説明

水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末

本発明は、a)、a1)〜a6)を有するポリマー、
a1)酢酸ビニルモノマー単位50〜90質量部、
a2)2〜20個の炭素原子を有するα−分枝状モノカルボン酸のビニルエステルのビニルエステルモノマー単位5〜50質量部、
a3)1〜15個の炭素原子を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位1〜30質量部、
a4)10〜20個の炭素原子を有する長鎖モノカルボン酸のビニルエステルモノマー単位0〜40質量部、
a5)エチレン単位0〜20質量部、および場合により
a6)他の補助モノマー単位、その際質量部の表示は合計して100質量部になる、
b)1種以上の水溶性保護コロイド0.5〜30質量%、
c)有機珪素化合物0〜20質量%、
d)脂肪酸または脂肪酸の誘導体0〜20質量%、
e)アンチブロック剤0〜30質量%、その際質量%の表示はポリマーa)の全質量に関する、
を含有する、水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末、その製造方法および使用に関する。
【0002】
エチレン性不飽和モノマーのホモポリマーまたはコポリマーをベースとする水に再分散可能な粉末は建築の分野に、結合剤として、場合によりセメントのような水硬性結合剤と組み合わせて使用される。前記粉末は、例えば建築用接着剤、しっくい、モルタルおよび塗料に、機械的強度および付着を改良するために使用される。石灰またはセメントで結合した建築材料、例えばしっくい、パテ塗り材料、および建築用接着剤においては、更にこれらを気候の影響から保護する必要が存在する。雨または雪の場合に、建築材料、例えば外壁モルタルはその毛管活性によりすっかり湿り、これが建築材料に不可逆的損傷を生じることがある。これを避けるために、建築材料を疎水化することがかなり前から行われている。
【0003】
欧州特許第149098号から疎水性を改良するために、塩化ビニル−エチレンコポリマーをベースとする再分散粉末を使用することが公知である。欧州特許第493168号は建築材料を疎水化するためのシリコーン変性再分散粉末の使用を記載する。欧州特許第741760号から疎水化のための有機ケイ素化合物で変性された再分散粉末の使用が公知である。脂肪酸エステルを含有する再分散粉末の疎水化はドイツ特許第10049127号、欧州特許第1193287号、および欧州特許第1394193号に記載される。ドイツ特許第10323205号には、場合により有機ケイ素化合物と組み合わせた、脂肪酸化合物をベースとする水に再分散可能な疎水性添加剤の使用を勧めている。
【0004】
本発明の課題は、ポリマー組成により疎水性に作用し、他の疎水性に作用する成分と相溶性である、エチレン性不飽和モノマーをベースとする水に再分散可能なポリマー粉末を提供することである。
【0005】
本発明の対象は、
a)以下のa1)〜a6)を有するポリマー、
a1)酢酸ビニルモノマー単位50〜90質量部、
a2)2〜20個の炭素原子を有するα−分枝モノカルボン酸のビニルエステルのビニルエステルモノマー単位5〜50質量部、
a3)1〜15個の炭素原子を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位1〜30質量部、
a4)10〜20個の炭素原子を有する長鎖モノカルボン酸のビニルエステルモノマー単位0〜40質量部、
a5)エチレン単位0〜20質量部および場合により
a6)他の補助モノマー単位、その際質量部の表示は合計して100質量部になる、
b)1種以上の水溶性保護コロイド0.5〜30質量%、
c)有機ケイ素化合物0〜20質量%、
d)脂肪酸または脂肪酸の誘導体0〜20質量%、
e)アンチブロック剤0〜30質量%、その際質量%の表示はポリマーa)の全質量に関する
を含有する、水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末である。
【0006】
有利にポリマー100質量部に対してa1)酢酸ビニル50〜70質量部を共重合する。
【0007】
有利な2〜20個の炭素原子を有するα−分枝モノカルボン酸のビニルエステルはビニルピバレートおよびベルサチック酸ビニルエステルであり、特に有利にVeoVa10(Resolution社の商標名)である。有利にポリマー100質量部に対してビニルエステルa2)20〜40質量部を共重合する。
【0008】
有利な(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位a3)は1〜15個の炭素原子を有する非分枝または分枝状アルコールのアクリル酸エステルであり、特に有利に1〜8個の炭素原子を有する非分枝または分枝状アルコールのアクリル酸エステルであり、最も有利にはメチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートである。有利にポリマー100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルa3)1〜10質量部を共重合する。
【0009】
有利なビニルエステルモノマー単位a4)は10〜20個の炭素原子を有する長鎖非分枝モノカルボン酸のビニルエステルモノマーであり、これは特に有利にビニルラウレートから誘導される。有利にポリマー100質量部に対してビニルエステルa4)1〜40質量部、特に有利に1〜10質量部を共重合する。
【0010】
エチレンを共重合する場合は、エチレン成分a5)は有利に5〜20質量部である。
【0011】
適当な補助モノマーa6)はエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エチレン性不飽和カルボン酸アミドおよびカルボン酸ニトリル、例えばアクリルアミド、およびアクリロニトリル、エチレン性不飽和スルホン酸、もしくはその塩、有利にビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。他の例は前架橋コモノマー、例えば多重エチレン性不飽和コモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、またはトリアリルシアヌレート、または後架橋コモノマー、例えばN−メチロールアクリルアミド(NMA)、アルキルエーテル、例えばN−メチロールアクリルアミドのイソブトキシエ−テルまたはエステルである。他の例は珪素官能性コモノマー、例えば(メタ)アクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シランである。補助モノマー単位がモノマーに含まれる場合は、一般に0.5〜10質量部の量である。
【0012】
最も有利にはポリマーa)は、a1)酢酸ビニルモノマー単位50〜70質量部、a2)9〜15個の炭素原子を有するα−分枝モノカルボン酸のベルサチック酸ビニルエステルのモノマー単位20〜40質量部、a3)1〜8個の炭素原子を有する非分枝または分枝状アルコールのアクリル酸エステルのモノマー単位1〜10質量部、a4)10〜20個の炭素原子を有する長鎖モノカルボン酸のビニルエステルモノマー単位1〜10質量部を含有し、その際質量部の表示は合計して100質量部になる。
【0013】
適当な水溶性保護コロイドb)は部分鹸化されたおよび完全に鹸化されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、水溶性の形の多糖類、例えば澱粉(アミロースおよびアミロペクチン)、セルロースおよびそのカルボキシメチル−、メチル−、ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル誘導体、タンパク質、例えばカゼインまたはカゼイネート、大豆タンパク、ゼラチン、リグニンスルホネート、合成ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシ官能性コモノマー単位を有する(メタ)アクリレートのコポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、およびその水溶性コポリマー、メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒドスルホネート、スチレンマレイン酸コポリマーおよびビニルエーテルマレイン酸コポリマーである。
【0014】
加水分解度80〜100モル%を有する部分鹸化されたまたは完全に鹸化されたポリビニルアルコール、特に加水分解度80〜95モル%および4%水溶液中で1〜30mPas、有利に3〜15mPasのヘプラー粘度(20℃でのヘプラーによる方法、DIN53015)を有する部分鹸化されたポリビニルアルコールが有利である。
【0015】
加水分解度80〜100モル%および4%水溶液中で1〜30mPas、有利に3〜15mPasを有する部分鹸化されまたは完全に鹸化され、疎水性に変性されたポリビニルアルコールが有利である。このための例は、イソプロペニルアセテートのような疎水性コモノマーを有する酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ビニルエチルヘキサノエート、5または9〜11個の炭素原子を有するα−分枝飽和モノカルボン酸のビニルエステル、ジアルキルマレイネート、およびジアルキルフマレート、例えばジイソプロピルマレイネート、およびジイソプロピルフマレート、塩化ビニル、ビニルアルキルエーテル、例えばビニルブチルエーテル、2〜12個の炭素原子を有するα−オレフィン、例えばエテン、プロペンおよびデセンの部分鹸化されたコポリマーである。疎水性単位の割合は有利に部分鹸化されまたは完全に鹸化されたポリビニルアルコールの全質量に対して0.1〜10質量%である。加水分解度95〜100モル%を有する酢酸ビニルとイソプロペニルアセテートの、部分鹸化されまたは完全に鹸化されたコポリマーが特に有利である。前記ポリビニルアルコールの混合物を使用できる。
【0016】
加水分解度85〜94モル%および4%水溶液中で3〜15mPasのヘプラー粘度(ヘプラーによる、20℃、DIN53015による)を有する部分鹸化されたポリビニルアルコールおよび加水分解度95〜100モル%を有する酢酸ビニルとイソプロペニルアセテートの、部分鹸化されまたは完全に鹸化されたコポリマーが最も有利である。前記ポリビニルアルコールは当業者に知られた方法により得られる。
【0017】
適当な有機ケイ素化合物c)はケイ酸エステルSi(OR′)、シラン、例えばテトラオルガノシランSiR、オルガノオルガノオキシシランSiR(OR′)4−n(nは1〜3である)、有利に一般式RSi(SiRSiR(nは0〜500である)のポリシラン、オルガノシラノールSiR(OH)4−n、一般式RSi(OR′)(OH)(4−c−d−eーf)/2(式中、cは0〜3であり、dは0〜1であり、eは0〜3であり、fは0〜3であり、単位当たりのc+d+e+fの合計は最高で3.5であり、Rはそれぞれ同じかまたは異なり、1〜22個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルキル基、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、および6〜18個の炭素原子を有するアリール基、アラルキル基、アルキルアリール基であり、R′はそれぞれ1〜4個の炭素原子を有する同じかまたは異なるアルキル基およびアルコキシアルキレン基、有利にメチルおよびエチルであり、基RおよびR′はハロゲン、例えばCl、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、ニトリル基、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基、スルホン酸基、無水カルボン酸基およびカルボニル基により置換されていてもよく、ポリシランの場合は、RはOR′であってもよい)の単位からなるジ−、オリゴ−およびポリシロキサンである。カルボシラン、ポリカルボシラン、カルボシロキサン、ポリカルボシロキサン、ポリシリレンジシロキサンも適している。
【0018】
成分c)としてテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリ(エトキシエトキシ)シラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、β−ニトリルエチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルビニルトリ(エトキシエトキシ)シラン、テトラメチルジエトキシジシラン、トリメチルトリメトキシジシラン、トリメチルトリエトキシジシラン、ジメチルテトラメトキシジシラン、ジメチルテトラエトキシジシラン、トリメチルシロキシ基で末端ブロックされたメチルヒドロゲンポリシロキサン、トリメチルシロキシ基で末端ブロックされた、ジメチルシロキサン単位およびメチルヒドロゲンシロキサン単位からなるコポリマー、ジメチルポリシロキサン、および末端単位にSi−OH基を有するジメチルポリシロキサンが有利である。オルガノオルガノオキシシランSiR(OR′)4−n(nは1〜3である)、特にイソオクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシランが最も有利である。
【0019】
有利に成分c)はそれぞれポリマーa)に対して0.1〜20質量%、特に1〜10質量%の量で使用する。前記有機ケイ素化合物の製造は、Noll、Chemie und Technologie der Silicone、第2版、1968、WeinheimおよびHouben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,E20、Georg Thieme Verlag、Stuttgart(1987)に記載される方法により行うことができる。
【0020】
成分d)として一般にアルカリ条件下で、有利にpH>8で脂肪酸もしくは脂肪酸アニオンを遊離する脂肪酸および脂肪酸誘導体が適している。8〜22個の炭素原子を有する脂肪酸、脂肪酸の金属石けん、脂肪酸のアミド、1〜14個の炭素原子を有する一価アルコール、グリコール、ポリグリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、モノ−、ジ−またはトリエタノールアミン、単糖類を有する脂肪酸のエステルの群からなる脂肪酸化合物が有利である。
【0021】
適当な脂肪酸はそれぞれ8〜22個の炭素原子を有する分枝および非分枝、飽和および不飽和脂肪酸である。例はラウリン酸(n−ドデカン酸)、ミリスチン酸(n−テトラデカン酸)、パルミチン酸(n−ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n−オクタデカン酸)およびオレイン酸(9−ドデカン酸)である。
【0022】
適当な金属石けんは元素周期表の1〜3主族もしくは2副族の金属およびアンモニウム化合物NX(Xは同じかまたは異なり、H、C〜C−アルキル基およびC〜C−ヒドロキシアルキル基である)を有する前記脂肪酸の石けんである。リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛およびアンモニウム化合物を有する金属石けんが有利である。
【0023】
適当な脂肪酸アミドはモノ−またはジエタノールアミンおよび前記C〜C22脂肪酸を使用して得られる脂肪酸アミドである。
【0024】
成分d)として適した脂肪酸エステルは前記C〜C22−脂肪酸のC〜C14−アルキルエステルおよびアルキルアリールエステル、有利にメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、エチルヘキシルエステルおよびベンジルエステルである。
【0025】
適当な脂肪酸エステルはC〜C22−脂肪酸のモノ−、ジ−およびポリグリコールエステルである。
【0026】
他の適当な脂肪酸エステルは20個までのオキシアルキレン単位を有するポリグリコールおよび/またはポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのモノ−およびジエステルである。
【0027】
グリセリンと前記C〜C22−脂肪酸のモノ−、ジ−およびトリ脂肪酸エステルおよびモノ−、ジ−およびトリエタノールアミンと前記C〜C22−脂肪酸のモノ−、ジ−およびトリ脂肪酸エステルが適している。
【0028】
ソルビットおよびマンニットの脂肪酸エステルも適している。
【0029】
ラウリン酸およびオレイン酸のC〜C14−アルキルエステルおよびアルキルアリールエステル、ラウリン酸およびオレイン酸のモノ−、およびジグリコールエステルおよびグリセリンとラウリン酸およびオレイン酸のモノ−、ジ−およびトリ脂肪酸エステルが特に有利である。
【0030】
前記脂肪酸および脂肪酸誘導体は単独でまたは混合物で使用できる。一般に成分d)はポリマーa)に対して1〜20質量%の量で使用する。
【0031】
適当なアンチブロック剤e)は炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、石膏、粉砕粘土、カオリン、例えばメタカオリン、および微粉砕ケイ酸アルミニウム、珪藻土、コロイド状シリカゲル、熱分解により製造した二酸化珪素であり、それぞれ有利に10nm〜10μmの範囲の粒度を有する。
【0032】
再分散可能なポリマー粉末の製造は公知の形式および方法で、水性媒体中でラジカル開始乳化重合させ、これにより得られた水性ポリマー溶液を引き続き乾燥することにより行う。乳化重合は保護コロイドb)および/または乳化剤の存在で実施する。有利に最終的に保護コロイドb)で安定化する。これにより得られた水性ポリマー分散液は一般に25〜70質量%、有利に45〜65質量%の固形分を有する。
【0033】
乾燥は例えば流動床乾燥、薄膜乾燥(ローラー乾燥)、凍結乾燥、または噴霧乾燥により行うことができる。噴霧乾燥が有利である。噴霧乾燥は一般に推進助剤として他の保護コロイドb)の添加後に行う。ポリマー粉末がなお有機ケイ素化合物c)および/または脂肪酸(誘導体)を含有する場合は、これらを有利に乾燥する前にポリマー分散液に添加する。アンチブロック剤e)の添加は有利に粉末がなお乾燥ガスに分散している間に行う。その際噴霧乾燥は通常の噴霧乾燥装置中で行い、その際一成分、二成分または多成分ノズルまたは回転円板により噴霧を行うことができる。出口温度は装置、樹脂のTgおよび所望の乾燥度に応じて一般に45〜120℃、有利に60〜90℃の範囲で選択する。
【0034】
疎水化添加剤は多くの使用分野に使用できる。例えば建築化学製品に、場合によりセメント(ポートランドセメント、アルミネートセメント、トラスセメント、スラグセメント、マグネシアセメント、燐酸セメント)または水ガラスのような水硬性結合剤と組み合わせて、または石膏含有材料、石灰含有材料またはセメント不含およびプラスチック結合材料に、建築用接着剤、特に流動接着剤および完全熱保護接着剤、しっくい、パテ塗り材料、床用パテ塗り材料、流延材料、充填用泥状物、充填用モルタルおよび塗料の製造に使用する。疎水性再分散粉末は一般に疎水性組成物(水部分を有しない)の全質量に対して0.1〜10質量%の量で使用する。
【0035】
優れた疎水性および同時にポリスチレンに対する高い付着力により建築用接着剤および断熱用複合材料系(WDVS)のための塗料への疎水性再分散粉末の使用が特に有利である。
【0036】
以下の実施例は本発明を詳細に説明するために使用する。
【0037】
例1
600リットル反応器に、脱イオン水66kg、加水分解度88モル%およびへプラー粘度4mPasを有するポリビニルアルコール20%水溶液105kg、酢酸ビニル113.8kg、VeoVa10 52.7kgおよびブチルアクリレート8.8kgを予め入れた。蟻酸を加えてpH値をph=4.5〜5.5に調節した。引き続き混合物を65℃に加熱した。
【0038】
重合を開始するために、開始剤供給物、1.5%t−ブチルヒドロペルオキシド水溶液を960g/hの量で、および1.5%ブルゴリス(Brueggolith)水溶液を1400g/hの量で供給した。外部冷却により内部温度を75℃に制限した。混合物が固形分52%を達成した30分後に供給を終了した。反応が終了後、残留モノマーを除去するためにポリマーを更に重合した。更に重合するために、t−ブチルヒドロペルオキシド300gを10%水溶液として、ブルゴリス1300gを10%水溶液として順番に添加した。混合物を冷却し、引き続き250μmシーブにより振り分けた。
【0039】
分散液を、加水分解度88モル%およびヘプラー粘度4mPasを有する5質量%(固体/固体)ポリビニルアルコールおよび加水分解度88モル%およびヘプラー粘度13mPasを有する1質量%(固体/固体)ポリビニルアルコールと混合した。更にイソオクチルトリエトキシシラン6質量%を添加し、引き続き水を加えて250mPasの粘度に希釈した。分散液を加圧ノズルを使用して噴霧した。噴射成分として4バールに予め圧縮した空気を使用し、形成された液滴を125℃に加熱した空気と一緒に順流で乾燥した。これにより得られた乾燥粉末を市販されたアンチブロック剤(カオリン)10質量%と混合した。
【0040】
例2
例1と同様に製造したが、付加的になおラウリン酸ビニル8.8kgを予め入れ、酢酸ビニルを105kgの量で使用した。
【0041】
例3
例1と同様に製造したが、ブチルアクリレート17.2gを予め入れ、酢酸ビニルを105kgの量で使用した。
【0042】
例4
例1と同様に製造したが、ブチルアクリレート17.2g、ラウリン酸ビニル17.2gおよび酢酸ビニル87.4kgを使用した。
【0043】
例5
例1と同様に製造したが、エチレン30バールで圧縮し、酢酸ビニルを105kgの量でのみ使用した。
【0044】
比較例6
例1と同様に製造したが、ブチルアクリレートを使用しなかった。
【0045】
化粧塗りモルタル層の吸水試験
試験の基礎として以下のモルタル組成物を使用した。
白色セメント 70.9質量部
水酸化カルシウム 68.1質量部
OmyaBL 70.9質量部
二酸化チタン 10.9質量部
セルロース繊維 4.4質量部
カルシライト
(Calcilit)500 459.9質量部
カルシライト0.5〜1.0 286.1質量部
セルロースエーテル 1.6質量部
ベントナイト 1.7質量部
ポリマー粉末 25.0質量部
合計 999.5質量部。
【0046】
前記モルタルを25mlの混合水量と一緒に乾燥モルタル100gに混合し、引き続き厚さ4mmで気泡コンクリート板に塗布した。モルタル層が硬化後、気泡コンクリートの被覆されていない面に塗料を塗った。試験体を7日間標準条件(23℃/大氣湿度50%)で状態調節した。引き続きこの試験体をモルタル層と一緒に下に向かって、試験体が1cmの深さに浸漬するように水に入れた。その際時間が経過して水がしっくい層を通過して気泡コンクリート板に浸入した。浸入した水の量を計量により測定できる。その際気泡コンクリート板を吸収槽として使用する。気泡コンクリート板は被覆なしに水を化粧塗りモルタルより何倍も速く吸収するので、単位時間当たりの吸収される水の量は主にしっくいモルタル層により決定される。
【0047】
吸水量は水浸入値WEZにより表される。これは吸収時間24時間後に求めた1平方メートル当たりの吸水量を吸収時間の根で割って得られた商である。
【0048】
表1
WEZ 例1 例2 例3 例4 例5 比較例6
kg/m0.5 0.35 0.20 0.33 0.15 0.35 0.50
【0049】
例2および4は、疎水性に関して(メタ)アクリル酸エステルと組み合わせた長鎖ビニルエステルの共重合により得られる相乗効果を示す。従来の酢酸ビニルコポリマー(比較例6)に比べて酢酸ビニル−VeoVa−ブチルアクリレートの系を使用して撥水性の明らかな改良が得られ(例1、3、5)、この改良は長鎖ビニルエステルの共重合により(例2、4)更に明らかに向上できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)、a1)〜a6)を有するポリマー、
a1)酢酸ビニルモノマー単位50〜90質量部、
a2)2〜20個の炭素原子を有するα−分枝状モノカルボン酸のビニルエステルのビニルエステルモノマー単位5〜50質量部、
a3)1〜15個の炭素原子を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位1〜30質量部、
a4)10〜20個の炭素原子を有する長鎖モノカルボン酸のビニルエステルモノマー単位0〜40質量部、
a5)エチレン単位0〜20質量部、および場合により
a6)他の補助モノマー単位、その際質量部の表示は合計して100質量部になる、
b)1種以上の水溶性保護コロイド0.5〜30質量%、
c)有機珪素化合物0〜20質量%、
d)脂肪酸または脂肪酸の誘導体0〜20質量%、
e)アンチブロック剤0〜30質量%、その際質量%の表示はポリマーa)の全質量に関する、
を含有する水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項2】
10〜20個の炭素原子を有する長鎖非分枝モノカルボン酸のビニルエステルのビニルエステルモノマー単位a4)1〜40質量部を有する請求項1記載の水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項3】
9〜15個の炭素原子を有するα−分枝モノカルボン酸のベルサチック酸−ビニルエステルのビニルエステルモノマー単位a2)20〜40質量部を有する請求項1または2記載の水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項4】
9〜15個の炭素原子を有する非分枝または分枝状アルコールのアクリル酸エステルのアクリル酸エステルモノマー単位a3)1〜10質量部を有する請求項1から3までのいずれか1項記載の水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項5】
エチレンモノマー単位5〜20質量部を有する請求項1から4までのいずれか1項記載の水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項6】
a1)酢酸ビニルモノマー単位50〜70質量部、
a2)9〜15個の炭素原子を有するα−分枝状モノカルボン酸のベルサチック酸ビニルエステルのモノマー単位20〜40質量部
a3)1〜8個の炭素原子を有する非分枝または分枝状アルコールのアクリル酸エステルのモノマー単位1〜10質量部
a4)10〜20個の炭素原子を有する長鎖非分枝状モノカルボン酸のビニルエステルモノマー単位0〜40質量部を含有し、質量部の表示は合計して100質量部になるポリマーa)を有する請求項1記載の水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項7】
保護コロイドb)として、加水分解度80〜100モル%および4%水溶液中で1〜30mPasのへプラー粘度を有する、部分的に鹸化されたまたは完全に鹸化された、場合により疎水性に変性されたポリビニルアルコールを含有する請求項1から6までのいずれか1項記載の水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項8】
珪酸エステル、シラン、ポリシラン、オルガノシラノール、ジシロキサン、オリゴシロキサン、およびポリシロキサン、カルボシラン、ポリカルボシラン、カルボシロキサン、ポリカルボシロキサン、ポリシリレンジシロキサンからなる群からの1種以上の有機珪素化合物c)、ポリマーa)に対して0.1〜20質量%を有する請求項1から7までのいずれか1項記載の水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項9】
8〜22個の炭素原子を有する脂肪酸、その金属石鹸、そのアミド、および1〜14個の炭素原子を有する一価アルコール、グリコール、ポリグリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミン、単糖類を有するそのエステルの群からの1種以上の化合物d)、ポリマーa)に対して0.1〜20質量%を有する請求項1から8までのいずれか1項記載の水に再分散可能な疎水性ポリマー粉末。
【請求項10】
水性媒体中でラジカル開始乳化重合させ、こうして得られた水性ポリマー分散液を引き続き乾燥することによる請求項1から9までのいずれか1項記載の水に分散可能な疎水性ポリマー粉末の製造方法。
【請求項11】
場合によりセメントまたは水ガラスのような水硬性結合剤と組み合わせた建築化学製品への、または石膏含有材料、石灰含有材料またはセメント不含およびプラスチック結合材料への、建築用接着剤、しっくい、パテ塗り材料、床用パテ塗り材料、流延材料、充填用泥状物、充填用モルタルおよび塗料の製造のための請求項1から9までのいずれか1項記載の水に分散可能な疎水性ポリマー粉末の使用。
【請求項12】
断熱複合材料系のための建築用接着剤および塗料への請求項11記載の使用。

【公表番号】特表2008−523179(P2008−523179A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544781(P2007−544781)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012841
【国際公開番号】WO2006/061139
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(300006412)ワッカー ポリマー システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (29)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Polymer Systems GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johannes−Hess−Strasse 24, D−84489 Burghausen, Germany
【Fターム(参考)】