説明

治療に有用なトリフェニルブテン誘導体の調製方法

本発明は、治療に有用なトリフェニルブテン誘導体、特に、オスペミフェンまたはフィスペミフェンの調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的エストロゲン受容体モジュレータとして、治療に有用な2種類のトリフェニルブテン誘導体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術について明らかにするために本明細書で用いられる刊行物および他の資料、並びに、特に、実施に関する追加の詳細を提供する事例は、参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0003】
「SERMs」(選択的エストロゲン受容体モジュレータ)は、エストロゲン様の性質および抗エストロゲン性の性質の両方を備えている(非特許文献1)。その効果は、骨ではエストロゲン様の効果、子宮および肝臓では一部エストロゲン様の効果、および乳房組織では純然たる非エストロゲン効果を有するタモキシフェンおよびトレミフェンの場合のように、組織特異的でありうる。公開されている情報に基づくと、多くのSERMsは、更年期の症状を抑制するのではなく、発症させる可能性が高い。しかしながら、SERMsは、年配の女性における他の重要な利益を有している。すなわち、総コレステロールおよびLDLコレステロールを低下させ、それによって循環器疾患の危険性を最小限に抑え、さらには、閉経後の女性における骨粗鬆症を予防し、乳癌の増殖を抑制しうる。
【0004】
トレミフェンの主要な代謝産物の1つであるオスペミフェン、すなわち(Z)−2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノキシ]エタノールは、エストロゲンのアゴニストおよびアンタゴニストとしても知られている(非特許文献2、特許文献1および2)。オスペミフェンは、旧知の古典的なホルモン試験において比較的弱いエストロゲンおよび抗エストロゲン効果を有する(非特許文献2)。オスペミフェンは、抗骨粗鬆症作用を有し、実験モデルおよびヒト被験体の両方において、総コレステロールおよびLDLコレステロールレベルを減少させる。オスペミフェンはまた、動物の乳癌モデルにおける乳癌増殖の初期段階において、抗癌作用を有する。オスペミフェンは、健康な女性における更年期症候群に有益な効果を有することが示されている、最初のSERMでもある。月経後の女性における特定の更年期障害、および、萎縮症関連疾患または障害の治療についてのオスペミフェンの使用が特許文献3および4に開示されている。
【0005】
特許文献5には、組織特異的エストロゲンであって、発癌の危険性なしに、女性の更年期症状、骨粗鬆症、アルツハイマー病および/または心循環器疾患の治療に使用できるSERM群について記載されている。特定の化合物を男性に与えて、エストロゲンによる有害事象(女性化乳房、性欲減退など)なしに、骨粗鬆症、心循環器疾患、およびアルツハイマー病から保護することができる。上記特許文献5に記載される化合物である、(Z)−2−{2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノキシ]−エトキシ}エタノール(フィスペミフェンという一般名でも知られる)は、男性における機能不全の治療に特に有用であろうことを示唆する、非常に興味深いホルモン特性を示す。特許文献6および7は、下部尿路症状および男性におけるアンドロゲン欠乏に関連する疾患または障害など、男性の加齢関連症状の治療または予防にフィスペミフェンを使用することを示唆している。
オスペミフェンおよびフィスペミフェンのような化合物の既知の合成法には、かなり多くの工程が含まれる。特許文献8には、フィスペミフェンの調製方法が記載されており、その第1の工程では、ジヒドロキシ置換されたブタン鎖を有するトリフェニルブタン化合物が得られる。この化合物を、第2の工程において、鎖が4−クロロ置換された、トリフェニルブテンに変換する。次いで、所望のZ−異性体を結晶化する。最後に、保護基を除去して分子のエタノール−エトキシ鎖を遊離する。
【0006】
既知の方法では、所望のZ−異性体の分離は面倒である。反応工程の間に、エタノール−エトキシ鎖を保護するために用いられる保護基である、ベンジル基は、どちらかというと除去するのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第96/07402号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/32574号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/07718号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/103649号パンフレット
【特許文献5】国際公開第01/36360号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/108645号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2006/024689号パンフレット
【特許文献8】国際公開第02/090305号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kauffman & Bryant, Drug News Perspect. 8:531-539, 1995
【非特許文献2】Kangas, Cancer Chemother. Pharmacol. (1990) 27:8-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
オスペミフェンおよびフィスペミフェンは、近い将来に市販される可能性が高い。よって、これらの化合物を大規模で調製する有力な方法が、非常に必要とされている。
【0010】
もう1つの目的は、化合物の合成を、同種類の装置および材料を使用することによって容易に行なえるように、共通の特徴を有する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、1つの態様によれば、本発明は、式(Ia)または(Ib)の化合物の調製方法に関し:
【化1】

【0012】
ここで、式(II)の化合物を:
【化2】

【0013】
a)式: X−(CH22−O−(CH2)2−O−Pr
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXは、Cl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Prは保護基である)、式(III)の化合物を得て:
【化3】

【0014】
これを保護基Prの除去に供し、式(Ia)の化合物を得るか、あるいは、
b)式: X−(CH22−O−Pr
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXは、Cl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Prは保護基である)、式(IV)の化合物を得て:
【化4】

【0015】
これを保護基Prの除去に供し、式(Ib)の化合物を得るか、あるいは、
c)式: X−CH2−COOR
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXは、Cl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Rはアルキルである)、式(V)の化合物を得て:
【化5】

【0016】
このエステルを還元して式(Ib)の化合物を得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
フィスペミフェンは、式(Ia)の化合物のZ−異性体であり:
【化6】

【0018】
オスペミフェンは、式(Ib)の化合物のZ−異性体である:
【化7】

【0019】
(Ia)または(Ib)、すなわち化合物(II)の合成における、一般的な出発物質は、以前より知られている(Toivola, 1990;欧州特許出願公開第0095875号明細書)。この欧州特許出願公開第0095875号明細書に開示されている方法によれば、この化合物は対応するエーテルの脱アルキル化によって調製され、(II)を得ている。この方法は、化合物(Ia)および(Ib)の異性体の混合物を生成するのに使用されうるが、これらの化合物の純粋なE−異性体およびZ−異性体の調製に使用することが最も好ましい。
【0020】
特に、化合物(Ia)または(Ib)の化合物のZ−異性体が所望される場合には、化合物(II)の好ましい合成方法は、市販される出発物質である4−ヒドロキシベンゾフェノンと3−クロロプロピオフェノンとのマクマリー反応である。マクマリー反応は、2つの工程:
(1)アルカリ金属からカルボニル基へ電子が1個移動した後、
(2)低原子価チタニウムで1,2−ジオールを脱酸素化し、アルケンを得る、
各工程を有してなる、よく知られているケトンの還元カップリング反応である。この反応は、主として化合物(II)のZ−異性体を生成する。
【0021】
工程a)およびb)におけるアルキル化は有機溶媒中で行なわれ、テトラヒドロフラン中で行なわれることが好ましい。溶媒に塩基を加えることも好ましく、水素化ナトリウムが最も好ましい。
【0022】
アルキル化の工程は、化合物IIの実質的なアルキル化を達成するための温度および時間で行なわれる。
【0023】
保護基Prは、ベンジル、置換ベンジル、アリル、テトラヒドロピラニル、または当業者にとって明白な、任意の他のアルコール保護基など、任意の適切な保護基でありうる。例えば、Protecting Groups in Organic Synthesis, Third Edition, T.W. Greene and P.G.M. Wuts. Wiley Interscience, 1999 pp 23-200を参照のこと。好ましい実施の形態では、保護基はテトラヒドロピラニルである。この保護基は、当業者に既知の方法により、非常に容易に除去することができる。例えば、テトラヒドロピラニル基(例えば2−テトラヒドロピラニル)などの酸に不安定なアルコール保護基は、HClなどの酸を使用して除去することができる。ベンジル基は、触媒として炭素上でPdを用いた水素添加などの方法を使用して、またはZn粉末および塩化アセチルと反応させることにより、除去することができる。
【0024】
工程a)およびb)のアルキル化剤におけるXは、IまたはBrが好ましい。
【0025】
工程c)におけるアルキル化剤では、XはI、Br、またはClが好ましく、Brが最も好ましい。
【0026】
工程c)のアルキル化剤におけるアルキル置換基Rは、C1-4−アルキルが好ましく、エチルが最も好ましい。
【0027】
工程c)で得られる化合物(V)の還元は、還元剤、好ましくは水素化アルミニウムリチウムを用いて行なわれる。他の還元剤は、当業者にとって周知である。
【0028】
本明細書に記載される方法における工程は、所望の化合物(Ia)および(Ib)を達成するのに十分な温度および時間で行なわれる。本明細書の開示に基づくパラメータの選択は、過度の実験をすることなく、当業者によって、容易に行なわれうる。
【0029】
要するに、本発明に従った好ましい実施の形態は、式(Ia)または(Ib)の化合物を生成する既知の方法をはるかに上回る利点を提供する。すなわち:
− アルキル化の工程a)およびb)において、溶媒としてテトラヒドロフラン、塩基として水素化ナトリウムを使用することにより、所望の生成物を良好な収率で得られる。
− 保護基の除去が容易であり、生成物を良好な収率で得られることから、保護基としてテトラヒドロピラニルを使用することが好ましい。
− 化合物(II)のマクマリー合成は、主としてZ−異性体をもたらす。これは、最終生成物IaまたはIbのZ−異性体が所望される場合に、特に重要である。
【実施例】
【0030】
本発明は、次の非限定的な例によって解明されるであう。
【0031】
実施例1
4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノール(化合物II)
亜鉛(15.0g、0.23mol)およびテトラヒドロフラン(THF)(180 ml)を反応容器に加え、−10℃まで冷却した。四塩化チタンを、約−10℃で、混合物(21.6g、0.114mol)に滴下して加えた。添加完了の後、混合物を2時間還流した。次に、混合物を40℃まで冷却し、THF(75ml)に溶かした4−ヒドロキシベンゾフェノン(7.68g、0.039mol)および3−クロロプロピオフェノン(6.48g、0.039mol)を混合物に加えた。さらに3.5時間、還流を続けた。冷却した反応混合物を炭酸カリウム水溶液(21g K2CO3+210ml 水)に注ぎ、周囲温度で一晩放置した。混合物を濾過し、沈殿物をTHFで洗浄した。濾液を蒸発乾固させた。残渣を酢酸エチルに溶解し、水で洗浄した。酢酸エチル相を蒸発乾固させ、残渣を、最初にメタノール−水(8:2)、次いでメタノール−水(9:1)から結晶化させた。収量5.4gであった。
【0032】
Z−異性体1H NMR(CDCl3):2.92(t,2H,=CH2CH2Cl),3.42(t,2H,=CH2CH2Cl),6.48(d,2H,ヒドロキシル基に対してオルト位の芳香族プロトン),6.75(d,2H,ヒドロキシル基に対してメタ位の芳香族プロトン),7.1−7.4(m,10H,芳香族プロトン)。
【0033】
実施例2
2−(2−{2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)−フェノキシ]エトキシ}−エトキシ)−テトラヒドロピラン(化合物III、Prはテトラヒドロピラニル)
4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノール(0.33g、0.001mol)を、窒素雰囲気下で、テトラヒドロフラン(3ml)に溶解させた。水素化ナトリウム(0.036g、0.0015mol)を溶液に加え、混合物を室温で1時間攪拌した。2−[2−(2−ヨード−エトキシ)−エトキシ]−テトラヒドロピラン(0.6g、0.002mol)を加え、混合物を3時間還流した。冷却し、水を加えた後、混合物を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、蒸発乾固させた。残渣をさらに精製することなく、次の反応工程に用いた。
【0034】
実施例3
2−{2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)−フェノキシ]エトキシ}−エタノール(化合物Ia)
先の反応工程(実施例2)の残渣をエタノール(10ml)に溶かし、その溶液を2Nの塩酸で酸性化した。混合物を周囲温度で一晩攪拌した。次いで、溶媒を蒸発させて、水を加え、混合物をジクロロメタンで3回抽出した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、蒸発乾固させた。 残渣をヘプタン−酢酸エチル(8:2)から結晶化した。収量0.216gであった。
【0035】
Z−異性体、1H NMR(CDCl3): 2.92(t,2H,=CH2CH2Cl),3.42(t,2H,=CH2CH2Cl),3.58−3.65(m,2H,OCH2CH2OH),3.7−3.82(m,4H,−CH2CH2CH2OH),3.97−4.04(m,2H,ArOCH2−),6.56(d,2H,ヒドロキシル基に対してオルト位の芳香族プロトン),6.78(d,2H,ヒドロキシル基に対してメタ位の芳香族プロトン),7.1−7.43(m,10H,芳香族プロトン)。
【0036】
実施例4
2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)−フェノキシ]−エタノール(化合物Ib)
4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノール(0.23g、0.689mmol)を窒素雰囲気下で、テトラヒドロフラン(3ml)に溶かした。水素化ナトリウム(0.025g、1.03mmol)を溶液に加え、混合物を室温で1時間攪拌した。2−(2−ヨード−エトキシ)−テトラヒドロピラン(0.3g、1.17mmol)を加え、混合物を2時間還流した。7時間の間に、追加の2−(2−ヨード−エトキシ)−テトラヒドロピラン(0.5g、2mmol)を混合物に加えた。冷却し、水を加えた後、THFを蒸発させて混合物を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を2Nの水酸化ナトリウム水溶液および水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、蒸発乾固させた。残渣(Prがテトラヒドロピラニルの、化合物(IV)である)をエタノールに溶かし、2Nの塩酸で酸性化した。混合物を室温で一晩攪拌し、蒸発させて、ジクロロメタンで抽出した。水で洗浄した後、有機相を乾燥させ(Na2SO4)、蒸発させた。 残渣を、ジクロロメタン/メタノール 9.5/0.5の溶離液を用いてフラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した。収量0.17g、収率59%であった。
【0037】
Z−異性体、1H NMR(CDCl3):2.92(t,2H,=CH2CH2Cl),3.42(t,2H,=CH2CH2Cl),3.85−3.89(m,4H,OCH2CH2), 6.56(d, 2H,ヒドロキシル基に対してオルト位の芳香族プロトン), 6.80(d,2H,ヒドロキシル基に対してメタ位の芳香族プロトン),7.1−7.43(m,10H,芳香族プロトン)。
【0038】
実施例5
2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)−フェノキシ]−エタノール(化合物Ib)
試薬として2−(2−ヨード−エトキシメチル)−ベンゼンを用い、実施例4に記載したのと同様の方法によって化合物を調製し、参照することにより本明細書に取り込まれる米国特許第6,891,070号明細書に記載される方法を使用してベンジルの保護基を除去した。簡単に言えば、除去はZn粉末および塩化アセチルの存在下、窒素雰囲気下で行なわれる。
【0039】
実施例6
[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)−フェノキシ]−酢酸エチルエステル(Rがエチルである、化合物V)
4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノール(0.5g、0.0015mol)、無水エタノール(10ml)、炭酸カリウム(0.62g、0.0045mol)およびブロモ酢酸エチル(0.373g、0.00224mol)を、窒素雰囲気下で混合し、2.5時間還流した。次いで、熱混合物を濾過し、沈殿物を無水エタノールで洗浄した。濾液を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。酢酸エチルを乾燥させ(Na2SO4)、蒸発乾固させた。 収量260mg、収率52%。生成物は、さらなる精製をせずに、次の工程に使用した。
【0040】
1H NMR(CDCl3+MeOH-d4):1.25(t,3H,CH2CH3),2.92(t,2H,=CH2CH2Cl),3.42(t,2H,=CH2CH2Cl),4.22(q,2H,OCH2CH3),4.49(s,2H,ArOCH2-),6.56(d,2H,ヒドロキシル基に対してオルト位の芳香族プロトン),6.80(d,2H, ヒドロキシル基に対してメタ位の芳香族プロトン),7.1−7.43(m,10H,芳香族プロトン)。
【0041】
実施例6に記載されるアルキル化を行うための別の方法は、無水エタノールと炭酸カリウムを水素化ナトリウムとテトラヒドロフランで置き換えることである。予備実験では、室温での短い反応時間(1時間)の後、高収率(90%)で生成物を得た。
【0042】
実施例7
2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)−フェノキシ]−エタノール(化合物Ib)
[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)−フェノキシ]−酢酸エチルエステル(実施例7)を窒素雰囲気下、室温でテトラヒドロフランに溶かした。水素化アルミニウムリチウムを、反応が完了するまで、少しずつ溶液に加えた。飽和塩化アンモニウム水溶液を混合物に加えることにより、反応を停止した。生成物をトルエン中に抽出し、それを乾燥させ、真空蒸発させた。収量100mg、収率43%。
【0043】
1H NMR(CDCl3):2.92(t,2H,=CH2CH2Cl),3.42(t,2H,=CH2CH2Cl),3.85−3.89(m,4H,OCH2CH2),6.56(d,2H,ヒドロキシル基に対してオルト位の芳香族プロトン),6.80(d,2H, ヒドロキシル基に対してメタ位の芳香族プロトン),7.1−7.43(m,10H,芳香族プロトン)。
【0044】
本発明の方法はさまざまな実施の形態の形式で取り込まれうること、および、そのうちのほんの2、3を本明細書に開示したに過ぎないことが認識されよう。当業者にとって、他の実施の形態が本発明の精神から逸脱することなく存在することは明白であろう。よって、説明した実施の形態は実例であって、制限されるものと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)または(Ib)の化合物の調製方法であって:
【化1】

ここで、式(II)の化合物を:
【化2】

a)式: X−(CH22−O−(CH2)2−O−Pr
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXは、Cl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Prは保護基である)、式(III)の化合物を得て:
【化3】

これを保護基Prの除去に供し、式(Ia)の化合物を得るか、あるいは、
b)式: X−(CH22−O−Pr
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXは、Cl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Prは保護基である)、式(IV)の化合物を得て:
【化4】

これを保護基Prの除去に供し、式(Ib)の化合物を得るか、あるいは、
c)式: X−CH2−COOR
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXは、Cl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Rはアルキルである)、式(V)の化合物を得て:
【化5】

このエステルを還元して式(Ib)の化合物を得る、
方法。
【請求項2】
前記式(II)の化合物が、4−ヒドロキシベンゾフェノンと3−クロロプロピオフェノンとのマクマリー反応によって調製されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)またはb)における前記アルキル化が、テトラヒドロフラン中で行なわれることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記保護基がテトラヒドロピラニルであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記保護基がベンジルであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
工程a)またはb)における前記アルキル化剤におけるXが、IまたはBrであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
工程c)における前記アルキル化剤のXが、I、Br、またはClであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程c)における前記アルキル化が、
i)炭酸カリウムおよび無水エタノール、または
ii)水素化ナトリウムおよびテトラヒドロフラン
を使用することにより行われることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
工程c)で得られる化合物(V)の前記還元が、水素化アルミニウムリチウムによって行なわれることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
前記化合物(Ia)または(Ib)が、Z−異性体であることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
式(Ia)の化合物の調製方法であって:
【化6】

ここで、式(II)の化合物を:
【化7】

式: X−(CH22−O−(CH2)2−O−Pr
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXはCl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Prは保護基である)、
式(III)の化合物を得て:
【化8】

これをPrの除去に供し、式(Ia)の化合物を得る工程を有してなり、
ここで、前記化合物(Ia)がZ−異性体である、
方法。
【請求項12】
XがIであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
Prがテトラヒドロピラニルまたはベンジルであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
Prが2−テトラヒドロピラニルであることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
Prが、酸を用いて除去されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項16】
Prがベンジルであり、亜鉛および塩化アセチルを用いて除去されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項17】
式(Ib)の化合物の調製方法であって:
【化9】

ここで、式(II)の化合物を:
【化10】

式: X−(CH22−O−Pr
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXは、Cl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Prは保護基である)、式(IV)の化合物を得て:
【化11】

これを前記保護基Prの除去に供し、式(Ib)の化合物を得る工程を有してなり、
ここで、前記化合物(Ib)がZ−異性体であることを特徴とする、
方法。
【請求項18】
XがIであることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
Prがテトラヒドロピラニルまたはベンジルであることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
Prが2−テトラヒドロピラニルであることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項21】
Prが酸を用いて除去されることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
Prがベンジルであり、亜鉛および塩化アセチルを用いて除去されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項23】
式(Ib)の化合物の調製方法であって:
【化12】

ここで、式(II)の化合物を:
【化13】

式: X−CH2−COOR
のアルキル化剤でアルキル化し(ここでXは、Cl、Br、I、メシルオキシまたはトシルオキシであり、Rはアルキルである)、
式(V)の化合物を得て:
【化14】

このエステルを還元して式(Ib)の化合物を得る工程を有してなり、
ここで、前記化合物(Ib)がZ−異性体であることを特徴とする、
方法。
【請求項24】
XがBrであることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
RがC1-4アルキルであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
Rがエチルであることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記エステルが水素化アルミニウムリチウムを用いて還元されることを特徴とする請求項23記載の方法。

【公表番号】特表2010−518150(P2010−518150A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549436(P2009−549436)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050057
【国際公開番号】WO2008/099059
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(506277524)ホルモス メディカル リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】HORMOS MEDICAL LTD.
【Fターム(参考)】