説明

水素ステーション

【課題】燃料電池自動車、水素自動車等に水素を直接充填する水素ステーションにおいて、高圧段側圧縮機を起動する時間的ロスを最小化可能な水素ステーションを提供する。
【解決手段】自動車Cに搭載される水素タンクに水素を直接充填するための水素ステーション1において、供給された水素を複数段に圧縮する複数の圧縮機4,14と、顧客の自動車Cの水素ステーションへの接近または到着を検知するセンサ31が備えられる一方、前記複数段の圧縮機4,14のうち少なくとも最高圧段側圧縮機14に接続された中間流路6以降に備えられた機器32,22を起動準備手段27とすると共に、前記センサ31からの信号によって当該起動準備手段27を始動させる始動手段30aが備えられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池自動車、水素自動車等に水素を直接充填する水素ステーションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の排気ガスに含まれる二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)、浮遊粒子状物質(PM)などによる地球温暖化、大気汚染の影響が懸念されている。このため、従来のガソリン内燃機関型自動車にかわり、積載された燃料電池で水素と酸素の化学反応に基づく電気エネルギーを利用して駆動する燃料電池自動車(FCV)が着目されている。
【0003】
燃料電池自動車は、上述した二酸化炭素等を排出せず、他の有害物質も排出しない。また、燃料電池自動車は、ガソリン内燃機関型自動車よりもエネルギー効率に優れるなど、ガソリン内燃機関型自動車にない種々の利点を有している。
【0004】
ところで、燃料電池自動車には、大別すると、水素ステーションから水素を補給するタイプのものと、水素以外の燃料を補給して車載改質器で水素を製造するタイプのものとがあるが、二酸化炭素(CO)削減の効果等から、前者のほうが優位であるとみなされている。従って、燃料電池自動車と、それに水素を補給するための水素ステーションの研究、開発が急がれている。
【0005】
水素ステーションから、水素を補給するタイプの燃料電池自動車の場合には、直接、自動車に積載された水素タンクに高圧に圧縮された水素を補給する。なお、供給元の高圧の気体を供給先の低圧側の状態に移行(すなわち膨張)させる際、圧力差を保ちながらその気体を膨張させた場合には、ジュール・トムソン効果による温度の変化が生じる。
【0006】
ジュール・トムソン効果による温度の変化は、気体の当初の温度に依存し、その温度が逆転温度以下であれば、温度は低下し、そうでなければ、温度は上昇する。しかしながら、水素の逆転温度は、215K(−58.15℃)程度と、他の気体に比してかなり低温であるため、得てして、水素タンクへの補給の際に急激な温度上昇が生じる。
【0007】
従って、水素ステーションには、水素タンクへの補給の際に急激な温度上昇を回避するための設備等が必要となる。そして、そのための種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、水素供給源と水素タンクとを接続する接続工程、水素供給源と水素タンクとを結ぶ流路上に備えられた充填速度可変手段により水素タンク内の圧力に応じて水素の充填速度を速める充填工程を有する、水素タンクへの水素急速充填方法(その水素急速充填方法を実現した水素ステーション)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−355795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、燃料電池自動車への水素充填を行なうたびに、水素ステーションに備えられた高圧段側圧縮機を起動する必要があるため、起動に要する時間だけ余計な充填時間を要する。
【0010】
従って、本発明の目的は、燃料電池自動車、水素自動車等に水素を直接充填する水素ステーションにおいて、高圧段側圧縮機を起動する時間的ロスを最小化可能な水素ステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る水素ステーションが採用した手段は、自動車に搭載される水素タンクに水素を直接充填するための水素ステーションにおいて、供給された水素を複数段に圧縮する複数の圧縮機と、自動車の水素ステーションへの接近または到着を検知するセンサが備えられる一方、前記複数の圧縮機が中間流路で接続されてなり、前記複数段の圧縮機のうち少なくとも最高圧段側圧縮機に接続された前記中間流路以降に備えられた機器を起動準備手段とすると共に、前記センサからの信号によって当該起動準備手段を始動させる始動手段が備えられてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項2に係る水素ステーションが採用した手段は、請求項1に記載の水素ステーションにおいて、前記起動準備手段が、前記最高圧段側圧縮機の潤滑油を回収して循環冷却する潤滑油冷却ユニットを含んでなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項3に係る水素ステーションが採用した手段は、請求項2に記載の水素ステーションにおいて、前記起動準備手段が更に、圧縮された水素を複数段に冷却する複数の水素冷却ユニットのうち、少なくとも自動車に水素充填する直前の水素冷却ユニットを含んでなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項4に係る水素ステーションが採用した手段は、請求項1乃至3の何れか一つの項に記載の水素ステーションにおいて、前記センサが、光学センサ、重量センサ及び磁気センサのうちの何れか一つ以上から選択されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る水素ステーションによれば、自動車に搭載される水素タンクに水素を直接充填するための水素ステーションにおいて、供給された水素を複数段に圧縮する複数の圧縮機と、自動車の水素ステーションへの接近または到着を検知するセンサが備えられる一方、前記複数の圧縮機が中間流路で接続されてなり、前記複数段の圧縮機のうち少なくとも最高圧段側圧縮機に接続された前記中間流路以降に備えられた機器を起動準備手段とすると共に、前記センサからの信号によって当該起動準備手段を始動させる始動手段が備えられてなるので、水素充填を開始する旨指示を受けてから水素充填を開始するまでの時間、ひいては充填終了するまでの時間が従来技術よりも短縮される。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る水素ステーションによれば、前記起動準備手段が、前記最高圧段側圧縮機の潤滑油を回収して循環冷却する潤滑油冷却ユニットを含んでなるので、自動車への水素充填を開始する旨の指示を受けてから最高圧段側圧縮機の起動が即、水素充填を開始可能なため、最高圧段側圧縮機の起動による時間的ロスを最小化し得る。
【0017】
更に、本発明の請求項3に係る水素ステーションによれば、前記起動準備手段が更に、圧縮された水素を複数段に冷却する複数の水素冷却ユニットのうち、少なくとも自動車に水素充填する直前の水素冷却ユニットを含んでなるので、自動車への水素充填を開始する旨の指示を受けてから最高圧段側圧縮機によって圧縮される充填直前の高圧水素の冷却が即可能なため、前記水素冷却ユニットの起動による時間的ロスを最小化し得る。
【0018】
また更に、本発明の請求項4に係る水素ステーションによれば、前記センサが、光学センサ、重量センサ及び磁気センサのうちの何れか一つ以上から選択されてなるので、自動車の水素ステーションへの接近または到着を正確に検知可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る水素ステーションの構成を概略的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る水素ステーション1の構成を概略的に示す概略構成図である。
【0021】
この水素ステーション1は、燃料電池自動車(以下、単に自動車とも称す。)に搭載される水素タンクに水素を直接充填するため設置される固定設備であって、先ず図示しない水素の供給源から、フィルター2の介設された供給流路3を介して、低圧段側の往復動圧縮機4に水素が供給されるように構成されている。この低圧段側の往復動圧縮機4には駆動機(電動機等)5が接続されており、この駆動機5の回転によって往復動圧縮機4は駆動される。
【0022】
往復動圧縮機4と後述の往復動圧縮機14とは中間流路6で接続されている。そして、往復動圧縮機4で圧縮された水素は、中間流路6に吐出される。このときの往復動圧縮機4の吐出側の圧力は例えば40MPaに制御される。中間流路6には、圧縮されて高温となった水素を冷却するための水素クーラ7が介設されている。そして、中間流路6は分岐点6aにて、2つの流路に分岐されている。分岐点6aにて分岐された中間流路6の一方は開閉弁8、分岐点6bを介して、第1の中間圧蓄圧器9に達する。また、分岐点6aにて分岐された中間流路6の他方は開閉弁10、分岐点6cを介して、第2の中間圧蓄圧器11に達する。
【0023】
一方、分岐された中間流路6は、第1の中間圧蓄圧器9からは分岐点6bと開閉弁12を介して、また、第2の中間圧蓄圧器11からは分岐点6cと開閉弁13を介して、合流点6dにて合流し、高圧段側の往復動圧縮機14に達するよう構成されている。
【0024】
尚、この高圧段側の往復動圧縮機14には駆動機15が接続されており、この駆動機15の回転によって往復動圧縮機14は駆動される。駆動機15は、図示しないインバータによって回転数を制御可能な電動機であって、物理的に可能な任意の回転数に回転可能なものである。駆動機15は回転数を制御可能なものであれば良く、インバータにて回転制御される電動機に限定されるものではない。
【0025】
第1の中間圧蓄圧器9及び第2の中間圧蓄圧器11は、低圧段側の往復動圧縮機4から供給された水素を一旦、貯留する機能を担っている。尚、分岐点6bと第1の中間圧蓄圧器9との間の中間流路6には、圧力センサ16が介設されている。また、分岐点6cと第2の中間圧蓄圧器11との間の中間流路6には、圧力センサ17が介設されている。
【0026】
そして、開閉弁8は、圧力センサ16における検出圧力P1が予め設定された第1の閾値未満の場合に開弁され、逆に、圧力センサ16での検出圧力P1が予め設定された第1の閾値以上の場合に閉弁される。この開閉弁8の開閉動作(特に閉動作)によって、低圧段側の往復動圧縮機4から供給される水素の量が過多となり、第1の中間圧蓄圧器9の内圧が上昇しすぎるのを防止している。
【0027】
開閉弁10も、開閉弁8と同様に、圧力センサ17における検出圧力P2が予め設定された第2の閾値未満の場合に開弁され、逆に、圧力センサ17での検出圧力P2が予め設定された第2の閾値以上の場合に閉弁される。この開閉弁10の開閉動作(特に閉動作)によって、低圧段側の往復動圧縮機4から供給される水素の量が過多となり、第2の中間圧蓄圧器11の内圧が上昇しすぎるのを防止している。
【0028】
更に、開閉弁12は、圧力センサ16における検出圧力P1が予め設定された第3の閾値未満の場合に閉弁され、逆に、圧力センサ16における検出圧力P1が予め設定された第3の閾値以上の場合に開弁される。この開閉弁12の開閉動作によって、高圧段側の往復動圧縮機(最高圧段側圧縮機)14へ供給される水素の圧力が極端に低くなることを防止している。
【0029】
また更に、開閉弁13は、開閉弁12と同様に、圧力センサ17における検出圧力P2が予め設定された第4の閾値未満の場合に閉弁され、逆に、圧力センサ17における検出圧力P2が予め設定された第4の閾値以上の場合に開弁される。この開閉弁13の開閉動作によっても、高圧段側の往復動圧縮機14へ供給される水素の圧力が極端に低くなることを防止している。
【0030】
往復動圧縮機14で圧縮された水素は、吐出流路18に吐出される。このときの往復動圧縮機14の吐出側の圧力は、例えば100MPaに制御される。吐出流路18には、圧縮され、高温となった水素を冷却するための水素クーラ19が介設されている。
【0031】
ここで、往復動圧縮機14には、この圧縮機14内の潤滑油を回収して循環冷却するために油循環流路33と、この油循環流路33に介設された潤滑油ポンプ34、オイルクーラ36及びオイルフィルタ37と、潤滑油ポンプ34を駆動する駆動機35とからなる潤滑油冷却ユニット32が接続されている。そして、後述するコントローラ30内に収納された始動手段30aの始動信号により、潤滑油冷却ユニット32が始動され、往復動圧縮機14内の潤滑油が潤滑油冷却ユニット32に回収され循環しつつ冷却されるように構成されている。
【0032】
水素クーラ19より下流側の吐出流路18には、順に、流量調整弁20、流量計21、水素冷却ユニット22、遮断弁23が介設されている。流量調整弁20はその下流の流量計21で検出された流量値に基づき、その開度が制御され、流量調整弁20を通じる水素の流量を適正に調整する機能を担っている。尚、流量調整弁20、流量計21及び遮断弁23は、いわゆるディスペンサー(充填機)を構成している。
【0033】
水素冷却ユニット22は、水素クーラ40と冷凍機41を冷媒配管42により接続して構成されている。吐出流路18内の水素は、この冷凍機41によって冷却された冷媒と、水素クーラ40内において熱交換するよう構成されている。そして、コントローラ30内に収納された前記始動手段30aの始動信号により、水素冷却ユニット22における冷凍機41が始動され、吐出流路18内の水素が水素クーラ40内に循環する冷媒により冷却される。
【0034】
他の水素クーラ7,19もこの水素クーラ40と同様、図示しない水素冷却ユニットを構成している。そして、この最終段の水素冷却ユニット22は、その上流側の水素クーラ19を含む水素冷却ユニットで冷却された水素を、顧客の自動車に充填する直前に更に冷却する機能を有している。例えば、水素クーラ19を含む水素冷却ユニットでは、130℃程度の高温の水素が40℃程度にまで冷却され、更に、水素冷却ユニット22では、その40℃程度の水素が−40℃程度にまで冷却される。
【0035】
そして、吐出流路18の最も下流の端部には、緊急離脱カップラー24が設けられている。この緊急離脱カップラー24は、これを介して燃料電池自動車C側に伸びる充填ホース25が極めて強い力で引っ張られた場合に離脱し、水素ガスの供給先側(燃料電池自動車C側)、あるいはそれと反対の水素ガスの供給元側の双方から、高圧の水素ガスが噴出しないよう構成されてなるものである。
【0036】
更に、緊急離脱カップラー24から伸びる充填ホース25の最も下流の端部には、充填ノズル26が設けられている。充填ノズル26は、燃料電池自動車Cの図示しないノズル口に接続される。そして、水素ステーション1から供給される水素は、燃料電池自動車Cの内部に搭載される車載水素タンク(図示省略)に供給される。
【0037】
一方、本発明の実施の形態に係る水素ステーション1には、来店(水素ステーションに接近もしくは到着)した顧客の燃料電池自動車Cを水素ガスの供給先に誘導するためのレーン(図示省略)が設定されており、このレーンの入口近傍に顧客が乗った自動車Cの来店(自動車Cの水素ステーションへの接近もしくは到着)を検知するセンサ31が設置されている。
【0038】
また、前記二段の圧縮機のうち少なくとも高圧段側の往復動圧縮機(最高圧段側圧縮機)14に接続された中間流路6以降に備えられた機器、より詳しくは、高圧段側の往復動圧縮機(最高圧段側圧縮機)14以降に備えられた機器(すなわち、往復動圧縮機(最高圧段側圧縮機)14に具備されているか、往復動圧縮機(最高圧段側圧縮機)14より後流側において備えられた機器)である、潤滑油冷却ユニット32と水素冷却ユニット22とが、起動準備手段27として構成されている。それと共に、センサ31からの信号(以下「来店信号」とも称する)がコントローラ30に送信され、コントローラ30内の始動手段30aによる始動信号によって前記起動準備手段27が起動可能に構成されている。
【0039】
ここで、センサ31としては、光学センサ、重量センサまたは磁気センサのうちの何れか一つ以上から選択される。例えば、光電管等の光学センサのみでは、検出された来客信号が来客の自動車Cか人の通過かが判別し難い場合がある。このような場合、例えば光学センサと重量センサ或いは磁気センサとを併用して、自動車か人かを判別することもできる。
【0040】
次に、本発明の実施の形態に係る水素ステーション1における顧客来店前の運転状況、及び顧客の乗った自動車がこの水素ステーション1に来店した際の運転状況について以下説明する。
【0041】
水素ステーション1は、先ず、図示しない水素供給源からフィルター2が介設された供給流路3を介して、低圧段側の往復動圧縮機4に水素を受け入れる。そして、この往復動圧縮機4に接続された駆動機5を始動して往復動圧縮機4を駆動する。次いで、往復動圧縮機4で圧縮された水素を中間流路6に吐出し、水素クーラ7によって冷却する。
【0042】
更に、冷却された水素を、中間流路6の分岐点6aを経て、開弁された開閉弁8及び分岐点6bを介して第1の中間圧蓄圧器9に貯留すると共に、開弁された開閉弁10及び分岐点6cを介して第2の中間圧蓄圧器11にも貯留する。
【0043】
そして、圧力センサ16における水素圧の検出圧力P1が予め設定された第1の閾値以上になると、開閉弁8を閉弁して第1の中間圧蓄圧器9への水素の貯留を停止する一方、圧力センサ17における水素圧の検出圧力P2が予め設定された第2の閾値以上になると、開閉弁10も閉弁して第2の中間圧蓄圧器11への水素の貯留を停止する。
【0044】
また、圧力センサ16における検出圧力P1が予め設定された第3の閾値以上になると開閉弁12が開弁される一方、圧力センサ17における検出圧力P2が予め設定された第4の閾値以上になると開閉弁13が開弁される。そして、第1の中間圧蓄圧器9と第2の中間圧蓄圧器11の水素は、合流点6dにて合流し、始動されていない高圧段側の往復動圧縮機14、水素クーラ19を経て、前記ディスペンサー直前の吐出流路18内で待機している。
【0045】
そして、顧客の乗った自動車Cが、水素ステーション1の水素ガスの供給先に接続するレーン入口に進入すると、センサ31に自動車Cの来店が検知され、この来店信号がコントローラ30に送信される。すると、コントローラ30内に収納された始動手段30aから始動信号が、潤滑油冷却ユニット32、更には水素冷却ユニット22に送信される。
【0046】
その結果、潤滑油冷却ユニット32の駆動機35が始動して、往復動圧縮機14内の潤滑油を、潤滑油冷却ユニット32に回収しオイルクーラ36により冷却し、オイルフィルタ37にて不純物を除去した後、往復動圧縮機14内に循環して、往復動圧縮機14が何時起動しても問題ない潤滑状態に保持する。更に、水素冷却ユニット22の冷凍機41が始動して、水素クーラ40内に十分に冷却された冷媒を循環させ、何時水素充填を開始しても、水素クーラ40を通して、水素を十分に冷却できる水素冷却ユニット22の運転状態(例えば、40℃程度の水素を−40℃程度にまで冷却できる運転状態)を保持する。そして、顧客の自動車 Cに充填する直前の水素を冷却し、何時水素充填を開始しても問題ない水素の冷却状態に保持する。
【0047】
そして、顧客の自動車Cが水素ガス供給先に来て、顧客が水素充填を発注した時点(即ち、自動車Cへの水素充填を開始する旨の指示があった時点)で、水素ステーション1の操作員が、高圧段側の往復動圧縮機14の駆動機15を起動する。すると、低圧の水素が高圧に圧縮され、高圧水素として吐出流路18に吐出された後、水素クーラ19によって冷却される。
【0048】
次いで、操作員が、充填ホース25の先端に取り付けられた充填ノズル26を、燃料電池自動車Cの図示しないノズル口に接続した後、遮断弁23が開弁される。すると、水素ステーション1から、流量調整弁20を通じる水素が、流量計21で検出された流量値に基づいて、流量を適正に保持しながら自動車Cの内部に搭載された車載水素タンクに供給される。この際、水素冷却ユニット22は、顧客の水素充填の発注前から始動しているので、充填直前の水素を十分に冷却して即充填可能となる(水素充填を開始する旨指示を受けてから水素充填を開始するまでの時間、ひいては充填終了するまでの時間が従来技術よりも短縮される)。
【0049】
以上説明した通り、本発明の水素ステーションによれば、供給された水素を複数段に圧縮する複数の圧縮機と、顧客の自動車の来店(水素ステーションへの接近または到着)を検知するセンサが備えられる一方、前記複数段の圧縮機のうち少なくとも最高圧段側圧縮機以降に備えられた機器を起動準備手段とすると共に、前記センサからの来店信号によって当該起動準備手段を始動させる始動手段が備えられてなるので、顧客が水素充填の依頼をしてから(自動車への水素充填を開始する旨の指示があってから)充填を開始するまでの時間、ひいては充填終了までの時間が従来技術よりも短縮される。
【0050】
本発明は上述した実施の形態に限るものではない。例えば、上述の実施の形態では、最高圧段側圧縮機14以降に備えられた機器32,22の双方を起動準備手段27としたが、機器32,22のうちの一方と起動準備手段27としてもよい。また、最高圧段側圧縮機14以降において、最高圧段側圧縮機14以降に備えられた機器32,22に準じるような機器が備えられている場合にあっては、その機器を起動準備手段27に含めても良い。
【0051】
また、本発明においては、最高圧段側圧縮機14以降に備えられた機器のみではなく、最高圧段側圧縮機14に接続された中間流路6以降に備えられた機器を起動準備手段とすることができる。例えば、上述した実施の形態の変形例として、合流点6dと最高圧段側圧縮機14との間の中間流路6に開閉弁(開閉弁αとする)を介設し、この開閉弁αを起動準備手段としてもよい。そして、センサ31の信号がコントローラ30に送信された場合には、コントローラ30は開閉弁αを開弁し、それ以外の場合にはコントローラ30は開閉弁αを閉弁する制御を行うことが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
C…燃料電池自動車
1…水素ステーション
2…フィルター
3…供給流路
4…低圧段側の往復動圧縮機
5…駆動機
6…中間流路, 6a,6b,6c…分岐点, 6d…合流点
7,19,40…水素クーラ
8,10,12,13…開閉弁
9…第1の中間圧蓄圧器
11…第2の中間圧蓄圧器
14…高圧段側の往復動圧縮機
15…駆動機
16,17…圧力センサ
18…吐出流路
20…流量調整弁
21…流量計
22…水素冷却ユニット
23…遮断弁
24…緊急離脱カップラー
25…充填ホース
26…充填ノズル
27…起動準備手段
30…コントローラ, 30a…始動手段
31…センサ
32…潤滑油冷却ユニット
33…油循環流路
34…潤滑油ポンプ
35…駆動機
36…オイルクーラ
37…オイルフィルタ
41…冷凍機
42…冷媒配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載される水素タンクに水素を直接充填するための水素ステーションにおいて、
供給された水素を複数段に圧縮する複数の圧縮機と、自動車の水素ステーションへの接近または到着を検知するセンサが備えられる一方、
前記複数の圧縮機が中間流路で接続されてなり、
前記複数段の圧縮機のうち少なくとも最高圧段側圧縮機に接続された前記中間流路以降に備えられた機器を起動準備手段とすると共に、
前記センサからの信号によって当該起動準備手段を始動させる始動手段が備えられてなることを特徴とする水素ステーション。
【請求項2】
前記起動準備手段が、前記最高圧段側圧縮機の潤滑油を回収して循環冷却する潤滑油冷却ユニットを含んでなることを特徴とする請求項1に記載の水素ステーション。
【請求項3】
前記起動準備手段が更に、圧縮された水素を複数段に冷却する複数の水素冷却ユニットのうち、少なくとも自動車に水素充填する直前の水素冷却ユニットを含んでなることを特徴とする請求項2に記載の水素ステーション。
【請求項4】
前記近接センサが、光学センサ、重量センサ及び磁気センサのうちの何れか一つ以上から選択されてなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つの項に記載の水素ステーション。



【図1】
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【公開番号】特開2013−15156(P2013−15156A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146277(P2011−146277)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】