説明

汚濁水自然流浄化装置

【課題】簡易で経済性を重視した安全な、汚濁水浄化装置の提供。
【解決手段】水が高位から低位に流れる流下力を利用し、その水圧流により環境に負荷のない安全な凝集浄化剤と濾過材及びイオン交換材を使用して汚濁水を浄化する。各ピットには底部にエアブロワーを併用設置して気泡を送ることにより浄化効果を確実にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁水を浄化し、浄化後に関連水域に対して環境負荷がないことを最重視し、その浄化済水が環境負荷の影響がなく、水中生態系を保全することを目的とする。汚濁水浄化に不可欠な汚濁中の有害物質を凝集除去と浄化可能な無機系凝集剤を主に併用し、汚濁水を浄化するための汚濁水自然流浄化装置である。
【背景技術】
【0002】
従来は、河川、湖沼、池などの浄化工法として、主に浚渫機械を用いて水底の汚泥を浚渫することにより水質の浄化が考えられ、現在もその方法を採用しての浄化施工が多く存在している。水底の汚泥を除去するだけでは水質の改善には至らない。また、施工時に水底を深く切り下げることは、水底生態環境を破壊することとなり、この方法が得策とは言えない。近年の経済発展に伴い、都市化と産業の活発化により土中及び排水中の不純物質が多種類化しており、末端処理場では対応が追い着かないのが現状である。また、他の水質浄化方法として、微生物の増殖を促して、その微生物による浄化と濾過システムも多く、現況の水質悪化の進行状態では浄化対応が困難である。
【0003】
大規模な水質浄化機械設備を使用しての工法にて水質浄化を行っているが、これらの浄化工法は高負担費用を必要とする。水質の悪化が先行し、その高負担費用を費した割には水質浄化の成果が上がっていないのが現状である。
【0004】
他の工法として浄化菌を培養繁殖させ、その菌による水質浄化工法もあるが、使用する菌の地域特性及び年間を通しての温度差による培養繁殖は、一定せず浄化効果が異なる。冬期と低気温の場合、培養繁殖が沈滞し浄化活動が休止する欠点があり、平均的な水質浄化は成果が上がらずそれ程期待は出来ない。そしてまた、浄化菌と濾過材を併用しての浄化方法もあるが、上記した通り菌の地域特性、温度差による菌の培養繁殖によっての水質浄化は、水質悪化が先行して広水域での水質浄化を期待することは難しい。
【発明開示】

【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、従来の最終処理場以外での水質浄化装置は、大型浚渫設備に莫大な経費がかかり、なお、大型機械の導入が大掛かりとなり、また、その設備機械の移動が容易ではなく、広範囲な浄化の成果に至らず、そして、その浄化装置が固定化の傾向となっており、浄化の必要地域が限定される。
【0006】
浄化地域が固定限定されるために部分的な浄化活動となり、浄化必要地域の浄化活動が困難となる。従来のこれらの課題を解決し、水質浄化に必要浄化地域に簡単に移動設置し、また、浄化後の移動も簡易にでき、環境負荷を生じない安全な凝集浄化剤を併用しての水質浄化活動が必要であり、経費削減と浄化能力アップにより汚濁水の浄化問題を解決しようとしたのが本発明汚濁水自然流浄化装置である。
【0007】
浄化菌の培養繁殖と濾過材使用による水質浄化は、菌の地域特性と温度の高低差により菌の繁殖力が衰退し、浄化活動が不確定なことも多く持続的な水質浄化への期待が不透明である。
【0008】
本発明は、前述したように水質悪化の進行が早く、従来での水質浄化の設備構成では追い着かず、水質の悪化が優先しているのが現実であります。その問題を解決しようとすることであり、河川・湖沼・池の汚濁水の水質を浄化し、自然再生の実現と環境保全へ向けての足がかりとなることを目的とする。
【問題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために既存の水質浄化方法を見直し、簡易で経済性を重視し確実に早期に水質浄化がされ、また、環境に負荷のないことを重点に考え、安全な凝集浄化剤と活性浄化材及びイオン交換材を併用しての汚濁水の浄化をする装置である。
【0010】
問題を解決の手段としての第1の作用は次の通りである。大規模な設備とその資金投下を縮小し、経済性と合理性な設備と浄化方法により、環境負荷を発生しない安全な方法で汚濁水浄化を早期に確実に実現できることを第1に考えた汚濁水浄化装置であり、そして、持続的な水質浄化を実施することである。
【0011】
また、第2としての課題解決手段による作用は、水生態系に悪影響を及ぼさない方法にて汚濁水の浄化をすることである。浄化装置で併用する浄化凝集触媒剤の安全性、浄化能力、取り扱いの簡易性及び経済性を考慮し、その凝集剤を選定することである。本発明装置で併用するこの凝集触媒剤の特性は、水和反応は積極的で、その反応での物理的吸水性に優れており、その剤の繊維素多孔性親水基が汚濁水中の有機的汚濁物質、悪臭発生物質、重金属などを吸着吸収する。
【0012】
第3としての課題解決手段による作用は、汚濁水中の汚濁物質が多種類化されており、従来には考えられない悪質な物質が混入している。凝集触媒浄化剤とマイナスイオン交換材等を併用することにより、それらの悪質な物質の除去が可能である。
【0013】
以上記述した通り、凝集浄化剤を活用しての水質浄化は確実性を持っている。しかし、それらの凝集浄化剤は多種存在するが、安全性を持ち環境負荷に対し疑問視する物も多い。また、従来のその凝集浄化剤を活用しての浄化方法は、直接に汚濁水中に散布しての水質浄化が多かった。その場合、凝集剤と凝集された汚濁物質が水底に沈下滞留して環境の負荷につながり、その凝集沈下物質を除去しない限り将来的な環境保全とはならない。また、その凝集剤の直接散布による汚濁水の浄化方法は、凝集剤の水和性の細粉が魚類等の呼吸器官に付着して呼吸困難により生息不可能な問題も多い。
【0014】
前述したように凝集剤等の活用により汚濁水浄化は可能となるが、凝集剤の使用方法により環境の負荷が生じる。本発明の汚濁水自然流浄化装置は、凝集剤、イオン交換材、活性濾過材等を浄化装置内に設置し、浄化の能力を実証されたそれらの浄化剤を活用して、水本来の自然の流れの原理を考え活用した汚濁水浄化装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の汚濁水浄化装置は、河川・湖沼池等の汚濁水全般を簡易な設備と移動で経済的に有利な条件で浄化できる。都市地域の河川、湖沼池は、下水道の普及により水質の悪化は改善されているが、特に河川の上流の地域に於いては下水道が充分に完備されていないため、汚濁水が河川等の水源に流れ込み、水質悪化の原因となっていることが現実である。
【0016】
都市部の河川・湖沼池は、降雨により河川・湖沼池周辺の汚れた物質が直接流れ込み、これらの汚物質により水質を汚している。地方都市部及び周辺地域は、下水道の普及が都市部に比較して完全ではなく生活排水を始めとして、浄化処理不充分な産業排水、化学肥料混入の農業排水が河川・湖沼池に流入して水質を著しく悪化させている。
【0017】
本発明の装置は、それらの水質悪化の原因となる地点に容易に設置でき、浄化目的の成果後に他地域の浄化必要地区へ簡単に移動ができ、早期に汚濁水の浄化を図ることができる。そして、汚濁水浄化に対しては、経済的で持続的に浄化ができ、浄化の必要地域には浄化装置の数量を増加することにより、広範囲な浄化活動が可能である。本発明の汚濁水自然流浄化装置の増設に対する必要経費は経済的であり、また、浄化装置が簡単な割に浄化効力にすぐれ、浄化の成果を早期に解決できる汚濁水浄化装置である。
【発明を実施するための最良形態】
【0018】
以下、本発明の自然流汚濁水浄化装置の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明装置の平面図であり、自然流浄化の層A−Aを汚濁水流入での浄化初期層とし、汚濁水が流入してからピット内に設置された凝集剤の水和反応と吸収吸着が活発に作用されることにより、汚濁水が各ピットを流下しながらじょじょに浄化されてくる。そして、並列のB−B層に流下する。
【0020】
A−A層に流入した汚濁水は、凝集浄化剤の水和性と繊維系多孔性親水基の働きにより、汚濁水中に溶け込んでいる汚濁物質、悪臭物質、凝集剤、悪質重金属類を吸収分解され、汚濁水中の不純物の50%〜70%が浄化される。B−B層に入ってからの汚濁水は、各ピットを通過し浄化と濾過を繰り返しながら目的浄化の成果状態で排出する。
【0021】
本発明の汚濁水自然流浄化装置は、汚濁水の浄化層流入以外では浄化槽内での水流の圧送のためのポンプを使用しない装置である。そのために、各ピットの仕切り板天端の高さを調整して流速勾配をつける。また、汚濁水の流下速度の調整と汚濁水の汚濁度に準じて流下調整板を取り付け、導入水の調整と水流調整をすることで汚濁水の層内滞留時間内での浄化をはかる。その結果、目的の浄化成果が得られる。
【0022】
汚濁水が層内の各ピットを流下することによる凝集浄化剤等での装置であることから、凝集浄化剤等の水和性と汚濁物質の吸収吸着高めるために各ピットの底部にエアーブロー管を設置し、気泡を送ることでの相乗効果にて一層の浄化効果を高める。再度の実験の結果、水流の閉塞的な状態での凝集剤等による水質浄化は、酸素要求量値が上昇する事が解った。そのためにも、浄化時に各ピット内の底部からの気泡を送る事により、水質浄化と酸素要求量の数値を下げることができ環水時の環境保全の効果がある。
【0023】
図2は、本発明装置の側面の断面図であり、汚濁水流入層をA−A側とし、隣層をB−B側とし、汚濁水の浄化仕上げ層とした。断面図の如く、汚濁水の流下は平坦的な流れではなく、水流の変化により凝集浄化剤等の水和触媒浄化力を活性化させることにより、なお一層の浄化効果が高まる。
【0024】
本発明装置での汚濁水浄化の流入から目的浄化完了までの所要時間は、35分〜60分間を要する。それは、汚濁水の汚濁度の程度により浄化完了時間を設定し、汚濁水の目的浄化を図る。
【0025】
本発明装置の拡大化は容易である。汚濁水の必要浄化量により本発明装置を拡大することができる。本発明装置は、閉塞的な湖沼池の水質浄化には特に効力があり、浄化の成果がはっきりと理解できる。閉塞的な水域では一度に浄化の完成をするのでなく、浄化の施工時間をかけて繰り返しこの装置により浄化施工をする事により目的の水質浄化は完成できる。
【0026】
第図3は、湖岸での本発明装置の水質浄化施工の想定図である。装置の搬入設置、搬出移動は簡易であり、装置の経済的な経費の割に高能力を発揮する。浄化水槽の容量を4トンとした場合、日の稼働時間を20時間とした場合、80トンの浄化能力を想定できる。
【実施例1】
【0027】
本発明装置による小規模実験での実施例として以下を記す。本発明での汚濁水浄化実験は、実験用汚濁水を210リッターとして行った。使用凝集浄化剤を水量に対して0.5%の割合の浄化剤を水により練り、網板に塗布して所定の各ピットに設置した。他の濾過材、イオン交換材も所定ピットに設置して汚濁水の浄化を開始した。
【0028】
汚濁水浄化を開始し最初の濾過ピットに流れ込み、45分後に最終ピットに到着し浄化水としての計量は次の通りであった。このデーターは汚濁水の原水を認定計量会社で実施した計量値と浄化完成水との比較データーとした数値である。1.濁度95%除去、2.SS(浮遊物質)98%除去、3.COD(酸素要求量)50%縮小、4.総窒素66%除去、5.総リン93%除去、6.クロロフィルa89%除去、7.鉄99%除去、8.溶解性鉄88%除去、9.大腸菌群100%除去。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明装置は、環境に負荷のない安全な凝集浄化剤と濾過材及びイオン交換材を使用して、汚濁水を浄化して水質を保全することにより水環境を守ることを目的としている。現実の問題としては、河川、湖沼池に対して水質浄化事業を推進しているが、水質悪化の、進行が早く、水環境が悪化の方向に向かっているのが現状である。水環境の悪化は、様々な原因によると考えられるが、特に地方都市とその周辺では、下水道の整備が未達成により家庭雑排水、工場での環境基準値を越えるような値の排水、化学肥料を多く含んだ農業排水が、河川、湖沼池に流入していることが一層の水質悪化につながっている。
【0030】
上述の通り、水環境が著しく悪化の方向に向かい、産業上に於いても水環境保全をする意味からして水質浄化と保全として全般的に本発明の汚濁水浄化装置を利用しての水質浄化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】 本発明装置の説明図A−A,B−Bの平面図
【図2】 本発明装置の説明図A−A,B−Bの断面図
【図3】 湖沼岸での本発明装置の説明図と汚濁水浄化施工設置状況図。
【符号の説明】
【0032】
【0033】
1 汚濁水流入口
2 濾過ピット
3 汚濁物濾過ピット
4 エアー送空管
5 仕切り板
6 エアーブロワー管
7 凝集浄化剤塗布網板
8 活性濾過材と濾過材
9 イオン交換浄化材
10 網底底板
11 浄化成果水排水
12 エアーブロー
13 ごみ除去かご

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明装置は、水が高位から低位に流れる流下力を利用しての汚濁水自然流浄化装置である。浄化層内の各ピットに導入された汚濁水は、ピット内で満されると上から溢れる。また、底部に水抜きがあれば当然、その水抜き箇所から外に出る圧力が加わる。連続的に流入している水は、水圧となり水層内の仕切り板を越流する。仕切り板を越流したその水は、水圧となり次の浄化ピットへと流れ込み、底部の隙間を通りながら外部へと押し出されて水流となり移動する。その水圧流を利用して自然流の状態で汚濁水を浄化することが、本発明の汚濁水自然流浄化装置である。水流は、障害物がなければ水の流れが平坦流であり、流れには変化がなく静かに直線的に流れて行く。本発明汚濁水自然流浄化装置は、水の流下圧力を利用してその流れに対し、高所越流と低所底流の変化流により、水の流動に変化をつけることによって汚濁水の浄化を可能とした。本発明装置の対象目的は、汚濁水の浄化に対するものである。実験の結果、汚濁水が流れるに従い、各ピットにその汚濁水との水和反応により物理的吸水性にすぐれた凝集触媒材剤と活性炭浄化材、イオン交換浄化材、不純物除去濾過材等を使用した。今回、併用した凝集触媒浄化剤は、繊維素多孔性親水基能力のある凝集触媒浄化剤であり、汚濁物質はもとより汚濁水中の有害物質の除去ができることで、汚濁水の層内通流時に層内の各ピットに設置した不純物濾過材、活性炭浄化材、イオン交換浄化材、及び凝集触媒浄化剤の各ピットを流下することで、汚濁水が浄化できる装置である。また、この凝集触媒浄化剤を網板に練り込み塗布して各ピットに設置した。各ピットの底部にエアーブロワーを併用設置して気泡を底部より送ることにより、凝集浄化材と汚濁水の水和力により、より一層の浄化効果の確実性を得る事ができる装置は、他に例がない試みであること事も特記する。本発明装置に併用する凝集触媒浄化剤は、再度の浄化完成水の試験による報告書を得ており、その内容は、水環境に負荷がなく安全である事の実証実験にて認められている凝集剤を併用による汚濁水自然流浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−21468(P2007−21468A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234958(P2005−234958)
【出願日】平成17年7月16日(2005.7.16)
【出願人】(305005018)
【Fターム(参考)】