説明

水晶デバイス

【課題】 温度変化によって破損又は周波数変動が少ない表面実装型の水晶デバイスを提供する。
【解決手段】 水晶デバイス(100)は、励振部と励振部の周囲を囲む枠部(25)とを有し枠部(25)が第1方向と該第1方向と交差する第2方向の辺を有する矩形形状の水晶素子(20)と、枠部の一主面に接合され、第1方向と第2方向の辺を有する矩形形状のベース(30)と、枠部の他主面に接合され、第1方向と第2方向の辺を有する矩形形状のリッド(10)と、を備える。水晶材の枠部、ベース及びリッドのそれぞれの第1方向には、水晶素子の第1方向の熱膨張率に対応した第1接合材(51)が塗布され、水晶材の枠部、ベース及びリッドのそれぞれの第2方向には、水晶素子の第2方向の熱膨張率に対応し、第1接合材とは異なる第2接合材(52)が塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型の水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器、例えば携帯電話などの1台の電子機器には複数個の表面実装型の水晶デバイスが使用されている。これらの電子機器が小型化、さらには安価に製造する要求に応えるため、水晶デバイスも小型化と製造コストの低下とが求められている。このため様々な表面実装型の水晶デバイス及びその製造方法が提案されている。水晶デバイスが小型化するに従い、電子基板に占める面積だけでなく、厚みも薄くさせることが望まれている。表面実装型の多くの水晶デバイスは水晶発振する水晶素子をベースとリッド(蓋)とで接合されている。これら、水晶発振する水晶素子、ベース、及びリッドを薄くするに従い、それらの素材の熱膨張係数の違いが接合部の剥がれ、破損または歪みによる周波数変動の原因となっている。
【0003】
特許文献1においては、接合剤に緩衝層を形成し、緩衝層の熱膨張係数を、水晶発振する水晶素子の熱膨張係数と、封止板(リッド)との熱膨張係数との中間値にすることで、接合部の剥がれ、破損を防いでいる。また、特許文献2においては、接合剤の熱膨張係数がベースまたは蓋(リッド)の熱膨張係数の中間値もしくは同一の値にすることで、接合部の剥がれ、破損を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−150829号公報
【特許文献2】特開2008−271093
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された水晶デバイスは、水晶発振する水晶素子とベース、水晶素子とリッドとの接合に、例えば水晶素子に第1接着剤を塗布し、ベースに第2接着剤を塗布し、この第1接着剤と第2接着剤との間に緩衝層を形成させている。このため、作業工程が増えることで製造コストが高くつく課題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された水晶デバイスは、ベースまたはリッドの熱膨張係数の中間値もしくは同一の値の接合剤が使用されているが、水晶発振する水晶素子との接合が考慮されていない課題がある。
【0007】
また、特許文献1及び特許文献2に開示された水晶デバイスは、水晶素子とベース、水晶素子とリッドとを接合する際に、水晶素子の長辺方向または短辺方向において、結晶軸の違いからそれぞれの方向で熱膨張係数が異なることが考慮されていない課題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み水晶発振する水晶素子を励振部として使用し、コストを低減し、且つ温度変化によって破損又は周波数変動が少ない表面実装型の水晶デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1観点の水晶デバイスは、電圧の印加により振動する励振部と励振部の周囲を囲む枠部とを有する水晶材により形成され、枠部が第1方向と該第1方向と交差する第2方向の辺を有する矩形形状の水晶素子と、枠部の一主面に接合され、第1方向と第2方向の辺を有する矩形形状のベースと、枠部の他主面に接合され、第1方向と第2方向の辺を有する矩形形状のリッドと、を備え、水晶材の枠部、ベース及びリッドのそれぞれの第1方向には、水晶素子の第1方向の熱膨張率に対応した第1接合材が塗布され、水晶材の枠部、ベース及びリッドのそれぞれの第2方向には、水晶素子の第2方向の熱膨張率に対応し、第1接合材とは異なる第2接合材が塗布される。
【0010】
第2観点の水晶デバイスは、第1の観点に記載の水晶デバイスにおいて、第1接合材が、水晶素子の第1方向の熱膨張率に同等、又は水晶素子の第1方向の熱膨張率とベース及びリッドの第1方向の熱膨張率との中間値に同等の熱膨張率を有し、第2接合材が、水晶素子の第2方向の熱膨張率に同等、又は水晶素子の第2方向の熱膨張率とベース及びリッドの第2方向の熱膨張率との中間値に同等の熱膨張率を有する。
【0011】
第3観点の水晶デバイスは、第1の観点または第2の観点に記載の水晶デバイスにおいて、水晶素子はATカット水晶材であり、ベース及びリッドはATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である。
【0012】
第4観点の水晶デバイスは、第1の観点または第2の観点に記載の水晶デバイスにおいて、水晶素子はZカット水晶材であり、ベース及びリッドはATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である。
【0013】
第5観点の水晶デバイスは、第1の観点から第4の観点のいずれか一項に記載の水晶デバイスにおいて、第1接合材及び第2接合材が、ポリイミド樹脂又は融点が500度以下のガラスである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水晶デバイスは、水晶発振する水晶素子の第1方向の熱膨張率に最適な第1接合材と第2方向の熱膨張率に最適な第2接合材を用いることで、温度変化によって破損又は周波数変動が少ない小型化及び薄型化した表面実装型の水晶デバイスを提供し、且つコストの低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1水晶デバイス100の分解構成図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(a)は、リッド10の平面図である。 (b)は、第1水晶素子20の平面図である。 (c)は、ベース30の平面図である。
【図4】(a)は、第1接合材51及び第2接合材52の第1塗布方法を示した図である。 (b)は、第1接合材51及び第2接合材52の第2塗布方法を示した図である。 (c)は、第1接合材51及び第2接合材52の第3塗布方法を示した図である。
【図5】第1水晶デバイス100製造のフローチャートである。
【図6】ATカット水晶基板の水晶ウエハ20Wの概略平面図である。
【図7】Zカット水晶基板のベースウエハ30Wの概略平面図である。
【図8】Zカット水晶基板のリッドウエハ10Wの概略平面図である。
【図9】第2水晶デバイス110の分解構成図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
(第1実施形態)
<第1水晶デバイス100の構成>
【0017】
本実施形態の第1水晶デバイス100は、プリント基板の表面に導電材で接合して実装される表面実装型の第1水晶デバイス100である。本実施形態の第1水晶デバイス100は水晶発振する第1水晶素子20としてATカット水晶基板を用い、リッド10及びベース30にZカット水晶基板を用いた場合について説明する。以下に、第1水晶デバイス100の構成を、図1、図2及び図3を参照しながら説明する。図1は、第1水晶デバイス100の分解構成図であり。図2は図1のA−A断面図である。また、図3(a)は、リッド10の平面図であり、図3(b)は、第1水晶素子20の平面図であり、図3(c)は、ベース30の平面図である。
【0018】
ここで、ATカット水晶基板は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜している。しかし、本明細書では第1水晶デバイス100の長方向をy軸方向、短辺方向をx軸方向、上下方向をz軸方向として説明する。
【0019】
図1に示されるように、第1水晶デバイス100は、リッド10と、ベース30と、第1水晶素子20とにより構成されている。第1水晶デバイス100は、上側(+z軸側)にリッド10が配置され、下側(−z軸側)にベース30が配置され、リッド10とベース30とに挟まれた位置に第1水晶素子20が配置されている。また、ベース30の下面には外部電極31が形成されている。以下、第1水晶デバイス100の長辺方向をy軸方向、第1水晶デバイス100の短辺方向をx軸方向、第1水晶デバイス100の上下方向をz軸方向として説明する。
【0020】
本実施形態の第1水晶デバイス100は第1水晶素子20の上側に第1接合材51及び第2接合材52が塗布されている。また、ベース30の上側に第1接合材51及び第2接合材52が塗布されている。
【0021】
図2で示されるようにリッド10と第1水晶素子20及び第1水晶素子20とベース30とは第2接合材52で接合される。また図示されていないが第1接合材51も同様にリッド10と第1水晶素子20及び第1水晶素子20とベース30とを接合している。なお、リッド10と第1水晶素子20及び第1水晶素子20とベース30との接合方法は後述する。
【0022】
図3(a)に示されるように、リッド10は、y軸方向と長辺方向が平行であり、x軸方向と短辺方向が平行である長方形の主面を有している。図2に示されるように、リッド10の主面には+z軸側の主面である上面と、−z軸側の主面である天井面11とが形成されている。−z軸側の面の外周部には第1水晶素子20と接合する面である接合面15が形成されている。天井面11には接合面15から凹形状(図2参照)が形成されている。また、リッド10はZカット水晶基板を母材として形成されている。
【0023】
図3(b)に示されるように、第1水晶素子20は、励振電極27が形成されている励振部21と、励振部21の周囲を取り囲むように形成されている枠部25とを有している。また、励振部21と枠部25とは接続部24によって接続されている。引出電極28は、開口部22及び枠部25の一部を通り、第1水晶素子20の下側の枠部25の角まで引き出されている。引出電極28は、枠部25の角の電極パッド23とベース30に形成されている接続電極32(図1及び図3(c)参照)とを接続する。第1水晶素子20に形成されている電極は、水晶上に形成されているクロム層Crと、クロム層Cr上に形成されている金層Auとにより構成されている。また、第1水晶素子20はATカット水晶基板を母材として形成されている。また、第1水晶素子20は枠部25の外周部の上側に第1接合材51及び第2接合材52が塗布されている。
【0024】
図3(c)に示されるように、ベース30は、y軸方向と長辺方向が平行であり、x軸方向と短辺方向が平行である長方形の主面を有している。図1及び図2に示されるように、この主面は、第1水晶デバイス100の一部として組み立てられたときに第1水晶デバイス100の外部に面している下面(−z軸側)と、第1水晶デバイス100の内部に面している底面33(+z軸側)との2つが形成されている。ベース30の+z軸側の面の外周部には、第1水晶素子20の枠部25と接合するための枠部35が形成されている。底面33には枠部35から凹形状(図1及び図2参照)が形成されている。ベース30の枠部35には接続電極32が形成され、下面には外部電極31(図1及び図2参照)が形成されている。また、ベース30はZカット水晶基板を母材として形成されている。また、ベース30は枠部35の外周部の上側(+z軸側)に第1接合材51及び第2接合材52が塗布されている。
【0025】
上述されたように第1水晶デバイス100は、リッド10及びベース30にZカット水晶基板を用い、第1水晶素子20にATカット水晶基板を用いている。これはZカット水晶基板がATカット水晶基板よりも安価であるため、第1水晶デバイス100の製造コストを下げることができる。
【0026】
また、リッド10、第1水晶素子20及びベース30に同じ水晶材を用いることで第1水晶デバイス100はリッド10及びベース30と第1水晶素子20との接合時、または表面実装時等に400℃近くまで加熱される際の熱による応力から周波数変動や破損の原因を減少することができる。しかし、熱による周波数変動や破損は皆無になるわけでなく、Zカット水晶基板とATカット水晶基板との熱膨張係数の違いからリッド10及びベース30と第1水晶素子20との間に応力がかかり、熱は周波数変動や破損の原因となる。さらに、周波数変動や破損の原因として、ATカット水晶基板の第1水晶素子20の長辺方向(y軸方向)と短辺方向(x軸方向)とではそれぞれ熱膨張係数が異なる点や、Zカット水晶基板のリッド10及びベース30においても、その長辺方向と短辺方向とではそれぞれ熱膨張係数が異なる点がある。
【0027】
熱膨張係数の違いの原因として水晶基板の結晶軸の違いがある。水晶基板は人工水晶から形成されるが、人工水晶はオートクレーブによって水晶の結晶をZ軸方向に大きく成長させて形成させる。Zカット水晶基板は、人工水晶からZ軸に沿ってカットされて形成される。このためZカット水晶基板は結晶軸がX軸、Y軸、Z軸により定義される(第1水晶デバイス100の長辺方向、短辺方向、上下方向は、それぞれy軸方向、x軸方向、z軸方向と定義している)。また、ATカット水晶基板は、人工水晶からX軸を回転軸としてY軸からZ軸方向に35度15分回転した方向に沿ってカットされて形成される。Zカット水晶基板とATカット水晶基板とはカット方向が異なることにより、同じ人工水晶であっても各軸方向への熱膨張係数が異なる。
<接合方法及び塗布方法>
【0028】
第1水晶デバイス100は、第1水晶素子20、リッド10及びベース30に水晶材を用いることにより、水晶材同士の接合時または表面実装時等の熱膨張の影響が少なくなっているが、それでもなお、大きな温度変化が伴う場合には、第1水晶デバイス100が破損又は周波数変動することがある。第1水晶素子20、リッド10及びベース30の長辺方向の熱膨張係数、または短辺方向の熱膨張係数を考慮した接合材を用いることで、大きな温度変化においても熱膨張の影響が少ない第1水晶デバイス100を製造することができる。
【0029】
図4は第1水晶素子20とリッド10とを接合するために第1水晶素子20の上側(+z側)に第1接合材51及び第2接合材52の塗布領域を示した図である。なお、図4の第1水晶素子20は説明しやすいように電極を図示していない。
【0030】
図4に示されるように、第1水晶素子20の枠部25の長辺方向(第1方向)には、ATカット水晶基板の長辺方向の熱膨張係数と同等な第1接合材51を帯状に塗布してあり、第1水晶素子20の枠部25の短辺方向(第2方向)には、ATカット水晶基板の短辺方向の熱膨張係数と同等な第2接合材52を帯状に塗布してある。
【0031】
塗布方法は3個の塗布方法がある。図4(a)は、第1塗布方法を示した図であり、図4(b)は、第2塗布方法を示した図であり、図4(c)は、第3塗布方法を示した図である。
【0032】
図4(a)に示されるように、第1塗布方法は第1水晶素子20の枠部25において、第1接合材51を塗布する第1塗布領域61が第1水晶素子20の長辺方向の全長を占め、その間の短辺方向を第2塗布領域62として第2接合材52を塗布する方法である。
【0033】
図4(b)に示されるように、第2塗布方法は第1水晶素子20の枠部25において、第2接合材52を塗布する第2塗布領域62が第1水晶素子20の短辺方向の全長を占め、その間の長辺方向を第1塗布領域61として第1接合材51を塗布する方法である。
【0034】
図4(c)に示されるように、第3塗布方法は第1水晶素子20の枠部25において、枠部25の角部を第1接合材51と第2接合材52とで等分する方法であり、第1塗布領域61と第2塗布領域62との合流部が45度の角度で分割されて形成されている。
【0035】
第1接合材51及び第2接合材52はスクリーン印刷等の手法で形成される。また、第1接合材51及び第2接合材52の材料はポリイミド樹脂、または融点が500度以下のガラスペースト(バナジウムを主原料とする低融点ガラス)を用いる。ポリイミド樹脂はその分子構造により熱膨張係数が異なることから、ATカット水晶基板の長辺方向及び短辺方向の熱膨張係数と同等のポリイミド樹脂の接合材を選択する。また、ガラスペーストは添加するフィラーの含有量の違いから熱膨張係数を変化させることで、ATカット水晶基板の長辺方向及び短辺方向の熱膨張係数と同等のガラスペーストの接合材を選択する。
【0036】
また、第1接合材51はATカット水晶基板の長辺方向の熱膨張係数とZカット水晶基板の長辺方向の熱膨張係数との中間値を用い、第2接合材52はATカット水晶基板の短辺方向の熱膨張係数とZカット水晶基板の短辺方向の熱膨張係数との中間値を用いてもよい。
【0037】
上述したように、本実施形態では第1水晶素子20とリッド10との接合方法と、第1水晶素子20の枠部25の上側における塗布方法とを示したが、第1水晶素子20とベース30との接合方法についても同様であり、ベース30の枠部35の上側における塗布方法も同様である。また、本実施形態では第1水晶素子20の上側に第1接合材51又は第2接合材52を塗布しているが、第1水晶素子20の枠部25の上側に塗布せずに、リッド10側の接合面15に塗布して第1水晶素子20とリッド10とを接合してもよい。また、ベース30の枠部35の上側に第1接合材51又は第2接合材52を塗布せずに、第1水晶素子20の枠部25の下側に塗布して第1水晶素子20とベース30とを接合してもよい。
<第1水晶デバイス100の製造方法>
【0038】
図5から図8を参照して、リッド10及びベース30にZカット水晶基板が用いられ、第1水晶素子20にATカット水晶基板が用いられた第1水晶デバイス100の製造方法について説明する。
【0039】
図5は、第1水晶デバイス100製造のフローチャートである。
【0040】
ステップS01で、ATカット水晶基板の水晶ウエハ20Wを用意する工程が行われる。この工程では、ATカット水晶基板の水晶ウエハ20Wに第1水晶素子20が形成される。
【0041】
図6は、ATカット水晶基板の水晶ウエハ20Wの概略平面図である。第1水晶素子20がAT振動子であるため、水晶ウエハ20WにはATカット水晶基板が用いられる。水晶ウエハ20Wの周縁部の一部には結晶方向を特定するためのオリエンテーションフラットOFが形成されている。オリエンテーションフラットOFの代わりに、ノッチが水晶ウエハ20Wに形成されていても良い。水晶ウエハ20Wは、直径は例えば3インチまたは4インチである。水晶ウエハ20Wには、図3(b)で示された第1水晶素子20が複数形成される。なお、説明の都合上、図6の水晶ウエハ20Wには34個の第1水晶素子20が描かれているが、実際の製造においては、1枚のウエハに数百から数千の第1水晶素子20が形成される。また、水晶ウエハ20Wは図示されるように励振電極27及び引出電極28の形成と第1接合材51及び第2接合材52の塗布とが行われる。なお、本実施形態のATカット水晶基板の結晶軸は第1水晶素子20の長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸として形成し、X軸とZ’軸が直交する方向をY’軸として形成してある。
【0042】
図5のステップS02では、Zカット水晶基板のベースウエハ30Wを用意する工程が行われる。この工程では、Zカット水晶基板のベースウエハ30Wが用意される。
【0043】
図7は、Zカット水晶基板のベースウエハ30Wの概略平面図である。ベースウエハ30Wは、母材としてZカット水晶基板が用いられており、周縁部の一部に結晶方向を特定するためのオリエンテーションフラットOFが形成されている。ベースウエハ30Wも、直径が例えば3インチまたは4インチである。ベースウエハ30Wには、図3(c)で示されたベース30が複数形成される。なお、水晶ウエハ20Wと同様にベースウエハ30Wには34個のベース30が描かれているが、実際の製造においては、1枚のウエハに数百から数千のベース30が形成される。また、ベースウエハ30Wは、図示されるように、水晶ウエハ20Wと向かい合う面に凹みが形成され、その周囲に枠部35が形成されている。さらに、接続電極32、外部電極31(図1及び図2参照)の形成と、第1接合材51及び第2接合材52の塗布とが行われている。
【0044】
図5のステップS03では、Zカット水晶基板のリッドウエハ10Wを用意する工程が行われる。この工程では、Zカット水晶基板のリッドウエハ10Wが用意される。
【0045】
図8は、Zカット水晶基板のリッドウエハ10Wの概略平面図である。リッドウエハ10Wは、母材としてZカット水晶基板が用いられており、周縁部の一部に結晶方向を特定するためのオリエンテーションフラットOFが形成されている。リッドウエハ10Wも、直径が例えば3インチまたは4インチである。リッドウエハ10Wには、図3(a)で示されたリッド10が複数形成される。なお、水晶ウエハ20Wと同様にリッドウエハ10Wには34個のリッド10が描かれているが、実際の製造においては、1枚のウエハに数百から数千のリッド10が形成される。また、リッドウエハ10Wは、図示されるように、水晶ウエハ20Wと向かい合う面に凹み(破線で表示)が形成され、その周囲に接合面15が形成されている。
以上のステップS01からステップS03の工程は順不同で行われる。
【0046】
図5のステップS04では、接合工程が行われる。接合工程はベースウエハ30W及びリッドウエハ10Wと水晶ウエハ20Wとを接合する工程である。ベースウエハ30W、リッドウエハ10W及び水晶ウエハ20Wは、オリエンテーションフラットOFを目印としてベースウエハ30Wの上に水晶ウエハ20W、さらにその上にリッドウエハ10Wを正確に載置し、加圧加熱処理することによって接合される。同時に、第1水晶素子20に形成された引出電極28の電極パッド23とベース30の接続電極32とも電気的に接合される。なお、接合工程は、所定の気圧より低い真空状態または不活性ガスで満たされた状態で行われる。励振部21の周囲が真空状態または不活性ガスで満たされた状態になることで、第1水晶デバイス100の周波数の安定が図られる。なお、本実施形態の接合工程はベースウエハ30W、水晶ウエハ20W及びリッドウエハ10Wが同時に接合されているが、この限りでなく、複数の接合工程を経てもよい。例えば、ベースウエハ30Wと水晶ウエハ20Wとを接合した後、リッドウエハ10Wと水晶ウエハ20Wとを接合する方法等がある。
【0047】
図5のステップS05は、分割工程である。分割工程では、ウエハに固定された状態の第1水晶デバイス100を図6から図8で示されたスライスラインSLの位置でダイシングソー又はレーザーソーにより切断され、数百から数千の第1水晶デバイス100に分割される。
【0048】
上記に示された第1水晶デバイス100の製造方法は、第1接合材51及び第2接合材52が水晶ウエハ20Wの上側及びベースウエハ30Wの上側に塗布した場合を説明したが、第1接合材51及び第2接合材52を塗布する場所は、水晶ウエハ20Wの上側と下側との両側に塗布してもよい。または、ベースウエハ30Wの上側及びリッドウエハ10Wの下側に塗布してもよい。
【0049】
本実施形態ではリッドウエハ10W、及びベースウエハ30Wの母材にZカット水晶基板を用いた説明をしているが、ATカット水晶基板を用いてもよい。リッドウエハ10W、及びベースウエハ30Wの母材にATカット水晶基板を用いる場合は、水晶ウエハ20Wの結晶軸のX軸、Y’軸、Z’軸と同様な方向でリッド10、及びベース30を形成する。第1水晶素子20の結晶軸と同じ結晶軸でリッド10、及びベース30を形成することでリッド10と第1水晶素子20との長辺方向、ベース30と第1水晶素子20との長辺方向、さらに、リッド10と第1水晶素子20との短辺方向、ベース30と第1水晶素子20との短辺方向で同じ膨張係数になる。この場合に使用する第1接合材51は第1水晶素子20の長辺方向の熱膨張係数と同等にし、第2接合材52は第1水晶素子20の短辺方向の熱膨張係数と同等とする。この組み合わせで形成する第1水晶デバイス100は温度変化によって破損又は周波数変動が少なくなる。
【0050】
また、リッドウエハ10W及びベースウエハ30Wの母材にガラス基板を用いて形成してもよい。リッドウエハ10W及びベースウエハ30Wの母材にガラス基板を使用する場合は第1水晶素子20の枠部25の長辺方向の熱膨張係数と同等な第1接合材51を塗布し、第1水晶素子20の枠部25の短辺方向の熱膨張係数と同等な第2接合材52を塗布する方法がある。また、第1接合材51は第1水晶素子20の長辺方向の熱膨張係数とガラス基板の長辺方向の熱膨張係数との中間値を用い、第2接合材52は第1水晶素子20の短辺方向の熱膨張係数とガラス基板の短辺方向の熱膨張係数との中間値を用いてもよい。
(第2実施形態)
<第2水晶デバイス110の構成>
【0051】
第1実施形態は第1水晶素子20にATカット水晶基板を用いていたが、本実施形態では第2水晶素子40にZカット水晶基板を用いる。Zカット水晶基板を母材とした第2水晶素子40として音叉型の第2水晶素子40がある。図9は音叉型の第2水晶素子40を用いた第2水晶デバイス110の分解構成図を示した図である。図示されるように第2水晶デバイス110は音叉型の第2水晶素子40、リッド10、ベース30で構成されている。なお、第2水晶素子40以外の構成は第1実施形態と同様であり、その説明を省く。また第1実施形態と同じ構成要件については同様の符号を用いる。なお、本実施形態の第2水晶デバイス110の第2水晶素子40とベース30にキャスタレーション70を形成している。キャスタレーション70はベース30の外部電極31と第2水晶素子40の励振電極47とを電気的に接続するための貫通孔であり、第2水晶素子40とベース30の四隅に形成されている。
【0052】
第2水晶素子40はZカット水晶基板を母材としている。第2水晶素子40は音叉型水晶振動部41と、音叉型水晶振動部41を囲む枠部42とで構成されている。
【0053】
音叉型水晶振動部41は、一対の振動腕43が備わり、振動腕43の表裏両面には溝部44が形成されている。音叉型水晶振動部41は枠部42と接続部45とで接続されている。
【0054】
振動腕43の先端付近は幅広に形成されており、ハンマー型の形状をしている。また、振動腕43のハンマー型の部分では錘金属膜46も形成して錘の役目と周波数調整の役目とをさせている。錘の役目としては振動腕43に電圧をかけた際に振動しやすくさせ、また安定した振動をすることができる。
【0055】
第2水晶素子40は公知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術などを用い外形、及び溝部44を形成する。
【0056】
外形と溝部44とを形成した第2水晶素子40は次に錘金属膜46、励振電極47、及び引出電極48を形成する。励振電極47は音叉型水晶振動部41の振動腕43及び溝部44に形成され、励振電極47を形成する際に、錘金属膜46及び接続部の引出電極48の金属膜を同時に形成する。
【0057】
音叉型の第2水晶素子40の枠部42には、第1実施形態と同様にその長辺方向に第1接合材51が塗布され、短辺方向に第2接合材52が塗布される。また、第1接合材51及び第2接合材52の塗布方法も第1実施形態と同様に形成できる。
【0058】
リッド10又はベース30の母材は第1実施形態と同様にZカット水晶基板、ATカット水晶基板、ガラス基板を用いることが可能である。
【0059】
リッド10又はベース30の母材にZカット水晶基板を用いる際には、Zカット水晶基板を母材とした音叉型の第2水晶素子40の結晶軸に合致させて形成し、第1接合材51に音叉型の第2水晶素子40の長辺方向の膨張係数と同等の接合材を選択し、第2接合材52に第2水晶素子40の短辺方向の膨張係数と同等の接合材を選択するのが好適である。
【0060】
リッド10又はベース30の母材にATカット水晶基板、またはガラス基板用いる際には、第1接合材51に音叉型の第2水晶素子40の枠部42の長辺方向の熱膨張係数と同等な接合材51を選択し、第2接合材52に第2水晶素子40の枠部42の短辺方向の熱膨張係数と同等な接合材を選択する方法がある。また、第1接合材51は音叉型の第2水晶素子40の長辺方向の熱膨張係数とATカット水晶基板またはガラス基板の長辺方向の熱膨張係数との中間値の接合材を選択し、第2接合材52は音叉型の第2水晶素子40の短辺方向の熱膨張係数とATカット水晶基板またはガラス基板の短辺方向の熱膨張係数との中間値の接合材を選択する方法でもよい。
【0061】
以上、本実施形態の最適な実施例について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本実施形態はその技術的範囲内において実施例に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 … リッド 10W … リッドウエハ
11 … 天井面
15 … 接合面
20 … 第1水晶素子、 20W … 水晶ウエハ
21 … 励振部
22 … 開口部
24 … 接続部
25 … 枠部
27 … 励振電極、 28 … 引出電極
30 … ベース 30W … ベースウエハ
31 … 外部電極、 32 … 接続電極
33 … 底面
35 … 枠部
36 … 接合面
40 … 第2水晶素子
41 … 音叉型水晶振動部
42 … 枠部
43 … 振動腕
44 … 溝部
45 … 接続部
46 … 錘金属膜
47 … 励振電極
48 … 引出電極
51 … 第1接合材
52 … 第2接合材
61 … 第1塗布領域
62 … 第2塗布領域
70 … キャスタレーション
100 … 第1水晶デバイス
110 … 第2水晶デバイス
Au … 金層
Cr … クロム層
SL … スライスライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により振動する励振部と前記励振部の周囲を囲む枠部とを有する水晶材により形成され、前記枠部が第1方向と該第1方向と交差する第2方向の辺を有する矩形形状の水晶素子と、
前記枠部の一主面に接合され、前記第1方向と前記第2方向の辺を有する矩形形状のベースと、
前記枠部の他主面に接合され、前記第1方向と前記第2方向の辺を有する矩形形状のリッドと、を備え、
前記枠部、前記ベース及び前記リッドのそれぞれの前記第1方向には、前記水晶素子の前記第1方向の熱膨張率に対応した第1接合材が塗布され、
前記枠部、前記ベース及び前記リッドのそれぞれの前記第2方向には、前記水晶素子の前記第2方向の熱膨張率に対応し、前記第1接合材とは異なる第2接合材が塗布される水晶デバイス。
【請求項2】
前記第1接合材は、前記水晶素子の前記第1方向の熱膨張率に同等、又は前記水晶素子の前記第1方向の熱膨張率と前記ベース及び前記リッドの前記第1方向の熱膨張率との中間値に同等の熱膨張率を有し、
前記第2接合材は、前記水晶素子の前記第2方向の熱膨張率に同等、又は前記水晶素子の前記第2方向の熱膨張率と前記ベース及び前記リッドの前記第2方向の熱膨張率との中間値に同等の熱膨張率を有する請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
前記水晶素子はATカット水晶材であり、前記ベース及び前記リッドはATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である請求項1又は請求項2に記載の水晶デバイス。
【請求項4】
前記水晶素子はZカット水晶材であり、前記ベース及び前記リッドはATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である請求項1又は請求項2に記載の水晶デバイス。
【請求項5】
前記第1接合材及び前記第2接合材は、ポリイミド樹脂又は融点が500度以下のガラスである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水晶デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178620(P2012−178620A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39130(P2011−39130)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】