説明

樹脂複合組成物及びその用途

【課題】ガラス転移点(Tg)が約200℃以上で、熱膨張率が小さく、放熱性に優れる樹脂複合組成物およびこれを用いた半導体封止材ならびに基板を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機フィラーを有する樹脂複合組成物であって、エポキシ樹脂がビフェニル構造或いはアントラセン構造或いはナフタレン構造である多環芳香族型エポキシ樹脂であり、硬化剤が芳香族アミンであり、無機フィラーが鱗片状の一次粒子が配向せずに集合してなる松ボックリ状の六方晶窒化ホウ素を含み、樹脂複合組成物全体の30〜85体積%である樹脂複合組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れた低熱膨張の樹脂複合組成物とそれを用いた成形体及び半導体封止材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体封止材料、半導体実装用接着剤、半導体搭載用モジュール、あるいは自動車用、航空機用、建築部材等に用いられる部品などに使用される硬化性材料において、高温・高湿下での安定性や信頼性に優れた耐熱性が求められている。さらに、エネルギー分野において、各種の燃料電池や二次電池などの研究開発が進展し、その実用化のために耐熱性材料が必要になってきている。特に、ハイブリッド自動車や電気自動車、電鉄、分散電源ではインバーターを中心としたパワーデバイスが多用され、且つそのパワー密度も飛躍的に大きくなっている。従って、200℃以上の高温で動作するシリコンカーバイト(SiC)デバイスの出現も予想されている。また、カーエレクトロニクス分野で用いられる通常の半導体チップを使用するエレクトロニクスコントロールユニット(ECU)も、これまで車室内に搭載されていたが、より環境の厳しいエンジンルーム内へ搭載される方向にあり、やはり過酷な条件に耐えうる耐熱性が要求されている。このような要求に対して、ベンゾオキサジン環構造含有化合物をエポキシ樹脂と反応させた耐熱性樹脂が検討されている(特許文献1、2、非特許文献1など)。また、ベンゾオキサジン環構造含有化合物とビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(DGEBA)などのエポキシ樹脂とを化学量論量で反応させた場合には未反応物が残存して、理想的な架橋構造の構成を阻害するので、化学量論量よりもエポキシ樹脂を多く用いることにより、硬化後の樹脂に高いガラス転移点(Tg)を与えることが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−147165号公報
【特許文献2】特開2008−94961号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】成形加工,第19巻,第10号,634−640(2007)
【非特許文献2】J. Appl. Polym. Sci., Vol.61,p1595(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のように報告されているベンゾオキサジン環構造含有化合物とエポキシ樹脂とから成る組成物の硬化物は、高い耐熱性を目的としているにも関わらず、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上のエポキシ樹脂が提供されておらず、高温で使用されるにも関わらず、熱膨張率が大きく、放熱性も充分でなかった。そこで、本発明者らは、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上で、熱膨張率が小さく、放熱性に優れる樹脂複合組成物およびそれを用いた半導体封止材を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機フィラーを有する樹脂複合組成物であって、エポキシ樹脂が多環芳香族型エポキシ樹脂であり、無機フィラーが六方晶窒化ホウ素を含み、無機フィラーが樹脂複合組成物全体の30〜85体積%である樹脂複合組成物である。
【0007】
多環芳香族型エポキシ樹脂は、ビフェニル構造或いはアントラセン構造或いはナフタレン構造であるのが好ましい。
【0008】
芳香族アミンを硬化剤に含むのが好ましい。
【0009】
硬化促進剤を用いる場合は、下式
【0010】
【化1】




(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。ただし、R1及びR2の両方が水素原子の場合を除く。また、R1及びR2は、結合する窒素原子と共同して、脂肪族の5又は6員環を形成しても良い。)で表される硬化促進剤を含むのが好ましい。
【0011】
無機フィラーは、平均粒子径10〜100μmである粗粉と、平均粒子径0.5〜5μmである微粉とからなり、粗粉の配合比率が樹脂複合組成物中に含まれる無機フィラー全体の50体積%以上であるのが好ましい。
【0012】
粗粉は六方晶窒化ホウ素であるのが好ましい。
【0013】
粗粉の六方晶窒化ホウ素が、鱗片状の一次粒子が配向せずに集合してなる松ボックリ状窒素化ホウ素であるのが好ましい。
【0014】
微粉は、六方晶窒化ホウ素又は球状の酸化アルミニウムであるのが好ましい。
【0015】
さらには、上述の樹脂複合組成物を成形した成形体である。
【0016】
さらには、上述の樹脂複合組成物を硬化することにより得られた樹脂複合硬化物である。
【0017】
さらには、上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物を用いた半導体封止材である。
【0018】
さらには、上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物に配合されている無機フィラーが一定方向に配向されている半導体封止材である。
【0019】
さらには、上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物を用いた樹脂基板あるいは絶縁金属ベース回路基板である。
【0020】
さらには上述の半導体封止材あるいは樹脂基板あるいは絶縁金属ベース回路基板を用いた半導体モジュール又はパワーモジュールである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上で、熱膨張率が小さく、放熱性に優れる樹脂複合組成物を提供でき、本発明の樹脂複合組成物を硬化させた樹脂複合硬化物は、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上で、熱膨張率が小さく、放熱性に優れ、ワイドバンドギャップ半導体などの高出力パワー半導体向けの半導体封止材、樹脂基板、絶縁金属ベース回路基板に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明の樹脂複合組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機フィラーとを含む。本発明で用いるエポキシ樹脂は芳香環を主鎖に含む。この芳香環は、主鎖が、ビフェニル、アントラセン、ナフタレンのような多環芳香族骨格を有するものが好ましい。
このようなエポキシ樹脂として、下記のようなエポキシ樹脂を例示できる。
【0024】
【化2】



(式中のmは平均値であり、2〜10を表す。)
【0025】
【化3】



(式中のnは平均値であり、0〜2を表す。)
【0026】
【化4】



【0027】
本発明の樹脂複合組成物において用いられる硬化剤は、芳香族アミンを含むのが好ましい。このような硬化剤として、下記のような硬化剤を例示できる。
【0028】
【化5】



【0029】
本発明の樹脂複合組成物における上記硬化剤の含有量は、通常0.9〜1.1化学量論量(eq)である。
【0030】
本発明の樹脂複合組成物において硬化促進剤を用いる場合は、エチルアミン錯体(化1)を含むのが好ましい。このような硬化促進剤として、下記のような硬化促進剤を例示できる。
【0031】
【化6】



【0032】
本発明の樹脂複合組成物における上記硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対する配合量で通常0.5〜5.0質量部(phr:per hundred resin)である。
【0033】
本発明の樹脂複合組成物における無機フィラーは、熱伝導性を向上させるものであり、具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素があり、窒化ホウ素が好ましく、六方晶窒化ホウ素が特に好ましい。
【0034】
無機フィラーの含有率は、樹脂複合組成物全体の30〜85体積%である。特に好ましい含有率は35〜65体積%である。熱伝導性フィラーの含有率が30体積%未満では樹脂複合組成物の熱伝導率が減少する傾向にあり、85体積%を越えると、成形時に空隙を生じ易くなり、絶縁性及び機械強度が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0035】
無機フィラーは、平均粒子径10〜100μmである粗粉と、平均粒子径0.5〜5μmである微粉とからなるのが好ましい。無機フィラーを粗粉と微粉に分けて配合するのは、粗粉同士間に微粉を充填することによって無機フィラー全体の充填率を上げるためである。無機フィラーを粗粉と微粉で形成する場合、粗粉の配合比率が樹脂複合組成物中に含まれる無機フィラー全体の50体積%以上であるのが好ましく、更に好ましくは75体積%以上である。粗粉比率が低くなると樹脂複合組成物の流動性が低下し、緻密に充填された成形体ができなくなる傾向にあるためである。
【0036】
粗粉と微粉で形成する場合であっても、素材としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素があり、窒化ホウ素が好ましく、六方晶窒化ホウ素が特に好ましい。
【0037】
さらに、六方晶窒化ホウ素が、鱗片状の一次粒子が配向せずに集合してなる松ボックリ状窒化ホウ素であることが好ましい。このような窒化ホウ素の製造方法については、特許3461651号に添付された明細書に記載されており、その概要はほう酸とメラミンの混合物を適度の水蒸気を含む雰囲気下で保持させて得られたほう酸メラミン(C・2HBO)を触媒の存在下、1700〜2200℃で焼成することである。
【0038】
本発明で使用される松ボックリ状窒化ホウ素は、平均粒径10μm以上の鱗片状窒化ホウ素の一次粒子が凝集して凝集体の径が45μm以上となったものを20質量%以上含有しているものであり、高結晶性で配向性が殆どないことが特徴である。このような松ボックリ状窒化ホウ素の結晶性と配向性の評価は、粉末X線回析法によって行うことができる。
【0039】
すなわち、結晶性は粉末X線回折法による黒鉛化指数(GI=GraphitizationIndex)の程度で評価することができ、そのGIはX線回折図上の(100)、(101)、(102)回折線の積分強度(面積)から、GI=[面積{(100)+(101)}]/[面積(102)]、で求めることができる。本発明で使用される松ボックリ状窒化ホウ素粉末のGIは高結晶性であるため、1.0〜2.0である。
【0040】
次に、配向性はGIによってもある程度は評価できるが、正確な評価は粉末X線回折法による(002)回折線の強度I002 と(100)回折線の強度I100との比(I002 /I100 )(以後、これを配向性指数[OI=OrientationIndex ]と記す)によって行う
ことができる。配向性が殆どない窒化ホウ素粉末ではOI=6〜7であり、配向性が大きくなるにつれてOIは大きくなる。本発明で使用される松ボックリ状窒化ホウ素は、OI=6〜20で配向性は小さい。
【0041】
無機フィラーの微粉としては、六方晶窒化ホウ素を用いれば、低誘電率で、高絶縁性で、高熱伝導性の樹脂複合硬化体が得られるので好ましい。また、球状アルミナも高絶縁性で高熱伝導率の樹脂複合組成物を得ることができるので好ましい。また、粗分で充分な熱伝導率が得られる場合にはコストダウンのために酸化珪素を用いてもよい。
【0042】
また、無機フィラーの充填性を上げるために、シランカップリング剤を用いてフィラーの表面処理を行ってもよい。
【0043】
本発明の樹脂複合組成物の硬化条件は、硬化促進剤を使用しない場合は200℃〜240℃で2〜5時間加熱する。硬化促進剤を用いる場合は150℃〜190℃で2〜5時間加熱する。硬化の前に、硬化温度より低い温度で保持する予備硬化を行っても構わない。予備硬化を行う場合は、何段階でも良い。予備硬化と硬化を合わせて、硬化促進剤を使用しない場合は、120℃1時間その後180℃2時間の予備硬化を行い、220℃2時間で硬化する場合などが例示できる。或いは、硬化促進剤を使用する場合は、120℃1時間の予備硬化を行い、150℃2時間で硬化する場合などが例示できる。但し、これらに限定されない。
【0044】
さらには、上述の硬化前の樹脂複合組成物の成形体であり、加熱によりBステージ状態にした成形体である。
【0045】
本発明におけるBステージ状態とは、樹脂複合組成物が室温で乾いた状態を示し、高温に加熱すると再び溶融する状態をいい、より厳密には、DSC(Differential scanning calorimetry:示差走査型熱量計)を用いて、硬化時に発生する熱量から計算した値で硬化度70%未満の状態を示す。
【0046】
絶縁層のCステージ状態とは、樹脂複合組成物の硬化がほぼ終了した状態で、高温に加熱しても再度溶融することはない状態をいい、硬化度70%以上の状態をいう。さらに、硬化させた成形体は、上述の樹脂複合組成物を硬化させて成形した成形体である。
【0047】
成形にあっては、樹脂複合組成物の上下間より10kPa以上の圧力をかけて硬化させる成形があり、この成形体は、高絶縁性であると共に高熱伝導性を有し、更にアルミニウム、銅、それらの合金等の金属との接着性にも優れる特徴を有する。この成形体は、混成集積回路用の基板、回路基板の絶縁層として好適である。成形にあっては、押出成型機、真空ホットプレス装置を用いることができる。
【0048】
さらには、上述の硬化前の樹脂複合組成物を形成した半導体封止材であり、Bステージ状態で半導体樹脂封止用金型に使用できるように成形した半導体封止材である。
【0049】
さらには、上述の半導体封止材を構成する樹脂複合組成物に配合されている無機フィラーが、一定方向に配向されている半導体封止材である。無機フィラーの配向の方向は、熱を逃がす方向に影響があるため、この構成により、放熱方向を制御できる。具体的には、押出成形をした場合、その押し出し方向に配向する。半導体樹脂封止用金型成を工夫することで、放熱方向を制御できる。
【0050】
さらには、上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物上に金属箔を設け、局所的に金属箔を切り欠いて回路を形成した樹脂基板である。
【0051】
さらには、金属箔上に上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物を介して導体ベース金属を設け、金属箔を局所的に切り欠いて回路を形成した絶縁金属ベース回路基板である。
【0052】
これらの基板に用いられる金属箔の材質は、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、銀、チタニウム、金、マグネシウム、シリコン又はこれら金属の合金がある。この材質にニッケルメッキ、ニッケルと金の合金によるメッキを施すこともできる。金属箔の厚みは、例えば4〜300μmがある。
【0053】
絶縁金属ベース回路基板に用いられる導体ベース金属の材質は、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、銀、チタニウム、金、マグネシウム、シリコン又はこれら金属の合金がある。基板の厚みは例えば35〜3000μmがある。
【0054】
樹脂基板あるいは絶縁金属ベース回路基板の製造方法は、例えば、金属製の基板の上に上述の樹脂複合組成物を積層し、樹脂複合組成物を硬化させた後、金属箔を積層し、これら全体を加熱ホットプレスにて一括接合され、さらに、金属箔をエッチングなどによって切り欠いて回路を形成することがある。
【0055】
さらには、上述の樹脂複合組成物を半導体封止材に用いた半導体モジュールであり、金属箔上に上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物を介して導体金属を設けてなる絶縁金属ベース回路基板或いは上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物を樹脂基板として用いた半導体モジュールである。
【0056】
さらには、上述の樹脂複合組成物を半導体封止材に用いたパワーモジュールであり、金属箔上に上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物を介して導体金属を設けてなる絶縁金属ベース回路基板或いは上述の樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物を樹脂基板として用いたパワーモジュールである。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例を用いて、表1を参照しつつ例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0058】
【表1】



【0059】
実施例および比較例において、以下の試料を用いた。
(エポキシ樹脂)
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製NC-3000H、化2(m=2〜4))、アントラセンジヒドリド型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製JERYX8800、化3(n=0.15:平均値)、ナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製EPICLON HP-4032D、化4)、ビスフェノールAグリシジルエーテル(DGEBA) (ジャパンエポキシレジン社製JER828、化7)
【0060】
【化7】



【0061】
(硬化剤)
4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)(和光純薬工業社製、化4)、クレゾールノボラック(大日本インキ化学社製PHENOLITEKA-1165、化8(1)) 、1-シアノメチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ-CN)(四国化成社製、化8(2))
【0062】
【化8】



【0063】
(硬化促進剤)
フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(和光純薬工業製、化6)、テトラフェニルホウホニウムテトラ-p-トリルボレート(TPP-MK) (北興化学製TPP-MK、化9)
【0064】
【化9】



【0065】
(無機フィラー)
オルトほう酸(HBO)20kgとメラミン(C)19kgと炭酸カルシウム(CaCO)1kgをヘンシェルミキサーで混合し、それを温度90℃、湿度90%の雰囲気下に6時間保持してほう酸メラミン塩を得た。これを窒素雰囲気中、1800℃で2時間焼成した後、焼成物を粉砕、酸処理、洗浄、乾燥して松ボックリ状窒化ホウ素を製造した。表1ではBNと記載した。得られた松ボックリ状窒化ホウ素を乾式振動篩い(ホソカワミクロン社製パウダーテスターPT−E型)により45μmの上下に分級した。その結果、45μm以上の凝集粒子の割合は26重量%であり、分級した凝集粒子についてSEM観察を行ったところ、特許3461651号に添付された図6と同程度の凝集粒子であることを確認した。また、GIは1.28、OIは16.5であった。
【0066】
粒子径3.0μm以下のものを90体積%含有し平均粒子径は0.5μmである球状の酸化アルミニウム(電気化学工業社製、ASFP−20)、平均粒子径が4.0μmの窒化ホウ素(電気化学工業社製、SP−2)、平均粒子径が2.5μmの窒化ホウ素(電気化学工業社製、HGP7)、平均粒子径300μm、GIは1.1の窒化ホウ素(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、PT670)
【0067】
[実施例1〜10]
実施例1〜10の樹脂複合組成物は、表1に示す配合比の樹脂複合組成物である。本実施例にあっては、各種エポキシ樹脂(NC-3000H、YX8800、HP-4032D)と化学量論量の硬化剤(DDS)と無機フィラーにあっては、上記記載の六方晶窒化ホウ素(表1ではBNと記載した)を用いた。
【0068】
各種エポキシ樹脂(NC-3000H、YX8800、HP-4032D)と化学量論量のDDS、更に、六方晶窒化ホウ素を120℃で1時間溶融混合し、減圧脱気した。そして溶融混合物を120℃に予備加熱しておいたシリコン注型板に注型した。注型後、硬化条件(120℃1時間+180℃2時間+240℃2時間、プレス下(12.4MPa))で六方晶窒化ホウ素を充填させた硬化物を作製した。物性測定用の試料は、得られた板状の硬化物をダイヤモンドカッターにより切り出し、サンドペーパー(#240、#800、#2000)で表面を研磨することにより作製した。
【0069】
[実施例11、12]
エポキシ樹脂(YX8800, HP-4032D)と0.9eqのDDS、無機フィラーを120℃で1時間溶融混合し、減圧一次脱気後、硬化促進剤フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体BF3・CHNH(エポキシ樹脂に対して1.0phr)を添加し、均一に混合した後に二次脱気した。そして溶融混合物を120℃に予備加熱しておいたシリコン注型板に注型した。注型後、120℃1時間+180℃2時間で硬化させた。物性測定用の試料は、得られた板状の硬化物をダイヤモンドカッターにより切り出し、サンドペーパー(#240、#800、#2000)で表面を研磨することにより作製した。
【0070】
[実施例13〜20]
実施例13〜20は、エポキシ基を含むシランカップリング剤を用いることでフィラーの表面修飾を行った。2%酢酸水溶液(5ml)に3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(epoxy-TMS)(0.10g)を滴下し、r.t./60min攪拌した(溶液1)。次に無機フィラー(10.0g)をMeOH(36ml),イオン交換水(4ml)の中で室温で20分間攪拌し、懸濁液にした(溶液2)。溶液2に溶液1を滴下し、室温で2時間攪拌した。その後、ろ過を行い、ろ物を100℃で2時間常圧、100℃で18時間減圧下で加熱した。そして表面処理を行った無機フィラーを得た。
【0071】
[比較例1〜3]
比較例1〜3は、表1に示す変更以外は実施例3と同様のものである。
【0072】
[比較例4]
エポキシ樹脂(DGEBA)と化学量論量のKA-1165を120℃で1時間溶融混合し、減圧一次脱気後、硬化促進剤TPP-MK(エポキシ樹脂に対して1.0phr)、無機フィラーを添加し、均一に混合した後に二次脱気した。そして溶融混合物を120℃に予備加熱しておいたシリコン注型板に注型した。注型後、120℃1時間+180℃2時間で硬化させ、室温まで自然冷却させた。物性測定用の試料は、得られた板状の硬化物をダイヤモンドカッターにより切り出し、サンドペーパー(#240、#800、#2000)で表面を研磨することにより作製した。
【0073】
[比較例5]
エポキシ樹脂(DGEBA)に硬化剤(2E4MZ-CN) (エポキシ樹脂に対して2.0phr)、無機フィラー添加し、90℃で10分間溶融混合して均一にした後、減圧脱気した。そして溶融混合物を、溶融混合温度に予備加熱しておいたシリコン注型板に注型した。注型後、120℃1時間+150℃2時間で硬化させた。物性測定用の試料は、得られた板状の硬化物をダイヤモンドカッターにより切り出し、サンドペーパー(#240、#800、#2000)で表面を研磨することにより作製した。
【0074】
上述の実施例1〜20と比較例1〜5で得られた硬化物の物性を表2に示す。以下、各物性の測定方法について説明する。
【0075】
本発明の効果である熱伝導性は、熱伝導率で評価した。本発明の他の効果である低熱膨張性は、熱機械分析(TMA)による熱膨張率で評価し、耐熱性はTgで評価した。
【0076】
(熱伝導率)
熱伝導率は、実施例の樹脂粗生物の熱拡散率、比重、比熱を全て乗じて算出した。熱拡散率は、試料を幅10mm×10mm×厚み1mmに加工し、レーザーフラッシュ法により求めた。測定装置はキセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製 LFA447 NanoFlash)を用いた。比重はアルキメデス法を用いて求めた。比熱は、示差走査熱量分析 ( DSC )(島津製作所製 DSC‐60)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度 10 ℃/minにて、求めた。
【0077】
(Tg、熱膨張率)
熱機械分析(TMA)(ブルカー製 TMA4000SA)は、昇温速度 5℃/min、圧縮法、荷重5g、空気100ml/minで測定した。サンプルの試験片は5(縦)×5(横)×10(高さ)mmに磨いたものを最終硬化温度で10分加熱してひずみをとった後に測定した。TMA曲線の傾きよりTgと、50〜100℃における熱膨張率(CTE)を算出した。
【0078】
表2に示すように本発明の樹脂複合組成物のガラス転移点(Tg)が200℃以上で、優れた耐熱性を示している。熱膨張率は30ppm/℃を下回っており、熱伝導率も5W/(m・℃)以上である。
【0079】
【表2】



【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る樹脂複合組成物および半導体封止材は、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上で、熱膨張率が小さく、放熱性に優れるので産業上有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機フィラーを有する樹脂複合組成物であって、エポキシ樹脂が多環芳香族型エポキシ樹脂であり、無機フィラーが六方晶窒化ホウ素を含み、無機フィラーが樹脂複合組成物全体の30〜85体積%である樹脂複合組成物。
【請求項2】
多環芳香族型エポキシ樹脂が、ビフェニル構造或いはアントラセン構造或いはナフタレン構造である請求項1記載の樹脂複合組成物。
【請求項3】
芳香族アミンを硬化剤に含む請求項1又は請求項2記載の樹脂複合組成物。
【請求項4】
下式で表される硬化促進剤を含む請求項1〜3のいずれか一項記載の樹脂複合組成物。
【化10】



(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。ただし、R1及びR2の両方が水素原子の場合を除く。また、R1及びR2は、結合する窒素原子と共同して、脂肪族の5又は6員環を形成しても良い。)
【請求項5】
無機フィラーが、平均粒子径10〜100μmである粗粉と、平均粒子径0.5〜5μmである微粉とからなり、粗粉の配合比率が樹脂複合組成物中に含まれる無機フィラー全体の50体積%以上である請求項1〜4のいずれか一項記載の樹脂複合組成物。
【請求項6】
無機フィラーの粗粉が六方晶窒化ホウ素である請求項5記載の樹脂複合組成物。
【請求項7】
無機フィラーの粗粉の六方晶窒化ホウ素が、鱗片状の一次粒子が配向せずに集合してなる松ボックリ状である請求項5又は請求項6記載の樹脂複合組成物。
【請求項8】
無機フィラーの微粉が六方晶窒化ホウ素である請求項5〜7のいずれか一項記載の樹脂複合組成物。
【請求項9】
無機フィラーの微粉が球状の酸化アルミニウムである請求項5〜7のいずれか一項記載の樹脂複合組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂複合組成物を成形した成形体。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂複合組成物を硬化することにより得られる樹脂複合硬化物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂複合組成物あるいは請求項11記載の樹脂複合硬化物を用いた半導体封止材。
【請求項13】
半導体封止材を構成する樹脂複合組成物あるいは樹脂複合硬化物に配合されている無機フィラーが、一定方向に配向されている請求項12に記載の半導体封止材。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂複合組成物あるいは請求項11記載の樹脂複合硬化物を用いた樹脂基板。
【請求項15】
金属箔上に請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂複合組成物あるいは請求項11記載の樹脂複合硬化物を介して導体金属を設けてなる絶縁金属ベース回路基板。
【請求項16】
請求項12又は13記載の半導体封止材を用いた半導体モジュール。
【請求項17】
請求項14記載の樹脂基板を用いた半導体モジュール。
【請求項18】
請求項15記載の絶縁金属ベース回路基板を用いた半導体モジュール。
【請求項19】
請求項12又は13記載の半導体封止材を用いたパワーモジュール。
【請求項20】
請求項14記載の樹脂基板を用いたパワーモジュール。
【請求項21】
請求項15記載の絶縁金属ベース回路基板を用いたパワーモジュール。




【公開番号】特開2011−208007(P2011−208007A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77025(P2010−77025)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】