説明

歯科用ハンドピース

【課題】 予圧バネの弾力が弱くなり難く、組み立て時に部品としての取り扱いが比較的容易であり、上方の軸受部材における外輪の軸方向の動きを抑制することができる歯科用ハンドピースを提供することにある。
【解決手段】 歯科処置工具を受理して着脱自在に保持するバースリーブと、バースリーブを回転可能に支承するためローターの上方及び下方に設けられた軸受部材と、上方の軸受部材を保持するための軸受ケースとを含み、上方の軸受部材の外輪上端部に溝が形成され、上方の軸受部材を押圧するための予圧バネに係止爪が形成され、予圧バネは台座部材を介して溝に配置されると共に、係止爪が溝に係止されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科用ハンドピース40は、図4に示したように、歯科処置工具41を受理して着脱自在に保持するバースリーブ42と、圧縮空気によってバースリーブ42を回転駆動するためにバースリーブ42に設けられたローター43と、バースリーブ42を回転可能に支承するためローター43の上方及び下方に設けられた軸受部材44と、これら軸受部材44を保持するための軸受ケース45とがヘッドハウジング46内に設けられている。
ここで、上方の軸受部材44を保持する軸受ケース45の上面には、内側に突出するフランジ45aが形成され、フランジ45aの下側に軸受部材44が配置される。このフランジ45aの下側面と軸受部材44との隙間には、予圧バネとしての波型ワッシャー47が配置され、この波型ワッシャー47が軸受部材44の外輪44aを押圧することにより、上方及び下方の両軸受部材44に予圧がかかる構造となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の歯科用ハンドピース40で切削を行うと、歯科処置工具41の軸方向の切削反力がバースリーブ42から軸受部材44に伝達し、この力が上方の軸受部材44から波型ワッシャー47に伝わり、波型ワッシャー47を軸受ケース45のフランジ45aの下側面に密着状態で押し付ける。この後、切削を停止した場合に、軸受部材44の外輪44aがOリング48と外輪44aの摩擦力や付着物の粘性等で、元の位置に戻らず、軸受部材44に充分な予圧がかからない状態になり、軸受部材の寿命の低下や、異音の原因となり易い問題がある。また波型ワッシャー47が、このような密着状態で挟まれて、歯科用ハンドピース40が継続的に使用された場合、波型ワッシャー47の弾力が弱くなり易いという問題がある。
また波型ワッシャー47は、軸受ケース45のフランジ下側面と上方の軸受部材との隙間に挟んで配置するものであるため、部品としての取り扱い時に紛失し易いという問題もある。
【0004】
本発明は従来技術の欠点に着目し、これを解決せんとしたものであり、その課題は、方の軸受部材における外輪の軸方向の動きを抑制して予圧不足が発生せず、予圧バネの弾力が弱くなり難く、組み立て時に部品としての取り扱いが比較的容易である歯科用ハンドピースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、歯科処置工具を受理して着脱自在に保持するバースリーブと、前記バースリーブを回転可能に支承するため前記ローターの上方及び下方に設けられた軸受部材と、上方の軸受部材を保持するための軸受ケースとを含む歯科用ハンドピースにおいて、前記上方の軸受部材の外輪上端部に溝が形成され、前記上方の軸受部材を押圧するための予圧バネに係止爪が形成され、該予圧バネは台座部材を介して該溝に配置されると共に、前記係止爪が溝に係止されたものである歯科用ハンドピースが提供される。
上記構成の歯科用ハンドピースでは、予圧バネが、従来品のように軸受ケースと軸受部材とに挟まれて外輪の軸方向の動きが制限されることによる予圧不足が発生せず、予圧バネも密着状態にならないため、弾力低下が生じ難いものである。また予圧バネは、その係止爪が軸受外輪の溝に係止するものであるため、製造工程における取り扱いが比較的容易である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の歯科用ハンドピースでは、予圧不足が発生し難く、予圧バネの弾力が弱くなり難く、組み立て時に部品としての取り扱いが比較的容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0008】
図1は本発明にかかる歯科用ハンドピース10のヘッド部11の断面図であり、図2は図1を部分的に拡大した断面図である。歯科用ハンドピース10は、歯科処置工具12を着脱自在に保持するバースリーブ13と、圧縮空気によってバースリーブ13を回転駆動するためにバースリーブ13に設けられたローター14と、バースリーブ13を回転可能に支承するためローター14の上方及び下方に設けられた軸受部材15,16とを、ヘッドハウジング17内に備えている。このヘッドハウジング17には上方の軸受部材15を固定するための軸受ケース19が設けられており、この軸受ケース19の外周部がヘッドキャップを兼ねている。また歯科用ハンドピース10には、ローター14に圧縮空気を供給するための給気通路(図示せず)及びローター14に供給された圧縮空気を排出するための排気通路(図示せず)が設けられている。
なお、本実施形態では、エアタービン式歯科用ハンドピースに適用したものを例示したが、本発明は他の駆動方法によるハンドピースにも適用可能である。
【0009】
ここで、前記軸受ケース19の上端には内側へ突出するフランジ19aが形成され、このフランジ19aの下側に、台座部材20及び予圧バネ21を介して、上方の軸受部材15が固定される。台座部材20は平らなワッシャからなり、予圧バネ21は図3(a)(b)に示したように外周に突出した係止爪21aを有するウェーブワッシャからなる。
また軸受部材15は、バースリーブ13の外周面に転がり部材15aを保持する曲面が形成され、ここに配置された転がり部材15aがリテーナー15bで保持され、それらの外周に外輪15cが固定される。この外輪15cは、図2に示したように、上端15dがフランジ19aの下側面に僅かな隙間を取って配置され、上端内側に溝15eが形成されている。溝15eには台座部材20を載せるための載置面15fと、予圧バネ21の係止爪21aを係止させるための凹部15gとが設けられ、予圧バネ21は台座部材20の上に載せられている。
【0010】
以上のように、本発明にかかる歯科用ハンドピース10では、軸受部材15の外輪15cに溝15eが形成され、この溝15eの載置面15fに台座部材20が載せられ、この台座部材20の上に予圧バネ21が配置され、予圧バネ21の係止爪21aを溝15eの凹部15gに係止させるものであるため、これら外輪15cと台座部材20と予圧バネ21とを組み立てた後には、これら部品は分解し難く、製造工程における部品の取り扱いが比較的容易である。
また、予圧バネ21は、台座部材20を介して、軸受部材15の外輪15cと軸受ケース19のフランジ19aとの間に取り付けられたものであるため、一定圧で軸受部材を付勢すると共に、従来品のように予圧バネが軸受ケースと軸受外輪とに挟まれて密着状態にならず、予圧バネ21の弾力低下が生じ難いものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる歯科用ハンドピースの主要部を説明するための断面図である。
【図2】図1の拡大断面図である。
【図3】(a)(b)は、それぞれ図1における予圧バネの平面図及び側面図である。
【図4】従来の歯科用ハンドピースを説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0012】
10 歯科用ハンドピース
12歯科処置工具
13 バースリーブ
14 ローター
15 上方の軸受部材
15c 外輪
15e 溝
19 軸受ケース
19a フランジ
20 台座部材
21 予圧バネ
21a 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科処置工具を受理して着脱自在に保持するバースリーブと、前記バースリーブを回転可能に支承するため前記ローターの上方及び下方に設けられた軸受部材と、上方の軸受部材を保持するための軸受ケースとを含む歯科用ハンドピースにおいて、前記上方の軸受部材の外輪上端部に溝が形成され、前記上方の軸受部材を押圧するための予圧バネに係止爪が形成され、該予圧バネは台座部材を介して該溝に配置されると共に、前記係止爪が溝に係止されたものである歯科用ハンドピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−241(P2007−241A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181801(P2005−181801)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000150327)株式会社ナカニシ (43)
【Fターム(参考)】