説明

水晶振動子及び水晶発振器

【課題】 バンプ等を設けなくても水晶片を浮かせた状態で保持することができる水晶振動子を提供する。
【解決手段】 セラミックパッケージ1の凹部に水晶保持端子4a,4bが設けられる領域を除いてシート2を形成して、シート2が形成されている領域と形成されていない領域との間に段差を設けて、シート2が形成されていない領域を相対的に窪ませ、当該窪んだ領域に水晶保持端子4a,4bを設けて、水晶片3を導電性接着剤5で水晶保持端子4a,4bに固定させると共に、シート2の端の角部で水晶片3を支えることにより、水晶片3をセラミックパッケージの凹部底面に対して斜めに保持する水晶振動子としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子及び水晶発振器に係り、特に水晶片をパッケージに格納する際に、水晶片を浮かせた状態で容易に保持できる水晶振動子及び水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来の水晶振動子及びそれを用いた水晶発振器では、水晶片をセラミックパッケージ内に格納する場合に、水晶片の一短辺をセラミックパッケージの凹部に接触させて、水晶片の裏面に設けられた電極と水晶保持端子とを導電性接着剤で固定している。水晶片の一辺を保持する構造を片持ちタイプと呼ぶ。
その際、水晶片の振動を妨げないために、セラミックパッケージに接触している一辺以外の辺は、セラミックパッケージの凹部表面から浮かせた状態で保持する必要がある。
【0003】
従来の水晶振動子では、水晶片を浮かせるために、セラミックパッケージ内部にバンプを設けたり、水晶片に支持部を設けて(下駄をはかせる)、水晶片の一辺から少し内側に入ったところを支点として水晶片を保持し、当該一辺をセラミックパッケージに接触させると共に他の辺を浮かせるようにしていた。
【0004】
[関連技術]
尚、水晶発振器に関する技術としては、特開平10−22776号公報「圧電振動子」(出願人:セイコーエプソン株式会社、特許文献1)、実開平5−65199号公報「振動片の搭載保持構造」(出願人:リバーエレテック株式会社、特許文献2)、特開2005−109794号公報「圧電振動子」(出願人:京セラキンセキ株式会社、特許文献3)、特開2003−78373号公報「圧電振動子の製造方法」(出願人:キンセキ株式会社、特許文献4)がある。
【0005】
特許文献1には、圧電振動子において、接続電極に支持体を設けて、圧電振動片の接合端部を、その端縁より内側の位置を支点として、当該端縁より高い位置で支持することが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、電極に段差を設けることが記載され、特許文献3には、外側のバンプ群と内側のバンプ群に接続する電極パッドの厚みを変えて接合強度の低下を防ぐことが記載され、特許文献4には、振動子の吸着搭載ノズルの端面が、水平な搭載基板面に対して角度を有することが記載されている。
【0007】
更に、水晶発振器に関する別の技術として、特開2010−103344号公報(特許文献5)、特開2004−356662号公報(特許文献6)、特開2004−129090号公報(特許文献7)、特開2009−124619号公報(特許文献8)がある。
特許文献5には、配線基板において、金属バンプと配線パターンとを接続する金属メッキ層を備えることが記載され、特許文献6には、金バンプと導体パッドとの接触圧を一定以上にすることが記載されている。
【0008】
また、特許文献7には、圧電発振器においてパッケージ内側の壁にダム層を突出形成して樹脂の這い上がりを防ぐことが記載され、特許文献8には、パッケージ内壁に切り欠き部を設けて樹脂の這い上がりを防ぐことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−22776号公報
【特許文献2】実開平5−65199号公報
【特許文献3】特開2005−109794号公報
【特許文献4】特開2003−78373号公報
【特許文献5】特開2010−103344号公報
【特許文献6】特開2004−356662号公報
【特許文献7】特開2004−129090号公報
【特許文献8】特開2009−124619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の水晶発振器では、セラミックパッケージ内で水晶片を浮かせるためには、接合端部付近に支点となる突起物を形成していたが、突起物の形成が煩雑であるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、パッケージ内で容易に水晶片を浮かせることができる水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、セラミックパッケージ内の凹部に水晶片が搭載され、凹部に水晶片と電気的に接続する水晶保持電極を備えた水晶振動子であって、凹部の水晶保持電極が設けられていない領域をほぼ覆うように形成されたシートを備えて、水晶保持電極が設けられた領域を相対的に窪ませ、水晶片が、水晶保持電極上に塗布された導電性接着剤によって固定されると共に、シートの水晶保持電極側の角部に接触することによって凹部底面に対して斜めに保持されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記水晶振動子において、シートが、セラミックパッケージの三方の側面に接し、セラミックパッケージの側面を形成する工程において形成されることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、セラミックパッケージ内の凹部に水晶片が搭載され、凹部に水晶片と電気的に接続する水晶保持電極を備えた水晶振動子であって、水晶片が、金バンプによって水晶保持電極と接合されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、水晶発振器において、上記水晶振動子を備えたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、セラミックパッケージの両面に凹部が設けられ、一方の凹部に水晶片が搭載され、他方の凹部にICチップが搭載され、ICチップが搭載された凹部に樹脂が充填されたH型構造の水晶発振器であって、セラミックパッケージの側面の途中に、側面の内壁に沿って一周する溝部を備えたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、セラミックパッケージの両面に凹部が設けられ、一方の凹部に水晶片が搭載され、他方の凹部にICチップが搭載され、ICチップが搭載された凹部に樹脂が充填されたH型構造の水晶発振器であって、セラミックパッケージの側面の途中に、側面の内壁に沿って一周する突起部を備えたことを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、セラミックパッケージの両面に凹部が設けられ、一方の凹部に水晶片が搭載され、他方の凹部にICチップが搭載され、ICチップが搭載された凹部に樹脂が充填されたH型構造の水晶発振器であって、セラミックパッケージの側面の途中に、側面の内壁に沿って一周する溝部と突起部とを備えたことを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、セラミックパッケージ内の凹部に水晶片が搭載され、凹部に水晶片と電気的に接続する水晶保持電極を備えた水晶振動子であって、水晶片が、水晶保持電極と接続する方向の端部において水晶保持電極と接続する面に突出部を備え、突出部が、水晶保持電極上に塗布された導電性接着剤によって固定され、水晶片の突出部が設けられていない部分は凹部底面から浮いた状態で保持されることを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、セラミックパッケージの両面に凹部が設けられ、一方の凹部に水晶片が搭載され、他方の凹部にICチップが搭載され、ICチップが搭載された凹部に樹脂が充填されたH型構造の水晶発振器であって、ICチップは、凹部に接続する接続端子が設けられた面の反対側の面に凹凸が形成されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、上記水晶発振器において、凹凸が、直線状又は曲線状に形成された溝であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、セラミックパッケージ内の凹部に水晶片が搭載され、凹部に水晶片と電気的に接続する水晶保持電極を備えた水晶振動子であって、凹部の水晶保持電極が設けられていない領域をほぼ覆うように形成されたシートを備えて、水晶保持電極が設けられた領域を相対的に窪ませ、水晶片が、水晶保持電極上に塗布された導電性接着剤によって固定されると共に、シートの水晶保持電極側の角部に接触することによって凹部底面に対して斜めに保持されている水晶振動子としているので、バンプを設けなくても水晶片を浮かせて保持することができる効果がある。
【0023】
また、本発明によれば、上記水晶振動子において、シートが、セラミックパッケージの三方の側面に接し、セラミックパッケージの側面を形成する工程において形成される上記水晶振動子としているので、シートを容易に形成することができる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、セラミックパッケージ内の凹部に水晶片が搭載され、凹部に水晶片と電気的に接続する水晶保持電極を備えた水晶振動子であって、水晶片が、金バンプによって水晶保持電極と接合されている水晶振動子としているので、金メッキされた水晶保持端子と金バンプとの間及び水晶片の電極と金バンプとの間は金−金接合となって良好な導通が得られる効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、セラミックパッケージの側面の途中に、側面の内壁に沿って一周する溝部を備えた水晶発振器としているので、樹脂が端子にまで這い上がって、不具合が発生するのを防ぐことができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、セラミックパッケージの側面の途中に、側面の内壁に沿って一周する突起部を備えた水晶発振器としているので、樹脂を這い上がりにくくして、不具合の発生を防ぐことができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、水晶片が、水晶保持電極と接続する方向の端部において水晶保持電極と接続する面に突出部を備え、突出部が、水晶保持電極上に塗布された導電性接着剤によって固定され、水晶片の突出部が設けられていない部分は凹部底面から浮いた状態で保持される水晶振動子としているので水晶片を浮いた状態で自立させることができる効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、ICチップは、凹部に接続する接続端子が設けられた面の反対側の面に凹凸が形成されている水晶発振器としているので、ICチップの裏面と樹脂との接触面積を大きくして樹脂をはじきにくくし、余分な樹脂の充填を不要として、樹脂の這い上がりによる不具合の発生を防ぐことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子の上面図であり、(b)は、断面図である。
【図2】第1の水晶振動子を用いたH型水晶発振器の断面図である。
【図3】(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子の上面図であり、(b)は水晶片の裏面図であり、(c)は断面図である。
【図4】第2の水晶振動子を用いたH型発振器の断面説明図である。
【図5】従来の水晶発振器における樹脂の充填の様子を示す模式説明図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の第3の実施の形態に係る水晶発振器の構造を示す説明図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る水晶振動子に用いられる水晶片の模式断面説明図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る水晶発振器の構成を示す説明図である。
【図9】本発明の第5の水晶発振器のICチップ34に形成される溝の形状例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る水晶振動子及び水晶発振器は、パッケージの底部において、水晶片が固定される部分を窪ませて底部との間に段差部を形成し、水晶片の1辺を導電性接着剤で水晶保持端子に固定すると共に、当該段差部の角部を支点として他の辺を浮かせて保持するものであり、バンプ等を設けなくても水晶片を容易に浮かせて保持することができるものである。
【0031】
また、本発明の実施の形態に係る水晶振動子及び水晶発振器は、パッケージの底部に、絶縁性のシートを設けて、水晶片の1辺を導電性接着剤で水晶保持端子に固定すると共に、シートの縁で形成される段差部の角部を支点として他の辺を浮かせて保持するものであり、バンプ等を設けなくても水晶片を容易に浮かせた状態で保持することができるものである。
【0032】
[第1の実施の形態:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子の構成について図1を用いて説明する。図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子の上面図であり、(b)は、断面図である。
図1(a)及び(b)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子(第1の水晶振動子)は、セラミックパッケージ1に設けられた凹部内に、シート2と、水晶片3と、水晶保持端子4a及び4bと、導電性接着剤5a及び5bが設けられている。
【0033】
水晶保持端子4a,4bは、セラミックパッケージ1に形成された金属電極であり、セラミックパッケージ1の凹部の1短辺に沿って形成されている。そして、水晶片2の裏面に設けられた電極と、導電性接着剤5a又は5bによって接続している。
【0034】
導電性接着剤5a,5bは、水晶片2の裏面の電極と水晶保持端子4a,4bとを電気的に接続すると共に、水晶片2を斜めに保持して固定している。
【0035】
シート2は、第1の水晶振動子の特徴部分であり、セラミックパッケージ1と同様の素材(例えばアルミナ)から成り、セラミックパッケージ1の凹部内で、水晶保持端子4a,4bが設けられていない領域をほぼ覆うように形成されている。具体的には、シート2は、セラミックパッケージ1を構成する基板1aの上にシート2の厚さとなるようセラミック層を形成し、当該セラミック層の内、水晶保持端子4a,4bが設けられる領域をエッチングで除去して形成されるものであり、図1の例では、セラミックパッケージ1の三方の側面の一部を形成している。
シート2を設けることにより、水晶保持端子4a,4bが設けられている部分は相対的に窪んだ形状となっている。
【0036】
そして、水晶片3は、一短辺の両端を導電性接着剤5a,5bによって保持されると共に、当該短辺の近くでシート2の端部の角部に接触して保持され、凹部底面と一定の角度を為すよう固定されている。水晶片3が所望の角度で固定されるよう、シート2の大きさ(窪みの広さ)及び厚さ(段差の高さ)や導電性接着剤5a,5bの塗布厚等を調整する。
【0037】
すなわち、第1の水晶振動子では、シート2を設けていない領域の高さがシート2を設けた領域と比べて相対的に低くなり、低い部分に設けられた導電性接着剤5に水晶片2の短辺を斜めに挿入することにより、バンプ等を設けなくても水晶片3を斜めに浮かせて保持することを可能とするものである。更に、水晶片3をシート2の端部で支えることにより、水晶片3を安定させて確実に保持できるものである。
【0038】
[H型水晶発振器:図2]
第1の水晶振動子を用いたH型水晶発振器について図2を用いて説明する。図2は、第1の水晶振動子を用いたH型水晶発振器の断面図である。
図2に示すように、H型発振器は、図1に示した水晶振動子と同じ水晶振動子10の裏面に、第1の水晶振動子10のセラミックパッケージ1と同様の下向きの凹部(別の凹部)を形成するため側面部11が設けられ、当該別の凹部の中にICチップ12が格納されている。そして、ICチップ12は、上部の水晶振動子10と金属配線で接続されている。
このように、本振動子を利用して発振器を形成することができ、バンプを設けることなく、容易に水晶片を浮かせた状態で保持できるものである。
【0039】
[第1の実施の形態の効果]
本発明の第1の実施の形態に係る水晶振動子及び水晶発振器によれば、セラミックパッケージ1の凹部に水晶保持端子4a,4bが設けられる領域を除いてシート2を形成して、シート2が形成されている領域と形成されていない領域との間に段差を設け、シート2が形成されていない領域を相対的に窪ませ、当該窪んだ領域に水晶保持端子4a,4bを設けて導電性接着剤5を塗布し、水晶片3を導電性接着剤5に斜めに挿入して固定させると共に、シート2の端の角部で水晶片3を支える構成としているので、バンプ等を設けなくても水晶片3を浮かせた状態で容易に保持することができる効果がある。
【0040】
[第2の実施の形態:図3]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子及び水晶発振器について説明する。
一般に、水晶振動子及び水晶発振器は、水晶片を導電性接着剤によって金メッキされた水晶保持端子に接続してパッケージとの導通をとるようにしているが、導電性接着剤と金メッキとは電気的に導通が取りにくい場合があり、製造条件が悪化すると不具合が発生してしまうことがある。
【0041】
また、電子部品において、金属バンプと配線パターンとを接続して良好な接続を得る構成は、上述した特許文献5及び特許文献6に記載されている。
しかしながら、水晶振動子において水晶片とパッケージ側の電極とを金バンプで接続した構成は開示されていない。
【0042】
図3(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子の上面図であり、(b)は水晶片の裏面図であり、(c)は断面図である。
本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子(第2の水晶振動子)は、図3(a)に示すように、セラミックパッケージ21の凹部に、水晶片22が搭載され、凹部の底面には金メッキが施された水晶保持端子23a,23bが形成されている。
【0043】
水晶片22の表面及び裏面には励振電極24,25が形成されている。尚、励振電極24,25は、水晶保持端子23a,23bに接続するため、それぞれ、水晶片22の角部の表面及び裏面にリード電極27a,27bを備えており、各励振電極用の表面と裏面のリード電極27は水晶片22の側面で接続している。
【0044】
そして、第2の水晶振動子の特徴として、図3(b)(c)に示すように、水晶片22の裏面に設けられた2つのリード電極27a,27bに、それぞれ金バンプ26a,26bが形成されており、水晶片22は、当該金バンプ26a,26bを介して水晶保持端子23a,23bに接続している。
金バンプ26は、例えば、金ワイヤの先端を溶融させてボール状にし、これをリード電極上に高温高圧や超音波で圧着することによって形成される。
【0045】
これにより、金メッキされた水晶保持端子23a,23bと金バンプ26a,26bとの接続は金と金との接合となり、電気的に良好な接続が得られるものである。
また、従来は水晶片22のサイズが大きく重量も重かったため、金バンプでは接合力が不足して接合は困難であったが、水晶片22の小型化が進み、金バンプでも十分接合可能となったものである。
【0046】
[第2の水晶振動子を用いたH型発振器:図4]
次に、第2の水晶振動子を用いた発振器について図4を用いて説明する。図4は、第2の水晶振動子を用いたH型発振器の断面説明図である。
図4に示すように、第2の水晶振動子を用いたH型発振器は、図3(c)に示した第2の水晶振動子の裏面に、別の凹部を形成してICチップ28を搭載し、水晶振動子と電気的に接続したものである。水晶振動子の水晶片3と水晶保持端子24との接合部分に加えて、ICチップ28とパッケージに形成された電極との接合部分にも金バンプ26が用いられている。
これにより、発振器全体の電気的導通が良好となるものである。
【0047】
[第2の実施の形態の効果]
本発明の第2の実施の形態に係る水晶振動子によれば、水晶片22の裏面に設けられがリード電極27a,27bに金バンプ26a,26bを形成し、金バンプ26a,26bを介してセラミックパッケージ21の水晶保持端子23a,23bに接続するようにしているので、金メッキされた水晶保持端子23と金バンプ26とは金−金接合となって良好な導通が得られる効果がある。
【0048】
また、図3,4では、水晶振動子22がセラミックパッケージの底面と略平行に保持されているが、図1及び2と同様に、シート2を配置して水晶振動子22を斜めに保持する構成としてもよい。
【0049】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係る水晶発振器について説明する。
H型構造の水晶発振器では、ICチップのコーティングを行うためセラミックパッケージの凹部に樹脂を充填する。
【0050】
[従来の水晶発振器における樹脂の充填:図5]
従来の水晶発振器における樹脂の充填の様子について図5を用いて説明する。図5は、従来の水晶発振器における樹脂の充填の様子を示す模式説明図である。
図5に示すように、H型構造の水晶発振器は、セラミックパッケージの両面に形成された凹部に水晶片32とICチップ34とが搭載され、水晶片32は、導電性接着剤33によって電極に接続されると共に凹部に固定されている。
また、セラミックパッケージの側面部31の上部及び下部には外部に接続する端子35が設けられている。
【0051】
そして、ICチップ34の搭載が完了すると、コーティングのため、ICチップ34が格納されている凹部に、樹脂36が充填される。
その際、樹脂の量が多かったり凹部底面積がやや小さかった場合等、樹脂36がセラミックパッケージの側面上部まで這い上がって、端子34を覆ってしまうことがあり、端子34のハンダ付け性や導通不足を招く恐れがある。
【0052】
尚、特許文献7には、発振器のパッケージ内側の壁に上方向に突出したダム層を形成して樹脂の這い上がりを防ぐことが記載されているが、水平方向に突出した層を形成することは記載されていない。
また、特許文献8には、発振器のパッケージの側壁部の四隅に切り欠きを設けることが記載されているが、側壁内部に沿って一周する溝を形成することは記載されていない。
【0053】
[第3の実施の形態に係る水晶発振器:図6]
本発明の第3の実施の形態に係る水晶発振器について図6を用いて説明する。図6(a)〜(c)は、本発明の第3の実施の形態に係る水晶発振器の構造を示す説明図である。
第3の実施の形態に係る水晶発振器(第3の水晶発振器)は、樹脂の這い上がりを防ぐために、セラミックパッケージの側面上部に這い上がり防止用の構成を備えており、(1)溝部を設けたもの、(2)突起部を設けたもの、(3)溝部と突起部の両方を設けたものがある。
【0054】
図6(a)に示すように、第3の水晶発振器の第1のタイプは、セラミックパッケージの側面部31の上部に、幅が側面部31よりも狭い第1のセラミック層37を設け、更にその上に側面部31と同等の幅を備えた第2のセラミック層38を積層したものであり、第2のセラミック層38の上部には端子35が形成されている。
2つのセラミック層37,38を形成したことにより、幅の狭い第1のセラミック層37の内側には、側面部31の内壁の周囲に沿って、溝部39が内壁を一周するように形成されている。
これにより、余分な樹脂が溝部39に吸収され、端子35にまで這い上がってくるのを防ぐものである。
【0055】
第3の水晶発振器の第2のタイプは、セラミックパッケージの側面部31の上部に、幅が側面部31よりも広いセラミック層40を設けたものである。
ここで、セラミックパッケージの凹部底面からセラミック層40までの高さは、第1のタイプにおける溝部39の高さと比べて幾分高くしている。
セラミック層40により、側面部31の内壁に沿って、水平に突出した庇状の突起部41が内壁を一周するように形成され、樹脂が端子35にまで這い上がるのを防ぐものである。
【0056】
第3の水晶発振器の第3のタイプは、第1と第2のタイプを合わせた構成であり、セラミックパッケージの側面部31の上部に、側面部31よりも幅が狭い第1のセラミック層37と、側面部31より幅が広い第2のセラミック層40とを備えたものである。
これにより、セラミックパッケージの側面部31の内壁に沿って溝部と突起部とを両方備えた構成となり、樹脂が端子35に這い上がるのを防ぐものである。
【0057】
[第3の実施の形態の効果]
本発明の第3の実施の形態に係る水晶発振器によれば、セラミックパッケージの側面部31の上部に、側面部の内壁の周囲に溝部39を形成しているので、余分な樹脂を溝部39で吸収して、端子35に樹脂が這い上がるのを防ぐことができる効果がある。
【0058】
また、本発明の第3の実施の形態に係る水晶発振器によれば、セラミックパッケージの側面部31の上部に、側面部の内壁の周囲に水平に突出する突起部を形成しているので、端子35に樹脂が這い上がるのを防ぐことができる効果がある。
【0059】
[第4の実施の形態:図7]
次に、本発明の第4の実施の形態に係る水晶振動子について図7を用いて説明する。図7は、本発明の第4の実施の形態に係る水晶振動子に用いられる水晶片の模式断面説明図である。
本発明の第4の実施の形態に係る水晶振動子(第4の水晶振動子)は、水晶片自体の形状を変えて、セラミックパッケージ内で容易に浮かせることができるようにしたものである。
【0060】
図7に示すように、第4の水晶振動子に用いられる水晶片51は、水晶保持電極54と接続する方向の端部裏面に、突出部52を設けた形状であり、当該突出部52が導電性接着剤55によって固定されている。つまり、突出部52が設けられている短辺付近と他の部分では水晶片51の厚さが異なり、突出部51が設けられていない部分は相対的に薄いものである。
【0061】
これにより、第4の水晶振動子では、水晶片51を斜めに保持する特別な構成を備えなくても、水晶片51を浮かせることができ、水晶片51がセラミックパッケージ50の内壁に接触することなく振動可能となるものである。
尚、突出部52の裏面には、リード電極が設けられており、導電性接着剤53によって水晶保持電極54と接続している。
【0062】
また、図7の例では、突出部52の先端面は突出方向に対してほぼ直角に形成されており、水晶片51はセラミックパッケージの底面に対してほぼ水平に固定されているが、突出部52の先端に角度をつけることにより、水晶片51を斜めに保持することも考えられる。
また、第4の水晶振動子を用いた水晶発振器を形成してもよい。
【0063】
[第4の実施の形態の効果]
本発明の第4の実施の形態に係る水晶振動子は、水晶片51の、水晶保持電極54と接続する方向の端部に突出部52を設け、突出部52を導電性接着剤53によって水晶保持電極54に接続するよう固定されているので、バンプ等を設けなくても、水晶片51の突出部52が設けられていない部分をパッケージから浮かせて保持することができる効果がある。
【0064】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態に係る水晶発振器について説明する。
第5の実施の形態に係る水晶発振器(第5の水晶発振器)は、第3の水晶発振器と同様に、H型水晶発振器において樹脂の這い上がりを防ぐものである。
図6に示した従来のH型構造の水晶発振器において、ICチップ34は、セラミックパッケージの基板との接続面に接続端子や金属配線等の回路パターンを備え、当該端子がセラミックパッケージに形成された電極に導電性接着剤等により接続されている。
【0065】
従来のH型構造の水晶発振器におけるICチップ34は、セラミックパッケージに接続される面とは反対側の面(回路パターンが設けられていない面)は鏡面状の表面となっており、ぬれ性が悪く、凹部に樹脂36を充填する際に樹脂をはじいてしまう。
そのため、樹脂36を充填する際には多めにコーティングしなければならず、樹脂36が端子35に這い上がりやすいという問題点があった。
【0066】
[第5の水晶発振器の構成:図8]
図8は、本発明の第5の実施の形態に係る水晶発振器の構成を示す説明図である。
図8に示すように、第5の水晶発振器は、図5に示した従来の水晶発振器と基本的な構成は同様であるが、ICチップ34の回路パターンが形成されていない面(図8では上面、以下「IC裏面」と称する)の表面に多数の溝61を形成して、樹脂との接触面に凹凸を設けている。
尚、IC裏面は、請求項に記載した「凹部に接続する接続端子が設けられた面の反対側の面」に相当する。
【0067】
これにより、第5の水晶発振器では、ICチップ34と樹脂36とが接触する面積を増大させてぬれ性を向上させ、適切な量の樹脂で十分コーティング可能とすることで、余分な樹脂36を充填せずに済み、樹脂36の這い上がりを防ぐようにしている。
【0068】
IC裏面の溝61は、H型のパッケージに搭載する前に形成されるものであり、ICを製造するウエハにおいて、回路パターンの形成後、ウエハの裏面をやすり等で研磨することにより形成される。
通常、ICの回路パターンが形成されたウエハの裏面を削ってICチップを薄くすること(バックグラインド)が行われるが、第5の水晶発振器では、その工程の最後に目の粗いやすりを用いて複数の溝61を形成する。
【0069】
また、アルゴンガスを用いたスパッタリングによって溝61を形成することも可能である。アルゴンガスを用いた場合には、やすりで削る場合よりも溝61は浅く形成される。
溝61の断面形状は、図8では矩形で示されているが、V字型やU字型の溝でも構わない。
【0070】
[溝の形状例:図9]
次に、第5の水晶発振器でICチップ34に形成される溝61の形状例について図9を用いて説明する。図9は、第5の水晶発振器のICチップ34に形成される溝の形状例を示す説明図である。図9では、図8に示した第5の水晶発振器を上方向から見た状態を示している。
図9(a)では、直線状で縦方向又は横方向に複数の溝61が形成されており、(b)では、曲線状の溝61が形成されている。
【0071】
また、溝61の形状は、樹脂36とIC裏面との接触性を向上させるものであればよく、より不規則な配置及び形状であっても構わない。また、溝に限らず、単にIC裏面を粗く削って凹凸を形成しただけでもよい。更に、小さい陥没部(凹部)や突起部(凸部)をIC裏面に複数設けたものでもよい。
【0072】
[第5の水晶発振器の応用例]
図8に示した構成以外にも、図6に示した樹脂の這い上がりを防ぐパッケージを用いて、第5の水晶発振器を構成することも可能である。
つまり、図6に示したパッケージに、IC裏面に多数の溝61が形成されたICチップを搭載した構成としてもよく、このようにすれば、樹脂がIC裏面ではじかれにくく、且つパッケージの内側面に溝部や突起部が設けられているため、樹脂の這い上がりを一層確実に防ぐことができるものである。
【0073】
更に、図2に示したH型発振器や、図4に示したH型発振器においても、裏面に溝61を備えたICチップを用いて第5の水晶発振器を構成することが可能であり、いずれも樹脂の這い上がりを防ぐことができるものである。
【0074】
[第5の実施の形態の効果]
本発明の第5の実施の形態に係る水晶発振器によれば、ICチップの回路パターンが形成された面とは反対側の面に、溝61等の凹凸を設けているので、樹脂とIC裏面との接触面積を増大させて樹脂をはじきにくくすることができ、余分な樹脂を充填せずに済むため、樹脂が端子35に這い上がるのを防ぐことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、水晶片をパッケージに格納する際に、水晶片を浮かせた状態で容易に保持できる水晶振動子及び水晶発振器に適している。
【符号の説明】
【0076】
1,21...セラミックパッケージ、 2...シート、 3,22,32,51...水晶片、 4,27,54...水晶保持端子、 5,33,53...導電性接着剤、 10...第1の水晶振動子、 11,31...側面部、 12,28,34...ICチップ、 24...リード電極、 26...金バンプ、 35...端子、 36...樹脂、 37,38,40...セラミック層、 39...溝部、 41...突起部、 50...セラミックパッケージ、 52...突出部、 61...溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックパッケージ内の凹部に水晶片が搭載され、前記凹部に前記水晶片と電気的に接続する水晶保持電極を備えた水晶振動子であって、
前記凹部の前記水晶保持電極が設けられていない領域をほぼ覆うように形成されたシートを備えて、前記水晶保持電極が設けられた領域を相対的に窪ませ、
前記水晶片が、前記水晶保持電極上に塗布された導電性接着剤によって固定されると共に、前記シートの前記水晶保持電極側の角部に接触することによって前記凹部底面に対して斜めに保持されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
シートが、前記セラミックパッケージの三方の側面に接し、前記セラミックパッケージの側面を形成する工程において形成されることを特徴とする請求項1記載の水晶振動子。
【請求項3】
セラミックパッケージ内の凹部に水晶片が搭載され、前記凹部に前記水晶片と電気的に接続する水晶保持電極を備えた水晶振動子であって、
前記水晶片が、金バンプによって前記水晶保持電極と接合されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の水晶振動子を備えたことを特徴とする水晶発振器。
【請求項5】
セラミックパッケージの両面に凹部が設けられ、一方の凹部に水晶片が搭載され、他方の凹部にICチップが搭載され、前記ICチップが搭載された凹部に樹脂が充填されたH型構造の水晶発振器であって、
前記セラミックパッケージの側面の途中に、前記側面の内壁に沿って一周する溝部を備えたことを特徴とする水晶発振器。
【請求項6】
セラミックパッケージの両面に凹部が設けられ、一方の凹部に水晶片が搭載され、他方の凹部にICチップが搭載され、前記ICチップが搭載された凹部に樹脂が充填されたH型構造の水晶発振器であって、
前記セラミックパッケージの側面の途中に、前記側面の内壁に沿って一周する突起部を備えたことを特徴とする水晶発振器。
【請求項7】
セラミックパッケージの両面に凹部が設けられ、一方の凹部に水晶片が搭載され、他方の凹部にICチップが搭載され、前記ICチップが搭載された凹部に樹脂が充填されたH型構造の水晶発振器であって、
前記セラミックパッケージの側面の途中に、前記側面の内壁に沿って一周する溝部と突起部とを備えたことを特徴とする水晶発振器。
【請求項8】
セラミックパッケージ内の凹部に水晶片が搭載され、前記凹部に前記水晶片と電気的に接続する水晶保持電極を備えた水晶振動子であって、
前記水晶片が、前記水晶保持電極と接続する方向の端部において前記水晶保持電極と接続する面に突出部を備え、
前記突出部が、前記水晶保持電極上に塗布された導電性接着剤によって固定され、前記水晶片の前記突出部が設けられていない部分は前記凹部底面から浮いた状態で保持されることを特徴とする水晶振動子。
【請求項9】
セラミックパッケージの両面に凹部が設けられ、一方の凹部に水晶片が搭載され、他方の凹部にICチップが搭載され、前記ICチップが搭載された凹部に樹脂が充填されたH型構造の水晶発振器であって、
前記ICチップは、前記凹部に接続する接続端子が設けられた面の反対側の面に凹凸が形成されていることを特徴とする水晶発振器。
【請求項10】
凹凸が、直線状又は曲線状に形成された溝であることを特徴とする請求項9記載の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−114898(P2012−114898A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233982(P2011−233982)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】