歯形情報本人同定システム
【課題】データベースに登録した時点では正常であった歯が、同定時に変化している場合でも、本人であることを高精度に同定できるようにする。
【解決手段】不特定多数者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭と治療痕の輪郭とを抽出し、抽出された輪郭情報を該当する各歯の番地と対応付けて登録した生前データベース12と、身元不明者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭と治療痕の輪郭とを抽出し、抽出された輪郭と該当する各歯の番地と対応付けた身元不明者の各歯1本ごとの階調画像について、前記生前データベースに登録されている身元既知の輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像との類似度を算出し、類似度が最大となる歯の階調画像に基づいて身元不明者の本人同定を行なうマッチング処理部14を備えている歯形情報本人同定システムにおいて、前記マッチング処理部14が、状態遷移している歯を除外して、前記類似度を算出する機能14Bを有している。
【解決手段】不特定多数者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭と治療痕の輪郭とを抽出し、抽出された輪郭情報を該当する各歯の番地と対応付けて登録した生前データベース12と、身元不明者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭と治療痕の輪郭とを抽出し、抽出された輪郭と該当する各歯の番地と対応付けた身元不明者の各歯1本ごとの階調画像について、前記生前データベースに登録されている身元既知の輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像との類似度を算出し、類似度が最大となる歯の階調画像に基づいて身元不明者の本人同定を行なうマッチング処理部14を備えている歯形情報本人同定システムにおいて、前記マッチング処理部14が、状態遷移している歯を除外して、前記類似度を算出する機能14Bを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯形情報本人同定システム、特に事故等により生じた身元不明者を歯形の情報を基に特定する際に適用して好適な歯形情報本人同定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害や不慮の事故等により生じた身元不明者について身元を特定(本人同定)するために、残された骨から得られる性別や年齢等の様々な情報を利用できることが法医学として知られている。ところが、事故等が発生した後長い年数が経過している場合等には、骨すらも分解されてしまっていることも少なくない。その点、歯はその性質上分解され難いため、このような場合に個人を特定するには、重要な情報源となることが知られており、法歯学として認知されつつある。
【0003】
そこで、図1に処理の流れと構成の概要を示すような歯形情報本人同定システムが用いられるようになっている。図中左側は、コンピュータからなる登録装置であり、これを使って予め不特定多数の生存者から歯の輪郭情報を取得し、生前データベース(以下、生前DBと略記する)に保存しておく。
【0004】
一方、図中右側は、同じくコンピュータからなるマッチング装置であり、これにより生前DBに保存されている輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像と身元不明者の各歯1本ごとの階調画像とを比較することにより身元を特定するマッチング処理が行なわれる。
【0005】
生前DBに保存する歯の輪郭を取得する場合、具体的には、口周部をX線装置でパノラマ形式で撮影して入力される歯のパノラマ画像を使用する。図2には、このパノラマ画像の一例を、下顎の輪郭を二点鎖線で表わして模式的に示してある。図中、歯の一部にあるハッチング部分は金属を詰めた後の治療痕である。
【0006】
図中左側に示す生前DB作成の流れについて説明すると、任意の生存者を対象としてX線装置10により撮影した歯のパノラマ画像AM(Ante-Mortem:生前画像)を、A/D変換等の所定の処理を施して画像入力した後、背景画像等から歯を分離して孤立させる等の前処理を行なう(ステップ1)。
【0007】
次いで、治療した歯がある場合には、イメージが図示されているような治療痕(金属)の輪郭を抽出し(ステップ2)、更に画像中の全ての歯について太線でイメージが図示されているような輪郭(歯の外形)を抽出する(ステップ3)。
【0008】
ステップ2、3でそれぞれ抽出した各輪郭と、輪郭を抽出した全ての歯、及び、治療痕を抽出した歯の番地(順番)とを対応付けると共に、撮影対象の人物名やID番号、撮影日等に対応付けて生前DB12に登録する(ステップ4)。
【0009】
以上のステップ1〜ステップ4の各処理を不特定多数の生存者についてそれぞれ実行し、抽出された治療痕の輪郭及び歯の輪郭、該当するこれらの歯の番地を人物名やID番号、撮影日等に対応付けて、身元既知の各輪郭情報として生前DB12に登録しておく。
【0010】
次に、図中右側に示したマッチング処理の流れについて説明する。
【0011】
このマッチング処理は、身元不明者からX線装置10により撮影して取得される前記図2に示したものと同様の歯のパノラマ画像PM(Post-Mortem:死後画像)について、前記生存者の場合に行なったステップ1〜ステップ4の各処理と実質同一のステップ11〜ステップ14の処理を実行し、治療痕及び全ての歯の輪郭を抽出し、該当する各歯の番地を設定することにより、身元不明者の各歯1本ごとの階調画像を作成する。
【0012】
以上のように身元不明者の各歯1本ごとの階調画像が作成されると、コンピュータからなるマッチング装置では、マッチング処理部14により生前DB12内に保存されている不特定多数の身元既知の輪郭情報に対応する生前画像の各歯1本ごとの階調画像をそれぞれ作成し、求めた各歯1本ごとの階調画像とのマッチング処理を実行する。
【0013】
ここで、マッチング処理部14により、抽出された各歯1本ごとの階調画像について実行される従来の形状マッチングについて、図3を参照して説明する。なお、この歯の輪郭抽出については、例えば非特許文献1に記載されている。
【0014】
図3には、便宜上歯を四角形で表わし、更に分かり易くするために下顎、上顎にそれぞれ歯が5本ずつあるものとして示してある。
【0015】
従来のマッチング処理の手順の概要は、以下のとおりである。
【0016】
(1)輪郭抽出後の歯に対して、前記ステップ14で示したように番地(番号)を付与する。ここでは、下顎については1から5の、上顎については6から10の各番号をそれぞれ設定することに当たる。
【0017】
(2)線形変換により、生前DB12に保管されている(身元既知の)形状(輪郭)をマッチング対象である不明者側の形状(輪郭)に合わせる。これは入力時の画像間のずれを補正するための処理であり、逆にマッチング対象の形状の方を合わせるようにしても良い。
【0018】
(3)両者間で形状を合わせた後、各歯1本ごとの階調画像についてマッチング処理を実施する。
【0019】
(4)具体的な処理内容は、図中右側に生前画像DBとして示す生前DB12内に保管されているAM(1)〜AM(m)の生前画像の中から類似度が最大となる歯の階調画像を含む画像を検出する。
【0020】
類似度は、図中左側に死後画像(PM)として示す身元不明者のマッチング対象画像と、生前DB12内の不特定多数の生前画像群AM(1)〜AM(m)からなる検索対象画像との間で、対応する番地の各歯1本ごとの階調画像毎に次式(1)により算出する。
【0021】
【数1】
【0022】
(1)式の左辺R(PMn,AMmn)は、死後画像のn番目の歯と、m番目の生前画像におけるn番目の歯との相関係数を表す。
【0023】
対応する歯ごとに求めた各相関係数の平均値を次式(2)により算出し、死後画像とm番目の生前画像との類似度とする。
【0024】
【数2】
【0025】
(2)式で算出される死後画像と各生前画像との類似度の中から、次式(3)により死後画像に対して最も高い類似度:MD(PM,AM)が得られた生前画像AMを、本人候補の生前画像とする。
【0026】
【数3】
【0027】
【非特許文献1】Anil K.Jain,Hong Chen,Matching of dental X-ray images for human identification,Pattem Recognition 37(2004)1519-1532.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、前記従来の形状マッチング処理には、以下の問題がある。生前存在していた歯や治療痕等が、時間が経過することにより抜けたり、欠けたり、又、子供の場合等には成長したりすることが考えられる。
【0029】
そのため、マッチング時に歯が存在しない場合や、欠損により歯の形状が変化している場合等には、それが原因で誤マッチングする確率が高くなる。例えば、図4に同一人物について生前と死後の画像のイメージを示すように、生前は正常であった5番の歯に治療痕があったり、10番の歯が抜けていたりすると、マッチング処理を実施した場合は当然類似度は低くなる。特に、10番は形状マッチングする対象が存在しないため、類似度は極めて低いことになる。
【0030】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、生前DBに登録した時点では正常であった歯が、治療を受けていたり、抜けていたりしてマッチング時に変化している場合でも、本人であることを高精度に同定することができる歯型情報本人同定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、不特定多数者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭を抽出し、抽出された輪郭を、該当する各歯の番地と対応付けて歯の輪郭情報として登録した生前データベースと、身元不明者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭を抽出し、抽出された輪郭と、該当する各歯の番地とを対応付けた身元不明者の各歯1本ごとの階調画像について、前記生前データベースに登録されている身元既知の輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像との類似度を算出し、類似度が最大となる歯の階調画像に基づいて身元不明者の本人同定を行なうマッチング処理部を備えている歯形情報本人同定システムにおいて、前記マッチング処理部が、経時的に状態遷移している歯を除外して、前記類似度を算出する機能を有してことにより、前記課題を解決したものである。
【0032】
本発明においては、前記生前データベースには、前記歯の画像から抽出された治療痕の輪郭が、該当する歯の番地と対応付けて治療痕の輪郭情報としても登録され、前記マッチング処理部では、治療痕のの階調画像について類似度の算出が併せて行われるようにしてもよい。
【0033】
本発明においては、又、前記マッチング処理部が、各歯について総合状態遷移確率を評価する機能を併有しているようにしてもよい。この総合状態遷移確率は、初期状態確率と状態遷移確率を含んでいる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、本人同定のために歯の形状マッチングを行なう際、各歯の経時的な状態変化である状態遷移を考慮するようにしたので、類似度を算出する場合には、状態遷移に起因する類似度の低下を防止することができ、従って身元不明者の身元特定精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
図5には、本発明に係る一実施形態の歯形情報本人同定システムの要部を示す。このシステムは、基本構成は前記図1に示したものと同一である。従って、ここでは、同一の符号を使用して、詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施形態の本人同定システムの特徴は、前記図1に示したマッチング処理部14に、マッチングを行なう際に各歯について状態遷移を考慮する機能を追加し、付加したことにある。具体的には、マッチング処理部14に状態遷移確率を計算する第1計算部14Aと、類似度の平均値を計算する第2計算部14Bの機能を追加している。
【0038】
本実施形態では、マッチング処理部14によりマッチング処理する際、歯の状態遷移(生前:歯有→死後:歯欠損等の経時的な変化)を考慮する。具体的には、状態が遷移している歯は類似度算出対象から除外する。この除外処理については後述する。
【0039】
又、生前DB12に登録されている任意の検索対象画像について各歯の遷移に対して、総合状態遷移確率を付与する。
【0040】
便宜上、まず上記第1計算部14Aで行なう総合状態遷移確率の付与について説明する。ここで付与される確率は、「初期状態確率」と「状態遷移確率」から生成される。
【0041】
初期状態確率は、生前DB12内に保存されている各状態の画像数の実際の比率によって、確率の高・低を決定する。
【0042】
状態遷移確率は、最初は仮説に基づき、確率を割り当ている。
【0043】
仮説に基づいているため、初期においては信頼性はそれ程高くないが、蓄積される死後画像を通して症例の数を増やすことにより、実際に即した状態遷移の確率を求めることが可能となる。
【0044】
又、総合状態遷移確率を付与する際、歯の撮影年月日等の情報を設定し、考慮できるようにする。
【0045】
次に、本実施形態の作用を図6のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
前提条件として、歯の輪郭、治療痕、該当する各歯の番地情報は既知であるとする(ステップ21)。これらは従来と同様に決定することができる。次いで、歯の状態遷移の認識を行なう(ステップ22)。
【0047】
図7に生前と死後のパノラマ画像の歯の位置に対応させてそれぞれ○、△、×の記号を付したように、「歯が存在する」、「歯に治療痕がある」、「歯が抜けている」という状態を認識する。これら3つの状態は、歯の輪郭抽出時に認識することが可能である。
【0048】
具体的には、治療痕△は、X線の透過率が、歯と治療痕とで異なることから、歯が抜けている×は、歯の輪郭(特に歯冠)が存在しないことから、歯がそのままある○は、前2者と異なることから、それぞれ認識することが可能である。
【0049】
次に、歯の状態遷移の正誤を判定し、状態遷移が正しくない場合は、以下のように検索対象から除外する(ステップ23)。
【0050】
図8(A)、(B)には、生前DB12に保管されている輪郭情報について、S1〜S3の各状態と確率A〜Gを対応付けて遷移を表わした歯の状態遷移表と状態遷移図を、それぞれ示す。この図8に確率が付与されている遷移は起こり得るが、図9のように起こり得ない遷移がある場合は、その画像を検索対象から事前に除く。
【0051】
次いで、歯の状態遷移に対する確率の割当を行なう(ステップ24)。
【0052】
ここで割り当てる確率には、前述した如く初期状態と状態遷移の2つがある。
【0053】
初期状態確率については、生前DB12内に、S1、S2、S3のどのタイプ(状態)の画像がどれだけ存在するかで、存在割合から確率の高・低を決定する。例えば、任意の歯に着目し、生前DB(総計:100名分とする)内の状況に応じて、歯有(60名)=0.6、歯抜け(20名)=0.2、治療痕(20名)=0.2のようにして初期状態確率を割り当てる。
【0054】
状態遷移確率については、経験的な仮説に基づき、確率を割り当てる。
【0055】
仮説1:死後、歯の状態が変化している確率と変化していない確率は、以下のとおりとする。
状態が変化しない確率:50%
状態が変化する確率:50%
【0056】
仮説2:死後、状態が変化する確率50%の内訳は、状態別に以下のとおりとする。
歯抜け:30%
治療痕:20%
なお、この状態遷移確率は、経験(実績)に基づいて適宜修正することができる。
【0057】
このように確率を割り当てることにより、図10(A)、(B)に示すように、前記図8(A)、(B)に相当する総合状態遷移確率付与後の状態遷移表と状態遷移図が得られる。図8、図10に示したA〜Gが前記2つの確率から生成される総合状態遷移確率である。
【0058】
この図10に示した確率の具体的な値を、前記図7の生前と死後の画像に相当する図11(A)、(B)に適用することにより、同図(C)に示す状態遷移確率マップが生成される(ステップ25)。
【0059】
そして、この状態遷移確率マップに与えられた総合状態遷移確率のAには0.3、Bには0.18、Cには0.12を入れて全て乗算した値をPM/AM画像間の状態遷移確率とする。
【0060】
一方、ステップ24、25の処理とは別に類似度を計算し、類似度マップを生成させる(ステップ26)。類似度は、従来と同様に前記(1)式で計算する。その際、前記図7に相当する図12(A)、(B)について類似度を計算した例を同図(C)に示すように、死後画像で状態が遷移している×と△の歯は計算から除外する。
【0061】
以上のように図12(C)に示したような類似度マップが生成されたら、該マップについて類似度の平均値を求める。類似度の平均値は、例えば2本で求めた場合よりも10本で求めた場合の方が、信頼度が高いと考えられるが、平均値を算出する本数が2本で求めた場合と10本で求めた場合とで平均値が一致する場合が考えられ、求めた本数が無視されてしまう。そのため、類似度を求めた本数(状態が遷移していない歯の数)を、類似度の平均値に乗算(重み付け)する。
【0062】
類似度を求めた本数の乗算の仕方は、人間の歯は親知らずを含めると前記の如く26本なので、例えば5本の歯を対象に類似度を求めた場合であれば、5/26を類似度の平均値に乗算する。
【0063】
以上のように、ステップ26で類似度の平均値を、ステップ25でPM/AM画像間の状態遷移確率を、それぞれ算出する処理を生前DB12内に保存されている身元既知の全ての検索対象画像について実施し、図13に示すような一覧表を作成し、類似度とPM/AM画像間の状態遷移確率が共に高い検索対象画像をマッチング(本人同定)の第1候補とする。なお、図13の評価テーブルの並びは、類似度が高いものを優先的に上位にする。その際、類似度及びPM/AM画像間の状態遷移確率が同じ対象画像が多数存在した場合は、撮影年月日を考慮し、経過年数が短い方、即ち最新のものを第1候補とする。
【0064】
以上詳述した本実施形態によれば、生前DB12に保存されている歯及び治療痕の輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像と身元不明者の歯及び治療痕の各歯1本ごとの階調画像との類似度を計算する形状マッチングにより、本人同定を行なう場合、歯の状態が遷移している歯は類似度の計算から除外するようにしたので、類似度の低下を防止でき、従ってマッチングの精度を向上することができる。
【0065】
又、合わせて総合状態遷移確率を付与し、起こり得る遷移の可能性をも併せて評価するようにしたので、更に本人同定のマッチング精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来の本人同定システムの概要を、処理手順を含めて示す説明図
【図2】歯をX線撮影して得られるパノラマ画像のイメージを示す模式図
【図3】歯の形状マッチングのイメージを示す説明図
【図4】従来の形状マッチングの問題点を示す説明図
【図5】本発明に係る一実施形態の本人同定システムの要部を示す説明図
【図6】本実施形態の作用を示すフローチャート
【図7】歯の状態遷移を示す説明図
【図8】歯の状態遷移表と状態遷移図を示す説明図
【図9】起こり得ない状態遷移を示す説明図
【図10】歯の状態遷移確率を示す説明図
【図11】状態遷移確率マップの作成方法を示す説明図
【図12】類似度マップの作成方法を示す説明図
【図13】評価結果の一覧を示す図表
【符号の説明】
【0067】
10…X線装置
12…生前DB
14…マッチング処理部
14A…第1計算部
14B…第2計算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯形情報本人同定システム、特に事故等により生じた身元不明者を歯形の情報を基に特定する際に適用して好適な歯形情報本人同定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害や不慮の事故等により生じた身元不明者について身元を特定(本人同定)するために、残された骨から得られる性別や年齢等の様々な情報を利用できることが法医学として知られている。ところが、事故等が発生した後長い年数が経過している場合等には、骨すらも分解されてしまっていることも少なくない。その点、歯はその性質上分解され難いため、このような場合に個人を特定するには、重要な情報源となることが知られており、法歯学として認知されつつある。
【0003】
そこで、図1に処理の流れと構成の概要を示すような歯形情報本人同定システムが用いられるようになっている。図中左側は、コンピュータからなる登録装置であり、これを使って予め不特定多数の生存者から歯の輪郭情報を取得し、生前データベース(以下、生前DBと略記する)に保存しておく。
【0004】
一方、図中右側は、同じくコンピュータからなるマッチング装置であり、これにより生前DBに保存されている輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像と身元不明者の各歯1本ごとの階調画像とを比較することにより身元を特定するマッチング処理が行なわれる。
【0005】
生前DBに保存する歯の輪郭を取得する場合、具体的には、口周部をX線装置でパノラマ形式で撮影して入力される歯のパノラマ画像を使用する。図2には、このパノラマ画像の一例を、下顎の輪郭を二点鎖線で表わして模式的に示してある。図中、歯の一部にあるハッチング部分は金属を詰めた後の治療痕である。
【0006】
図中左側に示す生前DB作成の流れについて説明すると、任意の生存者を対象としてX線装置10により撮影した歯のパノラマ画像AM(Ante-Mortem:生前画像)を、A/D変換等の所定の処理を施して画像入力した後、背景画像等から歯を分離して孤立させる等の前処理を行なう(ステップ1)。
【0007】
次いで、治療した歯がある場合には、イメージが図示されているような治療痕(金属)の輪郭を抽出し(ステップ2)、更に画像中の全ての歯について太線でイメージが図示されているような輪郭(歯の外形)を抽出する(ステップ3)。
【0008】
ステップ2、3でそれぞれ抽出した各輪郭と、輪郭を抽出した全ての歯、及び、治療痕を抽出した歯の番地(順番)とを対応付けると共に、撮影対象の人物名やID番号、撮影日等に対応付けて生前DB12に登録する(ステップ4)。
【0009】
以上のステップ1〜ステップ4の各処理を不特定多数の生存者についてそれぞれ実行し、抽出された治療痕の輪郭及び歯の輪郭、該当するこれらの歯の番地を人物名やID番号、撮影日等に対応付けて、身元既知の各輪郭情報として生前DB12に登録しておく。
【0010】
次に、図中右側に示したマッチング処理の流れについて説明する。
【0011】
このマッチング処理は、身元不明者からX線装置10により撮影して取得される前記図2に示したものと同様の歯のパノラマ画像PM(Post-Mortem:死後画像)について、前記生存者の場合に行なったステップ1〜ステップ4の各処理と実質同一のステップ11〜ステップ14の処理を実行し、治療痕及び全ての歯の輪郭を抽出し、該当する各歯の番地を設定することにより、身元不明者の各歯1本ごとの階調画像を作成する。
【0012】
以上のように身元不明者の各歯1本ごとの階調画像が作成されると、コンピュータからなるマッチング装置では、マッチング処理部14により生前DB12内に保存されている不特定多数の身元既知の輪郭情報に対応する生前画像の各歯1本ごとの階調画像をそれぞれ作成し、求めた各歯1本ごとの階調画像とのマッチング処理を実行する。
【0013】
ここで、マッチング処理部14により、抽出された各歯1本ごとの階調画像について実行される従来の形状マッチングについて、図3を参照して説明する。なお、この歯の輪郭抽出については、例えば非特許文献1に記載されている。
【0014】
図3には、便宜上歯を四角形で表わし、更に分かり易くするために下顎、上顎にそれぞれ歯が5本ずつあるものとして示してある。
【0015】
従来のマッチング処理の手順の概要は、以下のとおりである。
【0016】
(1)輪郭抽出後の歯に対して、前記ステップ14で示したように番地(番号)を付与する。ここでは、下顎については1から5の、上顎については6から10の各番号をそれぞれ設定することに当たる。
【0017】
(2)線形変換により、生前DB12に保管されている(身元既知の)形状(輪郭)をマッチング対象である不明者側の形状(輪郭)に合わせる。これは入力時の画像間のずれを補正するための処理であり、逆にマッチング対象の形状の方を合わせるようにしても良い。
【0018】
(3)両者間で形状を合わせた後、各歯1本ごとの階調画像についてマッチング処理を実施する。
【0019】
(4)具体的な処理内容は、図中右側に生前画像DBとして示す生前DB12内に保管されているAM(1)〜AM(m)の生前画像の中から類似度が最大となる歯の階調画像を含む画像を検出する。
【0020】
類似度は、図中左側に死後画像(PM)として示す身元不明者のマッチング対象画像と、生前DB12内の不特定多数の生前画像群AM(1)〜AM(m)からなる検索対象画像との間で、対応する番地の各歯1本ごとの階調画像毎に次式(1)により算出する。
【0021】
【数1】
【0022】
(1)式の左辺R(PMn,AMmn)は、死後画像のn番目の歯と、m番目の生前画像におけるn番目の歯との相関係数を表す。
【0023】
対応する歯ごとに求めた各相関係数の平均値を次式(2)により算出し、死後画像とm番目の生前画像との類似度とする。
【0024】
【数2】
【0025】
(2)式で算出される死後画像と各生前画像との類似度の中から、次式(3)により死後画像に対して最も高い類似度:MD(PM,AM)が得られた生前画像AMを、本人候補の生前画像とする。
【0026】
【数3】
【0027】
【非特許文献1】Anil K.Jain,Hong Chen,Matching of dental X-ray images for human identification,Pattem Recognition 37(2004)1519-1532.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、前記従来の形状マッチング処理には、以下の問題がある。生前存在していた歯や治療痕等が、時間が経過することにより抜けたり、欠けたり、又、子供の場合等には成長したりすることが考えられる。
【0029】
そのため、マッチング時に歯が存在しない場合や、欠損により歯の形状が変化している場合等には、それが原因で誤マッチングする確率が高くなる。例えば、図4に同一人物について生前と死後の画像のイメージを示すように、生前は正常であった5番の歯に治療痕があったり、10番の歯が抜けていたりすると、マッチング処理を実施した場合は当然類似度は低くなる。特に、10番は形状マッチングする対象が存在しないため、類似度は極めて低いことになる。
【0030】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、生前DBに登録した時点では正常であった歯が、治療を受けていたり、抜けていたりしてマッチング時に変化している場合でも、本人であることを高精度に同定することができる歯型情報本人同定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、不特定多数者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭を抽出し、抽出された輪郭を、該当する各歯の番地と対応付けて歯の輪郭情報として登録した生前データベースと、身元不明者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭を抽出し、抽出された輪郭と、該当する各歯の番地とを対応付けた身元不明者の各歯1本ごとの階調画像について、前記生前データベースに登録されている身元既知の輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像との類似度を算出し、類似度が最大となる歯の階調画像に基づいて身元不明者の本人同定を行なうマッチング処理部を備えている歯形情報本人同定システムにおいて、前記マッチング処理部が、経時的に状態遷移している歯を除外して、前記類似度を算出する機能を有してことにより、前記課題を解決したものである。
【0032】
本発明においては、前記生前データベースには、前記歯の画像から抽出された治療痕の輪郭が、該当する歯の番地と対応付けて治療痕の輪郭情報としても登録され、前記マッチング処理部では、治療痕のの階調画像について類似度の算出が併せて行われるようにしてもよい。
【0033】
本発明においては、又、前記マッチング処理部が、各歯について総合状態遷移確率を評価する機能を併有しているようにしてもよい。この総合状態遷移確率は、初期状態確率と状態遷移確率を含んでいる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、本人同定のために歯の形状マッチングを行なう際、各歯の経時的な状態変化である状態遷移を考慮するようにしたので、類似度を算出する場合には、状態遷移に起因する類似度の低下を防止することができ、従って身元不明者の身元特定精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
図5には、本発明に係る一実施形態の歯形情報本人同定システムの要部を示す。このシステムは、基本構成は前記図1に示したものと同一である。従って、ここでは、同一の符号を使用して、詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施形態の本人同定システムの特徴は、前記図1に示したマッチング処理部14に、マッチングを行なう際に各歯について状態遷移を考慮する機能を追加し、付加したことにある。具体的には、マッチング処理部14に状態遷移確率を計算する第1計算部14Aと、類似度の平均値を計算する第2計算部14Bの機能を追加している。
【0038】
本実施形態では、マッチング処理部14によりマッチング処理する際、歯の状態遷移(生前:歯有→死後:歯欠損等の経時的な変化)を考慮する。具体的には、状態が遷移している歯は類似度算出対象から除外する。この除外処理については後述する。
【0039】
又、生前DB12に登録されている任意の検索対象画像について各歯の遷移に対して、総合状態遷移確率を付与する。
【0040】
便宜上、まず上記第1計算部14Aで行なう総合状態遷移確率の付与について説明する。ここで付与される確率は、「初期状態確率」と「状態遷移確率」から生成される。
【0041】
初期状態確率は、生前DB12内に保存されている各状態の画像数の実際の比率によって、確率の高・低を決定する。
【0042】
状態遷移確率は、最初は仮説に基づき、確率を割り当ている。
【0043】
仮説に基づいているため、初期においては信頼性はそれ程高くないが、蓄積される死後画像を通して症例の数を増やすことにより、実際に即した状態遷移の確率を求めることが可能となる。
【0044】
又、総合状態遷移確率を付与する際、歯の撮影年月日等の情報を設定し、考慮できるようにする。
【0045】
次に、本実施形態の作用を図6のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
前提条件として、歯の輪郭、治療痕、該当する各歯の番地情報は既知であるとする(ステップ21)。これらは従来と同様に決定することができる。次いで、歯の状態遷移の認識を行なう(ステップ22)。
【0047】
図7に生前と死後のパノラマ画像の歯の位置に対応させてそれぞれ○、△、×の記号を付したように、「歯が存在する」、「歯に治療痕がある」、「歯が抜けている」という状態を認識する。これら3つの状態は、歯の輪郭抽出時に認識することが可能である。
【0048】
具体的には、治療痕△は、X線の透過率が、歯と治療痕とで異なることから、歯が抜けている×は、歯の輪郭(特に歯冠)が存在しないことから、歯がそのままある○は、前2者と異なることから、それぞれ認識することが可能である。
【0049】
次に、歯の状態遷移の正誤を判定し、状態遷移が正しくない場合は、以下のように検索対象から除外する(ステップ23)。
【0050】
図8(A)、(B)には、生前DB12に保管されている輪郭情報について、S1〜S3の各状態と確率A〜Gを対応付けて遷移を表わした歯の状態遷移表と状態遷移図を、それぞれ示す。この図8に確率が付与されている遷移は起こり得るが、図9のように起こり得ない遷移がある場合は、その画像を検索対象から事前に除く。
【0051】
次いで、歯の状態遷移に対する確率の割当を行なう(ステップ24)。
【0052】
ここで割り当てる確率には、前述した如く初期状態と状態遷移の2つがある。
【0053】
初期状態確率については、生前DB12内に、S1、S2、S3のどのタイプ(状態)の画像がどれだけ存在するかで、存在割合から確率の高・低を決定する。例えば、任意の歯に着目し、生前DB(総計:100名分とする)内の状況に応じて、歯有(60名)=0.6、歯抜け(20名)=0.2、治療痕(20名)=0.2のようにして初期状態確率を割り当てる。
【0054】
状態遷移確率については、経験的な仮説に基づき、確率を割り当てる。
【0055】
仮説1:死後、歯の状態が変化している確率と変化していない確率は、以下のとおりとする。
状態が変化しない確率:50%
状態が変化する確率:50%
【0056】
仮説2:死後、状態が変化する確率50%の内訳は、状態別に以下のとおりとする。
歯抜け:30%
治療痕:20%
なお、この状態遷移確率は、経験(実績)に基づいて適宜修正することができる。
【0057】
このように確率を割り当てることにより、図10(A)、(B)に示すように、前記図8(A)、(B)に相当する総合状態遷移確率付与後の状態遷移表と状態遷移図が得られる。図8、図10に示したA〜Gが前記2つの確率から生成される総合状態遷移確率である。
【0058】
この図10に示した確率の具体的な値を、前記図7の生前と死後の画像に相当する図11(A)、(B)に適用することにより、同図(C)に示す状態遷移確率マップが生成される(ステップ25)。
【0059】
そして、この状態遷移確率マップに与えられた総合状態遷移確率のAには0.3、Bには0.18、Cには0.12を入れて全て乗算した値をPM/AM画像間の状態遷移確率とする。
【0060】
一方、ステップ24、25の処理とは別に類似度を計算し、類似度マップを生成させる(ステップ26)。類似度は、従来と同様に前記(1)式で計算する。その際、前記図7に相当する図12(A)、(B)について類似度を計算した例を同図(C)に示すように、死後画像で状態が遷移している×と△の歯は計算から除外する。
【0061】
以上のように図12(C)に示したような類似度マップが生成されたら、該マップについて類似度の平均値を求める。類似度の平均値は、例えば2本で求めた場合よりも10本で求めた場合の方が、信頼度が高いと考えられるが、平均値を算出する本数が2本で求めた場合と10本で求めた場合とで平均値が一致する場合が考えられ、求めた本数が無視されてしまう。そのため、類似度を求めた本数(状態が遷移していない歯の数)を、類似度の平均値に乗算(重み付け)する。
【0062】
類似度を求めた本数の乗算の仕方は、人間の歯は親知らずを含めると前記の如く26本なので、例えば5本の歯を対象に類似度を求めた場合であれば、5/26を類似度の平均値に乗算する。
【0063】
以上のように、ステップ26で類似度の平均値を、ステップ25でPM/AM画像間の状態遷移確率を、それぞれ算出する処理を生前DB12内に保存されている身元既知の全ての検索対象画像について実施し、図13に示すような一覧表を作成し、類似度とPM/AM画像間の状態遷移確率が共に高い検索対象画像をマッチング(本人同定)の第1候補とする。なお、図13の評価テーブルの並びは、類似度が高いものを優先的に上位にする。その際、類似度及びPM/AM画像間の状態遷移確率が同じ対象画像が多数存在した場合は、撮影年月日を考慮し、経過年数が短い方、即ち最新のものを第1候補とする。
【0064】
以上詳述した本実施形態によれば、生前DB12に保存されている歯及び治療痕の輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像と身元不明者の歯及び治療痕の各歯1本ごとの階調画像との類似度を計算する形状マッチングにより、本人同定を行なう場合、歯の状態が遷移している歯は類似度の計算から除外するようにしたので、類似度の低下を防止でき、従ってマッチングの精度を向上することができる。
【0065】
又、合わせて総合状態遷移確率を付与し、起こり得る遷移の可能性をも併せて評価するようにしたので、更に本人同定のマッチング精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来の本人同定システムの概要を、処理手順を含めて示す説明図
【図2】歯をX線撮影して得られるパノラマ画像のイメージを示す模式図
【図3】歯の形状マッチングのイメージを示す説明図
【図4】従来の形状マッチングの問題点を示す説明図
【図5】本発明に係る一実施形態の本人同定システムの要部を示す説明図
【図6】本実施形態の作用を示すフローチャート
【図7】歯の状態遷移を示す説明図
【図8】歯の状態遷移表と状態遷移図を示す説明図
【図9】起こり得ない状態遷移を示す説明図
【図10】歯の状態遷移確率を示す説明図
【図11】状態遷移確率マップの作成方法を示す説明図
【図12】類似度マップの作成方法を示す説明図
【図13】評価結果の一覧を示す図表
【符号の説明】
【0067】
10…X線装置
12…生前DB
14…マッチング処理部
14A…第1計算部
14B…第2計算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不特定多数者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭を抽出し、抽出された輪郭を、該当する各歯の番地と対応付けて歯の輪郭情報として登録した生前データベースと、
身元不明者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭を抽出し、抽出された輪郭と、該当する各歯の番地とを対応付けた身元不明者の各歯1本ごとの階調画像について、前記生前データベースに登録されている身元既知の輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像との類似度を算出し、類似度が最大となる歯の階調画像に基づいて身元不明者の本人同定を行なうマッチング処理部を備えている歯形情報本人同定システムにおいて、
前記マッチング処理部が、経時的に状態遷移している歯を除外して、前記類似度を算出する機能を有していることを特徴とする歯形情報本人同定システム。
【請求項2】
前記生前データベースには、前記歯の画像から抽出された治療痕の輪郭が、該当する歯の番地と対応付けて治療痕の輪郭情報としても登録され、
前記マッチング処理部では、治療痕の階調画像について類似度の算出が併せて行われることを特徴とする請求項1に記載の歯形情報本人同定システム。
【請求項3】
前記マッチング処理部が、各歯について総合状態遷移確率を評価する機能を併有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯形情報本人同定システム。
【請求項4】
前記総合状態遷移確率が、初期状態確率と状態遷移確率を含んでいることを特徴とする請求項3に記載の歯形情報本人同定システム。
【請求項1】
不特定多数者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭を抽出し、抽出された輪郭を、該当する各歯の番地と対応付けて歯の輪郭情報として登録した生前データベースと、
身元不明者をX線撮影して取得した歯の画像から、各歯の輪郭を抽出し、抽出された輪郭と、該当する各歯の番地とを対応付けた身元不明者の各歯1本ごとの階調画像について、前記生前データベースに登録されている身元既知の輪郭情報より求めた各歯1本ごとの階調画像との類似度を算出し、類似度が最大となる歯の階調画像に基づいて身元不明者の本人同定を行なうマッチング処理部を備えている歯形情報本人同定システムにおいて、
前記マッチング処理部が、経時的に状態遷移している歯を除外して、前記類似度を算出する機能を有していることを特徴とする歯形情報本人同定システム。
【請求項2】
前記生前データベースには、前記歯の画像から抽出された治療痕の輪郭が、該当する歯の番地と対応付けて治療痕の輪郭情報としても登録され、
前記マッチング処理部では、治療痕の階調画像について類似度の算出が併せて行われることを特徴とする請求項1に記載の歯形情報本人同定システム。
【請求項3】
前記マッチング処理部が、各歯について総合状態遷移確率を評価する機能を併有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯形情報本人同定システム。
【請求項4】
前記総合状態遷移確率が、初期状態確率と状態遷移確率を含んでいることを特徴とする請求項3に記載の歯形情報本人同定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【公開番号】特開2009−50632(P2009−50632A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222590(P2007−222590)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]