説明

気相成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法

【課題】 本発明は、サセプタとリングにひびや割れを発生させることなく、サセプタ表裏面の雰囲気遮蔽性を高め、ウェーハ裏面側へのエピタキシャル層の形成を抑制することを目的とする。
【解決手段】 エピタキシャル気相成長装置であって、サセプタの下面に、サセプタとリングとの間隙からのガスの流通を抑制するための石英製カバー部材が設けられており、石英製カバー部材は、少なくともサセプタの下面に固定されて石英製カバー部材を支持している支持部と、リングの内径よりも外径が大きく、支持部から少なくとも反応容器の側壁に向けて水平に延びる延伸部とを有するものであることを特徴とする気相成長装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエピタキシャルウェーハの気相成長装置及び製造方法に関し、具体的には、ウェーハ裏面側へのエピタキシャル層の形成を抑制できるエピタキシャルウェーハの気相成長装置及び該気相成長装置を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被成膜基板上に薄膜を気相成長させるための装置、特に半導体基板上にシリコン系薄膜を気相成長させるための装置として、たとえば図4に示されるような枚葉式の気相成長装置が知られている。この装置は、透明石英からなる反応容器101内に1枚ずつセットされた基板Wを、上下より赤外線ランプ106を用いて輻射加熱しながら、気相成長を行わせるものである。この赤外線ランプ106は反応容器101の外部上側及び外部下側に配置されている。
【0003】
上記反応容器101内には、基板Wを載置するためのサセプタ102が水平に配設され、該サセプタ102を支持するためのサポートシャフト105が設けられている。このサセプタ102は、上面に形成された座ぐり部121に基板Wを収容し、自身はサポートシャフト105によって水平面内で回転できる。また、座ぐり部121には、最外周部より内側に複数の貫通孔108が設けられている。
【0004】
サセプタ102は、反応容器101の側壁部から該サセプタ102の外周至近部にかけて設けられるリング104により周回されている。このリング104は、前記サセプタ102と共働して反応容器101の内部空間を上部空間101aと下部空間101bとに分割する。上部空間101aでは、ガス供給口109aからキャリアガスと共に導入された反応ガスが、基板Wの表面をほぼ層流を形成しながら流れ、反対側の排気口120aから排気される。前記リング104は、ガス供給口109aから基板Wに至るまでの間に反応ガスの温度を前もって加熱する役割を果たすものである。一方の下部空間101bにおいては、ガス供給口109bから雰囲気ガスが供給され、反対側の排気口120bより排気される。
【0005】
上記のような枚葉式気相成長装置では、サセプタ102が回転するため、サセプタ102とリング104の間に間隙107が設けられている。しかし、サセプタ102上面側に供給された反応ガスの一部が、この間隙107からサセプタ102下面側に侵入し、サセプタ102の座ぐり部121の貫通孔108から基板Wの裏面側まで入り込んで、基板Wの裏面、特に外周領域において、厚いエピタキシャル層が形成することがあった。
このように、ウェーハ裏面外周部に厚いエピタキシャル層が形成されると、ウェーハ外周部の平坦度が悪化し、フォトリソグラフィ工程でデフォーカスが発生しやすくなってしまう。
【0006】
上記問題の対策として、サセプタ102下面側に雰囲気ガスを供給し、反応ガスの、反応容器101の下部空間101bへの侵入を抑制する方法が用いられているが、雰囲気ガスの量が多いと、雰囲気ガスがサセプタ102とリング104の間隙107から上部空間101aに噴出し、上部空間101aのガスフローを乱して、エピタキシャル膜厚の面内均一性を悪化させることがあった。
【0007】
そこで特許文献1では、サセプタとリングのエッジ部に階段状のフランジを設け、このフランジを係合させることにより、反応容器の上下部空間の雰囲気遮蔽性を高める方法が開示されている。
しかし、この方法を急速な昇降温を行うプロセスで用いると、フランジ部に局所的な温度差が発生し、ひびや割れが多発することが明らかになった。
【0008】
この問題を改善するために、特許文献2では、サセプタとリングのエッジ部に垂下したスカート状の縁を設ける方法が開示されているが、基板裏面外周部のエピタキシャル層形成を抑える効果はあまり高いものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−078863
【特許文献2】特開2000−012470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような問題を鑑みて、本発明は、サセプタとリングにひびや割れを発生させることなく、サセプタ表裏面の雰囲気遮蔽性を高め、ウェーハ裏面側へのエピタキシャル層の形成を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では、反応ガスを導入して、基板上に薄膜を気相成長させるための反応容器と、前記反応容器内に水平に配置され、前記基板を載置するための座ぐり部を備えたサセプタと、前記反応容器の側壁部から前記サセプタの外周部に向けて水平方向に延びるリングと、前記サセプタの上下に配設される加熱手段とを有する気相成長装置であって、前記サセプタの下面に、前記サセプタと前記リングとの間隙からのガスの流通を抑制するための石英製カバー部材が設けられており、該石英製カバー部材は、少なくとも前記サセプタの下面に固定されて前記石英製カバー部材を支持している支持部と、前記リングの内径よりも外径が大きく、前記支持部から少なくとも前記反応容器の側壁に向けて水平に延びる延伸部とを有するものであることを特徴とする気相成長装置を提供する。
【0012】
このように、サセプタ下面に、サセプタとリングとの間隙からのガスの流通を抑制するための石英製カバー部材を設けることにより、サセプタとリングのエッジ部における局所的な温度差の発生を抑制しつつ、サセプタ上下部空間の雰囲気遮蔽性を高め、基板裏面外周部のエピタキシャル層形成を大幅に低減することができる。また、前記石英製カバー部材はサセプタ下面に設けられるため、サポートシャフトによってサセプタを水平面内で回転させることができるだけでなく、垂直方向にも上下させることもできる。
【0013】
またこのとき、前記サセプタは、前記座ぐり部の最外周部より内側に2以上の貫通孔が設けられているものであることが好ましい。
【0014】
このように貫通孔が設けられていることにより、座ぐり部と基板の隙間から基板の裏面へと入り込んだ反応ガスや、ランプの熱によって基板から外方拡散されたドーパントガスを反応容器の下部空間へと逃がすことができるため、基板裏面の平坦性及びエピタキシャル層の抵抗の均一性をより効果的に維持することができる。
【0015】
またこのとき、前記石英製カバー部材の延伸部の上面と、前記リングの下面との距離が、0.5〜5mmであることが好ましい。
【0016】
このようにすることにより、反応ガスの間隙からの下部空間への進入を、より効果的に抑制することができる。
【0017】
またこのとき、前記石英製カバー部材の延伸部の上面と、前記サセプタの下面との距離が、0〜2mmであることが好ましい。
【0018】
このようにすることにより、反応ガスの間隙からの下部空間への進入を、より効果的に抑制することができる。
【0019】
またこのとき、前記石英製カバー部材が、リング状であることが好ましい。
【0020】
このようにすることにより、間隙を余すことなく覆うことができ、反応ガスの間隙からの下部空間への進入を、より効果的に抑制することができる。さらに、下部ランプの熱の局所的な偏りをより効果的に抑制することができる。
【0021】
またこのとき、前記石英製カバー部材が、円盤状であることが好ましい。
【0022】
このようにすることにより、間隙を余すことなく覆うことができ、反応ガスの間隙からの下部空間への進入を、より効果的に抑制することができる。さらに、下部ランプの熱の局所的な偏りをより効果的に抑制することができる。
【0023】
またこのとき、前記円盤状の石英製カバー部材は前記延伸部が円盤状であり、該円盤状の延伸部の、水平方向で前記支持部より内側に2以上の貫通孔が設けられているものであることが好ましい。
【0024】
このようにすることにより、座ぐり部と基板の隙間から基板の裏面へと入り込んだ反応ガスや、ランプの熱によって基板から外方拡散されたドーパントガスを反応容器の下部空間へと逃がすことができるため、基板裏面の平坦性及びエピタキシャル層の抵抗の均一性をより効果的に維持することができる。
【0025】
またこのとき、前記石英製カバー部材の前記延伸部の外径が、前記リングの内径よりも1mm以上大きいものであることが好ましい。
【0026】
このようにすることにより、より確実にサセプタとリングの間隙を覆うことができ、反応ガスの間隙からの下部空間への進入を、より効果的に抑制することができる。
【0027】
また、本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記本発明の気相成長装置を用いて、該気相成長装置の前記サセプタの前記座ぐり部に前記基板を載置し、前記加熱手段にて前記基板を加温し、反応ガスを前記反応容器内に流しながら前記基板上にエピタキシャル層の気相成長を行うことを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0028】
このように、前記本発明の気相成長装置を用いて気相成長を行うことにより、サセプタとリングのエッジ部における局所的な温度差の発生を抑制し、ひびや割れの発生を防止しながら、基板裏面の平坦性が維持されたエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、サセプタ下面に、サセプタとリングとの間隙からのガスの流通を抑制するための石英製カバー部材を設けることにより、サセプタとリングのエッジ部における局所的な温度差の発生を抑制しつつ、サセプタ上下部空間の雰囲気遮蔽性を高め、基板裏面外周部のエピタキシャル層形成を大幅に低減することができる。
さらに、このような石英製カバー部材が設けられた気相成長装置を用いて気相成長を行うことにより、サセプタとリングのエッジ部における局所的な温度差の発生を抑制し、ひびや割れの発生を防止しながら、基板裏面の平坦性が維持されたエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の気相成長装置であって、サセプタ下面にリング状の石英製カバー部材が設けられている気相成長装置の一例の概略断面図を示した図である。
【図2】本発明の気相成長装置であって、サセプタ下面に円盤状の石英製カバー部材が設けられている気相成長装置の一例の概略断面図を示した図である。
【図3】リング状及び円盤状の石英製カバー部材の支持部近傍の概略断面拡大図を示した図である。
【図4】従来の気相成長装置の概略断面図を示した図である。
【図5】実施例1、2及び比較例における実験結果のグラフを示した図である。
【図6】本発明が適用されるエピタキシャルウェーハの製造方法の処理の流れを示したフロー図の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明が適用されるエピタキシャルウェーハの製造方法の手順のフロー図の一例を図6に示す。
まず、工程(a)では、エピタキシャル層を成長させる基板(シリコンウェーハ)を準備する。ここで、本発明はシリコンウェーハに限らず、シリコンカーバイドウェーハや、GaPウェーハ、GaAsウェーハなどの化合物半導体ウェーハ等にも用いることができる。
【0032】
次に、工程(b)において、シリコンウェーハに対し、適宜RCA洗浄等の洗浄を行う。
この洗浄工程における洗浄法は、典型的なRCA洗浄の他、薬液の濃度や種類を通常行われる範囲で変更したものを用いることもできる。
【0033】
工程(c)以降では、気相成長装置にシリコンウェーハを移送して処理を行う。工程(c)以降で用いる本発明の気相成長装置の一例の概略図を図1及び図2に示した。図1は石英製カバー部材13としてリング状のものを、図2は円盤状のものを用いた例を示している。また、石英製カバー部材13の支持部近傍の拡大概略断面図を図3に示した。図3中の上図はリング状、下図は円盤状の石英製カバー部材を示している。
【0034】
本発明の気相成長装置は、反応容器11と、反応容器11内部に配置され、最外周部より内側に複数の貫通孔18が設けられたサセプタ12と、該サセプタ12における、シリコンウェーハWを載置するための座ぐり部21と、反応容器11の側壁部から前記サセプタ12の外周至近部にかけて設けられ、前記サセプタ12と共働して反応容器11の内部空間を上部空間11aと下部空間11bとに分割するリング14が設けられている。
この場合、前記サセプタ12が回転するため、前記サセプタ12と前記リング14の間に間隙17が設けられる。
【0035】
さらに、本発明の気相成長装置は、前記サセプタ12を下方から支持し、回転上下動自在なサポートシャフト15と、少なくとも前記サセプタ12の下面に固定されて石英製カバー部材13を支持している支持部13aと、前記リング14の内径よりも外径が大きく、前記支持部13aから少なくとも前記反応容器の側壁に向けて水平に延びるリング状の延伸部13bとを有する石英製カバー部材13が設けられている。
【0036】
またさらに、反応容器11内に各種ガスを供給するガス導入口19a及び19bと、該ガス導入口19a及び19bに接続され、反応容器内に水素ガスを供給する図示しない水素ガス供給手段及びシラン等の反応ガスを供給する図示しない反応ガス供給手段と、前記反応容器11内から各種ガスを排出するガス排出口20a及び20bと、前記反応容器11の外部の上下に備えられた赤外線ランプ16と、前記反応容器11内にシリコンウェーハを移送し、また、前記反応容器11内からシリコンウェーハを移送する図示しないウェーハ移送手段等が設けられている。
【0037】
本発明である石英製カバー部材13を設けることにより、サセプタ12とリング14のエッジ部における局所的な温度差の発生を抑制しつつ、サセプタ12上下部空間の雰囲気遮蔽性を高め、シリコンウェーハWの裏面外周部のエピタキシャル層形成を大幅に低減することができる。
【0038】
尚、サセプタ12には、リフトピン用貫通孔が形成されているものであってもよい。リフトピン用貫通孔には、リフトピンが挿通される。また、反応容器11の内部にはリフトピンをサセプタ12に対して相対的に上下させることができるリフトピン昇降手段を設けてもよい。
さらに、石英製カバー部材の延伸部13bは円盤状のものであってもよい。延伸部が円盤状である石英製カバー部材を用いた場合、該延伸部上の支持部13aより内側に複数の貫通孔22を設けてもよい。延伸部13bが、リング状もしくは複数の貫通孔22が備えられた円盤状である石英製カバー部材を用いることにより、間隙17を余すことなく覆うことができるため、反応ガスの間隙17からの下部空間への進入をより効果的に抑制することができ、さらに、下部ランプ16の熱の局所的な偏りをより効果的に抑制することができるため好ましい。
【0039】
また、石英製カバー部材13は、サポートシャフト15にも固定されていてもよい。石英製カバー部材13がサセプタ12及びサポートシャフト15に固定されていれば、カバー部材を安定して固定でき、容易にサセプタ12を水平面内で回転、もしくは垂直方向に上下させることができるため好ましい。
【0040】
また、前記石英製カバー部材の延伸部13bの上面と、前記リング14の下面との距離が0.5mm〜5mm、及び/または、前記石英製カバー部材の延伸部13bの上面と、前記サセプタの下面との距離が、0〜2mmであれば、互いに干渉することなく反応ガスの間隙からの下部空間への進入を、より効果的に抑制することができるため好ましい。
さらに、前記石英製カバー部材の延伸部13bの外径は、前記リング14の内径よりも1mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上大きいものであれば、より確実にサセプタとリングの間隙を覆うことができ、反応ガスの間隙からの下部空間への進入を、より効果的に抑制することができるため好ましい。
【0041】
貫通孔22はスムーズにガスが流通できるような大きさ、形状、位置であればどのようなものであってもよいが、例えば、円筒状であり、その直径が1mmで、サセプタ12の貫通孔18と同位置とすることができる。また、貫通孔の数も特に限定されるものではないが、例えば、開口密度が0.1開口/cm以上となるように形成することができる。
【0042】
このような石英製カバー部材13を具備した気相成長装置を用いて、以下のようにして、シリコンウェーハ表面上にエピタキシャル層を気相成長させることができる。
【0043】
まず、工程(c)において、図示しないウェーハ移送手段を用いて反応容器11内にシリコンウェーハWを移送し、サセプタ12の座ぐり部21に載置する。シリコンウェーハWのサセプタ12への載置方法は、リフトピンを用いる方法の他、通常用いられる載置方法を適用できる。
【0044】
次に、自然酸化膜除去工程(d)では、反応容器11内に、水素ガス供給手段からガス導入口19aを通して、反応容器11内に水素ガスを導入し、赤外線ランプ16によって加熱して水素処理を行い、シリコンウェーハW表面に生じた自然酸化膜を除去する。反応容器11内に導入された水素ガスは、ガス排気口20aを通して容器の外へと排出される。
このとき、サセプタ12とリング14の間隙17が石英製カバー部材13によって覆われているため、サセプタ12とリング14のエッジ部における局所的な温度差の発生を抑制できる。
この水素処理の際の加熱温度及び加熱時間は、どのように設定してもよいが、例えば、800℃以上、1分以上とすることができる。
【0045】
次に、工程(e)において、シリコンウェーハWの表面に、エピタキシャル層の気相成長を行う。このエピタキシャル層の気相成長は、モノシランやトリクロロシラン、四塩化珪素などの反応ガスと、キャリアガスとなる水素ガスとをガス導入口19aより反応容器11内に導入し、加熱することによって行う。反応容器内に導入された反応ガス及び水素ガスは、排気口20aより容器の外へと排出される。
【0046】
ここで、工程(d)と同様に、サセプタ12とリング14との間隙17は、石英製カバー部材13によって覆われているため、サセプタとリングのエッジ部における局所的な温度差の発生を抑制しつつ、サセプタ上下部空間の雰囲気遮蔽性を高め、基板裏面外周部のエピタキシャル層の形成を大幅に低減することができる。
【0047】
このようにして、シリコンウェーハの表面上にエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハの製造において、基板裏面外周部のエピタキシャル層形成を大幅に低減することができる。
さらに上下部空間の遮蔽性を高めることができることから、基板裏面から発生したドーパントガスが表面側のエピタキシャル層に取り込まれる、所謂オートドープの抑制にも効果があり、エピタキシャル層の抵抗均一性を向上することもできる。
また、石英製カバー部材はサセプタに固定されているので、容易にサセプタを水平面内で回転、もしくは垂直方向に上下させることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
図1のようなSiCコーティング黒鉛製のサセプタ(外径380mm)とリング(外径440mm、内径384mm)、および石英製のサセプタ支持用サポートシャフトからなる気相成長装置において、サセプタ下面にリング状の石英製カバー部材(外径420mm、内径360mm)をサポートシャフトに溶接し、固定した。また、サセプタ下面と石英製カバー部材の延伸部上面との距離は1mm、リングと延伸部上面との距離も1mmとした。雰囲気ガスには水素ガス、反応ガスにはトリクロロシランガスを用いて、反応圧力を常圧、反応温度を1100℃、成長速度を2.7μm/minとして、直径300mmの基板表面側に5μm厚のエピタキシャル層を形成したところ、図5に示すように基板裏面外周部のエピタキシャル層の厚さは最大90nmであった。このエピタキシャル層の厚さの測定は、評価装置であるWaferSight(パナソニック(株)製)を用いて行った。
ここで、WaferSightとは、ウェーハに光を入射し、ウェーハからの反射光と基準面からの反射光との光学干渉によって生じる干渉縞の数と幅から、ウェーハ表面の変位量を計測することを原理とする測定器である。実際の測定においては、ウェーハ両面に前述の計測を行い、予め測定しておいた、ある特定の1点の厚みから全体の厚み変化を算出する。
【0050】
(実施例2)
図2のような円盤状の石英製カバー(外径430mm)をサセプタ裏面及びサセプタ支持用サポートシャフトに、脱着可能な状態で取り付けた。円盤状石英カバー部材の延伸部の直径360mm位置には、高さ1mm、幅2mmの支持部を設け、円盤状石英カバー部材の直径360mmより内側には多数の貫通孔を設けた。基板表面側に実施例1と同じ条件で5μm厚のエピタキシャル層を形成したところ、基板裏面外周部のエピタキシャル層の厚さは最大61nmであった(図5)。このエピタキシャル層の厚さの測定は、実施例1と同様にWaferSightを用いて行った。
【0051】
(比較例)
図4のようなSiCコーティング黒鉛製のサセプタ(外径380mm)とリング(外径440mm、内径384mm)からなる気相成長装置において、基板表面側に実施例1と同じ条件で5μm厚のエピタキシャル層を形成したところ、基板裏面外周部のエピタキシャル層の厚さは最大248nmであった(図5)。このエピタキシャル層の厚さの測定は、実施例1と同様にWaferSightを用いて行った。
【0052】
図5の結果からわかるように、サセプタ下面にカバー部材が設けられていない比較例に比べ、リング状または円盤状の石英製カバー部材が設けられている本発明の実施例1、2の方が、より効果的に基板裏面におけるエピタキシャル層の形成を抑制できることがわかる。またさらに、リング状のカバー部材を用いた気相成長装置に比べ、外径が大きく円盤状のカバー部材に多数の貫通孔を設けた気相成長装置の方が、さらに効果的に基板裏面におけるエピタキシャル層の形成を抑制できることが分かる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0054】
11、101…反応容器、 12、102…サセプタ、
11a、101a…上部空間、 11b、101b…下部空間、
13…石英製カバー部材、 13a…支持部、 13b…延伸部、
14、104…リング、 15、105…サポートシャフト、
16,106…赤外線ランプ、 17、107…間隙、
18、108…サセプタ貫通孔、
19a、19b、109a、109b…ガス供給口、
20a、20b、120a、120b…ガス排気口、
21、121…座ぐり部、
22…石英製カバー部材貫通孔
W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスを導入して、基板上に薄膜を気相成長させるための反応容器と、
前記反応容器内に水平に配置され、前記基板を載置するための座ぐり部を備えたサセプタと、
前記反応容器の側壁部から前記サセプタの外周部に向けて水平方向に延びるリングと、
前記サセプタの上下に配設される加熱手段とを有する気相成長装置であって、
前記サセプタの下面に、前記サセプタと前記リングとの間隙からのガスの流通を抑制するための石英製カバー部材が設けられており、該石英製カバー部材は、少なくとも前記サセプタの下面に固定されて前記石英製カバー部材を支持している支持部と、前記リングの内径よりも外径が大きく、前記支持部から少なくとも前記反応容器の側壁に向けて水平に延びる延伸部とを有するものであることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記サセプタは、前記座ぐり部の最外周部より内側に2以上の貫通孔が設けられているものであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記石英製カバー部材の延伸部の上面と、前記リングの下面との距離が、0.5〜5mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記石英製カバー部材の延伸部の上面と、前記サセプタの下面との距離が、0〜2mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記石英製カバー部材が、リング状であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記石英製カバー部材が、円盤状であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項7】
前記円盤状の石英製カバー部材は前記延伸部が円盤状であり、該円盤状の延伸部の、水平方向で前記支持部より内側に2以上の貫通孔が設けられているものであることを特徴とする請求項6に記載の気相成長装置。
【請求項8】
前記石英製カバー部材の前記延伸部の外径が、前記リングの内径よりも1mm以上大きいものであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項9】
エピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の気相成長装置を用いて、該気相成長装置の前記サセプタの前記座ぐり部に前記基板を載置し、前記加熱手段にて前記基板を加温し、反応ガスを前記反応容器内に流しながら前記基板上にエピタキシャル層の気相成長を行うことを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−124476(P2012−124476A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246496(P2011−246496)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】