水晶振動片及び水晶デバイス
【課題】 導電性接着剤が励振電極側に流れ出ても、振動周波数の変動させないようにした水晶振動片を提供する。
【解決手段】 水晶振動片は、第1面及びその第1面の反対側の第2面を有する水晶板(130)と、その水晶板の中央部の第1面及び第2面に設けられ、水晶板を励振する一対の励振電極(131)と、一対の励振電極から水晶板の周縁部に引き出される一対の引出電極(133)と、導電性接着剤が塗布されるための面積を有し、一対の引出電極にそれぞれ接続するとともに第2面に配置される一対の電極パッド(132)と、電極パッドと励振電極との間で、且つ第2面から第1面方向の水晶板の内部に形成される双晶領域(135)と、を備える。
【解決手段】 水晶振動片は、第1面及びその第1面の反対側の第2面を有する水晶板(130)と、その水晶板の中央部の第1面及び第2面に設けられ、水晶板を励振する一対の励振電極(131)と、一対の励振電極から水晶板の周縁部に引き出される一対の引出電極(133)と、導電性接着剤が塗布されるための面積を有し、一対の引出電極にそれぞれ接続するとともに第2面に配置される一対の電極パッド(132)と、電極パッドと励振電極との間で、且つ第2面から第1面方向の水晶板の内部に形成される双晶領域(135)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤でパッケージ内に配置される水晶振動片又は、その水晶振動片を使った水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶デバイスが搭載される上述の各電子部品の小型化に伴い、水晶デバイスの小型化が進んでいる。水晶デバイスの小型化が進むと、水晶デバイスに使われる水晶振動片の電極パッドと励振電極との間の距離や、電極パッド間の距離が小さくなる。その結果として、水晶振動片をベース板に接着する際に電極パッド側から励振電極側に導電性接着剤が流れこんで、振動周波数を所定の周波数から変動させてしまうことがある。
【0003】
特許文献1に開示される水晶デバイスは、電極パッドに塗布された導電性接着剤が励振電極側に流れ出ないように、水晶振動片の一部に凸部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−41109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、導電性接着剤の塗布量が多いと、導電性接着剤が凸部を越えて励振電極側に流れ出る可能性がある。
そこで、本発明は、導電性接着剤が励振電極側に流れ出ても、振動周波数の変動させないようにした水晶振動片及び水晶デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の水晶振動片は、第1面及びその第1面の反対側の第2面を有する水晶板と、その水晶板の中央部の第1面及び第2面に設けられ、水晶板を励振する一対の励振電極と、一対の励振電極から水晶板の周縁部に引き出される一対の引出電極と、導電性接着剤が塗布されるための面積を有し、一対の引出電極にそれぞれ接続するとともに第2面に配置される一対の電極パッドと、電極パッドと励振電極との間で、且つ第2面から第1面方向の水晶板の内部に形成される双晶領域と、を備える。
【0007】
第2の観点の水晶振動片の双晶領域は、一対の電極パッドの間で、水晶板の内部にも形成される。
第3の観点の水晶振動片の双晶領域は、電極パッドが配置される領域の水晶板の内部にも形成される請求項2に記載の水晶振動片。
【0008】
第4の観点の水晶振動片は、電極パッドと双晶領域との間に設けられ、電極パッドに塗布される導電性接着材が励振電極に流れることを防ぐため、電極パッドが形成される第2面よりも第1面から第2面への方向に厚くなった段差部を備える。
第5の観点の水晶振動片は、双晶領域内に設けられ、電極パッドに塗布される導電性接着材が励振電極に流れることを防ぐため、電極パッドが形成される第2面よりも第1面から第2面への方向に厚くなった段差部を備える。
【0009】
第6の観点の水晶振動片の電極パッドは、さらに第1面にも形成され、双晶領域は、電極パッドと励振電極との間で、且つ第1面から第2面方向の水晶板の内部に形成される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水晶振動片。
【0010】
第7の観点の水晶デバイスは、一対の外部電極と、その外部電極に接続する接続電極とを有するベース板と、接続電極と電極パッドに塗布される導電性接着剤と、導電性接着剤によってベース板に配置される第1の観点から第6の観点の水晶振動片と、ベース板に接合して、水晶振動片を覆うリッド板と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水晶デバイスによれば、電極パッドと励振電極の間に双晶領域及び段差部が形成されることにより、導電性接着剤が励振電極側に流れ出ても水晶振動片の振動部に影響を与えない水晶振動片及び水晶デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、リッド110を取り外した第1水晶デバイス100の平面図である。 (b)は、第1水晶デバイス100の断面図である。
【図2】パッケージ120の平面図である。
【図3】(a)は、第1水晶振動片130の斜視図である。 (b)は、第1水晶振動片130の断面図である。 (c)は、第1水晶振動片130の平面図である。
【図4】第1水晶デバイス100の製造を示したフローチャートである。
【図5】導電性接着剤の塗布方法の説明図である。 (a)は、導電性接着剤の下塗りした状況を示す断面図である。 (b)は、第1水晶振動片130が載置された状況を示す断面図である。 (c)は、導電性接着剤を上塗りする状況を示す説明図である。 (d)は、第1水晶振動片130に導電性接着剤を上塗りした状況を示す断面図である。
【図6】(a)は、リッド110を取り外した第2水晶デバイス200の平面図である。 (b)は、第2水晶デバイス200の断面図である。
【図7】(a)は、第2水晶振動片230の平面図である。 (b)は、第2水晶振動片230の断面図である。
【図8】(a)は、第3水晶振動片330の平面図である。 (b)は、第3水晶振動片330の断面図である。
【図9】(a)は、第4水晶振動片430の平面図である。 (b)は、第4水晶振動片430の断面図である。
【図10】(a)は、第5水晶振動片530の平面図である。 (b)は、第5水晶振動片530の断面図である。 (c)は、(b)の破線で囲まれた突起部539及び段差部538の近傍の拡大図である。
【図11】(a)は、第6水晶振動片630の平面図である。 (b)は、第6水晶振動片630の断面図である。
【図12】(a)は、第7水晶振動片730の平面図である。 (b)は、第7水晶振動片730の断面図である。
【図13】(a)は、第8水晶振動片830の平面図である。 (b)は、第8水晶振動片830の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明では、水晶板130には例えばATカットの水晶板が用いられる。ATカットの水晶板は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶板の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をy’軸及びz’軸として用いる。すなわち、第1水晶デバイス100においては第1水晶デバイス100の長辺方向をx軸方向、第1水晶デバイス100の高さ方向をy’軸方向、x及びy’軸方向に垂直な方向をz’軸方向として説明する。以下、第1実施形態から第8実施形態において同様である。
【0014】
(第1実施形態)
<第1水晶デバイス100の構成>
図1(a)は、リッド110を取り外した第1水晶デバイス100の平面図であり、(b)は、第1水晶デバイス100のA―A’断面図である。図1(b)には、A―A’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。図2は、パッケージ120の平面図である。
【0015】
第1水晶デバイス100は、第1水晶振動片130と、リッド110と、パッケージ120とにより構成される。第1水晶デバイス100は、表面実装型の水晶デバイスであり、実装端子125がプリント基板等にハンダで固定される。まず、図1及び図2を使って、パッケージ120について説明する。
【0016】
パッケージ120は、例えばセラミックスにより形成されており、図1(b)に示されるように、パッケージ120は3つの層により形成されている。第1層120aは平面状に形成されている。また、第1層120aの−y’軸側の面は実装面126aであり、実装端子125が形成される。第1層120aの+y’軸側には第2層120bが配置される。第2層120bの中央部には、凹部121の一部を形成する貫通孔が形成されている。また第2層120bは凹部121に載置部123を有している。
【0017】
第2層120bの+y’軸側の面に第3層120cが配置される。第3層120cの中央部には凹部121の一部を形成する貫通孔が形成されている。また、第3層120cの+y’軸側の面には接合面122が形成されている。接合面122は、パッケージ120リッド110と接合される面である。
【0018】
パッケージ120の実装面126a(−y’軸側の面)に、実装端子125(図1(b)参照)が形成される。実装面126aの反対側の面である底面126bに(+y’軸側の面)に凹部121が形成される。底面126bの一部に、載置部123(図1(b)参照)が形成され、載置部123の+y’軸側の面には接続端子124a,124bが形成されている。接続端子124a,124bは、底面126bに形成されている接続電極124c、124d(図2を参照)を介してそれぞれ実装端子125に電気的に接続されている。
【0019】
パッケージ120には、外壁の四隅から凹んだキャスタレーション127a、及びパッケージ120の短辺側の外壁の中央から凹部121側に凹んだキャスタレーション127bが形成されている。パッケージ120は、セラミックスシートに複数のパッケージ120が形成された後に個々に切断されて形成される。切断時に各パッケージ120の角が欠けてしまうことがある。キャスタレーション127aは、このような欠け等によるパッケージ120の破損を防ぐために形成される。
【0020】
また、キャスタレーション127bは、実装端子125の一部をパッケージ120の側面にも形成する。第1水晶デバイス100は、ハンダでプリント基板等に実装される。この溶けたハンダは、第1水晶デバイス100の側面に形成される実装端子125にも付着する。実装端子125に付着したハンダの付き具合で、第1水晶デバイス100とプリント基板との接合状態を確認することができる。
【0021】
パッケージ120に形成される接続端子124a,124b及び実装端子125等の電極は、例えばセラミックス上にタングステンの層が形成され、その上に下地メッキとしてニッケル層が形成され、さらにその上に仕上げメッキとして金層が形成されることにより形成される。
【0022】
次に、リッド110について説明する。リッド110は、平面板である。リッド110はパッケージ120の+y’軸側の面に形成されている接合面122に封止材142(図1(b)参照)を介して接合されることによりパッケージ120の凹部121を密封する。
【0023】
次に、図1及び図3を使って、第1水晶振動片130について説明する。図3(a)は、第1水晶振動片130の斜視図であり、(b)は、第1水晶振動片130のA−A’の断面図であり、(c)は、第1水晶振動片130の平面図である。
【0024】
第1水晶振動片130は、励振部134aとその周辺部134bとを有し、励振部134aの厚みが周辺部134bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。励振部134aの+y’軸側及び−y’軸側の主面には励振電極131a,131bが形成されている。また、一対の電極パッド132a,132bが周辺部134bの−x軸側の短辺側に延出して形成されている。
【0025】
図3(a)に示されるように、+y’軸側の面に形成されている励振電極131aは、側面電極133c及び引出電極133aを介して電極パッド132aに電気的に接続されている。また、−y’軸側の面に形成されている励振電極131bは、引出電極133bを介して電気的に電極パッド132bに接続されている。
【0026】
第1水晶振動片130に形成される励振電極131a,131b、電極パッド132a,132b及び引出電極133a,133b等の電極は、例えば第1水晶振動片130にクロム(Cr)層が形成され、クロム層の上に金(Au)層が形成されることにより形成されている。
【0027】
電極パッド132a、132bと励振電極131a,131bとの間には段差部138が形成されている。−x軸側の励振部134aは、双晶領域135を有している。第1水晶振動片130の双晶領域135は、z’軸方向の直線に伸び、y’軸方向の厚み全体(+y’軸側から−y’軸側まで)が双晶化されている。図1及び図3において、双晶領域135は、網目で描かれている。双晶化は、レーザ光の照射による熱で水晶の一部を加熱し、水晶のαβ相転移点以上の温度に加熱して、水晶の電気軸即ちX軸を反転させることである。双晶領域135は、双晶化していない他の部分よりも共振周波数が1.47倍高くなる。
【0028】
第1水晶デバイス100は、パッケージ120の+y’軸側に形成された凹部121に第1水晶振動片130が載置される。より詳述すると、第1水晶振動片130は、電極パッド132a,132bと接続端子124a,124bとが導電性接着剤141を介して載置部123に載置される。小型化に伴い、電極パッド132a,132b及び接続端子124a,124bの面積は小さくなっている。このため、導電性接着剤が必要以上に塗布されると、導電性接着剤が励振部に達する可能性があるが、第1実施形態の第1水晶デバイス100では、導電性接着剤141は、段差部138が形成されているため、容易に励振部134a側に流れ出ない。仮に流れたとしても、段差部138を超えた励振部134aには、双晶領域135が形成されているため、励振部134aの周波数変動が少ない。つまり、双晶領域135は、双晶化していない他の部分よりも共振周波数が1.47倍高くなることにより、共振周波数に与える影響を抑制する。従って、導電性接着剤141が多く塗布された場合であっても、第1水晶デバイス100は、振動周波数を所定の周波数から変動させることが少ない。
【0029】
<第1水晶デバイス100の製造方法>
図4は、第1水晶デバイス100の製造を示したフローチャートである。図4において、第1水晶振動片130の製造ステップS10と、リッド部11の製造ステップS11と、ベース部12の製造ステップS12とは並行して製造することができる。
【0030】
ステップS10では、第1水晶振動片130が製造される。ステップS10はステップS101、S102,S103を含んでいる。第1水晶振動片130は、均一厚さの水晶平板の水晶ウエハ(不図示)に数百から数千個を形成する。
【0031】
ステップS101において、水晶ウエハは、フォトリソグラフィ技術を用い複数の第1水晶振動片130の外形が形成される。
【0032】
ステップS102において、第1水晶振動片130の−x軸側の励振部134a(図3(c)を参照)に双晶領域135が形成される。双晶領域135は、第1水晶振動片130の外形形成時に用意された金属皮膜にYAGレーザ等のレーザ装置を用いて、金属皮膜にレーザ光を照射して形成される。金属皮膜が形成された箇所が、水晶のαβ相転移点(573℃)以上の温度になり水晶振動片が双晶化される。その後、金属皮膜は除去される。
【0033】
ステップS103において、水晶ウエハはスパッタリングまたは真空蒸着によって水晶ウエハの両面及び側面にクロム(Cr)層及び金(Au)層が順に形成される。そして、金属層の全面にフォトレジストが均一に塗布される。その後、露光装置(不図示)を用いて、フォトマスクに描かれた励振電極、引出電極等のパターンが水晶ウエハの第1水晶振動片130に露光される。次に、フォトレジストから露出した金属層がエッチングされる。これにより、図3(a)に示されたように第1水晶振動片130の両面及び側面には励振電極131a、131b、引出電極133a、133b、側面電極133c及び電極パッド132a、132bが形成される。
【0034】
ステップS104において、第1水晶振動片130は個々に切断される。第1水晶振動片130はピッカー装置(不図示)などで吸着加重することで細くなった連接部より折り取り個片化している。なお、第1水晶振動片130の切断はレーザを用いたダイシング装置、または切断用ブレードを用いたダイシング装置などを用いてもよい。
【0035】
ステップS11では、パッケージ120が製造される。ステップS11はステップS111、S112、S113を含んでいる。ステップS111からステップS113を経てパッケージ120が形成される。
【0036】
ステップS111において、第1層120aのベース用シートと、載置部123が形成された第2層120bのシートと、枠状に形成された第3層120cのキャビティ用シートとからなるセラミックシートが用意される。第1層120aのベース用シート及び第2層120bのシートには、タングステンペーストがスクリーン印刷方式などにより印刷され、接続端子124b及び接続電極124cが形成される。またベース用シートには、タングステンペーストがスクリーン印刷方式などにより印刷され、実装端子125が形成される。3枚のセラミックシートは、積層される。
【0037】
ステップS112において、積層された3枚のセラミックシートは、個々のパッケージ120の大きさに切断される。
【0038】
ステップS113において、切断されたパッケージ120は、1320°C程度で焼成される。これによりパッケージ120が完成する。
【0039】
ステップS12では、リッド110が製造される。ステップS121では、コバール金属等がリッド110の大きさにプレスされる。ステップS122において、リッド110は、接合面に封止材142がスクリーン印刷方式などにより印刷される。封止材142は、パッケージ120の接合面122(図1(b)を参照)に塗布してもよい。
【0040】
ステップS130において、第1水晶振動片130は、導電性接着剤141が塗布された載置部123の接続端子124a、124bに載置され、又は導電性接着剤141を塗布した第1水晶振動片130が接続端子124a、124bに載置される。
【0041】
導電性接着剤141の塗布方法は、2通りの方法がある。第1の塗布方法は、図5(a)に示されるように、導電性接着剤141は、パッケージ120の載置部123の接続端子124に、又は第1水晶振動片130の一対の電極パッド132a,132bに塗布される。次いで、図5(b)に示されるように、第1水晶振動片130が導電性接着剤141の上に載置される。
【0042】
第2の塗布方法は、第1の塗布方法に、更に図5(c)工程を加えた方法である。図5(c)に示されるように、導電性接着剤141の上に載置された第1水晶振動片130は,上部(+y’側)からノズル140で導電性接着剤141が塗布される。図5(d)に示されるように、第1水晶振動片130は、上下両面ともに導電性接着剤141に包み込まれ、図5(b)だけの場合より載置部123により強固に固定できる。
【0043】
第1水晶振動片130は、両主面に双晶領域135が露出していることにより、両主面のいずれかの導電性接着剤141が励振電極131a,131b側に流出しでも、双晶領域135によって,共振周波数に与える影響を抑制することができる。
【0044】
不図示の水晶振動片の装着装置は、第1水晶振動片130を真空吸着し、パッケージ120内に搬入する。第1水晶振動片130は、電極パッド132a、132bに対応する位置に設けられたパッケージ120の接続端子124a、124bに載置される。第1水晶振動片130は、押棒で抑えられる。水晶振動片の装着装置による第1水晶振動片130のパッケージ120内への搬入および位置決めは、不図示のCCDカメラによる画像処理技術によって行われる。具体的には、CCDカメラはパッケージ120内の接続端子124a、124bなどの位置を認識してパッケージ120に対して第1水晶振動片130の位置を特定する。
【0045】
その後、硬化炉で導電性接着剤141が硬化される。これにより、第1水晶振動片130が接続端子124a、124bの導電性接着剤141の上で固定される。
【0046】
ステップS131において、封止材141が塗布されたリッド110は、パッケージ120の接合面122に載置される。パッケージ120に載置したリッド110は、真空中又は不活性雰囲気中で、350°C程度に加熱され押圧されて接合される。その後、第1水晶デバイス100は駆動特性などの検査を経て完成する。
【0047】
(第2実施形態)
<第2水晶デバイス200の構成>
図6(a)は、リッド110を取り外した第2水晶デバイス200の平面図であり、(b)は、第2水晶デバイス200の断面図である。図7(a)は、第2水晶振動片230の平面図であり、(b)は、第2水晶振動片230のC―C’断面図である。図6(b)、図7(b)では、C―C’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0048】
第2水晶デバイス200は、第2水晶振動片230と、リッド110と、パッケージ120とにより構成されている。第2水晶デバイス200と第1水晶デバイス100とは、第1水晶デバイス100の第1水晶振動片130に代わり第2水晶振動片230が搭載されている点で異なっている。第2実施形態では、第1水晶デバイス100とその構成が同じ部分は第1水晶デバイス100と同じ番号を付している。同じ構成についてはその説明を割愛する。
【0049】
第2水晶振動片230は、励振部234aの厚みが励振部234aの周辺部234bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。また、段差部238(図7(b)を参照)を備える。励振部234aの両主面には励振電極231a,231bが形成されている。また、一対の電極パッド232a,232bが−x軸側の周辺部234b側に形成されている。
【0050】
励振電極231aは、側面電極233c及び引出電極233a(図7(a)を参照)を介して電極パッド232aに接続されている。また、励振電極231bは、引出電極233bを介して電極パッド232bに接続されている。
【0051】
双晶領域235は、−x軸側の励振部234a及び−x軸側の周辺部234bまで形成される。双晶領域235は、−x軸側の励振部234aの厚み全体(+y’軸側から−y’軸側まで)が双晶化されている。同様に−x軸側の周辺部234bも厚み全体が双晶化されている。双晶領域235は、第1実施形態の双晶領域135よりも面積が広い。このため、レーザ光を第2水晶振動片230の金属皮膜に照射しやすくなる。その一方、双晶領域235の面積が広いため、レーザ光の照射面積が大きくなる。
【0052】
第2水晶デバイス200の製造方法は、図4に示した第1水晶デバイス100の製造フローチャートと基本的に同じである。双晶領域235は、第2水晶振動片230の−x軸側の励振部234a及び−x軸側の周辺部234bの先端部までレーザ光を照射することにより形成される。
【0053】
第2水晶振動片230は、電極パッド232a,232bと接続端子124a,124bとが導電性接着剤141を介して載置部123に載置される。このため、導電性接着剤が必要以上に塗布されると、導電性接着剤が励振部に達する可能性があるが、第2実施形態の第2水晶デバイス200では、導電性接着剤141は、段差部238が形成されているため、容易に励振部234a側に流れ出ない。仮に流れたとしても、段差部238を超えた励振部234aには、双晶領域235が形成されているため、励振部234aの周波数変動が少ない。
【0054】
(第3実施形態)
第3実施形態では、リッド110及びパッケージ120が第1実施形態と同じであり、第3水晶振動片330が第1実施形態と異なる。このため、第3水晶振動片330についてのみ説明する。以下、第4実施形態から第8実施形態において同様とする。
<第3水晶振動片330の構成>
図8(a)は、第3水晶振動片330の平面図であり、(b)は、第3水晶振動片330のD―D’断面図である。図8(b)では、D―D’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0055】
第3水晶振動片330は、励振部334aの厚みが励振部334aの周辺部334bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。励振部334aの両主面には励振電極331a,331bが形成されている。また、一対の電極パッド332a,332bが第3水晶振動片330の−x軸側の短辺側に延出して形成されている。
【0056】
双晶領域335は、第3水晶振動片330の−x軸側の励振部334a及び−x軸側の周辺部334bの先端部まで形成される。励振部334aの双晶領域335は、励振部334aの中心部を除いた表裏面層と−x軸側の周辺部334bの厚み全体とが双晶化されている。レーザ光の強さ又はレーザ光の照射時間を加減することで、励振部334aの表裏面層が双晶化され、Y’軸方向の中心まで双晶化されていない。
【0057】
励振部334aの双晶領域335が中心を除く表裏面だけであっても、共振周波数に与える影響を抑制することができる。
【0058】
(第4実施形態)
<第4水晶振動片430の構成>
図9(a)は、第4水晶振動片430の平面図であり、(b)は、第4水晶振動片430のE―E’断面図である。図9(b)では、E―E’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0059】
第4水晶振動片430は、励振部434が周辺部と同じ厚さで形成された水晶板431から成る。水晶板431は、−X軸側にz’軸方向に伸びる突起部439を有している。水晶板431の両主面には励振電極431a,431bが形成されている。また、一対の電極パッド432a,432bが突起部439の−x軸側の短辺側に延出して形成されている。第4水晶振動片430の双晶領域435は、電極パッド432a,432bが形成される領域及び突起部439に形成される。
【0060】
第4水晶振動片430では、導電性接着剤141が多く塗布されると、段差部である突起部439が形成されているため、容易に励振部434側に流れ出ない。仮に流れたとしても、突起部439を超えた励振部434には、双晶領域435が形成されているため、励振部434の周波数変動が少ない。
【0061】
(第5実施形態)
<第5水晶振動片530の構成>
図10(a)は、第5水晶振動片530の平面図であり、(b)は、第5水晶振動片530のF―F’断面図であり、(c)は、(b)の破線で囲まれた突起部539及び段差部538の近傍の拡大図である。図10(b)では、F―F’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0062】
第5水晶振動片530は、励振部534と突起部539とが同じ厚さで形成された水晶板531から成る。突起部539の周囲が薄く形成されている。水晶板531は、−X軸側にz’軸方向に伸び且つ途中でx軸方向に曲がった(L字型)突起部539を2つ有している。水晶板531の両主面には励振電極531a,531bが形成されている。また、一対の電極パッド532a,532bが薄くなった周辺部の−x軸側の短辺側に延出して形成されている。
【0063】
第5水晶振動片530の双晶領域535は、電極パッド532a,532bが形成される領域及び突起部539にL字型に形成される。双晶領域535は、第5水晶振動片530の突起部539及び−x軸側の水晶板531の先端部まで形成される。双晶領域535は、突起部539と−x軸側の先端部との厚み全体が双晶化されている。
【0064】
第5水晶振動片530は、導電性接着剤141が多く塗布されても、突起部539及び段差部538が形成されているため、容易に導電性接着剤141が励振部534側に流れ出ない。仮に流れたとしても、突起部539及び段差部538によって制御され、双晶領域535と共に共振周波数に与える影響を抑制することができる。
【0065】
<突起部539及び段差部538の製造>
図10(c)は、図10(b)の破線で囲まれたEL部、つまり第5水晶振動片530の突起部539及び段差部538の近傍の拡大図である。水晶板531の厚さはT1であり、−x側の先端部の厚さはT2であるため、高さh1の段差部538が形成されている。高さh1の段差は、第5水晶振動片530の外形を形成するウェットエッチングによって同時に形成される。励振部534と突起部539の高さh2とが、段差h1と同じであると、振動部534より厚さが薄い水晶板531の先端部を形成する際に、励振部534と突起部539とを同時に形成することができる。
【0066】
(第6実施形態)
<第6水晶振動片630の構成>
図11(a)は、第6水晶振動片630の平面図であり、(b)は、第6水晶振動片630のG−G’断面図である。図11(b)では、G−G’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0067】
第6水晶振動片630は、励振部634aの厚みが励振部634aの周辺部634bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。励振部634aの両主面には励振電極631a,631bが形成されている。また、一対の電極パッド632a,632bが第6水晶振動片630の−x軸側の短辺側に延出して形成されている。
【0068】
双晶領域635は、第6水晶振動片630の−x軸側の励振部634aの+z軸側及び−z軸側に形成され、中間部には形成されていない。双晶領域635は、その厚み全体が双晶化されている。双晶領域635が必要最低限の範囲で形成されているため、レーザ光の照射時間が短くて済む。第6水晶振動片630は、第1水晶振動片130と同様に段差部638が形成されているため、導電性接着剤141が容易に励振部634a側に流れ出ない。仮に流れたとしても、段差部638を超えた励振部634aには、双晶領域635が形成されているため、励振部634aの周波数変動が少ない。双晶領域635は、−x軸側の励振部634aの中間部には形成されていないが、第1水晶振動片130と同様の効果が得られる。
【0069】
(第7実施形態)
<第7水晶振動片730の構成>
図12(a)は、第7水晶振動片730の平面図であり、(b)は、第7水晶振動片730のH−H’断面図である。図12(b)では、H−H’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0070】
第7水晶振動片730は、励振部734aの厚みが励振部734aの周辺部734bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。また、−x軸側の周辺部734cは2つの円弧形状に形成されている。励振部734aの両主面には励振電極731a,731bが形成されている。また、一対の電極パッド732a,732bが−x軸側の周辺部734cに形成されている。
【0071】
双晶領域735は、第7水晶振動片730の−x軸側の励振部734aの+z軸側及び−z軸側に形成され、円弧を描き−x軸側の中央部で合体している。つまり双晶領域735は、周辺部734cを囲むように形成されている。双晶領域735は、その厚み全体が双晶化されている。双晶領域735は、段差部738が形成されているため、容易に励振部734a側に流れ出ない。仮に流れたとしても、段差部738によって制御され、双晶領域735と共に共振周波数に与える影響を抑制することができる。
【0072】
(第8実施形態)
<第8水晶振動片830の構成>
図13(a)は、第8水晶振動片830の平面図であり、(b)は、第8水晶振動片830のJ―J’断面図である。図13(b)では、J―J’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0073】
第8水晶振動片830は、励振部834aの厚みが励振部834aの周辺部834bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。また、−x軸側の周辺部834cは2つの矩形状に形成されている。励振部834aの両主面には励振電極831a,831bが形成されている。また、一対の電極パッド832a,832bが−x軸側の周辺部834cに形成されている。
【0074】
双晶領域835は、第8水晶振動片830の−x軸側の励振部834aの+z軸側及び−z軸側に形成され、電極パッド832a,832b、つまり周辺部834cを囲むようにL字型に−x軸側の先端部まで形成されている。双晶領域835は、−y’軸側の裏面部のみ双晶化されている。−y’軸側のみの双晶化は、−y’軸側からのレーザ光の強さ又はレーザ光の照射時間を加減することで、励振部834aの裏面層のみが水晶のαβ相転移点以上の温度に加熱されて、水晶の電気軸即ちX軸を反転させることにより行うことができる。双晶領域835は、−x軸側の−y’軸側の裏面部のみ双晶化されているが、第1水晶振動片130と同様の効果が得られる。
【0075】
なお、第8実施形態では、図5に示した第2の塗布方法は適さない。第8水晶振動片830は、双晶領域が表面部に形成されていないからである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。また本発明は、水晶振動子以外にも、発振回路を組み込んだICなどをベース部上に配置させた水晶発振器にも適用できる。
【符号の説明】
【0077】
100、200、300 … 水晶デバイス
110 … リッド
120 … パッケージ
121 … 凹部
122 … 接合面
123 … 載置部
124、124a、124b … 接続端子
124c … 接続電極
125 … 実装端子
126a … 実装面
126b … 底面
127a、127b … キャスタレーション
130、230、330,430,530,630、730,830 … 水晶振動片
131a、131b,231a,231b,331a、331b … 励振電極
132a、132b,232a,232b、332a、332b … 電極パッド
432a、432b,532a,532b、632a、632b … 電極パッド
732a,732b、832a、832b … 電極パッド
133a、133b,233a,233b、333a、333b … 引出電極
433a、433b,533a,533b、633a、633b … 引出電極
733a,733b、833a、833b … 引出電極
133c、233c、333c,433c,533c、633c … 側面電極
733c、833c … 側面電極
134a、234a、334a,634a,734a,834a … 励振部
134b,234b,334b,634b,734b,834b … 周辺部
135,235,335,435,535,635,735,835 … 双晶領域
140 … ノズル
141 … 導電性接着剤
142 … 封止材
138,238、338、538,638,738,838 … 段差部
431,531 … 水晶板
h1 … 段差部に高さ、 h2 … 突起部の高さ
T1 … 水晶板の厚さ、 T2 … 先端部の厚さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤でパッケージ内に配置される水晶振動片又は、その水晶振動片を使った水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶デバイスが搭載される上述の各電子部品の小型化に伴い、水晶デバイスの小型化が進んでいる。水晶デバイスの小型化が進むと、水晶デバイスに使われる水晶振動片の電極パッドと励振電極との間の距離や、電極パッド間の距離が小さくなる。その結果として、水晶振動片をベース板に接着する際に電極パッド側から励振電極側に導電性接着剤が流れこんで、振動周波数を所定の周波数から変動させてしまうことがある。
【0003】
特許文献1に開示される水晶デバイスは、電極パッドに塗布された導電性接着剤が励振電極側に流れ出ないように、水晶振動片の一部に凸部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−41109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、導電性接着剤の塗布量が多いと、導電性接着剤が凸部を越えて励振電極側に流れ出る可能性がある。
そこで、本発明は、導電性接着剤が励振電極側に流れ出ても、振動周波数の変動させないようにした水晶振動片及び水晶デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の水晶振動片は、第1面及びその第1面の反対側の第2面を有する水晶板と、その水晶板の中央部の第1面及び第2面に設けられ、水晶板を励振する一対の励振電極と、一対の励振電極から水晶板の周縁部に引き出される一対の引出電極と、導電性接着剤が塗布されるための面積を有し、一対の引出電極にそれぞれ接続するとともに第2面に配置される一対の電極パッドと、電極パッドと励振電極との間で、且つ第2面から第1面方向の水晶板の内部に形成される双晶領域と、を備える。
【0007】
第2の観点の水晶振動片の双晶領域は、一対の電極パッドの間で、水晶板の内部にも形成される。
第3の観点の水晶振動片の双晶領域は、電極パッドが配置される領域の水晶板の内部にも形成される請求項2に記載の水晶振動片。
【0008】
第4の観点の水晶振動片は、電極パッドと双晶領域との間に設けられ、電極パッドに塗布される導電性接着材が励振電極に流れることを防ぐため、電極パッドが形成される第2面よりも第1面から第2面への方向に厚くなった段差部を備える。
第5の観点の水晶振動片は、双晶領域内に設けられ、電極パッドに塗布される導電性接着材が励振電極に流れることを防ぐため、電極パッドが形成される第2面よりも第1面から第2面への方向に厚くなった段差部を備える。
【0009】
第6の観点の水晶振動片の電極パッドは、さらに第1面にも形成され、双晶領域は、電極パッドと励振電極との間で、且つ第1面から第2面方向の水晶板の内部に形成される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水晶振動片。
【0010】
第7の観点の水晶デバイスは、一対の外部電極と、その外部電極に接続する接続電極とを有するベース板と、接続電極と電極パッドに塗布される導電性接着剤と、導電性接着剤によってベース板に配置される第1の観点から第6の観点の水晶振動片と、ベース板に接合して、水晶振動片を覆うリッド板と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水晶デバイスによれば、電極パッドと励振電極の間に双晶領域及び段差部が形成されることにより、導電性接着剤が励振電極側に流れ出ても水晶振動片の振動部に影響を与えない水晶振動片及び水晶デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、リッド110を取り外した第1水晶デバイス100の平面図である。 (b)は、第1水晶デバイス100の断面図である。
【図2】パッケージ120の平面図である。
【図3】(a)は、第1水晶振動片130の斜視図である。 (b)は、第1水晶振動片130の断面図である。 (c)は、第1水晶振動片130の平面図である。
【図4】第1水晶デバイス100の製造を示したフローチャートである。
【図5】導電性接着剤の塗布方法の説明図である。 (a)は、導電性接着剤の下塗りした状況を示す断面図である。 (b)は、第1水晶振動片130が載置された状況を示す断面図である。 (c)は、導電性接着剤を上塗りする状況を示す説明図である。 (d)は、第1水晶振動片130に導電性接着剤を上塗りした状況を示す断面図である。
【図6】(a)は、リッド110を取り外した第2水晶デバイス200の平面図である。 (b)は、第2水晶デバイス200の断面図である。
【図7】(a)は、第2水晶振動片230の平面図である。 (b)は、第2水晶振動片230の断面図である。
【図8】(a)は、第3水晶振動片330の平面図である。 (b)は、第3水晶振動片330の断面図である。
【図9】(a)は、第4水晶振動片430の平面図である。 (b)は、第4水晶振動片430の断面図である。
【図10】(a)は、第5水晶振動片530の平面図である。 (b)は、第5水晶振動片530の断面図である。 (c)は、(b)の破線で囲まれた突起部539及び段差部538の近傍の拡大図である。
【図11】(a)は、第6水晶振動片630の平面図である。 (b)は、第6水晶振動片630の断面図である。
【図12】(a)は、第7水晶振動片730の平面図である。 (b)は、第7水晶振動片730の断面図である。
【図13】(a)は、第8水晶振動片830の平面図である。 (b)は、第8水晶振動片830の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明では、水晶板130には例えばATカットの水晶板が用いられる。ATカットの水晶板は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶板の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をy’軸及びz’軸として用いる。すなわち、第1水晶デバイス100においては第1水晶デバイス100の長辺方向をx軸方向、第1水晶デバイス100の高さ方向をy’軸方向、x及びy’軸方向に垂直な方向をz’軸方向として説明する。以下、第1実施形態から第8実施形態において同様である。
【0014】
(第1実施形態)
<第1水晶デバイス100の構成>
図1(a)は、リッド110を取り外した第1水晶デバイス100の平面図であり、(b)は、第1水晶デバイス100のA―A’断面図である。図1(b)には、A―A’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。図2は、パッケージ120の平面図である。
【0015】
第1水晶デバイス100は、第1水晶振動片130と、リッド110と、パッケージ120とにより構成される。第1水晶デバイス100は、表面実装型の水晶デバイスであり、実装端子125がプリント基板等にハンダで固定される。まず、図1及び図2を使って、パッケージ120について説明する。
【0016】
パッケージ120は、例えばセラミックスにより形成されており、図1(b)に示されるように、パッケージ120は3つの層により形成されている。第1層120aは平面状に形成されている。また、第1層120aの−y’軸側の面は実装面126aであり、実装端子125が形成される。第1層120aの+y’軸側には第2層120bが配置される。第2層120bの中央部には、凹部121の一部を形成する貫通孔が形成されている。また第2層120bは凹部121に載置部123を有している。
【0017】
第2層120bの+y’軸側の面に第3層120cが配置される。第3層120cの中央部には凹部121の一部を形成する貫通孔が形成されている。また、第3層120cの+y’軸側の面には接合面122が形成されている。接合面122は、パッケージ120リッド110と接合される面である。
【0018】
パッケージ120の実装面126a(−y’軸側の面)に、実装端子125(図1(b)参照)が形成される。実装面126aの反対側の面である底面126bに(+y’軸側の面)に凹部121が形成される。底面126bの一部に、載置部123(図1(b)参照)が形成され、載置部123の+y’軸側の面には接続端子124a,124bが形成されている。接続端子124a,124bは、底面126bに形成されている接続電極124c、124d(図2を参照)を介してそれぞれ実装端子125に電気的に接続されている。
【0019】
パッケージ120には、外壁の四隅から凹んだキャスタレーション127a、及びパッケージ120の短辺側の外壁の中央から凹部121側に凹んだキャスタレーション127bが形成されている。パッケージ120は、セラミックスシートに複数のパッケージ120が形成された後に個々に切断されて形成される。切断時に各パッケージ120の角が欠けてしまうことがある。キャスタレーション127aは、このような欠け等によるパッケージ120の破損を防ぐために形成される。
【0020】
また、キャスタレーション127bは、実装端子125の一部をパッケージ120の側面にも形成する。第1水晶デバイス100は、ハンダでプリント基板等に実装される。この溶けたハンダは、第1水晶デバイス100の側面に形成される実装端子125にも付着する。実装端子125に付着したハンダの付き具合で、第1水晶デバイス100とプリント基板との接合状態を確認することができる。
【0021】
パッケージ120に形成される接続端子124a,124b及び実装端子125等の電極は、例えばセラミックス上にタングステンの層が形成され、その上に下地メッキとしてニッケル層が形成され、さらにその上に仕上げメッキとして金層が形成されることにより形成される。
【0022】
次に、リッド110について説明する。リッド110は、平面板である。リッド110はパッケージ120の+y’軸側の面に形成されている接合面122に封止材142(図1(b)参照)を介して接合されることによりパッケージ120の凹部121を密封する。
【0023】
次に、図1及び図3を使って、第1水晶振動片130について説明する。図3(a)は、第1水晶振動片130の斜視図であり、(b)は、第1水晶振動片130のA−A’の断面図であり、(c)は、第1水晶振動片130の平面図である。
【0024】
第1水晶振動片130は、励振部134aとその周辺部134bとを有し、励振部134aの厚みが周辺部134bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。励振部134aの+y’軸側及び−y’軸側の主面には励振電極131a,131bが形成されている。また、一対の電極パッド132a,132bが周辺部134bの−x軸側の短辺側に延出して形成されている。
【0025】
図3(a)に示されるように、+y’軸側の面に形成されている励振電極131aは、側面電極133c及び引出電極133aを介して電極パッド132aに電気的に接続されている。また、−y’軸側の面に形成されている励振電極131bは、引出電極133bを介して電気的に電極パッド132bに接続されている。
【0026】
第1水晶振動片130に形成される励振電極131a,131b、電極パッド132a,132b及び引出電極133a,133b等の電極は、例えば第1水晶振動片130にクロム(Cr)層が形成され、クロム層の上に金(Au)層が形成されることにより形成されている。
【0027】
電極パッド132a、132bと励振電極131a,131bとの間には段差部138が形成されている。−x軸側の励振部134aは、双晶領域135を有している。第1水晶振動片130の双晶領域135は、z’軸方向の直線に伸び、y’軸方向の厚み全体(+y’軸側から−y’軸側まで)が双晶化されている。図1及び図3において、双晶領域135は、網目で描かれている。双晶化は、レーザ光の照射による熱で水晶の一部を加熱し、水晶のαβ相転移点以上の温度に加熱して、水晶の電気軸即ちX軸を反転させることである。双晶領域135は、双晶化していない他の部分よりも共振周波数が1.47倍高くなる。
【0028】
第1水晶デバイス100は、パッケージ120の+y’軸側に形成された凹部121に第1水晶振動片130が載置される。より詳述すると、第1水晶振動片130は、電極パッド132a,132bと接続端子124a,124bとが導電性接着剤141を介して載置部123に載置される。小型化に伴い、電極パッド132a,132b及び接続端子124a,124bの面積は小さくなっている。このため、導電性接着剤が必要以上に塗布されると、導電性接着剤が励振部に達する可能性があるが、第1実施形態の第1水晶デバイス100では、導電性接着剤141は、段差部138が形成されているため、容易に励振部134a側に流れ出ない。仮に流れたとしても、段差部138を超えた励振部134aには、双晶領域135が形成されているため、励振部134aの周波数変動が少ない。つまり、双晶領域135は、双晶化していない他の部分よりも共振周波数が1.47倍高くなることにより、共振周波数に与える影響を抑制する。従って、導電性接着剤141が多く塗布された場合であっても、第1水晶デバイス100は、振動周波数を所定の周波数から変動させることが少ない。
【0029】
<第1水晶デバイス100の製造方法>
図4は、第1水晶デバイス100の製造を示したフローチャートである。図4において、第1水晶振動片130の製造ステップS10と、リッド部11の製造ステップS11と、ベース部12の製造ステップS12とは並行して製造することができる。
【0030】
ステップS10では、第1水晶振動片130が製造される。ステップS10はステップS101、S102,S103を含んでいる。第1水晶振動片130は、均一厚さの水晶平板の水晶ウエハ(不図示)に数百から数千個を形成する。
【0031】
ステップS101において、水晶ウエハは、フォトリソグラフィ技術を用い複数の第1水晶振動片130の外形が形成される。
【0032】
ステップS102において、第1水晶振動片130の−x軸側の励振部134a(図3(c)を参照)に双晶領域135が形成される。双晶領域135は、第1水晶振動片130の外形形成時に用意された金属皮膜にYAGレーザ等のレーザ装置を用いて、金属皮膜にレーザ光を照射して形成される。金属皮膜が形成された箇所が、水晶のαβ相転移点(573℃)以上の温度になり水晶振動片が双晶化される。その後、金属皮膜は除去される。
【0033】
ステップS103において、水晶ウエハはスパッタリングまたは真空蒸着によって水晶ウエハの両面及び側面にクロム(Cr)層及び金(Au)層が順に形成される。そして、金属層の全面にフォトレジストが均一に塗布される。その後、露光装置(不図示)を用いて、フォトマスクに描かれた励振電極、引出電極等のパターンが水晶ウエハの第1水晶振動片130に露光される。次に、フォトレジストから露出した金属層がエッチングされる。これにより、図3(a)に示されたように第1水晶振動片130の両面及び側面には励振電極131a、131b、引出電極133a、133b、側面電極133c及び電極パッド132a、132bが形成される。
【0034】
ステップS104において、第1水晶振動片130は個々に切断される。第1水晶振動片130はピッカー装置(不図示)などで吸着加重することで細くなった連接部より折り取り個片化している。なお、第1水晶振動片130の切断はレーザを用いたダイシング装置、または切断用ブレードを用いたダイシング装置などを用いてもよい。
【0035】
ステップS11では、パッケージ120が製造される。ステップS11はステップS111、S112、S113を含んでいる。ステップS111からステップS113を経てパッケージ120が形成される。
【0036】
ステップS111において、第1層120aのベース用シートと、載置部123が形成された第2層120bのシートと、枠状に形成された第3層120cのキャビティ用シートとからなるセラミックシートが用意される。第1層120aのベース用シート及び第2層120bのシートには、タングステンペーストがスクリーン印刷方式などにより印刷され、接続端子124b及び接続電極124cが形成される。またベース用シートには、タングステンペーストがスクリーン印刷方式などにより印刷され、実装端子125が形成される。3枚のセラミックシートは、積層される。
【0037】
ステップS112において、積層された3枚のセラミックシートは、個々のパッケージ120の大きさに切断される。
【0038】
ステップS113において、切断されたパッケージ120は、1320°C程度で焼成される。これによりパッケージ120が完成する。
【0039】
ステップS12では、リッド110が製造される。ステップS121では、コバール金属等がリッド110の大きさにプレスされる。ステップS122において、リッド110は、接合面に封止材142がスクリーン印刷方式などにより印刷される。封止材142は、パッケージ120の接合面122(図1(b)を参照)に塗布してもよい。
【0040】
ステップS130において、第1水晶振動片130は、導電性接着剤141が塗布された載置部123の接続端子124a、124bに載置され、又は導電性接着剤141を塗布した第1水晶振動片130が接続端子124a、124bに載置される。
【0041】
導電性接着剤141の塗布方法は、2通りの方法がある。第1の塗布方法は、図5(a)に示されるように、導電性接着剤141は、パッケージ120の載置部123の接続端子124に、又は第1水晶振動片130の一対の電極パッド132a,132bに塗布される。次いで、図5(b)に示されるように、第1水晶振動片130が導電性接着剤141の上に載置される。
【0042】
第2の塗布方法は、第1の塗布方法に、更に図5(c)工程を加えた方法である。図5(c)に示されるように、導電性接着剤141の上に載置された第1水晶振動片130は,上部(+y’側)からノズル140で導電性接着剤141が塗布される。図5(d)に示されるように、第1水晶振動片130は、上下両面ともに導電性接着剤141に包み込まれ、図5(b)だけの場合より載置部123により強固に固定できる。
【0043】
第1水晶振動片130は、両主面に双晶領域135が露出していることにより、両主面のいずれかの導電性接着剤141が励振電極131a,131b側に流出しでも、双晶領域135によって,共振周波数に与える影響を抑制することができる。
【0044】
不図示の水晶振動片の装着装置は、第1水晶振動片130を真空吸着し、パッケージ120内に搬入する。第1水晶振動片130は、電極パッド132a、132bに対応する位置に設けられたパッケージ120の接続端子124a、124bに載置される。第1水晶振動片130は、押棒で抑えられる。水晶振動片の装着装置による第1水晶振動片130のパッケージ120内への搬入および位置決めは、不図示のCCDカメラによる画像処理技術によって行われる。具体的には、CCDカメラはパッケージ120内の接続端子124a、124bなどの位置を認識してパッケージ120に対して第1水晶振動片130の位置を特定する。
【0045】
その後、硬化炉で導電性接着剤141が硬化される。これにより、第1水晶振動片130が接続端子124a、124bの導電性接着剤141の上で固定される。
【0046】
ステップS131において、封止材141が塗布されたリッド110は、パッケージ120の接合面122に載置される。パッケージ120に載置したリッド110は、真空中又は不活性雰囲気中で、350°C程度に加熱され押圧されて接合される。その後、第1水晶デバイス100は駆動特性などの検査を経て完成する。
【0047】
(第2実施形態)
<第2水晶デバイス200の構成>
図6(a)は、リッド110を取り外した第2水晶デバイス200の平面図であり、(b)は、第2水晶デバイス200の断面図である。図7(a)は、第2水晶振動片230の平面図であり、(b)は、第2水晶振動片230のC―C’断面図である。図6(b)、図7(b)では、C―C’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0048】
第2水晶デバイス200は、第2水晶振動片230と、リッド110と、パッケージ120とにより構成されている。第2水晶デバイス200と第1水晶デバイス100とは、第1水晶デバイス100の第1水晶振動片130に代わり第2水晶振動片230が搭載されている点で異なっている。第2実施形態では、第1水晶デバイス100とその構成が同じ部分は第1水晶デバイス100と同じ番号を付している。同じ構成についてはその説明を割愛する。
【0049】
第2水晶振動片230は、励振部234aの厚みが励振部234aの周辺部234bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。また、段差部238(図7(b)を参照)を備える。励振部234aの両主面には励振電極231a,231bが形成されている。また、一対の電極パッド232a,232bが−x軸側の周辺部234b側に形成されている。
【0050】
励振電極231aは、側面電極233c及び引出電極233a(図7(a)を参照)を介して電極パッド232aに接続されている。また、励振電極231bは、引出電極233bを介して電極パッド232bに接続されている。
【0051】
双晶領域235は、−x軸側の励振部234a及び−x軸側の周辺部234bまで形成される。双晶領域235は、−x軸側の励振部234aの厚み全体(+y’軸側から−y’軸側まで)が双晶化されている。同様に−x軸側の周辺部234bも厚み全体が双晶化されている。双晶領域235は、第1実施形態の双晶領域135よりも面積が広い。このため、レーザ光を第2水晶振動片230の金属皮膜に照射しやすくなる。その一方、双晶領域235の面積が広いため、レーザ光の照射面積が大きくなる。
【0052】
第2水晶デバイス200の製造方法は、図4に示した第1水晶デバイス100の製造フローチャートと基本的に同じである。双晶領域235は、第2水晶振動片230の−x軸側の励振部234a及び−x軸側の周辺部234bの先端部までレーザ光を照射することにより形成される。
【0053】
第2水晶振動片230は、電極パッド232a,232bと接続端子124a,124bとが導電性接着剤141を介して載置部123に載置される。このため、導電性接着剤が必要以上に塗布されると、導電性接着剤が励振部に達する可能性があるが、第2実施形態の第2水晶デバイス200では、導電性接着剤141は、段差部238が形成されているため、容易に励振部234a側に流れ出ない。仮に流れたとしても、段差部238を超えた励振部234aには、双晶領域235が形成されているため、励振部234aの周波数変動が少ない。
【0054】
(第3実施形態)
第3実施形態では、リッド110及びパッケージ120が第1実施形態と同じであり、第3水晶振動片330が第1実施形態と異なる。このため、第3水晶振動片330についてのみ説明する。以下、第4実施形態から第8実施形態において同様とする。
<第3水晶振動片330の構成>
図8(a)は、第3水晶振動片330の平面図であり、(b)は、第3水晶振動片330のD―D’断面図である。図8(b)では、D―D’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0055】
第3水晶振動片330は、励振部334aの厚みが励振部334aの周辺部334bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。励振部334aの両主面には励振電極331a,331bが形成されている。また、一対の電極パッド332a,332bが第3水晶振動片330の−x軸側の短辺側に延出して形成されている。
【0056】
双晶領域335は、第3水晶振動片330の−x軸側の励振部334a及び−x軸側の周辺部334bの先端部まで形成される。励振部334aの双晶領域335は、励振部334aの中心部を除いた表裏面層と−x軸側の周辺部334bの厚み全体とが双晶化されている。レーザ光の強さ又はレーザ光の照射時間を加減することで、励振部334aの表裏面層が双晶化され、Y’軸方向の中心まで双晶化されていない。
【0057】
励振部334aの双晶領域335が中心を除く表裏面だけであっても、共振周波数に与える影響を抑制することができる。
【0058】
(第4実施形態)
<第4水晶振動片430の構成>
図9(a)は、第4水晶振動片430の平面図であり、(b)は、第4水晶振動片430のE―E’断面図である。図9(b)では、E―E’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0059】
第4水晶振動片430は、励振部434が周辺部と同じ厚さで形成された水晶板431から成る。水晶板431は、−X軸側にz’軸方向に伸びる突起部439を有している。水晶板431の両主面には励振電極431a,431bが形成されている。また、一対の電極パッド432a,432bが突起部439の−x軸側の短辺側に延出して形成されている。第4水晶振動片430の双晶領域435は、電極パッド432a,432bが形成される領域及び突起部439に形成される。
【0060】
第4水晶振動片430では、導電性接着剤141が多く塗布されると、段差部である突起部439が形成されているため、容易に励振部434側に流れ出ない。仮に流れたとしても、突起部439を超えた励振部434には、双晶領域435が形成されているため、励振部434の周波数変動が少ない。
【0061】
(第5実施形態)
<第5水晶振動片530の構成>
図10(a)は、第5水晶振動片530の平面図であり、(b)は、第5水晶振動片530のF―F’断面図であり、(c)は、(b)の破線で囲まれた突起部539及び段差部538の近傍の拡大図である。図10(b)では、F―F’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0062】
第5水晶振動片530は、励振部534と突起部539とが同じ厚さで形成された水晶板531から成る。突起部539の周囲が薄く形成されている。水晶板531は、−X軸側にz’軸方向に伸び且つ途中でx軸方向に曲がった(L字型)突起部539を2つ有している。水晶板531の両主面には励振電極531a,531bが形成されている。また、一対の電極パッド532a,532bが薄くなった周辺部の−x軸側の短辺側に延出して形成されている。
【0063】
第5水晶振動片530の双晶領域535は、電極パッド532a,532bが形成される領域及び突起部539にL字型に形成される。双晶領域535は、第5水晶振動片530の突起部539及び−x軸側の水晶板531の先端部まで形成される。双晶領域535は、突起部539と−x軸側の先端部との厚み全体が双晶化されている。
【0064】
第5水晶振動片530は、導電性接着剤141が多く塗布されても、突起部539及び段差部538が形成されているため、容易に導電性接着剤141が励振部534側に流れ出ない。仮に流れたとしても、突起部539及び段差部538によって制御され、双晶領域535と共に共振周波数に与える影響を抑制することができる。
【0065】
<突起部539及び段差部538の製造>
図10(c)は、図10(b)の破線で囲まれたEL部、つまり第5水晶振動片530の突起部539及び段差部538の近傍の拡大図である。水晶板531の厚さはT1であり、−x側の先端部の厚さはT2であるため、高さh1の段差部538が形成されている。高さh1の段差は、第5水晶振動片530の外形を形成するウェットエッチングによって同時に形成される。励振部534と突起部539の高さh2とが、段差h1と同じであると、振動部534より厚さが薄い水晶板531の先端部を形成する際に、励振部534と突起部539とを同時に形成することができる。
【0066】
(第6実施形態)
<第6水晶振動片630の構成>
図11(a)は、第6水晶振動片630の平面図であり、(b)は、第6水晶振動片630のG−G’断面図である。図11(b)では、G−G’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0067】
第6水晶振動片630は、励振部634aの厚みが励振部634aの周辺部634bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。励振部634aの両主面には励振電極631a,631bが形成されている。また、一対の電極パッド632a,632bが第6水晶振動片630の−x軸側の短辺側に延出して形成されている。
【0068】
双晶領域635は、第6水晶振動片630の−x軸側の励振部634aの+z軸側及び−z軸側に形成され、中間部には形成されていない。双晶領域635は、その厚み全体が双晶化されている。双晶領域635が必要最低限の範囲で形成されているため、レーザ光の照射時間が短くて済む。第6水晶振動片630は、第1水晶振動片130と同様に段差部638が形成されているため、導電性接着剤141が容易に励振部634a側に流れ出ない。仮に流れたとしても、段差部638を超えた励振部634aには、双晶領域635が形成されているため、励振部634aの周波数変動が少ない。双晶領域635は、−x軸側の励振部634aの中間部には形成されていないが、第1水晶振動片130と同様の効果が得られる。
【0069】
(第7実施形態)
<第7水晶振動片730の構成>
図12(a)は、第7水晶振動片730の平面図であり、(b)は、第7水晶振動片730のH−H’断面図である。図12(b)では、H−H’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0070】
第7水晶振動片730は、励振部734aの厚みが励振部734aの周辺部734bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。また、−x軸側の周辺部734cは2つの円弧形状に形成されている。励振部734aの両主面には励振電極731a,731bが形成されている。また、一対の電極パッド732a,732bが−x軸側の周辺部734cに形成されている。
【0071】
双晶領域735は、第7水晶振動片730の−x軸側の励振部734aの+z軸側及び−z軸側に形成され、円弧を描き−x軸側の中央部で合体している。つまり双晶領域735は、周辺部734cを囲むように形成されている。双晶領域735は、その厚み全体が双晶化されている。双晶領域735は、段差部738が形成されているため、容易に励振部734a側に流れ出ない。仮に流れたとしても、段差部738によって制御され、双晶領域735と共に共振周波数に与える影響を抑制することができる。
【0072】
(第8実施形態)
<第8水晶振動片830の構成>
図13(a)は、第8水晶振動片830の平面図であり、(b)は、第8水晶振動片830のJ―J’断面図である。図13(b)では、J―J’断面上に配置されていない部分が破線で示されている。
【0073】
第8水晶振動片830は、励振部834aの厚みが励振部834aの周辺部834bの厚みよりも厚くなっているメサ型の水晶板である。また、−x軸側の周辺部834cは2つの矩形状に形成されている。励振部834aの両主面には励振電極831a,831bが形成されている。また、一対の電極パッド832a,832bが−x軸側の周辺部834cに形成されている。
【0074】
双晶領域835は、第8水晶振動片830の−x軸側の励振部834aの+z軸側及び−z軸側に形成され、電極パッド832a,832b、つまり周辺部834cを囲むようにL字型に−x軸側の先端部まで形成されている。双晶領域835は、−y’軸側の裏面部のみ双晶化されている。−y’軸側のみの双晶化は、−y’軸側からのレーザ光の強さ又はレーザ光の照射時間を加減することで、励振部834aの裏面層のみが水晶のαβ相転移点以上の温度に加熱されて、水晶の電気軸即ちX軸を反転させることにより行うことができる。双晶領域835は、−x軸側の−y’軸側の裏面部のみ双晶化されているが、第1水晶振動片130と同様の効果が得られる。
【0075】
なお、第8実施形態では、図5に示した第2の塗布方法は適さない。第8水晶振動片830は、双晶領域が表面部に形成されていないからである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。また本発明は、水晶振動子以外にも、発振回路を組み込んだICなどをベース部上に配置させた水晶発振器にも適用できる。
【符号の説明】
【0077】
100、200、300 … 水晶デバイス
110 … リッド
120 … パッケージ
121 … 凹部
122 … 接合面
123 … 載置部
124、124a、124b … 接続端子
124c … 接続電極
125 … 実装端子
126a … 実装面
126b … 底面
127a、127b … キャスタレーション
130、230、330,430,530,630、730,830 … 水晶振動片
131a、131b,231a,231b,331a、331b … 励振電極
132a、132b,232a,232b、332a、332b … 電極パッド
432a、432b,532a,532b、632a、632b … 電極パッド
732a,732b、832a、832b … 電極パッド
133a、133b,233a,233b、333a、333b … 引出電極
433a、433b,533a,533b、633a、633b … 引出電極
733a,733b、833a、833b … 引出電極
133c、233c、333c,433c,533c、633c … 側面電極
733c、833c … 側面電極
134a、234a、334a,634a,734a,834a … 励振部
134b,234b,334b,634b,734b,834b … 周辺部
135,235,335,435,535,635,735,835 … 双晶領域
140 … ノズル
141 … 導電性接着剤
142 … 封止材
138,238、338、538,638,738,838 … 段差部
431,531 … 水晶板
h1 … 段差部に高さ、 h2 … 突起部の高さ
T1 … 水晶板の厚さ、 T2 … 先端部の厚さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及びその第1面の反対側の第2面を有する水晶板と、
その水晶板の中央部の前記第1面及び前記第2面に設けられ、前記水晶板を励振する一対の励振電極と、
前記一対の励振電極から前記水晶板の周縁部に引き出される一対の引出電極と、
導電性接着剤が塗布されるための面積を有し、前記一対の引出電極にそれぞれ接続するとともに前記第2面に配置される一対の電極パッドと、
前記電極パッドと前記励振電極との間で、且つ前記第2面から前記第1面方向の前記水晶板の内部に形成される双晶領域と、
を備える水晶振動片。
【請求項2】
前記双晶領域は、前記一対の電極パッドの間で、前記水晶板の内部にも形成される請求項1に記載の水晶振動片。
【請求項3】
前記双晶領域は、前記電極パッドが配置される領域の前記水晶板の内部にも形成される請求項2に記載の水晶振動片。
【請求項4】
前記電極パッドと前記双晶領域との間に設けられ、前記電極パッドに塗布される導電性接着材が前記励振電極に流れることを防ぐため、前記電極パッドが形成される前記第2面よりも前記第1面から前記第2面への方向に厚くなった段差部を備える請求項1又は請求項2に記載の水晶振動片。
【請求項5】
前記双晶領域内に設けられ、前記電極パッドに塗布される導電性接着材が前記励振電極に流れることを防ぐため、前記電極パッドが形成される前記第2面よりも前記第1面から前記第2面への方向に厚くなった段差部を備える請求項3に記載の水晶振動片。
【請求項6】
前記電極パッドは、さらに前記第1面にも形成され、
前記双晶領域は、前記電極パッドと前記励振電極との間で、且つ前記第1面から前記第2面方向の前記水晶板の内部に形成される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水晶振動片。
【請求項7】
一対の外部電極と、その外部電極に接続する接続電極とを有するベース板と、
前記接続電極と前記電極パッドに塗布される導電性接着剤と、
前記導電性接着剤によって前記ベース板に配置される請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の水晶振動片と、
前記ベース板に接合して、前記水晶振動片を覆うリッド板と、
を備える水晶デバイス。
【請求項1】
第1面及びその第1面の反対側の第2面を有する水晶板と、
その水晶板の中央部の前記第1面及び前記第2面に設けられ、前記水晶板を励振する一対の励振電極と、
前記一対の励振電極から前記水晶板の周縁部に引き出される一対の引出電極と、
導電性接着剤が塗布されるための面積を有し、前記一対の引出電極にそれぞれ接続するとともに前記第2面に配置される一対の電極パッドと、
前記電極パッドと前記励振電極との間で、且つ前記第2面から前記第1面方向の前記水晶板の内部に形成される双晶領域と、
を備える水晶振動片。
【請求項2】
前記双晶領域は、前記一対の電極パッドの間で、前記水晶板の内部にも形成される請求項1に記載の水晶振動片。
【請求項3】
前記双晶領域は、前記電極パッドが配置される領域の前記水晶板の内部にも形成される請求項2に記載の水晶振動片。
【請求項4】
前記電極パッドと前記双晶領域との間に設けられ、前記電極パッドに塗布される導電性接着材が前記励振電極に流れることを防ぐため、前記電極パッドが形成される前記第2面よりも前記第1面から前記第2面への方向に厚くなった段差部を備える請求項1又は請求項2に記載の水晶振動片。
【請求項5】
前記双晶領域内に設けられ、前記電極パッドに塗布される導電性接着材が前記励振電極に流れることを防ぐため、前記電極パッドが形成される前記第2面よりも前記第1面から前記第2面への方向に厚くなった段差部を備える請求項3に記載の水晶振動片。
【請求項6】
前記電極パッドは、さらに前記第1面にも形成され、
前記双晶領域は、前記電極パッドと前記励振電極との間で、且つ前記第1面から前記第2面方向の前記水晶板の内部に形成される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水晶振動片。
【請求項7】
一対の外部電極と、その外部電極に接続する接続電極とを有するベース板と、
前記接続電極と前記電極パッドに塗布される導電性接着剤と、
前記導電性接着剤によって前記ベース板に配置される請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の水晶振動片と、
前記ベース板に接合して、前記水晶振動片を覆うリッド板と、
を備える水晶デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−90259(P2013−90259A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231358(P2011−231358)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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