水晶振動板及びその製造方法
【課題】 その目的は、閉じ込め精度を向上させると共に、生産性を向上させることができる水晶振動板及びにその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 所望する周波数を励振する矩形状の圧電振動領域部が周縁部よりも薄く、外周形状の周縁部と該圧電振動領域部とが一体的に形成されており、且つ該圧電振動領域部の表裏主面上に励振用電極と、該励振用電極から該補強部を介して引き出した引出電極と、該補強部の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した該引出電極と電気的に接続した容器接続用電極とを具備する水晶振動板において、前記圧電振動領域部の一方の主面が凸部であり、他方の主面が凹部を有していることを特徴とするものである。
【解決手段】 所望する周波数を励振する矩形状の圧電振動領域部が周縁部よりも薄く、外周形状の周縁部と該圧電振動領域部とが一体的に形成されており、且つ該圧電振動領域部の表裏主面上に励振用電極と、該励振用電極から該補強部を介して引き出した引出電極と、該補強部の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した該引出電極と電気的に接続した容器接続用電極とを具備する水晶振動板において、前記圧電振動領域部の一方の主面が凸部であり、他方の主面が凹部を有していることを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、水晶振動子に使用される水晶振動板及びその製造方法に関し、特に高周波数で基本波厚みすべり振動する水晶振動板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器には基準信号発生源等として水晶振動子が用いられており、その水晶振動子の気密容器の中には水晶素板の主面上に各種電極を形成した水晶振動板が用いられている。
【０００３】
かかる従来の水晶振動板のうち、特に厚みすべり基本波振動として数百ＭＨｚ以上の振動を励起するような水晶振動板としては、所望の基本波周波数で励振する圧電振動領域部と、その圧電振動領域部の周囲に圧電振動領域部と一体で且つ圧電振動領域部よりも厚みの厚い補強部と、この圧電振動領域部及び補強部の表面の所定の箇所に、金、銀又は合金を用いた多層構造の各種電極とにより構成されてものが各種考案されている。
詳細に説明すると、まず所望の周波数で励振する矩形状の圧電振動領域部が形成されている。その周囲にこの圧電振動領域部と一体で形成され、且つ圧電振動領域部よりも厚みの厚い外周形状が矩形状の補強部が形成されている。後述する先行技術文献に開示の水晶振動板の場合、圧電振動領域部と補強部との厚み差を一方の主面側のみで構成し、他方の主面側では圧電振動領域部と補強部との間に段差のない平板構造とした水晶素板を開示している。
【０００４】
ＡＴカット水晶振動子において振動モードは厚みすべり振動であり、その周波数は圧電振動領域部の厚みに反比例ため、高周波化を図るには圧電振動領域部の厚さを薄くする必要がある。現在、ＡＴカット水晶素板を単に平板状に形成した場合は、落下などの衝撃に耐えうる強度的には厚みが約１７μｍ（基本波振動で約１００ＭＨｚ）で、特許文献１と２に示すように圧電振動領域部の周囲に、圧電振動領域部の厚みより厚い補強部を一体で形成したような水晶振動子の場合は、圧電振動領域部の厚みが約５μｍ（基本波振動で約３５０ＭＨｚ）以下のものが作成されている。
このような形状に加工した水晶素板に、圧電振動領域部の表裏主面上に励振用電極と、この励振用電極から補強部を介して引き出した引出電極と、補強部の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した前記引出電極と電気的に接続した容器接続用電極とを形成することで水晶振動板を形成している。
【０００５】
又、このような水晶振動板の製造方法としては、平板形状の水晶ウエハの一方の主面の所定の箇所に、矩形状に、フォトリソグラフィ法とエッチングにより複数個の凹状の窪みをマトリックス状に整列形成する。この凹部の底部の厚みを所望の周波数が振動する厚さまでエッチングし、圧電振動領域部とする。この圧電振動領域部は、その周囲にこの圧電振動領域部を支持補強するために水晶ウエハの厚みを厚さとする補強部を一体で形成するような位置に形成している。
この個々の圧電振動領域部の表裏主面上に、円形の励振電極が表裏で対向するように形成し、この励振電極から圧電振動領域部の周囲の補強部表裏面上に延出する引出電極を形成し、この引出電極は個々の補強部における一つの辺縁部に形成する表裏各々２つの容器接続用電極まで延出し、この容器接続用電極と電気的に接続するように形成する。
その後、励振用電極、引出電極及び容器接続用電極を表裏主面上に形成した圧電振動領域部及び補強部を複数個整列配置して形成した水晶ウエハを、各々の補強部に定めた切断線に沿って切断し個片加工した複数個の水晶振動板を形成する。
【０００６】
尚、このような水晶振動板及びその製造方法につきましては、以下のような先行技術文献が公知となっている。
【特許文献１】特開２００４―４０６９３号公報
【特許文献２】特開２００１−２５７５６０号公報
【０００７】
なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、上述した従来の水晶振動板では、小型化する程、接続用電極と励振用電極の距離が確保できなくなると共に、励振電極の面積を確保することが出来ない為、閉じ込め精度が維持できないという欠点があった。
【０００９】
また、水晶ウエハを分割する際に、ダイシングテープに前記水晶ウエハを貼り付けてから分割を行うが、この際に励振用電極にテープ屑や粘着物が付着する為、洗浄工程が必要になり、生産性が低下してしまうという欠点があった。
【００１０】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、閉じ込め精度を向上させると共に、生産性を向上させることができる水晶振動板及びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の水晶振動板は、所望する周波数を励振する矩形状の圧電振動領域部が周縁部よりも薄く、外周形状の周縁部と該圧電振動領域部とが一体的に形成されており、且つ該圧電振動領域部の表裏主面上に励振用電極と、該励振用電極から該補強部を介して引き出した引出電極と、該補強部の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した該引出電極と電気的に接続した容器接続用電極とを具備する水晶振動板において、前記圧電振動領域部の一方の主面が凸部であり、他方の主面が凹部を有していることを特徴とするものである。
【００１２】
また、本発明の水晶振動板は、前記圧電振動領域部の凹部を形成している面積が凸部を形成している面積より大きいことを特徴とするものである。
【００１３】
更に本発明の水晶振動板は、前記圧電振動領域部の凹部及びに凸部の全面に電極が形成されていることを特徴とするものである。
【００１４】
また更に、本発明の水晶振動板の製造方法は、一方の主面に凸部を形成し、他方の主面に凹部が形成されてなる矩形状の複数個の圧電振動領域部と、該圧電振動領域部の周囲に外周領域部が形成されている水晶ウエハを準備する工程と、前記圧電振動領域部に、励振用電極を形成することにより、外周部の表裏面の容器接続用電極を形成する領域に電気的に接続する該容器接続用電極を形成する工程と、該水晶ウエハを、所定の切断線により切断し個片加工した複数個の水晶振動板を形成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１５】
上記記載の本発明の水晶振動板によれば、前記圧電振動領域部の一方の主面が凸部であり、他方の主面が凹部を有していることにより、接続用電極及びに励振用電極とがそれぞれ同一面に形成されず、前記接続用電極と前記励振用電極の距離が確保することができる。
また、前記励振用電極の面積が一定以上確保できるとともに、励振用電極が凹部及びに凸部に形成される為、閉じ込め精度を維持することが可能となる。
【００１６】
また、本発明の水晶振動板によれば、前記圧電振動領域部の凹部を形成している面積が凸部を形成している面積より大きいことにより、上面及び下面の励振用電極の重なっている面積が常に一定の面積を確保できることにより、閉じ込め精度を向上させることが可能となる。
【００１７】
更に、本発明の水晶振動板によれば、前記圧電振動領域部の凹部及びに凸部の全面に電極が形成されていることにより、励振電極の面積を大きく取ることができ、閉じ込め精度を向上させることが可能となる。
【００１８】
また更に本発明の水晶振動板の製造方法によれば、前記圧電振動領域部の凹部に励振用電極を形成し、水晶ウエハを分割する際に、前記水晶ウエハの凹部を形成している面をダイシングテープに貼り付けてから分割を行うことにより、励振用電極にテープ屑や粘着物が付着することがなく、洗浄工程が不要になり、生産性を向上させることが可能となる。
因って、本発明による水晶振動板及びその製造方法を用いることにより、水晶振動板の小型化に対応でき、且つ上記水晶振動板を効率よく製造できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１９】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
図１は、本発明の水晶振動板の外観斜視図である。図２は、図１記載の水晶振動板の断面図である。図３は、図１及び図２記載の水晶振動板を用いた水晶振動子の断面図である。図４は、本発明における水晶振動板製造時における、水晶ウエハ状態時（図４（ａ）の電極形成から図４（ｂ）の個片化）の形態を図示した外観斜視図である。図５は、本発明の水晶振動板のその他の実施例を示す外観斜視図である。
尚、各図において、本説明に必ずしも必要としない部品又は構造体は図示していない。又、各図を明確にするために一部部品又は構造体を誇張して図示しており、部品及び構造体の厚み寸法については特に誇張してある。
【実施例】
【００２０】
図１及び図２に示す水晶振動板１０は大略的に言って、所望の周波数で励振する矩形状の圧電振動領域部１１が形成されている。前記圧電振動領域部１１の一方の面は凸部形状になっており、他方の面は、凹部形状が形成されている。
図１の水晶素板１２は水晶結晶体より所謂ＡＴカットで切り出され平板加工されたものであり、圧電振動領域部１１の振動モードは厚みすべり振動である。前記水晶素板の圧電振動領域部の一方の面（図１（ａ））に凸部１３を形成すると共に、他方の面（図１（ｂ））には、凹部１４が形成されており、前記凸部１３及び前記凹部１４には、励振用電極１５が形成されている。
このような形状に加工した水晶素板１２に、圧電振動領域部１０の凸部１３及びに凹部１４に励振用電極１５と、この励振用電極１５から接続部を介して引き出した引出電極１６と、接続部１７の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した前記引出電極１６と電気的に接続した容器接続用電極１８とを形成することで水晶振動板１０を形成している。
【００２１】
このような形状の水晶振動板１０は図３のように水晶振動子を構成する容器１９の内部に搭載される。即ち、水晶振動板１０は、圧電振動領域部１１と接続部との間に段差がある主面を容器１９の内部底面に向けた形態で、且つ容器１９の内部底面上に水晶振動板１０に形成した容器接続用電極１８に対応した位置に形成した素子接続用電極パッド２０に、導電性接着剤２１を介して固着導通している。この際に導電性接着剤２１は、水晶振動板１０の容器側主面に形成した容器接続用電極１８と素子接続用電極パッド２０との間を固着導通できる量のみ塗布されている。
【００２２】
次に上記のような水晶振動板を製造する方法としては、まず平板形状の水晶ウエハ２２の一方の主面側から、厚みすべり振動モードで所望する周波数を励振する厚みにまで厚み加工した矩形状の複数個の圧電振動領域部１１を、フォトリソグラフィ法及びエッチングにより、圧電振動領域部１１には、凸部１３及びに凹部１４を形成する。凸部１３は、外周部分を薄くすることにより形成し、凹部１４は、外周を厚くすることにより形成されている。
また、個々の圧電振動領域部１１の周囲に形成した接続部１７に容器接続用電極１８を形成する。このような水晶振動板をマトリックス状に複数個整列形成する。
【００２３】
次に、上記のような外形加工を施した水晶ウエハ２２の個々の圧電振動領域部１１に形成された凸部１３及びに凹部１４に励振用電極１５と、励振用電極１５から圧電振動領域部１１の周囲に形成した接続部１７を介して、接続部１７のうち外周の一つの辺縁部まで延設した引出電極１６と、引出電極１６が延設した外周辺のうちの表裏縁部近傍に引出電極１６と電気的に接続した容器接続用電極１８に、水晶ウエハ２２両主面に対向するように形成されている各々の容器接続用電極１８同士を電気的に接続する電極間接続用電極を蒸着法やスパッタリングにより形成する。
【００２４】
上記記載の本発明の水晶振動板によれば、前記圧電振動領域部１１の一方の主面が凸部１３であり、他方の主面が凹部１４を有していることにより、容器接続用電極１８及びに励振用電極１５とがそれぞれ同一面に形成されず、前記容器接続用電極１８と前記励振用電極１５の距離が確保することができる。
また、前記励振用電極１５の面積が一定以上確保できるとともに、励振用電極１５が凸部１３及びに凹部１４に形成される為、閉じ込め精度を維持することが可能となる。
【００２５】
前記圧電振動領域部１１の凹部１４を形成している面積が凸部１３を形成している面積より大きいことにより、上面及び下面の励振用電極１５の重なっている面積が常に一定の面積を確保できることにより、閉じ込め精度を向上させることが可能となる。
【００２６】
また、前記圧電振動領域部１１の凸部１３及びに凹部１４の全面に励振用電極１５が形成されていることにより、励振用電極１５の面積を大きく取ることが可能となる。
次に、水晶ウエハ３０を圧電振動領域部１１周囲に所定領域を形成するように所定の切断線Ａにより切断することにより、水晶ウエハ２２から分離し、各個片加工した複数個の水晶振動板１０を形成する。
この際、前記圧電振動領域部１１の凹部１４に励振用電極１５を形成し、水晶ウエハ２２を分割する際に、前記水晶ウエハ２２の凹部１４を形成している面をダイシングテープ２３に貼り付けてから分割を行うことにより、励振用電極１５にテープ屑や粘着物が付着することがなく、洗浄工程が不要になり、生産性を向上させることが可能となる。
【００２７】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２８】
【図１】本発明の水晶振動板の外観斜視図である。
【図２】本発明の水晶振動板の断面図である。
【図３】本発明の水晶振動板を水晶振動子用容器に搭載した場合の搭載形態を図示した断面図である。
【図４】本発明の水晶振動板製造時における、水晶ウエハに個々の水晶振動板を作成した形態を図示する外観斜視図である。
【図５】本発明の水晶振動板の他の実施例を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【００２９】
１０・・・水晶振動板
１１・・・圧電振動領域部
１２・・・水晶素板
１３・・・凸部
１４・・・凹部
１５・・・励振用電極
１６・・・引出電極
１７・・・接続部
１８・・・容器接続用電極
１９・・・容器
２０・・・素子接続用電極パッド
２１・・・導電性接着剤
２２・・・水晶ウエハ
２３・・・ダイシングテープ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、水晶振動子に使用される水晶振動板及びその製造方法に関し、特に高周波数で基本波厚みすべり振動する水晶振動板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器には基準信号発生源等として水晶振動子が用いられており、その水晶振動子の気密容器の中には水晶素板の主面上に各種電極を形成した水晶振動板が用いられている。
【０００３】
かかる従来の水晶振動板のうち、特に厚みすべり基本波振動として数百ＭＨｚ以上の振動を励起するような水晶振動板としては、所望の基本波周波数で励振する圧電振動領域部と、その圧電振動領域部の周囲に圧電振動領域部と一体で且つ圧電振動領域部よりも厚みの厚い補強部と、この圧電振動領域部及び補強部の表面の所定の箇所に、金、銀又は合金を用いた多層構造の各種電極とにより構成されてものが各種考案されている。
詳細に説明すると、まず所望の周波数で励振する矩形状の圧電振動領域部が形成されている。その周囲にこの圧電振動領域部と一体で形成され、且つ圧電振動領域部よりも厚みの厚い外周形状が矩形状の補強部が形成されている。後述する先行技術文献に開示の水晶振動板の場合、圧電振動領域部と補強部との厚み差を一方の主面側のみで構成し、他方の主面側では圧電振動領域部と補強部との間に段差のない平板構造とした水晶素板を開示している。
【０００４】
ＡＴカット水晶振動子において振動モードは厚みすべり振動であり、その周波数は圧電振動領域部の厚みに反比例ため、高周波化を図るには圧電振動領域部の厚さを薄くする必要がある。現在、ＡＴカット水晶素板を単に平板状に形成した場合は、落下などの衝撃に耐えうる強度的には厚みが約１７μｍ（基本波振動で約１００ＭＨｚ）で、特許文献１と２に示すように圧電振動領域部の周囲に、圧電振動領域部の厚みより厚い補強部を一体で形成したような水晶振動子の場合は、圧電振動領域部の厚みが約５μｍ（基本波振動で約３５０ＭＨｚ）以下のものが作成されている。
このような形状に加工した水晶素板に、圧電振動領域部の表裏主面上に励振用電極と、この励振用電極から補強部を介して引き出した引出電極と、補強部の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した前記引出電極と電気的に接続した容器接続用電極とを形成することで水晶振動板を形成している。
【０００５】
又、このような水晶振動板の製造方法としては、平板形状の水晶ウエハの一方の主面の所定の箇所に、矩形状に、フォトリソグラフィ法とエッチングにより複数個の凹状の窪みをマトリックス状に整列形成する。この凹部の底部の厚みを所望の周波数が振動する厚さまでエッチングし、圧電振動領域部とする。この圧電振動領域部は、その周囲にこの圧電振動領域部を支持補強するために水晶ウエハの厚みを厚さとする補強部を一体で形成するような位置に形成している。
この個々の圧電振動領域部の表裏主面上に、円形の励振電極が表裏で対向するように形成し、この励振電極から圧電振動領域部の周囲の補強部表裏面上に延出する引出電極を形成し、この引出電極は個々の補強部における一つの辺縁部に形成する表裏各々２つの容器接続用電極まで延出し、この容器接続用電極と電気的に接続するように形成する。
その後、励振用電極、引出電極及び容器接続用電極を表裏主面上に形成した圧電振動領域部及び補強部を複数個整列配置して形成した水晶ウエハを、各々の補強部に定めた切断線に沿って切断し個片加工した複数個の水晶振動板を形成する。
【０００６】
尚、このような水晶振動板及びその製造方法につきましては、以下のような先行技術文献が公知となっている。
【特許文献１】特開２００４―４０６９３号公報
【特許文献２】特開２００１−２５７５６０号公報
【０００７】
なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、上述した従来の水晶振動板では、小型化する程、接続用電極と励振用電極の距離が確保できなくなると共に、励振電極の面積を確保することが出来ない為、閉じ込め精度が維持できないという欠点があった。
【０００９】
また、水晶ウエハを分割する際に、ダイシングテープに前記水晶ウエハを貼り付けてから分割を行うが、この際に励振用電極にテープ屑や粘着物が付着する為、洗浄工程が必要になり、生産性が低下してしまうという欠点があった。
【００１０】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、閉じ込め精度を向上させると共に、生産性を向上させることができる水晶振動板及びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の水晶振動板は、所望する周波数を励振する矩形状の圧電振動領域部が周縁部よりも薄く、外周形状の周縁部と該圧電振動領域部とが一体的に形成されており、且つ該圧電振動領域部の表裏主面上に励振用電極と、該励振用電極から該補強部を介して引き出した引出電極と、該補強部の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した該引出電極と電気的に接続した容器接続用電極とを具備する水晶振動板において、前記圧電振動領域部の一方の主面が凸部であり、他方の主面が凹部を有していることを特徴とするものである。
【００１２】
また、本発明の水晶振動板は、前記圧電振動領域部の凹部を形成している面積が凸部を形成している面積より大きいことを特徴とするものである。
【００１３】
更に本発明の水晶振動板は、前記圧電振動領域部の凹部及びに凸部の全面に電極が形成されていることを特徴とするものである。
【００１４】
また更に、本発明の水晶振動板の製造方法は、一方の主面に凸部を形成し、他方の主面に凹部が形成されてなる矩形状の複数個の圧電振動領域部と、該圧電振動領域部の周囲に外周領域部が形成されている水晶ウエハを準備する工程と、前記圧電振動領域部に、励振用電極を形成することにより、外周部の表裏面の容器接続用電極を形成する領域に電気的に接続する該容器接続用電極を形成する工程と、該水晶ウエハを、所定の切断線により切断し個片加工した複数個の水晶振動板を形成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１５】
上記記載の本発明の水晶振動板によれば、前記圧電振動領域部の一方の主面が凸部であり、他方の主面が凹部を有していることにより、接続用電極及びに励振用電極とがそれぞれ同一面に形成されず、前記接続用電極と前記励振用電極の距離が確保することができる。
また、前記励振用電極の面積が一定以上確保できるとともに、励振用電極が凹部及びに凸部に形成される為、閉じ込め精度を維持することが可能となる。
【００１６】
また、本発明の水晶振動板によれば、前記圧電振動領域部の凹部を形成している面積が凸部を形成している面積より大きいことにより、上面及び下面の励振用電極の重なっている面積が常に一定の面積を確保できることにより、閉じ込め精度を向上させることが可能となる。
【００１７】
更に、本発明の水晶振動板によれば、前記圧電振動領域部の凹部及びに凸部の全面に電極が形成されていることにより、励振電極の面積を大きく取ることができ、閉じ込め精度を向上させることが可能となる。
【００１８】
また更に本発明の水晶振動板の製造方法によれば、前記圧電振動領域部の凹部に励振用電極を形成し、水晶ウエハを分割する際に、前記水晶ウエハの凹部を形成している面をダイシングテープに貼り付けてから分割を行うことにより、励振用電極にテープ屑や粘着物が付着することがなく、洗浄工程が不要になり、生産性を向上させることが可能となる。
因って、本発明による水晶振動板及びその製造方法を用いることにより、水晶振動板の小型化に対応でき、且つ上記水晶振動板を効率よく製造できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１９】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
図１は、本発明の水晶振動板の外観斜視図である。図２は、図１記載の水晶振動板の断面図である。図３は、図１及び図２記載の水晶振動板を用いた水晶振動子の断面図である。図４は、本発明における水晶振動板製造時における、水晶ウエハ状態時（図４（ａ）の電極形成から図４（ｂ）の個片化）の形態を図示した外観斜視図である。図５は、本発明の水晶振動板のその他の実施例を示す外観斜視図である。
尚、各図において、本説明に必ずしも必要としない部品又は構造体は図示していない。又、各図を明確にするために一部部品又は構造体を誇張して図示しており、部品及び構造体の厚み寸法については特に誇張してある。
【実施例】
【００２０】
図１及び図２に示す水晶振動板１０は大略的に言って、所望の周波数で励振する矩形状の圧電振動領域部１１が形成されている。前記圧電振動領域部１１の一方の面は凸部形状になっており、他方の面は、凹部形状が形成されている。
図１の水晶素板１２は水晶結晶体より所謂ＡＴカットで切り出され平板加工されたものであり、圧電振動領域部１１の振動モードは厚みすべり振動である。前記水晶素板の圧電振動領域部の一方の面（図１（ａ））に凸部１３を形成すると共に、他方の面（図１（ｂ））には、凹部１４が形成されており、前記凸部１３及び前記凹部１４には、励振用電極１５が形成されている。
このような形状に加工した水晶素板１２に、圧電振動領域部１０の凸部１３及びに凹部１４に励振用電極１５と、この励振用電極１５から接続部を介して引き出した引出電極１６と、接続部１７の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した前記引出電極１６と電気的に接続した容器接続用電極１８とを形成することで水晶振動板１０を形成している。
【００２１】
このような形状の水晶振動板１０は図３のように水晶振動子を構成する容器１９の内部に搭載される。即ち、水晶振動板１０は、圧電振動領域部１１と接続部との間に段差がある主面を容器１９の内部底面に向けた形態で、且つ容器１９の内部底面上に水晶振動板１０に形成した容器接続用電極１８に対応した位置に形成した素子接続用電極パッド２０に、導電性接着剤２１を介して固着導通している。この際に導電性接着剤２１は、水晶振動板１０の容器側主面に形成した容器接続用電極１８と素子接続用電極パッド２０との間を固着導通できる量のみ塗布されている。
【００２２】
次に上記のような水晶振動板を製造する方法としては、まず平板形状の水晶ウエハ２２の一方の主面側から、厚みすべり振動モードで所望する周波数を励振する厚みにまで厚み加工した矩形状の複数個の圧電振動領域部１１を、フォトリソグラフィ法及びエッチングにより、圧電振動領域部１１には、凸部１３及びに凹部１４を形成する。凸部１３は、外周部分を薄くすることにより形成し、凹部１４は、外周を厚くすることにより形成されている。
また、個々の圧電振動領域部１１の周囲に形成した接続部１７に容器接続用電極１８を形成する。このような水晶振動板をマトリックス状に複数個整列形成する。
【００２３】
次に、上記のような外形加工を施した水晶ウエハ２２の個々の圧電振動領域部１１に形成された凸部１３及びに凹部１４に励振用電極１５と、励振用電極１５から圧電振動領域部１１の周囲に形成した接続部１７を介して、接続部１７のうち外周の一つの辺縁部まで延設した引出電極１６と、引出電極１６が延設した外周辺のうちの表裏縁部近傍に引出電極１６と電気的に接続した容器接続用電極１８に、水晶ウエハ２２両主面に対向するように形成されている各々の容器接続用電極１８同士を電気的に接続する電極間接続用電極を蒸着法やスパッタリングにより形成する。
【００２４】
上記記載の本発明の水晶振動板によれば、前記圧電振動領域部１１の一方の主面が凸部１３であり、他方の主面が凹部１４を有していることにより、容器接続用電極１８及びに励振用電極１５とがそれぞれ同一面に形成されず、前記容器接続用電極１８と前記励振用電極１５の距離が確保することができる。
また、前記励振用電極１５の面積が一定以上確保できるとともに、励振用電極１５が凸部１３及びに凹部１４に形成される為、閉じ込め精度を維持することが可能となる。
【００２５】
前記圧電振動領域部１１の凹部１４を形成している面積が凸部１３を形成している面積より大きいことにより、上面及び下面の励振用電極１５の重なっている面積が常に一定の面積を確保できることにより、閉じ込め精度を向上させることが可能となる。
【００２６】
また、前記圧電振動領域部１１の凸部１３及びに凹部１４の全面に励振用電極１５が形成されていることにより、励振用電極１５の面積を大きく取ることが可能となる。
次に、水晶ウエハ３０を圧電振動領域部１１周囲に所定領域を形成するように所定の切断線Ａにより切断することにより、水晶ウエハ２２から分離し、各個片加工した複数個の水晶振動板１０を形成する。
この際、前記圧電振動領域部１１の凹部１４に励振用電極１５を形成し、水晶ウエハ２２を分割する際に、前記水晶ウエハ２２の凹部１４を形成している面をダイシングテープ２３に貼り付けてから分割を行うことにより、励振用電極１５にテープ屑や粘着物が付着することがなく、洗浄工程が不要になり、生産性を向上させることが可能となる。
【００２７】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２８】
【図１】本発明の水晶振動板の外観斜視図である。
【図２】本発明の水晶振動板の断面図である。
【図３】本発明の水晶振動板を水晶振動子用容器に搭載した場合の搭載形態を図示した断面図である。
【図４】本発明の水晶振動板製造時における、水晶ウエハに個々の水晶振動板を作成した形態を図示する外観斜視図である。
【図５】本発明の水晶振動板の他の実施例を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【００２９】
１０・・・水晶振動板
１１・・・圧電振動領域部
１２・・・水晶素板
１３・・・凸部
１４・・・凹部
１５・・・励振用電極
１６・・・引出電極
１７・・・接続部
１８・・・容器接続用電極
１９・・・容器
２０・・・素子接続用電極パッド
２１・・・導電性接着剤
２２・・・水晶ウエハ
２３・・・ダイシングテープ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
所望する周波数を励振する矩形状の圧電振動領域部が周縁部よりも薄く、外周形状の周縁部と該圧電振動領域部とが一体的に形成されており、且つ該圧電振動領域部の表裏主面上に励振用電極と、該励振用電極から該補強部を介して引き出した引出電極と、該補強部の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した該引出電極と電気的に接続した容器接続用電極とを具備する水晶振動板において、
前記圧電振動領域部の一方の主面が凸部であり、他方の主面が凹部を有していることを特徴とする水晶振動板。
【請求項２】
前記圧電振動領域部の凹部を形成している面積が凸部を形成している面積より大きいことを特徴とする請求項１記載の水晶振動板。
【請求項３】
前記圧電振動領域部の凹部及びに凸部の全面に電極が形成されていることを特徴とする請求項１乃至２記載の水晶振動板。
【請求項４】
一方の主面に凸部を形成し、他方の主面に凹部が形成されてなる矩形状の複数個の圧電振動領域部と、該圧電振動領域部の周囲に外周領域部が形成されている水晶ウエハを準備する工程と、
前記圧電振動領域部に、励振用電極を形成することにより、外周部の表裏面の容器接続用電極を形成する領域に電気的に接続する該容器接続用電極を形成する工程と、
該水晶ウエハを、所定の切断線により切断し個片加工した複数個の水晶振動板を形成する工程とを具備することを特徴とする水晶振動板の製造方法。
【請求項１】
所望する周波数を励振する矩形状の圧電振動領域部が周縁部よりも薄く、外周形状の周縁部と該圧電振動領域部とが一体的に形成されており、且つ該圧電振動領域部の表裏主面上に励振用電極と、該励振用電極から該補強部を介して引き出した引出電極と、該補強部の外周辺のうち一辺の表裏縁部近傍に形成した該引出電極と電気的に接続した容器接続用電極とを具備する水晶振動板において、
前記圧電振動領域部の一方の主面が凸部であり、他方の主面が凹部を有していることを特徴とする水晶振動板。
【請求項２】
前記圧電振動領域部の凹部を形成している面積が凸部を形成している面積より大きいことを特徴とする請求項１記載の水晶振動板。
【請求項３】
前記圧電振動領域部の凹部及びに凸部の全面に電極が形成されていることを特徴とする請求項１乃至２記載の水晶振動板。
【請求項４】
一方の主面に凸部を形成し、他方の主面に凹部が形成されてなる矩形状の複数個の圧電振動領域部と、該圧電振動領域部の周囲に外周領域部が形成されている水晶ウエハを準備する工程と、
前記圧電振動領域部に、励振用電極を形成することにより、外周部の表裏面の容器接続用電極を形成する領域に電気的に接続する該容器接続用電極を形成する工程と、
該水晶ウエハを、所定の切断線により切断し個片加工した複数個の水晶振動板を形成する工程とを具備することを特徴とする水晶振動板の製造方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００６−２３８２０７（Ｐ２００６−２３８２０７Ａ）
【公開日】平成１８年９月７日（２００６．９．７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−５１８０２（Ｐ２００５−５１８０２）
【出願日】平成１７年２月２５日（２００５．２．２５）
【出願人】（０００１０４７２２）京セラキンセキ株式会社 (870)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年９月７日（２００６．９．７）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年２月２５日（２００５．２．２５）
【出願人】（０００１０４７２２）京セラキンセキ株式会社 (870)
【Ｆターム（参考）】
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