説明

油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法

【課題】油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を処理すること、下水、公共水域に放流するに適した水質を得ることの少なくとも1つを達成する、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法とその処理装置ならびに、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理用添加剤と油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を分解する細菌を提供すること。
【解決手段】特定の細菌からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の細菌と、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液とを接触させることを特徴とする油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法とその処理装置ならびに、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の細菌、微生物培養物および添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品製造で生じる排水などの廃液は、例えば、油脂、αデンプンおよびβデンプンを多量に含む。従来、油脂は、細胞外に分泌されない膜結合型の油脂分解酵素を産生するシュードモナス(Pseudomonas sp.)を用いること(例えば、特許文献1を参照)、油脂分解能を有する新菌株シュードモナス セパシア LM2−1を用いること(例えば、特許文献2を参照)などにより処理されている。αデンプンは、特別な処理なしでも空気中の細菌などにより分解されている。βデンプンは、直接処理することができない。これらは、各成分のみを処理する方法である。冷凍食品製造で生じる排水などの廃液においては、油脂とαデンプンとβデンプンとが混合して存在しており、一度にこれらを処理する方法が必要とされた。しかし、これまでに、油脂とαデンプンとβデンプンの全てを一度に処理する方法は存在しなかった。
【0003】
一方、有機物含有廃液の処理方法としては、アルカリジェネス(Alcaligenes)属に属する細菌、スフィンゴバクテリウム(Sphingobacterium)属に属する細菌、シェバネラ アルゲ(Shewanella algae)細菌、ロドバクター(Rhodobacter)属に属する細菌、マイクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)細菌、パラコッカス(Paracoccus)属に属する細菌、ボセア チオオキシダンス(Bosea thiooxidans)細菌、およびパラコッカス ベルスタス(Paracoccus verustus)細菌からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の細菌を含有した活性汚泥と、有機物含有廃液とを接触させることを特徴とする有機物含有廃液の処理方法が、開示されている(例えば、特許文献3を参照)。しかし、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理に、より特化した処理方法が求められている。
【特許文献1】特開2001−178451号公報
【特許文献2】特開平11−47789号公報
【特許文献3】国際公開第2006/115199号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、1つの側面では、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を処理すること、下水、公共水域に放流するに適した水質を得ることの少なくとも1つを達成する、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法とその処理装置ならびに、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の添加剤と油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を分解する細菌を提供することに関する。また、本発明は、他の側面では、油脂とαデンプンとβデンプンとを含有した廃液中で安定的に維持されること、廃液中の油脂とαデンプンとβデンプンの成分を分解することの少なくとも1つを達成する、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理用の微生物培養物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の細菌と、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液とを接触させることを特徴とする油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法、
〔2〕 〔1〕記載の方法に用いるための装置であって、キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の細菌を含有した活性汚泥を含む処理槽と、該処理槽内で油脂、αデンプン、およびβデンプンが分解された廃液を液中膜でろ過する手段とを備えた、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理装置、
〔3〕 〔1〕記載の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法において使用される、マグネシウム化合物、ケイ素化合物および細菌培養の栄養剤を含む、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理用添加剤、
〔4〕 キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌を含有してなる、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の微生物培養物、ならびに
〔5〕 キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌からなる群より選ばれる細菌であって、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を分解する性質を有する細菌、に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法及び油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理装置、ならびにそれらに用いられる油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の細菌、微生物培養物、または添加剤によれば、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を、高い効率と高い処理速度で、処理することができ、下水、公共水域に放流するに適した水質を少なくとも得ることができるという優れた効果を奏する。また、本発明の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の微生物培養物によれば、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液中で安定的に維持され、油脂とαデンプンとβデンプンの成分を分解することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法及び油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理装置においては、特定の細菌、すなわち、キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の細菌(以下、本明細書において言及する「細菌」という用語は、特段の説明の無い限り、これらの細菌を意味する)が使用される。また、本発明で用いるこれらの細菌は油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を分解する性質を有する細菌である。なお、本発明において、「油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液」は、以下「廃液」と呼ぶことがある。
【0008】
本発明は、細菌と、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を接触させることを特徴とする、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法及びその廃液の処理装置に関する。また、本発明では廃液の処理用添加剤を用いて処理を行なう方法及び装置であってもよい。
【0009】
また、本発明は、細菌として該細菌を含有する活性汚泥を用いてもよい。
【0010】
本発明の「下水、公共水域に放流するに適した水質」は、地域等により基準が異なる場合もあるが、例えば、2005年時点における日本国岐阜県大垣市の下水放流基準〔pH:5.0〜9.0、BOD:(河川放流BOD+2×懸濁浮遊物質量) 600mg/L以下、全窒素量 240mg/L以下、全リン量 32mg/L以下〕の条件を満たす水質等が挙げられる。
【0011】
細菌による油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の資化は、例えば、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液について、処理前後において、生物化学的酸素要求量(BOD)および化学的酸素要求量(COD)を測定し、処理前の値と処理後の値とを比較することにより評価される。なお、処理後の処理水におけるBODおよびCODそれぞれが、処理前の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液におけるBODおよびCODそれぞれに比べ、減少した場合、細菌が、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を資化しうることの指標となる。
【0012】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液としては、例えば、食品加工工場排水等が挙げられ、具体的には、米粉、米飯洗浄水、および冷凍食品製造で生じる排水からなる群より選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0013】
キサンソモナス属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、KENMI19が挙げられる。また、KENMI19の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:1に示される塩基配列である。なお、KENMI19は、「KENMI19」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21182(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0014】
サウエラ属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、06AUG17−1が挙げられる。また、06AUG17−1の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:2に示される塩基配列である。なお、06AUG17−1は、「06AUG17−1」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21199(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0015】
ロドコッカス属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、06AUG17−16が挙げられる。また、06AUG17−16の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:3に示される塩基配列である。なお、06AUG17−16は、「06AUG17−16」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21202(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0016】
マイクロバクテリウム属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、KENMI17が挙げられる。また、KENMI17の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:4に示される塩基配列である。なお、KENMI17は、「KENMI17」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21181(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0017】
スフィンゴモナス属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、KENMI3が挙げられる。また、KENMI3の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:5に示される塩基配列である。なお、KENMI3は、「KENMI3」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21175(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0018】
ロイコバクター属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、KENMI7が挙げられる。また、KENMI7の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:6に示される塩基配列である。なお、KENMI7は、「KENMI7」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21177(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0019】
ボルデテラ属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、KENMI10が挙げられる。また、KENMI10の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:7に示される塩基配列である。なお、KENMI10は、「KENMI10」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21178(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0020】
マリノバクテリウム属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、KENMI4が挙げられる。また、KENMI4の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:8に示される塩基配列である。KENMI4は、「KENMI4」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21176(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0021】
レインヘイメラ属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、KENMI27が挙げられる。また、KENMI27の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:9に示される塩基配列である。なお、KENMI27は、「KENMI27」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21183(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0022】
メソリゾビウム属に属する細菌としては、より具体的には、例えば、KENMI16が挙げられる。また、KENMI16の16S rDNAの塩基配列は、配列番号:10に示される塩基配列である。なお、KENMI16は、「KENMI16」と命名・表示され、受託番号:FERM P−21180(受託日:2007年2月5日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0023】
本発明の1つの態様としては、細菌が、KENMI19(受託番号:FERM P−21182)、06AUG17−1(受託番号:FERM P−21199)、06AUG17−16(受託番号:FERM P−21202)、KENMI17(受託番号:FERM P−21181)、KENMI3(受託番号:FERM P−21175)、KENMI7(受託番号:FERM P−21177)、KENMI10(受託番号:FERM P−21178)、KENMI4(受託番号:FERM P−21176)、KENMI27(受託番号:FERM P−21183)、およびKENMI16(受託番号:FERM P−21180)からなる群より選ばれることが好ましい。
【0024】
本発明の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理装置及び油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理用添加剤においては、細菌は、処理対象となる油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液により変動する場合があり、特に限定されるものではなく、効率的処理を行なう観点から、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液 1mLに対して、希釈法で測定して細菌数が好ましくは1×106CFU以上、より好ましくは1×107CFU以上であることが望ましく、また、飽和量程度までであることが望ましい。なお、細菌の数は、検水または各段階の希釈検水について試験した平板のうち、計数対象集落が平板1枚あたり30〜300CFU形成された平板について計数し、下記式:
【0025】
【数1】

【0026】
(式中、N1、N2、N3、・・・Nnは、それぞれ各平板の集落数(CFU)を示し、nは、平板の枚数を示し、Vは、検水又は希釈検水の量(mL)を示し、mは、検水の希釈倍数を示す)
により算出される。
【0027】
混合物又は活性汚泥中における、細菌の存在比(細胞数比)は、流入原水の水質、滞留時間、バッキ状態等により異なるが、同程度であることが望ましい。
【0028】
本発明の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法においては、微生物培養物を単独で、あるいは別々に培養して得られた微生物培養物を複数用いて、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と混合することで、あるいは活性汚泥中で本発明で用いる所望の細菌を培養してもよい。
【0029】
本発明は、別の側面では、キサンソモナス属に属する細菌、サウエラ属に属する細菌、ロドコッカス属に属する細菌、マイクロバクテリウム属に属する細菌、スフィンゴモナス属に属する細菌、ロイコバクター属に属する細菌、ボルデテラ属に属する細菌、マリノバクテリウム属に属する細菌、レインヘイメラ属に属する細菌、およびメソリゾビウム属に属する細菌を含有してなる、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の微生物培養物に関する。
【0030】
本発明の廃液処理用の微生物培養物の一態様としては、KENMI19と06AUG17−1と06AUG17−16とKENMI17とKENMI3とKENMI7とKENMI10とKENMI4とKENMI27とKENMI16とを含有した混合物が挙げられ、これらを活性汚泥の代わりとして用いてもよい。
【0031】
培養における炭素源としては、グルコース、肉抽出物、ペプトン等が挙げられる。窒素源としては、NH4Cl、(NHSO、肉抽出物、ペプトン等が挙げられる。
【0032】
KENMI19、06AUG17−1、06AUG17−16、KENMI17、KENMI3、KENMI7、KENMI10、KENMI4、KENMI27、およびKENMI16の各培養物は、例えば、好ましくは1〜3重量%、より好ましくは1〜1.6重量%の炭素源を含有することが望ましい。また、培養物は、例えば、好ましくは0.5〜2重量%、より好ましくは0.5〜0.8重量%の窒素源を含有することが望ましい。培養物における炭素源/窒素源量比(C/N比)が、好ましくは40/1〜3/1、より好ましくは10/1〜3/1、特に好ましくは6/1〜3.5/1であり、好ましくはpH7〜8.9、より好ましくはpH7〜8の培地で、好ましくは27℃〜38℃、より好ましくは30℃で、好ましくは3〜7日間、より好ましくは4〜5日間、好ましくは17〜30ストローク/分、より好ましくは20〜25ストローク/分で、細菌を培養することにより得られる。培地としては、例えば、微量(0.01〜0.05重量%)のDMSOを含有したニュートリエントブロス−グルコース液体培地(組成:0.8重量% ニュートリエントブロス、0.8重量% グルコース、0.1%重量 乾燥酵母エキス、pH7)等が挙げられる。
【0033】
なお、本発明の微生物培養物は、多孔質物質等からなる担体等に細菌を固定させたものであってもよい。また、細菌それぞれを、別々の担体に固定させたものの混合物であってもよい。
【0034】
本発明の処理方法において、細菌による廃液の資化性を十分に発揮させる観点から、溶存酸素量(DO)が、2mg/L以上であることが好ましく、3mg/L以上であることがより好ましく、バルキング防止の観点及び異常発泡の防止の観点から、8mg/L以下であることが好ましく、7mg/L以下であることがより好ましく、6mg/L以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明の処理方法において、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の原廃液pHが、曝気槽内のpH維持の観点から、好ましくは3.5〜8.5、より好ましくは3.5〜7.0、さらに好ましくは4.5〜5.5に調整されることが望ましい。
【0036】
本発明の処理方法において、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と活性汚泥とを接触させる際の、廃液のpH、または廃液と活性汚泥との混合物のpHが、細菌により廃液を十分に資化させる観点から、好ましくは6.0〜9.0、より好ましくは6.5〜9.0、さらに好ましくは7.0〜8.5、さらにより好ましくは7.5〜8.0に調整されていることが望ましい。油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液のpHは、例えば、25重量% NaOH、18重量% H2SO4、3重量% HCl等により適宜調整される。
【0037】
本発明の処理方法において、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と活性汚泥とを接触させる際の、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の温度、または油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と活性汚泥との混合物の温度は、細菌により廃液を十分に資化させる観点から、好ましくは10℃〜60℃、より好ましくは25℃〜37℃であることが望ましい。なお、温度は、細菌による廃液の処理の進行に伴い上昇する場合もある。
【0038】
本発明の処理方法において、接触は、適切な処理槽、例えば、曝気槽等で行なわれうる。油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と、活性汚泥との接触を行なう処理槽内における酸化還元電位(ORP)は、還元剤の悪影響の観点から、好ましくは−100mV以上であり、より好ましくは0mV以上であることが望ましく、酸化剤の悪影響の観点から、好ましくは150mV以下であり、より好ましくは50mV以下であることが望ましい。かかるORPは、例えば、5重量% 過酸化水素水により調節される。
【0039】
曝気槽においては、細菌を含有した活性汚泥を用いる場合、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と活性汚泥との混合物を30分間静置して活性汚泥を沈降させた後の汚泥重量指標(SVI)としては、正常な活性汚泥管理の観点から、50から150程度の範囲であることが望ましい。
【0040】
本発明の処理方法において、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理用添加剤は、マグネシウム化合物、ケイ素化合物および細菌培養の栄養剤を含むことが好ましい。また、マグネシウム化合物、ケイ素化合物および細菌培養の栄養剤を含む廃液の処理用添加剤は、それぞれ粉末状のままで処理槽または活性汚泥にさらに添加されてもよい。このとき、マグネシウム化合物、ケイ素化合物および細菌培養の栄養剤は、ある割合に調整されて混合された状態で添加してもよいし、あるいは、別々に添加してもよい。
【0041】
本発明の処理方法は、細菌による廃液の資化を十分に行なう観点から、混合物中にマグネシウムイオンが存在することが好ましい。混合物中におけるマグネシウムイオン量は、処理効率促進及び細菌相維持の観点から、無水硫酸マグネシウムの含有量として換算して、好ましくは0.5mg/L(槽あたり)以上、より好ましくは2mg/L(槽あたり)以上であり、処理経費節減の観点から、好ましくは500mg/L(槽あたり)以下、より好ましくは100mg/L(槽あたり)以下、さらに好ましくは50mg/L以下であることが望ましく、これらの添加量は、一日あたりの量とすることもできる。マグネシウムイオンは、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等を、廃液の処理用添加剤に添加することにより供給されうる。なお、本発明において、混合物とは、細菌を含有した活性汚泥または微生物培養物、および廃液等を含んだものを指す。
【0042】
また、本発明の処理方法は、細菌による廃液の資化を十分に行なう観点から、混合物中にケイ酸が存在することが好ましい。混合物中におけるケイ酸の含有量は、処理効率促進及び細菌相維持の観点から、ケイ素の含有量として換算して、好ましくは0.1mg/L(槽あたり)以上、より好ましくは、1mg/L(槽あたり)以上であり、経費節減の観点から、好ましくは100mg/L(槽あたり)以下、より好ましくは70mg/L(槽あたり)以下、さらに好ましくは30mg/L(槽あたり)以下であることが望ましく、これらの添加量は、一日あたりの量とすることもできる。ケイ素化合物は、例えば、珪藻土、フライアッシュ、クリストバライト、火山岩、および黒曜石から選ばれる少なくとも1種類以上を、廃液の処理用添加剤に添加することにより供給されうる。
【0043】
加えて、細菌による廃液の資化(分解除去)を十分に行なう観点から、細菌培養の栄養剤の処理槽への添加量は、廃液1リットル当たりの細菌培養の栄養剤の重量添加量として、好ましくは0.05mg/L〜50mg/L、より好ましくは0.1mg/L〜20mg/L、さらに好ましくは1mg/L〜4mg/Lであることが望ましく、これらの添加量は、一日あたりの量とすることもできる。また、細菌培養の栄養剤は、例えば、ニュートリエントブロス、エルビーブロス、およびテルフィックブロスから選ばれる少なくとも一種類以上を、廃液の処理用添加剤に添加することにより供給されうる。または、ゼラチン加水分解物、牛肉抽出物等を用いてもよい。
【0044】
本発明では、廃液の処理用添加剤は、マグネシウム化合物とケイ素化合物の総重量に対する細菌培養の栄養剤の重量比率が(細菌培養の栄養剤の重量)/(マグネシウム化合物の重量+ケイ素化合物の重量)=8.0×10−5〜2.0×10の範囲に調整されることが望ましく、これらを一日あたりの量とすることができる。
【0045】
本発明の処理方法において、処理槽は、廃液中の油脂とαデンプンとβデンプンとを分解する槽のことをいい、例えば、本発明の細菌を含有した活性汚泥、または油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の添加剤などが用いられる槽のことをいう。具体的には、曝気槽などが処理槽として使用されるが、曝気槽は、1つまたは複数を使用してもよく、廃液を溜めておく原水槽と組み合わせてもよい。
【0046】
本発明の処理方法に用いられる液中膜は、特に限定は無いが、中空糸膜あるいは平膜が好ましい。
【0047】
本発明の処理方法において、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と、活性汚泥との接触後に、さらに液中膜で該廃液をろ過することが好ましい。
【0048】
本発明の処理方法に用いるための油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理装置は、特に限定されないが、本発明の細菌を含有した活性汚泥を含む処理槽と、該処理槽内で油脂、αデンプンおよびβデンプンが分解された廃液を液中膜でろ過する手段を備えた、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理装置であってもよい。
【0049】
本発明の処理装置において、溶存酸素量(DO)、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理用添加剤、原廃液のpH、処理槽として用いる曝気槽中の廃液のpH、温度、酸化還元電位(ORP)は前記の通りに行なってもよい。
【0050】
本発明によれば、活性汚泥との接触の際、曝気工程における滞留時間を短くすることができる。また、これにより、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を、より短時間で処理することができる。
【0051】
本発明の処理方法は、例えば、図1に示される処理プラント等において行なわれうる。
【0052】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0053】
冷凍食品製造で生じる排水である油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を、活性汚泥を用いて、以下のように処理した。
【0054】
また、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液について、生物化学的酸素要求量(BOD)および化学的酸素要求量(COD)のそれぞれを測定した。BODは、慣用の手法により、5日間培養後の試料中における溶存酸素量と、培養前の試料中における溶存酸素量とを、商品名:DOメーターOM 12(株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、得られた培養前後の溶存酸素量の数値に基づき、算出した。CODは、過マンガン酸カリウムを用いて、化学的に消費される酸素量を測定することにより、評価した。
【0055】
その結果、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液のBODは、1043.33ppmであり、CODは、760ppmであった。
【0056】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を、図1に示される処理プラントで処理した。以下、各部材の符号は、図1に基づく。具体的には、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を、水中ポンプ2(エバラ社製、商品名:水中ポンプDWV6.15S)で、500L容タンクからなる原水槽1に逐次的に移送した。なお、原水槽1には、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液 350Lが貯留されるようにした。また、原水槽1において、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液に、堀場製作所製pH計(B−21)で測定しながら、25重量% 水酸化ナトリウム又は18重量% 硫酸を添加することにより、pH4.3〜7.3に調整した。
【0057】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を、水中ポンプ2で、原水槽1から、340Lの活性汚泥が導入された曝気槽3(500×450×1600mm、有効体積340L)に移送した。なお、原水槽1から曝気槽3への廃水の移送は、曝気槽3に設けた水位センサー5(電極棒)を用い、曝気槽3における油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の滞留時間が18時間となるように行なわれた。
【0058】
曝気槽3は、処理液をろ過するための中空糸膜(1m2、東レ株式会社製、商品名:SUR134)10枚からなる中空糸膜ユニット4と、エアー曝気するための散気管6とから構成される。中空糸膜ユニット4は、曝気槽3において、散気管6の直上に、曝気槽3内の中心に配置され、散気管6からのエアー曝気を十分うけるように配置される。散気管6は、曝気槽3の下部に配置され、エアー曝気により、曝気槽3全体を攪拌しうる。曝気槽3において、曝気は、散気管から供給されるエアーが中空糸膜ユニット4を通り、曝気槽3壁面を降下し、活性汚泥も同様に対流する。
【0059】
さらに、曝気槽3では、活性汚泥と油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液との混合物に、珪藻土、硫酸マグネシウム及びニュートリエントブロス〔極東製薬製;ゼラチン部分加水分解物5:肉抽出物3で含有〕を、ケイ酸:ケイ素含有量として、5mg/L・日、無水硫酸マグネシウム:マグネシウムイオンとして10mg/L・日及びニュートリエントブロス:4.0mg/L・日となるように逐次的に添加した。また、曝気槽3中における活性汚泥と油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液との混合物の温度を、25〜37℃に維持した。曝気槽3への供給空気量は、80L/分とし、それにより、混合物中における溶存酸素量(DO)を、2〜7mg/Lに維持した。さらに、曝気槽3内における酸化還元電位を、50mVになるように設定した。
【0060】
その後、前記と同様に、曝気槽3を通した処理水のBODおよびCODを測定した。
【0061】
その結果、BODは、11.50ppm、CODは、47.13ppmであった。処理前の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液のBOD及びCODに対する処理水のBOD及びCODの減少率は、それぞれ、98.9%及び93.8%であった。
【0062】
次いで、活性汚泥を、滅菌生理食塩水で段階希釈した。得られた各希釈物を、ニュートリエントブロス−グルコース寒天培地〔0.8重量% 商品名:ニュートリエントブロス(Oxoid社製CM−1)、0.8重量% グルコース、0.6重量% 塩化ナトリウム、0.1重量% 乾燥酵母エキス〔ディフコ(Difco)社製〕、1.5重量% 寒天(伊那食品工業社製、商品名:BA−10)、pH7.0〕に播種し、30℃で、コロニーが出現するまで培養した。その後、出現したコロニーから、コロニーの形態及び色を指標として、微生物のコロニーを採取した。採取した微生物を、商品名:Columbia agar baseに播種し、30℃で3日間培養した。コロニーの形態及び色が、均一になるまで、採取及び培養を繰り返した。
【0063】
ついで、得られた各微生物について、通常の方法(例えば、長谷川武治編「微生物の分類と同定 下」学会出版センター、坂崎、吉崎ら「新細菌培地学講座下1」近代出版等に記載の方法)に従って、グラム染色、オキシダーゼテスト、その他の生理・生化学的性状を調べた。また、光学顕微鏡(商品名:ラボフォト 位相差装置付、日本光学社製)を用いて、各微生物の形態及び運動能を観察した。さらに、各微生物から、DNAを抽出し、得られたDNAを鋳型とし、サーマルサイクラー(ABI社製2730)を用いて、PCRを行なった。PCRのサーマルプロファイルは、94℃1分のインキュベーションを行なった後、94℃1分と63℃1分と72℃1.5分とを1サイクルとする30サイクルを行ない、72℃2分のインキュベーションを行ない、その後4℃でのインキュベーションを行なう条件とした。得られた産物を、PEG(Poly Ethylene Glycol:和光純薬株式会社製)/NaCl溶液(30%(W/V))に混合し、得られた混合物を、4℃で30分〜1時間放置した。その後、得られた混合物を、11000×g(14000rpm)、10分室温で遠心分離して、上澄みを取り除いた。得られた産物に、70重量% 冷エタノール 1mLを添加し、11000×g(14000rpm)、1分で遠心分離し、上澄みを捨て、5分間乾燥した。得られた産物に、滅菌精製水 20μLを添加した。得られた産物の塩基配列を、ABI社製:商品名:BIGDYE TerminatorV3.1 Cycle Sequencing Kitを用いて、決定した。決定された塩基配列について、DDBJ及びNCBIのデータベース中の塩基配列のデータとの相同性を解析した。なお、データベースに基づく解析において、Blast search(Fasta)プログラムにおけるパラメータの設定条件は、デフォルトの条件、すなわち、Word Size:11、Cost to open a gap:0、Cost to extend a gap:0、X dropoff value for gapped alignment:30、Penalty for a nucleotide mismatch:−3、Reward for a nucleotide match:1、Threshold for extending hits:0とした。また、系統解析は、Clustal X 1.83に基づきアラインメントを計算し、Tree Viewによって系統樹を作成することにより行なった。該Clustal Xにおけるパラメータの設定条件は、Pairwise parameter(Gap opening 8〜12、Gap extension 0.1〜0.2)、Multialignment parameter(Gap opening 8〜12、Delay divergent sequence 15〜30%、DNA transition weight 0.2〜0.5)とした。ここで、決定された塩基配列とデータベース中の塩基配列との相同性が、95%以上である場合、微生物が、データベース中の塩基配列の起源となる微生物と、属レベルで同一の微生物であると考え、さらに系統解析を行ない、総合的に判断した。また、相同性が、99%以上である場合、微生物が、データベース中の塩基配列の起源となる微生物と、種レベルで同一の微生物であると考え、さらに系統解析を行ない、総合的に判断した。なお、本発明において、属レベルの微生物には、種レベルの微生物が含まれることとする。
【0064】
その結果、KENMI19、06AUG17−1、06AUG17−16、KENMI17、KENMI3、KENMI7、KENMI10、KENMI4、KENMI27、およびKENMI16の10種類の細菌が単離された。
【0065】
KENMI19は、グラム陰性の好気性細菌であり、0.4×0.8μmの大きさを有する桿菌であり、硝酸塩非還元性、食品加工工場排水生育性等の性質を示した。KENMI19は、配列番号:1に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Xanthomonas属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Xanthomonas axonopodisと95%の相同性を示した。
【0066】
06AUG17−1は、グラム陰性の好気性細菌であり、0.3〜1.0×0.6〜6.0μmの大きさを有する桿菌であった。さらに、06AUG17−1は、オキシダーゼ活性 有、カタラーゼ活性 有、脱窒性、芋焼酎カス排水生育性、β澱粉排水生育性、豆清排水生育性、食品加工工場排水生育性等の性質を示した。06AUG17−1は、配列番号:2に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Thauera属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Thauera aromaticaに98%の相同性を示した。
【0067】
06AUG17−16は、グラム陽性の好気性細菌であり、φ0.7μmの球菌であった。06AUG17−16は、オキシダーゼ活性 有、カタラーゼ活性 有、芋焼酎カス排水生育性、食品加工工場排水生育性、豆清排水生育性等の性質を示した。06AUG17−16は、配列番号:3に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Rhodococcus属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Rhodococcus ruberに100%の相同性を示した。
【0068】
KENMI17は、グラム陽性の好気性細菌であり、0.8×1.5μmの大きさを有するコリネ型桿菌であった。さらに、KENMI17は、カタラーゼ生産性、食品加工工場排水生育性等の性質を示した。KENMI17は、配列番号:4に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Microbacterium属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Microbacterium oxydans又はMicrobacterium phyllosphaeraeと98%の相同性を示した。
【0069】
KENMI3は、グラム陰性細菌であり、0.2×0.5μmの大きさであった。さらに、KENMI3は、カタラーゼ生産性、食品工場排水生育性等の性質を示した。KENMI3は、配列番号:5に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Sphingomonas属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Sphingomonas xenophagaと99%以上の相同性を示した。
【0070】
KENMI7は、グラム陽性の好気性細菌であり、0.4〜0.8μmの桿菌であった。さらに、KENMI7は、食品工場排水生育性等の性質を示した。KENMI7は、配列番号:6に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Leucobacter属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Leucobacter komagataeと96%の相同性を示した。
【0071】
KENMI10は、グラム陰性細菌であり、0.3〜0.6μmの桿菌であった。さらに、KENMI10は、カタラーゼ非生産性、硝酸塩非還元性、食品加工工場排水生育性等の性質を示した。KENMI10は、配列番号:7に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Bordetella属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Bordetella pertussisと96%の相同性を示した。
【0072】
KENMI4は、グラム陰性細菌であり、0.5〜1.8μmであった。さらに、KENMI4は、カタラーゼ生産性、オキシダーゼ生産性、食品工場排水で生育性等の性質を示した。KENMI4は、配列番号:8に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Marinobacterium属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Marinobacterium georgienseに97%の相同性を示した。
【0073】
KENMI27は、グラム陰性の好気性細菌であり、0.6〜2μmの桿菌であった。さらに、KENMI27は、硝酸塩還元性、食品加工工場排水生育性等の性質を示した。KENMI27は、配列番号:9に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Rheinheimera属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Rheinheimera aquimarisに97%の相同性を示した。
【0074】
KENMI16は、グラム陰性細菌であり、0.6〜1.8μmの桿菌であった。さらに、KENMI16は、食品加工工場排水生育性等の性質を示した。配列番号:10に示される16S rDNAの塩基配列との相同性及び系統解析の結果から、Mesorhizobium属に属する細菌であることが示唆された。具体的には、Mesorhizobium tianshanenseに97%の相同性を示した。
【実施例2】
【0075】
単離されたKENMI19、06AUG17−1、06AUG17−16、KENMI17、KENMI3、KENMI7、KENMI10、KENMI4、KENMI27、およびKENMI16を、別々に、培養した。次いで、前記実施例1において、活性汚泥のかわりに、得られたKENMI19、06AUG17−1、06AUG17−16、KENMI17、KENMI3、KENMI7、KENMI10、KENMI4、KENMI27、およびKENMI16を用いたことを除き、同様に、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を処理した。
【0076】
その結果、下水放流基準(BOD200ppm)を満たす処理水が得られた。なお、前記KENMI19と06AUG17−1と06AUG17−16とKENMI17とKENMI3とKENMI7とKENMI10とKENMI4とKENMI27とKENMI16との存在比(細胞数比)は、ほぼ、1:1:1:1:1:1:1:1:1:1となった。
【0077】
なお、上記細菌が含まれない下水処理場汚泥を用いて処理を行っても下水放流基準を満たす処理水は得られなかった。
【0078】
以上の結果により、本発明の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法及び油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理装置、並びにそれらに用いられる油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の細菌、微生物培養物、または添加剤によれば、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を、高い効率と高い処理速度で、処理することができ、下水、公共水域に放流するに適した水質を少なくとも得ることができるという優れた効果を奏する。
【0079】
また、本発明の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理用微生物培養物によれば、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液中で安定的に維持され、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む成分を分解することができるという優れた効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明により、冷凍食品製造で生じる排水などの油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を、高効率で、短時間で処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理プラントの概略図である。
【符号の説明】
【0082】
1 原水槽
2 水中ポンプ
3 曝気槽
4 中空糸膜ユニット
5 水位センサー
6 散気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の細菌と、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液とを接触させることを特徴とする油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法。
【請求項2】
細菌が、KENMI19(受託番号:FERM P−21182)、06AUG17−1(受託番号:FERM P−21199)、06AUG17−16(受託番号:FERM P−21202)、KENMI17(受託番号:FERM P−21181)、KENMI3(受託番号:FERM P−21175)、KENMI7(受託番号:FERM P−21177)、KENMI10(受託番号:FERM P−21178)、KENMI4(受託番号:FERM P−21176)、KENMI27(受託番号:FERM P−21183)、およびKENMI16(受託番号:FERM P−21180)からなる群より選ばれる、請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
細菌として該細菌を含有する活性汚泥を用いる、請求項1または2記載の処理方法。
【請求項4】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液が冷凍食品製造で生じる排水である、請求項1〜3いずれか記載の処理方法。
【請求項5】
溶存酸素量(DO)2〜8mg/Lの条件下に行なう、請求項1〜4いずれか記載の処理方法。
【請求項6】
マグネシウム化合物、ケイ素化合物および細菌培養の栄養剤を含む廃液の処理用添加剤を活性汚泥にさらに添加して行なう、請求項1〜5いずれか記載の処理方法。
【請求項7】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の原廃液pHが3.5〜8.5である、請求項1〜6いずれか記載の処理方法。
【請求項8】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と活性汚泥とを接触させる際の、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液のpHが6.0〜9.0である、請求項1〜7いずれか記載の処理方法。
【請求項9】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と、活性汚泥との接触を行なう処理槽内における酸化還元電位(ORP)が−100〜150mVである、請求項1〜8いずれか記載の処理方法。
【請求項10】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と活性汚泥とを接触させる際の、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の温度が10℃〜60℃である、請求項1〜9いずれか記載の処理方法。
【請求項11】
油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液と、活性汚泥との接触後に、さらに液中膜で該廃液をろ過する、請求項1〜10いずれか記載の処理方法。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか記載の方法に用いるための装置であって、キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の細菌を含有した活性汚泥を含む処理槽と、該処理槽内で油脂、αデンプン、およびβデンプンが分解された廃液を液中膜でろ過する手段とを備えた、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理装置。
【請求項13】
請求項1〜11いずれか記載の油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理方法において、マグネシウム化合物、ケイ素化合物および細菌培養の栄養剤を含む、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液の処理用添加剤。
【請求項14】
キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌を含有してなる、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液処理用の微生物培養物。
【請求項15】
キサンソモナス(Xanthomonas)属に属する細菌、サウエラ(Thauera)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する細菌、ロイコバクター(Leucobacter)属に属する細菌、ボルデテラ(Bordetella)属に属する細菌、マリノバクテリウム(Marinobacterium)属に属する細菌、レインヘイメラ(Rheinheimera)属に属する細菌、およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)属に属する細菌からなる群より選ばれる細菌であって、油脂とαデンプンとβデンプンとを含む廃液を分解する性質を有する細菌。



【図1】
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【公開番号】特開2009−72737(P2009−72737A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246398(P2007−246398)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】