説明

油圧ショベルの油圧回路

【課題】油圧シリンダの再生回路において、戻り油を全量再生して、一部をタンクへ逃がすことによる熱エネルギロスを無くすと共に、再生手段のハンチングに依る操作不良を防止する。
【解決手段】再生弁37は、途中で絞りながら戻り油を一部タンクへ逃がす方式でなく、全開または遮断の切換方式とし、その制御を、シリンダのボトム室側圧力Pcに基づいて行うと共に、再生時に再生を解除する第1の所定値と、再生解除時に再生を開始する第2の所定値を設けてハンチングを防止するものである。なお、第2の所定値は第1の所定値からは大幅に異なる値が取られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧回路に関わり、特に油圧シリンダの再生回路において、再生時に一部の戻り油を絞りながらタンクに逃がすこと無く、全量再生する再生手段を備え、タンクへの戻り油の絞りロスを解消すると共に、再生手段のハンチングに依る操作不良を防止する油圧ショベルの油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ショベルは、アーム用のコントロールバルブを駆動したときにアームシリンダに対し、第1の油圧ポンプと第2の油圧ポンプとの圧力のうち低圧側の圧力に応じて再生切換弁の開口面積を可変絞り手段として制御することにより、アームシリンダの負荷圧が低いときには、アームシリンダに対し再生を行うことができるものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、油圧ショベルの油圧制御装置において、アームシリンダの縮小側の油の一部を伸長側に戻す再生回路と、この再生回路を通る再生流量を制御する再生弁とが設けられ、制御手段は、複合操作時に、上記再生弁を、ブーム上げまたはバケット掘削パイロット圧に応じて、このパイロット圧が大きいほど再生率が増加する方向に制御するようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、油圧ショベルの油圧制御装置において、油圧シリンダの伸長方向に操作すると、油圧ポンプからの圧油は油圧シリンダのボトム側室に流入し、油圧シリンダのロッド側室内からの圧油はタンクに戻る。この時、コントロールバルブ内の供給通路の圧力を検出し、この圧力が設定圧力P0より低い場合、コントロールバルブ内の再生切換弁により排出通路を閉路し、再生が働いて油圧シリンダのロッド側室からの戻り油の全量がコントロールバルブ内で再生通路及びチェック弁を介して供給通路へ合流される。また、油圧シリンダの負荷が増大したとき、供給通路の圧力が上昇し、設定圧力P0よりも当該圧力が大きくなると再生切換弁により閉路されていた排出通路がタンクと連通し、再生が解除されて油圧シリンダのロッド室側からの戻り油は供給通路に合流することなくタンクに戻るものも知られている(例えば、特許文献3の再生回路参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−278678号公報
【特許文献2】特開2007−23606号公報
【特許文献3】特開平07−158604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明は、従来、アームシリンダの負荷圧が低いときには、アームシリンダに対し再生を行うことに対しては効果があった。しかし、ポンプ吐出圧が上がるにつれ再生量を決める再生弁開口が連続的に増えるので、アームシリンダの負荷に依っては再生しながら一部の戻り側の圧油が再生弁開口からタンクへ戻る。このタンクへ戻る圧油は開口部で絞られて熱に変わる絞りロスであり、省エネルギの観点からもロスである。
【0007】
また、特許文献2記載の発明も、複合操作時に、アームシリンダに対し再生を行うことに対しては効果があった。しかし、再生流量を制御する再生弁を、ブーム上げまたはバケット掘削パイロット圧に応じて、このパイロット圧が大きいほど再生率が増加する方向に制御するので、途中の再生率では再生しながら一部の戻り側の圧油が再生弁からタンクへ戻る恐れがある。このタンクへ戻る圧油は再生弁で絞られて熱に変わる絞りロスであり、省エネルギの観点からも同じくロスである。
【0008】
一方、特許文献3記載の油圧制御装置の概略図の再生方式では、再生時には油圧シリンダのロッド側室からの戻り油の全量がコントロールバルブ内で再生通路及びチェック弁を介して供給通路へ合流される。このため、タンクへ戻る圧油が再生弁で絞られて熱に変わる絞りロスは皆無となる。しかし、この方式ではコントロールバルブ内の供給通路の圧力を検出し、この圧力が設定圧力P0より低い場合に再生し、同じ設定圧力P0よりも当該圧力が大きくなると再生を解除している。
【0009】
このため、再生した状態でP0より少し大きなシリンダ負荷となる様な掘削をした場合、まず再生は解除される、しかし再生が解除されると、シリンダロッド側受圧面積の分の抵抗が無くなり、シリンダボトム側受圧面積が完全に有効となり当該圧力は下がる。当該圧力はP0を下回り再生に切り替わる。再生状態になると当該圧力は上がり再びP0を超えて、再生が解除され、この繰り返しによるハンチングが起こり操作不良となる恐れがある。
【0010】
そこで、本発明の主な目的は、油圧シリンダの再生回路において、再生時に戻り油を全量再生する再生手段を備えて、タンクへ戻る圧油が再生弁で絞られて熱に変わる絞りロスを無くすると共に、油圧シリンダのボトム側の圧力に対して再生を解除する設定圧力と、再生を開始する設定圧力を、各々別な設定値として設定出来る油圧回路とすることにより、再生手段のハンチングに依る操作不良を防止する油圧ショベルの油圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる油圧ショベルの油圧回路は、ブーム、アーム、バケット及び前記ブームを駆動するブームシリンダ、前記アームを駆動するアームシリンダ、前記バケットを駆動するバケットシリンダを備え、この各シリンダを含む複数の油圧アクチュエータに対応した複数のコントロールバルブが設けられ、前記油圧アクチュエータを制御するコントロールバルブからの戻り油を前記油圧アクチュエータの供給側に再生する再生手段と、前記油圧アクチュエータに供給される圧油の圧力を検出する検出手段と、前記再生手段をコントロールするコントローラを備えた油圧ショベルの油圧回路において、再生中に前記圧油の圧力がこれよりも大きいと再生を解除する第1の所定値と、再生解除中に前記圧油の圧力がこれよりも小さいと再生を開始する第2の所定値の複数の所定値を用いて前記再生手段を制御するように構成したことを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧回路は、上記の発明において、前記再生手段は前記コントロールバルブからの戻り油を開閉する再生弁と、前記コントロールバルブと前記再生弁を結ぶ戻り流路とポンプ側流路とを連絡する流路上に設けられ、前記戻り流路の圧力が前記ポンプ側流路の圧力よりも高いときに戻り流路からポンプ側流路への圧油の流入を許容する逆止弁と、前記再生弁を制御する電磁方向切換弁と、前記電磁方向切換弁へのパイロット圧油を制御するパイロット方向切換弁とを備え、前記検出手段は前記油圧アクチュエータに供給される圧油の圧力を電気信号に変換する圧力センサであり、前記圧力センサから電気信号を受けた前記コントローラは、前期再生手段が再生中か解除中かを前記再生弁を制御する前記電磁方向切換弁への制御電流で判定し、解除中で前記圧油の圧力が前記第2の所定値より小さければ再生開始の制御電流を出力し、再生中で前記圧油の圧力が前記第1の所定値より大きければ再生停止のため制御電流の出力を停止することを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧回路は、上記の発明において、前記再生手段は前記コントロールバルブからの戻り油を開閉する再生弁と、前記コントロールバルブと前記再生弁を結ぶ戻り流路とポンプ側流路とを連絡する流路上に設けられ、前記戻り流路の圧力が前記ポンプ側流路の圧力よりも高いときに戻り流路からポンプ側流路への圧油の流入を許容する逆止弁と、前記再生弁を制御する電磁方向切換弁と、操作レバーからのパイロット圧を検出するパイロット圧力センサとを備え、前記検出手段は前記油圧アクチュエータに供給される圧油の圧力を電気信号に変換する圧力センサであり、前記コントローラは、前記パイロット圧力センサの電気信号で操作レバーの操作が確認されると、前期再生手段が再生中か解除中かを前記再生弁を制御する前記電磁方向切換弁への制御電流で判定し、前記圧力センサからの電気信号も受けて、解除中で前記圧油の圧力が前記第2の所定値より小さければ再生開始の制御電流を出力し、再生中で前記圧油の圧力が前記第1の所定値より大きければ再生停止のため制御電流出力を停止することを特徴とするものである。
【0014】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧回路は、上記の発明において、前記第2の所定値は前記第1の所定値よりも大幅に小さく、概略、前記シリンダの内径を直径とする円の面積に対するロッド径を直径とする円の面積の比を前記第1の所定値に乗算した値、またはもう少し小さいことを特徴とするものである。
【0015】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧回路は、上記の発明において、前記油圧アクチュエータは油圧ショベルのアームシリンダであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかる油圧ショベルの油圧回路は、アーム引き操作がされたときに、再生時で、アームシリンダに供給される圧油の圧力が第1の所定値P1より小さければ、アームシリンダのロッド側室からの戻り油の全量がコントロールバルブ内で再生通路及びチェック弁を介して供給通路へ合流される。このため、タンクへ戻る圧油が再生弁で絞られて熱に変わる絞りロスは皆無となり、このロス分のシリンダ速度の低下も解消できる。
【0017】
また、再生した状態で第1の所定値P1より少し大きなシリンダ負荷となる様な掘削となる場合、アームシリンダに供給される圧油の圧力が第1の所定値P1より大きくなるため、再生は解除される。再生が解除されると、シリンダロッド側受圧面積の分の抵抗が無くなり、理論値では推力を発生させる有効受圧面積はロッド径のD1を直径とする円からシリンダ内径のD2を直径とする円に増加する。これによりアームシリンダに供給される圧油の圧力が小さくなる。当然圧油の圧力は第1の所定値P1より小さくなるが、解除された状態から再生状態に切り替える所定値は、本発明においては第1の所定値P1では無く第2の所定値P2である。
【0018】
一方、この第2の所定値P2は前記第1の所定値P1よりも大幅に小さく、概略、前記シリンダの内径を直径とする円の面積に対するロッド径を直径とする円の面積の比を前記第1の所定値P1に乗算した値、またはもう少し小さいことを特徴としている。従って再生が解除された状態でのアームシリンダに供給される圧油の圧力は第2の所定値P2より小さくないので再生状態にはならない。これにより、タンクへ戻る圧油が再生弁で絞られて熱に変わる絞りロスを皆無とした上で、再生手段のハンチングに依る操作不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】油圧ショベルの概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の油圧回路図である。(実施例1)
【図3】第1の油圧回路図でのコントローラの作用を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の油圧回路図である。(実施例2)
【図5】第2の油圧回路図でのコントローラの作用を示すフローチャートである。
【図6】シリンダの再生時と、再生解除時を示す模式図である。
【図7】第1の所定値P1と第2の所定値P2示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、油圧ショベルの概略構成を示す模式図である。図1において、ショベル1は、下部走行体2と、上部旋回体3と、掘削アタッチメント4とから構成されている。下部走行体2は、左右のクローラを回転駆動する左右の走行用モータ(図示せず)を有している。上部旋回体3は、旋回フレーム、キャビン5などから成っている。旋回フレームには、図2以降に示す、動力源(図示せず)に連結された油圧ポンプ21、22と、上部旋回体3を回転させるための旋回モータ12と、ショベル全体の制御を行うコントローラ63と、複数のコントロールバルブとが設置されている。掘削アタッチメント4は、ブーム6と、伸縮作動してブーム6を起伏させるブームシリンダ9と、アーム7と、アーム7を回動させるアームシリンダ10と、バケット8と、バケット8を回動させるバケットシリンダ11とを具備している。
【0022】
実施例1を図2の本発明の第1の油圧回路図に従って詳述する。油圧ショベルの作業アタッチメントはブーム6の上げ/
下げ、アーム7 の押し(上向き回動)/ 引き(下向き回動)、バケット8の掘削(すくい)/ 戻しの各動作によって掘削、積み込み等の各種作業を行うが、各油圧アクチュエータの作動を制御する各々のコントロールバルブと油圧ポンプとの関係を以下に説明する。
【0023】
第1油圧ポンプ21には旋回用コントロールバルブ31、ブーム2速用コントロールバルブ32、アーム1速用コントロールバルブ33が接続され、第2油圧ポンプ22にはバケット用コントロールバルブ34、ブーム1速用コントロールバルブ35、アーム2速用コントロールバルブ36が接続されている。また各コントロールバルブは、油圧ポンプ21、22に対して、それぞれのセンターバイパス通路を直列に接続するタンデム回路41,42と、それぞれのポンプポート同士を並列に接続するパラレル回路43,44とによって接続されている。
【0024】
また、それぞれのセンターバイパス通路41,42の最下流にはネガコン絞り51,52が夫々設けられていると共に、各ネガコン絞り51,52に生じるネガコン圧は、ネガコン圧回路45,46を介してポンプレギュレータ24,25にフィードバックされている。そして、該ポンプレギュレータ24,25は前記ネガコン圧に基づき傾転角を調整することにより、各油圧ポンプ21,22の吐出量を制御するように構成されている。
【0025】
また、62はアーム用のリモコン弁で、このアーム用リモコン弁62によってアーム用コントロールバルブ33,36が制御される。また、パイロットライン47はアーム引き操作時のパイロットラインである。
【0026】
なお、本発明ではアーム引き時の再生に関する事柄を問題としているため、図の簡略化の観点から、主旨と無関係な他のリモコン弁の図示を省略するとともに、アーム用のリモコン弁62についても、アーム引きのパイロットライン47のみを図示している。また、コントロールバルブについても走行用は省略している。
【0027】
再生弁37はアーム1速用コントロールバルブ33の戻り通路に設置されており、再生時にはタンク54への通路を遮断する働きをする弁であり、電磁方向切換弁に依って制御される。
【0028】
電磁方向切換弁38は、パイロット方向切換弁39に依ってパイロット圧油が供給されているときに、再生弁37を制御する弁であり、その制御はコントローラからの制御電流に依ってなされる。
【0029】
パイロット方向切換弁39は、アーム用リモコン弁62がアーム引き操作をされてパイロットライン47にパイロット圧が発生したときに、パイロットポンプ23からのパイロット圧油を電磁方向切換弁38に送る弁である。これにより、アーム引き操作時のみ再生が可能となる。
【0030】
40は逆止弁であり、アーム1速用コントロールバルブ33と再生弁37を結ぶ戻り流路とポンプ側流路とを連絡する流路上に設けられ、前記戻り流路の圧力が前記ポンプ側流路の圧力よりも高いときに戻り流路からポンプ側流路への圧油の流入を許容する逆止弁である。
【0031】
また、61はアームシリンダのボトム室側圧力Pcを検出する圧力センサで、この圧力センサ61からの圧力信号がコントローラ63に送られ、このコントローラ63から電磁方向切換弁38に再生を制御するための制御電流が送られる。
【0032】
図3は第1の油圧回路図でのコントローラの作用を示すフローチャートであり、図3に基づいて以下に説明する。図3のS1ステップにおいて、現在、電磁方向切換弁38に制御電流は出力されているかどうか判定する。出力していればS4ステップへ、出力していなければS2ステップとなる。
【0033】
出力していなければ、図3のS2ステップにおいて、アームシリンダのボトム室側圧力Pcが、第2の所定値P2より小さいか判定され、小さくなければ最初に戻り、小さければS3ステップとなる。S3ステップにおいては、電磁方向切換弁38が作動すべく電磁方向切換弁38への制御電流が出力される。
【0034】
また、出力していれば、図3のS4ステップにおいては、アームシリンダのボトム室側圧力Pcが、第1の所定値P1より大きいか判定され、大きくなければ最初に戻り、大きければS5ステップとなる。S5ステップにおいては、電磁方向切換弁38の作動を止めるべく電磁方向切換弁38への制御電流出力を停止する。
【0035】
なお、前記第2の所定値は前記第1の所定値よりも大幅に小さく、概略、アームシリンダの内径を直径とする円の面積に対するロッド径を直径とする円の面積の比を前記第1の所定値に乗算した値、またはもう少し小さいことを特徴とするものであるが、図6、図7にて以下に説明する。
【0036】
図6はシリンダの再生時と、再生解除時を示す模式図である。A)再生時はアームシリンダの負荷が軽い場合で、水平引き込み掘削や、軽掘削がそれに相当する。この場合にはロッド側の通路は逆止弁を介してポンプ吐出側につながり、理論値として通路等の通過抵抗を無視すれば、この場合のシリンダ推力を発生させる受圧面積A1はロッド径D1を直径とする円である。
【0037】
図6のB)再生解除時はアームシリンダの負荷が重い場合で、重掘削がそれに相当する。この場合にはロッド側の通路はタンクにつながり、理論値として通路等の通過抵抗を無視すれば、この場合のシリンダ推力を発生させる受圧面積A2はシリンダ内径D2を直径とする円である。
【0038】
図6のA)再生時と、B)再生解除時に、シリンダ推力を発生させる受圧面積A1、A2の比は例えば1:2である。この場合、シリンダにかかる負荷が同じであれば、A)再生時に比して、B)再生解除時はシリンダのボトム室側圧力Pcは半分となる。また、ポンプ吐出量が同じであれば、A)再生時に比して、B)再生解除時はシリンダのスピードも半分となる。
【0039】
図7は第1の所定値P1と第2の所定値P2示す説明図である。上段は(A)再生ありの状態で、シリンダのボトム室側圧力Pcが第1の所定値P1より大きいと再生が解除されることを示している。また、下段は(B)再生無し(再生解除)の状態で、シリンダのボトム室側圧力Pcが第2の所定値P2より小さいと再生が開始されることを示している。
【0040】
上記の如き構成において、アームシリンダの負荷が軽掘削の様に比較的軽い場合と、重掘削の如く重い場合において、アームシリンダの再生状態は以下の如くとなる。
【0041】
アームシリンダに依る軽掘削が行われると、図3のS1ステップで電磁方向切換弁38に制御電流が出力されているか判定され、出力されていなければS2ステップでアームシリンダのボトム室側圧力Pcが第2の所定値P2より小さいか判定される。軽掘削ではPcはP2より小さいので、S3ステップに進み、電磁方向切換弁38に制御電流を出力する。
【0042】
一方、図2のパイロット方向切換弁39にはアーム用リモコン弁62からのパイロット圧がアーム引きパイロットライン47を経由して入力される。これにより、パイロット方向切換弁39はパイロットポンプ23のパイロット圧油を電磁方向切換弁38に供給する。
【0043】
また、電磁方向切換弁38は、パイロット方向切換弁39からパイロット圧油の供給を受け、コントローラからの制御電流を受けて、再生弁37へパイロット圧油を送る。これにより、再生弁37はアーム1速用コントロールバルブ33の戻り通路を遮断する。
【0044】
再生弁37により遮断された戻り油は、全量逆止弁40を経由してアーム1速用コントロールバルブ33のポンプ側へ供給される。
【0045】
上記の如く、図3のS3ステップにおける制御電流の出力により再生状態になって、図3のS1ステップに戻る。S1ステップにおいて電磁方向切換弁38に制御電流が出力されているか判定されるが、出力されているのでS4ステップとなり、アームシリンダのボトム室側圧力Pcが第1の所定値P1より大きいか判定される。
【0046】
軽掘削のため、アームシリンダのボトム室側圧力Pcは第1の所定値P1より大きくないので、Noとなって戻り、そのまま再生状態が続く。これにより、タンクへ戻る圧油が再生弁で絞られて熱に変わる絞りロスは皆無となり、再生手段のハンチングに依る操作不良も防止できる。
【0047】
つぎに、アームシリンダに依る重掘削が行われると、図3のS1ステップで電磁方向切換弁38に制御電流が出力されているか判定され、出力されていなければS2ステップでアームシリンダのボトム室側圧力Pcが第2の所定値P2より小さいか判定される。重掘削ではPcはP2より小さくないので、S1ステップに戻り、出力されないままとなる。
【0048】
なお、制御電流が出力されないと、電磁方向切換弁38は作動せず、再生弁37へのパイロット圧油を送らない。これにより再生弁37も作動せず、アーム1速用コントロールバルブ33の戻り通路は遮断されなくて全開となる。
【0049】
なお、図3のS1ステップで電磁方向切換弁38に制御電流が出力されているか判定され、出力されていた場合はS4ステップとなるが、S4ステップでアームシリンダのボトム室側圧力Pcが第1の所定値P1より大きいか判定される。重掘削ではPcはP1より大きいので、S5ステップとなる。
【0050】
つぎにS5ステップにおいては、電磁方向切換弁38の作動を止めるべく電磁方向切換弁38への制御電流出力を停止する。S5ステップから戻ってS1ステップとなるが、制御電流は出力されていないのでS2ステップとなり、アームシリンダのボトム室側圧力Pcが第2の所定値P2より小さいか判定される。重掘削ではPcはP2より小さくないので、S1ステップに戻り、出力されないままとなる。これにより、タンクへ戻る圧油が再生弁で少しも絞られることなく、また再生手段のハンチングに依る操作不良も防止できる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、実施例1のパイロット方向切換弁39の代りにパイロット圧力センサ64を追加して、コントローラの中でアーム引き操作時のみ再生を可能としたものである。図4は本発明の実施例2に係る本発明の第2の油圧回路図であり、図4中、図2に示した部材と同等のものには同じ符号を付している。
【0052】
図4において、64はアーム用リモコン弁62のアーム引きパイロット圧力Ppを検出する圧力センサで、この圧力センサ64からの圧力信号がコントローラ63に送られ、このコントローラ63から電磁方向切換弁38に再生を制御するための制御電流が送られる。
【0053】
図5は第2の油圧回路図でのコントローラの作用を示すフローチャートであり、図5に従って、実施例1と異なるところを以下に説明する。主な差異は図5のS11ステップが追加されたことである。
【0054】
図5のS11ステップにおいて、アーム引きパイロット圧力Ppが、パイロット圧の所定値Pp1より大きいか判定される。ここにおいてパイロット圧の所定値Pp1はアーム引き操作がなされたかどうかを判定する値であり、大きければアーム引き操作がなされている。
【0055】
S11ステップにおいて、アーム引きパイロット圧力Ppが、パイロット圧の所定値Pp1より大きければS13ステップとなるが、S11ステップ以降は図3のS1ステップ以降と内容は全く同じである
【0056】
また、図5のS11ステップにおいて、アーム引きパイロット圧力Ppが、パイロット圧の所定値Pp1より大きくなければS12ステップとなるが、S12ステップにおいては、電磁方向切換弁38への制御電流出力を停止する。
【0057】
実施例2において、アームシリンダに依る軽掘削が行われると、図5のS11ステップにおいて、アーム引きパイロット圧力Ppが、パイロット圧の所定値Pp1より大きいかどうか判定される。軽掘削ではPpはPp1より大きいので、S13ステップとなる。
【0058】
つぎに、図5のS13ステップで電磁方向切換弁38に制御電流が出力されているか判定され、出力されていなければS15ステップでアームシリンダのボトム室側圧力Pcが第2の所定値P2より小さいか判定される。軽掘削ではPcはP2より小さいので、S16ステップに進み、電磁方向切換弁38に制御電流を出力する。
【0059】
図4において、電磁方向切換弁38は、パイロットポンプ23からパイロット圧油の供給を受け、コントローラからの制御電流を受けて、再生弁37へパイロット圧油を送る。これにより、再生弁37はアーム1速用コントロールバルブ33の戻り通路を遮断する。
【0060】
再生弁37により遮断された戻り油は、全量逆止弁40を経由してアーム1速用コントロールバルブ33のポンプ側へ供給される。
【0061】
上記の如く、図5のS16ステップにおける制御電流の出力により再生状態になって、図5のS11ステップに戻る。S11ステップにおいて、アーム引きパイロット圧力Ppが、パイロット圧の所定値Pp1より大きいか判定される、大きいのでS13ステップとなり、S13ステップで電磁方向切換弁38に制御電流が出力されているか判定される。
【0062】
S13ステップでは、再生されて制御電流が出力されているため、S14ステップとなる。S14ステップにおける判定では、軽掘削のため、アームシリンダのボトム室側圧力Pcは第1の所定値P1より大きくないので、Noとなって戻り、そのまま再生状態が続く。これにより、タンクへ戻る圧油が再生弁で絞られて熱に変わる絞りロスは皆無となり、再生手段のハンチングに依る操作不良も防止できる。
【0063】
つぎに、実施例2において、アームシリンダに依る重掘削が行われると、図5のS11ステップにおいて、アーム引きパイロット圧力Ppが、パイロット圧の所定値Pp1より大きいか判定される。重掘削ではPpはPp1より大きいので、S13ステップとなる。
【0064】
つぎに、図5のS13ステップで電磁方向切換弁38に制御電流が出力されているか判定され、出力されていなければS15ステップでアームシリンダのボトム室側圧力Pcが第2の所定値P2より小さいか判定される。重掘削ではPcはP2より小さくないので、S11ステップに戻り、出力されないままとなる。
【0065】
なお、制御電流が出力されないと、電磁方向切換弁38は作動せず、再生弁37へのパイロット圧油を送らない。これにより再生弁37も作動せず、アーム1速用コントロールバルブ33の戻り通路は遮断されなくて全開となる。
【0066】
なお、図5のS13ステップで電磁方向切換弁38に制御電流が出力されているか判定され、出力されていた場合はS14ステップとなるが、S14ステップでアームシリンダのボトム室側圧力Pcが第1の所定値P1より大きいか判定される。重掘削ではPcはP1より大きいので、S12ステップとなる。
【0067】
このS12ステップにおいては、電磁方向切換弁38の作動を止めるべく電磁方向切換弁38への制御電流出力を停止する。S12ステップから戻ってS11、S13ステップとなるが、制御電流は出力されていないのでS14ステップとなり、アームシリンダのボトム室側圧力Pcが第2の所定値P2より小さいか判定される。重掘削ではPcはP2より小さくないので、S11ステップに戻り、出力されないままとなる。これにより、タンクへ戻る圧油が再生弁で少しも絞られることなく、また再生手段のハンチングに依る操作不良も防止できる。
【0068】
以上より、油圧ショベルにおけるシリンダの再生回路において、再生時に一部の戻り油を絞りながらタンクに逃がすことなく、戻り油を全量再生する再生手段を備えて、絞りによる熱エネルギロスを解消すると共に、再生手段において、シリンダのボトム室側圧力Pcに対する第1、第2の所定値を採用できる回路とすることにより、再生手段のハンチングによる操作不良を防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 掘削アタッチメント
5 キャビン
6 ブーム
7 アーム
8 バケット
9 ブームシリンダ
10 アームシリンダ
11 バケットシリンダ
12 旋回モータ
21 第1油圧ポンプ
22 第2油圧ポンプ
23 パイロットポンプ
24、25 ポンプレギュレータ
31 旋回用コントロールバルブ
32 ブーム2速用コントロールバルブ
33 アーム1速用コントロールバルブ
34 バケット用コントロールバルブ
35 ブーム1速用コントロールバルブ
36 アーム2速用コントロールバルブ
37 再生弁
38 電磁方向切換弁
39 パイロット方向切換弁
40 逆止弁
41、41 タンデム回路
43、44 パラレル回路
45、46 ネガコン圧回路
47 アーム引きパイロットライン
51、52 ネガコン絞り
53、54 絞り
61 圧力センサ
62 アーム用リモコン弁
63 コントローラ
64 パイロット圧力センサ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム、アーム、バケット及び前記ブームを駆動するブームシリンダ、前記アームを駆動するアームシリンダ、前記バケットを駆動するバケットシリンダを備え、この各シリンダを含む複数の油圧アクチュエータに対応した複数のコントロールバルブが設けられ、前記油圧アクチュエータを制御するコントロールバルブからの戻り油を前記油圧アクチュエータの供給側に再生する再生手段と、前記油圧アクチュエータに供給される圧油の圧力を検出する検出手段と、前記再生手段をコントロールするコントローラを備えた油圧ショベルの油圧回路において、再生中に前記圧油の圧力がこれよりも大きいと再生を解除する第1の所定値と、再生解除中に前記圧油の圧力がこれよりも小さいと再生を開始する第2の所定値の複数の所定値を用いて前記再生手段を制御するように構成したことを特徴とする油圧ショベルの油圧回路。
【請求項2】
前記再生手段は前記コントロールバルブからの戻り油を開閉する再生弁と、前記コントロールバルブと前記再生弁を結ぶ戻り流路とポンプ側流路とを連絡する流路上に設けられ、前記戻り流路の圧力が前記ポンプ側流路の圧力よりも高いときに戻り流路からポンプ側流路への圧油の流入を許容する逆止弁と、前記再生弁を制御する電磁方向切換弁と、前記電磁方向切換弁へのパイロット圧油を制御するパイロット方向切換弁とを備え、前記検出手段は前記油圧アクチュエータに供給される圧油の圧力を電気信号に変換する圧力センサであり、前記圧力センサから電気信号を受けた前記コントローラは、前期再生手段が再生中か解除中かを前記再生弁を制御する前記電磁方向切換弁への制御電流で判定し、解除中で前記圧油の圧力が前記第2の所定値より小さければ再生開始の制御電流を出力し、再生中で前記圧油の圧力が前記第1の所定値より大きければ再生停止のため制御電流の出力を停止することを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルの油圧回路。
【請求項3】
前記再生手段は前記コントロールバルブからの戻り油を開閉する再生弁と、前記コントロールバルブと前記再生弁を結ぶ戻り流路とポンプ側流路とを連絡する流路上に設けられ、前記戻り流路の圧力が前記ポンプ側流路の圧力よりも高いときに戻り流路からポンプ側流路への圧油の流入を許容する逆止弁と、前記再生弁を制御する電磁方向切換弁と、操作レバーからのパイロット圧を検出するパイロット圧力センサとを備え、前記検出手段は前記油圧アクチュエータに供給される圧油の圧力を電気信号に変換する圧力センサであり、前記コントローラは、前記パイロット圧力センサの電気信号で操作レバーの操作が確認されると、前期再生手段が再生中か解除中かを前記再生弁を制御する前記電磁方向切換弁への制御電流で判定し、前記圧力センサからの電気信号も受けて、解除中で前記圧油の圧力が前記第2の所定値より小さければ再生開始の制御電流を出力し、再生中で前記圧油の圧力が前記第1の所定値より大きければ再生停止のため制御電流出力を停止することを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルの油圧回路。
【請求項4】
前記第2の所定値は前記第1の所定値よりも大幅に小さく、概略、前記シリンダの内径を直径とする円の面積に対するロッド径を直径とする円の面積の比を前記第1の所定値に乗算した値、またはもう少し小さいことを特徴とする請求項1〜3記載の油圧ショベルの油圧回路。

【請求項5】
前記油圧アクチュエータは油圧ショベルのアームシリンダであることを特徴とする請求項1〜4記載の油圧ショベルの油圧回路。



























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−12821(P2012−12821A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149761(P2010−149761)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(709006552)
【Fターム(参考)】