに設けられた複数のアライメントマークを重ね合わせることで位置合わせする工程である。これにより、効率良く、且つ精確に樹脂製フィルムと基板とを位置合わせすることができる。
(8)前記樹脂製フィルム及び前記基板のアライメントマークが、前記樹脂製フィルムの縁部を固定するクランプ部2基に対して、少なくとも1個ずつ設けられている。樹脂製フィルムの収縮率や膨張率が樹脂製フィルムの部分によって異なる場合があるため、樹脂製フィルムの各辺を分割して伸張する場合に、その伸張する範囲に対応するアライメントマークを設けて、位置合わせすることで、より高精度に樹脂製フィルムと基板とを位置合わせすることができる。
(9)前記樹脂製フィルムが、樹脂製の中間スタンパである。
(10)前記位置合わせ工程が、前記樹脂製フィルム及び/又は前記基板の位置を平面方向に移動調整する手段、並びに前記樹脂製フィルム及び/又は前記基板の角度を調節する手段を含む。樹脂フィルムを平面方向に伸張する手段に加えて、樹脂製フィルムや基板の位置や角度を調整する手段を用いて、位置合わせ工程を行うことで、より効率良く高精度に樹脂製フィルムと基板とを位置合わせすることができる。
【0018】
また、上記目的は、本発明の凹凸パターンの形成方法に使用される凹凸パターンの形成装置であって、
前記樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを、前記基板上の光硬化製樹脂層の反転凹凸パターンを形成すべき位置に配置するために、前記樹脂製フィルムと前記基板とを位置合わせするための位置合せ手段、前記樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを前記基板上の光硬化性樹脂層に載置、押圧するための押圧手段、前記光硬化性樹脂層に光照射して、前記光硬化性樹脂層を硬化又は半硬化するための光照射手段を含み、且つ前記位置合せ手段が、前記樹脂製フィルムを平面方向に伸張する伸張手段を含むことを特徴とする凹凸パターンの形成装置によって達成される。
【0019】
本装置は、本発明の凹凸パターンの形成方法における、樹脂製フィルムを平面方向に伸張する伸張手段を含む樹脂製フィルムと基板との位置合わせ手段を含むので、樹脂製フィルムを、基板上の光硬化性樹脂層の反転凹凸パターンを形成すべき位置に精確に合わせることができる。そして、その状態で樹脂製フィルムを基板上の光硬化性樹脂層に載置、押圧し、紫外線等の光照射により光硬化性樹脂層を硬化又は半硬化することができる。従って、本装置は、樹脂製フィルムの凹凸パターンを、基板上の反転凹凸パターンを形成すべき位置に精確に凹凸パターンを形成することができる凹凸パターンの形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の凹凸パターンの形成方法によれば、樹脂製フィルムに微細な凹凸パターンを形成する際の樹脂製フィルムの収縮率のバラつきや、樹脂製フィルムと基板との位置合わせ工程において温度変化がある場合であっても、樹脂製フィルムを平面方向に伸張することにより、樹脂製フィルムの大きさまで調整できるので、基板上の反転凹凸パターンを形成すべき位置に精確に位置合わせして、凹凸パターンを形成することができる。従って、本発明の凹凸パターンの形成装置は、基板上の凹凸パターンを形成すべき位置に精確に凹凸パターンを形成することができる装置である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の微細な凹凸パターンの形成方法の代表的な一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の微細な凹凸パターンの形成方法における、位置合わせ工程の好適な一例を説明するための概略図であり、図2(a)が概略平面図であり、図2(b)が概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の微細な凹凸パターンの形成方法を、ロール・トゥ・ロール方式で行う場合の位置合わせ工程の好適な一例を説明するための概略図である。
【図4】図4は、本発明の微細な凹凸パターンの形成装置の代表的な一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の凹凸パターンの形成方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。 本発明は、樹脂製フィルムの伸張手段を含む位置合わせ工程以外は、一般的なインプリント法による微細な凹凸パターンの形成方法と同様に行うことができる。
【0023】
図1は、本発明の微細な凹凸パターンの形成方法における代表的な一例を示す概略断面図である。
【0024】
まず、表面に微細な凹凸パターンが形成された樹脂製フィルム11の凹凸パターンと、表面に光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層16が形成された基板15の光硬化性樹脂層16とが対向するように、基板15と樹脂製フィルム11とを配置する(図1(a))。樹脂製フィルム11は、例えば、微細な凹凸パターンを有する金属製スタンパ等の金型から熱インプリント法により凹凸パターンが転写された熱可塑性樹脂製の中間スタンパ等が挙げられる。基板15は、情報表示用パネル電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。例えば、ガラス基板、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製基板等が挙げられる。
【0025】
樹脂製フィルム11の縁部は、クランプ部21により着脱可能に固定されている。クランプ部21はフィルム保持部22に設置されており、樹脂製フィルム11の平面方向(縦方向及び/又は横方向)にそれぞれ独立して移動及び静止できるようになっている。また、基板15は基板保持部23に着脱可能に固定されている。
【0026】
続いて、樹脂製フィルム11の凹凸パターンが、基板15表面の光硬化性樹脂層16の反転凹凸パターンを形成すべき位置に精確に合うように、樹脂製フィルム11と基板15とを位置合わせする(位置合わせ工程)。後述するように、通常、樹脂製フィルム11と基板15とに位置合わせ用のアライメントマークが設けられており、位置合わせ用のアライメントカメラで観察し、アライメントマーク重なり合うように自動又は手動で位置合わせする(図1では示していない)。本発明においては、位置合せ工程として、樹脂製フィルム11を平面方向に伸張する伸張手段を含む。図1においては、クランプ部21を平面方向に移動させることにより、樹脂製フィルム11を平面方向に伸張している(図1(a))。伸張手段は樹脂製フィルムを精確に制御して伸張できればどのような手段でも良い。
【0027】
従来の位置合わせ工程は、フィルム保持部22、及び/又は基板保持部23を平面方向(縦方向及び/又は横方向)に移動させたり、角度調節したりすることにより位置合わせしていた。しかしながら、この方法では樹脂製フィルム11の凹凸パターンを形成する際の収縮率のバラつきや、位置合わせ工程における温度変化による膨張率の差により樹脂製フィルム11の凹凸パターンと基板15表面の反転凹凸パターンを形成すべき位置との寸法的な相違(本発明において、「スケールレベルのズレ」ともいう)が生じ、精確な位置合せができない場合があった。本発明においては、上述のように樹脂製フィルム11を平面方向へ伸張することにより、凹凸パターンのスケールレベルのズレを修正することにより精確な位置合わせを行うことができる。
【0028】
樹脂製フィルム11の平面方向への伸張は縦方向及び横方向のどちらか一方でも良いが、より精確に位置合わせができるように、縦方向及び横方向の二軸方向へ伸張できることが好ましい。また、樹脂製フィルム11の平面方向への伸張可能の割合は樹脂製フィルム11の材質によっても異なる。樹脂製フィルム11が破損したり、凹凸パターンの形状の変形が生じたりして、光硬化性樹脂層16への反転凹凸パターンの形成不良が生じないように、樹脂製フィルム11の弾性変形範囲で伸張するのが好ましい。伸張距離は、樹脂製フィルム11の長さを基準として、通常1%以下、好ましくは0.5%以下である。
【0029】
また、樹脂製フィルム11に形成された凹凸パターンは、基板15の光硬化性樹脂層16の反転凹凸パターンを形成すべき範囲のパターン(例えば電極パターン)よりも、小さい方が好ましい。樹脂製フィルム11を平面方向に伸張することは可能であるが、平面方向に圧縮することは困難だからである。
【0030】
なお、本発明においても、より精確に位置合わせするために、フィルム保持部22、及び/又は基板保持部23自体を平面方向に移動させたり、角度を調節したりする手段を併用することが好ましい。
【0031】
次いで、樹脂製フィルム11と基板15とを精確に位置合せした状態(樹脂製フィルム11を伸張した状態)で、樹脂製フィルム11の凹凸パターンを光硬化性樹脂層16に押圧する(図1(b)(押圧工程))。押圧が可能なように、光硬化性樹脂層16は必要に応じて加熱される。常温で押圧可能であれば加熱する必要は無い。基板15、樹脂製フィルム11及び基板15の温度変化が凹凸パターンの形成位置やスケールに影響を与えるので、押圧時においても、アライメントマークが重なり合うようにクランプ部21を平面方向に移動させて樹脂製フィルム11を伸張させても良い。
【0032】
その状態で、光硬化性樹脂層16を光(紫外線等)照射することにより硬化させる(光照射工程)。硬化は、全硬化させなくても、凹凸パターンの形状を維持できる程度の半硬化でも良い。
【0033】
なお、樹脂製フィルム11の凹凸パターンを光硬化性樹脂層16に押圧する前に、光硬化性樹脂層16と樹脂製フィルム11の凹凸パターン中に、エアが入り込まないように、樹脂製フィルム11と基板15と位置合わせする前及び/又は後にこれらの周囲を真空引きする真空工程を行っても良い。これにより、凹凸パターンの転写不良を防ぐことができる。真空工程は、例えば、樹脂製フィルム11及び基板15を含む範囲を密閉空間とし、その空間内を真空ポンプで脱気することで行うことができる。
【0034】
その後、樹脂製フィルム11を、凹凸パターンが形成され、且つ硬化した光硬化性樹脂層16cから除去する(図1(c))。なお、光硬化性樹脂層16が半硬化の場合は、樹脂製フィルム11を除去した後、更に光照射することで全硬化させる。
【0035】
このようにして、微細な凹凸パターンが形成された樹脂製フィルム11の凹凸パターンの反転凹凸パターンを、基板15表面の光硬化性転写層16の反転凹凸パターンを形成すべき位置に、精確に形成することができる。
【0036】
次に、本発明の凹凸パターンの形成方法における、位置合わせ工程(特に伸張手段を用いる工程)について詳細に説明する。図2は本発明の微細な凹凸パターンの形成方法における、位置合わせ工程の好適な一例を説明するための概略図であり、図2(a)が概略平面図であり、図2(b)が概略断面図である。
【0037】
図2(a)、(b)に示すように、微細な凹凸パターンが形成された矩形状の樹脂製フィルム31の各辺の縁部が、複数のクランプ部41に固定されている。クランプ部41はネジによる締付け等により着脱可能にフィルムの縁部を固定できる。そして、クランプ部41はフィルム保持部42に、それぞれ独立して樹脂製フィルム31の平面方向に自在に移動及び静止させることができるように設置されている。これらのクランプ部41を移動させることで、容易に平面方向に樹脂製フィルム31を伸張することができる。また、フィルム保持部42も、樹脂製フィルム31の平面方向(縦方向及び/又は横方向)に移動及び静止自在であり、角度の調節が可能であることが好ましい。
【0038】
図2(a)では、樹脂製フィルム31は、各辺の縁部を5基のクランプ部41で固定されているが、樹脂製フィルム31は少なくとも2基のクランプ部41で固定されていれば良い。但し、縦方向及び横方向への伸張が可能なように、樹脂製フィルム31の各辺の縁部を少なくとも1基のクランプ部41で固定することが好ましい。
【0039】
また、図2(a)では、樹脂製フィルム41は矩形状であるが、樹脂製フィルムの形状は特に制限は無い。たとえば、円形、楕円形、又は多角形でも良い。その場合も、少なくとも2基のクランプ部41により固定されていれば良い。
【0040】
また、図2(a)に示すように、樹脂製フィルム31の縁部の縦方向及び/又は横方向に互いに対向する位置が、2基のクランプ部41(例えば、図2(a)中の破線で囲って示した2基)に固定されていることが好ましい。その2基のクランプ部41をそれぞれ対向する方向に移動(又は一方を静止し他方を移動)させることで、樹脂製フィルム31に歪みを生じること無く、効率的に樹脂製フィルムを平面方向に伸張することができる。このような対向する2基のクランプ部41は少なくとも1組用いられていれば良いが、より高精度に樹脂製フィルム31を伸張するために、図2(a)に示すように、縦方向及び横方向に複数組用いられていることが好ましい。
【0041】
また、クランプ部41の基数は特に制限は無い。図2(a)、(b)に示すように、樹脂製フィルムが矩形状の場合は、効率良く、樹脂製フィルムを平面方向に伸張するため、各辺の縁部をそれぞれ少なくとも1基のクランプ部で固定することが好ましい。例えば、クランプ部41を複数基用いて、樹脂製フィルム31の各辺を多分割して固定しても良く(図2(a))、各辺の縁部を一括して固定できる幅のクランプ部41を1基ずつ用いて、樹脂製フィルム31の各辺の縁部を固定しても良い。樹脂製フィルム31の部分的な収縮率や膨張率のバラつきが生じる場合もあるので、図2(a)に示したように、各辺の縁部にクランプ部41を2基以上用いて、各辺を分割して固定したほうが好ましい。樹脂製フィルムの各辺を分割して伸張することで平面方向の伸張の微調整を行うことができ、より高精度に樹脂製フィルムと基板とを位置合わせすることができる。樹脂製フィルム31の各辺の縁部を固定するクランプ部41は、3基以上が更に好ましく、3〜10基が特に好ましい。
【0042】
また、1基のクランプ部41における、樹脂製フィルム31の縁部を固定する固定部の幅は特に制限は無い。1基のクランプ部の固定部の幅は、通常、5〜200mmであり、好ましくは10〜100mmである。
【0043】
一方、光硬化性樹脂層36が形成された基板35は、基板保持部43に着脱可能に固定されている。基板保持部43も樹脂製フィルム31の平面方向(縦方向及び/又は横方向)に移動及び静止自在であり、角度の調節が可能であることが好ましい。
【0044】
図2(a)、(b)に示した、位置合わせ工程においては、樹脂製フィルム31及び基板35には、樹脂製フィルム31の凹凸パターンが、基板35表面の光硬化性樹脂層36の反転凹凸パターンを形成すべき位置に合うように、位置合わせ用のアライメントマーク45a及び45bがそれぞれ設けられている。そしてアライメントカメラ50により、アライメントマーク45a及び45bを観察し、両者が重なり合うように、自動又は手動によりクランプ部41を平面方向に移動させて樹脂フィルム31を伸張して効率良く、且つ精確に樹脂製フィルム31と基板35とを位置合わせすることができる。位置合わせ工程において、必要に応じて、フィルム保持部42及び/又は基板保持部43を平面方向に移動させたり、角度調節したりする手段を併用することで、より効率良く精確に樹脂製フィルム31と基板35とを位置合わせすることができる。
【0045】
本発明においては、位置合わせ工程として、上述のような樹脂製フィルム31の平面方向への伸張手段を含むので、樹脂製フィルム31と基板35とが、スケールレベルのズレが生じても、複数のアライメントマークが合わず、精確な位置合わせができないというようなことが無い。
【0046】
アライメントマーク45a及び45bは、樹脂製フィルム31と基板35とに、少なくとも2個ずつ設けられている。但し、図2(a)に示したように、樹脂製フィルム31の各辺の縁部を固定するクランプ部41が複数あり、樹脂製フィルム31の各辺を分割して伸張する場合、アライメントマーク45a及び45bは、クランプ部41の2基(例えば、図2(a)中の破線で囲って示した2基)に対して少なくとも1個ずつ、好ましくは2個ずつ設けられていることが好ましい。上述のように、樹脂製フィルムの収縮率や膨張率が樹脂製フィルムの部分によって異なる場合があるため、それぞれのクランプ部41が樹脂製フィルムを伸張する範囲に対応するアライメントマーク45a及び45bを設けて、位置合わせすることで、より高精度に樹脂製フィルム31と基板35とを位置合わせすることができる。
【0047】
なお、本発明の凹凸パターンの形成方法においては、長尺状の樹脂製フィルム31を用いてロール・トゥ・ロール方式で連続的に行うこともできる。この場合、位置合わせ工程は、図3に示すような方法で行うことができる。
【0048】
図3は、本発明の微細な凹凸パターンの形成方法を、ロール・トゥ・ロール方式で行う場合の、位置合わせ工程の好適な一例を説明するための概略図である。図示の通り、ロール・トゥ・ロール方式の場合、樹脂製フィルム31のロール30の搬送方向と平行する2辺の縁部をクランプ部41で固定し、上述のように平面方向(ロール搬送方向と直行する方向)に伸張を行う。そして、ロール30の搬送方向と直行する2辺については、クランプ41で固定することができないので、ロール搬送における樹脂製フィルム31に掛かるテンションを調節することで平面方向(ロール搬送方向と同じ方向)に伸張を行う。これにより、上述の図2の説明と同様にアライメントマーク45a、45bを位置合わせし、高精度に樹脂製フィルム31と基板35を位置合わせすることができる。
【0049】
[樹脂製フィルム]
本発明の凹凸パターンの形成方法において、微細な凹凸パターンが形成された樹脂製フィルムはどのようなものでも良い。基板側が光透過性で無い場合は、光硬化性樹脂層の硬化が困難になるので、光透過性の樹脂製フィルムが好ましい。例えば、微細な凹凸パターンを有するニッケル、チタン、シリコン、石英等材質からなるナノインプリント用のスタンパから熱可塑性樹脂製フィルムに熱インプリント法により転写した樹脂製の中間スタンパ、光硬化性樹脂を用いたUVインプリント法で形成した中間スタンパ、及び樹脂製フィルムにエッチング法やレーザ加工、微細形状を付与した工具による切削加工等により凹凸パターンを形成したもの等が挙げられる。工程数が少なく、微細な凹凸パターンの形成が容易であり、凹凸パターンの形成精度が高い点で、樹脂製の中間スタンパが好ましく、特に熱インプリント法により得られた熱可塑性樹脂製の中間スタンパが好ましい。樹脂製フィルムの材質は例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィン共重合体(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。
【0050】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明の凹凸パターンの形成方法において、光硬化性樹脂層を形成する光硬化性樹脂組成物はどのようなものでも良い。特にナノインプリントプロセス法に使用できる液状組成物が好ましい。液状組成物の場合、粘度は10〜10000cpsが好ましい。光硬化性樹脂組成物は光硬化性樹脂と光開始剤を含む組成物が好ましい。
【0051】
光硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、エポキシ樹脂、イミド系オリゴマー、ポリエン・チオール系オリゴマー等が挙げられる。
【0052】
ウレタンアクリレートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類とポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(プロピレンオキサイド)トリオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA等のポリオール類と2−ヒドロキシエチルアクリレート2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシドールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレート類とを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基とウレタン結合を有するものである。
【0053】
ポリエステルアクリレートとしては、例えば、無水フタル酸とプロピレンオキサイドとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート、トリメリット酸とジエチレングリコールとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0054】
エポキシアクリレートは、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物とアクリル酸又はメタクリル酸との反応により合成されたものであり、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールSとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールS型エポキシアクリレート、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールF型エポキシアクリレート、フェノールノボラックとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるフェノールノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0055】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物や臭素化物等が挙げられる。
【0056】
光重合開始剤(G)としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が好ましく、光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α−α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体;ハロゲン化ケトン、アシルフォスフィンオキシド、アシルフォスフォナート、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシドビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタフルオロフェニル)−チタニウム、ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロー3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]−チタニウム、アントラセン、ペリレン、コロネン、テトラセン、ベンズアントラセン、フェノチアジン、フラビン、アクリジン、ケトクマリン、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、例えば、鉄−アレン錯体化合物、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、オニウム塩、ピリジニウム塩、アルミニウム錯体/シラノール塩、トリクロロメチルトリアジン誘導体等が挙げられる。上記オニウム塩やピリジニウム塩の対アニオンとしては、例えば、SbF6−、PF6−、AsF6−、BF4−、テトラキス(ペンタフルオロ)ボレート、トリフルオロメタンスルフォネート、メタンスルフォネート、トリフルオロアセテート、アセテート、スルフォネート、トシレート、ナイトレート等が挙げられる。
【0057】
光重合開始剤(G)の添加量は、一般に光硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部であり、好ましくは、0.5〜10重量部である。
【0058】
上記光硬化性樹脂組成物には、反応性希釈剤が添加されてもよく、反応性希釈剤としては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0059】
上記光硬化性樹脂組成物には、更に、必要に応じて、一般に添加されている光重合開始助剤、熱重合禁止剤、充填剤、接着付与剤、チクソ付与剤、可塑剤、着色剤等が添加されてもよい。
【0060】
本発明の方法において、光硬化性樹層を硬化する場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、0.1秒〜数十秒程度、好ましくは0.5〜数秒である。紫外線照射量は、300mJ/cm以上が好ましい。
【0061】
また、硬化促進のために、予め積層体を30〜80℃に加温し、これに光(紫外線等)を照射してもよい。
【0062】
[凹凸パターンの形成装置]
本発明の凹凸パターンの形成装置は、樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを、基板上の光硬化製樹脂層の反転凹凸パターンを形成すべき位置に配置するために、樹脂製フィルムと基板とを位置合わせするための位置合わせ手段に、樹脂製フィルムを平面方向に伸張する伸張手段を含んでいる。そして、樹脂フィルムと基板とを位置合わせした後に、樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを基板上の光硬化性樹脂層に載置、押圧するための押圧手段、光(紫外線等)を照射して、光硬化性樹脂層を硬化又は半硬化するための光照射手段を含んでいる。これにより、本発明の凹凸パターンの形成方法を効率的に行うことができる。
【0063】
図4は、本発明の凹凸パターンの形成装置の代表的な一例を示す概略断面図である。図4においては、微細な凹凸パターンが形成された樹脂製フィルム51を着脱可能に固定する複数のクランプ部61がフィルム保持部62に平面方向に移動及び静止自在に設置されている。クランプ部61は、ネジによる締付け等により着脱可能にフィルムの縁部を固定できるものである。フィルム保持部62も平面方向に移動及び静止自在であり、角度調節が可能であることが好ましい。また、光硬化性樹脂層56が形成された基板55を着脱自在に固定する基板保持部63がフィルム保持部62と向かい合うように設置されている。基板保持部63も平面方向に移動及び静止自在であり、角度調節が可能であることが好ましい。
【0064】
また、クランプ部61に固定された樹脂製フィルム51の上方に、樹脂製フィルム51及び基板55の位置合わせ用のアライメントマークを観察するためのアライメントカメラ70が複数設置されている。1対のアライメントマーク毎に1台のアライメントカメラ70が設置されていることが好ましい。
【0065】
更に、位置合わせ後、樹脂製フィルム51を伸張した状態で、光硬化性樹脂層56に押圧する透過型押圧部71と、紫外線照射するためのUVランプ72が備えられたUV押圧部73が設置されている。透過型押圧部71とUVランプ72は別々に設置されていても良いが、樹脂製フィルム51を光硬化性樹脂層56に押圧した状態で紫外線照射できるように、一体型のUV押圧部73のような装置が好ましい。
【0066】
UV押圧部73は透過型押圧部71のような固体(例えば、石英等)で押圧するものでなくても、空気等の定圧縮性の気体やオイル等の液体の媒体により圧力を掛け、樹脂製フィルム51を光硬化性樹脂層56に押圧する装置を有するものでも良い。
【0067】
このような凹凸パターンの形成装置によれば、樹脂製フィルムと基板とを精確に位置合わせして、基板上の凹凸パターンを形成すべき位置に精確に凹凸パターンを形成することができる。
【0068】
また、本発明の凹凸パターンの形成装置は、図3に示すような長尺状の樹脂製フィルムを用いて、ロール・トゥ・ロール方式で連続的に凹凸パターンを形成する方法に用いる装置であっても良い。この場合は、樹脂製フィルムのロールの搬送ライン上に、上記の位置合わせ手段、及び押圧手段を有する装置を設置する。上述のように、位置合わせ手段の平面方向の伸張方法は、ロール搬送方向と直行する方向についてはクランプ部で固定して行い、ロール搬送方向と同じ方向については、ロール搬送における樹脂製フィルムに掛かるテンションを調節することで行う。
【0069】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の凹凸パターンの形成方法によれば、高品質な電子ディスプレイ、電子ペーパー等の情報表示用パネルの隔壁や電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(パターンドメディア、DVD)等を有利に得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
11、31、51:樹脂製フィルム
15、35、55:基板
16、36、56:光硬化性樹脂層
21、41、61:クランプ部
22、42、62:フィルム保持部
23、43、63:基板保持部
30:ロール
45a、45b:アライメントマーク
50、70:アライメントカメラ
71:UVランプ
72:透過型押圧部
73:UV押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細な凹凸パターンが形成された樹脂製フィルムの当該凹凸パターンを、基板上に形成された光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層に転写し、前記光硬化性樹脂層に微細な反転凹凸パターンを形成する方法であって、
前記樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを、前記基板上の光硬化製樹脂層の反転凹凸パターンを形成すべき位置に配置するために、前記樹脂製フィルムと前記基板とを位置合わせするための位置合せ工程、
前記樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを前記基板上の光硬化性樹脂層に載置、押圧するための押圧工程、
前記光硬化性樹脂層に光照射して、前記光硬化性樹脂層を硬化又は半硬化するための光照射工程を含み、且つ
前記位置合せ工程において、前記樹脂製フィルムを平面方向に伸張する伸張手段を用いる工程を含むことを特徴とする凹凸パターンの形成方法。
【請求項2】
前記伸張手段が、前記樹脂製フィルムを縦方向及び横方向の二軸方向に伸張する手段である請求項1に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項3】
前記伸張手段が、前記樹脂製フィルムの弾性変形範囲で伸張する手段である請求項1又は2に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項4】
前記伸張手段が、前記樹脂製フィルムの縁部を着脱可能に固定することができ、当該樹脂製フィルムの平面方向に、それぞれ独立して移動及び静止自在である少なくとも2基のクランプ部を有するフィルム保持部の当該クランプ部に、前記樹脂製フィルムの縁部を固定し、前記クランプ部を移動させることにより前記樹脂製フィルムを伸張する手段である請求項1〜3のいずれか1項に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項5】
前記樹脂製フィルムの縁部の縦方向及び/又は横方向に互いに対向する位置を、前記クランプ部に固定する請求項4に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項6】
前記樹脂製フィルムが矩形状であり、
当該樹脂製フィルムの各辺の縁部を、それぞれ少なくとも1基の前記クランプ部に固定する請求項4又は5に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項7】
前記矩形状の樹脂製フィルムの各辺の縁部を、それぞれ2基以上の前記クランプ部に固定する請求項6に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項8】
前記位置合わせ工程が、前記樹脂製フィルムと前記基板とに設けられた複数のアライメントマークを重ね合わせることで位置合わせする工程である請求項1〜7のいずれか1項に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項9】
前記樹脂製フィルム及び前記基板のアライメントマークが、前記樹脂製フィルムの縁部を固定するクランプ部2基に対して、少なくとも1個ずつ設けられている請求項8に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項10】
前記樹脂製フィルムが、樹脂製の中間スタンパである請求項1〜9に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の凹凸パターンの形成方法に使用される凹凸パターンの形成装置であって、
前記樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを、前記基板上の光硬化製樹脂層の反転凹凸パターンを形成すべき位置に配置するために、前記樹脂製フィルムと前記基板とを位置合わせするための位置合せ手段、
前記樹脂製フィルムの微細な凹凸パターンを前記基板上の光硬化性樹脂層に載置、押圧するための押圧手段、
前記光硬化性樹脂層に光照射して、前記光硬化性樹脂層を硬化又は半硬化するための光照射手段を含み、且つ
前記位置合せ手段が、前記樹脂製フィルムを平面方向に伸張する伸張手段を含むことを特徴とする凹凸パターンの形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−240643(P2011−240643A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115927(P2010−115927)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】