説明

樹脂詰まり検出装置および樹脂詰まり検出方法

【課題】金型に設けられた複数のエアベントのそれぞれについて、樹脂の詰まりを検出することが難しいという問題を解決することが可能な樹脂詰まり検出装置を提供する。
【解決手段】圧力センサ1A〜1Bを有する検出部は、キャビティー21に設けられた複数のエアベントのそれぞれと接続された複数の配管のそれぞれにかかる圧力を検出する。データ収集部2は、各圧力の時間変化を監視し、各時間変化に基づいて、各エアベントの状態を示す複数の状態値を求める。異常判定制御部3は、複数の状態値に基づいて、エアベントごとに、そのエアベントに前記樹脂が詰まっているか否かを判断する制御部と、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置で発生する樹脂詰まりを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を金型内部に射出して成形する射出成形装置では、成形された樹脂である成形品の内部におけるボイドの数や、成形品の内部における樹脂が未充填となる未充填領域を低減する方法として、金型内部を真空にした状態で、樹脂を金型に射出する真空成形方法が知られている。
【0003】
真空成形方法が利用される場合、通常、金型にはエアベントと呼ばれる小穴が設けられ、真空ポンプのような金型内部を真空にするための真空源が配管を介してエアベントと接続される。そして、真空源が金型内部の気体を配管を介してエアベントから吸気することで、金型内部を真空にしている。
【0004】
しかしながら、エアベントにおける気体の流路は、非常に狭く作られていることが多く、樹脂を金型に射出して成形する射出成形動作が繰り返されると、エアベントに樹脂が詰まることがあった。この場合、金型内部の真空度が十分に上がらず、成形品の内部におけるボイドの数や未充填領域を十分に低減することができないことがあった。
【0005】
これに対して特許文献1に記載の樹脂成形のモニタ方法では、エアベントと真空源とを接続する配管の圧力が監視され、その配管の圧力に基づいて、エアベントに樹脂が詰まっているか否かが検出される。より具体的には、金型内部が真空状態にされ、その後、金型内部に樹脂が射出されてから最初に現れる圧力の極大値の大きさに基づいて、エアベントに樹脂が詰まっているか否かが検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−248510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金型内部の真空度の向上などを目的として、複数のエアベントが金型に設けられることがある。この場合、複数のエアベントのそれぞれに配管が接続され、真空源は各配管を介してエアベントと接続される。
【0008】
上記のような構成では、複数のエアベントのうち一つでも樹脂の詰まりが発生すると、金型内部の真空度が十分に上がらず、成形品の内部におけるボイドの数や未充填領域を十分に低減することができないことがある。
【0009】
特許文献1に記載の樹脂成形のモニタ方法では、エアベントが複数ある金型については考慮されていないため、複数のエアベントのそれぞれについて、樹脂の詰まりを検出することが難しいという問題がある。
【0010】
例えば、複数の配管のうち一つの配管の圧力が測定されても、他の配管と接続されたエアベントに樹脂が詰まっているか否かを検出することは難しい。また、複数の配管のそれぞれの圧力が検出されても、エアベントが複数あると、金型内部に樹脂が射出されてから最初に現れる圧力の極大値の大きさが、エアベントに樹脂が詰まっているか否かに応じてどのように変化するかわからない。
【0011】
本発明の目的は、上記の課題である、金型に設けられた複数のエアベントのそれぞれについて、樹脂の詰まりを検出することが難しいという問題を解決することが可能な樹脂詰まり検出装置および樹脂詰まり検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による樹脂詰まり検出装置は、樹脂が流し込まれるキャビティーに設けられた複数のエアベントのそれぞれから、各エアベントに接続された複数の配管を介して、前記キャビティー内部の気体を吸気する真空源が備わった射出成形装置用の樹脂詰まり検出装置であって、各配管にかかる圧力のそれぞれを検出する検出部と、各圧力の時間変化を監視し、各時間変化に基づいて、各エアベントの状態を示す複数の状態値を求める監視部と、前記複数の状態値に基づいて、前記複数のエアベントのそれぞれについて、前記樹脂が詰まっているか否かを判断する制御部と、を有する。
【0013】
本発明による樹脂詰まり検出方法は、樹脂が流し込まれるキャビティーに設けられた複数のエアベントのそれぞれから、各エアベントに接続された複数の配管を介して、前記キャビティー内部の気体を吸気する真空源が備わった射出成形装置用の樹脂詰まり検出装置による樹脂詰まり検出方法であって、各配管にかかる圧力のそれぞれを検出し、各圧力の時間変化を監視し、各時間変化に基づいて、各エアベントの状態を示す複数の状態値を求め、前記複数の状態値に基づいて、前記複数のエアベントのそれぞれについて、前記樹脂が詰まっているか否かを判断する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金型に設けられた複数のエアベントのそれぞれについて、樹脂の詰まりを検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における第1の実施形態の射出成形装置の一状態を示す図である。
【図2】本発明における第1の実施形態の射出成形装置の他の状態を示す図である。
【図3】キャビティーおよびその周辺を模式的に示す上面図である。
【図4】キャビティーおよびその周辺を模式的に示す断面図である。
【図5】キャビティーおよびその周辺を模式的に示す断面図である。
【図6】射出成形装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図7】配管にかかる圧力の時間変化の一例を示す図である。
【図8】配管にかかる圧力の時間変化の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同じ機能を有するものには同じ符号を付け、その説明を省略する場合がある。
【0017】
図1および図2は、本発明における第1の実施形態の射出成形装置の構成を示す図である。図1および図2において、射出成形装置は、金型11と真空ポンプ12と配管13とを有する本体部と、圧力センサ1A〜1Cとデータ収集部2と異常判定制御部3とモニタ4とを有する樹脂詰まり検出装置とを有する。なお、圧力センサ1A〜1Cのそれぞれは、信号配線ケーブル5を介してデータ収集部2と通信可能に接続されている。また、データ収集部2、異常判定制御部3およびモニタ4のそれぞれは通信可能に接続されている。
【0018】
金型11は、キャビティー21を有する下型22と、下型22と当接させることで、キャビティー21内部を略閉塞空間にするための上型23とを有する。なお、図1では、下型22および上型23が離間された型開き状態の金型11が示されており、図2では、下型22および上型23が当接された型締め状態の金型11が示されている。
【0019】
真空ポンプ12は、配管13を介してキャビティー21と接続されている真空源である。真空ポンプ12は、金型11が型締め状態とされた後で、配管13を介してキャビティー21内部の気体を吸気することで、キャビティー21内部を真空状態にする。
【0020】
真空ポンプ12およびキャビティー21を接続する配管13は、真空ポンプ12に接続された配管13Dが途中で分岐され、その分岐された配管13A〜13Cのそれぞれがキャビティー21と接続された構成を有する。
【0021】
金型11と真空ポンプ12と配管13を有する本体部は、上型23を下型22と当接させて金型11を型締め状態とし、その後、真空ポンプ12を駆動して、キャビティー21内部を真空状態にする。そして、本体部は、溶融された樹脂(より具体的には、熱硬化性樹脂)である溶融樹脂を金型11のキャビティー21に流し込み、その後、キャビティー21内部の溶融樹脂を硬化することで成形品として成形する。このような射出成形動作を実現するために、本体部には、図示してはいないが、下型22および上型23を当接するための位置決め制御機構、溶融樹脂を射出してキャビティー21溶融に樹脂を流し込むための射出制御機構、および、樹脂の溶解および硬化を行うために、金型11などの温度を制御する温度制御機構などを備えている。
【0022】
図3〜図5は、キャビティー21およびその周辺をより詳細に説明するための図である。より具体的には、図3は、キャビティー21およびその周辺を模式的に示す上面図である。図4は、キャビティー21およびその周辺を図3のx−x線で切断した縦断面図であり、図5は、キャビティー21およびその周辺を図3のy−y線で切断した縦断面図である。
【0023】
図3〜図5に示すように、キャビティー21は、エアベント31A〜31Cと、ゲート32とを有する。なお、エアベントは、図3〜図5では、3つ示されているが、実際には、複数あればよい。
【0024】
エアベント31A〜31Cは、キャビティー21から気体を吸気するための小穴である。エアベント31A〜31Cの幅は、エアベント31A〜31Cを気体の流路として機能させつつ、キャビティー21に流し込まれた溶融樹脂が通りづらくなるように設計される。例えば、エアベント31A〜31Cの幅は、10μm〜20μm程度である。
【0025】
ゲート32は、溶融樹脂をキャビティー22に流し込むため流入口である。
【0026】
また、エアベント31A〜31Cのそれぞれは、キャビティー21内部の気体を吸気するための孔である真空孔33A〜33Cのそれぞれと接続されている。より具体的には、エアベント31Aと真空孔33Aとが接続され、エアベント31Bと真空孔33Bとが接続され、エアベント31Cと真空孔33Cとが接続されている。
【0027】
図3〜図5では、エアベント31A〜31Cのそれぞれに対して、真空孔が一つずつ接続されているが、一つのエアベントに対して複数の真空孔が接続されてもよい。また、配管13Dは、3つに分岐されていたが、実際には、真空孔と同数に分岐され、その分岐された配管のそれぞれが真空孔のそれぞれと接続される。なお、本実施形態では、配管13Aが真空孔33Aと接続され、配管13Bが真空孔33Bと接続され、配管13Cが真空孔33Cと接続されている。
【0028】
図1の説明に戻る。圧力センサ1A〜1Cは、各配管13A〜13Cにかかる圧力のそれぞれを検出する検出部を構成する。
【0029】
圧力センサ1A〜1Cのそれぞれは、配管13A〜13Cのそれぞれに設けられている。より具体的には、圧力センサ1Aは、配管13Aに設けられ、圧力センサ1Bは、配管13Bに設けられ、圧力センサ1Cは、配管13Cに設けられる。そして、圧力センサ1A〜1Cは、自センサが設けられた配管の圧力を検出し、その圧力を示す検出信号を、信号配線ケーブル5を介してデータ収集部2に出力する。
【0030】
データ収集部2は、圧力センサ1A〜1Cのそれぞれにて検出された圧力の時間変化を監視して記憶する監視部である。
【0031】
より具体的には、データ収集部2は、圧力センサ1A〜1Cのそれぞれから出力された検出信号を予め定められた時間間隔Δtごとに取り込み、その取り込んだ検出信号が示す圧力を記憶していくことで、圧力の時間間隔Δtごとの変化を、圧力の時間変化として記憶する。
【0032】
データ収集部2は、記憶した各圧力の時間変化に基づいて、エアベント31A〜31Cのそれぞれの状態を示す複数の状態値を求める。より具体的には、データ収集部2は、真空ポンプ12によるキャビティー22内部の気体の除去が開始されてから、射出制御機構による溶融樹脂のキャビティー21への流し込みが開始されるまでの間における、各圧力の時間変化に基づいて状態値を求める。
【0033】
本実施形態では、データ収集部2は、エアベント31A〜31Cのそれぞれの状態値として、キャビティー21内部の気体の除去が開始されてから、そのエアベントと接続された配管にかかる圧力がしきい値に到達するまでの到達時間を求める。なお、しきい値は、例えば、キャビティー21内部の真空度が規定値になるような値である。
【0034】
樹脂がエアベントに完全に詰まり、気体がエアベントを通過しなくなった場合、真空ポンプ12によって気体が除去される容積は、樹脂が詰まった箇所から真空孔までの容積となるので、真空度が規定値に到達するまでの到達時間は、樹脂が詰まっていない場合と比べ短縮する。
【0035】
また、樹脂がエアベントに部分的に詰まっている場合、気体が除去される容積は、樹脂が詰まっている容積以外の容積となるので、樹脂が詰まっていない場合と比べてほとんど変化しない。しかしながら、エアベントから流出される気体の流動性が悪化するために、真空度が規定値に到達するまでの到達時間は、樹脂が詰まっていない場合と比べて延長する。なお、樹脂が詰まっている容積が大きいほど、本到達時間は長くなる。
【0036】
したがって、各圧力の到達時間は、各エアベント31A〜31Cの状態、より具体的には、各エアベント31A〜31Cにおける樹脂の詰まり具合に応じて変化するので、エアベントの状態を示す状態値として用いることができる。
【0037】
異常判定制御部3は、データ収集部2にて求められた状態値である到達時間に基づいて、エアベント31A〜31Cのそれぞれについて、樹脂が詰まっているか否かを判断する。より具体的には、異常判定制御部3は、各到達時間を他の到達時間と比較し、その比較結果に基づいて、エアベント31A〜31Cのそれぞれについて樹脂が詰まっているか否かを判断する。
【0038】
モニタ4は、異常判定制御部3の判断結果を表示する表示部である。
【0039】
次に本実施形態の射出成形装置の動作について説明する。
【0040】
図6は、本実施形態の射出成形装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。なお、金型11は型開き状態(図1参照)であるとする。
【0041】
先ず、位置決め制御機構によって下型22および上型23が当接され、型開き状態の金型11が型締め状態(図2参照)になる(ステップS601)。
【0042】
金型11型が型締め状態になると、射出制御機構によって真空ポンプ12が駆動され、金型11のキャビティー21内部の気体が、配管13および真空孔33A〜33Cを介してエアベント31A〜31Cから除去され始める(ステップS602)。
【0043】
真空ポンプ12が駆動されると、射出制御機構から真空ポンプ12を駆動した旨がデータ収集部2に通知される。データ収集部2は、その通知を受け付けると、圧力センサ1A〜1Bからの検出信号を時間間隔Δtごとに取り込んで、配管13Aにかかる圧力p1、配管13Bにかかる圧力p2、配管13Cにかかる圧力p3を時間間隔Δtごとに記憶していく(ステップS603)。
【0044】
このとき、キャビティー21内部の気体は時間の経過と共に減っていくので、図7に示すように、各配管13A〜13Cの圧力p1〜p3は時間の経過と共に減少していく。
【0045】
データ収集部2は、各圧力p1〜p3について、その圧力が、真空ポンプ12によるキャビティー21内部の気体の除去が開始されてから、しきい値pに到達するまでの到達時間を測定する(ステップS604)。以下では、図7に示すように、圧力センサ1Aにて検出された圧力p1の到達時間をt1、圧力センサ1Bにて検出された圧力p2の到達時間をt2、圧力センサ1Cにて検出された圧力p3の到達時間をt3とする。
【0046】
全ての圧力p1〜p3に対する到達時間t1〜t3を測定すると、データ収集部2は、各到達時間t1〜t3を他の到達時間と比較する(ステップS605)。
【0047】
例えば、到達時間t1を例にとると、データ収集部2は、到達時間t1と、到達時間t2およびt3のそれぞれとを比較して、到達時間t1に対する、到達時間t2およびt3のそれぞれの誤差を算出し、その誤差を到達時間t1に対する到達時間t2およびt3の比較結果として異常判定制御部3に出力する。
【0048】
より具体的には、到達時間t1に対する到達時間t2の誤差をA、到達時間t1に対する到達時間t3の誤差をBとすると、データ収集部2は、誤差AおよびBを、
【0049】
【数1】

【0050】
と求める。ここで、値e1およびe2は、
【0051】
【数2】

【0052】
である。
【0053】
エアベント31Aには樹脂が詰まっていないと仮定した場合、エアベント31Bおよび31Cの少なくとも一方に樹脂が詰まると、その樹脂が詰まったエアベントの、エアベント31Aに対する誤差は大きくなる。
【0054】
そこで、異常判定制御部3は、比較結果である誤差AおよびBを受け付けると、誤差AおよびBのそれぞれが予め定められた定数以上か否かを判断して、エアベントに樹脂が詰まっているか否かを判断する(ステップS606)。より具体的には、異常判定制御部3は、定数以上の誤差を有する到達時間に対応する圧力がかかる配管に接続されたエアベントに樹脂が詰まっていると判断する。例えば、異常判定制御部3は、誤差Aが定数以上の場合、エアベント31Bに樹脂が詰まっていると判断し、誤差Bが定数以上の場合、エアベント31Cに樹脂が詰まっていると判断する。
【0055】
そして、異常判定制御部3は、その判断結果をモニタ4に表示する(ステップS607)。
【0056】
なお、上記の例では、データ収集部2は、到達時間t1に対する到達時間t2およびt3のそれぞれの誤差を算出したが、実際には、到達時間t2に対する到達時間t1およびt3のそれぞれの誤差と、到達時間t3に対する到達時間t1およびt2のそれぞれの誤差とをさらに算出する。そして、異常判定制御部3は、第1の到達時間に対する第2の到達時間の誤差が定数以上の場合、その誤差を有する第2の到達時間に対応する圧力がかかる配管に接続されたエアベントに樹脂が詰まっていると判断する。
【0057】
以上説明したように本実施形態によれば、複数の配管のそれぞれにかかる圧力の時間変化に基づいて、複数のエアベントのそれぞれの状態を示す複数の状態値が求められ、その複数の状態値に基づいて、複数のエアベントのそれぞれについて、樹脂が詰まっているか否かが判断される。このため、複数のエアベントのそれぞれの状態に応じて、樹脂が詰まっているか否かを判断することが可能になり、複数のエアベントのそれぞれについて、樹脂の詰まりを検出することが可能になる。
【0058】
また、本実施形態では、各状態値を他の状態値と比較した比較結果に基づいて、複数のエアベントのそれぞれについて、樹脂が詰まっているか否かが判断されるので、樹脂が詰まっていない正常なエアベントの状態値が分からなくても、樹脂が詰まっているか否かを判断することが可能になる。
【0059】
また、本実施形態では、気体の除去が開始されてから、樹脂の流し込みが開始されるまでの間における、各圧力の時間変化に基づいて状態値が求められるので、樹脂をキャビティー21に流し込む前に、樹脂の詰まりを検出することが可能になる。
【0060】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
【0061】
データ収集部2は、第1の実施形態で説明したように各到達時間を他の到達時間と比較する代わりに、図8に示すように、各到達時間を予め定められた設定値と比較してもよい。より具体的には、データ収集部2は、各到達時間t1〜t3と設定値t0とを比較して、設定値t0に対する到達時間t1〜t3のそれぞれの誤差を、設定値t0に対する各到達時間t1〜t3の比較結果として算出する。
【0062】
例えば、iを1から3までの整数とし、設定値t0に対する到達時間tiの誤差をAiとすると、データ収集部2は、誤差Aiを
【0063】
【数3】

【0064】
と求める。ここで、fiは、
【0065】
【数4】

【0066】
である。
【0067】
この場合、異常判定制御部3は、比較結果である誤差A1〜A3のそれぞれが予め定められた第2の定数以上か否かを判断して、エアベントに樹脂が詰まっているか否かを判断する。より具体的には、異常判定制御部3は、第2の定数以上の誤差を有する到達時間に対応する圧力がかかる配管に接続されたエアベントに樹脂が詰まっていると判断する。
【0068】
なお、設定値t0は、樹脂が詰まっていない正常なエアベントを用いて予め測定された到達時間の範囲(t0min〜t0max)内の値である正常値に設定されることが望ましい。
【0069】
また、各エアベント31A〜31Cの状態値は、到達時間に限らず、適宜変更可能である。
【0070】
例えば、データ収集部2は、各エアベント31A〜31Cの状態値として、エアベントと接続された配管にかかる圧力の、真空ポンプ12における気体の除去が開始されてから一定時間内の最小値である到達圧力最小値を求めてもよい。
【0071】
また、データ収集部2は、各エアベント31A〜31Cの状態値として、エアベントと接続された配管にかかる圧力の、真空ポンプ12における気体の除去が開始されてから一定時間内の変化率である圧力時間変化率を求めてもよい。
【0072】
さらに、データ収集部2は、各エアベント31A〜31Cの状態値として、エアベントと接続された配管にかかる圧力の、真空ポンプ12における気体の除去が開始されてから一定時間内の変化量である圧力時間変化量を求めてもよい。
【0073】
なお、樹脂がエアベントに完全に詰まっている場合、気体が除去される容積は樹脂が詰まった箇所から真空孔までの容積となるので、樹脂が詰まっていない場合と比べて、到達圧力最小値は小さくなり、圧力時間変化率および圧力時間変化量は大きくなる。
【0074】
また、樹脂がエアベントに部分的に詰まっている場合、エアベントから流出される気体の流動性が悪化するために、樹脂が詰まっていない場合と比べて、到達圧力最小値は大きくなり、圧力時間変化率および圧力時間変化量は小さくなる。
【0075】
このように到達圧力最小値、圧力時間変化率および圧力時間変化量はエアベントの状態に応じて変化するので、エアベントの状態を示す状態値として用いることができる。
【0076】
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
1A〜1C 圧力センサ
2 データ収集部
3 異常判定制御部
4 モニタ
11 金型
12 真空ポンプ
13、13A〜13D 配管
21 キャビティー
22 上型
23 下型
31A〜31C エアベント
32 ゲート
33A〜33C 真空孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が流し込まれるキャビティーに設けられた複数のエアベントのそれぞれから、各エアベントに接続された複数の配管を介して、前記キャビティー内部の気体を吸気する真空源が備わった射出成形装置用の樹脂詰まり検出装置であって、
各配管にかかる圧力のそれぞれを検出する検出部と、
各圧力の時間変化を監視し、各時間変化に基づいて、各エアベントの状態を示す複数の状態値を求める監視部と、
前記複数の状態値に基づいて、前記複数のエアベントのそれぞれについて、前記樹脂が詰まっているか否かを判断する制御部と、を有する樹脂詰まり検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、各エアベントの状態値を他のエアベントの状態値と比較し、当該比較結果に基づいて、前記樹脂が詰まっているか否かを判断する、請求項1に記載の樹脂詰まり検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、各エアベントの状態値を予め定められた設定値と比較し、当該比較結果に基づいて、前記樹脂が詰まっているか否かを判断する、請求項1に記載の樹脂詰まり検出装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記気体の除去が開始されてから、前記樹脂の流し込みが開始されるまでの間における、各圧力の時間変化に基づいて、前記状態値を求める、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂詰まり検出装置。
【請求項5】
前記監視部は、各エアベントの状態値として、当該エアベントと接続された配管にかかる圧力が前記気体の除去が開始されてからしきい値に到達するまでの到達時間を求める、請求項4に記載の樹脂詰まり検出装置。
【請求項6】
前記監視部は、各エアベントの状態値として、当該エアベントと接続された配管にかかる圧力の、前記気体の除去が開始されてから一定時間内の最小値である到達圧力最小値を求める、請求項4に記載の樹脂詰まり検出装置。
【請求項7】
前記監視部は、各エアベントの状態値として、当該エアベントと接続された配管にかかる圧力の、前記気体の除去が開始されてから一定時間内の変化率を求める、請求項4に記載の樹脂詰まり検出装置。
【請求項8】
前記監視部は、各エアベントの状態値として、当該エアベントと接続された配管にかかる圧力における、前記気体の除去が開始されてから一定時間内の変化量を求める、請求項4に記載の樹脂詰まり検出装置。
【請求項9】
前記エアベントは、前記キャビティー内部の気体を吸気するための孔である真空孔と接続され、
前記真空源と接続された元配管が前記真空孔と同数の前記配管に分岐され、当該分岐された配管のそれぞれが前記真空孔のそれぞれと接続され、
前記検出部は、前記配管のそれぞれに設けられ、当該設けられ配管にかかる圧力を検出する複数の圧力センサを有する、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の樹脂詰まり検出装置。
【請求項10】
樹脂が流し込まれるキャビティーに設けられた複数のエアベントのそれぞれから、各エアベントに接続された複数の配管を介して、前記キャビティー内部の気体を吸気する真空源が備わった射出成形装置用の樹脂詰まり検出装置による樹脂詰まり検出方法であって、
各配管にかかる圧力のそれぞれを検出し、
各圧力の時間変化を監視し、各時間変化に基づいて、各エアベントの状態を示す複数の状態値を求め、
前記複数の状態値に基づいて、前記複数のエアベントのそれぞれについて、前記樹脂が詰まっているか否かを判断する、樹脂詰まり検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−196870(P2012−196870A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62381(P2011−62381)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】