説明

樹脂部材および塗膜分離方法

【課題】樹脂部材本体に形成された塗膜を確実に剥離除去できる樹脂部材と、その剥離除去を実現する塗膜分離方法を提供する。
【解決手段】樹脂部材本体30と、樹脂部材本体30の表面に形成された低融点樹脂を含む塗膜40とを備え、塗膜40が、樹脂部材本体30の表面に形成された第1塗膜層41と、第1塗膜層41上に形成した第2塗膜層42の少なくとも2層構成とし、第1塗膜層41が低融点樹脂を含む構成とし、第2塗膜層42が導電性材料を含む構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜が形成された樹脂部材とその塗膜分離方法に関し、特に、電気製品などの筐体に使用されるリサイクルしやすい塗膜付の樹脂部材と、樹脂部材をリサイクルするための塗膜分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品などには大量の樹脂部材が使用されているが、省資源、環境破壊保護の観点からそれら樹脂部材のリサイクルが強く要望されている。
【0003】
これらの樹脂部材は、装飾あるいは機能付加の目的で樹脂部材本体に塗膜が形成されている場合が多い。したがって、樹脂部材本体のリサイクル率を上げるためには、樹脂部材本体からこれらの塗膜を剥離除去する必要がある。従来、これらの塗膜を剥離除去する方法としては、樹脂部材本体を破砕してリサイクルに供する前に、金属ブラシや研磨剤などを用いて機械的に塗膜を剥離除去する方法などが用いられてきた。しかしながら、製品が大型である、例えば大型テレビの外装筐体などの場合には、これらの方法でも樹脂部材本体を効率的に回収してリサイクルすることは可能であるが、ポータブルオーディオのような小型製品については、作業性が悪く、非効率的な方法であった。
【0004】
また、塗膜が形成された樹脂部材を塗膜が溶出される有機溶媒中に浸漬し、さらに溶媒中で超音波を付与して塗膜と樹脂部材本体とを分離する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、多層構造の樹脂からなる樹脂部材を分離する方法として、特定層の樹脂の結晶化温度を利用して機械的にせん断力を加えて分離する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−399562号公報
【特許文献2】特開平11−90935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の機械的に塗膜を除去する方法では、小型製品や複雑形状な製品に対応できず、はなはだ作業性が悪いといった課題を有している。また、有機溶媒中に浸漬して塗膜を剥離除去する方法では、安全性や溶液管理など環境面での課題があるとともに、作業時間が過大であるなどの課題を有している。さらに、結晶化温度を利用して物理的に剥離する方法では、結晶化温度に基づいた分離の際の温度制御が煩雑であるとともに、樹脂層を分離後の分別を精度良く行うことが難しいなどの課題を有するものであった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、樹脂部材本体に形成された塗膜を確実に剥離除去できる樹脂部材を実現するとともに、その剥離除去と分別を確実に行うことができる塗膜分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の樹脂部材は、樹脂部材本体と、樹脂部材本体の表面に形成された樹脂部材本体の融点よりも低融点の低融点樹脂を含む塗膜とを備えている。
【0008】
このような構成によれば、樹脂部材を加熱して低融点樹脂を溶融させることにより、樹脂部材本体と塗膜とを容易に分離し、リサイクルが容易な樹脂部材を実現することができる。
【0009】
さらに、塗膜が導電性材料を含むことが望ましく、帯電量の違いを利用して塗膜と樹脂部材本体とを確実に分離分別することが可能な樹脂部材を実現できる。
【0010】
さらに、塗膜を樹脂部材本体の表面に形成された第1塗膜層と、第1塗膜層上に形成した第2塗膜層の少なくとも2層で構成し、第1塗膜層が上述の低融点樹脂を含む構成としてもよい。このような構成によれば、第1塗膜層によって確実に樹脂部材本体と塗膜とを分離することが可能な樹脂部材を実現できる。
【0011】
さらに、第2塗膜層が導電性材料を含むことが望ましく、帯電量の違いを利用して塗膜と樹脂部材本体とを確実に分別することが可能な樹脂部材を実現できる。
【0012】
さらに、第1塗膜層が導電性材料を含むことが望ましく、本来の塗膜機能を損なわずに塗膜と樹脂部材本体とを確実に分別することが可能な樹脂部材を実現できる。
【0013】
さらに、低融点樹脂がナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体系樹脂(EAA)、アクリル系樹脂およびポリエチレンワックスの少なくともひとつであってもよい。このような構成によれば、100℃〜200℃程度の加熱が容易な温度範囲で、塗膜と樹脂部材本体とを確実に分離できる樹脂部材を実現できる。
【0014】
また、本発明の塗膜分離方法は、樹脂部材本体に塗膜を形成した樹脂部材から塗膜を分離除去する塗膜分離方法であって、塗膜は低融点樹脂を含み、樹脂部材を所定温度に加熱して低融点樹脂を軟化させる加熱ステップと、塗膜と樹脂部材本体とを分離する分離ステップとを設けている。
【0015】
このような方法によれば、樹脂部材を加熱して低融点樹脂を軟化させることにより、樹脂部材本体と塗膜とを容易に分離し、樹脂部材本体に他の物質を含有させずにリサイクルすることが可能となる。
【0016】
さらに、塗膜は導電性材料を含み、分離ステップが静電分離ステップを含んでもよい。このような方法によれば、帯電量の違いを利用して塗膜と樹脂部材本体とをさらに確実に分離することが可能となる。
【0017】
さらに、加熱ステップに樹脂部材を破砕する破砕ステップを含んでもよい。このような方法によれば、低融点樹脂が軟化する際に低融点樹脂と樹脂部材本体との間にわずかの外力を印加することにより、樹脂部材本体から塗膜を容易に剥離することができる。
【0018】
さらに、加熱ステップが誘導加熱による加熱ステップであることが望ましく、樹脂部材の形状などに依存されずに効率的に樹脂部材を加熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の樹脂部材および塗膜分離方法によれば、樹脂部材本体に形成された塗膜を確実に剥離除去できる樹脂部材を実現するとともに、その剥離除去を実現する塗膜分離方法を提供し、樹脂部材本体のリサイクル効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態における樹脂部材について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態における樹脂部材の構成を示す図である。図1に示すように、樹脂部材1は樹脂部材本体10に塗膜20が形成された構成である。ここで、樹脂部材本体10は、ポリスチレン、ABS樹脂、ACS樹脂、またはASA樹脂などのスチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂を用いることができる。樹脂部材1は、実際は製品の形状などによって複雑な形状となっているが、図1に示す本発明の第1の実施の形態では、便宜上、方形の形状として示している。
【0022】
樹脂部材本体10には、塗膜20が形成されている。本発明の第1の実施の形態では、塗膜20が1層構成である場合について示している。塗膜20は、顔料を含んだ塗料を主成分とし、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、さらにはエチレン・アクリル酸共重合体(EAA)系樹脂などの低融点樹脂を含有させている。
【0023】
樹脂部材本体10に塗膜20を形成する方法としては、顔料、溶剤、低融点樹脂、さらにその他の樹脂材料を含む塗料を塗布することにより形成される。樹脂部材本体10の厚みは数100μm〜数mmであり、塗膜20の厚みは数μm〜数100μmに形成されて装飾性や機能性が付与されている。なお、顔料やその他の樹脂の種類やその配合量は、付与すべき装飾性や機能性に応じて任意とすることができるが、低融点樹脂の配合量は、40wt%〜60wt%とすることが望ましい。なお、本発明の第1の実施の形態で用いる低融点樹脂を、塗膜20を形成する際のバインダ樹脂として用いてもよい。
【0024】
一方、上述の低融点樹脂の融点(本発明でいう融点は、流動点や軟化点を含有する)は、それぞれ、ナイロン樹脂が100℃前後、ポリエステル樹脂が120℃前後、アクリル樹脂が200℃前後、エチレンとアクリル酸の共重合物が80℃〜95℃であり、製品の動作環境温度よりも高いが、加熱温度としては容易に加熱できる温度で溶融あるいは軟化が可能な材料を選択している。また、低融点樹脂として、融点が100℃前後のポリエチレン系のワックスを用いてもよい。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施の形態における樹脂部材1から樹脂部材本体10と塗膜20とを分離する塗膜分離方法を示すフローチャートである。塗膜分離方法は、家電製品部材などの樹脂成型品を所定のサイズに切断破砕する破砕ステップ(STP1)と、破砕されて樹脂部材本体10に塗膜20が形成された破砕品を所定温度で加熱する加熱ステップ(STP2)と、加熱によって樹脂部材本体10から剥離した塗膜20を、樹脂部材本体10と塗膜20とに分離分別する分別ステップ(STP3)とにより構成されている。これらの分別された樹脂部材本体10は回収され、再溶融されて再利用される。
【0026】
破砕ステップ(STP1)では、回転刃を有する破砕機などを用いて樹脂成型品を破砕することが可能である。また、加熱ステップ(STP2)では、例えばこれらの破砕片を回転ドラム式の加熱炉などに投入し、低融点樹脂として塗膜中に含有しているナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、またはエチレン・アクリル酸共重合体(EAA)系樹脂よりなる樹脂が軟化あるいは溶融する温度まで加熱しながら攪拌する。破砕片が加熱されて塗膜20中の低融点樹脂が軟化あるいは溶融する際に、攪拌によって樹脂部材本体10と塗膜20とを界面で剥離させる応力が作用し、樹脂部材本体10と塗膜20とを剥離させることが可能となる。
【0027】
なお、一般的に塗膜20が形成された樹脂部材1は、樹脂部材本体10の厚みに比べて塗膜20の厚みは薄い状態となっている。そのため、分離された樹脂部材本体10の破砕片と塗膜20の破砕片とはその重量あるいは体積が異なる。そこで、分別ステップ(STP3)では、風力選別や篩い選別などを用いて分別することが可能である。
【0028】
以上のように、本発明の第1の実施の形態における樹脂部材によれば、溶液などを用いない簡便な乾式プロセスによって、塗膜と樹脂部材本体とを確実に分離し、分別することが可能な樹脂部材を実現することができる。
【0029】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態における樹脂部材について説明する。図3は本発明の第2の実施の形態における樹脂部材2の構成を示す図である。本発明の第2の実施の形態が、第1の実施の形態と異なる点は、塗膜40を2層構成としていることである。
【0030】
図3に示すように、樹脂部材本体30に第1塗膜層41と第2塗膜層42とよりなる塗膜40が形成されている。すなわち、樹脂部材本体30の表面に低融点樹脂を含む第1塗膜層41を形成し、さらに第1塗膜層41上には、導電性材料を含む第2塗膜層42を形成している。樹脂部材本体30は、第1の実施の形態と同様に、ポリスチレン、ABS樹脂、ACS樹脂、またはASA樹脂などのスチレン系樹脂や、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0031】
なお、低融点樹脂としては、第1の実施の形態と同様に、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、またはエチレンアクリル酸共重合体(EAA)系樹脂などを用いることができるが、本発明の第2の実施の形態では、ポリエチレン系のワックスを用い、低融点樹脂と塗料との配合比率が1:1の重量割合となるようにして第1塗膜層41を形成している。一方、第2塗膜層42は、銅粉、炭素粉、ステンレス繊維、ニッケル粉、銀メッキを施した銅粉、さらには、銅粉とニッケル粉とを配合した珪酸塩などの導電性材料をアクリル樹脂などに分散し、さらに顔料を加えた塗料によって形成されている。
【0032】
図4は、本発明の第2の実施の形態における樹脂部材2から樹脂部材本体30と塗膜40とを分離する塗膜分離方法を示すフローチャートである。塗膜分離方法は、家電製品部材などの樹脂成型品を所定のサイズに切断破砕する破砕ステップ(STP5)と、破砕されて樹脂部材本体30に塗膜40が形成された破砕品を所定温度で加熱する加熱ステップ(STP6)と、加熱によって樹脂部材本体30から剥離した塗膜40と、樹脂部材本体30とを分離分別する分別ステップ(STP7)とにより構成されている。これらの分別された樹脂部材本体30は回収され、再溶融されて再利用される。
【0033】
破砕ステップ(STP5)では、回転刃を有する破砕機などを用いて樹脂成型品を破砕することが可能である。また、加熱ステップ(STP6)では、例えばこれらの破砕片を回転ドラム式の加熱炉などに投入し、第1塗膜層41に含まれている低融点樹脂であるポリエチレン系のワックスが軟化あるいは溶融する温度まで加熱しながら攪拌する。破砕片が加熱されて第1塗膜層41中の低融点樹脂であるポリエチレン系のワックスが軟化あるいは溶融する際に、攪拌あるいは破砕片同士の衝突によって樹脂部材本体30と第1塗膜層41とを剥離させる応力が作用し、樹脂部材本体30と塗膜40とを剥離させることが可能となる。なお、破砕ステップ(STP5)と加熱ステップ(STP6)と同一工程内で行うことも可能である。
【0034】
図5は、本発明の第2の実施の形態における樹脂部材2を樹脂部材本体30と塗膜40とに分別する処理装置の構成を示す図である。図5に示すように、処理装置は材料投入部50、加熱部51、破砕部52、静電分離部53、回収部54により構成されている。
【0035】
材料投入部50には、予め粗破砕した樹脂部材60が投入される。粗破砕した樹脂部材60は、図3に示すように樹脂部材本体30とその上に形成された2層構成の塗膜40とにより構成されている。材料投入部50から加熱部51の上部に設けたホッパー55にこれらの樹脂部材60が投入される。加熱部51では、誘導加熱などによって樹脂部材60を加熱する。本発明の第2の実施の形態では、塗膜40を構成する第1塗膜層41の低融点樹脂としてポリエチレン系のワックスを用いている。ポリエチレン系のワックスの融点は100℃でありその近傍の温度で軟化を開始する。そこで、加熱部51において70℃〜80℃になるように、誘導コイル(図示せず)を用いて誘導加熱によって加熱保持する。この状態では、第1塗膜層41の低融点樹脂が軟化しているために、樹脂部材本体30から剥離しやすい状態となっている。
【0036】
次に、加熱部51で加熱された樹脂部材60を破砕部52に投入する。破砕部52には電動機70によって回転する回転刃71が設けられており、投入された樹脂部材60を所定のサイズに破砕する。なお、破砕部52においては、加熱部51で加熱された樹脂部材60が冷却されないように破砕部52を加熱する加熱ヒーター(図示せず)を設けてもよい。破砕部52では、回転刃71によって樹脂部材60が破砕されるとともに、破砕された樹脂部材60同士が衝突混合する。加熱によって樹脂部材本体30から第1塗膜層41が剥離しやすい状態になっている樹脂部材60が、破砕時のせん断力や衝突応力が作用して樹脂部材本体30と塗膜40とに分離されて破砕部52から排出される。したがって、排出された樹脂部材60は、樹脂部材本体30の樹脂破砕片73と、第1塗膜層41と第2塗膜層42とが一体となった塗膜破砕片74とに分離され、樹脂部材60から塗膜40が分離除去されている。
【0037】
次に、これらの樹脂破砕片73と塗膜破砕片74とが混合された状態から、樹脂破砕片73と塗膜破砕片74とを分別する方法について述べる。本発明の第2の実施の形態では静電分離方法を用いている。上述のように、塗膜破砕片74の第2塗膜層42には、導電性材料を含有させている。そのため、塗膜破砕片74が導電性を有し、一方の、樹脂破砕片73が絶縁性であり静電分離が非常に有用となる。
【0038】
静電分離部53は、樹脂破砕片73と塗膜破砕片74とを供給するためのガイド部80と、回転ドラム81、高電圧発生装置82、高電圧電極板83、回転ドラム81と短絡した接地電極84、掻き落しブレード85、樹脂回収容器86、塗膜回収容器87とにより構成されている。ここで、高電圧発生装置82によって発生した高電圧を高電圧電極板83に印加して高電圧電極板83をプラス電極とし、回転ドラム81をマイナス電極としている。
【0039】
ガイド部80から供給された樹脂破砕片73と塗膜破砕片74との混合物は、マイナスに帯電した回転ドラム81上に到達する。高電圧電極板83によって、絶縁性の樹脂破砕片73はプラスに帯電されて回転ドラム81上に付着する。一方、第2塗膜層42中に導電性材料を含む塗膜破砕片74は帯電しにくいため、回転ドラム81上には付着せずに自重によって回転ドラム81の下部に落下する。落下した塗膜破砕片74は回収部54のひとつである塗膜回収容器87に回収される。一方、回転ドラム81に付着した樹脂破砕片73は、回転ドラム81上に付着しながら回転し、掻き落しブレード85によって回転ドラム81の表面から掻き落されて回収部54の樹脂回収容器86に回収される。
【0040】
以上のように、本発明の第2の実施の形態によれば、樹脂部材を構成する樹脂部材本体上に形成された塗膜を2層構成として、樹脂部材本体の表面に形成した第1塗膜層に低融点樹脂を用い、さらに、第1塗膜層上に設けた第2塗膜層には導電性材料を含ませている。そのため、塗膜と樹脂部材本体との分離剥離を、加熱処理と、樹脂部材本体と塗膜との界面に対して、わずかな応力を印加するだけで行うことができる。また、分離された樹脂部材本体と塗膜との分離分別を、静電分離の方法を用いてより確実に行うことが可能となる。したがって、溶液などを用いない簡便な乾式プロセスによって、塗膜と樹脂部材本体とを確実に分離、分別し、樹脂の回収再利用が可能となる。
【0041】
また、本発明の第2の実施の形態では、樹脂部材の加熱方法として、樹脂部材の形状などによらずに均一加熱することが可能な誘導加熱方法を用いているが、ヒーターを用いた加熱方法などを適用することも可能である。
【0042】
なお、本発明の第2の実施の形態では、第2塗膜層42に導電性材料を含ませる構成としているが、第1塗膜層41に導電性材料を含ませてもよい。ただし、静電分離のステップの前に、第1塗膜層41が加熱によって完全に溶融して導電性材料が第1塗膜層41から脱落しないことが必要である。
【0043】
また、本発明の第2の実施の形態では、塗膜を2層構成として導電性材料を含ませる構成について述べたが、本発明の第1の実施の形態に述べたような塗膜が1層構成の場合であっても、塗膜に導電性材料を含ませて樹脂部材本体と塗膜とを静電分離することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の樹脂部材および塗膜分離方法によれば、塗膜が形成された樹脂部材の樹脂の回収とその再利用が容易となり、家電製品の筐体などへの樹脂部材とその回収再利用などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態における樹脂部材の構成を示す図
【図2】同樹脂部材から樹脂部材本体と塗膜とを分離する塗膜分離方法を示すフローチャート
【図3】本発明の第2の実施の形態における樹脂部材の構成を示す図
【図4】同樹脂部材から樹脂部材本体と塗膜とを分離する塗膜分離方法を示すフローチャート
【図5】同樹脂部材を樹脂部材本体と塗膜とに分別する処理装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0046】
1,2,60 樹脂部材
10,30 樹脂部材本体
20,40 塗膜
41 第1塗膜層
42 第2塗膜層
50 材料投入部
51 加熱部
52 破砕部
53 静電分離部
54 回収部
55 ホッパー
70 電動機
71 回転刃
73 樹脂破砕片
74 塗膜破砕片
80 ガイド部
81 回転ドラム
82 高電圧発生装置
83 高電圧電極板
84 接地電極
85 掻き落しブレード
86 樹脂回収容器
87 塗膜回収容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部材本体と、前記樹脂部材本体の表面に形成した前記樹脂部材本体よりも融点の低い低融点樹脂を含む塗膜とを備えた樹脂部材。
【請求項2】
前記塗膜が導電性材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂部材。
【請求項3】
前記塗膜を前記樹脂部材本体の表面に形成された第1塗膜層と、前記第1塗膜層上に形成した第2塗膜層の少なくとも2層で構成し、前記第1塗膜層が前記低融点樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂部材。
【請求項4】
前記第2塗膜層が導電性材料を含むことを特徴とする請求項3に記載の樹脂部材。
【請求項5】
前記第1塗膜層が導電性材料を含むことを特徴とする請求項3に記載の樹脂部材。
【請求項6】
前記低融点樹脂がナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン・アクリル酸共重合系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリエチレンワックスの少なくともひとつであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の樹脂部材から塗膜を分離除去する塗膜分離方法であって、前記塗膜は前記低融点樹脂を含み、前記樹脂部材を所定温度に加熱して前記低融点樹脂を軟化させる加熱ステップと、前記塗膜と前記樹脂部材本体とを分離する分離ステップとを設けたことを特徴とする塗膜分離方法。
【請求項8】
前記塗膜は導電性材料を含み、前記分離ステップが静電分離ステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の塗膜分離方法。
【請求項9】
前記加熱ステップに前記樹脂部材を破砕する破砕ステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の塗膜分離方法。
【請求項10】
前記加熱ステップが誘導加熱による加熱ステップであることを特徴とする請求項7に記載の塗膜分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−101072(P2008−101072A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283347(P2006−283347)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】