説明

油圧システムおよび該油圧システムを備えたフォークリフト

【課題】所定の順序動作を確実に確保することができる油圧システムおよび該油圧システムを備えたフォークリフトを提供する。
【解決手段】フォーク付きのリフトブラケットを昇降させる第1油圧シリンダ5と、第1油圧シリンダ5が設けられたインナマストを昇降させる第2油圧シリンダ6A、6Bと、第1および第2油圧シリンダ5、6A、6Bを接続する配管11、12と、油圧装置10Aとを備えた油圧システム1Aであって、油圧装置10Aは、作動油タンク14の作動油を吸引して吐出する油圧ポンプ15と、油圧ポンプ15を駆動する油圧モータ16と、作動油の温度を検出する温度検出手段17と、温度検出手段17により検出された温度が低いほど油圧モータ16の最大回転数を小さく設定する回転数設定部18と、最大回転数を超えないように油圧モータ16の回転数を制御する制御部19と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のマストに案内されたフォークを段階的に昇降させる油圧システムおよび該油圧システムを備えたフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
図6(A)に示すように、従来から、複数のマストに案内されたフォークを段階的に昇降させる油圧システムとして、車体の前部に取り付けられるアウタマスト3、ミドルマスト23およびインナマスト4からなる3段式のマストを備えた油圧システム1Bが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる3段式のマストを備えた油圧システム1Bにおいては、フォーク8付きのリフトブラケット7をチェーン21を介して昇降させる第1油圧シリンダ5がインナマスト4に設けられており、第1油圧シリンダ5の上方にチェーン21をかけるためのチェーンホイール20が設けられている。この他、油圧システム1Bでは、一端がアウタマスト3に固定され、かつ他端がインナマスト4に固定されたチェーン25をかけるためのチェーンホイール24がミドルマスト23に設けられ、さらに、上端がミドルマスト23のアッパービーム23aに連結された左右一対の第2油圧シリンダ6A、6Bがアウタマスト3に設けられている。
【0004】
第1油圧シリンダ5および第2油圧シリンダ6A、6Bは、図7に示すように、それぞれ油圧シリンダ本体5a、6aと、該油圧シリンダ本体5a、6a内に形成された油圧室5b、6bと、油圧シリンダ本体5a、6aから伸長するピストンロッド5c、6cとを有している。第2油圧シリンダ6Aのピストンロッド6cには、作動油を通流させる流路6dが形成されている。
【0005】
第1油圧シリンダ5の油圧室5bは、第1配管11を介して第2油圧シリンダ6Aのピストンロッド6cに接続されている。第2油圧シリンダ6Aの油圧室6bは、第2配管12を介して第2油圧シリンダ6Bの油圧室6bおよび油圧装置10Bに接続されている。油圧装置10Bは、作動油の流れを制御するコントロールバルブ13と、作動油が貯留された作動油タンク14と、作動油タンク14の作動油を吸引して吐出する油圧ポンプ15と、油圧ポンプ15を駆動する油圧モータ16とを有している。
【0006】
この油圧システム1Bでは、通常、第1油圧シリンダ5のピストンロッド5cを伸長させるために必要な油圧室5bの圧力(以下、「第1油圧シリンダの作動圧力」)が、第2油圧シリンダ6A、6Bのピストンロッド6cを伸長させるために必要な油圧室6bの圧力(以下、「第2油圧シリンダの作動圧力」)よりも小さくなるように設定されている。具体的には、第1油圧シリンダ5の内径を第2油圧シリンダ6A、6Bの内径よりも大きくして、ピストンロッド5cの受圧面積をピストンロッド6cの受圧面積よりも大きくしている。これにより、油圧システム1Bでは、油圧装置10Bから作動油が供給されると、第1油圧シリンダ5のピストンロッド5cが先に伸長して(図6(B)参照)、その後に第2油圧シリンダ6A、6Bのピストンロッド6cが伸長する(図6(C)参照)といった所定の順序動作を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−228094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の油圧システム1Bでは、第1油圧シリンダ5が第1配管11を介して第2油圧シリンダ6Aに接続されているので、第1配管11における作動油の通流抵抗の影響を受けて、第1油圧シリンダ5の作動圧力が見かけ上大きくなってしまう。
【0009】
例えば、この通流抵抗は作動油の温度が低いほど大きくなる傾向にあるため、何らかの要因で作動油の温度が大きく低下した場合、従来の油圧システム1Bでは、第1油圧シリンダ5の作動圧力と第2油圧シリンダ6A、6Bの作動圧力の大小関係が逆転して、所定の順序動作を確保できなくなるという問題があった。
【0010】
なお、この問題は、第1油圧シリンダ5の内径をさらに大きくして、第1油圧シリンダ5の作動圧力をあらかじめ小さくしておくことで回避できるようにも思えるが、第1油圧シリンダ5の内径を大きくしすぎると、第1油圧シリンダ5が大型化してしまうため、前方視界の悪化やコストアップといった新たな問題が生じてしまう。また、第1油圧シリンダ5の内径を大きくする代わりに、第2油圧シリンダ6A、6Bの内径を小さくした場合は、耐久性の問題が生じてしまう。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、所定の順序動作を確実に確保することができる油圧システムおよび該油圧システムを備えたフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る油圧システムは、フォーク付きのリフトブラケットを昇降させる第1油圧シリンダと、第1油圧シリンダが設けられたインナマストと、インナマストを昇降させる一対の第2油圧シリンダと、一対の第2油圧シリンダが設けられたアウタマストと、第1油圧シリンダおよび一対の第2油圧シリンダを接続する複数の配管と、該複数の配管を介して第1および第2油圧シリンダに作動油を供給する油圧装置とを備えた油圧システムであって、油圧装置は、作動油が貯留された作動油タンクと、作動油タンクの作動油を吸引して吐出する油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動する油圧モータと、作動油の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段により検出された温度に基づいて油圧モータの最大回転数を設定する回転数設定部と、最大回転数を超えないように油圧モータの回転数を制御する制御部と、を有し、回転数設定部は、温度検出手段により検出された温度が低いほど最大回転数を小さく設定することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、作動油の温度が低いほど油圧モータの最大回転数を小さく設定する回転数設定部を有しているので、油圧モータの最大回転数に応じて作動油の平均流速を減少させて、作動油の通流抵抗を減少させることができる。したがって、この構成によれば、作動油の平均流速を減少させて通流抵抗を減少させることで、作動油の温度低下に伴う通流抵抗の増加分を打ち消すことができるので、第1油圧シリンダおよび第2油圧シリンダにおける所定の順序動作を確実に確保することができる。
【0014】
また、本発明に係る油圧システムにおいて、上記複数の配管は、第1油圧シリンダと一対の第2油圧シリンダのうちの一方の第2油圧シリンダとを接続する第1配管と、一対の第2油圧シリンダ同士を接続する第2配管とを有し、上記油圧ポンプから吐出された作動油は、第2配管、一方の第2油圧シリンダ、第1配管の順に経由して第1油圧シリンダに供給され、上記回転数設定部は、第1油圧シリンダの作動圧力と、作動油の温度に応じて変化する第1配管における作動油の通流抵抗との和が、一対の第2油圧シリンダの作動圧力よりも小さくなるように最大回転数を設定することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1油圧シリンダの作動圧力と、作動油の温度に応じて変化する第1配管における作動油の通流抵抗との和が、一対の第2油圧シリンダの作動圧力よりも小さくなるように最大回転数が設定されるので、所定の順序動作をより確実に確保することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る油圧システムにおいて、上記油圧装置は、作動油の温度と油圧モータの回転数との関係があらかじめ格納された記憶部を有し、上記回転数設定部は、記憶部を参照して作動油の温度に対応した回転数を最大回転数として設定してもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、上記いずれかの油圧システムを備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1油圧シリンダおよび第2油圧シリンダにおける所定の順序動作を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、所定の順序動作を確実に確保することができる油圧システムおよび該油圧システムを備えたフォークリフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る油圧システムを備えたフォークリフトの側面図である。
【図2】本発明に係る油圧システムの順序動作を示す概略側面図あって、(A)は第1および第2油圧シリンダが縮長した状態を示す図、(B)は第1油圧シリンダだけが伸長した状態を示す図、(C)は第1および第2油圧シリンダが伸長した状態を示す図である。
【図3】本発明に係る油圧システムの概略構成図である。
【図4】作動油の温度と油圧モータの回転数との関係を示すデータの一例である。
【図5】本発明における制御部のブロック図である。
【図6】従来の油圧システムの順序動作を示す概略側面図あって、(A)は第1および第2油圧シリンダが縮長した状態を示す図、(B)は第1油圧シリンダだけが伸長した状態を示す図、(C)は第1および第2油圧シリンダが伸長した状態を示す図である。
【図7】従来の油圧システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る油圧システムおよびフォークリフトの好ましい実施形態について説明する。
【0022】
図1に、本実施形態に係る油圧システム1Aを備えたフォークリフト1の側面図を示す。同図に示すように、本実施形態に係る油圧システム1Aは、車体2の前部に取り付けられたアウタマスト3と、アウタマスト3の内側に設けられたインナマスト4とからなる2段式のマストを備えている。
【0023】
図2(A)に示すように、インナマスト4には、フォーク8付きのリフトブラケット7をチェーン21を介して昇降させる第1油圧シリンダ5が設けられており、第1油圧シリンダ5の上方には、チェーン21をかけるためのチェーンホイール20が設けられている。また、インナマスト4には、該インナマスト4がアウタマスト3に対して上昇しているか否かを検知するための検知手段22が、該インナマスト4とアウタマスト3に挟まれるように設けられている。
【0024】
アウタマスト3には、上端がインナマスト4のアッパービーム4aに連結された左右一対の第2油圧シリンダ6A、6Bが設けられている。
【0025】
図3に示すように、第1油圧シリンダ5および第2油圧シリンダ6A、6Bは、それぞれ油圧シリンダ本体5a、6aと、該油圧シリンダ本体5a、6a内に形成された油圧室5b、6bと、油圧シリンダ本体5a、6aから伸長するピストンロッド5c、6cとを有している。第2油圧シリンダ6Aのピストンロッド6cには、作動油を通流させるための流路6dが形成されている。
【0026】
第1油圧シリンダ5の油圧室5bは、第1配管11を介して第2油圧シリンダ6Aのピストンロッド6cに接続されており、第2油圧シリンダ6Aの油圧室6bは、第2配管12を介して第2油圧シリンダ6Bの油圧室6bおよび油圧装置10Aに接続されている。
【0027】
また、第1油圧シリンダ5の内径は第2油圧シリンダ6A、6Bの内径よりも大きく、ピストンロッド5cの受圧面積はピストンロッド6cの受圧面積よりも大きくなっている。このため、第1油圧シリンダ5の作動圧力は、第2油圧シリンダ6A、6Bの作動圧力よりも小さくなる。なお、第2油圧シリンダ6Aの作動圧力と第2油圧シリンダ6Bの作動圧力とは、実質的に同じである。
【0028】
油圧装置10Aは、第1油圧シリンダ5および第2油圧シリンダ6A、6Bに作動油を供給するものであり、作動油の流れを制御するコントロールバルブ13と、作動油が貯留された作動油タンク14と、作動油タンク14の作動油を吸引して吐出する油圧ポンプ15と、油圧ポンプ15を駆動する油圧モータ16と、作動油の温度を検出する温度検出手段17と、温度検出手段17により検出された温度に基づいて油圧モータ16の最大回転数を設定する回転数設定部18と、回転数設定部18で設定された最大回転数を超えないように油圧モータ16の回転数を制御する制御部19と、作動油の温度と油圧モータ16の回転数との関係を示すデータ(図4参照)があらかじめ格納された記憶部(不図示)と、を有している。
【0029】
温度検出手段17は、作動油タンク14内の作動油の温度を検出する温度センサであり、該温度センサにより検出された温度は、一定時間おきに連続的に回転数設定部18に送信される。
【0030】
回転数設定部18は、記憶部に格納されたデータを参照して、温度検出手段17により検出された作動油の温度に対応した油圧モータ16の回転数を最大回転数として設定する。この最大回転数は、一定時間おきに更新される。
【0031】
制御部19は、図5に示すように、比較手段19aと、トルク指令値算出手段19bと、油圧モータ16を駆動するためのインバータ19cと、油圧モータ16の回転数ωを検出する不図示の回転数検出手段とを有している。
【0032】
比較手段19aは、リフトレバーの操作量に応じて決まる油圧モータ16の目標回転数と、回転数設定部18によって設定された最大回転数とを比較して、小さい方の値を出力する。トルク指令値算出手段19bは、比較手段19aから出力された回転数と、回転数検出手段によって検出された油圧モータ16の回転数ωとの偏差がゼロになるようにPI演算を行いトルク指令値を算出する。インバータ19cは、トルク指令値算出手段19bによって算出されたトルク指令値にしたがって油圧モータ16を駆動する。
【0033】
第1油圧シリンダ5は、図3に示すように第1配管11を介して第2油圧シリンダ6Aに接続されているので、第1配管11における作動油の通流抵抗の影響を受けて、第1油圧シリンダ5の作動圧力が見かけ上大きくなる。このため、所定の順序動作(第1油圧シリンダ5のピストンロッド5cを伸長させた後に、第2油圧シリンダ6A、6Bのピストンロッド6cを伸長させる動作)を確保するためには、第1配管11における作動油の通流抵抗を制限して、所定の作動圧力の関係(第1油圧シリンダ5の作動圧力<第2油圧シリンダ6A、6Bの作動圧力)を維持する必要がある。
【0034】
ここで、配管における作動油の通流抵抗(摩擦による圧力損失)△p[MPa]は、作動油の動粘度に正比例する摩擦係数λ、作動油の密度ρ[kg/cm3]、配管の内径d[cm]、配管の長さL[cm]、および作動油の平均流速V[cm/sec]に基づいて、次式により算出することができる。
【数1】

また、作動油の摩擦係数λ(作動油の動粘度)は、作動油の温度と反比例の関係を有しており、作動油の平均流速Vは、油圧モータの回転数と正比例の関係を有している。したがって、上式から、作動油の温度が低くなり摩擦係数λが増加しても、油圧モータの回転数を小さくして平均流速Vを減少させることで、作動油の通流抵抗△pを一定の値に制限できることが分かる。
【0035】
図4に示すデータでは、上記知見に基づいて、第1油圧シリンダ5の作動圧力と第1配管11における作動油の通流抵抗との和が、第2油圧シリンダ6A、6Bの作動圧力よりも小さいという圧力関係を満たすように、作動油の温度に応じた油圧モータ16の回転数を設定している。
【0036】
なお、油圧モータ16の回転数(作動油の平均流速V)が増加すると、第1油圧シリンダ5および第2油圧シリンダ6A、6Bのピストンロッド5c、6cの伸長速度が増加してフォーク8の上昇速度も増加するので、作業の高速化のニーズにこたえるためには、油圧モータ16の回転数を、上記圧力関係を満たす最大の値となるように設定することが好ましい。
【0037】
次に、第1油圧シリンダ5および第2油圧シリンダ6A、6Bにおける所定の順序動作について、図2(A)〜(C)および図3を参照して説明する。
【0038】
本実施形態に係る油圧システム1Aを備えたフォークリフト1では、図2(A)の状態において運転席のリフトレバーが操作されると、コントロールバルブ13が開状態となり、第1油圧シリンダ5および第2油圧シリンダ6A、6Bへの作動油の供給が可能となる。
【0039】
回転数設定部18は、記憶部に格納された図4に示すデータを参照して、温度検出手段17により検出された作動油の温度に対応した油圧モータ16の回転数を最大回転数として設定する。油圧モータ16は、制御部19の制御下で、回転数設定部18により設定された最大回転数を超えないように回転する。そして、油圧ポンプ15は、作動油タンク14の作動油を吸引し、吐出する。
【0040】
油圧ポンプ15から吐出された作動油は、油圧モータ16の回転数に応じた平均流速で、第2配管12を介して第2油圧シリンダ6A、6Bの油圧室6bに供給されるとともに、第2油圧シリンダ6Aの流路6dおよび第1配管11を介して第1油圧シリンダ5の油圧室5bに供給される。
【0041】
本実施形態に係る油圧システム1Aでは、第1油圧シリンダ5の作動圧力と第1配管11における作動油の通流抵抗との和が第2油圧シリンダ6A、6Bの作動圧力よりも小さくなる圧力関係が維持される。このため、第1油圧シリンダ5の油圧室5bおよび第2油圧シリンダ6A、6Bの油圧室6bに作動油が供給されると、図2(B)に示すように、第1油圧シリンダ5のピストンロッド5cが先に伸長して、フォーク8が上昇する。このとき、第2油圧シリンダ6A、6Bのピストンロッド6cは、上記圧力関係のため伸長しない。
【0042】
そして、第1油圧シリンダ5のピストンロッド5cが伸長しきった後、さらに第2油圧シリンダ6A、6Bの油圧室6bに作動油が供給され、第2油圧シリンダ6A、6Bの油圧室6bの圧力が上昇して第2油圧シリンダ6A、6Bの作動圧力に達すると、図2(C)に示すように、第2油圧シリンダ6A、6Bのピストンロッド6cが伸長して、フォーク8がさらに上昇する。
【0043】
結局、本実施形態に係る油圧システム1Aおよびフォークリフト1によれば、作動油の温度に応じて油圧モータ16の回転数(作動油の平均流速)を制御することで、第1配管11における作動油の通流抵抗を制限することができるので、第1油圧シリンダ5および第2油圧シリンダ6A、6Bにおける所定の順序動作を確実に確保することができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、アウタマスト3およびインナマスト4からなる2段式のマストを備えた油圧システム1Aを例に挙げて説明したが、2段式のマストに替えて図6に示すような3段式のマストを備えていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、温度検出手段17が作動油タンク14内の作動油の温度を検出しているが、検出場所は任意に変更することができ、例えば、第1配管11を流れる作動油の温度を検出してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 フォークリフト
1A 油圧システム
2 車体
3 アウタマスト
4 インナマスト
5 第1油圧シリンダ
6A、6B 第2油圧シリンダ
7 リフトブラケット
8 フォーク
10A 油圧装置
11 第1配管
12 第2配管
13 コントロールバルブ
14 作動油タンク
15 油圧ポンプ
16 油圧モータ
17 温度検出手段
18 回転数設定部
19 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーク付きのリフトブラケットを昇降させる第1油圧シリンダと、前記第1油圧シリンダが設けられたインナマストと、前記インナマストを昇降させる一対の第2油圧シリンダと、前記一対の第2油圧シリンダが設けられたアウタマストと、前記第1油圧シリンダおよび前記一対の第2油圧シリンダを接続する複数の配管と、該複数の配管を介して前記第1および第2油圧シリンダに作動油を供給する油圧装置とを備えた油圧システムであって、
前記油圧装置は、
前記作動油が貯留された作動油タンクと、
前記作動油タンクの作動油を吸引して吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動する油圧モータと、
前記作動油の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出された温度に基づいて前記油圧モータの最大回転数を設定する回転数設定部と、
前記最大回転数を超えないように前記油圧モータの回転数を制御する制御部と、
を有し、
前記回転数設定部は、前記温度検出手段により検出された温度が低いほど前記最大回転数を小さく設定することを特徴とする油圧システム。
【請求項2】
前記複数の配管は、前記第1油圧シリンダと前記一対の第2油圧シリンダのうちの一方の第2油圧シリンダとを接続する第1配管と、前記一対の第2油圧シリンダ同士を接続する第2配管とを有し、
前記油圧ポンプから吐出された作動油は、前記第2配管、前記一方の第2油圧シリンダ、前記第1配管の順に経由して前記第1油圧シリンダに供給され、
前記回転数設定部は、前記第1油圧シリンダの作動圧力と、前記作動油の温度に応じて変化する前記第1配管における作動油の通流抵抗との和が、前記一対の第2油圧シリンダの作動圧力よりも小さくなるように前記最大回転数を設定することを特徴とする請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
前記油圧装置は、前記作動油の温度と前記油圧モータの回転数との関係があらかじめ格納された記憶部を有し、
前記回転数設定部は、前記記憶部を参照して前記作動油の温度に対応した回転数を前記最大回転数として設定することを特徴とする請求項1または2に記載の油圧システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の油圧システムを備えたことを特徴とするフォークリフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−250817(P2012−250817A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125244(P2011−125244)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】