説明

水晶デバイス

【課題】 周波数を可変する発振器のインダクタンスを水晶デバイスの内部に形成し、且つ効率的な周波数調整を行うことができる水晶デバイスを提供する。
【解決手段】 水晶デバイス(100)は、表裏面にそれぞれ第1励振電極(25)及び第2励振電極(26)を有する板状の水晶板(20)と、実装面に第1実装端子(51)及び第2実装端子(52)を有し水晶板を収納するパッケージ(10)と、第1励振電極から第1実装端子までを配線する第1配線電極(32)と、第2励振電極から第2実装端子までを配線する第2配線電極(33)と、を備える。そして、第1配線電極(32)と第2配線電極(33)とが交番電流が印加された際に同じ電流向きになるように螺旋状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動片を有する水晶デバイスに関し、特に圧電振動片又はセラミックパッケージ内の引出電極にインダクタを形成する電極形状に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばATカットなどの厚みすべり振動の水晶デバイスは、一般に圧電振動片の表裏面に一対の励振電極を正対向して形成し、当該励振電極に交番電圧を印加する構成である。圧電振動片の両主面には励振電極と、励振電極から引き出された引出電極と、引出電極を実装端子(パッケージの外側に形成された端子)と導通するためのパッケージ内部の接続電極とが形成されている。圧電振動片は表裏どちらでもパッケージ内の接続電極に接続できるように、引出電極は表裏面に形成されている。
【0003】
水晶デバイスの周波数を調整しやすくするために、水晶デバイスが実装されるプリント基板に伸長コイルを水晶デバイスに直列に実装している。周波数可変量を増やす伸長コイルはディスクリート部品のため、プリント基板の実装スペースが少なくなってしまう。また、伸長コイルはインダクタンス値の偏差の幅が大きく周波数偏差のばらつきの要因になっている。このような問題点を解決するため、特許文献1は、圧電振動片の励振電極への引出電極にパターンコイルを設ける技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−162681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は電流の流れによってインダクタンス値が変わることを開示・示唆しておらずまた、圧電振動片の裏面を開示していない。
【0006】
本発明は、水晶デバイスの周波数を可変する発振器のインダクタンスを水晶デバイスの内部に形成し、且つ効率的な周波数調整を行うことができる水晶デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の水晶デバイスは、表裏面にそれぞれ第1励振電極及び第2励振電極を有する板状の水晶板と、実装面に第1実装端子及び第2実装端子を有し、水晶板を収納するパッケージと、第1励振電極から第1実装端子までを配線する第1配線電極と、第2励振電極から第2実装端子までを配線する第2配線電極と、を備える。そして、第1配線電極と第2配線電極とが交番電流が印加された際に同じ電流向きになるように螺旋状に形成されている。
【0008】
第2観点の水晶デバイスは、第1配線電極と第2配線電極とが水晶版の表裏面にそれぞれ形成されている。
さらに別の観点では、第1配線電極と第2配線電極とがパッケージに形成されている。そしてパッケージは複数層からなり、複数層の各層に第1配線電極と第2配線電極とがともに形成されている。また別の観点では、パッケージは複数層からなり、複数層の一層に第1配線電極又は第2配線電極の一方が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水晶デバイスによれば、インダクタンスの高い配線をデバイス内に設けることができる。このため周波数可変量が大きくなり、周波数を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、リッド5を取り除いた状態の第1水晶デバイス100の平面図である。 (b)は、図1(a)のA−A’断面図である。
【図2】(a)は、ATカット水晶振動片20の第1主面の平面図である。 (b)は、ATカット水晶振動片20の第2主面の平面図である。
【図3】インダクタンスの違いによる生じる周波数可変量を示す図である。
【図4】(a)は、リッド5を取り除いた状態の第2水晶デバイス110の平面図である。 (b)は、図3(a)のB−B’断面図である。
【図5】配線電極付セラミック層40の斜視図である。
【図6】(a)は、配線電極付セラミック層40のC−C’断面図である。(b)は、配線電極付セラミック層40のD−D’断面図である。(c)は、配線電極付セラミック層40−2のE−E’断面図である。
【図7】(a)は、リッド5を取り除いた状態の第3水晶デバイス120の平面図である。 (b)は、図7(a)のF−F’断面図である。
【図8】配線電極付セラミック層60の斜視図である。
【図9】(a)は、配線電極付セラミック層60のG−G’断面図である。 (b)は、配線電極付セラミック層60のH−H’断面図である。 (c)は、配線電極付セラミック層60のJ−J’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
<第1水晶デバイス100の構成>
図1(a)は、リッド5を取り除いた状態の第1実施例の第1水晶デバイス100の平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’断面図である。図2は、ATカット水晶振動片20の拡大平面図である。 図2(a)は、第1主面(上側)からみたATカット水晶振動片20の第1主面の平面図であり、図2(b)は、第2主面(下側)からみたATカット水晶振動片20の第2主面の平面図である。
【0013】
図1(a)及び(b)に示されるように、第1水晶デバイス100は、第1ATカット水晶振動片20と、セラミックパッケージ10と、気密封止するガラスから成るリッド5とで構成されている。第1水晶デバイス100は、セラミックパッケージ10とリッド5とで形成された空間に、ATカット水晶振動片20を装着している。
【0014】
ATカットは、結晶軸(X、Y、Z)のY軸に対して、主軸(Y、Z)がX軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜した切断角度である。以降、ATカット水晶振動片20の軸方向を表す際には通常、傾斜した新たの軸をY’軸及びZ’軸とし、これらを用いる。
【0015】
パッケージ10は例えばセラミックからなり、複数枚のセラミックシートを積層して箱状になった状態で焼結される。パッケージ10の底面用セラミック層50には台座用セラミック層53が形成され、第1接続電極38,39及び第2接続電極41,42が形成され、パッケージ10の外側底部には実装端子51、52が形成される。第1接続電極38と実装端子51とが導通し,第1接続電極39と実装端子52とは導通している。このようなパッケージ10を使用することにより、第1水晶デバイス100は表面実装(SMD:Surface Mount Device)できるタイプとなる。パッケージ10の大きさは、X方向の長さが2.0mm〜1.6mm程度、Z’方向の長さが1.6mm〜1.2mm程度である。このパッケージ10に第1ATカット水晶振動片20が配置される。
【0016】
図1(a)及び(b)に示されるように、第1ATカット水晶振動片20の第1主面には、第1電極パッド23、第1励振電極25及び第1配線電極32が形成される。第1ATカット水晶振動片20の第2主面には、第2電極パッド24、第2励振電極26及び第2配線電極33が形成される。第2主面は第1主面の反対側であるため、図1(a)では第2電極パッド24、第2励振電極26及び第2配線電極33が点線で描かれている。
【0017】
ATカット水晶振動片20は、その第1主面及び第2主面が底面用セラミック層50に対して水平になるように、台座用セラミック層53に配置される。台座用セラミック層53の上面の一部には、ATカット水晶振動片20の第1電極パッド23及び第2電極パッド24と導通する第2接続電極41及び42が形成されている。の第1電極パッド23及び第2電極パッド24と第2接続電極41及び42とは導電性接着剤15で接着される。枠部セラミック層11の上端には封止材19が形成され、枠部セラミック層11とリッド5とが封止材19を介して接合される。
【0018】
さて、図1(a)に示されるように、ATカット水晶振動片20の第1配線電極32及び第2配線電極33は、螺旋状に形成されている。第2主面に形成された第2電極パッド24、第2励振電極26及び第2配線電極33を点線で示している。また説明のため、第1配線電極32及び第2配線電極33の電流の向きが矢印で示されている。第1励振電極25は第1配線電極32及び第1電極パッド23を介して第2接続電極41に接続しており、第2励振電極26も第2主面側に形成された第2配線電極33及び第2電極パッド24を介して第2接続電極42に接続している。これらに交番電流(交互に入れ替わる正負の電流)が加えられるとATカット水晶振動片20は所定の周波数で振動する。
【0019】
図1(a)及び図2(a)に示されるように、第1主面の第1電極パッド23から第1配線電極32に電流が流れてくる場合(第1電極パッド23が正)には、以下のように電流が流れる。まず第1配線電極32に入った電流の向きは、矢印で示されるように反時計回りに流れる。同じタイミングには交番電流は第2主面の第2励振電極26から第2配線電極33に電流が流れてくる(第2電極パッド24が負)。このため、図1(a)に示されるように、第2主面の第2配線電極33に流れる電流の向きは矢印で示されるように反時計回りに流れる。なお、図2(b)は第2主面側からの図であるため、第2配線電極33に流れる電流の向きは矢印で示されるように時計回りに流れている。
【0020】
図1(a)及ぶ図2に示されるように、第1ATカット水晶振動片20の第1配線電極32の電流の向きと第2配線電極33の電流の向きとが同じ方向に向いている。このため、第1ATカット水晶振動片20の第1主面の第1配線電極32と第2主面の第2配線電極33とは、電流が同じ向きになりインダクタンスが強められる。
【0021】
<電流の流れ方向によるインダクタンスの違い>
図3は、インダクタンスの違いによる生じる周波数可変量を示す図である。縦軸に周波数変化量Δf(ppm)を示し、横軸に電圧Vc(V)を示す。第1配線電極32及び第2配線電極33に流れる電流の向きが異なる場合の計算結果を点線で示し、第1配線電極32及び第2配線電極33に流れる電流の向きが同じである場合の計算結果を実線で示した。第1配線電極32及び第2配線電極33に流れる電流の向きが同じ場合と異なる場合とでは、インダクタンスが約3倍違う。このため、図3に示す通り、電流の向きが同じである場合、その周波数変化量Δf(ppm)は、電流の向きが異なる場合の周波数変化量Δfと比べて例えば約2.5倍に増加する。
【0022】
(第2実施形態)
<第2水晶デバイス110の構成>
図4(a)は、リッド5を取り除いた状態の第2実施例の第2水晶デバイス110の平面図である。図4(b)は図4(a)のB−B’断面図である。説明のため、ベース用セラミック層は分離して描いてある。図5に配線電極付セラミック層40の斜視図を示す図6(a)は、配線電極付セラミック層40のC−C’断面図であり、(b)は、配線電極付セラミック層40のD−D’断面図であり、(c)は、第3層の配線電極付セラミック層40−2のE−E’断面図である。第1実施形態と同じ構成要件には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
図4(a)及び(b)に示されるように、第2水晶デバイス110は、第2ATカット水晶振動片20Aと、セラミックパッケージ10と、気密封止するためのリッド5とで構成されている。第2水晶デバイス110は、セラミックパッケージ10とリッド5とで形成された空間に、ATカット水晶振動片20Aが装着されている。第2ATカット水晶振動片20Aは、第1主面に第1電極パッド23と引出電極21及び第1励振電極25を形成している。第2主面に第2電極パッド24と引出電極22及び第2励振電極26を形成している。第2主面の第2電極パッド24、引出電極22及び第2励振電極26は点線で示している。第1励振電極25は引出電極21及び第1電極パッド23を介して第2接続電極41に接続している。第2励振電極26も第2主面側に形成された引出電極22及び第2電極パッド24を介して第2接続電極42に接続している。
【0024】
パッケージ10Aは、複数枚のセラミックシートを積層して箱状になった状態で焼結される。パッケージ10Aのベース用セラミック層は、第1層の底面用セラミック層50と、二層からなる配線電極付セラミック層40(40−1〜40−2)と、第4層の底部セラミック層55との四層からなる。
【0025】
第1層の底面用セラミック層50には台座用セラミック層53が形成される。また台座用セラミック層53に、第2接続電極41及び42が形成される。第2層の配線電極付セラミック層40−1には第1配線電極32、第2配線電極33及び第2接続電極41,42(図4(b)、図5参照)が形成される。第1接続電極38,39は形成されない。第3層の配線電極付セラミック層40−2には第1配線電極32、第2配線電極33及び第1接続電極38,39及び第2接続電極41,42(図4(b)、図5参照)が形成される。パッケージ10Aの第4層の底部セラミック層55には実装端子51、52が形成される。第1接続電極38,39と実装端子51,52とは導通している。
【0026】
図5は、配線電極付セラミック層40の斜視図である。第2層の配線電極付セラミック層40−1には−Z’軸側に第1配線電極32が形成され、+Z’軸側に第2配線電極33が形成されている。第2層の第1配線電極32及び第2配線電極33は、+Y’軸方向から−Y’軸方向に見ると、外側から中央に時計回りに螺旋状に形成されている。第1配線電極32及び第2配線電極33の先端は、配線電極付セラミック層40−1の左右半分の領域の中央に存在し、そこに金属膜のスルーホール電極28,29が形成されている。
【0027】
第3層の配線電極付セラミック層40−2にも−Z’軸側に第1配線電極32が形成され、+Z’軸側に第2配線電極33が形成されている。第3層の第1配線電極32及び第2配線電極33は、+Y’軸方向から−Y’軸方向に見ると、外側から中央に反時計回りに螺旋状に形成されている。第1配線電極32及び第2配線電極33の先端は、配線電極付セラミック層40−1の左右半分の領域の中央に存在し、そこに金属膜の第3接続電極34、35が形成されている。スルーホール電極28,29と第3接続電極34、35とはそれぞれ導通されている。
【0028】
より詳しく説明する。図6(a)に示されるように、第2層の配線電極付セラミック層40−1のC−C’断面には、第1配線電極32と第2接続電極41とスルーホール電極29とが形成されている。スルーホール電極29は、配線電極付セラミック層40−1の表裏面を貫通し金属膜で覆われている。第3層の配線電極付セラミック層40−2のC−C’断面には、第1配線電極32と第2接続電極41と第1接続電極39と第3接続電極35とが形成されている。第2層の配線電極付セラミック層40−1と第3層の配線電極付セラミック層40−2とは、積層されることでスルーホール電極29と第3接続電極35とが接続される。
【0029】
また、図6(b)に示されるように、第2層の配線電極付セラミック層40−1のD−D’断面には、第2配線電極33とスルーホール電極28とが形成されている。スルーホール電極28は、配線電極付セラミック層40−1の表裏面を貫通し金属膜で覆われている。第3層の配線電極付セラミック層40−2のD−D’断面には、第2配線電極32と第3接続電極34とが形成されている。第2層の配線電極付セラミック層40−1と第3層の配線電極付セラミック層40−2とは、積層されることでスルーホール電極28と第3接続電極34とが接続されている。
【0030】
さらに、図6(c)に示されるように、第3層の配線電極付セラミック層40−2のE−E’断面には、底面と側面に第1接続電極38が形成され、第2接続電極42と第2配線電極32とが形成されている。底面の第1接続電極38と実装端子52とは、第3層の配線電極付セラミック層40−2と第4層の底部セラミック層55(図4(b)参照)とを積層することで接続されている。
【0031】
以上のような構成であるため、第1電極パッド23(図4(a)を参照。)から外部端子51に電流が流れる場合には、以下のように電流が流れる(図5を参考。)。
【0032】
まず配線電極付セラミック層40−1の第2接続電極41に入った電流の向きは、矢印で示されるように時計回りに流れる。その電流はスルーホール電極29を通って第3接続電極35に流れる。第3接続電極35に入った電流の向きは矢印に示されるように時計回りに流れる。そして電流は配線電極付セラミック層40−2の第2接続電極41を介して実装端子51へ流れる。第2層の配線電極付セラミック層40−1の第1配線電極32の電流の向きと第3層の配線電極付セラミック層40−2の第1配線電極32の電流の向きとが同じである。このため、二層の第1配線電極32同士は、電流が同じ向きになりインダクタンスが強められる。
【0033】
また、実装端子52(図4(b)を参照。)から配線電極付セラミック層40−2に電流が流れてくる場合には、以下のように電流が流れる。
【0034】
まず配線電極付セラミック層40−2の第2接続電極42に入った電流の向きは、矢印で示されるように反時計回りに流れる。その電流は第3接続電極34からスルーホール電極28を通って配線電極付セラミック層40−1の第2配線電極33に流れる。第2配線電極33に入った電流の向きは矢印に示されるように反時計回りに流れる。そして電流は配線電極付セラミック層40−1の第2接続電極42を介して第2ATカット水晶振動片20Aの第2電極パッド24へ流れる。第2層の配線電極付セラミック層40−1の第2配線電極32の電流の向きと第3層の配線電極付セラミック層40−2の第2配線電極32の電流の向きとが同じである。このため、二層の第2配線電極32同士は、電流が同じ向きになりインダクタンスが強められる。
【0035】
ここで、配線電極付セラミック層40−1及び40−2の第1配線電極32と第2配線電極33とはZ’軸方向に隣り合っている。この隣り合った電流の向きも、配線電極付セラミック層40−1及び40−2の中央領域では同じ向きになっている。このため、同一層の第2配線電極33と第1配線電極32とは電流が同じ向きになりインダクタンスが強められる。
【0036】
(第3実施形態)
<第3水晶デバイス120の構成>
図7(a)は、リッド5を取り除いた状態の第3実施例の第3水晶デバイス120の平面図である。図7(b)は図7(a)のF−F’断面図である。説明のため、ベース用セラミック層は分離して描いてある。図8に配線電極付セラミック層60の斜視図を示す。図9(a)は、配線電極付セラミック層60のG−G’断面図であり、(b)は、配線電極付セラミック層40のH−H’断面図であり、(c)は、第3層の配線電極付セラミック層40−2のJ−J’断面図である。第2実施形態と同じ構成要件には同じ符号を付して重複する説明を省略する。図7(a)及び(b)に示されるように、第2ATカット水晶振動片20Aは、第2実施形態と同じである。
【0037】
パッケージ10Bは、複数枚のセラミックシートを積層して箱状になった状態で焼結される。パッケージ10Bのベース用セラミック層は、第1層の底面用セラミック層50と、四層からなる配線電極付セラミック層60(60−1〜60−4)と、第6層の底部セラミック層55との六層からなる。
【0038】
図7(b)及び図8に示されるように、パッケージ10Bの第2層の配線電極付セラミック層60−1には、第1配線電極32、第1接続電極38及び第2接続電極41,42が形成される。第1接続電極39は形成されない。第2層の配線電極付セラミック層60−1にはスルーホール電極29が形成されている。第3層の配線電極付セラミック層60−2には、第1配線電極32、第1接続電極38,39、第2接続電極41,42及び第3接続電極35が形成される。第2層の配線電極付セラミック層60−1及び第3層の配線電極付セラミック層60−2に形成された第1配線電極32は、外側から中央にかけて時計回りの螺旋状に形成されている。
【0039】
第4層の配線電極付セラミック層60−3には、第2配線電極33、第1接続電極39、第2接続電極41,42及びスルーホール電極28が形成される。第1接続電極38は形成されない。第5層の配線電極付セラミック層60−4には、第2配線電極33、第1接続電極38,39、第2接続電極41,42第3接続電極34が形成される。
【0040】
より詳しく説明する。図9(a)に示されるように、第2層の配線電極付セラミック層60−1のG−G’断面には、第1配線電極32と第2接続電極41とスルーホール電極29とが形成されている。第3層の配線電極付セラミック層60−2のG−G’断面には、第1配線電極32と第2接続電極41と第1接続電極39と第3接続電極35とが形成されている。第2層の配線電極付セラミック層60−1と第3層の配線電極付セラミック層60−2とは、積層されることでスルーホール電極29と第3接続電極35とが接続される。
【0041】
図9(b)に示されるように、第4層の配線電極付セラミック層60−3のH−H’断面には、第2配線電極33とスルーホール電極28とが形成されている。第5層の配線電極付セラミック層60−4のH−H’断面には、第2配線電極32と第3接続電極34とが形成されている。第4層の配線電極付セラミック層60−3と第5層の配線電極付セラミック層60−4とは、積層されることでスルーホール電極28と第3接続電極34とが接続される。
【0042】
また図9(c)に示されるように、第5層の配線電極付セラミック層60−4のJ−J’断面には、底面と側面に第1接続電極38が形成され、上面に第2接続電極42と第2配線電極32とが形成されている。底面の第1接続電極38と実装端子52とは、第5層の配線電極付セラミック層60−4と第6層の底部セラミック層55(図7(b)参照)とを積層することで接続されている。
【0043】
以上のような構成であるため、第1電極パッド23(図7(a)を参照)から外部端子51に電流が流れる場合には、以下のように電流が流れる(図8を参考。)。
【0044】
まず配線電極付セラミック層60−1の第2接続電極41に入った電流の向きは、矢印で示されるように反時計回りに流れる。その電流はスルーホール電極29を通って第3接続電極35に流れる。第3接続電極35に入った電流の向きは矢印に示されるように反時計回りに流れる。そして電流は配線電極付セラミック層60−2、60−3,60−4の第2接続電極41を介して実装端子51へ流れる。第2層の配線電極付セラミック層60−1の第1配線電極32の電流の向きと第3層の配線電極付セラミック層60−2の第1配線電極32の電流の向きとが同じである。このため、二層の第1配線電極32同士は、電流が同じ向きになりインダクタンスが強められる。
【0045】
また、実装端子52(図7(b)を参照。)から配線電極付セラミック層40−2に電流が流れてくる場合には、以下のように電流が流れる。
【0046】
まず配線電極付セラミック層60−4の第2接続電極42に入った電流の向きは、矢印で示されるように反時計回りに流れる。その電流は第3接続電極34からスルーホール電極28を通って配線電極付セラミック層60−3の第2配線電極33に流れる。第2配線電極33に入った電流の向きは矢印に示されるように反時計回りに流れる。そして電流は配線電極付セラミック層60−3、60−2,60−1の第2接続電極42を介して第2ATカット水晶振動片20Aの第2電極パッド24へ流れる。第4層の配線電極付セラミック層60−3の第2配線電極32の電流の向きと第5層の配線電極付セラミック層60−4の第2配線電極32の電流の向きとが同じである。このため、二層の第2配線電極32同士は、電流が同じ向きになりインダクタンスが強められる。
【0047】
ここで、交番電流が流れた際に、配線電極付セラミック層60−1、60−2,60−3及び60−4の第1配線電極32と第2配線電極33との電流の向きは、すべて反時計回りになっている。このため、第1配線電極32と第2配線電極33とは電流が同じ向きになりインダクタンスが強められる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上、本発明の好適実施例について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において上記各実施例に様々な変更・変形を加えて実施することができる。例えば第3実施形態において、配線電極付セラミック層60(60−1〜60−4)が四層である場合を説明したが、配線電極付セラミック層60−1と60−2との組み合わせだけでもよい。また配線電極付セラミック層60−2と60−3との組み合わせだけでもよい。さらに、実施形態1から実施形態3ではATカット水晶振動片で説明したが、水晶の切断方向は、BTカット、SCカット、ITカットなどの切断方向でもよい。また、水晶デバイスは水晶振動片を発振する発振回路を有するICを備えてもよい。
【符号の説明】
【0049】
5 リッド
10 パッケージ
11 枠部
13、15 導電性接着剤
19 封止材
20、20A 第1、第2ATカット水晶振動片
21,22 引出電極
23,24 第1、第2電極パッド
25,26 第1、第2励振電極
28,29 スルーホール電極
32,33 第1、第2配線電極
34,35 第3接続電極
38,39 第1接続電極
40(40−1,40−2) 配線電極付セラミック層
41,42 第2接続端子
50 底面用セラミック層
51,52 実装端子
53 台座用セラミック層
55 底部セラミック層
60(60−1,60−2,60−3,60−4) 配線電極付セラミック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面にそれぞれ第1励振電極及び第2励振電極を有する板状の水晶板と、
実装面に第1実装端子及び第2実装端子を有し、前記水晶板を収納するパッケージと、
前記第1励振電極から前記第1実装端子までを配線する第1配線電極と、
前記第2励振電極から前記第2実装端子までを配線する第2配線電極と、を備え、
前記第1配線電極と第2配線電極とが交番電流が印加された際に同じ電流向きになるように螺旋状に形成されている水晶デバイス。
【請求項2】
前記第1配線電極と第2配線電極とが前記水晶版の表裏面にそれぞれ形成されている請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
前記第1配線電極と第2配線電極とが前記パッケージに形成されている請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項4】
前記パッケージは複数層からなり、前記複数層の各層に前記第1配線電極と前記第2配線電極とがともに形成されている請求項3に記載の水晶デバイス。
【請求項5】
前記パッケージは複数層からなり、前記複数層の一層に前記第1配線電極又は前記第2配線電極の一方が形成されている請求項3に記載の水晶デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−191560(P2012−191560A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55346(P2011−55346)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】