説明

気密容器の扉装置

【課題】 気密容器の開口部に設けられたシール部材の耐久性を向上させることが可能な気密容器の扉装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、気密容器の開口部を押圧して閉塞する閉塞位置と、前記開口部を開放する開放位置とに移動可能な扉本体10と、前記扉本体10を前記閉塞位置と前記開放位置とに案内可能な案内枠体2と、前記開口部における前記扉本体10との接触部に設けられたシール部材とを備え、前記案内枠体2が、前記開口部から前記扉本体10を離間させる際には、前記シール部材との間で摺動することなく、前記扉本体10を案内可能な第一案内部と、前記開口部から前記扉本体10が離間した後には、前記開口部に対して略平行に移動するように、前記扉本体10を案内可能な第二案内部とを有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機等の気密容器に用いられる扉装置に関し、詳しくは、気密容器の開口部に設けられたシール部材の耐久性を向上させることが可能な気密容器の扉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾燥機等の気密容器においては、その容器(開口部)の開閉操作を行うために、扉装置が設けられている。そして、この気密容器においては、その開口部を扉装置にて閉塞状態とした際に、容器内の気密状態を適切に保持するために、例えば、扉本体側あるいは気密容器本体側の少なくとも一方に、何等かのシール部材が設けられている。
【0003】
気密容器における扉装置が、昇降式あるいは引戸式である場合には、扉装置の開閉のたびに扉本体が摺動移動するため、扉本体とシール部材、あるいはシール部材同士が接触した状態で移動を繰り返すこととなる。つまり、扉装置の開閉のたびに、シール部材が摩擦を受けることとなるため、シール部材が劣化し、気密容器の気密状態を適切に長期間保持することが困難となる。
【0004】
【特許文献1】特開平1−263381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来技術にかかる扉装置によれば、シール部材の劣化は避け難い。そこで、特許文献1においては、シール部材の劣化による気密状態の低下に対抗するための手段として、シール部材を簡単に交換することができる技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、この特許文献1は、シール部材の劣化という問題を抜本的に解決するものではない。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、気密容器の開口部に設けられたシール部材の耐久性を向上させることが可能な気密容器の扉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる気密容器の扉装置は、上記課題を解決するためになされたものであって、
気密容器の開口部を押圧して閉塞する閉塞位置と、前記開口部を開放する開放位置とに移動可能な扉本体と、
前記扉本体を前記閉塞位置と前記開放位置とに案内可能な案内枠体と、
前記開口部における前記扉本体との接触部に設けられたシール部材とを備え、
前記案内枠体が、
前記開口部から前記扉本体を離間させる際には、前記シール部材との間で摺動することなく、前記扉本体を案内可能な第一案内部と、
前記開口部から前記扉本体が離間した後には、前記開口部に対して略平行に移動するように、前記扉本体を案内可能な第二案内部とを有する
ことを特徴としている。
【0009】
また、本発明にかかる気密容器の扉装置は、
気密容器の開口部を押圧して閉塞する閉塞位置と、前記開口部を開放する開放位置とに移動可能な扉本体と、
前記扉本体を前記閉塞位置と前記開放位置とに案内可能な案内枠体と、
前記開口部における前記扉本体との接触部に設けられたシール部材とを備え、
前記案内枠体が、
前記開口部から前記扉本体を離間させる際には、前記シール部材との間で摺動することなく、前記扉本体を案内可能な第一案内部と、
前記開口部から前記扉本体が離間した後には、前記開口部に対して略平行に移動するように、前記扉本体を案内可能な第二案内部とを有し、
前記扉本体が、第一扉部と第二扉部とを用いて構成され、前記第一扉部にのみ、前記扉本体を移動させるための駆動手段が設けられており、
前記第一扉部が、前記駆動手段によって移動を開始して、前記第一扉部に対応する前記第一案内部を介して前記開口部から離間した後に、前記第一扉部に対応する前記第二案内部を介して前記開口部と略平行に移動し、
前記第二扉部が、前記第一扉部によって移動を開始して、前記第二扉部に対応する前記第一案内部を介して前記開口部から離間した後に、前記第二扉部に対応する前記第二案内部を介して前記開口部と略平行に移動する
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、気密容器の開口部から扉本体を離間させる際には、開口部におけるシール部材との間で摺動することなく、扉本体を案内可能な案内枠体が設けられているため、気密容器の開口部に設けられたシール部材の耐久性を向上させることが可能な気密容器の扉装置を得ることができる。
また、本発明によれば、扉本体が第一扉部と第二扉部とを有するため、上記効果に加えて、装置の小型化も実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる乾燥機1(本発明の「気密容器」に相当)の概略正面図(一部破断図)を示したものである。また、図2は、図1の側面図を示したものである。より具体的には、図2は、図1にかかる乾燥機1を矢視線II方向から見た場合の側面図を示したものである。
【0013】
これらの図に示すように、本実施形態にかかる乾燥機1は、乾燥機1の開口部を開閉可能な扉本体10と、乾燥機1の開口部を押圧して閉塞する閉塞位置と開口部を開放する開放位置とに案内する案内枠体2と、ブレーキ付ギャードモータ3と、扉落下防止装置6と、排気孔7と、循環送風機8と、扉ストッパ13、熱気密板15と、風送り板16と、ヒーター17と、制御盤18と、断熱材19と、ハンドル29等とを用いて構成されている。
【0014】
ここで、排気孔7は、乾燥機1内部機材(乾燥すべき対象物)に付着している水分、臭気、ガス等を乾燥機1の外部に排出すべく機能する。より具体的には、この排気孔7に外部に連通したダクト(図示省略)を結合させて、排気孔7およびダクトを介して、水分、臭気、ガス等を乾燥機1内部から機外へ排出させる。
【0015】
また、循環送風機8は、駆動させ乾燥機1内部の空気を対流させることによって、乾燥機1内部機材(乾燥すべき対象物)の乾燥効率を向上させるべく機能する。
【0016】
また、扉ストッパ13は、可動式のボルト締めになっており、扉11の重量によって防熱パッキン41の弾力性を失わないように、調整可能に構成されている。
【0017】
また、熱気密板15は、扉11および扉12の隙間より、乾燥機1内部の熱気や臭気が外部に漏れ出さないように構成されている。この熱気密板15を設けることによって、乾燥機1内部の温度調節を効率よく行うことができる。
【0018】
また、風送り板16は、循環送風機8から供給される「風」を効率よく且つスムーズに乾燥機1内部のヒーター室に送り込み、乾燥機1内部の空気対流を適切にコントロールして、乾燥効率を高め、均一な乾燥状態を構成すべく機能する。
【0019】
また、ヒーター17は、乾燥機1内部の機材(乾燥すべき対象物)を「風」による対流熱伝達だけではなく、ヒーター熱で機内温度を高めて、より効率的に機材の乾燥時間を短縮し、高効率で乾燥処理を実施すべく機能する。
【0020】
また、制御盤18は、それぞれの電気機器を収納して、乾燥機の手動または自動運転を行うべく、乾燥機1の側面部に設けられている。自動運転および遠隔運転を実施すれば、乾燥機1駆動中において、乾燥機1の近傍は無人化することができる。この制御盤18の扉にはハンドル29が設けられており、制御盤18の扉をスムーズに開閉することが可能であって、手動運転、自動運転、または電気関係機器の保守点検等を容易に行うことができる。
【0021】
また、断熱材19は、乾燥機1内部の熱を外部に漏らさないようにすると共に、乾燥機1外面部の温度上昇を防止すべく設けられている。すなわち、断熱効果による乾燥効率の向上と、乾燥機1外面部の温度上昇を抑えて人体の火傷や火災の発生等を防止するために、設けられている。
【0022】
さて、本実施形態にかかる乾燥機1を構成する扉本体10は、図に示すとおり、下扉11(本発明の「第一扉部」に相当)と上扉12(本発明の「第二扉部」に相当)とを用いて構成されている。そして、この扉本体10と、扉本体10を閉塞位置と開放位置とに案内可能な案内枠体2と、乾燥機1の開口部における扉本体10との接触部に設けられたシール部材(後述する防熱パッキン41)とを用いて、本実施形態にかかる扉装置(本発明の「気密容器の扉装置」に相当)が構成される。
【0023】
図3は、本実施形態にかかる扉装置の作動状態を示す概略図であり、図3(a)は乾燥機1の要部破断図を示し、図3(b)は図3(a)の側面図であって、扉本体10が容器開口部を閉塞した状態を示し(本発明の「閉塞位置」に相当)、図3(c)は扉本体10が移動して容器開口部を開放しつつある状態を示し、図3(d)は扉本体10が容器開口部を開放した状態を示し(本発明の「開放位置」に相当)、図3(e)は扉本体10を図3(b)〜(d)のように移動させ得る、案内枠体2の概略側面図を示している。
【0024】
図4は、本実施形態にかかる案内枠体2を説明するための概略図であって、図4(a)は案内枠体2の概略側面図を示し、図4(b)は案内枠体2の一部分解斜視図を示している。
この図4に示すように、本実施形態にかかる案内枠体2は、レールガイド兼用上部カバー23、レールガイド兼用下部カバー24、上扉上部レールガイド31、上扉スルージグ32、落とし込みジグ33、上扉下部レールガイド34、下扉上部レールガイド35、下扉スルージグ36、落とし込みジグ37、下扉下部レールガイド38、および落とし込みジグ39を用いて構成されている。
【0025】
図5は、図3(a)にかかる乾燥機1を矢視線V方向から見た場合の部分概略破断図を示したものである。
この図5に示すように、案内枠体2は、レール取付ボルト40にて、乾燥機本体に取り付けられている。
【0026】
図6は、図3(a)のVI部の要部拡大図を示したものであって、図6(a)は正面図を示し、図6(b)は図6(a)の側面図を示している。
【0027】
図7は、図3(a)のVII部の要部拡大図を示したものであって、図7(a)は正面図を示し、図7(b)は図7(a)の側面図を示している。
【0028】
図8は、扉本体10を移動させるために用いられるベアリング30近傍に設けられた扉落下防止装置の概略図を示したものであって、図8(a)は上面図(乾燥機1の上面側から見た図)を示し、図8(b)は正面図(乾燥機1の正面側から見た図)を示している。
【0029】
<扉本体の上昇時における作動状態説明>
本実施形態においては、図1、図3(a)、および図3(b)の状態が、扉本体10が乾燥機1の開口部を押圧して乾燥機1内部の気密状態を適切に保持した状態であって、この状態にある場合を「閉塞位置に扉本体10が存在する」という。そして、乾燥機1の開口部を開放する場合には、この閉塞位置から扉本体10の上昇移動が開始される。
【0030】
扉本体10の上昇移動を開始させる場合、まずは、図3(b)の状態で、制御盤18中に設けられた上昇スイッチ(図示省略)を入れる(ONする)。そうすると、ソレノイド45が励磁されて、扉落下防止金具51がソレノイド45側に引き込まれる(図8(b)参照)。この際、リミットスイッチ用ジグ46がリミットスイッチ44のレバーを押し上げることによって、扉本体10が上昇可能な状態となったことが確認される。
【0031】
次に、上記確認と同時に、モータ3(図2参照)の回転駆動(例えば、時計方向の回転駆動)が開始される。
【0032】
このモータ3と、扉本体10を構成する下扉11とは、ワイヤ21によって連結されており、具体的には、Vプーリー22、ワイヤ21、Vアイドラー20、ワイヤ支持用ジグ27を介して、モータ3の駆動力が下扉11に伝わるように構成されている。
【0033】
また、本実施形態においては、このワイヤ支持用ジグ27に近接してアタッチ付ベアリングローラ26が設けられている。1台のブレーキ付ギャードモータ3で扉本体10(下扉11および上扉12)を上下運動させる場合、上扉12は上昇運転の開始時と下降運転の終了直前に横移動をする。そこで、本実施形態においては、このアタッチ付ベアリングローラ26を設け、上記横移動のときに上扉12と下扉11とがこすれるのを防止している。
また、本実施形態においては、ワイヤ21をカバーし、扉本体10が移動する際のレールガイドとして機能する、レールガイド兼用上部カバー23およびレールガイド兼用下部カバー24が設けられている。
【0034】
さて、モータ3と下扉11とは以上のように連結されているため、モータ3の回転駆動が開始されると、扉本体10を構成する下扉11は、案内枠体2に沿って容器開口部から離間した後に、開口部と略平行に上昇を開始する。
具体的には、下扉11がモータ3によって移動を開始して、下扉11に対応する案内枠体2の第一案内部2C,2Dを介して容器開口部から離間する(図3,図4等参照)。つまり、下扉11に設けられているベアリング30C,30Dが、第一案内部2C,2Dに沿って右上方(図4等参照)に移動し、このベアリング30C,30Dと共に下扉11も右上方に移動して開口部から離間するため、容器開口部に設けられている防熱パッキン41(図7等参照)と下扉11とが擦りあわされることはなくなる(下扉11は防熱パッキン41に対して摺動しなくなる)。
【0035】
容器開口部から離間した下扉11は、次いで、各ベアリング30C,30Dが、下扉上部レールガイド35および下扉下部レールガイド38に沿って移動することによって、容器開口部と略平行に上方に移動する。つまり、下扉11に対応する第二案内部2G,2Hを介して容器開口部と略平行に上方に移動する。
【0036】
下扉11がしばらく(例えば、5〜6秒)上昇すると、下扉11の上方端部に設けられたアタッチ付ベアリングローラ26が、上扉12に上方端部に設けられた上扉持ち上げ用ジグ25に接触する。そして、下扉11の上昇に伴って、上扉12も移動を開始する。
具体的には、下扉11から上扉持ち上げ用ジグ25を介して、モータ3の駆動力が上扉12に伝わり、上扉12が、上扉12に対応する案内枠体2の第一案内部2A,2Bを介して容器開口部から離間する(図3,図4等参照)。つまり、上扉12に設けられているベアリング30A,30Bが、第一案内部2A,2Bに沿って右上方(図4等参照)に移動し、このベアリング30A,30Bと共に上扉12も右上方に移動して開口部から離間するため、容器開口部に設けられている防熱パッキン41(図7等参照)と上扉12とが擦りあわされることはなくなる(上扉12は防熱パッキン41に対して摺動しなくなる)。
【0037】
容器開口部から離間した上扉12は、次いで、各ベアリング30A,30Bが、上扉上部レールガイド31および上扉下部レールガイド34に沿って移動することによって、容器開口部と略平行に上方に移動する。つまり、上扉12に対応する第二案内部2E,2Fを介して容器開口部と略平行に上方に移動する。
【0038】
以上のように、下扉11および上扉12(扉本体10)がしばらく(例えば、5〜6秒)上昇すると、扉本体10の上端部が、乾燥機1の上方位置に設けられた上昇限リミットスイッチ5に押すこととなる。この上昇限リミットスイッチ5が押されると、モータ3の駆動が停止し、モータ3の回転停止が確認された後、ソレノイド45が解磁されて、扉落下防止金具51が、スプリング48の付勢力によって、左側に移動して停止する(図8(b)等参照)。すなわち、この扉落下防止金具51がベアリング30の下側に位置することとなって、万が一ワイヤ21が切れた場合であっても、扉の落下を防止することができる。
なお、本実施形態においては、上昇限リミットスイッチ5のさらに上方に、安全のために、非常停止用リミットスイッチ4が設けられている。
【0039】
上記扉落下防止金具51の作動停止までが、扉本体10の上昇工程である。
【0040】
<扉本体の下降時における作動状態説明>
本実施形態においては、図3(d)の状態が、扉本体10が乾燥機1の開口部を開放した状態であって、この状態にある場合を「開放位置に扉本体10が存在する」という。そして、乾燥機1の開口部を閉塞する場合には、この開放位置から扉本体10の下降移動が開始される。
【0041】
扉本体10の下降移動を開始させる場合、まずは、図3(d)の状態で、制御盤18中に設けられた下降スイッチ(図示省略)を入れる(ONする)。そうすると、ソレノイド45が励磁されて、扉落下防止金具51がソレノイド45側に引き込まれる(図8(b)参照)。この際、リミットスイッチ用ジグ46がリミットスイッチ44のレバーを押し上げることによって、扉本体10が下降可能な状態となったことが確認される。
【0042】
次に、上記確認と同時に、モータ3(図2参照)の回転駆動が開始される。この際、例えば、扉本体10上昇時にモータ3が時計方向に回転駆動する構成の場合には、扉本体10下降時には、モータ3は反時計方向に回転駆動させる。
【0043】
さて、モータ3の回転駆動が開始されると、ワイヤ21が送り出されることとなるため、扉本体10を構成する下扉11および上扉12は、その自重によって同時に下降を開始する。具体的には、下扉11が下扉上部レールガイド35に沿って移動し、上扉12が上扉上部レールガイド31に沿って移動する。
【0044】
しばらく(例えば1〜2秒)下降して、上扉12の下側に設けられたベアリング30Bが落とし込みジグ33のところまでくると、特になにも設けられていなければ、ベアリング30Bは乾燥機1の開口部側(第一案内部2A側)へ落とし込まれてしまう。しかしながら、本実施形態においては、この落とし込みジグ33の上部に上扉スルージグ32が設けられている。したがって、本実施形態においては、ベアリング30Bが落とし込みジグ33のところを通過する際には、この上扉スルージグ32によって上扉12が保持されるため、ベアリング30Bが異なる案内部に落とし込まれることはない。
【0045】
上扉スルージグ32によって上扉12を保持した状態で、さらに、上扉12および下扉11の下降が継続されると、上扉12の上側に設けられたベアリング30Aが落とし込みジグ33を有する第一案内部2Aに当接し、上扉12の下側に設けられたベアリング30Bが第一案内部2Bに当接して、上扉12はこれらの第一案内部2A,2Bに沿って、乾燥機1の開口部を押圧して閉塞する位置に落とし込まれる(図3(c)参照)。
【0046】
上扉12が閉塞位置に落とし込まれた後、下扉11については、さらに下扉上部レールガイド35および下扉下部レールガイド38に沿って下降移動が継続される。
この際、下扉11の下側に設けられたベアリング30Dが落とし込みジグ37のとこまでくると、特になにも設けられていなければ、ベアリング30Dは乾燥機1の開口部側(第一案内部2C側)へ落とし込まれてしまう。しかしながら、本実施形態においては、この落とし込みジグ37の上部に下扉スルージグ36が設けられている。したがって、本実施形態においては、ベアリング30Dが落とし込みジグ37のところを通過する際には、この下扉スルージグ36によって下扉11が保持されるため、ベアリング30Dが異なる案内部に落とし込まれることはない。
【0047】
下扉スルージグ36によって下扉11を保持した状態で、さらに、下扉11の下降が継続されると、下扉11の上側に設けられたベアリング30Cが落とし込みジグ37を有する第一案内部2Cに当接し、下扉11の下側に設けられたベアリング30Dが落とし込みジグ39を有する第一案内部2Dに当接して、下扉11はこれらの第一案内部2C,2Dに沿って、乾燥機1の開口部を押圧して閉塞する位置に落とし込まれる(図3(b)参照)。
【0048】
以上のように、下扉11の下側に設けられたベアリング30Dが落とし込みジグ39を有する第一案内部2Dに当接して乾燥機1の開口部側に落とし込まれると、下扉11の下端部が図1に示された下降限リミットスイッチ28の押し、この下降限リミットスイッチ28からの信号に基づき、モータ3の回転駆動が停止される。そして、モータ3の回転停止が確認された後、ソレノイド45が解磁されて、扉落下防止金具51が、スプリング48の付勢力によって、左側に移動して停止する(図8(b)等参照)。
【0049】
上記扉落下防止金具51の作動停止までが、扉本体10の下降工程である。
【0050】
<具体的な作用効果等の説明>
以上説明したように、本実施形態にかかる乾燥機1を構成する扉装置は、乾燥機1の開口部を押圧して閉塞する閉塞位置と、乾燥機1の開口部を開放する開放位置とに移動可能な扉本体10と、扉本体10を閉塞位置と開放位置とに案内可能な案内枠体2と、乾燥機1の開口部における扉本体10との接触部に設けられた防熱パッキン41とを備え、案内枠体2が、乾燥機1の開口部から扉本体10を離間させる際には、防熱パッキン41との間で摺動することなく、扉本体10を案内可能な第一案内部2A,2B,2C,2Dと、乾燥機1の開口部から扉本体10が離間した後には、乾燥機1の開口部に対して略平行に移動するように、扉本体10を案内可能な第二案内部2E,2F,2G,2Hとを有するように構成されている。
【0051】
また、本実施形態にかかる乾燥機1を構成する扉装置は、乾燥機1の開口部を押圧して閉塞する閉塞位置と、乾燥機1の開口部を開放する開放位置とに移動可能な扉本体10と、扉本体10を閉塞位置と開放位置とに案内可能な案内枠体2と、乾燥機1の開口部における扉本体10との接触部に設けられた防熱パッキン41とを備え、案内枠体2が、乾燥機1の開口部から扉本体10を離間させる際には、防熱パッキン41との間で摺動することなく、扉本体10を案内可能な第一案内部2A,2B,2C,2Dと、乾燥機1の開口部から扉本体10が離間した後には、乾燥機1の開口部に対して略平行に移動するように、扉本体10を案内可能な第二案内部2E,2F,2G,2Hとを有し、扉本体10が、下扉11と上扉12とを用いて構成され、下扉11にのみ、扉本体10を移動させるための駆動手段が設けられており(下扉11にのみ、モータ3の駆動力が直接的に伝達されるように構成されており)、下扉11が、モータ3によって移動を開始して、下扉11に対応する第一案内部2C,2Dを介して乾燥機1の開口部から離間した後に、下扉11に対応する第二案内部2G,2Hを介して乾燥機1の開口部と略平行に移動し、上扉12が、下扉11によって移動を開始して、上扉12に対応する第一案内部2A,2Bを介して乾燥機1の開口部から離間した後に、上扉12に対応する第二案内部2E,2Fを介して乾燥機1の開口部と略平行に移動するように構成されている。
【0052】
本実施形態にかかる扉装置は、以上のように構成され、乾燥機1の開口部を閉塞する閉塞位置から開口部を開放する開放位置に移動する際には扉本体10が上昇し、開放位置から閉塞位置に移動する際には扉本体10が下降する。
また、この上下動の際には、各扉11,12がそれぞれに対応した第一案内部2A,2B,2C,2Dを介して容器開口部に設けられた防熱パッキン41(本発明の「シール部材」に相当)に接離(接触・離脱)する。したがって、本実施形態によれば、扉本体10と防熱パッキン41とが擦れあうことがないため、防熱パッキン41の磨耗を防ぎ、防熱パッキン41の耐久性を向上させることができる。
さらに、本実施形態によれば、扉本体10で乾燥機1開口部を閉塞状態とした際、開口部に設けられた防熱パッキン41は扉本体10の自重によって押さえ込まれることとなる。したがって、仮に防熱パッキン41の弾力がなくなってきて、その厚みが薄くなった場合であっても、自重によって押さえ込む扉本体10を有するため、効果的に容器の気密性を確保することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、扉本体10を下扉11と上扉12とを用いて構成しているため、開放時においては、図3(d)に示すように、2枚の扉11,12を重ね合わせて、その収納スペースを縮小することが可能となっている。したがって、本実施形態によれば、乾燥機1等の気密容器の小型化を実現可能となって、天井の低い工場や室内での設置が可能となる。
【0054】
また、本実施形態においては、上扉12に上扉持ち上げ用ジグ25を設け、このジグ25に下扉11を接触させることによって、上扉12が下扉11によって上下動可能に構成されている。すなわち、本実施形態によれば、このような構成とすることにより、一台のモータ3を用いて二つの扉11,12を巻き上げ巻き下げすることができる。
【0055】
また、本実施形態においては、図8に示したような扉落下防止装置6が設けられているため、作業中または修理中において、扉の落下による怪我や事故を適切に防止することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、図1等に示したように、キャスタ14が設けられているため、乾燥機1の設置場所を比較的自由に選択することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、図1等に示したように、レベルアジャスタ61が設けられているため、乾燥機1を適切な水平状態に保って設置可能となる。したがって、乾燥機1本体のひずみや扉等のひずみ等をなくし、乾燥機1内部の傾きによる破損事故やその他のずれ込み事故等を防止することができる。
【0058】
また、本実施形態においては、扉本体10が上下開閉方式であるため、一般の引戸式扉や観音型扉等に比べて、前面および左右にスペースをとることなく、乾燥機1を構成することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0060】
そこで、本実施形態においては、扉本体10をワイヤ21によって上下動させる構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。したがって、例えば、このワイヤ21をチェーンに、モータに連接されているVプーリー22をスプロケット(歯車)に、さらにVアイドラー20をスプロケット(歯車)に換えて、扉本体10を上下動させる機構を構成してもよい。このような構成であれば、さらに、安全性を高めることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態においては、制御盤18に設けられたスイッチを用いて扉本体10を上下動させる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。したがって、例えば、この扉本体10の上下動運転は、遠隔操作装置を用いて、乾燥機1から離れた場所からでも操作可能であるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態にかかる乾燥機の概略正面図を示したものである。
【図2】図1にかかる乾燥機1を矢視線II方向から見た場合の側面図を示したものである。
【図3】本実施形態にかかる扉装置の作動状態を示す概略図であり、図3(a)は乾燥機の要部破断図を示し、図3(b)は図3(a)の側面図であって、扉本体が容器開口部を閉塞した状態を示し、図3(c)は扉本体が移動して容器開口部を開放しつつある状態を示し、図3(d)は扉本体が容器開口部を開放した状態を示し、図3(e)は扉本体を図3(b)〜(d)のように移動させ得る、案内枠体の概略側面図を示している。
【図4】本実施形態にかかる案内枠体を説明するための概略図であって、図4(a)は案内枠体の概略側面図を示し、図4(b)は案内枠体の一部分解斜視図を示している。
【図5】図3(a)にかかる乾燥機を矢視線V方向から見た場合の部分概略破断図を示したものである。
【図6】図3(a)のVI部の要部拡大図を示したものであって、図6(a)は正面図を示し、図6(b)は図6(a)の側面図を示している。
【図7】図3(a)のVII部の要部拡大図を示したものであって、図7(a)は正面図を示し、図7(b)は図7(a)の側面図を示している。
【図8】扉本体を移動させるために用いられるベアリング近傍に設けられた扉落下防止装置の概略図を示したものであって、図8(a)は上面図を示し、図8(b)は正面図を示している。
【符号の説明】
【0063】
1…乾燥機
2…案内枠体
2A,2B,2C,2D…第一案内部
2E,2F,2G,2H…第二案内部
3…ブレーキ付ギャードモータ
4…非常停止用リミットスイッチ
5…扉上昇限リミットスイッチ
6…扉落下防止装置
7…排気孔、8…循環送風機、9…吊環
10…扉本体、11…下扉、12…上扉、13…扉ストッパ
14…キャスタ、15…熱気密板、16…風送り板、17…ヒーター、18…制御盤、19…断熱材
20…Vアイドラー、21…ワイヤ、22…Vプーリー
23…レールガイド兼用上部カバー
24…レールガイド兼用下部カバー
25…上扉持ち上げ用ジグ
26…アタッチ付ベアリングローラ
27…ワイヤ支持用ジグ
28…下降限リミットスイッチ
29…ハンドル
30…ベアリング
31…上扉上部レールガイド
32…上扉スルージグ
33…落とし込みジグ
34…上扉下部レールガイド
35…下扉上部レールガイド
36…下扉スルージグ
37…落とし込みジグ
38…下扉下部レールガイド
39…落とし込みジグ
40…レール取付ボルト
41…防熱パッキン
42…ワイヤ止金具
44…リミットスイッチ
45…ソレノイド
46…リミットスイッチ用ジグ
48…スプリング
51…扉落下防止金具、
52…扉落下防止金具ガイド
53…ソレノイド鉄芯
61…レベルアジャスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密容器の開口部を押圧して閉塞する閉塞位置と、前記開口部を開放する開放位置とに移動可能な扉本体と、
前記扉本体を前記閉塞位置と前記開放位置とに案内可能な案内枠体と、
前記開口部における前記扉本体との接触部に設けられたシール部材とを備え、
前記案内枠体が、
前記開口部から前記扉本体を離間させる際には、前記シール部材との間で摺動することなく、前記扉本体を案内可能な第一案内部と、
前記開口部から前記扉本体が離間した後には、前記開口部に対して略平行に移動するように、前記扉本体を案内可能な第二案内部とを有する
ことを特徴とする気密容器の扉装置。
【請求項2】
気密容器の開口部を押圧して閉塞する閉塞位置と、前記開口部を開放する開放位置とに移動可能な扉本体と、
前記扉本体を前記閉塞位置と前記開放位置とに案内可能な案内枠体と、
前記開口部における前記扉本体との接触部に設けられたシール部材とを備え、
前記案内枠体が、
前記開口部から前記扉本体を離間させる際には、前記シール部材との間で摺動することなく、前記扉本体を案内可能な第一案内部と、
前記開口部から前記扉本体が離間した後には、前記開口部に対して略平行に移動するように、前記扉本体を案内可能な第二案内部とを有し、
前記扉本体が、第一扉部と第二扉部とを用いて構成され、前記第一扉部にのみ、前記扉本体を移動させるための駆動手段が設けられており、
前記第一扉部が、前記駆動手段によって移動を開始して、前記第一扉部に対応する前記第一案内部を介して前記開口部から離間した後に、前記第一扉部に対応する前記第二案内部を介して前記開口部と略平行に移動し、
前記第二扉部が、前記第一扉部によって移動を開始して、前記第二扉部に対応する前記第一案内部を介して前記開口部から離間した後に、前記第二扉部に対応する前記第二案内部を介して前記開口部と略平行に移動する
ことを特徴とする気密容器の扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−176980(P2006−176980A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369455(P2004−369455)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(504468632)
【Fターム(参考)】