説明

水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シートおよびその使用方法

【課題】高速ラベリングを必要とする分野に適用するための粘着シートを提供すること。
【解決手段】(A)(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(a2)架橋化基点として作用する反応性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を含む混合物を乳化重合して得られるアクリル系共重合体、および(B)架橋剤を含む水分散型アクリル系粘着剤組成物であって、該粘着剤組成物の乾燥皮膜が、(i)引張り試験における破断応力が0.3〜2.5MPaであり、かつ破断伸度が2000%以下、(ii)ガラス転移点が−70℃〜−20℃および(iii)ゲル分率が50〜90%を満足する水分散型アクリル系粘着剤組成物および同組成物から形成された粘着層を有する粘着シート、ならびに粘着シートの繰り出し速度が30m/分以上である粘着シートの使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着シートに関するものであり、詳しくは、ラベリング時の剥離紙または剥離フィルム上の粘着剤残りの低減に優れた水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シートおよびその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷ラベルの用途は多岐にわたり、中でも、ラベリングマシンによるロールトゥロールのラベリングは、手貼りよりも生産効率が良いため、多方面で用いられている。昨今では、生産効率を向上させるために高性能ラベリングマシンが開発され、ラベルの繰り出し(剥離)速度は速いもので100m/分を超える。印刷ラベルがラベリングマシンによって被着体へラベリングされる際、ラベルは剥離紙または剥離フィルム(以下、合わせて「剥離シート」とする)から剥離される。この際、剥離シート上にピンホール等の剥離処理欠陥が存在すると、粘着剤層が基材との間で伸長大変形して破断してしまい、剥離シート上に極微量の粘着剤が残留することがある。また、ラベルが剥離された後の剥離シートはガイドロールの間を通過しながら回収され、巻き取られる。この時、剥離シートは複数のガイドロールと接触するが、剥離シートの剥離処理面が接するガイドロールが剥離処理面に残留した極微量の粘着剤によって汚染されるという問題がある。粘着剤によるラベリングマシンの汚染は、ラベルの繰り出し速度が速くなるにつれて顕著となり、清掃による生産効率の低下等の不具合が生じている。
【0003】
この問題に対し、特許文献1〜3には、剥離紙用原紙の平滑度、透気度を向上させることによって剥離紙上のピンホールを低減することで粘着剤残りを少なくすることが出来るとの技術が公開されている。前記の平滑度、透気度を向上させるには、パルプの叩解条件、填料の種類や量、仕上げ工程での加圧処理条件、いわゆるスーパーキャレンダー等の加圧装置を用いてその条件を適宜選定することにより、達成することができるが、単位時間あたりの生産量が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−095898号公報
【特許文献2】特開平9−302599号公報
【特許文献3】特開2000−345497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下でなされたものであり、剥離シートの種類を選ばず、高速ラベリング工程においても粘着剤が破断して剥離シート上に残留することの少ない水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シートおよびその使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水分散型アクリル系粘着剤組成物の引張り試験における破断応力と破断伸度、ガラス転移点、およびゲル分率を特定の範囲とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(9)を提供するものである。
(1)(A)(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(a2)架橋化基点として作用する反応性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を含む混合物を乳化重合して得られるアクリル系共重合体、および(B)架橋剤を含む水分散型アクリル系粘着剤組成物であって、該粘着剤組成物の乾燥皮膜が下記(i)〜(iii)を満足することを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(i)引張り速度1000mm/分での引張り試験における破断応力が0.3〜2.5MPaであり、かつ破断伸度が2000%以下
(ii)ガラス転移点(Tg)が−70℃〜−20℃
(iii)ゲル分率(テトラヒドロフラン不溶分)が50〜90%
(2)(a2)成分由来の構成単位が(A)アクリル系共重合体中に0.1〜12質量%で含有し、(a2)成分の反応性官能基がカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アミノ基およびカルボニル基から選ばれる少なくとも1種である上記(1)に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(3)(a2)成分がアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびダイアセトンアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種である上記(1)または(2)に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(4)(B)架橋剤がエポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、イソシアネート系化合物、アルコキシシラン系化合物およびアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種であって、該架橋剤の架橋性官能基が(a2)成分の反応性官能基1当量に対して0.01〜5当量となるように含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(5)23℃、測定周波数1Hzにおける動的粘弾性試験による乾燥皮膜の貯蔵弾性率が0.03〜0.3MPaである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(6)基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着シートであって、粘着剤層が上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物からなり、該粘着剤層に剥離シートを設けてなる粘着シート。
(7)前記剥離シートが、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル含有樹脂、アルキド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびゴム系エラストマーから選ばれる少なくとも1種からなる剥離剤層が形成されてなる上記(6)に記載の粘着シート。
(8)基材と粘着剤層が、所定の形状寸法に連続的に切り抜かれている上記(6)または(7)に記載の粘着シート。
(9)上記(6)〜(8)のいずれかに記載の粘着シートを被着体へ貼付する粘着シートの使用方法であって、粘着シートの繰り出し速度が30m/分以上である粘着シートの使用方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剥離シートの種類を選ばず、ラベルの繰り出し(剥離)速度が高速であっても剥離シート上に粘着剤が残留することが少ないため、ラベリングマシンを汚染しにくく、生産効率を高めることができる。なおかつラベリング適性(被着体への貼付性)にも優れた水分散型アクリル系粘着剤組成物が得られ、優れた粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)を含有する。本発明に用いるアクリル系共重合体(A)は、(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(a2)架橋化基点として作用する反応性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を含む混合物を乳化重合して得られる。
まず、アクリル系共重合体(A)中の成分(a1)について説明する。
本発明に用いる成分(a1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に挙げられる。
成分(a1)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸イソウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル等が挙げられる。
中でも、性能のバランスという観点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
上記成分(a1)は単独でも、2種類以上混合して用いても良い。
【0010】
アクリル系共重合体(A)中における成分(a1)由来の構成単位の含有量は50〜99.9質量%であることが好ましく、70〜99.5質量%であることがより好ましく、80〜99.0質量%であることがさらに好ましい。
成分(a1)を50質量%以上含むことで、充分な粘着力、タックが得られ、99.9質量%以下含むことで、成分(a2)や必要に応じてその他の不飽和単量体を含有させて、充分な凝集力を得ることができる。
【0011】
次に、アクリル系共重合体(A)中の成分(a2)について説明する。
成分(a2)は、架橋剤(B)の架橋化基点として作用する反応性官能基を有するエチレン性飽和単量体であり、反応性官能基としてカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アミノ基およびカルボニル基から選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。
成分(a2)としては、後述する架橋剤(B)と反応において架橋化基点として作用する反応性官能基を有するエチレン性飽和単量体であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体、または、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メチロールアクリルアミド、ブトキシN−メチロールアクリルアミド等の水酸基を有するエチレン性不飽和単量体、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、ダイアセトンアクリルアミド、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、エチルビニルケトン、n−プロピルビニルケトン、イソプロピルビニルケトン、n−ブチルビニルケトン、t−ブチルビニルケトン等のカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体等や、それら以外にもアクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸アセトアセトキシメチル、メタクリル酸アセトアセトキシメチル、メタクリル酸アセトアセトキシエチル、カプロラクトン変性アセトアセトキシ(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチルビニルエーテル等の活性水素を有するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
これらの中で、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル等の水酸基を有するエチレン性不飽和単量体、およびダイアセトンアクリルアミド等のカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸がより好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がさらに好ましい。上記成分(a2)は単独でも、2種類以上混合して用いても良い。
【0012】
アクリル系共重合体(A)中における成分(a2)に由来する構成単位の含有量は0.1〜12質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
成分(a2)を0.1〜12質量%含むことで、重合安定性、分散安定性、機械安定性といった水分散塗工液状態での安定性と粘着シートにおける粘着剤組成物の乾燥皮膜の物性を両立させることが出来る。0.1質量%以上であると水分散塗工液状態での安定性が向上し、12質量%以下であると粘着剤組成物の乾燥皮膜の適度な架橋度が得られ、弾性率が高くなりすぎるといったことがないために良好なラベリング適性が得られる。成分(a2)の含有量を上記の範囲とすることにより、成分(B)である架橋剤との反応により形成される架橋化基点の量が適切に保たれ、ゲル分率を適切な範囲に調整することができる。
【0013】
アクリル系共重合体(A)において、成分(a1)及び成分(a2)以外の単量体を必要に応じて使用することができる。例えば2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有不飽和単量体、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有不飽和単量体、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、シクロヘキシルマレイミド等の窒素含有不飽和単量体、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル、クロロプレン等のハロゲン化オレフィン類、スチレン、t−ブチルスチレン等のスチレン類、(メタ)アクリロニトリル、クロロアクリロニトリル等のニトリル類不飽和単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有不飽和単量体、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能性不飽和単量体等が挙げられる。
【0014】
次に、アクリル系共重合体(A)の製造方法について説明する。
【0015】
アクリル系共重合体(A)は乳化剤を用いて前記成分(a1)、成分(a2)および必要に応じて使用されるその他の単量体を含む単量体混合物を乳化重合させることにより得られる。
乳化剤としては、アニオン型、ノニオン型の反応性乳化剤、または非反応性乳化剤が使用される。
【0016】
アニオン型反応性乳化剤としては、「アデカリアソープSE−20N」、「アデカリアソープSE−10N」、「アデカリアソープPP−70」、「アデカリアソープPP−710」、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」〔以上、株式会社ADEKA製〕、「エレミノールJS−2」、「エレミノールRS−30」〔以上、三洋化成工業株式会社製〕、「ラテムルE−118B」、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」〔以上、花王株式会社製〕、「アクアロンBC−05」、「アクアロンBC−10」、「アクアロンBC−20」、「アクアロンHS−05」、「アクアロンHS−10」、「アクアロンHS−20」、「ニューフロンティアS−510」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」〔以上、第一工業製薬株式会社製〕、「フォスフィノ−ルTX」〔東邦化学工業株式会社製〕、ポリオキシエチレンラウリルエーテル系反応性乳化剤〔「エマルゲン103」、花王株式会社製〕等が挙げられる。
【0017】
ノニオン型反応性乳化剤としては、「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープNE−40」、「アデカリアソープER−10」、「アデカリアソープER−20」、「アデカリアソープER−30」、「アデカリアソープER−40」〔以上、株式会社ADEKA製〕、「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、「アクアロンRN−50」〔以上、第一工業製薬株式会社製〕等の市販品が挙げられるが、反応性を有していれば良く、特にこれらに限定されない。
【0018】
乳化重合安定性、エマルションの機械安定性を考慮し、非反応性乳化剤を使用しても良く、前述の反応性乳化剤と併用して使用しても良い。
このような非反応性乳化剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用されている公知の乳化剤が用いられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤等が挙げられる。
【0019】
これら乳化剤の使用量は単量体混合物100質量部に対して有効成分(溶媒や各種添加剤を除いた成分)で0.1〜8.0質量部が好ましく、0.5〜5.0質量部がより好ましい。乳化剤の前記使用量を0.1質量部以上とすることにより、乳化重合安定性、得られるエマルションの保存安定性、機械安定性を確保し、8.0質量部以下とすることにより、親水性が高くなり過ぎて耐水性が低下するのを防止することができる。
【0020】
(A)成分であるアクリル系共重合体を含む組成物を調製するための乳化重合の条件としては、特に限定されず、通常の乳化重合で適用される条件をそのまま適用することができる。一般的には、反応器内を不活性ガスで置換した後、還流下撹拌しながら昇温を開始し40〜100℃程度の温度範囲で昇温開始後1〜8時間程度重合を行う。
【0021】
組成物を乳化重合法で調製する際、通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤として、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等のアゾ系、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパ―オキサイド等の過酸化物を使用することができる。
【0022】
重合開始剤の使用量は、乳化重合に使用する単量体混合物の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.01〜3質量部であることがより好ましい。重合開始剤の使用量を5質量部以下とすることにより分子量低下による耐水性、耐熱性等の低下を防止し、また0.01質量部以上とすることにより、接着不良の問題が生じるのを防止することができる。
【0023】
反応性乳化剤を用いて単量体混合物を乳化重合する際、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ターピノーレン等のテルペン系化合物を好ましく用いることができる。また、チオール基や水酸基を有する化合物も一般に知られている。
【0024】
チオール基を有する化合物としては、例えば、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエチルアルコール、ドデシルメルカプタン(1−ドデカンチオール)、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類や、メルカプトプロピオン酸n−ブチルやメルカプトプロピオン酸オクチル等のメルカプトプロピオン酸アルキルや、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルが挙げられる。また水酸基を有する化合物としては、例えば、メチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。
【0025】
連鎖移動剤の使用量は、乳化重合に使用する単量体混合物の合計100質量部に対し0〜1質量部であることが好ましい。1質量部以下とすることにより、分子量低下による耐水性、耐熱性等の低下を防止し、ガイドロール汚染の問題が生じるのを防止することができる。
【0026】
反応性乳化剤を用いて単量体混合物を乳化重合する際、pH調整を行うため、必要に応じてpH緩衝剤を併用してもよい。pH緩衝剤としては、pH緩衝作用を有するものであれば特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0027】
pH緩衝剤の配合量は特に限定はされない。これらのpH緩衝剤は重合前、もしくは重合中に添加してもよい。
【0028】
(A)アクリル系共重合体中のエマルション粒子の平均粒子径は、100〜500nm程度、好ましくは100〜300nmである。平均粒子径が上記範囲内であると乳化重合安定性、得られるエマルションの保存安定性、機械安定性、さらには乾燥後の粘着剤組成物の皮膜の物性バランス、すなわち基材への密着性、被着体への濡れ性、耐水性、凝集力、透明性、機械的強度のバランスに優れた粘着剤が得られる。
平均粒子径が100nm以上であると、安定なエマルション粒子が得られ、乳化剤の使用量が多くなるのを防止することができる。平均粒子径が500nm以下であると、基材に対する密着性や得られる粘着剤層の透明性、耐水性が確保される。エマルション粒子の平均粒子径は重合時に添加する乳化剤の種類や濃度、重合開始剤濃度等でコントロールすることができる。ここで、エマルション粒子の平均粒子径とは、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により測定して得られる体積基準のメジアン径の数値に基づくものである。
【0029】
次に、架橋剤(B)について詳細に説明する。
架橋剤(B)は前記成分(a2)における架橋化基点として作用する反応性官能基により架橋するものであれば特に限定されないが、基材に対する密着性や粘着力、凝集力、分散性、反応性、入手し易さに優れる観点から、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、イソシアネート系化合物、アルコキシシラン系化合物およびアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0030】
エポキシ系化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有するものであればよく、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製、「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」等)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製、「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」等)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−411」等)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−421」等)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」等)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−321」等)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−211」等)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−212」等)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−810」、「デナコールEX−811」等)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−850」、「デナコールEX−851」等)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−821」、「デナコールEX−830」、「デナコールEX−832」、「デナコールEX−841」、「デナコールEX−861」等)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−911」等)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコールEX−941」、「デナコールルEX−920」、「デナコールEX−931」等)、ジグリシジルアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
中でも、水性タイプが好適である。
【0031】
カルボジイミド系化合物としては、分子中にカルボジイミド基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば日清紡績株式会社製の「カルボジライトSV−02」「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−06」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトE−04」等が挙げられる
【0032】
オキサゾリン系化合物としては、分子中にオキサゾリン基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、2位の炭素位置に不飽和炭素−炭素結合をもつ置換基を有する付加重合性2−オキサゾリン(例えば2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)と他の不飽和単量体との共重合体等が挙げられ、市販品として、株式会社日本触媒製の「エポクロスWS−300」「エポクロスWS−500」、「エポクロスWS−700」、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」等が挙げられる。
【0033】
ヒドラジド系化合物としては、分子中に少なくとも2個以上のヒドラジド基を有するものであればよく、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0034】
イソシアネート系化合物としては、分子中にイソシアネート基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば、トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、等のイソシアネート化合物、「スミジュールN」(住友バイエルウレタン株式会社製)のようなビュレットポリイソシアネート化合物、「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(バイエルA.G.社製)、「コロネートEH」(日本ウレタン工業株式会社製)のようなイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、「スミジュールL」(住友バイエルウレタン株式会社製)、「コロネートHL」(日本ポリウレタン工業株式会社製)、「タケネートWD−725」「タケネートWD−720」「タケネートWD−730」「タケネートWB−700」(以上、三井化学ポリウレタン株式会社製)のようなアダクト型のポリイソシアネート化合物、「アクアネート10 0」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」(日本ポリウレタン工業株式会社製)のような自己乳化型の水分散ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、水性タイプが好適である。又、ブロックイソシアネートを使用しても構わない。
【0035】
アルコキシシラン系化合物としては、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和単量体、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
アミン系化合物としては、分子中にアミノ基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば、「エポミンSP−003」、「エポミンSP−006」、「エポミンSP−012」、「エポミンSP−018」、「エポミンSP−200」「エポミンP−1000」(以上、株式会社日本触媒製)のようなポリエチレンイミン、「ポリメントSK−1000」「ポリメントNK−100PM」「ポリメントNK−200PM」(以上、株式会社日本触媒製)のようなアミノエチル化アクリルポリマー等が挙げられる。
【0037】
架橋剤(B)は、前記成分(A)のアクリル系共重合体中の成分(a2)の反応性官能基1当量に対して、該架橋剤の架橋性官能基が0.01〜5当量の範囲となるように配合することが好ましく、0.05〜4当量の範囲がより好ましく、0.1〜3当量の範囲がさらに好ましい。
架橋剤(B)を、その架橋性官能基が0.01〜5当量となるように配合することでラベリング適性(被着体への貼付性)に必要なタックと弾性率を両立させることができる。0.01当量以上であれば、弾性率が低くなりすぎることがないために、粘着剤が剥離シートに残留するのを抑えることができるとともに、高温環境下で粘着シートを長期保存後に著しく弾性率が低下することがなく、保存安定性に優れる。また、5当量以下であれば、粘着剤組成物の乾燥皮膜において適度な架橋度が得られ、弾性率が高くなりすぎることがないため、ラベリング適性が得られ、水分散型アクリル系粘着剤組成物の安定性が良好となる。
【0038】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物中には、前記成分(A)および(B)以外にも、例えば増粘剤、粘着付与剤、および可塑剤等の成分を必要に応じて配合してもよい。
増粘剤としては、セルロース系増粘剤、ポリアクリル酸系増粘剤、ポリエーテルポリオール系増粘剤、ポリエーテルウレタン変性物系増粘剤、およびこれら混合物からなる群から選択されたものが用いられる。
【0039】
セルロース系増粘剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンやポリアクリル酸系のもの等が挙げられる。これらの中でポリアクリル酸系増粘剤やヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが好ましく、特にポリアクリル酸系増粘剤を添加することがより好ましい。
【0040】
ポリアクリル酸系増粘剤の市販品としては、例えば、プライマルASE−60、プライマルASE−75、プライマルASE−95、プライマルASE−108、プライマルRM−5〔ローム&ハース社製〕、SNシックナーA−850〔サンノプコ株式会社製〕等が挙げられる。
【0041】
ポリエーテルポリオール系増粘剤の市販品としては、例えばRHEOLATE300、RHEOLATE310、RHEOLATE350〔レオックス(RHEOX)社製〕、SNシックナーA−801、SNシックナーA−806、SNシックナーA−816〔サンノプコ株式会社製〕、チクゾールT−210、チクゾールT−212〔共栄社化学工業株式会社製〕等が挙げられる。
【0042】
ポリエーテルウレタン変性物系増粘剤の市販品としては、例えばアデカノールUH−140S、アデカノールUH−420、アデカノールUH−438、アデカノールUH−472、アデカノールUH−450、アデカノールUH−540、アデカノールUH−550、アデカノールUH−541、アデカノールUH−526、アデカノールUH−530〔株式会社ADEKA製〕、RHEOLATE244、RHEOLATE255、RHEOLATE278〔レオックス(RHEOX)社製〕、SNシックナーA−803、SNシックナーA−804、SNシックナーA−807、SNシックナーA−812、SNシックナーA−814〔サンノプコ株式会社製〕、DKシックナーSCT−200、DKシックナーSCT−270「第一工業製薬株式会社製」を挙げることができる。
【0043】
増粘剤の配合量は、所望の粘度に応じて適宜調整されるが、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(固形分換算)100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部とすることがより好ましい。
【0044】
粘着付与剤としては、ロジン系、テルペン系の天然樹脂系、石油樹脂系等の合成樹脂系が挙げられる。具体的には、市販品として「ハリエスターSK−508」、「ハリエスターSK−508H」、「ハリエスターSK−532D」、ハリエスターSK−816E」、「ハリエスターSK−822E」、「ハリエスターSK−218NS」「ハリエスターSK−70D」、「ハリエスターSK−501」、「ハリエスターSK−501NS」、「ハリエスターSK−385NS」、「ハリエスターSK−370N」[以上、ハリマ化成株式会社製、商品名]、「スーパーエステルE−720」、「スーパーエステルE−730−55」、「スーパーエステルE−650」、「スーパーエステルE−865」、「タマノルE−100」、「タマノルE−200」、「エマルジョンAM−1002」、「スーパーエステルNS−100H」、「スーパーエステルNS−125A」、「スーパーエステルNS−100A」、「スーパーエステルNS−120B」、「スーパーエステルE−625−NT」、「スーパーエステルE−865−NT」、「タマノルE−200−NT」[以上、荒川化学工業株式会社製、商品名]、「YSレジンTO125」、「YSレジンTO115」、「YSレジンTO105」、「YSレジンTR105」、「YSポリスターU115」、「YSポリスター2130」、「YSポリスター2115」、「YSポリスター2100」、「YSポリスターT145」、「YSポリスターT130」、「YSポリスターT115」、「YSポリスターT100」、「YSポリスターS145」、「マイティーエースG150」、「マイティーエースG125」、「YSポリスターTH130」、「ナノレットR−1050」、「ナノレットG−1250」、「YSレジンTO85」、「YSポリスターT80」、「YSポリスターT50」、「YSポリスターT30」[以上、ヤスハラケミカル株式会社製、商品名]などが挙げられる。
これらの粘着付与剤は重合時にエチレン性不飽和単量体を含む混合物に添加するか、粘着付与剤自体を公知の方法により乳化し、アクリル系共重合体(A)のエマルションに添加することができる。既に水分散体として市販されているものについては、そのまま水分散型アクリル系粘着剤組成物に添加することができる。
【0045】
粘着付与剤の配合量はアクリル系共重合体(A)(固形分換算)100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜16質量部であることがより好ましい。粘着付与剤の配合量が0.1質量部以上であれば、実質的な効果が得られ、粘着力、基材密着性に優れる。20質量部以下であれば、粘着剤層の見かけのTgが高くなって粘着力、基材密着性が得られにくくなるのを防止する。これらの粘着付与剤は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0046】
可塑剤としては、例えば、液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレート、フタル酸ジオクチル、トリエタノールアミン、グリセリン、ジグリセリン、アミンアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0047】
可塑剤の配合量はアクリル系共重合体(A)(固形分換算)100質量部に対して0〜15質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。可塑剤の配合量が0.1質量部以上であれば、実質的な効果が得られ、粘着力、基材密着性に優れる。5質量部以下であれば、粘着剤層が柔軟になり過ぎるのを防止する。これらの可塑剤は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、固形分(不揮発分)が、通常30〜65質量%程度、好ましくは35〜60質量%である。また、粘度は通常50〜30,000mPa・s程度(BM型粘度計、25℃)、好ましくは100〜20,000mPa・sである。
さらに、pHは、通常6〜9の範囲にある。
固形分、粘度及びpHが上記範囲内であると、乾燥性、塗工性、塗工液の分散安定性、及び取り扱い性の点から好ましい。
【0049】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜は、下記(i)〜(iii)のような特性を有することを特徴としており、これらの特性によりラベリング適性(被着体への貼付性)に必要なタックと弾性率を両立し、かつラベリング工程における剥離シート上への粘着剤の残留が少ない粘着剤組成物を得ることができる。したがって、ラベリングマシンにおけるガイドロール汚染を防止することができる。
(i)引張り速度1000mm/分での引張り試験における破断応力が0.3〜2.5MPaであり、かつ破断伸度が2000%以下である。破断応力は好ましくは0.4〜2.2MPa、より好ましくは0.5〜2.0MPaであり、かつ破断伸度は好ましくは200〜2000%、より好ましくは350〜1500%である。破断伸度の下限値は好ましくは200%程度である。
(ii)ガラス転移点(Tg)が−70℃〜−20℃である。好ましくは−65〜−30℃、より好ましくは−60〜−40℃である。
(iii)ゲル分率(テトラヒドロフラン不溶分)が50〜90%である。好ましくは52〜88%、より好ましくは55〜85%である。
【0050】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成される乾燥皮膜は、さらに、23℃、測定周波数1Hzにおける動的粘弾性試験による貯蔵弾性率が0.03〜0.3MPaであることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.25MPa、さらに好ましくは0.1〜0.2MPaである。
【0051】
各特性を上記範囲とすることで、粘着剤の変形として応力を緩和することなく内部に貯蔵することが出来る。このため、剥離紙または剥離フィルムの剥離処理面に欠点があったとしても、粘着剤が破断することがなく、剥離シート上への粘着剤の残留を低減することができる。
引っ張り破断応力が0.3MPa未満、破断伸度が2000%超、Tgが−70℃未満、ゲル分率が50%未満となると、弾性率が低くなりすぎるため粘着剤の残留が多くなるとともに、高温環境下での長期保存後に著しく弾性率が低下する。
一方、引っ張り破断応力が2.5MPa超、破断伸度が200%未満、Tgが−20℃超、ゲル分率が90%超となると、弾性率が高くなりすぎるためラベリング適性が得られない。
【0052】
Tgを−70℃以上、架橋剤の前記添加量を0.01当量以上、連鎖移動剤の前記添加量を1質量部以下とすることにより、破断応力を0.3MPa以上、破断伸度を2000%以下に調整することができる。さらにTgを高く、架橋剤の添加量を増量、連鎖移動剤の添加量を減量すると、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜の破断応力が高くなり、破断伸度が小さくなる傾向がある。
Tgを−20℃以下、架橋剤の前記添加量を5当量以下とすることにより、破断応力を2.5MPa以下に調整することができる。さらにTgを低く、架橋剤の添加量を減量、連鎖移動剤の添加量を増量すると、破断応力が低くなり、破断伸度が大きくなる傾向がある。
【0053】
(a1)に由来する構成単位の前記含有量を50〜99.5%とすることにより、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜のガラス転移点(Tg)を−70℃〜−20℃に調整することができる。さらに(a1)に由来する構成単位の含有量を増量、(a2)や、(a1)及び(a2)以外の単量体に由来する構成単位の含有量を減量すると、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜のTgが低くなる傾向がある。一方、(a1)に由来する構成単位の含有量を減量、(a2)や、(a1)及び(a2)以外の単量体に由来する構成単位の含有量を増量すると、Tgが高くなる傾向がある。
【0054】
架橋剤の前記添加量を5当量以下、(a2)に由来する構成単位の前記含有量を12質量%以下とすることにより、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜のゲル分率を90%以下に調整することができる。さらに架橋剤の添加量を減量、(a2)に由来する構成単位の含有量を減量すると、ゲル分率が低くなる傾向がある。一方、架橋剤の前記添加量を0.01当量以上、(a2)に由来する構成単位の前記含有量を0.1質量%以上とすることにより、ゲル分率を50%以上に調整することができる。さらに架橋剤の添加量を増量、(a2)に由来する構成単位の含有量を増量すると、ゲル分率が高くなる傾向がある
【0055】
本発明の粘着シートは、基材の少なくとも一方の面に、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するものであり、基材の片面に前記粘着剤層を有し、該粘着剤層に剥離シートを設けてなるものが好ましい。上記の特性を有する本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を、基材に塗布、乾燥することにより本発明の粘着シートに加工することができる。
【0056】
基材としては粘着剤層の支持体となるものであれば特に限定されるものではなく、公知の合成樹脂フィルムや上質紙、コート紙及び含浸紙等の紙あるいは内部に空洞を有する合成紙、不織布などが使用可能である。中でも、耐水性を期待される用途を考慮すると合成樹脂フィルムが好ましい。
合成樹脂フィルムの材料としては、特に限定はされず、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸等の合成樹脂フィルム、これらのフィルムにアルミニウムなどの金属蒸着を施したもの等が挙げられる。
粘着シート用基材として用いられる合成樹脂フィルムは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向又は二軸方向に延伸されていてもよい。
【0057】
本発明の粘着シートを製造する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物を、通常は剥離シートへ塗布し、乾燥して粘着剤層を形成させた後に、粘着シート用基材表面と貼り合わせる転写塗工法、先に粘着シート用基材表面へ粘着剤を直接塗布し、乾燥して粘着剤層を形成させた後に剥離シートと貼り合わせる直接塗工法を採用することもできる。
粘着剤組成物の塗工方法としては、特に制限はなく、従来公知の塗布方法が使用可能であり、例えば、コンマコーター、ナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、グラビアコーター、バリオグラビアコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の塗布装置による方法が挙げられる。
【0058】
粘着シート用基材の厚みは、特に制限はないが、通常10〜200μmの範囲であり、取り扱い易さの面から、好ましくは25〜150μmである。
粘着シート用基材は、着色されていてもよいし、無色透明のものでもよい。また、粘着シート用基材の一方の面には、印刷、印字等を施してもよい。
したがって、粘着シート用基材の印刷、印字等を施すための面には、感熱記録層、熱転写、インクジェット、レーザー印字等が可能な印字受像層、印刷性向上層等が設けられていてもよい。
また、粘着シート用基材の粘着剤層を形成させるための面には、粘着剤層との密着力(キーイング力)を向上させる目的で、プライマー処理やコロナ処理等の易接着処理が施されてもよい。
【0059】
粘着剤層の厚みは、特に制限はないが、通常、10〜50μm、好ましくは15〜35μmである。粘着シート用基材、粘着剤層及び剥離シートを積層した粘着シートの厚みは、プリンター等に導入できる厚さが好ましく、通常、50〜300μm、好ましくは60〜250μmである。
【0060】
剥離シートとしては、特に限定されるものではなく、剥離シート用基材に剥離剤層が形成されてなるものであることが望ましい。
剥離シート用の基材としては、例えば、紙、合成紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。
紙としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙のような紙基材、及び上質紙、グラシン紙、コート紙等にセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリル−スチレン樹脂などで目止め処理した紙基材等が挙げられ、合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂からなるフィルム、及びこれらの合成樹脂フィルムに易接着処理を施したフィルムなどが挙げられる。
剥離剤層は、公知の剥離剤を用いて形成することが可能であり、剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル含有樹脂、アルキド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂などのゴム系エラストマーから選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
剥離剤層の厚みは0.05〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5μmである。剥離シート用の基材の厚みは、特に制限はなく、通常、30〜200μmである。
【0061】
なお、本発明の粘着シートは、平面のシート状であってもよいし、ロール状に巻き取ったものであってもよい。本発明の粘着シートが貼付される被着体としては、平板状のものでも、筒状のもの、三次元曲面でもよい。
本発明の粘着シートの好適な用途としては、基材面に印刷を施した粘着シートを、剥離シートを切り抜かずに、基材と粘着剤層のみを所定の形状寸法に連続的に切り抜いた粘着シート(ラベル)を作製し、アルミ缶、スチール缶、ペットボトル等の飲料用容器等を被着体として、高速ラベリングマシンに適用することが可能となり、飲料用容器等に貼付されるキャンペーン用ラベルの高速ラベリングなどに広く利用することができる。
本発明の粘着シートは、ラベルの繰り出し(剥離)速度30m/分以上で被着体へ貼付することが可能であり、より高速、例えば、50m/分以上、さらには100m/分以上、例えば100〜120m/分程度で貼付することも可能である。
このような高速で被着体に貼付しても粘着剤が剥離シート側に残存することがなく、したがって、ガイドロールを汚染することがない。さらに、本発明の粘着剤組成物及び粘着シートはタックが高く高速ラベリング適性に優れ、高温環境下に長期間さらされた後も弾性率の低下が起こりにくく、保存安定性に優れている。
【実施例】
【0062】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜の物理的または機械的性質の測定と評価は下記のとおりに行なった。
(1)破断応力および破断伸度
実施例および比較例で作成した基材レス粘着シートの一方の剥離フィルムを剥離し、厚み3μmのポリエチレン(PE)シート上に粘着剤層の厚みが200μmになるまで積層し、それら同士を重ね合わせて試験用サンプルを作製した。23℃、50%RH環境下で、長さ50mm、幅15mm、厚み400μmに切り出した試験サンプルを「万能材料試験機5581」(インストロン ジャパン カンパニィ リミテッド社製)により引張り速度1000mm/分で引張試験を行い、破断応力および破断伸度を測定した。
(2)ガラス転移点(Tg)測定
実施例および比較例で作成した基材レス粘着シートから約20mgの粘着剤を採取し、「DSC Q2000」〔TAインスツルメント・ジャパン株式会社製〕により、昇温速度20℃/分でTgを測定した。
(3)ゲル分率測定
100mm×100mmにカットした基材レス粘着シートから剥離フィルムを剥離して取り出した粘着剤を、予め重量を測定した150mm×150mm、#300メッシュ(SUS420)で包み試験サンプルとした。試験サンプルを23℃、50%RH環境下で、テトラヒドロフラン(THF)100mL中に3日間浸漬した後取り出した。取り出した試験サンプルの重量を測定し、浸漬前後の粘着剤の重量比から下記計算式により計算してゲル分率とした。
ゲル分率(%)
=[(浸漬後の残存粘着剤層重量)/(浸漬前の粘着剤層重量)]×100
(4)貯蔵弾性率(G′)測定
実施例および比較例で作成した基材レス粘着シートの一方の剥離フィルムを剥離し、粘着剤層同士を積層して厚み3mmの粘着剤層を形成した。両面の剥離フィルムを剥離した粘着剤層を試験サンプルとし、23℃における貯蔵弾性率(G′)を「動的粘弾性測定装置RDAII〔レオメトリック・サイエンティフィク・エフ・イー株式会社製〕により、測定周波数1Hzで測定した。
【0063】
ラベルの貼付およびラベリング特性の評価は下記のとおりに行なった。
(5)ラベリング適性評価(貼付適性)
粘着シートを巻き取ってなる粘着ロールを巾20mm、長さ500mの5巻に裁断し、ラベルサイズ15mm×15mm、ラベル間隔が3mmとなるように抜き加工を行った。これらの粘着ロール5巻を用いてラベリングマシンSRV150EV2〔リンテック株式会社製〕により、繰り出し速度20、40および100m/分でアルミ缶を被着体として、間欠ラベリング試験を行った。粘着ロール5巻を連続して試験した後、被着体にラベルが貼付可能、または貼付できずに剥がれるかを目視で判定し、ラベリング可能な割合により下記の基準で評価した。
○:ラベリング可能な割合が80%以上
△:ラベリング可能な割合が50〜80%
×:ラベリング可能な割合が50%以下
(6)剥離フィルム上に残存した粘着剤の転写によるガイドロールの汚染評価
粘着シートを巻き取ってなる粘着ロールを巾20mm、長さ500mの5巻に裁断し、ラベルサイズ15mm×15mm、ラベル間隔が3mmとなるように抜き加工を行った。これらの粘着ロール5巻を用いてラベリングマシンSRV150EV2〔リンテック株式会社製〕により、繰り出し速度100m/分でアルミ缶を被着体として間欠ラベリング試験を行った。粘着ロール5巻を連続して試験した後、剥離処理面に接触するガイドロールのベタツキ感を下記の基準で評価した。
○:ベタツキなし。
△:ややベタツキがある。
×:ベタツキがある。
【0064】
実施例1
攪拌機、温度計、及び滴下ロートを備えた容器に、(a1)成分としてアクリル酸ブチル(BA)100質量部、(a2)成分としてメタクリル酸(MAA)(分子量86.09)1.0質量部およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2−HEMA)(分子量130.14)1質量部、連鎖移動剤として1-ドデカンチオール0.1質量部を仕込み、これに乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩〔「ラムテルE−118B」、花王株式会社製〕2質量部、アリルアルキルスルホコハク酸エステル塩〔「エレミノールJS−2」、三洋化成株式会社製〕3質量部とイオン交換水40質量部を加え、室温下攪拌して不飽和単量体混合物の乳化物を予め調製した。
別途、攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管、及び滴下ロートを備えた反応装置にイオン交換水28質量部を仕込み、窒素を封入して内温80℃まで昇温し、その温度に保ちながら、重合開始剤として10質量%の過硫酸アンモニウム水溶液2質量部を仕込んだ。
次に、予め調製した前記不飽和単量体の混合物の乳化物を滴下ロートに移し、4時間かけて滴下した。これと併行して5質量%過硫酸アンモニウム水溶液4質量部を滴下して内温80℃で乳化重合を行なった。
滴下終了後、80℃のままで4時間熟成して乳化重合組成物を得た。その後、室温まで冷却し、アンモニア水で中和した後に精製水を加えて固形分50質量%、pHを8.0とした。
さらに、上記乳化重合組成物に対して、増粘剤〔「ASE−60」、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製〕を添加して粘度を10000mPa・s〔BM型粘度計を用いて、#4ローター、12回転/分、25℃の条件で測定〕に調整した。塗工の直前にエポキシ系架橋剤〔「デナコールEX−313」、ナガセケムテックス株式会社製、グリセロールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量141〕0.4質量部を添加し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0065】
次いで、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにポリジメチルシロキサン系剥離剤を塗布してなる軽剥離フィルムの剥離処理面上に、ロールナイフコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが25μmになるように、上記で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を塗工し、90℃にて1分間乾燥し、粘着剤組成物の乾燥皮膜を形成させた。
次いで、上記軽剥離フィルムと同じポリジメチルシロキサン系剥離剤にシリコーンレジンからなる重剥離添加剤を添加して製造した重剥離フィルムと貼り合わせて剥離力に差をつけてなる基材レス粘着シートを作成した。得られた基材レス粘着シートを23℃、50%RH環境下にて7日間養生した後にその乾燥皮膜の機械的性質測定、ガラス転移点(Tg)測定、ゲル分率測定および貯蔵弾性率測定を行った。
【0066】
また、上記のようにして得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート〔「SP−8Kアオ、リンテック株式会社製、シリコーン樹脂で剥離処理したグラシン紙〕の剥離処理面上に、ロールナイフコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが20μmになるように塗工し、90℃にて1分間乾燥し、粘着剤組成物の乾燥皮膜を形成させた。次いで、上記にて得られた乾燥皮膜とポリプロピレン系合成紙〔「ユポSGS80」、ユポ・コーポレーション株式会社製〕を貼り合わせたものを巻取り、500m長の粘着ロールを得た。このようにして得られた粘着ロールを23℃、50%RH環境下にて7日間養生した後、ラベリング適性およびガイドロールの汚染の評価を行った。
【0067】
実施例2
粘度を調整した後に、粘着付与剤〔「スーパーエステルE−650」、荒川化学工業株式会社製〕8質量部を添加した以外は実施例1と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0068】
実施例3
(a1)成分としてBAの代わりにアクリル酸−2エチルヘキシル(2EHA)100質量部を使用し、(a2)成分として2−HEMAを10質量部に増量した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0069】
実施例4
(a1)成分としてBAを40質量部とし、アクリル酸-2エチルヘキシル(2EHA)40質量部、メタクリル酸メチル(MMA)20質量部を追加した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0070】
実施例5
(a2)成分としてメタクリル酸(MAA)を5.0質量部とし、架橋剤として「デナコールEX−313」の代わりに「デナコールEX-421」(ナガセケムテックス株式会社製、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量159)4.0質量部を使用した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0071】
実施例6
(a1)成分としてBAを90質量部に減量し、アクリル酸メチル(MA)10質量部を追加し、(a2)成分としてMAAの代わりにアクリル酸(AA)(分子量72.06)1.0質量部を使用した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0072】
実施例7
(a2)成分としてMAA1.0質量部の代わりにアクリル酸(AA)5.0質量部を使用し、可塑剤としてアミンアルキレンオキサイド付加物〔「エソミンS/25」、ライオン・アクゾ株式会社製〕0.5質量部を追加した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0073】
実施例8
架橋剤として「デナコールEX−313」の代わりにオキサゾリン系架橋剤〔「エポクロスWS-700」、株式会社日本触媒製、オキサゾリン価220 g solid/eq.〕4.0質量部を使用した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0074】
実施例9
架橋剤として「デナコールEX-313」の代わりにカルボジイミド系架橋剤〔「カルボジライトV−04」、株式会社日本触媒製、NCN当量335〕4.0質量部を使用した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0075】
実施例10
架橋剤として「デナコールEX-313」を0.8質量部へ増量した以外は実施例2と同様に基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0076】
実施例11
乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸塩〔「アクアロンKH-05」、第一工業製薬株式会社製〕0.1質量部とポリオキシエチレンラウリルエーテル〔「エマルゲン103」、花王株式会社製〕1.0質量部を使用し、重合開始剤として過硫酸カリウム水溶液を使用した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0077】
実施例12
(a1)としてBAを85質量部、MMAを5質量部、(a2)としてアクリル酸(AA)とメタクリル酸を各5質量部、およびダイアセトンアクリルアミド(DAAM)(分子量169.23)を0.5質量部とし、架橋剤として「デナコールEX-313」の代わりに10質量%アジピン酸ジヒドラジド(ADH)(分子量174.2)水溶液0.5質量部を使用した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0078】
比較例1
(a1)としてBAの代わりに2EHA100質量部を使用し、(a2)としてMAAを0.5質量部に減量した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0079】
比較例2
架橋剤を使用しなかった以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0080】
比較例3
実施例2の水分散型アクリル系粘着剤組成物に、さらにジグリセリン2質量部を添加した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0081】
比較例4
連鎖移動剤として1-ドデカンチオールを1.1質量部とした以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0082】
比較例5
(a1)としてBAを70質量部へ減量し、MMA30質量部を追加した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0083】
比較例6
架橋剤として「デナコールEX-313」を1.2質量部へ増量した以外は実施例2と同様に行ない、基材レス粘着シートと粘着ロールを作製し、同様の測定および評価を行った。
上記実施例1〜12および比較例1〜6におけるアクリル系共重合体中の単量体組成や配合組成、得られた結果を表1および表2に示した。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表1および表2の結果より、以下のことがわかる。
実施例1〜12は、ラベルの繰り出し速度が高速であっても剥離フィルム上に粘着剤が残留しないため、ガイドロールが汚染されることなく、高速ラベリングを行なうことができ、生産効率が高いことがわかる。
これに対して、比較例1では、実施例1〜12と比較して破断応力および貯蔵弾性率が低く、比較例2では、成分(B)の架橋剤を使用していないため、実施例1〜12と比較して破断応力およびゲル分率が低く、比較例3では、実施例1〜12と比較してゲル分率が低く、比較例4では、実施例1〜12と比較して破断応力が低く、破断伸度が高すぎ、ゲル分率と貯蔵弾性率が低い。このために、比較例1〜4ではラベリングの際ガイドロール汚染が生じている。また、比較例5では、実施例1〜12と比較して破断応力が高く、破断伸度が低く、かつ、貯蔵弾性率が高く、比較例6では、実施例1〜12と比較してゲル分率が高すぎる。このため、比較例5および6では、ラベリングの際ガイドロール汚染は生じないが、繰り出し速度40m/分でもラベリングができない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートは、特に、高速ラベリングを必要とする分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(a2)架橋化基点として作用する反応性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を含む混合物を乳化重合して得られるアクリル系共重合体、および(B)架橋剤を含む水分散型アクリル系粘着剤組成物であって、該粘着剤組成物の乾燥皮膜が下記(i)〜(iii)を満足することを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(i)引張り速度1000mm/分での引張り試験における破断応力が0.3〜2.5MPaであり、かつ破断伸度が2000%以下、
(ii)ガラス転移点(Tg)が−70℃〜−20℃
(iii)ゲル分率(テトラヒドロフラン不溶分)が50〜90%
【請求項2】
(a2)成分由来の構成単位が(A)アクリル系共重合体中に0.1〜12質量%で含有し、(a2)成分の反応性官能基がカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アミノ基およびカルボニル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
(a2)成分がアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびダイアセトンアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
(B)架橋剤がエポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、イソシアネート系化合物、アルコキシシラン系化合物およびアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種であって、該架橋剤の架橋性官能基が(a2)成分の反応性官能基1当量に対して0.01〜5当量となるように含む請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
23℃、測定周波数1Hzにおける動的粘弾性試験による乾燥皮膜の貯蔵弾性率が0.03〜0.3MPaである請求項1〜4のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着シートであって、粘着剤層が請求項1〜5のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物からなり、該粘着剤層に剥離シートを設けてなる粘着シート。
【請求項7】
前記剥離シートが、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル含有樹脂、アルキド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびゴム系エラストマーから選ばれる少なくとも1種からなる剥離剤層が形成されてなる請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
基材と粘着剤層が、所定の形状寸法に連続的に切り抜かれている請求項6または7に記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の粘着シートを被着体へ貼付する粘着シートの使用方法であって、粘着シートの繰り出し速度が30m/分以上である粘着シートの使用方法。

【公開番号】特開2010−235710(P2010−235710A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83440(P2009−83440)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】