説明

水密コネクタ及びその製造方法

【課題】各端子の両端部を水密に仕切ることができ、前記端子の一端側から他端側への液体の侵入を確実に防止することができ、製造が容易で、コストが低くなるようにする。
【解決手段】相手側コネクタの相手側端子と接触する接触部、及び、他の導電部材に接続される接続部を備える複数の端子と、前記接触部と接続部との間において端子と一体化するように成形された絶縁性材料から成るハウジング部とを有する水密コネクタであって、前記ハウジング部は、円柱側面状の外周壁を備える本体部と、前記外周壁の一端において前記本体部に一体的に接続された円筒状のスカート部とを備え、前記接触部は前記外周壁に露出し、前記接続部の少なくとも自由端は、前記スカート部内に画定された空間内において本体部から延出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水密コネクタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタにおいては、合成樹脂等の絶縁性材料から成るハウジングの底板に形成された貫通孔(こう)に金属製の棒状部材から成る端子を圧入して固定するようになっている。この場合、貫通孔の内壁と端子の外周との間に不可避的に隙(すき)間が生じるので、端子の先端部が突出して相手側コネクタ端子と接触する前記底板の一側面側と、端子の根本部が突出してケーブルの電線等と接続される前記底板の他側面側との間の密封性を維持することが困難であった。そのため、例えば、医療機器に使用されるコネクタのように洗浄が要求されるコネクタの場合、端子の先端部が突出して相手側コネクタ端子と接触する側を洗浄するために使用された洗浄液が、ケーブルの電線等と接続される側にも侵入してしまい端子の根本部と電線等との接続部が腐食したり、劣化による亀裂が発生したりして悪影響を及ぼすことがある。
【0003】
また、光ファイバ等の他の線状体と電線とを一体化したケーブルにおいては、他の線状体を中心として、その周囲を取囲むように電線を環状に配列させることがある。このように環状に配列された電線を接続する円筒状のコネクタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図19は従来の円筒状のコネクタを示す断面図である。
【0005】
図において、801はコネクタの端子であり、複数本が中心軸の周りを取囲むように環状に配列されている。また、802は端子801が取付けられた要素部であり、帯状のストリップ803に一体的に接続されている。前記要素部802及びストリップ803は、弾性を備えるプラスチックから成り、射出成形等の成形方法によって一体的に成形される。この場合、一直線に並んだ台形断面の要素部802が直線状のストリップ803で相互に連結される。なお、各要素部802には端子801が埋込まれる。また、帯状のストリップ803の一端には円筒状又は多角形状の外面を備えるコア部804が一体的に接続されている。
【0006】
そして、該コア部804を中心として、その周りにストリップ803を巻付けるようにして、図に示されるような円筒を形成する。この場合、ストリップ803が円筒の外側にきて、要素部802が円筒の内側を向き、隣接する要素部802の斜めの側面同士が接触するようにする。このようにして形成された円筒を金属製又はプラスチック製のブッシュ805内に取付けることによって円筒状のコネクタを得ることができる。
【特許文献1】特開昭61−237383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の円筒状のコネクタにおいては、密封性については何ら考慮されていない。そのため、前記円筒状のコネクタを洗浄が要求される用途に使用した場合、端子801の先端部が突出して相手側コネクタ端子と接触する側を洗浄するために使用された洗浄液が、ケーブルの電線等と接続される側にも侵入してしまい、端子801の根本部と電線等との接続部が腐食したり、劣化による亀裂が発生したりして悪影響を及ぼす恐れがある。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、各端子の少なくとも一部を第1の樹脂でオーバーモールドする直線状の中間保持部を成形し、該中間保持部を曲げて円弧状にし、円弧状の中間保持部の少なくとも一部を第2の樹脂でオーバーモールドすることによって、各端子の両端部を水密に仕切ることができ、前記端子の一端側から他端側への液体の侵入を確実に防止することができ、製造が容易で、コストが低い水密コネクタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の水密コネクタにおいては、相手側コネクタの相手側端子と接触する接触部、及び、他の導電部材に接続される接続部を備える複数の端子と、前記接触部と接続部との間において端子と一体化するように成形された絶縁性材料から成るハウジング部とを有する水密コネクタであって、前記ハウジング部は、円柱側面状の外周壁を備える本体部と、前記外周壁の一端において前記本体部に一体的に接続された円筒状のスカート部とを備え、前記接触部は前記外周壁に露出し、前記接続部の少なくとも自由端は、前記スカート部内に画定された空間内において本体部から延出する。
【0010】
本発明の他の水密コネクタにおいては、さらに、前記本体部は貫通孔を備え、前記接続部の少なくとも自由端は、前記貫通孔の周囲に環状に配列される。
【0011】
本発明の更に他の水密コネクタにおいては、さらに、前記ハウジング部は、前記本体部に一体的に接続され、前記スカート部と反対方向に延出する第一嵌(かん)合部を備え、前記貫通孔は前記第一嵌合部も貫通する。
【0012】
本発明の水密コネクタの製造方法においては、一端がキャリア部に接続されて直線状に配列された複数の端子を形成する工程と、前記端子の少なくとも一部を第1の樹脂でオーバーモールドすることによって、複数の端子を配列された状態で保持する中間保持部を形成する工程と、前記キャリア部を切除した後に、前記中間保持部を曲げて円弧状にする工程と、円弧状の中間保持部の少なくとも一部を第2の樹脂でオーバーモールドすることによって、円柱側面状の外周壁を備える本体部を備えるハウジング部を形成する工程とを有する。
【0013】
本発明の他の水密コネクタの製造方法においては、さらに、前記中間保持部は、各端子の少なくとも一部を覆う端子保持部と、隣接する端子保持部同士を連結する薄板状の連結部とを備え、前記端子保持部と連結部とが交互に配列されている。
【0014】
本発明の更に他の水密コネクタの製造方法においては、さらに、前記端子は、相手側コネクタの相手側端子と接触する接触部と、他の導電部材に接続される接続部とを備え、前記接触部は中間保持部の一面に露出し、前記接続部は中間保持部から延出する。
【0015】
本発明の更に他の水密コネクタの製造方法においては、さらに、前記接触部が円弧の曲率中心と反対側を向くように前記中間保持部を曲げて円弧状にする。
【0016】
本発明の更に他の水密コネクタの製造方法においては、さらに、単数又は複数の円弧状の中間保持部の端部を近接して環状とし、第2の樹脂でオーバーモールドする。
【0017】
本発明の更に他の水密コネクタの製造方法においては、さらに、前記本体部に円筒状のスカート部を一体的に接続する工程を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水密コネクタは、各端子の少なくとも一部を第1の樹脂でオーバーモールドする直線状の中間保持部を成形し、該中間保持部を曲げて円弧状にし、円弧状の中間保持部の少なくとも一部を第2の樹脂でオーバーモールドすることによって製造される。これにより、各端子の両端部を水密に仕切ることができ、前記端子の一端側から他端側への液体の侵入を確実に防止することができ、製造が容易で、コストを低い水密コネクタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態における水密コネクタを示す斜視図、図2は本発明の実施の形態における水密コネクタを示す三面図である。なお、図2において、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
【0021】
図において、1は本実施の形態における水密コネクタであり、合成樹脂等の絶縁性材料から成るハウジング部11、該ハウジング部11に取付けられた金属等の導電性材料から成る端子61、及び、前記ハウジング部11と一体化するように成形され、合成樹脂等の絶縁性材料から成り、後述される相手側コネクタ101と嵌合する第一嵌合部15を有する。
【0022】
なお、本実施の形態において、水密コネクタ1の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記水密コネクタ1の各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、樹脂成形技術のうち、ダブルモールド成形といわれる二色成形(多重成形)、アウトサート成形、インサート成形等の技術をオーバーモールドと称することとする。
【0023】
ここで、前記水密コネクタ1は、例えば、医療機器に使用されるものであるが、いかなる用途に使用されるものであってもよい。前記水密コネクタ1は、光ファイバ等の他の線状体と導電線とを一体化した後述されるケーブル91であって、他の線状体を中心として、その周囲を取囲むように導電線を環状に配列させたケーブル91の導電線を接続するのに適した円筒状のコネクタであるが、いかなる種類のケーブルの導電線を接続するために使用されるものであってもよい。
【0024】
前記ハウジング部11は、中心に断面円形の貫通孔13が形成された厚板リング状又は環状の本体部11bを有し、該本体部11bの外周壁の上端には上方に延出する円筒状のスカート部11aが一体的に接続されている。また、前記本体部11bの内周壁の下端には下方に延出する円筒状の第一嵌合部15が一体的に接続されている。これにより、ハウジング部11は、全体として、大径部と小径部とを備える段付の円筒のような形状を有する。前記ハウジング部11の外径は、例えば、30〔mm〕程度であり、また、スカート部11a、本体部11b及び第一嵌合部15の各部における最低限の肉厚は0.35〔mm〕程度であるが、水密コネクタ1の各部の寸法は、任意に設定することができる。
【0025】
なお、前記第一嵌合部15は、相手側コネクタ101と嵌合する部分であり、外周壁には軸方向に延在するリブ状の突起15aが一体的に形成されている。該突起15aは、例えば、相手側コネクタ101の後述される凹部116と係合して、水密コネクタ1と相手側コネクタ101との相対的回転を防止する回止めとして使用されるが、いかなる用途に用いられるものであってもよい。さらに、図示される例においては、突起15aが2箇所に形成されているが、該突起15aの数、配設する部位等は任意に設定することができる。
【0026】
さらに、前記スカート部11aは、ケーブル91に取付けられるケーブル用コネクタやケーブル91の導体と直接接続される第二嵌合部として使用される。
【0027】
また、前記貫通孔13は、第一嵌合部15をも貫通するものであり、例えば、水密コネクタ1が医療用内視鏡、カテーテル等の導電線の接続に使用された場合、光ファイバその他の線状体、管状体等を通過させることができるようになっている。
【0028】
本実施の形態においては、複数の端子61がハウジング部11の本体部11bに水密に埋込まれている。そして、各端子61の一端に形成された接続部としてのテール部62が、スカート部11a内に画定された空間内において、本体部11bの上面から上方に延出し、各端子61の他端近傍に形成された接触部64が本体部11bの外周壁面に露出している。前記テール部62の各々は、水密コネクタ1に接続されるケーブル91が備える複数の導電線の各々に接続される。なお、図示される例において、前記テール部62は、二重の円(二つのピッチサークルダイヤメータ)を描くように配列されているが、テール部62の配列の仕方は任意に変更することができ、例えば、一重の円(一つのピッチサークルダイヤメータ)を描くように配列されてもよいし、三重以上の円(三つ以上のピッチサークルダイヤメータ)を描くように配列されてもよい。また、前記接触部64の各々は、水密コネクタ1と嵌合する相手側コネクタ101が備える相手側端子161の各々と接触して導通する。
【0029】
前述のように、端子61がハウジング部11の本体部11bに水密に埋込まれ、端子61と本体部11bとの間には隙間が存在せず、かつ、テール部62の周囲がスカート部11aによって囲まれているので、テール部62と接触部64とはハウジング部11によって水密に仕切られている。これにより、水密コネクタ1の嵌合側、すなわち、接触部64側を洗浄する際にも、洗浄液等の液体が接触部64側からテール部62側に侵入することが、ハウジング部11によって防止される。
【0030】
次に、前記構成の水密コネクタ1の製造方法について説明する。まず、端子61の一部を第1の樹脂でオーバーモールドする方法について説明する。
【0031】
図3は本発明の実施の形態における端子を示す斜視図、図4は本発明の実施の形態における端子を示す三面図、図5は本発明の実施の形態における端子の一部を第1の樹脂でオーバーモールドした状態を示す斜視図、図6は本発明の実施の形態における端子の一部を第1の樹脂でオーバーモールドした状態を示す三面図、図7は本発明の実施の形態における第1の樹脂でオーバーモールドされた端子からキャリア部を切除した状態を示す斜視図、図8は本発明の実施の形態における第1の樹脂でオーバーモールドされた端子からキャリア部を切除した状態を示す三面図である。なお、図4、6及び8において、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
【0032】
まず、導電性の金属板を打抜き、曲げ加工を施すことによって、図3及び4に示されるような端子61を形成する。該端子61は、搬送等に使用され、後の工程で切除されるキャリア部66に接続されて、複数本が一体的に形成される。各端子61は、図3及び4に示されるように、ハウジング部11に埋込まれる細長い帯状の直線的な本体部63、該本体部63の上端に直交するように接続された野球のホームベースのような形状を備える板状の接触部64、及び、前記本体部63の下端に直交するように接続された細長い帯状の直線的なテール部62を有し、全体として略クランク状の側面形状を有している。そして、各端子61のテール部62は、細長い帯状の接続部67を介して、幅広い直線的な帯状のキャリア部66に接続されている。なお、67aは、テール部62と接続部67との境界を示す境界線であり、後の工程で切除されるキャリア部66を切除する際には、前記境界線67aに沿って切断が行われる。
【0033】
図3及び4に示される例においては、本体部63が長い端子61と本体部63が短い端子61とが交互になるように、配列されている。これは、前述のように、テール部62が二重の円を描くように配列されるためであり、本体部63が長い端子61のテール部62が図2(b)における内側の円を描き、本体部63が短い端子61のテール部62が図2(b)における外側の円を描くようになっている。なお、例えば、テール部62が一重の円を描く場合、すべての本体部63は等しい長さに形成され、例えば、テール部62が三重の円を描く場合、本体部63は三段階の長さに形成される。
【0034】
続いて、射出成形、注型成形等の成形方法によって、前記端子61の一部を第1の樹脂でオーバーモールドして、図5及び6に示されるような中間保持部としてのハーモニカ部16を形成する。この場合、少なくとも接触部64、本体部63及びテール部62の一部を図示されない一次成形金型内にセットし、該一次成形金型内に溶融した第1の樹脂を充填(てん)することによって、端子61の一部と一体化されたハーモニカ部16が形成される。なお、前記第1の樹脂は、例えば、PPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂であるが、射出成形、注型成形等の成形方法に用いることができ、しかも適当な可撓性を備える樹脂であれば、いかなる種類の樹脂であってもよい。
【0035】
前記ハーモニカ部16は、接触部64、本体部63及びテール部62の少なくとも一部を覆う端子保持部としてのコア部16aと、隣接するコア部16a同士を連結する薄板状の連結部16bとを有する。これにより、前記ハーモニカ部16は、図6(a)に示されるように、全体的に直線状の部材であるが、正面から観た形状が略蛇腹状、又は、ハーモニカの一連の開口を連想させる形状を有する。また、前記コア部16aには、上面側の角部をほぼ直角に切欠くような形状の第1切欠部16c及び第2切欠部16dが形成されている。
【0036】
そして、板状の接触部64は、ほぼ全体がコア部16aに埋込まれているが、その上面がコア部16aの上面に露出するようになっている。また、本体部63も、ほぼ全体がコア部16aに埋込まれているが、その一部の面が第1切欠部16cの一面に露出するようになっている。さらに、テール部62は、本体部63寄りの部分がコア部16aに埋込まれているが、接続部67寄りの部分がコア部16aから延出している。
【0037】
続いて、境界線67aに沿ってテール部62から接続部67を切断し、キャリア部66及び接続部67を除去する。これにより、図7及び8に示されるような単位ベース部17aを得ることができる。該単位ベース部17aは、ハーモニカ部16及び該ハーモニカ部16のコア部16aに一部が埋込まれた端子61から成る。
【0038】
次に、前記ハーモニカ部16の少なくとも一部を第2の樹脂でオーバーモールドすることによって、水密コネクタ1を製造する方法について説明する。
【0039】
図9は本発明の実施の形態における単位ベース部を円弧状に変形させた状態を示す第1の斜視図、図10は本発明の実施の形態における単位ベース部を円弧状に変形させた状態を示す第2の斜視図、図11は本発明の実施の形態における単位ベース部を円弧状に変形させた状態を示す二面図、図12は本発明の実施の形態における単位ベース部を結合したベース部を示す斜視図、図13は本発明の実施の形態における単位ベース部を結合したベース部を示す三面図である。なお、図11において、(a)は正面図、(b)は背面図であり、図13において、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
【0040】
まず、ハーモニカ部16を曲げることによって変形させ、図9〜11に示されるような円弧状の形状とする。この場合、図11(a)に示されるように、正面から観た状態で連結部16bを結ぶ線が円弧を形成し、コア部16aの上面、すなわち、接触部64が露出している面が外側を向き、コア部16aの下面が内側を向くように、ハーモニカ部16を変形させる。すなわち、接触部64が円弧の曲率中心と反対側を向くようにする。前記ハーモニカ部16は、コア部16aと、隣接するコア部16a同士を連結する薄板状の連結部16bとを有し、コア部16aと連結部16bとが交互に配列されている状態となっているので、該連結部16bを曲げることによって、連結部16bを結ぶ線が円弧を形成するような形状とすることができる。なお、前記連結部16bを結ぶ線が形成する円弧の曲率は、適宜設定することができる。
【0041】
続いて、円弧状となった単位ベース部17aを複数個使用して、図12及び13に示されるようなリング状、すなわち、環状のベース部17を得ることができる。この場合、ハーモニカ部16の端部を接続又は近接させる。前記ベース部17は、複数の接触部64が一列に並んで配列された外周面を備えるリング状又は環状の部材であり、リング又は環の軸方向に垂直な面の一方から前記軸方向に延出する複数のテール部62を備える。なお、図示される例において、テール部62が二重の円を描くように配列されている。
【0042】
この場合、一つのベース部17を形成するために必要な単位ベース部17aの数は、単位ベース部17aの長さ及び連結部16bを結ぶ線が形成する円弧の曲率によって変化する。例えば、曲率が一定であっても、単位ベース部17aの長さが短ければ、一つのベース部17を形成するために必要な単位ベース部17aの数は多くなる。また、例えば、単位ベース部17aの長さが一定であっても、曲率が小さければ、一つのベース部17を形成するために必要な単位ベース部17aの数は少なくなる。なお、単位ベース部17aの長さが十分に長い場合には、図12及び13に示されるように、一つの単位ベース部17aの両端同士を接続又は近接させることによって、ベース部17を得ることができる。
【0043】
続いて、射出成形、注型成形等の成形方法によって、前記ベース部17の備えるハーモニカ部16の少なくとも一部を第2の樹脂でオーバーモールドして、図1及び2に示されるような水密コネクタ1の少なくともハウジング部11を形成する。この場合、ベース部17を図示されない二次成形金型内にセットし、該二次成形金型内に溶融した第2の樹脂を充填することによって、ハーモニカ部16の少なくとも一部と一体化されたハウジング部11の本体部11bが形成される。
【0044】
なお、前記第2の樹脂は、例えば、水密コネクタ1が医療機器に使用されるものである場合、レーデルRポリフェニルサルホン等のような耐薬品性が高く、人体への悪影響がないことが検証されている樹脂であることが望ましいが、その他の樹脂であってもよい。これにより、前記ハーモニカ部16の隣接するコア部16a同士の間の空間、第1切欠部16c、第2切欠部16d等に第2の樹脂が充填され、厚板リング状又は環状の本体部11bを得ることができる。
【0045】
また、環状のベース部17を二次成形金型内にセットするので、端子61は、環状に配列された状態で前記二次成形金型内に正確にセットされることになる。
【0046】
通常、直線状に配列された状態の端子61を成形金型内に正確にセットすることが容易であるのに対して、環状に配列された状態の端子61を成形金型内に正確にセットすることは困難である。すなわち、図3及び4にも示されるように、端子61は、金属板を打抜き、曲げ加工を施すことによって形成され、直線的なキャリア部66に接続されて、複数本が一体的に形成される。そのため、キャリア部66を使用することによって、端子61を直線状に配列された状態としたままで一次成形金型の直線状のキャビティ内に載置し、端子61の各部がキャビティ面の各部から所定の距離を維持するように正確にセットすることは、比較的容易である。これに対し、端子61を環状に配列された状態として、二次成形金型の環状のキャビティ内に載置し、端子61の各部がキャビティ面の各部から所定の距離を維持するように正確にセットすることは、極めて困難である。
【0047】
しかし、本実施の形態においては、端子61の一部を第1の樹脂でオーバーモールドすることによって得られたベース部17を二次成形金型内にセットするので、端子61をオーバーモールドしている樹脂の部分、例えば、コア部16aの各部の表面をキャビティ面の各部に当接させることによって、端子61の各部がキャビティ面の各部から所定の距離を維持するようにすることができる。そのため、端子61を環状に配列された状態としても、端子61の各部がキャビティ面の各部から所定の距離を維持するように二次成形金型の環状のキャビティ内に正確にセットすることが容易となる。
【0048】
続いて、二重成形等の成形方法によって、第一嵌合部15及びスカート部11aを本体部11bに一体的に接続する。なお、前記第一嵌合部15及びスカート部11aは、別個の成形工程によって順次本体部11bに接続することもでき、また、同一の成形工程によって同時に本体部11bに接続することもできる。さらに、前記第一嵌合部15及び/又はスカート部11aは、ベース部17を第2の樹脂でオーバーモールドして本体部11bを成形する際に、該本体部11bと一体的に成形することもできる。これにより、図1及び2に示されるような水密コネクタ1を得ることができる。
【0049】
次に、該水密コネクタ1の使用例について説明する。
【0050】
図14は本発明の実施の形態における相手側コネクタを示す斜視図、図15は本発明の実施の形態における相手側コネクタを示す三面図、図16は本発明の実施の形態における基板に実装された相手側コネクタを示す斜視図、図17は本発明の実施の形態におけるケーブルに接続された水密コネクタを示す斜視図、図18は本発明の実施の形態における相手側コネクタと嵌合した水密コネクタを示す斜視図である。なお、図15において、(a)は下面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【0051】
図14〜16に示されるように、相手側コネクタ101は、概略円筒状の形状を備え、合成樹脂等の絶縁性材料から成る相手側ハウジング部111、及び、該相手側ハウジング部111に取付けられた金属等の導電性材料から成る相手側端子161を有する。そして、前記相手側ハウジング部111は、中心に断面円形の貫通孔113が形成された厚板リング状又は環状の本体部111bを有し、該本体部111bの外周壁の上端には上方に延出する円筒状のスカート部111aが一体的に接続されている。
【0052】
水密コネクタ1は、相手側コネクタ101と嵌合すると、スカート部111a内に挿入された状態となる。また、前記貫通孔113には水密コネクタ1の第一嵌合部15が挿入され、前記貫通孔113に形成された凹部116に第一嵌合部15の突起15aが係合することによって、水密コネクタ1と相手側コネクタ101との相対的回転が防止される。
【0053】
さらに、前記スカート部111aの内面には相手側端子161が配設され、その相手側接触部163が内方に突出した状態となっている。そして、該相手側接触部163が水密コネクタ1の端子61の接触部64と接触することによって、相手側端子161と端子61とが導通する。
【0054】
また、前記本体部111bからは相手側端子161のテール部162が突出する。該テール部162は、プリント回路基板等の基板191の表面に配設された接続パッド、スルーホール等にはんだ付等の接続手段によって接続される。これにより、相手側コネクタ101は基板191に実装される。なお、相手側コネクタ101は、基板191に代えて、医療用装置等の電気機器、電子機器等に実装されるようにしてもよい。
【0055】
一方、水密コネクタ1は、図17に示されるように、ケーブル91の端部に接続される。該ケーブル91は、例えば、光ファイバ等の他の線状体と他の導電部材としての導電線とを一体化したものであり、他の線状体を中心として、その周囲を取囲むように導電線を環状に配列させたものであるが、いかなる種類のケーブルであってもよい。そして、前記導電線は、端子61のテール部62に接続されている。
【0056】
これにより、図18に示されるように、基板191に実装された相手側コネクタ101に水密コネクタ1を嵌合すると、ケーブル91の導電線が端子61及び相手側端子161を介して、基板191の図示されない配線と導通される。
【0057】
このように、本実施の形態においては、各端子61の少なくとも一部を第1の樹脂でオーバーモールドすることによってハーモニカ部16を成形し、該ハーモニカ部16及び端子61から成る単位ベース部17aを円弧状に変形して環状のベース部17とし、該ベース部17を成形金型にセットし、前記ベース部17の少なくとも一部を第2の樹脂でオーバーモールドすることによって、水密コネクタ1のハウジング部11の少なくとも本体部11bを成形するようになっている。
【0058】
これにより、各端子61の接触部64とテール部62との間を水密に仕切ることができ、接触部64側からテール部62側への液体の侵入を確実に防止することができ、製造が容易で、コストが低い水密コネクタ1を得ることができる。
【0059】
そして、単位ベース部17aを成形する際には、直線状に配列された状態の端子61を一次成形金型内にセットするので、端子61を容易に、かつ、正確に位置決めして第1の樹脂でオーバーモールドすることができるとともに、本体部11bを成形する際には、単位ベース部17aを円弧状に変形して得られた環状のベース部17を二次成形金型内にセットするので、環状に配列された状態の端子61を容易に、かつ、正確に位置決めして第2の樹脂でオーバーモールドすることができる。
【0060】
また、端子61の少なくとも一部を第1の樹脂でオーバーモールドすることによって形成されたハーモニカ部16の少なくとも一部を第2の樹脂で更にオーバーモールドすることによって本体部11bを成形するので、該本体部11bによって端子61の接触部64とテール部62との間を確実に水密に仕切ることができる。すなわち、仮に第1の樹脂でオーバーモールドすることによって形成されたハーモニカ部16と端子61との間に隙間があったとしても、第2の樹脂で更にオーバーモールドするので、前記隙間に第2の樹脂が充填され、前記隙間が確実に塞(ふさ)がれる。また、ハーモニカ部16を変形させて円弧状とする際に発生する応力によって、連結部16b等に亀裂が生じたり、端子61とコア部16aとの間に隙間が生じたりした場合も、同様に、第2の樹脂で更にオーバーモールドするので、前記亀裂や隙間は、第2の樹脂が充填されることによって確実に塞がれる。
【0061】
さらに、レーデルRポリフェニルサルホン等のような比較的高価な樹脂を使用する場合、比較的高価な樹脂を第2の樹脂としてのみ使用することによって、その使用量を抑制することができるので、コストを抑制することができる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、二重にオーバーモールドすることによってハウジング部11の本体部11bを成形する場合についてのみ説明したが、三重以上にオーバーモールドすることによって本体部11bを成形することもできる。
【0063】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態における水密コネクタを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における水密コネクタを示す三面図である。
【図3】本発明の実施の形態における端子を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における端子を示す三面図である。
【図5】本発明の実施の形態における端子の一部を第1の樹脂でオーバーモールドした状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における端子の一部を第1の樹脂でオーバーモールドした状態を示す三面図である。
【図7】本発明の実施の形態における第1の樹脂でオーバーモールドされた端子からキャリア部を切除した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態における第1の樹脂でオーバーモールドされた端子からキャリア部を切除した状態を示す三面図である。
【図9】本発明の実施の形態における単位ベース部を円弧状に変形させた状態を示す第1の斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態における単位ベース部を円弧状に変形させた状態を示す第2の斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態における単位ベース部を円弧状に変形させた状態を示す二面図である。
【図12】本発明の実施の形態における単位ベース部を結合したベース部を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態における単位ベース部を結合したベース部を示す三面図である。
【図14】本発明の実施の形態における相手側コネクタを示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態における相手側コネクタを示す三面図である。
【図16】本発明の実施の形態における基板に実装された相手側コネクタを示す斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態におけるケーブルに接続された水密コネクタを示す斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態における相手側コネクタと嵌合した水密コネクタを示す斜視図である。
【図19】従来の円筒状のコネクタを示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 水密コネクタ
11 ハウジング部
11a、111a スカート部
11b、111b 本体部
13、113 貫通孔
15 第一嵌合部
15a 突起
16 ハーモニカ部
16a、804 コア部
16b 連結部
16c 第1切欠部
16d 第2切欠部
17 ベース部
17a 単位ベース部
61、801 端子
62、162 テール部
63 本体部
64 接触部
66 キャリア部
67 接続部
67a 境界線
91 ケーブル
101 相手側コネクタ
111 相手側ハウジング部
116 凹部
161 相手側端子
163 相手側接触部
191 基板
802 要素部
803 ストリップ
805 ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)相手側コネクタ(101)の相手側端子(161)と接触する接触部(64)、及び、他の導電部材に接続される接続部(62)を備える複数の端子(61)と、
(b)前記接触部(64)と接続部(62)との間において端子(61)と一体化するように成形された絶縁性材料から成るハウジング部(11)とを有する水密コネクタ(1)であって、
(c)前記ハウジング部(11)は、円柱側面状の外周壁を備える本体部(11b)と、前記外周壁の一端において前記本体部(11b)に一体的に接続された円筒状のスカート部(11a)とを備え、
(d)前記接触部(64)は前記外周壁に露出し、前記接続部(62)の少なくとも自由端は、前記スカート部(11a)内に画定された空間内において本体部(11b)から延出することを特徴とする水密コネクタ(1)。
【請求項2】
(a)前記本体部(11b)は貫通孔(13)を備え、
(b)前記接続部(62)の少なくとも自由端は、前記貫通孔(13)の周囲に環状に配列される請求項1に記載の水密コネクタ(1)。
【請求項3】
(a)前記ハウジング部(11)は、前記本体部(11b)に一体的に接続され、前記スカート部(11a)と反対方向に延出する第一嵌合部(15)を備え、
(b)前記貫通孔(13)は前記第一嵌合部(15)も貫通する請求項2に記載の水密コネクタ(1)。
【請求項4】
(a)一端がキャリア部(66)に接続されて直線状に配列された複数の端子(61)を形成する工程と、
(b)前記端子(61)の少なくとも一部を第1の樹脂でオーバーモールドすることによって、複数の端子(61)を配列された状態で保持する中間保持部(16)を形成する工程と、
(c)前記キャリア部(66)を切除した後に、前記中間保持部(16)を曲げて円弧状にする工程と、
(d)円弧状の中間保持部(16)の少なくとも一部を第2の樹脂でオーバーモールドすることによって、円柱側面状の外周壁を備える本体部(11b)を備えるハウジング部(11)を形成する工程とを有することを特徴とする水密コネクタの製造方法。
【請求項5】
前記中間保持部(16)は、各端子(61)の少なくとも一部を覆う端子保持部(16a)と、隣接する端子保持部(16a)同士を連結する薄板状の連結部(16b)とを備え、前記端子保持部(16a)と連結部(16b)とが交互に配列されている請求項4に記載の水密コネクタの製造方法。
【請求項6】
(a)前記端子(61)は、相手側コネクタ(101)の相手側端子(161)と接触する接触部(64)と、他の導電部材に接続される接続部(62)とを備え、
(b)前記接触部(64)は中間保持部(16)の一面に露出し、前記接続部(62)は中間保持部(16)から延出する請求項5に記載の水密コネクタの製造方法。
【請求項7】
前記接触部(64)が円弧の曲率中心と反対側を向くように前記中間保持部(16)を曲げて円弧状にする請求項6に記載の水密コネクタの製造方法。
【請求項8】
単数又は複数の円弧状の中間保持部(16)の端部を近接して環状とし、第2の樹脂でオーバーモールドする請求項4に記載の水密コネクタの製造方法。
【請求項9】
前記本体部(11b)に円筒状のスカート部(11a)を一体的に接続する工程を有する請求項4に記載の水密コネクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−52930(P2008−52930A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225402(P2006−225402)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレーテッド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】