説明

水晶デバイス

【課題】耐圧性を高めて気密を維持した表面実装振動子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、底壁1a及び枠壁1bからなるとともに断面視凹状として平面視矩形状とした容器本体1内に少なくとも水晶片2を収容して、前記枠壁1b上面となる容器本体1の開口端面に金属カバー3の周回する外周部を接合し、前記水晶片2を密閉封入してなる水晶デバイスにおいて、前記金属カバー3は前記外周部を平坦として前記開口端面に接合し、前記金属カバー3の中央領域は前記容器本体1の開口端面から外側に向かって突出する錘体状とした構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水晶振動子や水晶発振器等の水晶デバイスを技術分野とし、特に金属カバーの剛性を高めて耐圧性を良好とした表面実装用の水晶振動子(以下、表面実装振動子とする)に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
水晶振動子は周波数や時間の基準源として発振器に組み込まれ、通信機器等の電子機器に広く採用され、例えば高圧下(50〜80Kg)での環境に耐え得る表面実装振動子が求められるものがある。
【0003】
(従来技術の一例、特許文献1参照)
第5図は一従来例を説明する図で、第5図(a)は表面実装振動子の断面図、同図(b)は水晶片2の平面図である。
【0004】
表面実装振動子は容器本体1に水晶片2を収容し、金属カバー3を接合して密閉封入する。容器本体1は底壁1aと枠壁1bを有する断面視凹状として平面視矩形状とした積層セラミックからなる。枠壁1bは各辺のそれぞれの枠幅を同一とする。そして、容器本体1の内底面に水晶端子4を、外底面に実装端子5を有する。水晶端子4は積層面及び外側面(端面)を経て、例えば一組の対角部の実装端子5と電気的に接続する。
【0005】
水晶片2は例えばATカットとし、両主面に励振電極7aを有して一端部両側に引出電極7bを延出する。ATカットは結晶軸(XYZ)のY軸に直交した主面(所謂Yカット)が、Y軸からZ軸に35°15′回転してなる。そして、引出電極7bの延出した水晶片2の一端部両側が導電性接着剤8によって水晶端子4に電気的に接続して固着される。
【0006】
金属カバー3は周回する外周部が容器本体1の開口端面(枠壁1bの上面)に接合する。ここでは、例えば共晶合金9や例えば金属リング10を用いたシーム溶接によって接合される。金属カバー3は平板状とし、一般にはコバール(Kv)を母材として表面を電解液中でのNiメッキとする。なお、容器本体1(セラミック)との膨張係数が接近することからKvが選択され、酸化を防止するためにNiメッキとする。
【0007】
そして、共晶合金9による接合の場合には、例えば金錫(AuSn)としたリング状の共晶合金9を加熱溶融によって金属カバー3の周回する外周表面に設ける。次に、容器本体1の開口端面に形成された金属膜に金属カバー3の外周表面を当接して位置決めする。その後、共晶合金9の再度の加熱溶融によって金属カバー3を接合する。
【0008】
また、シーム溶接の場合には、例えば容器本体1の開口端面に設けられた金属リング10に金属カバー3の外周を当接する。そして、図示しない一対の金属ローラを金属カバー3の一組の対向辺に当接して押圧・進行しながら電流を供給し、ジュール熱によってNi膜を溶融する。これにより、一組の対向辺の金属カバー3の外周を接合した後、他組の対向辺を同様に接合する。
【0009】
これらの接合は、通常では、常圧(約1気圧)とした不活性ガス例えば窒素ガス中にてなされる。これにより、容器本体1に金属カバー3を接合した密閉容器内には常圧とした窒素ガスが充満し、水晶片2はこの中で動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−92544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の表面実装振動子では、共晶合金9やシーム溶接による接合(封止)として例えば抵抗溶接によって封止したリードタイプ型の水晶振動子よりも耐圧性に欠ける問題があった。具体的には、例えば高圧下(50〜80Kg)の元では、金属カバー3が第6図(a)で示すP方向に押圧されて例えば4角錐状に窪み(歪み、機械的変形)を生じる。なお、第6図(b)での×を記した○印は中央部が窪んでいることを示す。
【0012】
そして、容器本体1と金属カバー3との接合面にこれらの歪みが作用するとともに外周部ではF方向「前第6図(a)」への反力を生ずる。したがって、金属カバー3と容器本体1(開口端面)との接合面に応力を生じて接合強度を低下させる。これらにより、表面実装振動子にとって致命的な気密漏れを生じて振動周波数の変化や、振動子としての機能停止を引き起こす問題があった。
【0013】
(発明の目的)
本発明は耐圧性を高めて気密を維持した表面実装振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、底壁及び枠壁からなるとともに断面視凹状として平面視矩形状とした容器本体内に少なくとも水晶片を収容して、前記枠壁上面となる容器本体の開口端面に金属カバーの周回する外周部を接合し、前記水晶片を密閉封入してなる水晶デバイスにおいて、前記金属カバーは前記外周部を平坦として前記開口端面に接合し、前記金属カバーの中央領域は前記容器本体の開口端面から外側に向かって突出する錘体状とした構成とする。
【発明の効果】
【0015】
このような構成であれば、金属カバーは中央領域が錘体状として突出するので、外圧が高まっても、金属カバーの容器本体内への窪みを防止できる。要するに、外圧に対する剛性が高まって窪みを防止できる。したがって、金属カバーと容器本体(開口端面)との接合面に生ずる応力を軽減するので、接合強度の低下を防止する。これにより、耐圧性を高めて気密を維持できる。
【0016】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、前記金属カバーは錘体状とした中央領域の先端側を平坦状とする。この場合、先端側の平坦状とするので、例えば真空吸着による金属カバーや表面実装振動子の移動を従来通りに維持できる。
【0017】
同請求項3では、前記枠壁は各辺の幅を同一とし、前記錘体状は4角錐状とする。これにより、金属カバーの平坦部となる外周部の内周を枠壁の内周に概ね一致させた錘状に形成できる。これにより、外圧に対する剛性を均一にできる。
【0018】
同請求項4では、前記容器本体の開口端面に金属カバーの周回する外周部を共晶合金又はシーム溶接によって接合する。これにより、接合手段を明確にする。そして、共晶合金又はシーム溶接とするので、金属カバーを共用できる。すなわち、部品を共通化して生産性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態を説明する図で、同図(a)は表面実装振動子の断面図、同図(b)は金属カバーの図である。
【図2】本発明の第2実施形態を説明する図で、同図(a)は表面実装振動子の断面図、同図(b)は金属カバーの図である。
【図3】本発明の他の例を示す金属カバーの図である。
【図4】本発明の他の適用例を示す表面実装発振器の図で、同図(ab)ともに断面図である。
【図5】従来例を説明する図で、同図(a)は表面実装振動子の断面図、同図(b)は水晶片の平面図である。
【図6】従来例の問題点を説明する表面実装振動子の図で、同図(a)は断面図、同図(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、第1図(表面実装振動子の断面図、金属カバー3の図)によって、本発明の一実施形態を説明する。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0021】
表面実装振動子は、前述したように、積層セラミックからなる凹状とした容器本体1に水晶片2を収容する。この場合、容器本体1の実装端子5と電気的に接続した内底面の水晶端子4に、引出電極の延出した水晶片2の一端部両側を導電性接着剤8によって固着する。そして、容器本体1の開口端面に金属カバー3の周回する外周表面を、この例では共晶合金9によって接合する。あるいは、例えば金属リング10を用いたシーム溶接によって接合する。これらの場合、例えば常圧(約1気圧)とした不活性ガス例えば窒素ガス中での接合とする。
【0022】
そして、この実施形態では、金属カバー3は外周を平坦として中央領域3aが外周部3bから突出した4角錐状とする。但し、中央部は容器本体1の開口端面から外側に向かった方向に突出する。そして、金属カバー3の外周部3bの内周は枠壁1bの内周と基本的に同一とする。この例では、金属平板の絞り加工によって4角錐状に形成される。
【0023】
このような構成であれば、効果の欄でも記載するように、金属カバー3は中央領域が外側に向かって突出するので、外圧が高まっても、金属カバー3の容器本体1内への窪みを防止できる。要するに、外圧に対する剛性が高まって窪みを防止できる。したがって、金属カバー3と容器本体1(開口端面)との接合面に生ずる応力を軽減するので、接合強度の低下を防止する。これにより、耐圧性を高めて気密を維持できる。
【0024】
また、ここでは金属カバー3の中央領域を4角錐状とするので、外周部の内周を枠壁1bの内周に一致して形成できる。したがって、外圧に対する剛性を均一にして、金属カバー3の一箇所に外圧が集中することを防止できる。そして、共晶合金9又はシーム溶接とするので、金属カバー3を共用できて部品の共通化を計れる。
【0025】
(第2実施形態)
以下、第2図(表面実装振動子の断面図、金属カバーの図)によって、本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同一部分の説明は省略又は簡略する。
【0026】
第2実施形態では第1実施形態と基本構造は同じであり、金属カバー3の外側に突出した中央領域の先端側(中央部)を平坦面とする。この場合でも、第1実施形態と同様に外圧に対しての剛性を高めて容器本体1内への窪みを防止し、耐圧性を高めて気密を維持できる。そして、中央部の先端側を平坦状とするので、例えば真空吸着による金属カバー3や表面実装振動子の移動を確実にする。
【0027】
(他の事項)
上記実施形態では、金属カバーは4角錐状としたが、例えば第3図に示したように楕円を含む円錐状であってもよく、要は垂体状として中央領域が突出してあれば同様の効果を奏する。
【0028】
また、例えば第4図に示したように表面実装発振器とした水晶デバイスの場合でも同様に適用できる。すなわち、凹部の内底面「第4図(a)」あるいは外底面「同図(b)」にさらに凹部を設けて、発振回路を集積化したICチップ11を収容して表面実装発振器を形成した場合でも同様に適用できる。但し、これらの場合の実装端子5は少なくとも発振出力、電源、アースを含んだ端子となる。また、金属カバー3は共晶合金9又はシーム溶接によっての接合としたが、例えばガラスや樹脂を用いた接合であっても適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 容器本体、2 水晶片、3 金属カバー、4 水晶端子、5 実装端子、7 励振及び引出電極、8 導電性接着剤、9 共晶合金、10 金属リング、11 ICチップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁及び枠壁からなるとともに断面視凹状として平面視矩形状とした容器本体内に少なくとも水晶片を収容して、前記枠壁上面となる容器本体の開口端面に金属カバーの周回する外周部を接合し、前記水晶片を密閉封入してなる水晶デバイスにおいて、前記金属カバーは前記外周部を平坦として前記開口端面に接合し、前記金属カバーの中央領域は前記容器本体の開口端面から外側に向かって突出する錘体状としたことを特徴とする水晶デバイス。
【請求項2】
請求項1において、前記金属カバーは錘体状とした中央領域の先端側を平坦状とした水晶デバイス。
【請求項3】
請求項1において、前記枠壁は各辺の幅を同一とし、前記錘体状は4角錐状とした水晶デバイス。
【請求項4】
請求項1において、前記容器本体の開口端面に金属カバーの周回する外周部を共晶合金又はシーム溶接によって接合した水晶デバイス。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−19183(P2011−19183A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163975(P2009−163975)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】