気密性耐圧容器およびその製造方法
【課題】超音波溶着法により、外観上の問題を伴うことなく、十分な耐圧強度を有する気密性に優れた気密性耐圧容器およびその製造方法の提供を目的とする。特に超音波溶着を適用し難い樹脂として知られているポリプロピレン樹脂を用いた気密性耐圧容器およびその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】気密性耐圧容器1の筒状蓋体3は、超音波溶着後の筒状ハウジング2の開口部端面2aと超音波溶着時の溶着ホーン当接面3eとの距離より筒状蓋体3の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部3dが形成されている。
【解決手段】気密性耐圧容器1の筒状蓋体3は、超音波溶着後の筒状ハウジング2の開口部端面2aと超音波溶着時の溶着ホーン当接面3eとの距離より筒状蓋体3の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部3dが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密性耐圧容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野および浄水器分野においては、内部に活性炭や中空糸などのろ過材を充填した中空成形品がカートリッジ容器として用いられている。
従来、同様のカートリッジ容器であるトナー容器など、射出成形等では得られにくい形状の樹脂成形品に、接着剤を使用しない超音波溶着を用いた接合方法が採用されている。
例えば、中空糸モジュールで、従来のネジとO−リングによる方法、また超音波溶着による方法の問題点を解決するべく、ネジ止めと超音波溶着を組み合わせた方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、ねじ部の成形やO−リング部材の追加など部品点数が増加するため製造コストが多大になるという問題がある。
また、ハウジングを蓋体で閉塞する容器では、従来からネジ式の接着方法が用いられている。しかし、ネジ式では使用時に緩むなどの問題があり、また、大量生産の観点からも非効率なため、超音波溶着が開示されている(特許文献2)。しかしながら、ここで用いられる超音波溶着時の溶着形状はエネルギーダイレクター方式であり、凹凸嵌合形状の底面部の当接部が起点となり溶融するために結晶性樹脂の場合は、溶着時の溶融が不安定であり、結晶固化のために溶融嵌合部分に充填されにくく、気密漏れなどの問題が生じるという問題がある。仮に気密性が確保できたとしても安定な品質で生産することが困難である。
【0003】
また、一方が凸形状で、他方がその凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有し、かつ凸形状の凸部先端幅が凹形状の凹部底面幅よりも広い形状で嵌合されつつ超音波溶着されてなる円筒トナー容器が開示されている(特許文献3)。また、溶着形状として溶着受け凹部とそれに対応する凸部を設けることにより、溶着状態が良好となるキャップが開示されている(特許文献4)。
しかし、耐圧強度が必要である場合、不均一に溶着されていると耐圧の応力集中が起こるので、均一に溶着されている必要がある。そのため、単純な凹凸形状だけでは、気密性は得られるが、均一な溶着ができないために十分な耐圧強度が得られないという問題があった。また、無理に耐圧強度を確保するために超音波溶着の際に過大なるエネルギーを与えると、溶着ホーンが当接する部分に傷や破損を生じ、製品外観を損なうという問題も発生していた。
【0004】
医療分野および浄水器分野におけるカートリッジ容器は、内容物が液体であること、内圧が高くなっても液漏れが許されないこと等から、特に高い気密性および耐圧強度が要求されている。また、カートリッジ容器に用いられる樹脂材料は機械的強度、非汚染性に優れていることなどからポリプロピレン樹脂が用いられる場合がある。
このポリプロピレン樹脂は、比較的硬度が低いことから、樹脂の軟らかさが振動を吸収するために超音波振動が十分に伝達されずに超音波溶着が不十分となる。また、ポリプロピレン樹脂は結晶性樹脂であり、超音波振動による摩擦熱により部分的な溶融(結晶部の溶融)を生じることで、更に超音波振動の伝達が妨げられる。そのため、ポリプロピレン樹脂は、超音波溶着が困難であり、気密性・機械的強度・寸法精度・外観形状などの品質を維持することが困難であり、超音波溶着を行なう場合には過大な超音波振動エネルギー出力が必要となる。このため、前述した製品外観を確保した上で、製品に求められる耐圧強度を実現することは特に困難であった。
【0005】
これらの問題を解決するために、円筒容器に取り付けられる円筒形状の蓋材に当接する溶着ホーン面の、蓋材を側断面から見たときの高さが、蓋材中心方向に向けて高くなるようテーパ角が形成されている技術が知られている(特許文献5)。
しかし、特許文献5に記載の技術は、超音波による振動エネルギーを効率的に溶着部分に伝達させる手段であり、高い気密性を有する耐圧品質が安定するものではない。
また、超音波による振動エネルギーを十分に溶着部分に伝達させるために、溶着ホーン当接部分と溶着部分との距離を短くする方法(特許文献6)、振動エネルギーを集中させて溶着する方法(特許文献7)等がある。
しかし、特許文献6および特許文献7に記載の技術は、特許文献5に記載の技術と同様、超音波による振動エネルギーを効率的に被溶着部分に伝達させる手段であり、高い気密性を有する耐圧容器の品質が安定するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−181420号公報
【特許文献2】特開2008−238437号公報
【特許文献3】特許第3965458号公報
【特許文献4】特許第3921879号公報
【特許文献5】特開2008−104843号公報
【特許文献6】特開2003−137205号公報
【特許文献7】特許3632884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、超音波溶着法により、気密性、外観性に優れた耐圧容器およびその製造方法の提供を目的とする。特に超音波溶着を適用するのが困難な樹脂として知られているポリプロピレン樹脂を用いた気密性耐圧容器およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の気密性耐圧容器は、少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジングの該開口部を筒状蓋体で超音波溶着してなる。気密性耐圧容器における、容器の上記筒状蓋体が、超音波溶着時に、上記筒状ハウジングの開口部端面と超音波溶着時の筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より上記筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されており、上記筒状ハウジングと上記筒状蓋体との溶着が上記筒状ハウジングの開口部端面全周にわたりなされており、上記筒状ハウジングおよび筒状蓋体が結晶性を有する熱可塑性樹脂の成形体であることを特徴とする。
また、上記超音波溶着される溶着部の径方向断面は、一方が凸形状で、他方が上記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ上記凸形状の凸部先端面幅が上記凹形状の凹部底面幅よりも広い形状であり、上記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有することを特徴とする。
【0009】
更には、本発明の気密性耐圧容器の筒状蓋体の天板厚さを超える距離を有する立上り部が3.35mm以上であることを特徴とする。超音波溶着を用いた従来技術において、溶着部分の十分な接合強度を安定して得るために溶着部が溶融するのに十分な振動エネルギーを溶着部に伝達させる必要がある。溶着ホーンと溶着部の距離が長くなると、溶着ホーンで発生した超音波振動が、溶着部に到達するまでに減衰し、十分な振動を溶着部分に伝達できないため、通常は溶着ホーンと溶着部の距離は可能な限り短くすることが通例である。しかし、本発明者らは鋭意検討の結果、前述の立上り部分を製品構造に付与し、溶着ホーンと溶着部の距離が長くても十分な超音波振動エネルギーを加えることによって、外観を損なうことなく、気密性に優れた十分な耐圧強度を有する気密性耐圧容器が実現可能であることを見出した。
また、上記筒状ハウジングは、超音波溶着時の溶着受け治具に当接されるフランジ部を有し、該フランジ部の溶着受け治具が当接する面と反対の面に上記筒状蓋体が溶着されることを特徴とする。
また、気密性耐圧容器を形成する結晶性を有する熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であることを特徴とする。
【0010】
本発明の気密性耐圧容器の製造方法は、少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジングを成形する工程と、この筒状ハウジングの開口部を閉塞する筒状蓋体を成形する工程と、上記筒状ハウジングと上記筒状蓋体とを超音波振動によって相互に溶着する超音波溶着工程とを備え、
上記筒状蓋体は、超音波溶着時に、上記筒状ハウジングの開口部端面と超音波溶着時の筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されており、
上記超音波溶着される溶着部の径方向断面は、一方が凸形状で、他方が上記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ上記凸形状の凸部先端面幅が上記凹形状の凹部底面幅よりも大きい形状であり、上記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有しており、
上記超音波溶着工程は、上記筒状蓋体外周縁上面に円筒状の溶着ホーンを当接させて、上記ハウジングと上記筒状蓋体との溶着が上記筒状ハウジングの開口部端面全周にわたり溶着される工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の気密性耐圧容器は、超音波溶着時に、筒状ハウジングの開口部端面と超音波溶着時の筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されているので、ハウジングの開口部端面全周にわたって溶着部の溶着バラツキを少なくすることができ、かつ溶着ホーンとの当接面に傷・破損なく溶着することができる。そのため、ハウジングおよび蓋体が結晶性を有する熱可塑性樹脂であっても、気密性・外観性に優れた耐圧容器が得られる。
本発明の製造方法は、溶着部の溶着バラツキを少なくすることができ、かつ溶着ホーンとの当接面に傷・破損なく溶着することができるので、気密性に優れた耐圧容器を歩留まりよく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】気密性耐圧容器の断面図である。
【図2】円筒ハウジング蓋体の立上り部の長さが長い場合の溶着部の部分断面図である。
【図3】円筒ハウジング蓋体の立上り部の長さが短い場合の溶着部の部分断面図である。
【図4】角形ハウジング蓋体の立上り部の長さが長い場合の溶着部の部分断面図である。
【図5】円筒ハウジング蓋体の立上り部の長さがより長い場合の溶着部の部分断面図である。
【図6】円筒ハウジング蓋体の筒状蓋体3側に凹部を設けた場合の溶着部の部分断面図である。
【図7】円筒ハウジング蓋体の従来例の溶着部の部分断面図である。
【図8】図2における溶着部断面図を示す図である。
【図9】図8における溶着部の超音波溶着前の状態を表す断面図である。
【図10】図2における他の溶着部断面図を示す図である。
【図11】図10における溶着部の超音波溶着前の状態を表す断面図である。
【図12】フランジを有する蓋体の部分断面図である。
【図13】天板の上方に配置されて蓋体の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の気密性耐圧容器を、血液浄化あるいは水浄化に用いられるフィルターを収容する円筒状容器に適用した例に基づき、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態により得られる気密性耐圧容器の断面図である。なお、図1において、液体の注入口および排出口は省略してある。
図1に示すように、気密性耐圧容器1は、樹脂成形体である開口部をその一端に有する筒状ハウジング2と、この筒状ハウジング2を閉塞する筒状蓋体3とで構成される。筒状ハウジング2と筒状蓋体3とは溶着部4で円筒状の溶着ホーン6により超音波溶着される。
【0014】
図1において、筒状ハウジング2は開口部が1つの形状であるが、底部に開口部を設けて両開口部を筒状蓋体3で閉塞する構造であってもよい。筒状ハウジング2と筒状蓋体3とはそれぞれの外周縁上に形成される凹凸部からなる溶着部4により溶着される。
【0015】
筒状蓋体3は、天板3aに筒体3bが一体の樹脂成形体として形成されている。筒状蓋体3の外周縁角部3cの径方向断面が逆L字型であり、好ましくは径方向断面が直角になっている。
筒状蓋体3の天板形状は、断面図でみて、平板形状、蓋体中心に向かって段差形状になる平板段差形状、蓋体中心に向かって円弧を描く円錐形状等を使用することができる。
また、筒体3bは、例えば図12に示すようにフランジ5aを有するように配置されていてもよく、図13に示すように天板3aの上方に配置されていてもよい。
【0016】
筒状蓋体3には立上り部3dが形成されている(図1参照)。立上り部3dの長さは、超音波溶着が完了した後の筒状ハウジング2の開口部端面2aと超音波溶着時における筒状蓋体3の溶着ホーン当接面3eとの距離t1より、上記筒状蓋体の溶着ホーン当接面3eでの天板厚さt2を差し引いた距離となる長さ部分(t1−t2)である。
従来の溶着方法においては、超音波による振動エネルギーを効率的に被溶着部分に伝達させる必要があるため、図7に示すように、溶着ホーンと当接する部品である筒状蓋体3について立ち上がり部を有しない形状設計でなされている。この従来例に対して、本発明では、従来の溶着思想では振動エネルギーが分散し効率的に伝達させることができないと考えられていた立ち上がり部を設けることで、気密性・外観性に優れた耐圧容器を得ることができたものである。
図7に示す立上り部3dの長さが0の場合、すなわち上記長さt1がt2と同一である場合、筒状ハウジング2の開口部端面全周にわたる溶着が均一になされないため、耐圧強度に劣ることが分かった。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0017】
溶着時に凸部を形成する筒状蓋体3の外周にフランジ5a、または同凹部を形成する筒状ハウジング2の外周にフランジ5bなどのフランジ5を設けることができる(図1、図2参照)。
特に筒状ハウジング2の外周に設けられるフランジ5bは、超音波溶着時の溶着受け治具6’に当接され、このフランジ部の溶着受け治具6’が当接する面と反対の面に筒状蓋体3が溶着される。
なお、本発明は、溶着受け治具6’を筒状ハウジング2の底面2hに当接させ、超音波溶着することもできる。
【0018】
通常、超音波伝達の減衰が考えられるため、溶着ホーンの当接部から溶着部までの距離を3.35mm未満にすることが超音波溶着法では一般的であり、溶着ホーンの当接部から溶着部までの距離は短いほどよいとされる。これに対して、本発明は、一般的な射出成形などを想定した天板厚さt2を3mmと仮定して考慮すると、立上り部3dの長さ(t1−t2)は、具体的に3.35mm以上であることが好ましい。これ以下の長さであると、立上り部の効果を受けにくい。ポリプロピレン樹脂などの結晶性を有する熱可塑性樹脂は3.35mm以上になると同一樹脂同士の溶着が困難になるが、本発明形状で溶着することにより、筒状ハウジング2の開口部全周にわたり均一な溶着が可能になる。
立上り部3dの長さ(t1−t2)のより好ましい範囲は、2.35mm〜50.0mmである。また、さらにより好ましい範囲は、3.35〜11.0mmである。
【0019】
筒状ハウジング2と筒状蓋体3とは溶着部4において、それぞれの開口部に形成された凹部または凸部をそれぞれ嵌合して筒状蓋体3の上面3e部分に円筒状溶着ホーン6を、フランジ5b部分に溶着受け治具6’をそれぞれ当接させて超音波溶着することにより、筒状ハウジング2と筒状蓋体3とが溶着される。
本発明において、筒状ハウジング2または筒状蓋体3の溶着部に形成される凹部は、それぞれの外周面からフランジ状に突出させて形成することが優れた気密性・耐圧性を維持することができるので好ましい。
【0020】
溶着部における溶着時の部分断面図を図2〜図6に示す。また、従来例の部分断面図を図7に示す。図2〜図7において、筒状蓋体3または筒状ハウジング2はフランジ5を有しており、また、各図は溶着後の状態を示す。
図2は、立上り部3dの長さが比較的長い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。
図3は、立上り部3dの長さが比較的短い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。
図4は、立上り部3dの長さが比較的長い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は角形である。
図5は、立上り部3dの長さが図2に示す立上り部3dの長さより長い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。
図6は、立上り部3dの長さが比較的長い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凹部を、筒状ハウジング2側に凸部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。
図7は、立上り部を有さない従来の断面図であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。溶着後に筒状ハウジングの開口部面2aと筒状蓋体3の下面3kとは密接する。このため、立上り部の長さは0になる。
【0021】
気密性耐圧容器1の溶着部4の詳細例を図8および図9により説明する。図8は図2における溶着部断面図を、図9は図8における溶着部4の超音波溶着前の状態を表す断面図をそれぞれ示す。
図8に示すように、超音波溶着される溶着部4は、筒状蓋体の筒体3b先端部が凸部を形成し、ハウジング2の溶着部断面が凹部を形成しており、相互に嵌合できる形状をしている。また、図9に示すように、筒体3bの凸部先端幅Dがハウジング2の凹部底面幅d2よりも大きい形状である。詳細には、ハウジング2の凹部2bが、内側面2dおよび2cと、凹部底面2fとから構成され、内側面2dに凹部の上部内幅d1を狭くする方向の傾斜面2gを有している。傾斜面2gを有する凹部2bに凸部3bを嵌合して超音波振動を印加することにより、接触部における変形歪の発熱が凸部3bの先端面3fのエッジ部3hと、凹部2bの傾斜面2gを起点として、側面3'gと2'gとで発生する。
【0022】
傾斜面2gの形状としては、凹部の内幅d1が底面2f方向に向かって狭くなる形状で、図8に示す角度αが、30°〜90°の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、角度αが45°の場合である。
【0023】
凸部3bの形状は、その径方向の先端幅Dを凹部の上部内幅d1よりも約0.05mmのクリアランスをもたせた形状とすることが好ましい。該形状とすることにより、溶着振動をかける前に嵌合先端部の凹凸を誘い込ませて筒状蓋体3とハウジング2とを押えて変形などを矯正させることができる。その押えを保持しながら溶着振動をかけることによって全周を均一に溶着することが可能となる。
また、傾斜面2gは内側面2dまたは内側面2cの片側面、あるいは内側面2dおよび内側面2cの両側面にあってもよい。
【0024】
気密性耐圧容器1の溶着部4の他の詳細例を図10および図11により説明する。図10は図2における他の溶着部断面図を、図11は図10における溶着部4の超音波溶着前の状態を表す断面図をそれぞれ示す。
この溶着部4の他の例は、凸部3bの凸部先端面3fの幅Dと凹形状2bの凹部幅d1とは上記クリアランスを持たせた形状である。凸部3bの側面3gの少なくとも一方の側面は、凸部の上方の幅d2を凸部先端面幅Dよりも広くする方向の傾斜面3iを有する。また、ハウジング2の凹部2bの内側面2dに傾斜面を有していない以外は図8および図9に示す溶着部4と同一である。凸部3bの長さd3と凹部2bの深さd4との関係、および傾斜面3iの傾斜角度も図8および図9に示す例と同一である。また、超音波振動による発熱過程も略同一である。
【0025】
本発明の気密性耐圧容器を構成する樹脂材料としては、溶着が可能な結晶性を有する熱可塑性樹脂であれば任意の樹脂材料を使用でき、樹脂接合体の用途に応じて適宜決定できる。
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。
これらの中で、気密性耐圧容器としての機械的強度に優れるポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0026】
各樹脂材料は、相溶性があるものであれば2種以上の混合物として用いることができる。また、上記各樹脂材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で各種強化材、添加剤等の充填材を含有させて用いることができる。
【0027】
次に気密性耐圧容器の製造方法について上記各図を参照して説明する。
(1)結晶性を有する熱可塑性樹脂を用いて、少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジング2を成形する。同様に、ハウジングの開口部を閉塞する筒状蓋体3を成形する。ハウジング2の開口部上端および筒状蓋体3の先端部には図2〜図6に示す凹凸形状を設けておく。
(2)ハウジング2および筒状蓋体3に形成された凹凸形状を相互に嵌合させ、筒状蓋体3の外周縁上面およびハウジング2に設けられたフランジ5bの下面に円筒状の溶着ホーン6をそれぞれ当接させて超音波振動を発生させながら加圧入する。この工程により、ハウジング2と筒状蓋体3との溶着が筒状ハウジングの全周にわたり、主としてそれぞれに形成された凸型の側面と凹型の側面とで超音波溶着がなされる。
【0028】
上記では円筒状の気密性耐圧容器を例に挙げ、円筒部材の両端部おいて、溶着部を周状に形成する場合について説明したが、本発明の気密性耐圧容器の製造方法は、筒状体であれば、円筒状に限らず、楕円体であっても、異形円体であっても、多角形体であっても適用できる。
【実施例】
【0029】
実施例1
図2に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内径66mmφ、肉厚3mm、高さ76mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒状ハウジングを射出成形した。開口端部の凹部は内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有して形成した。
また、図2に断面形状を示す、内径72mmφ、肉厚3mm、立上り部の高さ6mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有する筒状蓋体を射出成形した。
ハウジングの全周に形成される凸部の幅は3mm、凹部の深さは3mm、幅は2.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。
超音波溶着は、日本ヒューチャア製 W5185(8000W)を使用して、周波数15kHz、振幅80μm、圧力100KPa、溶着時間1.0秒の条件にて溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、接合部の隙間および傷の有無による外観を目視で確認した。隙間および傷が見られた場合を×、見られない場合を○とした。また以下の耐圧試験に供した。結果を表1に示す。なお、表1において、溶着ホーンまでの距離は、溶着後の(立上り部の高さ+蓋体の肉厚)を表す。
【0030】
耐圧試験
得られた気密性耐圧容器の筒状蓋体の中央部にあけた穴より水を投入し、0MPaから0.1MPaステップにて圧力を上げる。各圧力に達した後、5分間その圧力を保持し破壊水漏れがなければ、さらに圧力を上昇させる。気密性耐圧容器が水圧により破壊され水漏れが発生する圧力を測定した。結果を表1に示す。
なお、表1に示される「○○Mpaで破壊しない」とは、現行試験設備にてそれ以上加圧すると破壊力が大きくなり過ぎるため、それ以上の加圧をしないで、その圧力が5分間保持できることを確認後、耐圧試験を中断したものである。
【0031】
実施例2
図3に断面形状を示す、立上り部の高さが3.35mmの筒状蓋体を用いる以外は、実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
図4に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内寸法が縦70mm×横130mm×高さ135mmで、肉厚5mmのポリプロピレン樹脂成形体である角型のハウジングを射出成形した。開口端部の凹部は内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有して形成した。
また、図4に断面形状を示す、内寸法が縦80mm×横140mmで、肉厚5mm、立上り部の高さ11mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有する角型蓋体を射出成形した。
角型ハウジングの全周に形成される凸部の幅は5mm、凹部の深さは5mm、幅は4.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。超音波溶着は、日本ヒューチャア製 W5185(8000W)を使用して、周波数15kHz、振幅80μm、圧力600KPa、溶着時間1.0秒の条件にて溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
実施例4
図5に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内径150mmφ、肉厚5mm、高さ140mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒状ハウジングを射出成形した。開口端部の凹部は内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有して形成した。
また、図5に断面形状を示す、立上り部の高さ11mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有する円型蓋体を射出成形した。
円型ハウジングの全周に形成される凸部の幅は5mm、凹部の深さは5mm、幅は4.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。実施例3と同様の条件で超音波溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例5
図6に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内径66mmφ、肉厚3mm、高さ76mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒状ハウジングを射出成形した。
また、図6に断面形状を示す、内径66mmφ、肉厚3mm、立上り部の高さ8mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有して、かつ外周部に凹部を有する筒状蓋体を射出成形した。開口端部は上面幅を狭くする方向の傾斜面を有する凸部を成形した。筒状蓋体の全周に形成される凸部の幅は3mm、凹部の深さは3mm、幅は2.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
図7に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内径66mmφ、肉厚3mm、高さ76mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒状ハウジングを射出成形した。開口端部の凹部は内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有して形成した。
また、図7に断面形状を示す、外径84mmφ、肉厚3mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有さない筒状蓋体を射出成形した。
ハウジングの全周に形成される凸部の幅は3mm、凹部の深さは3mm、幅は2.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
溶着条件を、日本ヒューチャア製 W5185(8000W)を使用して、周波数15kHz、振幅80μm、圧力600KPa、溶着時間1.0秒の条件とする以外は、比較例1と同一の製造条件、方法で気密性耐圧容器を得た。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示すように、各実施例は、立上り部を有することで、外観に優れ、耐圧は向上した。特に同寸法である実施例1、2および4は、比較例1に比較して約2倍となる耐圧性に優れたポリプロピレン樹脂製の気密性耐圧容器が得られた。これに対して、比較例2では、外観に傷が発生し、製品上使用できるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の気密性耐圧容器は、ポリプロピレン樹脂製であっても、気密性と耐圧性に優れるので、ろ過材を充填したカートリッジ容器として医療分野および浄水器分野に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 気密性耐圧容器
2 筒状ハウジング
3 筒状蓋体
4 溶着部
5 フランジ
6 溶着ホーン
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密性耐圧容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野および浄水器分野においては、内部に活性炭や中空糸などのろ過材を充填した中空成形品がカートリッジ容器として用いられている。
従来、同様のカートリッジ容器であるトナー容器など、射出成形等では得られにくい形状の樹脂成形品に、接着剤を使用しない超音波溶着を用いた接合方法が採用されている。
例えば、中空糸モジュールで、従来のネジとO−リングによる方法、また超音波溶着による方法の問題点を解決するべく、ネジ止めと超音波溶着を組み合わせた方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、ねじ部の成形やO−リング部材の追加など部品点数が増加するため製造コストが多大になるという問題がある。
また、ハウジングを蓋体で閉塞する容器では、従来からネジ式の接着方法が用いられている。しかし、ネジ式では使用時に緩むなどの問題があり、また、大量生産の観点からも非効率なため、超音波溶着が開示されている(特許文献2)。しかしながら、ここで用いられる超音波溶着時の溶着形状はエネルギーダイレクター方式であり、凹凸嵌合形状の底面部の当接部が起点となり溶融するために結晶性樹脂の場合は、溶着時の溶融が不安定であり、結晶固化のために溶融嵌合部分に充填されにくく、気密漏れなどの問題が生じるという問題がある。仮に気密性が確保できたとしても安定な品質で生産することが困難である。
【0003】
また、一方が凸形状で、他方がその凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有し、かつ凸形状の凸部先端幅が凹形状の凹部底面幅よりも広い形状で嵌合されつつ超音波溶着されてなる円筒トナー容器が開示されている(特許文献3)。また、溶着形状として溶着受け凹部とそれに対応する凸部を設けることにより、溶着状態が良好となるキャップが開示されている(特許文献4)。
しかし、耐圧強度が必要である場合、不均一に溶着されていると耐圧の応力集中が起こるので、均一に溶着されている必要がある。そのため、単純な凹凸形状だけでは、気密性は得られるが、均一な溶着ができないために十分な耐圧強度が得られないという問題があった。また、無理に耐圧強度を確保するために超音波溶着の際に過大なるエネルギーを与えると、溶着ホーンが当接する部分に傷や破損を生じ、製品外観を損なうという問題も発生していた。
【0004】
医療分野および浄水器分野におけるカートリッジ容器は、内容物が液体であること、内圧が高くなっても液漏れが許されないこと等から、特に高い気密性および耐圧強度が要求されている。また、カートリッジ容器に用いられる樹脂材料は機械的強度、非汚染性に優れていることなどからポリプロピレン樹脂が用いられる場合がある。
このポリプロピレン樹脂は、比較的硬度が低いことから、樹脂の軟らかさが振動を吸収するために超音波振動が十分に伝達されずに超音波溶着が不十分となる。また、ポリプロピレン樹脂は結晶性樹脂であり、超音波振動による摩擦熱により部分的な溶融(結晶部の溶融)を生じることで、更に超音波振動の伝達が妨げられる。そのため、ポリプロピレン樹脂は、超音波溶着が困難であり、気密性・機械的強度・寸法精度・外観形状などの品質を維持することが困難であり、超音波溶着を行なう場合には過大な超音波振動エネルギー出力が必要となる。このため、前述した製品外観を確保した上で、製品に求められる耐圧強度を実現することは特に困難であった。
【0005】
これらの問題を解決するために、円筒容器に取り付けられる円筒形状の蓋材に当接する溶着ホーン面の、蓋材を側断面から見たときの高さが、蓋材中心方向に向けて高くなるようテーパ角が形成されている技術が知られている(特許文献5)。
しかし、特許文献5に記載の技術は、超音波による振動エネルギーを効率的に溶着部分に伝達させる手段であり、高い気密性を有する耐圧品質が安定するものではない。
また、超音波による振動エネルギーを十分に溶着部分に伝達させるために、溶着ホーン当接部分と溶着部分との距離を短くする方法(特許文献6)、振動エネルギーを集中させて溶着する方法(特許文献7)等がある。
しかし、特許文献6および特許文献7に記載の技術は、特許文献5に記載の技術と同様、超音波による振動エネルギーを効率的に被溶着部分に伝達させる手段であり、高い気密性を有する耐圧容器の品質が安定するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−181420号公報
【特許文献2】特開2008−238437号公報
【特許文献3】特許第3965458号公報
【特許文献4】特許第3921879号公報
【特許文献5】特開2008−104843号公報
【特許文献6】特開2003−137205号公報
【特許文献7】特許3632884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、超音波溶着法により、気密性、外観性に優れた耐圧容器およびその製造方法の提供を目的とする。特に超音波溶着を適用するのが困難な樹脂として知られているポリプロピレン樹脂を用いた気密性耐圧容器およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の気密性耐圧容器は、少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジングの該開口部を筒状蓋体で超音波溶着してなる。気密性耐圧容器における、容器の上記筒状蓋体が、超音波溶着時に、上記筒状ハウジングの開口部端面と超音波溶着時の筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より上記筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されており、上記筒状ハウジングと上記筒状蓋体との溶着が上記筒状ハウジングの開口部端面全周にわたりなされており、上記筒状ハウジングおよび筒状蓋体が結晶性を有する熱可塑性樹脂の成形体であることを特徴とする。
また、上記超音波溶着される溶着部の径方向断面は、一方が凸形状で、他方が上記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ上記凸形状の凸部先端面幅が上記凹形状の凹部底面幅よりも広い形状であり、上記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有することを特徴とする。
【0009】
更には、本発明の気密性耐圧容器の筒状蓋体の天板厚さを超える距離を有する立上り部が3.35mm以上であることを特徴とする。超音波溶着を用いた従来技術において、溶着部分の十分な接合強度を安定して得るために溶着部が溶融するのに十分な振動エネルギーを溶着部に伝達させる必要がある。溶着ホーンと溶着部の距離が長くなると、溶着ホーンで発生した超音波振動が、溶着部に到達するまでに減衰し、十分な振動を溶着部分に伝達できないため、通常は溶着ホーンと溶着部の距離は可能な限り短くすることが通例である。しかし、本発明者らは鋭意検討の結果、前述の立上り部分を製品構造に付与し、溶着ホーンと溶着部の距離が長くても十分な超音波振動エネルギーを加えることによって、外観を損なうことなく、気密性に優れた十分な耐圧強度を有する気密性耐圧容器が実現可能であることを見出した。
また、上記筒状ハウジングは、超音波溶着時の溶着受け治具に当接されるフランジ部を有し、該フランジ部の溶着受け治具が当接する面と反対の面に上記筒状蓋体が溶着されることを特徴とする。
また、気密性耐圧容器を形成する結晶性を有する熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であることを特徴とする。
【0010】
本発明の気密性耐圧容器の製造方法は、少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジングを成形する工程と、この筒状ハウジングの開口部を閉塞する筒状蓋体を成形する工程と、上記筒状ハウジングと上記筒状蓋体とを超音波振動によって相互に溶着する超音波溶着工程とを備え、
上記筒状蓋体は、超音波溶着時に、上記筒状ハウジングの開口部端面と超音波溶着時の筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されており、
上記超音波溶着される溶着部の径方向断面は、一方が凸形状で、他方が上記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ上記凸形状の凸部先端面幅が上記凹形状の凹部底面幅よりも大きい形状であり、上記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有しており、
上記超音波溶着工程は、上記筒状蓋体外周縁上面に円筒状の溶着ホーンを当接させて、上記ハウジングと上記筒状蓋体との溶着が上記筒状ハウジングの開口部端面全周にわたり溶着される工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の気密性耐圧容器は、超音波溶着時に、筒状ハウジングの開口部端面と超音波溶着時の筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されているので、ハウジングの開口部端面全周にわたって溶着部の溶着バラツキを少なくすることができ、かつ溶着ホーンとの当接面に傷・破損なく溶着することができる。そのため、ハウジングおよび蓋体が結晶性を有する熱可塑性樹脂であっても、気密性・外観性に優れた耐圧容器が得られる。
本発明の製造方法は、溶着部の溶着バラツキを少なくすることができ、かつ溶着ホーンとの当接面に傷・破損なく溶着することができるので、気密性に優れた耐圧容器を歩留まりよく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】気密性耐圧容器の断面図である。
【図2】円筒ハウジング蓋体の立上り部の長さが長い場合の溶着部の部分断面図である。
【図3】円筒ハウジング蓋体の立上り部の長さが短い場合の溶着部の部分断面図である。
【図4】角形ハウジング蓋体の立上り部の長さが長い場合の溶着部の部分断面図である。
【図5】円筒ハウジング蓋体の立上り部の長さがより長い場合の溶着部の部分断面図である。
【図6】円筒ハウジング蓋体の筒状蓋体3側に凹部を設けた場合の溶着部の部分断面図である。
【図7】円筒ハウジング蓋体の従来例の溶着部の部分断面図である。
【図8】図2における溶着部断面図を示す図である。
【図9】図8における溶着部の超音波溶着前の状態を表す断面図である。
【図10】図2における他の溶着部断面図を示す図である。
【図11】図10における溶着部の超音波溶着前の状態を表す断面図である。
【図12】フランジを有する蓋体の部分断面図である。
【図13】天板の上方に配置されて蓋体の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の気密性耐圧容器を、血液浄化あるいは水浄化に用いられるフィルターを収容する円筒状容器に適用した例に基づき、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態により得られる気密性耐圧容器の断面図である。なお、図1において、液体の注入口および排出口は省略してある。
図1に示すように、気密性耐圧容器1は、樹脂成形体である開口部をその一端に有する筒状ハウジング2と、この筒状ハウジング2を閉塞する筒状蓋体3とで構成される。筒状ハウジング2と筒状蓋体3とは溶着部4で円筒状の溶着ホーン6により超音波溶着される。
【0014】
図1において、筒状ハウジング2は開口部が1つの形状であるが、底部に開口部を設けて両開口部を筒状蓋体3で閉塞する構造であってもよい。筒状ハウジング2と筒状蓋体3とはそれぞれの外周縁上に形成される凹凸部からなる溶着部4により溶着される。
【0015】
筒状蓋体3は、天板3aに筒体3bが一体の樹脂成形体として形成されている。筒状蓋体3の外周縁角部3cの径方向断面が逆L字型であり、好ましくは径方向断面が直角になっている。
筒状蓋体3の天板形状は、断面図でみて、平板形状、蓋体中心に向かって段差形状になる平板段差形状、蓋体中心に向かって円弧を描く円錐形状等を使用することができる。
また、筒体3bは、例えば図12に示すようにフランジ5aを有するように配置されていてもよく、図13に示すように天板3aの上方に配置されていてもよい。
【0016】
筒状蓋体3には立上り部3dが形成されている(図1参照)。立上り部3dの長さは、超音波溶着が完了した後の筒状ハウジング2の開口部端面2aと超音波溶着時における筒状蓋体3の溶着ホーン当接面3eとの距離t1より、上記筒状蓋体の溶着ホーン当接面3eでの天板厚さt2を差し引いた距離となる長さ部分(t1−t2)である。
従来の溶着方法においては、超音波による振動エネルギーを効率的に被溶着部分に伝達させる必要があるため、図7に示すように、溶着ホーンと当接する部品である筒状蓋体3について立ち上がり部を有しない形状設計でなされている。この従来例に対して、本発明では、従来の溶着思想では振動エネルギーが分散し効率的に伝達させることができないと考えられていた立ち上がり部を設けることで、気密性・外観性に優れた耐圧容器を得ることができたものである。
図7に示す立上り部3dの長さが0の場合、すなわち上記長さt1がt2と同一である場合、筒状ハウジング2の開口部端面全周にわたる溶着が均一になされないため、耐圧強度に劣ることが分かった。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0017】
溶着時に凸部を形成する筒状蓋体3の外周にフランジ5a、または同凹部を形成する筒状ハウジング2の外周にフランジ5bなどのフランジ5を設けることができる(図1、図2参照)。
特に筒状ハウジング2の外周に設けられるフランジ5bは、超音波溶着時の溶着受け治具6’に当接され、このフランジ部の溶着受け治具6’が当接する面と反対の面に筒状蓋体3が溶着される。
なお、本発明は、溶着受け治具6’を筒状ハウジング2の底面2hに当接させ、超音波溶着することもできる。
【0018】
通常、超音波伝達の減衰が考えられるため、溶着ホーンの当接部から溶着部までの距離を3.35mm未満にすることが超音波溶着法では一般的であり、溶着ホーンの当接部から溶着部までの距離は短いほどよいとされる。これに対して、本発明は、一般的な射出成形などを想定した天板厚さt2を3mmと仮定して考慮すると、立上り部3dの長さ(t1−t2)は、具体的に3.35mm以上であることが好ましい。これ以下の長さであると、立上り部の効果を受けにくい。ポリプロピレン樹脂などの結晶性を有する熱可塑性樹脂は3.35mm以上になると同一樹脂同士の溶着が困難になるが、本発明形状で溶着することにより、筒状ハウジング2の開口部全周にわたり均一な溶着が可能になる。
立上り部3dの長さ(t1−t2)のより好ましい範囲は、2.35mm〜50.0mmである。また、さらにより好ましい範囲は、3.35〜11.0mmである。
【0019】
筒状ハウジング2と筒状蓋体3とは溶着部4において、それぞれの開口部に形成された凹部または凸部をそれぞれ嵌合して筒状蓋体3の上面3e部分に円筒状溶着ホーン6を、フランジ5b部分に溶着受け治具6’をそれぞれ当接させて超音波溶着することにより、筒状ハウジング2と筒状蓋体3とが溶着される。
本発明において、筒状ハウジング2または筒状蓋体3の溶着部に形成される凹部は、それぞれの外周面からフランジ状に突出させて形成することが優れた気密性・耐圧性を維持することができるので好ましい。
【0020】
溶着部における溶着時の部分断面図を図2〜図6に示す。また、従来例の部分断面図を図7に示す。図2〜図7において、筒状蓋体3または筒状ハウジング2はフランジ5を有しており、また、各図は溶着後の状態を示す。
図2は、立上り部3dの長さが比較的長い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。
図3は、立上り部3dの長さが比較的短い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。
図4は、立上り部3dの長さが比較的長い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は角形である。
図5は、立上り部3dの長さが図2に示す立上り部3dの長さより長い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。
図6は、立上り部3dの長さが比較的長い場合の例であり、また、筒状蓋体3側に凹部を、筒状ハウジング2側に凸部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。
図7は、立上り部を有さない従来の断面図であり、また、筒状蓋体3側に凸部を、筒状ハウジング2側に凹部を設けた例である。筒状蓋体3および筒状ハウジング2は円筒である。溶着後に筒状ハウジングの開口部面2aと筒状蓋体3の下面3kとは密接する。このため、立上り部の長さは0になる。
【0021】
気密性耐圧容器1の溶着部4の詳細例を図8および図9により説明する。図8は図2における溶着部断面図を、図9は図8における溶着部4の超音波溶着前の状態を表す断面図をそれぞれ示す。
図8に示すように、超音波溶着される溶着部4は、筒状蓋体の筒体3b先端部が凸部を形成し、ハウジング2の溶着部断面が凹部を形成しており、相互に嵌合できる形状をしている。また、図9に示すように、筒体3bの凸部先端幅Dがハウジング2の凹部底面幅d2よりも大きい形状である。詳細には、ハウジング2の凹部2bが、内側面2dおよび2cと、凹部底面2fとから構成され、内側面2dに凹部の上部内幅d1を狭くする方向の傾斜面2gを有している。傾斜面2gを有する凹部2bに凸部3bを嵌合して超音波振動を印加することにより、接触部における変形歪の発熱が凸部3bの先端面3fのエッジ部3hと、凹部2bの傾斜面2gを起点として、側面3'gと2'gとで発生する。
【0022】
傾斜面2gの形状としては、凹部の内幅d1が底面2f方向に向かって狭くなる形状で、図8に示す角度αが、30°〜90°の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、角度αが45°の場合である。
【0023】
凸部3bの形状は、その径方向の先端幅Dを凹部の上部内幅d1よりも約0.05mmのクリアランスをもたせた形状とすることが好ましい。該形状とすることにより、溶着振動をかける前に嵌合先端部の凹凸を誘い込ませて筒状蓋体3とハウジング2とを押えて変形などを矯正させることができる。その押えを保持しながら溶着振動をかけることによって全周を均一に溶着することが可能となる。
また、傾斜面2gは内側面2dまたは内側面2cの片側面、あるいは内側面2dおよび内側面2cの両側面にあってもよい。
【0024】
気密性耐圧容器1の溶着部4の他の詳細例を図10および図11により説明する。図10は図2における他の溶着部断面図を、図11は図10における溶着部4の超音波溶着前の状態を表す断面図をそれぞれ示す。
この溶着部4の他の例は、凸部3bの凸部先端面3fの幅Dと凹形状2bの凹部幅d1とは上記クリアランスを持たせた形状である。凸部3bの側面3gの少なくとも一方の側面は、凸部の上方の幅d2を凸部先端面幅Dよりも広くする方向の傾斜面3iを有する。また、ハウジング2の凹部2bの内側面2dに傾斜面を有していない以外は図8および図9に示す溶着部4と同一である。凸部3bの長さd3と凹部2bの深さd4との関係、および傾斜面3iの傾斜角度も図8および図9に示す例と同一である。また、超音波振動による発熱過程も略同一である。
【0025】
本発明の気密性耐圧容器を構成する樹脂材料としては、溶着が可能な結晶性を有する熱可塑性樹脂であれば任意の樹脂材料を使用でき、樹脂接合体の用途に応じて適宜決定できる。
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。
これらの中で、気密性耐圧容器としての機械的強度に優れるポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0026】
各樹脂材料は、相溶性があるものであれば2種以上の混合物として用いることができる。また、上記各樹脂材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で各種強化材、添加剤等の充填材を含有させて用いることができる。
【0027】
次に気密性耐圧容器の製造方法について上記各図を参照して説明する。
(1)結晶性を有する熱可塑性樹脂を用いて、少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジング2を成形する。同様に、ハウジングの開口部を閉塞する筒状蓋体3を成形する。ハウジング2の開口部上端および筒状蓋体3の先端部には図2〜図6に示す凹凸形状を設けておく。
(2)ハウジング2および筒状蓋体3に形成された凹凸形状を相互に嵌合させ、筒状蓋体3の外周縁上面およびハウジング2に設けられたフランジ5bの下面に円筒状の溶着ホーン6をそれぞれ当接させて超音波振動を発生させながら加圧入する。この工程により、ハウジング2と筒状蓋体3との溶着が筒状ハウジングの全周にわたり、主としてそれぞれに形成された凸型の側面と凹型の側面とで超音波溶着がなされる。
【0028】
上記では円筒状の気密性耐圧容器を例に挙げ、円筒部材の両端部おいて、溶着部を周状に形成する場合について説明したが、本発明の気密性耐圧容器の製造方法は、筒状体であれば、円筒状に限らず、楕円体であっても、異形円体であっても、多角形体であっても適用できる。
【実施例】
【0029】
実施例1
図2に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内径66mmφ、肉厚3mm、高さ76mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒状ハウジングを射出成形した。開口端部の凹部は内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有して形成した。
また、図2に断面形状を示す、内径72mmφ、肉厚3mm、立上り部の高さ6mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有する筒状蓋体を射出成形した。
ハウジングの全周に形成される凸部の幅は3mm、凹部の深さは3mm、幅は2.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。
超音波溶着は、日本ヒューチャア製 W5185(8000W)を使用して、周波数15kHz、振幅80μm、圧力100KPa、溶着時間1.0秒の条件にて溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、接合部の隙間および傷の有無による外観を目視で確認した。隙間および傷が見られた場合を×、見られない場合を○とした。また以下の耐圧試験に供した。結果を表1に示す。なお、表1において、溶着ホーンまでの距離は、溶着後の(立上り部の高さ+蓋体の肉厚)を表す。
【0030】
耐圧試験
得られた気密性耐圧容器の筒状蓋体の中央部にあけた穴より水を投入し、0MPaから0.1MPaステップにて圧力を上げる。各圧力に達した後、5分間その圧力を保持し破壊水漏れがなければ、さらに圧力を上昇させる。気密性耐圧容器が水圧により破壊され水漏れが発生する圧力を測定した。結果を表1に示す。
なお、表1に示される「○○Mpaで破壊しない」とは、現行試験設備にてそれ以上加圧すると破壊力が大きくなり過ぎるため、それ以上の加圧をしないで、その圧力が5分間保持できることを確認後、耐圧試験を中断したものである。
【0031】
実施例2
図3に断面形状を示す、立上り部の高さが3.35mmの筒状蓋体を用いる以外は、実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
図4に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内寸法が縦70mm×横130mm×高さ135mmで、肉厚5mmのポリプロピレン樹脂成形体である角型のハウジングを射出成形した。開口端部の凹部は内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有して形成した。
また、図4に断面形状を示す、内寸法が縦80mm×横140mmで、肉厚5mm、立上り部の高さ11mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有する角型蓋体を射出成形した。
角型ハウジングの全周に形成される凸部の幅は5mm、凹部の深さは5mm、幅は4.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。超音波溶着は、日本ヒューチャア製 W5185(8000W)を使用して、周波数15kHz、振幅80μm、圧力600KPa、溶着時間1.0秒の条件にて溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
実施例4
図5に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内径150mmφ、肉厚5mm、高さ140mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒状ハウジングを射出成形した。開口端部の凹部は内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有して形成した。
また、図5に断面形状を示す、立上り部の高さ11mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有する円型蓋体を射出成形した。
円型ハウジングの全周に形成される凸部の幅は5mm、凹部の深さは5mm、幅は4.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。実施例3と同様の条件で超音波溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例5
図6に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内径66mmφ、肉厚3mm、高さ76mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒状ハウジングを射出成形した。
また、図6に断面形状を示す、内径66mmφ、肉厚3mm、立上り部の高さ8mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有して、かつ外周部に凹部を有する筒状蓋体を射出成形した。開口端部は上面幅を狭くする方向の傾斜面を有する凸部を成形した。筒状蓋体の全周に形成される凸部の幅は3mm、凹部の深さは3mm、幅は2.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
図7に断面形状を示す、中空かつ一端が閉塞されて他端が開放されており、開口端部に凹部を形成して成形された、内径66mmφ、肉厚3mm、高さ76mmのポリプロピレン樹脂成形体である円筒状ハウジングを射出成形した。開口端部の凹部は内側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有して形成した。
また、図7に断面形状を示す、外径84mmφ、肉厚3mmのポリプロピレン樹脂成形体である立上り部を有さない筒状蓋体を射出成形した。
ハウジングの全周に形成される凸部の幅は3mm、凹部の深さは3mm、幅は2.7mmであり、傾斜面の角度は45度に設定した。実施例1と同様の条件で超音波溶着を行なった。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
溶着条件を、日本ヒューチャア製 W5185(8000W)を使用して、周波数15kHz、振幅80μm、圧力600KPa、溶着時間1.0秒の条件とする以外は、比較例1と同一の製造条件、方法で気密性耐圧容器を得た。
得られた気密性耐圧容器について、実施例1と同様の項目を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示すように、各実施例は、立上り部を有することで、外観に優れ、耐圧は向上した。特に同寸法である実施例1、2および4は、比較例1に比較して約2倍となる耐圧性に優れたポリプロピレン樹脂製の気密性耐圧容器が得られた。これに対して、比較例2では、外観に傷が発生し、製品上使用できるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の気密性耐圧容器は、ポリプロピレン樹脂製であっても、気密性と耐圧性に優れるので、ろ過材を充填したカートリッジ容器として医療分野および浄水器分野に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 気密性耐圧容器
2 筒状ハウジング
3 筒状蓋体
4 溶着部
5 フランジ
6 溶着ホーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジングの該開口部を筒状蓋体で超音波溶着してなる気密性耐圧容器であって、
前記筒状蓋体は、超音波溶着後の前記筒状ハウジングの開口部端面と、超音波溶着時の前記筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より、前記筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されており、
前記筒状ハウジングと前記筒状蓋体との溶着が前記筒状ハウジングの開口部端面全周にわたりなされており、
前記筒状ハウジングおよび筒状蓋体が結晶性を有する熱可塑性樹脂の成形体であることを特徴とする気密性耐圧容器。
【請求項2】
前記超音波溶着される溶着部の径方向断面は、一方が凸形状で、他方が前記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ前記凸形状の凸部先端面幅が前記凹形状の凹部底面幅よりも広い形状であり、前記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有することを特徴とする請求項1記載の気密性耐圧容器。
【請求項3】
前記立上り部が3.35mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の気密性耐圧容器。
【請求項4】
前記筒状ハウジングは、超音波溶着時の溶着受け治具に当接されるフランジ部を有し、該フランジ部の溶着受け治具が当接する面と反対の面に前記筒状蓋体が溶着されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の気密性耐圧容器。
【請求項5】
前記結晶性を有する熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の気密性耐圧容器。
【請求項6】
少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジングを成形する工程と、
前記筒状ハウジングの開口部を閉塞する筒状蓋体を成形する工程と、
前記筒状ハウジングと前記筒状蓋体とを超音波振動によって相互に溶着する超音波溶着工程とを備える気密性耐圧容器の製造方法であって、
前記筒状蓋体は、超音波溶着後の前記筒状ハウジングの開口部端面と超音波溶着時の前記筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より前記筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されており、
前記超音波溶着される溶着部の径方向断面は、一方が凸形状で、他方が前記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ前記凸形状の凸部先端面幅が前記凹形状の凹部底面幅よりも大きい形状であり、前記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有しており、
前記超音波溶着工程は、前記筒状蓋体外周縁上面に円筒状の溶着ホーンを当接させて、前記ハウジングと前記筒状蓋体との溶着が前記筒状ハウジングの開口部端面全周にわたり溶着される工程であることを特徴とする気密性耐圧容器の製造方法。
【請求項1】
少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジングの該開口部を筒状蓋体で超音波溶着してなる気密性耐圧容器であって、
前記筒状蓋体は、超音波溶着後の前記筒状ハウジングの開口部端面と、超音波溶着時の前記筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より、前記筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されており、
前記筒状ハウジングと前記筒状蓋体との溶着が前記筒状ハウジングの開口部端面全周にわたりなされており、
前記筒状ハウジングおよび筒状蓋体が結晶性を有する熱可塑性樹脂の成形体であることを特徴とする気密性耐圧容器。
【請求項2】
前記超音波溶着される溶着部の径方向断面は、一方が凸形状で、他方が前記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ前記凸形状の凸部先端面幅が前記凹形状の凹部底面幅よりも広い形状であり、前記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有することを特徴とする請求項1記載の気密性耐圧容器。
【請求項3】
前記立上り部が3.35mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の気密性耐圧容器。
【請求項4】
前記筒状ハウジングは、超音波溶着時の溶着受け治具に当接されるフランジ部を有し、該フランジ部の溶着受け治具が当接する面と反対の面に前記筒状蓋体が溶着されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の気密性耐圧容器。
【請求項5】
前記結晶性を有する熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の気密性耐圧容器。
【請求項6】
少なくとも一端に開口部を有する筒状ハウジングを成形する工程と、
前記筒状ハウジングの開口部を閉塞する筒状蓋体を成形する工程と、
前記筒状ハウジングと前記筒状蓋体とを超音波振動によって相互に溶着する超音波溶着工程とを備える気密性耐圧容器の製造方法であって、
前記筒状蓋体は、超音波溶着後の前記筒状ハウジングの開口部端面と超音波溶着時の前記筒状蓋体側溶着ホーン当接面との距離より前記筒状蓋体の天板厚さを差し引いた距離となる長さの立上り部が形成されており、
前記超音波溶着される溶着部の径方向断面は、一方が凸形状で、他方が前記凸形状の凸部に嵌合できる凹形状で、かつ前記凸形状の凸部先端面幅が前記凹形状の凹部底面幅よりも大きい形状であり、前記凹形状の凹部内側面の少なくとも一方の側面に凹部底面幅を凹部上面幅よりも狭くする方向の傾斜面を有しており、
前記超音波溶着工程は、前記筒状蓋体外周縁上面に円筒状の溶着ホーンを当接させて、前記ハウジングと前記筒状蓋体との溶着が前記筒状ハウジングの開口部端面全周にわたり溶着される工程であることを特徴とする気密性耐圧容器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−2342(P2012−2342A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141054(P2010−141054)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(505474256)佐藤ライト工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(505474256)佐藤ライト工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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