説明

歩行型管理機

【課題】旋回時におけるデフロックレバーの操作性を向上する。
【解決手段】ミッションケース20からの駆動力を作業装置に伝達する作業軸41と、ミッションケースに軸支されるとともに走行車輪30L・30Rに駆動力を伝達する車軸22L・22Rと、車軸を差動するデフ装置60と、ミッションケースの後上方に延設されてその後端部に作業者が握る把持部51aが形成される操向ハンドル51と、を具備する歩行型管理機10において、把持部の下方であって作業者から容易に手が届く位置に操向ハンドルに対して上下方向に回動可能に設けられるデフロックレバー57と、デフロックレバーの操作に連動してデフ装置の差動を規制するデフロック装置70と、を備え、デフロックレバーをロック作動位置に設定した場合にはデフロック装置が「作動」の状態となり、デフロックレバーをロック解除位置にした場合にはデフロック装置が「解除」の状態となる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業あるいは中耕除草等を行うための歩行型管理機に関し、より詳細には歩行型管理機に備えられるデフロックレバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右の走行車輪を差動させるデフ装置を具備した歩行型管理機であって、デフ装置の差動を規制するデフロック装置の作動およびその解除を切り換えるデフロックレバーを備えたものが公知となっている。例えば特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載された歩行型管理機では、デフロックレバーが操向ハンドルの左側あるいは右側の一側に固設された操作パネル上に備えられる。このデフロックレバーは、前後方向(すなわち上端部が前方または後方に傾倒する方向)に回動することにより、デフロック装置の作動・非作動を切り換えるものである。また、前記歩行型管理機には、デッドマンレバーが上下方向に回動可能に備えられる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された歩行型管理機では、機体の旋回時における操向操作が煩雑であった。
【0004】
具体的には、圃場の端等において歩行型管理機の旋回を開始する場合には、作業者は、デッドマンレバーを上下方向に回動して一旦主クラッチを「切」の状態にした後に、デフロックレバーを前後方向に回動してデフロック装置を「解除」の状態にする。続いて、デッドマンレバーを上下方向に回動して主クラッチを「入」の状態にするとともに操向ハンドルを上方に持ち上げて、歩行型管理機の作業装置(ロータリ式耕耘装置等)を圃場面の上方に少し浮かせた状態で歩行型管理機を旋回させていた。
【0005】
上述のようにして歩行型管理機を旋回させた後、圃場の耕耘作業を再開する場合には、作業者は、デッドマンレバーを上下方向に回動して一旦主クラッチを「切」の状態にした後に、デフロックレバーを前後方向に回動してデフロック装置を「作動」の状態にする。そして、デッドマンレバーを上下方向に回動して主クラッチを「入」の状態にするとともに操向ハンドルを下方に押し下げて歩行型管理機を直進させていた。
【0006】
この場合、作業者は、各レバー(デッドマンレバーおよびデフロックレバー)をそれぞれ異なる方向(前後方向または上下方向)に回動したり、操向ハンドルを各レバーの回動方向とは異なる方向に持ち上げたり押し下げたりする必要があり、機体の旋回を行う度に煩雑な操向操作をする必要が生じていた。したがって、歩行型管理機の旋回を流れよく行うことが困難であった。
【0007】
さらに、圃場の畝等に足を踏み入れるのを避けるべく、作業者が歩行型管理機の機体の左側あるいは右側のデフロックレバーが配置される側とは反対側に位置しているときには、デフロックレバーが作業者の手が容易に届く範囲内にないため、歩行型管理機の旋回時におけるデフロックレバーの操作が極めて行い難く、操作を正確に行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−346170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、歩行型管理機の旋回時におけるデフロックレバーの操作性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
請求項1の発明は、
ミッションケースからの駆動力を作業装置に伝達する作業軸と、
前記ミッションケースに軸支されるとともに、左右一対の走行車輪に駆動力を伝達する左右一対の車軸と、
前記左右一対の車軸を差動するデフ装置と、
前記ミッションケースの後上方に延設されて、その後端部に作業者が握る把持部が形成される操向ハンドルと、
を具備する歩行型管理機において、
前記把持部の下方であって、作業者から容易に手が届く位置に、前記操向ハンドルに対して上下方向に回動可能に設けられるデフロックレバーと、
前記デフロックレバーの操作に連動して前記デフ装置の差動を規制するデフロック装置と、を備え、
前記デフロックレバーを下方に回動したロック作動位置に設定した場合には、前記デフロック装置が「作動」の状態となり、
前記デフロックレバーを上方に回動したロック解除位置に設定した場合には、前記デフロック装置が「解除」の状態となる、ことを特徴とするものである。
【0012】
したがって、デフロックレバーを下方に回動すると、デフロック装置を「作動」の状態に設定できる。一方、デフロックレバーを上方に回動すると、デフロック装置を「解除」の状態に設定できる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の歩行型管理機において、
前記デフロックレバーは、第一の辺と第二の辺を有する略L字形状に形成し、
前記第一の辺はその一端部(自由端)が前記操向ハンドルの後部左側または後部右側に軸支され、
前記第二の辺は前記第一の辺の他端部から機体の左右内側に向かって延設されるものである。
【0014】
したがって、デフロックレバーの第二の辺が、歩行型管理機の操向ハンドルの左側、右側、および後側のいずれの位置からも手の届きやすい位置に配置される。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の歩行型管理機において、
前記デフロックレバーの操作に連動して前記作業軸への駆動力の伝達およびその遮断を切り換える作業クラッチをさらに備え、
前記デフロックレバーを前記ロック作動位置に設定した場合には、前記作業クラッチが「入」の状態となり、
前記デフロックレバーを前記ロック解除位置に設定した場合には、前記作業クラッチが「切」の状態となるものである。
【0016】
したがって、デフロックレバーをロック作動位置に設定すると、作業軸が作動可能となる。一方、デフロックレバーをロック解除位置に設定すると、作業軸が作動不能となる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、歩行型管理機の旋回を開始する場合における、デフロックレバーを回動する方向と、把持部を持ち上げる方向と、が同じであるため、デフロックレバーおよび把持部の一連の操作を、流れよく行うことができる。
また、歩行型管理機を旋回させた後、作業装置(ロータリ式耕耘装置等)による作業を再開する場合における、デフロックレバーを回動する方向と、把持部を押し下げる方向と、が同じであるため、デフロックレバーおよび把持部の一連の作業を、流れよく行うことができる。
したがって、歩行型管理機の旋回時におけるデフロックレバーの操作性を向上することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、操向ハンドルの左側、右側、および後側のいずれの位置からも、デフロックレバーを容易に操作することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、デフロックレバーの操作に連動して作業クラッチの「入」「切」を切り換えることが可能となる。したがって、デフロックレバーの操作に連動して作業装置(ロータリ式耕耘装置等)の作動を停止することができるので、作業者は足元を気にすることなく安全に旋回操作を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一実施形態に係る歩行型管理機の全体的な構成を示す左側面図である。
【図2】デフ装置およびデフロック装置の構成を示す後面断面図である。
【図3】第一実施形態に係る歩行型管理機の操向操作部の構成を示す平面図である。
【図4】デッドマンレバーを「入」、デフロックレバーをロック作動位置にした状態を示す斜視図であり、耕耘作業時におけるデッドマンレバーおよびデフロックレバーの状態を示している。
【図5】デッドマンレバーを「入」、デフロックレバーをロック解除位置にした状態を示す斜視図であり、旋回時におけるデッドマンレバーおよびデフロックレバーの状態を示している。
【図6】デッドマンレバーを「切」、デフロックレバーをロック解除位置にした状態を示す斜視図である。
【図7】第二実施形態に係る歩行型管理機の操向操作部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0022】
歩行型管理機10は、本発明の第一実施形態に係る歩行型管理機である。
歩行型管理機10はロータリ作業型の歩行型管理機であって、作業装置としてロータリ式耕耘装置40を具備するものである。
以下では、歩行型管理機10の前進方向を前方として、前後上下左右方向を規定するものとする。
【0023】
図1に示すように、歩行型管理機10は、機体フレーム11、エンジン12、伝動機構14、カバー15、ミッションケース20、走行車輪30L・30R、ロータリ式耕耘装置40、操向操作部50、デフ装置60(図3参照)、およびデフロック装置70(図3参照)を具備する。
【0024】
機体フレーム11は、歩行型管理機10の機体の骨組を成す部材である。
【0025】
エンジン12は歩行型管理機10が走行するとともに耕耘作業を行うための駆動力を発生させるもの(駆動源)である。エンジン12は機体フレーム11の上面に固定される。
エンジン12は出力軸12aを備える。出力軸12aの左端部はエンジン12のシリンダブロックの左側面から外部に突出する。エンジン12は出力軸12aを回転させることによりエンジン12が発生させた駆動力をエンジン12の外部に出力する。
【0026】
伝動機構14はエンジン12が発生させた駆動力をミッションケース20に伝達するものである。本実施形態の伝動機構14はプーリ14a、プーリ14b、ベルト14c、およびベルトテンション式クラッチ14dを備える。
【0027】
プーリ14aは出力軸12aの左端部に固定される。プーリ14bは後述する入力軸21の左端部に固定される。ベルト14cはプーリ14aおよびプーリ14bに巻回される。
【0028】
ベルトテンション式クラッチ14dはベルト14cの張力を変動させることにより出力軸12aから入力軸21への駆動力の伝達およびその停止を切り換えるものである。
ベルトテンション式クラッチ14dは、テンションアーム14eおよびテンションプーリ14fを有する。
テンションアーム14eは棒状の部材であり、その中途部は後述するミッションケース20の左側面前部に回動可能に支持される。テンションプーリ14fはテンションアーム14eの一端部(前端部)に回転可能に軸支される。ワイヤー91(図1および図2参照)の一端部がテンションアーム14eの他端部に固定されるとともにワイヤー91の他端部が後述するデッドマンレバー53に固定されることにより、ベルトテンション式クラッチ14dとデッドマンレバー53とがワイヤー91により連結される。
【0029】
ベルトテンション式クラッチ14dが「入」の状態でエンジン12の出力軸12aが回転したとき、出力軸12aに固定されたプーリ14a、ベルト14cおよびプーリ14bが回転する。その結果、プーリ14bが固定される入力軸21も回転する。
このように、伝達機構14はエンジン12が発生させた駆動力をミッションケース20(より厳密には入力軸21)に伝達する。
【0030】
カバー15は伝動機構14を被覆するものである。本実施形態のカバー15は樹脂材料を所定の形状に成形したものであり、エンジン12の左側面に固定される。
【0031】
ミッションケース20は、入力軸21、左右一対の車軸(左車軸22Lおよび右車軸22R)、走行伝達軸31、PTO軸43、その他の回転軸、歯車、スプロケット、チェーン、および作業クラッチ44等の、エンジン12が発生させた駆動力を適宜変速するとともに走行車輪30L・30Rおよびロータリ式耕耘装置40に伝達するための部品群を収容する機能、および歩行型管理機10の主たる構造体の一つとしての機能を果たす。ミッションケース20の前端部は機体フレーム11の後端部に固定される。
【0032】
入力軸21は、ミッションケース20の前上部に回転可能に軸支される。入力軸21の左端部は、ミッションケース20の左側面の前上部から突出する。入力軸21の左端部にはプーリ14bが固定される。
【0033】
左車軸22Lは走行車輪30Lに駆動力を伝達するための軸である。左車軸22Lはミッションケース20の前下部に回転可能に軸支される。左車軸22Lの左端部はミッションケース20の左側面の前下部から左側方に向かって突出する。
【0034】
右車軸22Rは走行車輪30Rに駆動力を伝達するための軸である。右車軸22Rはミッションケース20の前下部に回転可能に軸支される。右車軸22Rの右端部はミッションケース20の右側面の前下部から右側方に向かって突出する。
【0035】
ミッションケース20に伝達された駆動力の一部は、ミッションケース20に収容された部品群の組み合わせ(入力軸21に固定された歯車、当該歯車に噛合する別の歯車、当該別の歯車が固定される回転軸等)からなる変速装置(不図示)により変速された後、走行伝達軸31を介して車軸22L・22Rに伝達される。
【0036】
走行車輪30Lは歩行型管理機10が走行するための二つの走行車輪のうち、歩行型管理機10の左側に配置されるものである。走行車輪30Lは車軸22Lの左端部に固定される。車軸22Lが回転したとき、走行車輪30Lは車軸22Lと一体的に回転する。
【0037】
走行車輪30Rは歩行型管理機10が走行するための二つの走行車輪のうち、歩行型管理機10の右側に配置されるものである。走行車輪30Rは車軸22Rの右端部に固定される。車軸22Rが回転したとき、走行車輪30Rは車軸22Rと一体的に回転する。
【0038】
以下では、デフ装置60およびデフロック装置70の構成について、図2を参照して詳細に説明する。デフ装置60およびデフロック装置70は、ミッションケース20内の変速装置(不図示)、PTO変速装置(不図示)、走行伝達軸31、およびPTO軸43よりも下方となる位置に収容される。
【0039】
デフ装置60は、左右一対の車軸(左車軸22Lおよび右車軸22R)を差動する装置である。換言すれば、デフ装置60は左右の車軸22L・22Rの間に回転差を発生させることにより、歩行型管理機10を旋回しやすくする装置である。
図2に示すように、デフ装置60は、ミッションケース20の前下部の左車軸22Lおよび右車軸22Rの間に設けられる。デフ装置60は、デフケース61、デフピニオンギヤ62・62、左デフサイドギヤ63、右デフサイドギヤ64、およびデフピニオン軸65を備える。
【0040】
デフピニオンギヤ62・62、左デフサイドギヤ63、右サイドギヤ64、およびデフピニオン軸65は、デフケース61に収容される。
デフケース61の右側部には入力スプロケット61aがデフケース61と一体的に形成される。入力スプロケット61aは、チェーン66、走行伝達軸31および変速装置等を介して入力軸21に連結される(図1参照)。
【0041】
デフピニオン軸65はデフケース61収容された状態でデフケース61とともに回転する。デフケース61は左車軸22Lの内側端部(右端部)と、右車軸22Rの内側端部(左端部)と、の間に配置される。
左車軸22Lの内側端部(右端部)には、左デフサイドギヤ63が固定される。左デフサイドギヤ63は左車軸22Lと一体的に回転する。
右車軸22Rの内側端部(左端部)には、右デフサイドギヤ64が固定される。右デフサイドギヤ64は右車軸22Rと一体的に回転する。
左デフサイドギヤ63および右デフサイドギヤ64は、デフピニオン軸65に回転自在に嵌装されたデフピニオンギヤ62・62とそれぞれ噛合している。デフピニオン軸65がデフケース61とともに回転するのに伴って、デフピニオンギヤ62・62は車軸22L・22Rの周りを公転する。
【0042】
このように、左車軸22L(に固定された左デフサイドギヤ63)と右車軸22R(に固定された右デフサイドギヤ64)との間にデフピニオンギヤ62・62を介在させることにより、左右一対の車軸(左車軸22Lおよび右車軸22R)を差動させるデフ機構(ディファレンシャル機構)を構成している。
【0043】
デフロック装置70は、デフ装置60の作動を規制する装置である。
図2に示すように、デフロック装置70は、爪クラッチ71、フォーク72、カラー73、およびデフロックアーム(不図示)等を備える。
【0044】
爪クラッチ71は右車軸22Rにスプライン嵌合される。爪クラッチ71は、該爪クラッチ71に係合しているフォーク72を適宜に移動させることにより、右車軸22R上をスライド移動する。
入力スプロケット61aのボス部(右側部)には、爪クラッチ71と噛合可能なクラッチ係合部61bが形成される。入力スプロケット61aのクラッチ係合部61bよりも左側には、カラー73が入力スプロケット61aに対して相対回転可能に内嵌される。
【0045】
デフロックアームの中途部はミッションケース20の側面に回動可能に支持される。
デフロックアームの一端部はリンク機構を介してフォーク72の先端部(爪クラッチ71に係合している側とは反対側の端部)に回動可能に支持される。ワイヤー92の一端部がデフロックアームの他端部に固定されるとともにワイヤー92の他端部が後述するデフロックレバー57に固定されることにより、デフロック装置70とデフロックレバー57とがワイヤー92により連結される(図3参照)。
【0046】
爪クラッチ71が入力スプロケット61aのクラッチ係合部61bに係合している場合、デフロック装置70が「作動」の状態となる。このとき、爪クラッチ71が右車軸22Rに対して相対回転不能であることに起因して、デフケース61は右車軸22Rに対して相対回転不能であるから、デフピニオン軸65と右デフサイドギヤ64とはデフケース61とともに一体的に回転する。
したがって、左デフサイドギヤ63と右デフサイドギヤ64とは、デフピニオンギヤ62・62の公転にともなって同じ回転数で回転する。その結果、左右一対の車軸22L・22Rに回転差が生じない状態となる。
【0047】
爪クラッチ71が入力スプロケット61aのクラッチ係合部61bに係合していない場合、デフロック装置70が「解除」の状態となる。このとき、カラー73がデフケース61(入力スプロケット61a)に対して相対回転可能であることに起因して、デフケース61は右車軸22Rに対して相対回転可能であるから、デフピニオン軸65が右デフサイドギヤ64に対して相対回転可能となる(デフケース61と一体的に回転しない)。
したがって、デフピニオンギヤ62・62は公転しながら、左デフサイドギヤ63と右デフサイドギヤ64との間の回転差を補正するようにデフピニオン軸65の周りを自転する。その結果、左右一対の車軸22L・22Rに回転差が生じ得る状態となる。
【0048】
このように、デフロック装置70が「作動」の状態のときは左右一対の車軸22L・22Rの差動が規制され、デフロック装置70が「解除」の状態のときは左右一対の車軸22L・22Rの差動が許容される。
【0049】
ミッションケース20に伝達された駆動力の一部は、ミッションケース20に収容された部品群の組み合わせ(入力軸21に固定された歯車、当該歯車に噛合する別の歯車、当該別の歯車が固定される回転軸等)からなるPTO変速装置(不図示)により変速された後、PTO軸43を介して作業軸41に伝達される(図1参照)。
【0050】
図1に示すように、入力軸21とPTO軸43との間には、作業クラッチ44が備えられる。作業クラッチ44は、入力軸21からPTO軸43への駆動力の伝達およびその遮断を切り換えるものである。
作業クラッチ44を「入」の状態にしたとき、入力軸21からPTO軸43への駆動力の伝達が可能となる。作業クラッチ44を「切」の状態にしたとき、入力軸21からPTO軸43への駆動力の伝達が遮断される。
【0051】
図1に示すように、ロータリ式耕耘装置40は、作業軸41、耕耘爪42、および耕耘カバー45を備える。
【0052】
作業軸41は、エンジン12が発生させた駆動力により回転駆動される。
作業軸41はミッションケース20の後下部に回転可能に軸支される。作業軸41の左右両端部はミッションケース20の左側面の後下部から左右両側方(外側)に向かって突出する。
【0053】
耕耘爪42・42・・・は、細長い金属板を適宜屈曲したものであり、耕耘爪42・42・・・の一端部(基部)は耕耘軸41の外周面に着脱可能に固定される。
【0054】
耕耘カバー45は、耕耘爪42・42・・・が圃場を構成する土等を耕耘して跳ね飛ばすことにより当該土等が周囲に飛散することを防止するものである。耕耘カバー45はミッションケース20の上面後部に固定される。耕耘カバー45は耕耘軸41・耕耘爪42・42・・・の概ね上半部を覆う。
【0055】
操向操作部50は、作業者が歩行型管理機10の操向操作を行うためのものである。
図1および図3から図6に示すように、操向操作部50は操向ハンドル51、変速作業切換レバー52(図1参照)、デッドマンレバー53、アクセルレバー54、エンジンスイッチ55、停止スイッチ56、およびデフロックレバー57を備える。
【0056】
操向ハンドル51はロータリ式耕耘装置40の上方から上後方を覆う位置にループ状に配置される。操向ハンドル51の前端部はミッションケース20の左右側面に固定され、操向ハンドル51の後端部はロータリ式耕耘装置40の上後方に配置される。
操向ハンドル51の後端部は、丸棒状の把持部51aを形成している。把持部51aは、歩行型管理機10を走行して各種の作業を行うときに作業者が手で握る部分である。本実施形態の把持部51aは、その軸線方向が歩行型管理機10の機体の左右方向に対して平行となるように配置されている。
【0057】
変速作業切換レバー52は歩行型管理機10の前進または後進の切り替え、前進速度(「前進1速」または「前進2速」)の切り替え、並びに作業軸41の回転およびその停止(「作業」または「移動」)の切り換えを行うためのレバーである。
変速作業切換レバー52を「作業」に設定したとき、作業クラッチ44が「入」の状態となり、作業軸41が回転する。変速作業切換レバー52を「移動」に設定したとき、作業クラッチ44が「切」の状態となり、作業軸41が回転を停止する。
【0058】
デッドマンレバー53は換言すれば主クラッチレバーであり、ベルトテンション式クラッチ14dを操作するためのレバーである。
デッドマンレバー53は操向ハンドル51の後部に上下方向に回動可能に支持される。デッドマンレバー53はループ状に配置される。本実施形態のデッドマンレバー53は、平面視において概ね操向ハンドル51の輪郭に沿った形状を有する。
【0059】
作業者がデッドマンレバー53と操向ハンドル51の把持部51aとを束ねて握っている場合には、ワイヤー91がデッドマンレバー53側に引き寄せられるので、テンションアーム14e(図1参照)が左側面視で時計回りに回動し、テンションプーリ14fがベルト14cの外周面に押し付けられ、ベルト14cの張力が増大する。その結果、ベルトテンション式クラッチ14dは「入」の状態となる。
【0060】
一方、作業者がデッドマンレバー53から手を離している場合には、ワイヤー91がベルトテンション式クラッチ14d側に引き寄せられるので、テンションアーム14e(図1参照)が左側面視で反時計回りに回動し、テンションプーリ14fがベルト14cの外周面から離間し、ベルト14cの張力が減少する。その結果、ベルトテンション式クラッチ14dは「切」の状態となる。
【0061】
アクセルレバー54はエンジン12の回転数を調整するためのレバーである。アクセルレバー54は操向ハンドル51の後部左側に回動可能に支持される。作業者はアクセルレバー54の回動角度を調整することにより、エンジン12の回転数を調整することが可能である。
【0062】
エンジンスイッチ55は、エンジン12の回転およびその停止を行うためのスイッチである。エンジンスイッチ55は操向ハンドル51の後部右側に固設された操作パネル59上に配置されるダイヤル式のスイッチである。作業者がエンジンスイッチ55を回転させることにより、エンジン12が始動可能な状態となる。
【0063】
停止スイッチ56は、緊急時等にエンジン12の回転を停止させるためのスイッチである。停止スイッチ56は、操作パネル59上にエンジンスイッチ55と隣接して配置される。作業者が停止スイッチ56を下方に押し込むことにより、エンジン12の回転を停止させることが可能である。
【0064】
デフロックレバー57は、デフロック装置70を操作するためのレバーである。
デフロックレバー57は操作パネル59の右側面部に上下方向に回動可能に設けられる。デフロックレバー57は、第一の辺57aと第二の辺57bとを有する略L字形状の部材である。
【0065】
図4から図6に示すように、デフロックレバー57の第一の辺57aの先端部(自由端)は、操作パネル59の右側部に回動軸58により軸支される。回動軸58は、その軸線方向が左右方向と平行となるように設けられる。
デフロックレバー57の第二の辺57bは、第一の辺57aの他端部から歩行型管理機10の機体の左右内側に向かって延設される。本実施形態においては、第二の辺57bの左右方向の寸法は、操作パネル59の左右幅と略同じ寸法となるように設定されている。
【0066】
デフロックレバー57は、下方に回動した所定の位置である「ロック作動位置」(図4参照)と、上方に回動した所定の位置である「ロック解除位置」(図5参照)と、に切り換え可能である。換言すれば、デフロックレバー57を回動軸58を中心として上下方向に回動することにより、その回動位置をロック作動位置またはロック解除位置のいずれか一方に設定可能である。
デフロックレバー57は、図示せぬ付勢部材によって付勢されることにより、ロック作動位置またはロック解除位置に保持される。
【0067】
デフロックレバー57を「ロック解除位置」に設定したとき、第二の辺57bは、把持部51aの下方であって、把持部51aよりも僅かに前方に配置される。
なお、デフロックレバー57は、「ロック解除位置」に設定した場合にも、「ロック作動位置」に設定した場合にも、把持部51aを握っている作業者から容易に手が届く位置に配置することが望ましい。
【0068】
作業者が第一の辺57aに手で触れてデフロックレバー57を「ロック作動位置」まで回動した場合には、ワイヤー92がデフロックレバー57側に引き寄せられる。したがって、デフロックアームにフォーク72等を介して連結された爪クラッチ71が右車軸22R上を左方に向かってスライド移動して、爪クラッチ71がクラッチ係合部61bに係合する。その結果、デフロック装置70が「作動」の状態となる。
これにより、左右一対の車軸22L・22Rが差動不能な状態となる(デフ装置60の差動が規制される)。
【0069】
一方、作業者が第一の辺57aに手で触れてデフロックレバー57を「ロック解除位置」まで回動した場合には、ワイヤー92がデフロック装置70側に引き寄せられる。したがって、デフロックアームにフォーク72等を介して連結された爪クラッチ71が右車軸22R上を右方に向かってスライド移動して、爪クラッチ71がクラッチ係合部61bから離間する(係合しない状態となる)。その結果、デフロック装置が「解除」の状態となる。
これにより、左右一対の車軸22L・22Rが差動可能な状態となる(デフ装置60の差動が許容される)。
【0070】
以下では、歩行型管理機10の旋回時において作業者が行う操作について、図4から図6を参照して説明する。
【0071】
歩行型管理機10を用いて圃場の耕耘作業を行っているとき、圃場の端等において歩行型管理機10を旋回させる必要が生じる。この場合、作業者は以下の(A)から(G)に示す操作を順に行うことにより、耕耘作業を一旦停止して、圃場の端で旋回作業を行った後、耕耘作業を再開する。
【0072】
(A)旋回作業にさしかかる前に、作業者はアクセルレバー54やエンジンスイッチ55を操作することにより、歩行型管理機10の走行速度を下げる(図4参照)。歩行型管理機10が圃場の端に到達したら、作業者はデッドマンレバー53から手を離す。これにより、ベルトテンション式クラッチ14dが「切」の状態となり、左右一対の車軸22L・22Rの回転が停止する。
【0073】
(B)作業者は、変速作業切換レバー52を操作して「作業」の状態から「移動」の状態に切り換える。この操作によって、ロータリ式耕耘装置40が作動不能な状態となる。
【0074】
(C)作業者は、第一の辺57aに手で触れてデフロックレバー57を上方に回動し、「ロック解除位置」に設定する。これにより、左右一対の車軸22L・22Rが差動可能な状態となる。したがって、歩行型管理機10を旋回させやすい状態となる。
【0075】
(D)作業者は、デッドマンレバー53を操向ハンドル51の把持部51aとともに束ねて握ることにより、ベルトテンション式クラッチ14dを「入」の状態にする。続いて、作業者は操向ハンドル51を上方に持ち上げて、歩行型管理機10のロータリ式耕耘装置40を圃場面の上方に少し浮かせた状態で歩行型管理機10を旋回させる。
【0076】
(E)作業者は、デッドマンレバー53から手を離すことにより、ベルトテンション式クラッチ14dを「切」の状態とし、左右一対の車軸22L・22Rの回転を停止させる。この状態で、作業者は第一の辺57aに手で触れてデフロックレバー57を下方に回動し、「ロック作動位置」に設定する。これにより、左右一対の車軸22L・22Rが差動不能な状態となる。したがって、歩行型管理機10を直進させやすい状態となる。
【0077】
(F)作業者は、変速作業切換レバー52を操作して「移動」の状態から「作業」の状態に切り換える。この操作によって、ロータリ式耕耘装置40が作動可能な状態となる。
【0078】
(G)作業者は、デッドマンレバー53を操向ハンドル51の把持部51aとともに束ねて握ることにより、ベルトテンション式クラッチ14dを「入」の状態にする。これにより、左右一対の車軸22L・22Rおよび作業軸41が回転し、耕耘作業を再開することができる。そして、アクセルレバー54やエンジンスイッチ55を操作することにより、歩行型管理機10の走行速度を耕耘作業に最適な速度に調整する。
【0079】
本実施形態に係る歩行型管理機10においては、上記の操作を行うことにより歩行型管理機10を旋回させることが可能である。したがって、以下の(1)から(4)に示す利点および効果を奏する。
【0080】
(1)歩行型管理機10の旋回を開始する場合、作業者がデフロックレバー57の第一の辺57aを回動する方向(手で持ち上げる方向)と、操向ハンドル51の把持部51aを持ち上げる方向と、はいずれも上方で同じである。また、デフロックレバー57は把持部51aの下方に設けられている。したがって、作業者はデフロックレバー57を上方に回動した後、手の位置を上方に移動して速やかに把持部51aの操作に移行することができる。
一方、歩行型管理機10を旋回させた後、ロータリ式耕耘装置40による耕耘作業を再開する場合、作業者がデフロックレバー57の第一の辺57aを回動する方向(手で押し下げる方向)と、操向ハンドル51の把持部51aを押し下げる方向と、はいずれも下方で同じである。また、デフロックレバー57は把持部51aの下方に設けられている。したがって、作業者はデフロックレバー57を下方に回動した後、手の位置を上方に移動して速やかに把持部51aの操作に移行することができる。
したがって、作業者は極力無駄な動きをすることなく、デフロックレバー57および把持部51aの一連の操作を流れよく行うことができる。特に、デフロックレバーを従来の如く前後方向(すなわち上端部が前方または後方に傾倒する方向)に回動して操作を行う構成とした場合と比べて、デフロックレバー57の操作性が向上する。
【0081】
(2)デフロックレバー57を操作するときに作業者が手で触れる部分となる第二の辺57bは、第一の辺57aの他端部から機体の左右内側に向かって延設されている(図参照)。したがって、デフロックレバーを従来の如く、操向ハンドルの左側あるいは右側の一側に前後方向(すなわち上端部が前方または後方に傾倒する方向)に回動可能に設けた場合と比べて、デフロックレバー57の第二の辺57bは作業者の手が届きやすい位置に配置される。すなわち、作業者が操向ハンドル51の左側、右側、後側のいずれの位置にいる場合においても、デフロックレバー57の操作がし易くなり、正確に操作を行うことが可能となる。
【0082】
(3)歩行型管理機10の操向操作部50では、デッドマンレバー53は操向ハンドル51の上側に配置される一方、デフロックレバー57は操向ハンドル51の下側に配置されるため、視覚的にデッドマンレバー53およびデフロックレバー57を識別しやすくなる。したがって、作業に不慣れな初心者が操作を行う場合にも、各レバー(デッドマンレバー53およびデフロックレバー57)の選択に戸惑いが生じ難い。
【0083】
(4)本実施形態のデフロックレバー57は、例えば従来の如くデフロックレバーを操作ハンドルに沿った形状(平面視ループ形状)に構成した場合と比べて、少ない材料で製造することができる。また、歩行型管理機10の後方を歩く作業者の視界および動きを妨げる虞がない位置に、デフロックレバー57を配置することができる。
【0084】
以上の如く、歩行型管理機10は、
ミッションケース20からの駆動力をロータリ式耕耘装置40に伝達する作業軸41と、
ミッションケース20に軸支されるとともに、左右一対の走行車輪30L・30Rに駆動力を伝達する左右一対の車軸22L・22Rと、
左右一対の車軸22L・22Rを差動するデフ装置60と、
ミッションケース20の後上方に延設されて、その後端部に作業者が握る把持部51aが形成される操向ハンドル51と、
を具備する歩行型管理機において、
把持部51aの下方であって、作業者から容易に手が届く位置に、操向ハンドル51に対して上下方向に回動可能に設けられるデフロックレバー57と、
デフロックレバー57の操作に連動してデフ装置60の差動を規制するデフロック装置70と、を備え、
デフロックレバー57を下方に回動したロック作動位置に設定した場合には、デフロック装置70が「作動」の状態となり、
デフロックレバー57を上方に回動したロック解除位置に設定した場合には、デフロック装置70が「解除」の状態となる、ことを特徴とするものである。
このように構成することにより、歩行型管理機10の旋回を開始する場合における、デフロックレバー57を回動する方向と、把持部51aを持ち上げる方向と、が同じであるため、デフロックレバー57および把持部51aの一連の操作を、流れよく行うことができる。
また、歩行型管理機10を旋回させた後、ロータリ式耕耘装置40による作業を再開する場合における、デフロックレバー57を回動する方向と、把持部51aを押し下げる方向と、が同じであるため、デフロックレバー57および把持部51aの一連の作業を、流れよく行うことができる。
したがって、歩行型管理機10の旋回時におけるデフロックレバー57の操作性を向上することができる。
【0085】
また、歩行型管理機10は、
デフロックレバー57は、第一の辺57aと第二の辺57bを有する略L字形状に形成し、
第一の辺57aはその一端部(自由端)が操向ハンドル51の後部左側または後部右側に軸支され、
第二の辺57bは第一の辺57aの他端部から(歩行型管理機10の)機体の左右内側に向かって延設されたものである。
このように構成することにより、操向ハンドル51の左側、右側、および後側のいずれの位置からも、デフロックレバー57を容易に操作することができる。
【0086】
さらに、歩行型管理機10は、
左右一対の車軸22L・22Rが軸支される位置よりも上方となる位置において、ミッションケース20に収容される変速装置およびPTO変速装置と、
前記変速装置およびPTO変速装置と連動されることにより前記変速装置およびPTO変速装置を操作可能な変速作業切換レバー52と、を備え、
変速作業切換レバー52は操向ハンドル51の上方となる位置に配置されたものである。
このように構成することは、以下の利点および効果を奏する。
すなわち、デフロックレバー57を操向ハンドル51の上方に配置していた従来の構成においては、変速装置、PTO変速装置、変速作業切換レバー52、デフ装置60、デフロック装置70、およびデフロックレバー57が配置される空間が密になっており、配置の自由度が低かった。
この点、本実施形態の歩行型管理機10では、変速装置、PTO変速装置および変速作業切換レバー52ならびにデフ装置60、デフロック装置70、およびデフロックレバー57が、互いに干渉しないように配置されるから、これらの部材・装置の空間配置が容易である。したがって、歩行型管理機10の組立てが容易となり、配置設計の自由度が向上する。
【0087】
以下では、本発明の第二実施形態に係る歩行型管理機100について、図7を参照して説明する。
第二実施形態に係る歩行型管理機100は、デフロックレバー57の操作に連動して作業クラッチ44の「入」「切」およびベルトテンション式クラッチ14dの「入」「切」を切り換えることが可能である点で、第一実施形態に係る歩行型管理機10と相違する。
なお、歩行型管理機100を構成する部材のうち、第一実施形態に係る歩行型管理機10のものと同様の構成の部材には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
図1に示すベルトテンション式クラッチ14dは、ミッションケース20に軸支されるテンションアーム14eを回動することにより「入」「切」を切り換えることが可能である。ワイヤー93の一端部がテンションアーム14eの一端部に固定されるとともに、ワイヤー93の他端部がデフロックレバー57に固定されることにより、ベルトテンション式クラッチ14dとデフロックレバー57とがワイヤー93により連結される(図7参照)。
【0089】
ベルトテンション式クラッチ14dが「入」の状態のときにデフロックレバー57を「ロック作動位置」から上方に回動すると、その途中の回動位置においてテンションアーム14eが回動し、ベルトテンション式クラッチ14dが「切」の状態となる。デフロックレバー57をさらに上方に回動することによりデフロックレバー57が「ロック解除位置」に到達すると、ベルトテンション式クラッチ14dが「入」の状態となる。
【0090】
ベルトテンション式クラッチ14dが「入」の状態のときにデフロックレバー57を「ロック解除位置」から下方に回動すると、その途中の回動位置においてテンションアーム14eが回動し、ベルトテンション式クラッチ14dが「切」の状態となる。デフロックレバー57をさらに下方に回動することによりデフロックレバー57が「ロック作動位置」に到達すると、ベルトテンション式クラッチ14dが「入」の状態となる。
【0091】
図1に示す作業クラッチ44は、ミッションケース20に軸支される作業クラッチアーム(不図示)を回動することにより「入」「切」を切り換えることが可能である。図7に示すワイヤー94の一端部が作業クラッチアームの一端部に固定されるとともに、ワイヤー94の他端部がデフロックレバー57に固定されることにより、作業クラッチ44とデフロックレバー57とがワイヤー94により連結される。
【0092】
変速作業切換レバー52が「作業」の状態のときにデフロックレバー57を「ロック作動位置」に設定すると、ワイヤー94の移動にともなって作業クラッチアームが回動することにより作業クラッチ44が「入」の状態となる。
【0093】
変速作業切換レバー52が「作業」の状態のときにデフロックレバー57を「ロック解除位置」に設定すると、ワイヤー94の移動にともなって作業クラッチアームが回動することにより作業クラッチ44が「切」の状態となる。
【0094】
なお、本実施形態においては、ワイヤー93とワイヤー94とを個別に設けるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ワイヤー94がワイヤー93を兼ねる構成としてもよいし、ワイヤー92がワイヤー93およびワイヤー94を兼ねる構成としてもよい。
【0095】
歩行型管理機100を用いて圃場の耕耘作業を行っているとき、圃場の端等において歩行型管理機100を旋回させる必要が生じる。この場合、作業者は以下の(a)から(d)に示す操作を順に行うことにより、耕耘作業を一旦停止して、圃場の端で旋回作業を行った後、耕耘作業を再開する。
【0096】
(a)旋回作業にさしかかる前に、作業者はアクセルレバー54やエンジンスイッチ55を操作することにより、歩行型管理機100の走行速度を下げる。
【0097】
(b)歩行型管理機100が圃場の端に到達したら、作業者は、デッドマンレバー53を握ったままの状態で、第一の辺57aに手で触れてデフロックレバー57を上方に回動し、「ロック解除位置」に設定する。これにより、左右一対の車軸22L・22Rが差動可能な状態になるとともに、ロータリ式耕耘装置40が作動不能な状態になる。
したがって、歩行型管理機100を旋回させやすい状態となる。
【0098】
(c)作業者は操向ハンドル51を上方に持ち上げて、歩行型管理機100のロータリ式耕耘装置40を圃場面の上方に少し浮かせた状態で歩行型管理機100を旋回させる。
【0099】
(d)作業者は、デッドマンレバー53を握ったままの状態で、第一の辺57aに手で触れてデフロックレバー57を下方に回動し、「ロック作動位置」に設定する。これにより、左右一対の車軸22L・22Rが差動不能な状態になるとともに、ロータリ式耕耘装置40が作動可能な状態になる。したがって、歩行型管理機100を直進させやすい状態となる。
【0100】
本実施形態に係る歩行型管理機100においては、上記の操作を行うことにより歩行型管理機100を旋回させることが可能である。したがって、以下の(5)から(8)に示す利点および効果を奏する。
【0101】
(5)歩行型管理機100によれば、デフロックレバー57をロック解除位置に設定する操作に連動してロータリ式耕耘装置40の作動を停止することができる。したがって、作業者は足元を気にすることなく安全に旋回操作を行うことができる。
【0102】
(6)デフロックレバー57をロック作動位置からロック解除位置まで回動する途中、およびデフロックレバー57をロック解除位置からロック作動位置まで回動する途中において、ベルトテンション式クラッチ14dが一時的に「切」の状態となる。したがって、デフロックレバー57の操作の前後にベルトテンション式クラッチ14dを「切」の状態にするための別途の操作をしなくても、自動的に左右一対の車軸22L・22Rの回転を停止させることができる。その結果、歩行型管理機100の旋回時に作業者が行う操向操作を簡略化することが可能である。
【0103】
(7)デフロックレバー57をロック解除位置に設定した場合には、左右一対の走行車輪30L・30Rが差動可能な状態になるとともに、ロータリ式耕耘装置40が作動不能な状態になる。したがって、デフロックレバー57の操作の前に、作業クラッチ44を「切」の状態にするための別途の操作をする必要がない。具体的には、歩行型管理機100の旋回時に変速作業切換レバー52を操作して「移動」の状態に切り換える必要がなくなる。その結果、歩行型管理機100の旋回時に作業者が行う操向操作を簡略化することが可能である。
【0104】
(8)作業者は、デフロックレバー57から手を離さずに(把持部51aとともに束ねて握ったままの状態で)、歩行型管理機100の旋回操作をすることが可能となる。したがって、歩行型管理機100の旋回時における操向操作の利便性が向上する。
特に歩行型管理機100においては、主としてデフロックレバー57の回動操作と把持部51aの持ち上げ(押し下げ)操作のみによって旋回作業を行うことができるので、作業者は極力無駄な動きをすることなく、手元の操作により対処することが可能である。
【0105】
以上の如く、歩行型管理機100は、
デフロックレバー57の操作に連動して作業軸41への駆動力の伝達およびその遮断を切り換える作業クラッチ44をさらに備え、
デフロックレバー57をロック作動位置に設定した場合には、作業クラッチ44が「入」の状態となり、
デフロックレバー57をロック解除位置に設定した場合には、作業クラッチ44が「切」の状態となるものである。
このように構成することにより、デフロックレバー57の操作に連動して作業クラッチ44の「入」「切」を切り換えることが可能となる。したがって、デフロックレバー57の操作に連動してロータリ式耕耘装置40の作動を停止することができるので、作業者は足元を気にすることなく安全に旋回操作を行うことができる。
【0106】
また、歩行型管理機100は、
デフロックレバー57の操作に連動して左右一対の車軸22L・22Rへの駆動力の伝達およびその遮断を切り換えるベルトテンション式クラッチ14dをさらに備え、
デフロックレバー57をロック作動位置からロック解除位置まで回動する途中の回動位置においてベルトテンション式クラッチ14dが一時的に「切」の状態となり、
デフロックレバー57をロック解除位置からロック作動位置まで回動する途中の回動位置においてベルトテンション式クラッチ14dが一時的に「切」の状態となるものである。
このように構成することにより、デフロックレバー57の操作に連動して作業クラッチ44の「入」「切」およびベルトテンション式クラッチ14dの「入」「切」を切り換えることが可能となる。したがって、デフロックレバー57の操作に連動してロータリ式耕耘装置40の作動を停止することができるので、作業者は足元を気にすることなく安全に旋回操作を行うことができる。
しかも、旋回時において、デフロックレバー57以外の操作具(デッドマンレバー53あるいは変速作業切換レバー52等)の操作が必要となる工程を、極力少なくすることができる。
【0107】
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の実施形態に代えて以下の構成とすることも可能である。
【0108】
上記の実施形態では、デフロックレバー57は歩行型管理機10(または歩行型管理機100)の後部右側に設けられる。しかしながら、この構成に代えて、デフロックレバーを歩行型管理機の後部左側に設ける構成としてもよいし、あるいは後部両側に設ける構成としてもよい。
【0109】
上記の実施形態の歩行型管理機10(または歩行型管理機100)は作業装置としてロータリ式耕耘装置40を具備する。しかしながら、ロータリ式耕耘装置に代えてプラウや播種機等を作業装置として具備する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0110】
10 歩行型管理機
20 ミッションケース
22L・22R 左車軸・右車軸(車軸)
30L・30R 走行車輪
40 ロータリ式耕耘装置(作業装置)
41 作業軸
44 作業クラッチ
51 操向ハンドル
51a 把持部
57 デフロックレバー
57a 第一の辺
57b 第二の辺
60 デフ装置
70 デフロック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケースからの駆動力を作業装置に伝達する作業軸と、
前記ミッションケースに軸支されるとともに、左右一対の走行車輪に駆動力を伝達する左右一対の車軸と、
前記左右一対の車軸を差動するデフ装置と、
前記ミッションケースの後上方に延設されて、その後端部に作業者が握る把持部が形成される操向ハンドルと、
を具備する歩行型管理機において、
前記把持部の下方であって、作業者から容易に手が届く位置に、前記操向ハンドルに対して上下方向に回動可能に設けられるデフロックレバーと、
前記デフロックレバーの操作に連動して前記デフ装置の差動を規制するデフロック装置と、を備え、
前記デフロックレバーを下方に回動したロック作動位置に設定した場合には、前記デフロック装置が「作動」の状態となり、
前記デフロックレバーを上方に回動したロック解除位置に設定した場合には、前記デフロック装置が「解除」の状態となる、
ことを特徴とする歩行型管理機。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行型管理機であって、
前記デフロックレバーは、第一の辺と第二の辺を有する略L字形状に形成し、
前記第一の辺はその一端部(自由端)が前記操向ハンドルの後部左側または後部右側に軸支され、
前記第二の辺は前記第一の辺の他端部から機体の左右内側に向かって延設される、歩行型管理機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歩行型管理機であって、
前記デフロックレバーの操作に連動して前記作業軸への駆動力の伝達およびその遮断を切り換える作業クラッチをさらに備え、
前記デフロックレバーを前記ロック作動位置に設定した場合には、前記作業クラッチが「入」の状態となり、
前記デフロックレバーを前記ロック解除位置に設定した場合には、前記作業クラッチが「切」の状態となる、歩行型管理機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−63224(P2011−63224A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217998(P2009−217998)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】