説明

油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。

【課題】発電周波数を充分に制御することができ、余剰排気ガスエネルギの回収に極めて優れたものとし、また、油圧ポンプや発電機の回転数を過給機の作動の影響を強く受けることなく制御することができ、システム設計の自由度に優れたものにする。
【解決手段】過給機5を有するディーゼル1又はガスエンジンと、過給機の上流側からエンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービン10と、このパワータービンにより回転駆動される油圧ポンプ12と、この油圧ポンプにより回転駆動される第1の発電機15と、油圧ポンプの負荷を制御する油圧ポンプ負荷制御手段12とを備え、ポンプ負荷制御手段は、パワータービンの回転数が略一定になるように油圧ポンプの作動を制御する。ポンプ負荷制御手段は、可変容量型油圧ポンプと、第1の発電機の発電周波数に基づいて油圧ポンプの負荷を調節するコントローラとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワータービンを備えたディーゼルエンジン又はガスエンジンの、油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、船舶用又は発電用のディーゼルエンジンやガスエンジンでは、過給機(ターボチャージャ)により、エンジンの排気ガスによってタービンを回転駆動し、このタービンにより回転される圧縮機によって給気密度を高めて、エンジンの出力向上を図っている。
【0003】
しかしながら、このように過給機を取り付けて排気エネルギの有効利用を図ったとしても、エンジンの高負荷時には排気エネルギが十分にあり、この余剰排気エネルギを無駄なく利用することが、燃費向上のみならず、環境保護の面からも強く要請されている。
【0004】
このエンジンの余剰排気エネルギを有効利用するものとして、上述の過給機に減速機を介して油圧ポンプを連結し、過給機によって油圧ポンプを回転駆動させて、油圧より余剰排気エネルギを回収するシステムが開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、エンジンの余剰排気エネルギを有効利用する他のシステムとして、上述の過給機に発電機を連結し、その発電機により発電して余剰排気エネルギを回収するシステムが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−242051号公報(第1図)
【特許文献2】特開2008−111384号公報(第1図)
【特許文献3】特開2004−346803号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の過給機に減速機を介して油圧ポンプを連結し、この油圧ポンプが発生した油圧より余剰排気エネルギを回収するシステム(例えば、特許文献1及び2参照)、あるいは、上述の過給機に発電機を連結し、その発電機により発電して余剰排気エネルギを回収するシステム(例えば、特許文献3参照)においては、いずれも過給機によって油圧ポンプや発電機を回転駆動するため、過給機本来の機能と連動した、つまり過給機の影響を強く受けたシステムとなり、余剰排気エネルギの回収を行なう油圧ポンプや発電機について、システム設計の自由度において困難性があるという問題がある。
【0008】
また、発電機を過給機とは別のパワータービン(排気タービン)に連結し、これにより発電させることも考えられるが、パワータービンに必要な排気ガスを過給機の後流側のエンジン排気路から導入した場合、同様に過給機の影響を強く受けたシステムとなり、上述と同様の問題が発生する可能性がある。
【0009】
さらに重要な問題として、パワータービンに単に発電機を取り付けただけでは、所謂吹きっぱなしのシステムとなり、これでは発電機の発電周波数がエンジン負荷により変動してしまうため、余剰排気ガスエネルギの回収において優れたものにはなっていないということがある。
【0010】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、余剰排気エネルギの回収を行なう油圧ポンプや発電機について回転数を過給機の作動の影響を強く受けることなく制御することができ、システム設計の自由度に優れると共に、発電機の発電周波数を確実に制御することができ、余剰排気ガスエネルギの回収という点において極めて優れる、油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムが採用する第1の手段は、排気ガスにより回転駆動されて給気を過給する過給機を有するディーゼル又はガスエンジンと、過給機の上流側からエンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービンと、パワータービンに連結されてパワータービンにより回転駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプに連結されて油圧ポンプにより回転駆動される第1の発電機と、油圧ポンプの負荷を制御する油圧ポンプ負荷制御機構とを備えた油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムにおいて、油圧ポンプ負荷制御機構は、パワータービンの回転数がほぼ一定になるように上記油圧ポンプの作動を制御することにある。
【0012】
このように、油圧ポンプ負荷制御機構によって油圧ポンプの負荷を制御し、パワータービンの回転数をほぼ一定に制御するから、発電機は一定周波数の電力を発生させることができ、また、電力と油圧の双方で余剰排気ガスエネルギを回収できるから、余剰排気ガスエネルギの回収において極めて優れたものとなる。
【0013】
また、過給機の上流側からエンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービンを採用することにより、過給器の作動の影響を受けにくいシステムを形成することができ、システム設計の自由度に優れたものとなる。
【0014】
上記第1の手段の油圧ポンプ負荷制御機構は、可変容量型である油圧ポンプと、油圧ポンプと発電機とに接続されて発電機の発電周波数を検出すると共に、その発電周波数に基づいて油圧ポンプの負荷を調節するコントローラとからなることが望ましい。
【0015】
このようにすることにより、極めて簡便な機構によりパワータービンの回転数をほぼ一定に制御することができ、例えば制動抵抗器、負荷抵抗器等の他の制御方式に比べて、コスト的にも極めて有利である。因みに、制動抵抗器や負荷抵抗器による制御の場合には熱エネルギとして放出され、これらはエネルギ損失となる。
【0016】
上述の課題を解決するために、本発明の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムが採用する第2の手段は、排気ガスにより回転駆動されて給気を過給する過給機を有するディーゼル又はガスエンジンと、過給機の上流側からエンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービンと、パワータービンに連結されてパワータービンにより回転駆動される第1の発電機と、発電機により発電された電力により回転駆動される電動モータと、電動モータに連結されて電動モータにより回転駆動され油圧を発生させる油圧ポンプと、油圧ポンプの負荷を制御する油圧ポンプ負荷制御装置とを備えた油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムにおいて、油圧ポンプ負荷制御機構は、パワータービンの回転数がほぼ一定になるように上記油圧ポンプの作動を制御することにある。
【0017】
このように、過給機の上流側からエンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービンを採用することにより、過給器の作動の影響を強く受けないシステムを形成することができ、システム設計の自由度に優れたものとなる。
【0018】
また、発電機により発電された電力により油圧ポンプを回転させ、この油圧ポンプは、油圧ポンプ負荷制御機構によってその負荷が制御されるから、パワータービンの回転数をほぼ一定に制御することができ、発電機は一定周波数の電力を発生させることができる。さらに、電力と油圧の双方で余剰排気ガスエネルギを回収できるから、余剰排気ガスエネルギの回収において優れたものとなる。
【0019】
上記第2の手段のポンプ負荷制御機構は、第1の発電機と電動モータとの間に介在して発電機の発電周波数に基づいて第1の発電機から電動モータへ供給される電力を制御して油圧ポンプの負荷を制御するコントローラからなることが望ましい。
【0020】
このようにすることにより、極めて簡便な機構によってパワータービンの回転数をほぼ一定に制御することができ、例えば制動抵抗器、負荷抵抗器等の他の方式に比べて、コスト的にも極めて有利である。因みに、制動抵抗器や負荷抵抗器を使用した場合には熱エネルギとして放出され、エネルギの損失となる。
【0021】
上記1又は2の手段において、油圧ポンプ負荷制御機構は、発電機の負荷遮断などの緊急時にパワータービンの回転数が所定回転数を超えないように油圧ポンプの負荷を調節することが望ましい。このようにすることにより、パワータービンや発電機のオーバースピードを防止することができる。
【0022】
上記1又は2の手段において、エンジンは船舶の推進用主エンジンであると共に、上記発電機は船舶の船内電力母線へ電力を供給する油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムであって、第1の発電機とは別の第2の発電機と、第2の発電機を回転駆動させて船内電力母線へ電力を供給する補助エンジンと、第1の発電機と第2の発電機とから供給される電力を切り替える配電盤とをさらに備え、この配電盤は、第1の発電機による船内電力母線への電力供給時に第2の発電機による船内電力母線への電力供給を停止することが望ましい。このようにすることにより、主エンジンの余剰排気エネルギをさらに有効に利用することができると共に、補助エンジンの燃費を大幅に向上させることができる。
【0023】
上記1又は2の手段において、油圧ポンプが発生した油圧により回転駆動される油圧モータをさらに備え、油圧モータは、エンジンのクランク軸に連結されてエンジンの回転を補助することが望ましい。このようにすることより、制動抵抗器、負荷抵抗器等の他の方式に比べて、油圧により回収した余剰排気エネルギをさらに無駄なく利用することでできる。
【0024】
上記油圧モータは、可変容量型からなることが望ましい。このようにすることにより、油圧出力側の負荷に応じて極めて簡便な機構により出力回転数を変化させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のエンジンの油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムは、排気ガスにより回転駆動されて給気を過給する過給機を有するディーゼル又はガスエンジンと、過給機の上流側からエンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービンと、パワータービンに連結されてパワータービンにより回転駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプに連結されて油圧ポンプにより回転駆動される第1の発電機と、油圧ポンプの負荷を制御する油圧ポンプ負荷制御機構とを備えた油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムにおいて、油圧ポンプ負荷制御機構は、パワータービンの回転数がほぼ一定になるように上記油圧ポンプの作動を制御する。
【0026】
又は、本発明の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムは、排気ガスにより回転駆動されて給気を過給する過給機を有するディーゼル又はガスエンジンと、過給機の上流側からエンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービンと、パワータービンに連結されてパワータービンにより回転駆動される第1の発電機と、発電機により発電された電力により回転駆動される電動モータと、電動モータに連結されて電動モータにより回転駆動され油圧を発生させる油圧ポンプと、油圧ポンプの負荷を制御する油圧ポンプ負荷制御装置とを備えた油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムにおいて、油圧ポンプ負荷制御機構は、パワータービンの回転数がほぼ一定になるように上記油圧ポンプの作動を制御する。
【0027】
したがって、余剰排気エネルギの回収を行なう油圧ポンプや発電機について、回転数を過給機の作動の影響を強く受けることなく制御することができ、システム設計の自由度に優れにと共に、発電機の発電周波数を充分に制御することができ、余剰排気ガスエネルギの回収において極めて優れる、という格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムの第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1のパワータービンの回転数制御システムの油圧の作動を示す回路図である。
【図3】本発明の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムの第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図4】図3のパワータービンの回転数制御システムの油圧の作動を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムを実施するための第1の形態を、図1及び図2を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1の符号1は、一例としての、船舶に搭載される推進用の主ディーゼルエンジンを示し、この主エンジン1は、その排気ガスにより回転駆動されて給気をエンジン1へ過給する過給機5を有する。過給機5は圧縮機6とタービン7とからなり、圧縮機6とタービン7は回転軸8で連結される。エンジン1の排気ガスによりタービン7が回転駆動され、タービン7によって圧縮機6が回転する。これによりエンジンの給気密度が高められて、エンジン出力が向上する。
【0031】
なお、過給機5は必ずしもその段数が単段のものに限定されず、台数も1台に限定されるものではなく、複数台が配設されてもよい。また、エンジンは船舶用エンジンに限定されず、また、形式はディーゼルエンジンのほか、天然ガス、都市ガス等を燃料とするガスエンジンであってもよい。
【0032】
過給機5の上流側からエンジン1の排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービン10と、このパワータービン10に減速機11を介して機械的に連結されて回転駆動される可変容量型の油圧ポンプ(油圧ポンプ負荷制御機構)12と、この油圧ポンプ12に機械的に連結されて回転駆動される第1の発電機15が配設される。第1の発電機15が発電した電力は、配電盤(切替器)22を通して船内電力母線23へ供給される。
【0033】
エンジン1には減速機17を介して容量可変型の油圧モータ18が連結され、上記油圧ポンプ12とこの油圧モータ18は、油路を通じて連結される。すなわち、油圧ポンプ12が発生した油圧により油圧モータ18は回転駆動され、油圧モータ18が減速機17を介してエンジン1を補助駆動することができる。上述の容量可変型の油圧モータ18としては、例えば、斜板式や斜軸式のピストンポンプなどがある。
【0034】
このように、油圧モータ18は、油圧ポンプ12が発生した油圧により回転駆動されてエンジン1を補助駆動するから、油圧ポンプ12により回収した余剰排気エネルギを無駄なく利用することでできる。また、油圧モータ18は可変容量型からなる。したがって、極めて簡便な機構により油圧出力側の負荷に応じてその出力回転数を変化させることができる。
【0035】
また、推進用主エンジン1の運転状態にかかわらず船内の電力を充分に確保することができるように、上述の推進用主エンジン1とは別に、発電用の補助エンジン20が配設される。補助エンジン20には第2の発電機21が連結され、補助エンジン20はこの発電機21を回転駆動させて発電を行い、配電盤22を通して船内電力母線23へ電力を供給する。
【0036】
補助エンジン20はその回転数を制御するためのガバニング機能を有し、第2の発電機21を一定回転数で回転駆動させることができ、一定周波数の電力を発生させることができる。配電盤22は、第1の発電機15からの電力供給と、第2の発電機21からの電力供給との切替えを行なうことができる。
【0037】
そして、配電盤22は、第1の発電機15による船内電力母線23への電力供給時に、第2の発電機21による船内電力母線23への電力供給を停止する。したがって、推進用主エンジン1の余剰排気エネルギを有効に利用することができると共に、補助エンジン20の燃費を大幅に向上させることができる。
【0038】
図2に示すように、上述の可変容量型の油圧ポンプ12及び可変容量型の油圧モータ18は、油圧機構30の中に組み込まれている。油圧ポンプ12が上述のパワータービン10により変速機11を介して回転駆動されて、矢印で示す方向に高圧の油圧を発生させる。この油圧ポンプ12から吐出された作動油は、主油路31を通って油圧モータ18を回転駆動させた後、主油路32を通って油圧ポンプ12へ戻る。
【0039】
第1の発電機15及び油圧ポンプ12に電気的に接続されたコントローラ(油圧ポンプ負荷制御機構)25が配設される。このコントローラ25は、第1の発電機15の発電周波数を検出しその発電周波数に基づいて、パワータービン10の回転数と、このパワータービン10に油圧ポンプ12、減速機11を介して連結された第1の発電機15の回転数がそれぞれほぼ一定になるように、すなわち、第1の発電機15の発電周波数が船舶での使用に適した一定周波数になるように、油圧ポンプ12からの作動油の吐出量を制御する。また、可変容量型の油圧モータ18は、所定圧力で回転するように制御される。
【0040】
電動モータ33が油圧ポンプ34を回転し、タンク35内の作動油をチェック弁36,37を介して主油路31,32へ供給する。油圧ポンプ12の吐出圧が高すぎる場合には、作動油をリリーフ弁38を介して油圧ポンプ12の入口側へ逃がす。主油路31の作動油の一部は、分岐路39、リリーフ弁40を通ってタンク35へ戻る。2つのアキュムレータ41,42が主油路31,32の油圧の平滑化を行う。
【0041】
コントローラ25は、第1の発電機15の負荷遮断などの緊急時に、パワータービン10及び第1の発電機15の回転数が所定回転数を超えないように、油圧ポンプ12の負荷を調節する。したがって、第1の発電機15の負荷遮断などの緊急時に、パワータービン10や第1の発電機15のオーバースピードを確実に防止することができる。
【0042】
ここで、下記第2の形態に対する第1の形態の特長は、器機数が少なく、また、パワータービン10に連結された油圧ポンブ12によりパワータービン10の回転数を直接制御することができる点である。
【0043】
このように、上記油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムは、油圧ポンプ負荷制御機構によって油圧ポンプ12の負荷を制御し、パワータービン10の回転数をほぼ一定に制御するから、第1の発電機15は一定周波数の電力を発生させることができると共に、電力と油圧の双方で余剰排気ガスエネルギを回収できるから、余剰排気ガスエネルギの回収において極めて優れたものとなる。
【0044】
また、過給機5の上流側からエンジン1の排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービン10を採用することにより、過給器5の作動の影響を受けにくいシステムを形成することができ、システム設計の自由度に優れたものとなる。さらに、過給器5を通過しない高温の排気ガスによってパワータービン10を回転駆動するから、第1の発電機15の発電ポテンシャルや油圧モータ18の駆動ポテンシャルを高めることができる。
【0045】
これと共に、油圧ポンプ負荷制御機構は、可変容量型である油圧ポンプと、油圧ポンプと発電機とに接続されて発電機の発電周波数を検出すると共に、その発電周波数に基づいて油圧ポンプの負荷を調節するコントローラとからなるから、極めて簡便な機構によりパワータービンの回転数をほぼ一定に制御することができ、例えば制動抵抗器、負荷抵抗器等の他の制御方式に比べて、コスト的にも極めて有利である。また、これら他の制御方式に比べて、エネルギ損失が極めて少ない。
【0046】
次に、本発明に係る油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムを実施するための第2の形態を、図3及び図4を参照して詳細に説明する。ただし、上述の第1の形態と同一の構成要素は同一の符号をもって示し、第1の形態との相違部分のみを説明する。
【0047】
図3に示すように、パワータービン10に減速機11を介して機械的に連結されて回転駆動される第1の発電機50と、この第1の発電機50が発電した電力により回転する電動モータ52とが配設される。第1の発電機50と電動モータ52との間に、制御盤(コントローラ)51が配設される。第1の発電機50が発電した電力は、制御盤51、配電盤(切替器)22を介して船内電力母線23へ供給される。
【0048】
制御盤51は、第1の発電機50が発電した電力の一部を電動モータ52に供給し、電動モータ52を回転駆動させる。電動モータ52は機械的に連結された固定容量型の油圧ポンプ53を回転させ、油圧ポンプ53により油圧を発生させる。
【0049】
エンジン1には減速機17を介して容量可変型の油圧モータ18が連結され、上記油圧ポンプ53とこの油圧モータ18は、油路を通じて連結される。すなわち、油圧ポンプ53が発生した油圧により油圧モータ18は回転駆動され、油圧モータ18が減速機17を介してエンジン1を補助駆動する。
【0050】
このように、油圧モータ18は、油圧ポンプ53が発生した油圧により回転駆動されてエンジン1の回転を補助するから、油圧ポンプ53により回収した余剰排気エネルギを無駄なく利用することができる。また、油圧モータ18は可変容量型からなる。したがって、油圧出力側の負荷に応じて極めて簡便な機構により、その出力回転数を変化させることができる。
【0051】
図4に示すように、上述の固定容量型の油圧ポンプ53と可変容量型の油圧モータ18は、油圧機構60の中に組み込まれている。上述の第1の発電機50と電動モータ52とに電気的に接続された制御盤51はインバータ機能を有し、第1の発電機50の発電周波数を検出しその発電周数数に基づいて、パワータービン10と、このパワータービン10に減速機11を介して連結された第1の発電機50の回転数がほぼ一定になるように、すなわち、第1の発電機50の発電周波数が船舶での使用に適した一定周波数になるように、電動モータ52の回転数を制御して油圧ポンプ53からの作動油の吐出量を制御する。
【0052】
ここで、上記第1の形態に対する第2の形態の特長は、電気的な制御で船内母線周波数の制御が可能であり、また、補助エンジン20の停止時に主エンジン1の負荷が低下したときでも、油圧ポンプ53により電動モータ52を発電機として駆動し、不足電力を補うことにも利用できることである。
【0053】
このように、第1の発電機50により発電された電力により電動モータ52を介して油圧ポンプ53を回転させ、この油圧ポンプ53は、油圧ポンプ負荷制御機構によってその負荷が制御されるから、パワータービン10の回転数をほぼ一定に制御することができ、第1の発電機50は一定周波数の電力を発生させることができる。また、電力と油圧の双方で余剰排気ガスエネルギを回収できるから、余剰排気ガスエネルギの回収において優れたものとなる。
【0054】
さらに、油圧ポンプ負荷制御機構は、第1の発電機50と電動モータ52との間に介在し、第1の発電機50の発電周波数に基づいて第1の発電機50から電動モータ52へ供給される電力を制御して、油圧ポンプ53の負荷を制御する制御盤51からなるから、極めて簡便な機構によってパワータービン10の回転数をほぼ一定に制御することができ、例えば制動抵抗器、負荷抵抗器等の他の方式に比べてコスト的にも極めて有利である。また、これら他の方式による場合に比べてエネルギ損失が極めて少ない。その他は上述の第1の実施の形態と同様であるから、説明を省略する。
【0055】
なお、上述の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムは一例にすぎず、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムは、必ずしも上述の船舶又は発電用のディーゼルエンジンやガスエンジンに限定して利用されるものではなく、他の用途及び形式のエンジンにも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ディーゼルエンジン
5 過給機
6 圧縮機
7 タービン
8 回転軸
10 パワータービン
11 減速機
12 油圧ポンプ
15 第1の発電機
17 減速機
18 油圧モータ
20 補助エンジン
21 第2の発電機
22 配電盤
23 船内電力母線
25 コントローラ
30 油圧機構
31,32 主油路
33 電動モータ
34 油圧ポンプ
35 タンク
36,37 チェック弁
38 リリーフ弁
39 分岐路
40 リリーフ弁
41,42 アキュムレータ
50 第1の発電機
51 制御盤
52 電動モータ
53 油圧ポンプ
60 油圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスにより回転駆動されて給気を過給する過給機(5)を有するディーゼル(1)又はガスエンジンと、前記過給機の上流側から前記エンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービン(10)と、前記パワータービンに連結されて前記パワータービンにより回転駆動される油圧ポンプ(12)と、前記油圧ポンプに連結されて前記油圧ポンプにより回転駆動される第1の発電機(15)と、前記油圧ポンプの負荷を制御する油圧ポンプ負荷制御手段(12,25)とを備えた油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムにおいて、前記ポンプ負荷制御手段は、前記パワータービンの回転数が略一定になるように前記油圧ポンプの作動を制御することを特徴とする油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。
【請求項2】
前記油圧ポンプ負荷制御手段は、可変容量型である前記油圧ポンプ(12)と、前記油圧ポンプと前記発電機(15)とに接続されて前記発電機の発電周波数を検出すると共に前記発電周波数に基づいて前記油圧ポンプの負荷を調節するコントローラ(25)とからなることを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。
【請求項3】
排気ガスにより回転駆動されて給気を過給する過給機(5)を有するディーゼル(1)又はガスエンジンと、前記過給機の上流側から前記エンジンの排気ガスを導入して回転駆動されるパワータービン(10)と、前記パワータービンに連結されて前記パワータービンにより回転駆動される第1の発電機(50)と、前記第1の発電機により発電された電力により回転駆動される電動モータ(52)と、前記電動モータに連結され前記電動モータにより回転駆動されて油圧を発生させる油圧ポンプ(53)と、前記油圧ポンプの負荷を制御する油圧ポンプ負荷制御装置(51)とを備えた油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムにおいて、前記ポンプ負荷制御手段は、前記パワータービンの回転数が略一定になるように前記油圧ポンプの作動を制御することを特徴とする油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。
【請求項4】
前記ポンプ負荷制御手段は、前記第1の発電機(50)と前記電動モータ(52)との間に介在して前記発電機の発電周波数に基づいて前記第1の発電機から前記電動モータへ供給される電力を制御して前記油圧ポンプ(53)の負荷を制御するコントローラ(51)からなることを特徴とする請求項3に記載の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。
【請求項5】
前記油圧ポンプ負荷制御手段(12,25)は、前記第1の発電機(15)の負荷遮断などの緊急時に前記パワータービン(10)の回転数が所定回転数を超えないように前記油圧ポンプ(12)の負荷を調節することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。
【請求項6】
前記エンジンは船舶の推進用主エンジン(1)であると共に、前記第1の発電機(15,50)は前記船舶の船内電力母線(23)へ電力を供給する油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システムであって、前記第1の発電機とは別の第2の発電機(21)と、前記第2の発電機を回転駆動させて前記船内電力母線へ電力を供給する補助エンジン(20)と、前記第1の発電機と前記第2の発電機とから前記船内電力母線へ供給される電力を切り替える切替器(22)とをさらに備え、前記切替器は、前記第1の発電機による前記船内電力母線への電力供給時に前記第2の発電機による前記船内電力母線への電力供給を停止することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。
【請求項7】
前記油圧ポンプ(12,53)が発生した油圧により回転駆動される油圧モータ(18)をさらに備え、前記油圧モータは、前記エンジン(1)のクランク軸に連結されて前記エンジンの回転を補助することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。
【請求項8】
前記油圧モータ(18)は、可変容量型からなることを特徴とする請求項7に記載の油圧ポンプによるパワータービンの回転数制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−202611(P2011−202611A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71633(P2010−71633)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】