説明

樹脂製品の精密加工装置と精密加工方法

【課題】射出成型の利点と切削加工の利点とを併せ持ち、生産性の高い、樹脂成型品の精密加工装置と精密加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】接離自在に合体され、当接面間に樹脂成型品12を射出成型するためのキャビティ16を有する固定金型18及び可動金型20と、固定金型18と樹脂通路22を通じて連結され、キャビティ16に樹脂24を射出する射出機26と、固定金型18から離脱し可動金型20に保持された樹脂成型品12に対して、切削工具30により切削加工を施して所定形状の製品に仕上げる切削装置32と、切削装置32により加工された製品を、可動金型20から排出する排出機構34とを備えている。
製品の仕上がり寸法精度と切削加工の加工精度と可動金型20の切削工具30に対する相対位置制御の精度と固定金型18及び可動金型20のキャビティ16の寸法精度とを整合させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成型品を高精度に成型するために利用される、樹脂製品の精密加工装置と精密加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成型品を作る方法には、切削加工と射出成型とが知られている。小型電子部品や光学部品のような精度の高い製品には切削加工が適する(特許文献1)。しかし、量産品については、コストの安い射出成型が採用される。また、射出成型でも高い精度が得られるような技術も各種開発されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−280200号公報
【特許文献2】特開平5−309564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
切削加工によれば、任意の形状の製品が高い精度で製造できる。しかしながら、切削前に材料を正確に位置決めしてクランプするという準備作業が必要になる。また、自動運転で精密加工ができる切削加工装置は設備コストが高い。従って、生産性向上のために多数の切削加工設備を揃えることは難しい。一方、射出成型は大量生産に適するが、例えば非常に薄い部分、極細の突起部、あるいは先鋭な溝などを有する樹脂成型品は、歩留まりが低下する。また、数ミクロン以下の微細構造を持つ樹脂製品は、射出成型自体が困難である。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために、射出成型の利点と切削加工の利点とを併せ持ち、微細構造を持ち生産性の高い樹脂製品の精密加工装置と精密加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
接離自在に合体され、当接面間に樹脂成型品を射出成型するためのキャビティを有する固定金型及び可動金型と、上記固定金型と樹脂通路を通じて連結され、上記キャビティに樹脂を射出する射出機と、上記固定金型から離脱し上記可動金型に保持された樹脂成型品に対して、切削工具により切削加工を施して所定形状の樹脂製品に仕上げる切削装置とを備え、上記切削装置による切削加工の加工精度と、上記製品の切削対象面の仕上がり寸法精度と、上記可動金型と上記切削工具との相対位置制御の精度とを整合させたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0006】
射出成型と切削加工を組み合わせて、微細形状を有する精密な樹脂製品を製造できる。射出成型後、そのまま可動金型に保持した樹脂成型品を切削加工するので、生産性を高めることができる。
【0007】
〈構成2〉
構成1に記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記切削装置による切削加工の加工精度を、上記キャビティの寸法精度より高くしたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0008】
射出成型では不可能な微細構造部分を、切削加工により実現することができる。
【0009】
〈構成3〉
構成1または2に記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記固定金型及び可動金型の当接面間に複数の上記キャビティが設けられ、かつ上記切削装置に1台の切削工具が設けられ、上記切削装置は、切削工具または上記可動金型を相対移動させて、上記複数の樹脂成型品を順次切削加工することを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0010】
可動金型に複数のキャビティが設けられていて、切削工具を順次操作すれば、連続して複数の樹脂成型品を、高精度に切削加工することができる。
【0011】
〈構成4〉
構成1または2に記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記固定金型及び可動金型の当接面間に複数の上記キャビティが設けられ、かつ上記切削装置に複数の切削工具が設けられており、各切削工具が同時に並行していずれかの樹脂成型品を切削加工することを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0012】
切削工具を複数設けて、切削加工の同時並行処理をし、生産性を高めることができる。
【0013】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記キャビティ内に射出された樹脂を、上記可動金型に保持させた状態で、上記切削加工前に、樹脂製品の仕上がり寸法精度から導かれた基準温度以下まで冷却する冷却機構を設けたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0014】
十分に冷却することにより、切削加工のときに、樹脂成型品や金型による支持寸法精度が確保できる。
【0015】
〈構成6〉
構成1乃至5のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記切削装置は、上記可動金型に加工面が下向きになるように樹脂成型品を保持させた状態で、上記切削工具により上記切削加工を施すことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0016】
加工面が下向きになるように樹脂成型品を保持させた状態で切削加工すると、樹脂成型品の切り屑が自然落下するので、効率よく切削加工ができる。
【0017】
〈構成7〉
構成1乃至5のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記固定金型に上記可動金型を合体させて上記射出機から樹脂を射出する合体位置から、上記切削装置により樹脂成型品を切削加工させる加工位置と、上記排出装置により上記製品を上記可動金型から排出する排出位置とを経て、上記合体位置に戻るように、上記可動金型を循環移動させる移動機構を備えることを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0018】
可動金型を複数の工程間で移動させて、射出工程と切削工程と排出工程とを順次自動的に実行させることができる。また、複数台の可動金型を用いれば、各工程を同時並行処理できる。
【0019】
〈構成8〉
構成1乃至7のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記切削装置により加工された上記樹脂製品は、幅あるいは高さが0.5μm 以上5μm以下の寸法の突起あるいは凹部を有することを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0020】
射出成型では非常に難しかった微小な突起あるいは凹部を、切削工具により精度良く形成できる。
【0021】
〈構成9〉
構成1乃至8のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記切削装置として、3軸制御のNC加工機を用いたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0022】
〈構成10〉
構成1乃至9のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、上記固定金型に上記可動金型を合体させて上記射出機から樹脂を射出する射出工程と、上記切削装置により樹脂成型品を切削加工させる加工工程とにそれぞれ別の可動金型を配置して、上記射出工程と加工工程とが並列進行するように、上記複数の可動金型を循環移動させる移動機構を備えたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【0023】
〈構成11〉
接離自在に合体され、当接面間に樹脂成型品を射出成型するためのキャビティを有する固定金型及び可動金型と、上記固定金型と樹脂通路を通じて連結され、上記キャビティに樹脂を射出する射出機とを用いて樹脂成型品を射出成型し、上記固定金型と上記可動金型とを分離した後、上記可動金型に保持された樹脂成型品の特定部分に対して、切削工具により、上記射出成型の寸法精度よりも高い加工精度で、切削加工を施して所定形状の樹脂製品に仕上げることを特徴とする樹脂製品の精密加工方法。
【0024】
〈構成12〉
構成11に記載の樹脂製品の精密加工方法において、上記固定金型に上記可動金型を合体させて上記射出機から樹脂を射出する射出工程と、上記切削装置により樹脂成型品を切削加工させる加工工程とを設け、上記射出工程と上記加工工程とにそれぞれ別の可動金型を配置し、上記射出工程と加工工程とが並列進行するように、上記複数の可動金型を循環移動させることを特徴とする樹脂製品の精密加工方法。
【0025】
〈構成13〉
構成11または12に記載の樹脂製品の精密加工方法において、上記固定金型と上記移動金型の接合面に対して垂直でない斜め孔または突起を、上記切削装置により形成することを特徴とする樹脂製品の精密加工方法。
【0026】
固定金型と移動金型の接合面に垂直でない斜め孔または突起は、射出成型では作れない。切削装置と組み合わせることにより、こうした複雑な孔を形成することを可能にした。
【0027】
〈構成14〉
構成11乃至12のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工方法において、上記可動金型に設けた特定の標識を基準に、上記切削工具の基準位置を設定することを特徴とする樹脂製品の精密加工方法。
【0028】
可動金型に対する切削工具の位置決めのために、可動金型に特定の標識を設けた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は実施例1の樹脂成型品の精密加工装置の概要を示す説明図である。図2は、図1に示した装置各部の斜視図である。
この図において、図1(a)は、射出機26と固定金型18と可動金型20の関係を示す側面図、図2(a)はこれらの斜視図である。各図に示すように、精密加工装置は、接離自在に合体される固定金型18及び可動金型20とを備える。図1(b)は、移動機構36により、可動金型20を固定金型18から離した状態の側面図である。射出機26は、固定金型18に樹脂通路22を通じて連結されている。可動金型20は移動機構36に支持されている。図2(a)に示すように、固定金型18及び可動金型20の当接面間には、キャビティ16が形成されている。射出機26は、このキャビティ16内に樹脂を射出する既知の機構の装置である。
【0031】
キャビティ16は、射出成型する樹脂成型品と同一外形を有している。キャビティ16は、例えば、図2(a)に示すように複数設けられる。これらはすべて同一形状でもよく、それぞれ異なる形状のものでもよい。もちろん、1組の固定金型18及び可動金型20にキャビティ16を個だけ設けてもよい。
【0032】
図1(c)は、移動機構36により可動金型20が移動された状態を示す側面図である。図2(b)は、切削装置32の斜視図である。可動金型20は、固定金型18から離れるときに、射出成型された樹脂成型品を固定金型18から離脱させて、そのまま保持する。移動機構36は、固定金型18を切削装置32の設置された位置まで移動させる。切削装置32は、可動金型20に保持された樹脂成型品を切削加工する。切削装置32には、例えば、3軸制御のNC加工機(Numerical Control machining)を使用する。図1(d)は、切削装置32を横置きした例を示す。この場合、移動機構36は、可動金型20を90度回転させて、樹脂成型品を切削装置32に対向させる。
【0033】
図1(c)や図2(b)に示す例では、切削装置32に1台の切削工具30が設けられている。切削装置32は、切削工具30を進退させて、可動金型20に保持された樹脂成型品を切削加工する。可動金型20に複数のキャビティ16が設けられていて、複数の樹脂成型品が保持されているときは、切削工具30または、可動金型20を移動させて、複数の樹脂成型品を順次切削加工する。可動金型20と切削工具30とを自由に相対移動させることにより、複雑な切削加工が可能になる。全ての樹脂成型品に対して同一の切削加工を施してもよいし、それぞれ別々の切削加工を施してもよい。後者の場合、基本形状は同じ樹脂成型品を材料にして、複数種類の樹脂製品を連続的に自動的に生産できる。
【0034】
図2(c)の例では、切削装置32に複数の切削工具30が設けられている。例えば、可動金型20に設けられた8個のキャビティ16と対向する位置に、8台の切削工具30を配置して、各切削工具30を同時に動作させると、同時に並行して全ての樹脂成型品を切削加工できる。もちろん、動作タイミングをずらせても構わない。また、それぞれ別々の切削加工をしても構わない。なお、図1(c)や図2(b)に示すように、可動金型20に加工面が下向きになるように樹脂成型品を保持させた状態で、切削工具30により切削加工を施すと、樹脂成型品の切り屑が自然落下するので、効率よく切削加工ができる。
【0035】
この精密加工装置は、例えば、射出成型と切削加工を全自動の流れ作業で行うことができる。このために、切削加工済みの樹脂成型品を排出する処理が必要になる。図1(e)は排出機構34の側面図で、図2(d)はその斜視図である。切削装置32により仕上げられた樹脂製品13は、排出機構34により、可動金型20から外部に排出される。例えば、この排出機構34は、ホッパー34Aとベルトコンベア34Bを有する。切削装置32により加工された樹脂製品13は、可動金型20からホッパー34Aを介してベルトコンベア34B上に落下する。ベルトコンベア34Bは、樹脂製品13を所定箇所に運搬する。
【0036】
上記のように、樹脂成型品を可動金型で保持すると、高い精度で樹脂成型品をクランプすることができる。複数の樹脂成型品を一括して高い位置精度で配列し、クランプすることができる。従って、可動金型を3軸制御のNC加工機にセットすると、可動金型と切削工具の相対位置や向きを高精度に制御して精密な切削加工ができる。多数の材料をNC加工機に一つずつセットする作業が不用になる。高精度の加工が必要な部分だけ切削加工すればよいから、全体を切削加工するよりも、生産性が高い。故に、全体として、コストの安い精密部品を製造することが可能になる。切削工具の加工寸法精度は、最新のもので0.005ミクロンというものもある。プラスマイナス数ミクロン以下の加工精度が要求される場合には、本発明の装置が適するということが言える。
【実施例2】
【0037】
図3(a)は自動化された精密加工装置の概念図で、(b)はその一例を示す斜視図である。
この装置は、例えば、図1に示した射出機26と固定金型18を1台備え、可動金型20を4台備える。図3(a)の合体位置42に、射出機26と固定金型18を配置する。加工位置46に切削装置32を配置する。排出位置48に排出機構34を配置する。射出機26と切削装置32との間には、冷却機構を配置する。各可動金型20は、移動機構36により、合体位置42から冷却位置44と排出位置48を経て合体位置42に戻るように、それぞれ自動的に循環移動される。これにより、各工程が同時並行して進行する。
【0038】
上記の冷却機構は、キャビティ16内に射出された樹脂24を、可動金型20で保持した状態で冷却する。自然放冷でもよいし、ファン等を用いた強制冷却でも構わない。射出成型された樹脂成形品12が可動金型に保持された状態で、できるだけ常温に近づくように冷却する。樹脂成型品の切削加工時の寸法精度を保持するためである。例えば、空気あるいは水等の冷媒を用いて樹脂成形品12を摂氏50度以下まで冷却するとよい。
【0039】
また、移動機構36は、可動金型20の上面中央部に連結された支持部材のみ図示されているが、支持部材可動用のレール、稼動制御機構、電動機等を備えているとよい。図3(b)の例には、ターンテーブル状の移動機構37上に、4台の可動金型20を四角柱の側面に固定した機構を示した。各可動金型20は、アーム39により進退する。固定金型18に対向した可動金型20は、固定金型18と合体して射出成型に使用される。切削工具30に対向した可動金型20は、樹脂成型品の切削加工に使用される。なお、移動機構は、例えば、切削工具30が配置された場所で、可動金型20を図示しない加工用テーブルにセットする機構であってもよい。加工用テーブルは、自動的に可動金型20を位置決め固定して、切削工具30と相対移動し、加工精度を維持する。加工用テーブルは既知のNC加工機に使用されているものと同一でよい。可動金型20のいずれかの位置に、切削工具30に対する基準位置を設定するためのマークやピン等の標識を設けることが好ましい。
【0040】
図4は精密加工装置で使用される固定金型と可動金型を示す断面図、図5の(a)は精密加工装置により射出成型された樹脂成型品を示す縦断面図、(b)は樹脂成型品を精密加工した樹脂製品を示す縦断面図である。
以下のような方法により、上記の精密加工装置を使用して樹脂製品13を製造する。先ず、図4(a)に示すように固定金型18及び可動金型20を重ね合わせて合体した状態で、キャビティ16内に樹脂を射出する。これにより、複数の樹脂成型品12を成型する。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、可動金型20を持上げて固定金型18から切り離す。例えば、離型剤の調整により、各樹脂成型品12が固定金型18から離脱して、可動金型20に保持された状態になる。その後、複数の樹脂成型品12を保持した可動金型20を、移動機構36(図1)を用いて、図3に示す金型合体位置42から冷却位置44に移動させる。そこで、樹脂成型品12を、例えば、摂氏40度程度まで冷却する。
【0042】
樹脂成型品を冷却した後、図1(c)に示すように、樹脂成型品12を保持した可動金型20を加工位置46(図3)に移動する。ここで、切削装置32の切削工具30により樹脂成型品12の切削加工を行う。例えば、図5(a)に示す樹脂成型品12では、切削部分12A、12B、12Cについて、微細加工が求められている。突起部14A、14Bは、例えば、幅Wが数ミクロンで高さが数十ミクロンのものである。凹部14Cも同様の寸法の溝である。切削部分12A、12B、12Cを切削することにより、図5(b)に示すような樹脂製品を仕上げることができる。樹脂製品の一部について、射出成型の寸法精度よりも高い面の平坦度が要求されるときにも、切削加工で仕上げることができる。
【0043】
図6は本発明の装置の効果を説明する樹脂成型品の部分縦断面図である。
本発明の装置は、例えば、図の(a)に示すような、幅(W)が0.5μm 以上5μm以下の突起62A、62Bや、あるいは凹部62Cを有する樹脂製品の製造に特に威力を発揮する。例えば、数ミクロン以下の幅の突起や凹部は、射出成型では、図6の(b)に示すように、エッジの部分に空隙66が生じてしまう。樹脂の粘度等の関係で、これ以上の成型が困難である。図の一点鎖線70のように、切削加工すれば、これが実現する。
【0044】
また、図の斜め孔62Dは、金型を対向させて合体させたり引き離したりする構造の射出成型機では成型できない。従って、可動金型に樹脂成型品を保持させて切削装置で加工することで、初めてこのような樹脂製品を製造できる。即ち、切削装置によれば、固定金型と移動金型の接合面に対して垂直でない斜め孔または突起を、自由に形成することができる。
【0045】
以上の方法により、例えば、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等による樹脂成型品のミクロンオーダーの超精密加工が可能になる。得られた製品は、精密光学部品、電子部品、超小型機構部品等、精密加工を必要とする様々な分野に利用できる。
【0046】
以上説明した本発明の樹脂製品の精密加工装置によれば、以下のような効果が期待できる。
(1)射出成型により得た樹脂成型品を、切削装置を使用して切削加工し、微細加工が必要な部分だけを仕上げるので、生産性が良く、かつ、高精度の樹脂製品を製造できる。
(2)可動金型に多数の樹脂成型品を保持して位置決めし、切削加工をするので、切削加工前に材料をクランプしたり位置決めしたりする作業を大幅に削減できる。
(3)射出成型の金型を単純な構造にできる。即ち、部分的に細かい溝や突起を設けるための複雑な金型加工が不用で、金型を安価に製造できる。
(4)同一の形状の樹脂成型品を複数射出成型して、切削装置を使用してそれぞれ別々に切削加工すると、複数種類の樹脂製品を同じ生産ラインで生産することかできる。しかも、金型を共通化できるので、設備コストも低減できる。
(5)可動金型を複数台使用して、射出成型、冷却、切削加工、排出、といった工程を連続させ、並行処理をさせると、生産性をより向上させることができる。
(6)樹脂成型品に対して、幅が0.5μm 以上5μm以下の突起や凹部、あるいは、固定金型と移動金型の接合面に対して垂直でない斜め孔または突起を形成できる。これにより、射出成型では不可能だった樹脂製品の効率的な製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1の樹脂成型品の精密加工装置の概要を示す説明図である。
【図2】図1に示した装置各部の斜視図である。
【図3】(a)は自動化された精密加工装置の概念図で(b)はその一例を示す斜視図である。
【図4】精密加工装置で使用される固定金型と可動金型を示す断面図である。
【図5】(a)は精密加工装置により射出成型された樹脂成型品を示す縦断面図、(b)は樹脂成型品を精密加工した樹脂製品を示す縦断面図である。
【図6】本発明の装置の効果を説明する樹脂成型品の部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 樹脂成型品
12A、12B 切削部分
2 樹脂製品
14A 極薄部
14B 極細の突起部
14C 極細の凹部
3 キャビティ
4 固定金型
5 可動金型
6 連結部材
7 樹脂
8 射出機
2 冷却機構
3 切削工具
2 切削装置
3 排出機構
34A ホッパー
34B ベルトコンベア
2 移動機構
3 移動機構
4 合体位置
5 冷却位置
2 加工位置
3 排出位置
4 樹脂成型品
5 切削装置
2 押え金具
3 切削工具
2 金型
2 樹脂成型品
62A 突起
62B 突起
62C 凹部
62B 斜め孔
2 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離自在に合体され、当接面間に樹脂成型品を射出成型するためのキャビティを有する固定金型及び可動金型と、
前記固定金型と樹脂通路を通じて連結され、前記キャビティに樹脂を射出する射出機と、
前記固定金型から離脱し前記可動金型に保持された樹脂成型品に対して、切削工具により切削加工を施して所定形状の樹脂製品に仕上げる切削装置とを備え、
前記切削装置による切削加工の加工精度と、前記製品の切削対象面の仕上がり寸法精度と、前記可動金型と前記切削工具との相対位置制御の精度とを整合させたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記切削装置による切削加工の加工精度を、前記キャビティの寸法精度より高くしたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記固定金型及び可動金型の当接面間に複数の前記キャビティが設けられ、かつ前記切削装置に1台の切削工具が設けられ、前記切削装置は、切削工具または前記可動金型を相対移動させて、前記複数の樹脂成型品を順次切削加工することを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記固定金型及び可動金型の当接面間に複数の前記キャビティが設けられ、かつ前記切削装置に複数の切削工具が設けられており、各切削工具が同時に並行していずれかの樹脂成型品を切削加工することを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記キャビティ内に射出された樹脂を、前記可動金型に保持させた状態で、前記切削加工前に、樹脂製品の仕上がり寸法精度から導かれた基準温度以下まで冷却する冷却機構を設けたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記切削装置は、前記可動金型に加工面が下向きになるように樹脂成型品を保持させた状態で、前記切削工具により前記切削加工を施すことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記固定金型に前記可動金型を合体させて前記射出機から樹脂を射出する合体位置から、前記切削装置により樹脂成型品を切削加工させる加工位置と、前記排出装置により前記製品を前記可動金型から排出する排出位置とを経て、前記合体位置に戻るように、前記可動金型を循環移動させる移動機構を備えることを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記切削装置により加工された前記樹脂製品は、幅あるいは高さが0.5μm 以上5μm以下の寸法の突起あるいは凹部を有することを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記切削装置として、3軸制御のNC加工機を用いたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工装置において、
前記固定金型に前記可動金型を合体させて前記射出機から樹脂を射出する射出工程と、前記切削装置により樹脂成型品を切削加工させる加工工程とにそれぞれ別の可動金型を配置して、前記射出工程と加工工程とが並列進行するように、前記複数の可動金型を循環移動させる移動機構を備えたことを特徴とする樹脂製品の精密加工装置。
【請求項11】
接離自在に合体され、当接面間に樹脂成型品を射出成型するためのキャビティを有する固定金型及び可動金型と、前記固定金型と樹脂通路を通じて連結され、前記キャビティに樹脂を射出する射出機とを用いて樹脂成型品を射出成型し、
前記固定金型と前記可動金型とを分離した後、前記可動金型に保持された樹脂成型品の特定部分に対して、切削工具により、前記射出成型の寸法精度よりも高い加工精度で、切削加工を施して所定形状の樹脂製品に仕上げることを特徴とする樹脂製品の精密加工方法。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂製品の精密加工方法において、
前記固定金型に前記可動金型を合体させて前記射出機から樹脂を射出する射出工程と、前記切削装置により樹脂成型品を切削加工させる加工工程とを設け、
前記射出工程と前記加工工程とにそれぞれ別の可動金型を配置し、
前記射出工程と加工工程とが並列進行するように、前記複数の可動金型を循環移動させることを特徴とする樹脂製品の精密加工方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の樹脂製品の精密加工方法において、
前記固定金型と前記移動金型の接合面に対して垂直でない斜め孔または突起を、前記切削装置により形成することを特徴とする樹脂製品の精密加工方法。
【請求項14】
請求項11乃至12のいずれかに記載の樹脂製品の精密加工方法において、
前記可動金型に設けた特定の標識を基準に、前記切削工具の基準位置を設定することを特徴とする樹脂製品の精密加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−220274(P2009−220274A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63784(P2008−63784)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(596018218)株式会社入曽精密 (6)
【Fターム(参考)】