説明

治療剤

本発明は、一酸化窒素抑制作用又はアルドースレダクターゼ阻害作用を有する、新規なカルコン類化合物、その誘導体またはそれらの塩を提供する。また本発明は、該化合物の生理作用を利用した、該化合物に感受性を示す疾患に対する治療又は予防効果を有する医薬、食品、飲料または飼料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なカルコン類化合物、および当該化合物の生理作用を利用した医薬、飲食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
カルコン類化合物とは、下記式(化1)のカルコン骨格を有する化合物の総称であり、これらの化合物として、天然物からの抽出や合成によって得られたさまざまな化合物が知られている。
【0003】
【化1】

【0004】
また、これらの化合物の生理活性については、化合物によってそれぞれ多種多様であり、例えば細胞毒性、抗がん活性、化学防御、抗変異原性、抗菌活性、抗ウィルス活性、抗原虫性、殺虫作用等が知られている(例えば、非特許文献1)。また、本発明者らは、これらのカルコン類化合物に神経成長因子(NGF)産生増強作用があることを見出している(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】国際公開第01/54682号パンフレット
【非特許文献1】J.R.Dimmock 他3名,Current Medicinal Chemistry,(オランダ),1999年,Vol.6,p.1125〜1149
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規なカルコン類化合物とその生理作用を利用した医薬、もしくは飲食品等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、下記式(1)〜(9)のいずれかで表されるカルコン類化合物、その誘導体又はそれらの塩に関する。
【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
【化4】

【0010】
【化5】

【0011】
【化6】

【0012】
【化7】

【0013】
【化8】

【0014】
【化9】

【0015】
【化10】

【0016】
本発明の第2の発明は、本発明の第1の発明の化合物、その誘導体又はそれらの塩を有効成分として含有することを特徴とする当該化合物に感受性を示す疾患の治療剤又は予防剤に関する。本発明の第2の発明において当該化合物に感受性を示す疾患としては、治療又は予防に一酸化窒素(NO)産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を要する疾患が例示される。
【0017】
本発明の第3の発明は、本発明の第1の発明の化合物、その誘導体又はそれらの塩を有効成分として含有することを特徴とする、NO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤に関する。
【0018】
本発明の第4の発明は、本発明の第1の発明の化合物、その誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とする食品、飲料又は飼料に関する。本発明の第4の発明の食品、飲料又は飼料は、当該化合物に感受性を示す疾患の治療又は予防に有用である。また、ここで当該化合物に感受性を示す疾患としては、例えばNO産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を要する疾患が例示される。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、新規なカルコン類化合物、その誘導体又はそれらの塩が提供される。当該化合物はNO産生抑制作用又はアルドースレダクターゼ阻害作用を有するため、該化合物、その誘導体又はそれらの塩は当該生理活性を利用した医薬、食品、飲料または飼料の有効成分として有用である。また、本発明により提供される医薬等は、例えばNO産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を要する疾患などの、該化合物に感受性を示す疾患に対する治療または予防効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】TB3のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】TB3の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図3】TB4のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図4】TB4の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図5】TB5のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図6】TB5の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図7】TB6のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図8】TB6の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図9】TB7のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図10】TB7の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図11】TB8のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図12】TB8の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図13】TB9のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図14】TB9の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図15】化合物(C081)のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図16】化合物(C081)の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図17】化合物(C042)のH−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者らは上記式(1)〜(9)のいずれかで表される新規なカルコン類化合物、その誘導体又はそれらの塩(本明細書において、本発明の化合物と称することがある)と、当該化合物の有するNO産生抑制作用およびアルドースレダクターゼ阻害作用を見出し、該化合物を有効成分とする医薬、飲食品、飼料の提供が可能になった。なお、本発明の化合物と、その誘導体又はそれらの塩とは同等の作用を有し得る。上記式(1)〜(7)は食用植物であるセリ科のアシタバより単離された新規なカルコン類化合物である。
【0022】
本発明の化合物は、天然物由来でもよく、合成品、半合成品でもよい。天然物としては食用植物由来が好ましく、食用植物としてはセリ科植物のアシタバが例示される。また、本発明の化合物に種々の異性体が存在する場合、いずれも任意に本発明において使用することができる。本発明の化合物は、単独で、若しくは2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
例えば、天然物からの本発明の化合物の製造は、公知の製造方法を組み合わせて行うことができる。例えば、本発明の化合物の天然物からの調製については、本発明の化合物含有物、例えばアシタバ等の植物から当該化合物を精製することができる。精製手段としては化学的方法、物理的方法等の公知の精製手段を用いればよく、ゲルろ過法、分子量分画膜による分画法、溶媒抽出法、イオン交換樹脂、シリカゲル、逆相系樹脂等を用いた各種クロマトグラフィー法等の従来公知の精製方法を組合せて本発明の化合物を精製すればよい。例えば、本発明の化合物である上記式(1)〜(7)の製造は、下記実施例1〜7を参考にして行うことができる。
【0024】
また、合成による本発明の化合物の製造は、公知の製造方法を組み合わせて行うことができる。例えば、合成の方法はAlessandra Lattanzi et al.,Synlett.2002,No.6,p942−946;L.Claisen A.et al.,Ber.1881,No.14,p2460等を参照すればよい。例えば、本発明の化合物である上記式(9)で表される化合物の製造は、下記実施例9を参考にして化学合成することで得ることができる。
【0025】
また、半合成による本発明の化合物の製造は、例えば、天然物由来のカルコン類化合物を原料として有機合成することにより得ることができる。例えば、本発明の化合物である上記式(8)で表される化合物は、下記実施例8を参考にして上記式(6)で表される化合物を還元処理することにより得ることができる。還元処理以外の有機合成の方法については、特に限定はないが、例えばAlessandra Lattanzi et al.,Synlett.2002,No.6,p942−946;L.Claisen A.et al.,Ber.1881,No.14,p2460等を参照すればよい。
【0026】
本明細書において上記式(1)〜(9)で表される化合物の誘導体とは、該化合物を元化合物として合成される化合物であって、上記式(1)〜(9)で表される化合物と同等の作用、すなわち、NO産生抑制作用またはアルドースレダクターゼ阻害作用を有する化合物である。かかる誘導体としては、例えば上記式(1)〜(9)で表される化合物のエステル体、エーテル体、配糖体など、体内で容易に加水分解し、所望の効果を発揮し得る化合物(プロドラッグ)を挙げることができる。かかるプロドラッグの調製は公知の方法に従えばよい。なお、かかる誘導体は、それらの塩であってもよい。
【0027】
また、本発明の化合物において、塩としては薬理学的に許容される塩が好ましい。本発明で使用される塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩基との塩などが例示される。かかる塩としては薬理学的に許容される塩が好ましい。なお、本発明において使用される薬理学的に許容される塩とは生物に対して実質的に無毒である塩を意味する。当該塩としては、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムまたはプロトン化されたベンザチン(N,N′−ジ−ベンジルエチレンジアミン)、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグラミン(N−メチルグルカミン)、ベネタミン(N−ベンジルフェネチルアミン)、ピペラジンもしくはトロメタミン(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)との塩が挙げられる。
【0028】
本発明により、本発明の化合物を有効成分として含有する、当該化合物に感受性を示す疾患の治療剤又は予防剤(本明細書において、本発明の治療剤又は予防剤と称することがある)が提供される。ここで当該化合物に感受性を示す疾患とは、当該化合物により治療効果若しくは予防効果が得られ得る疾患をいい、該疾患としては、例えばNO産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を要する疾患が挙げられる。
【0029】
固形がんの増大に血管新生は必須であるが、血管内皮増殖因子/血管透過性亢進因子(VEGF)はこの過程に重要な役割を演じている。さまざまながん細胞においてVEGFはNOによって誘導される。すなわち、がん細胞のNO産生を抑制することによって、VEGF産生が抑制され、その結果、がん組織周辺での血管新生が阻害され、がんを脱落させることができる。
【0030】
また、NOはpH中性の生理的条件下でアミンと反応してニトロソアミンを生成する。このニトロソアミンはDNAに損傷を与えることにより発がん性を示すことが知られている。また、疫学的にがんとの関連が高い肝吸虫感染患者や肝硬変患者においてNO産生は亢進している。したがって、NO産生を抑制することによりハイリスクグループの発がんを予防することができる。
【0031】
NOはまた、炎症性病変に特徴的に認められる浮腫、すなわち血管透過性亢進作用を誘発し〔Japanese Journal of Cancer Research、第85巻、P331〜334(1994)〕、また炎症性メディエーターであるプロスタグランジン類の生合成を亢進させる〔Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA、第90巻、P7240〜7244(1993)〕。一方、NOはスーパーオキシドラジカルと速やかに反応してペルオキシ亜硝酸イオンを生じ、ペルオキシ亜硝酸イオンが炎症性の細胞、組織障害を引き起こすとも考えられている。
【0032】
また、慢性関節性リウマチ、変形性関節リウマチ、痛風性関節炎、ベーチェット病などの関節炎患者の病変部の関節液には同患者の正常な関節や健常人の関節の関節液に比べて高濃度のNOが含まれている。
【0033】
本発明の化合物は実施例11に記載のとおり、NO産生抑制作用を有することから、上記のがん性疾患および炎症性疾患に対して有用な化合物である。本発明の化合物が有効なNO産生抑制を要する疾患としては、例えばがん性疾患、炎症性疾患、慢性関節性リウマチ、変形性関節リウマチ、痛風性関節炎、ベーチェット病等の疾患が挙げられる。
【0034】
アルドースレダクターゼ(Aldose reductase:以下、ARと称することがある。)は生体内においてグルコース代謝経路の一つであるポリオール経路に関与する酵素である。該経路はARが関与するグルコースからソルビトール系の還元経路、およびソルビトールデヒドロゲナーゼ(以下、SDHと称することがある。)が関与するソルビトールからD−フルクトースへの脱水素反応経路からなる。細胞内に流入するグルコース量が増大すると、解糖系で処理できないグルコースがポリオール経路を亢進させる。ところが、SDH活性はAR活性より低いことから、グルコースの流入が続くと中間代謝物のソルビトールが大量に産生されることになる。このようなソルビトールの蓄積に起因するさまざまな疾患、すなわち糖尿病合併症として起こる疾患としては、例えば白内障、末梢神経疾患、腎疾患、白血球の食菌作用の低下に起因する感染症、糖尿病性昏睡、大血管壁におけるアテローム変性による動脈硬化等の疾患が知られている。
【0035】
本発明の化合物は実施例10に記載のとおり、AR阻害作用を有することから、上記の糖尿病合併症に対して有用な化合物である。本発明の化合物が有効なAR阻害作用を要する疾患としては、例えば糖尿病合併症として引き起こされる疾患、例えば白内障、末梢神経疾患、腎疾患、白血球の食菌作用の低下に起因する感染症、糖尿病性昏睡、大血管壁におけるアテローム変性による動脈硬化等の疾患が例示される。また、本発明の化合物は、他の糖尿病治療剤と併用することもできる。
【0036】
上記した本発明の治療剤又は予防剤は、本発明の化合物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せて製剤化することにより製造できる。一般的には、これらの化合物を薬学的に許容できる液状または固体状の担体と配合し、かつ所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることができる。また、使用前に適当な担体の添加によって液状となし得る乾燥品とすることができる。
【0037】
医薬用担体は、治療剤または予防剤の投与形態および剤型に応じて選択することができる。固体組成物からなる経口剤とする場合は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等とすることができ、たとえば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などが利用される。また経口剤の調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合することもできる。たとえば、錠剤または丸剤とする場合は、所望によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの糖衣または胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。液体組成物からなる経口剤とする場合は、薬理学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などとすることができ、たとえば、精製水、エタノールなどが担体として利用される。また、さらに所望により湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、防腐剤などを添加してもよい。
【0038】
一方、非経口剤とする場合は、常法に従い本発明の前記有効成分を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどに溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤などを加えることにより調製することができる。また、固体組成物を製造し、使用前に無菌水または無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0039】
また、本発明の予防剤または治療剤は、外用剤とすることもできる。外用剤としては、経皮投与用または経粘膜(口腔内、鼻腔内)投与用の、固体、半固体状または液状の製剤が含まれる。また、座剤なども含まれる。このような外用剤としては、たとえば、乳剤、ローション剤などの乳濁剤、外用チンキ剤、経粘膜投与用液剤などの液状製剤、油性軟膏、親水性軟膏などの軟膏剤、フィルム剤、テープ剤、パップ剤などの経皮投与用または経粘膜投与用の貼付剤などが挙げられる。
【0040】
上記のような各種製剤形態での治療剤または予防剤は、それぞれ公知の医薬用担体などを利用して、適宜、常法により製造することができる。また、かかる治療剤または予防剤における有効成分の含有量は、その投与形態、投与方法などを考慮し、好ましくは後述の投与量範囲で当該有効成分を投与できるような量であれば特に限定されるものではない。
【0041】
本発明の治療剤または予防剤における前記有効成分の含有量は、特に限定はないが、通常、0.001〜80重量%が好適であり、より好適には0.01〜50重量%、特に好適には0.1〜20重量%が例示される。
【0042】
本発明の治療剤又は予防剤の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的およびこれに適用される患者の年齢、体重、症状などによって適宜設定され、一定ではないが、一般には製剤中に含有される有効成分の量で、ヒト(例えば成人)1日当り好ましくは10μg〜1g/kg体重、より好ましくは50μg〜500mg/kg体重、更に好ましくは100μg〜100mg/kg体重である。もちろん、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。また、本発明の治療剤又は予防剤の投与方法は特に限定されるものではなく、使用目的および患者の年齢、症状などによって適宜設定すればよい。例えば、経口投与、静脈内投与、経皮投与等が挙げられる。経口投与の場合、本発明の治療剤又は予防剤はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0043】
なお、本明細書において、医薬とは、便宜的に、上記の本発明の治療剤又は予防剤を指すのみでなく、以下に記載される本発明のNO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤をも指す場合がある。
【0044】
また、本発明の化合物を有効成分として含有するNO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤を提供することもできる。本発明のNO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤としては、前記有効成分そのものであってもよく、また、前記有効成分を含む組成物であってもよい。本発明の態様においては、有効成分としての塩は薬理学的に許容される塩が好適である。本発明のNO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤は、たとえば、前記有効成分を当該有効成分と同じ用途に使用可能な他の成分などと配合し、上記治療剤または予防剤の製造方法に準じて通常使用される試薬の形態に製造すればよい。本発明のNO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤における前記有効成分の含有量は、これらの投与方法、使用目的などを考慮し、本発明の所望の効果の発現が得られ得るような量であればよく、特に限定されるものではないが、通常、0.001〜100重量%が好適であり、より好適には0.01〜80重量%、特に好適には0.1〜80重量%が例示される。また、使用量も本発明の所望の効果の発現が得られ得るようであれば特に限定されるものではない。特に、生体に投与して使用する場合には、好ましくは前記治療剤または予防剤における有効成分の投与量範囲内で有効成分を投与できるような量で使用すればよい。投与方法についても特に限定されるものではなく、前記治療剤または予防剤と同様に適宜設定すればよい。本発明のNO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤は、NO産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を必要とする疾患において有用である。また、本発明のNO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤はこれらの疾患に対する薬物のスクリーニングにも有用である。さらに本発明のNO産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤は、これらの疾患の物理的変化に関する機能研究にも有用である。
【0045】
また、本発明により本発明の化合物を含有してなる食品、飲料又は飼料(本明細書において、本発明の食品、飲料又は飼料と称することがある。また便宜的に、本発明の飲食品等と称することもある。)が提供される。本発明の食品、飲料又は飼料は、当該化合物に感受性を示す疾患の治療用又は予防用の食品、飲料又は飼料として有用である。なお、本発明の食品、飲料又は飼料とは、当該疾患の治療又は予防を目的とすることを付した機能性食品(特定保健用食品)を包含するものである。該化合物に感受性を示す疾患としては、例えば前述の本発明の治療剤又は予防剤が適用される疾患が例示される。例えば、本発明の化合物を含有、添加および/または希釈してなる食品、飲料又は飼料は、そのNO産生抑制作用又はアルドースレダクターゼ阻害作用により、NO産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を要する疾患の症状改善、予防に極めて有用である。よって、本発明の食品又は飲料は、血糖値が気になる方や、手足・関節に痛み・違和感がある方、視力の低下、体のむくみ、しびれを感じる方が摂取するのに好適である。
【0046】
なお、本明細書において、前記「含有」とは食品、飲料または飼料中に本発明で使用される有効成分が含まれるという態様を、前記「添加」とは食品、飲料または飼料の原料に、本発明で使用される有効成分を添加するという態様を、前記「希釈」とは本発明で使用される有効成分に、食品、飲料または飼料の原料を添加するという態様をいうものである。
【0047】
本発明の食品、飲料又は飼料の製造方法は、特に限定はないが、一般に用いられている食品、飲料又は飼料の製造方法を採用でき、製造された食品、飲料又は飼料に、本発明の化合物が有効成分として含有されていれば良く、好適には本発明の有効成分が高含有されている食品、飲料又は飼料が例示される。なお、本明細書において、高含有とは、原料、例えばアシタバの単位重量あたりの本発明の化合物重量よりも本発明の食品、飲料又は飼料の単位重量あたりの本発明の化合物重量の方が多いことを意味する。
【0048】
本発明の食品又は飲料は、特に限定するものではないが、例えば、穀物加工品、油脂加工品、大豆加工品、食肉加工品、水産製品、乳製品、野菜・果実加工品、菓子類、アルコール類、嗜好飲料、調味料、缶詰・瓶詰・袋詰食品、半乾燥または濃縮食品、乾燥食品、冷凍食品、固形食品、液体食品、香辛料類等の農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品等が挙げられる。
【0049】
本発明の食品または飲料には前記有効成分が含有、添加および/または希釈されていれば特にその形状に限定はなく、タブレット状、顆粒状、カプセル状等の形状の経口的に摂取が容易な形状物も包含する。
【0050】
本発明の食品又は飲料中の前記有効成分の含有量は特に限定されず、その官能と活性発現の観点から適宜選択できるが、例えば食品100重量%中、0.00001重量%以上、好ましくは0.0001〜10重量%、更に好ましくは0.0006〜6重量%であり、例えば飲料100重量%中、0.00001重量%以上、好ましくは0.0001〜10重量%、更に好ましくは0.0006〜6重量%である。また、本発明の有効成分が高含有されている食品又は飲料の場合は、例えば食品100重量%中、0.0001重量%以上、好ましくは0.0005〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜10重量%、例えば飲料100重量%中、0.0001重量%以上、好ましくは0.0005〜10重量%、さらに好ましくは0.001〜10重量%が好適である。また本発明の食品又は飲料は、好ましくは、それらに含有される有効成分が、ヒト(例えば成人)1日当たり10μg〜1g/kg体重、好ましくは50μg〜500mg/kg体重、更に好ましくは100μg〜100mg/kg体重となるように摂取すればよい。
【0051】
また、本発明は、前記有効成分を含有してなる生物用の飼料を提供するものであり、さらに、別の一態様として、前記有効成分を生物に投与することを特徴とする生物の飼育方法をも提供する。また、本発明の別の一態様として、前記有効成分を含有することを特徴とする生物飼育用剤が提供される。ここで、「含有」の語は、含有、添加及び/又は希釈の意味を有し、含有、添加及び希釈は前記の通りの意味を有する。
【0052】
本明細書において、生物としては、限定はないが、たとえば養殖動物、ペット動物などが挙げられる。養殖動物としてはウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマなどの家畜、マウス、ラット、モルモット、ウサギなどの実験動物、ニワトリ、アヒル、七面鳥、駝鳥などの家禽、魚類、甲殻類または貝類が例示される。ペット動物としてはイヌ、ネコなどが例示される。また、飼料としては体調の維持および/または改善用飼料が例示される。生物飼育用剤としては浸漬用剤、飼料添加剤、飲料用添加剤が例示される。
【0053】
これらの発明によれば、それらを適用する前記例示するような生物において、本発明に使用される前記有効成分のNO産生抑制作用又はアルドースレダクターゼ阻害作用に基づき、本発明の前記治療剤または予防剤によるのと同様の効果の発現が期待できる。すなわち、本発明の飼料、生物用飼育用剤は、それらが適用される生物におけるNO産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を要する疾患の治療または予防効果を有する。
【0054】
本発明に使用される前記有効成分は通常、対象生物に1日当たり10μg〜1g/kg体重、好ましくは50μg〜500mg/kg体重、より好ましくは100μg〜100mg/kg体重投与される。投与は、たとえば、当該有効成分を、対象生物に供する人工配合飼料の原料中に添加混合しておくか、人工配合飼料の粉末原料と混合した後、その他の原料にさらに添加混合することで行うことができる。また、前記有効成分の飼料中の含有量は特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定すれば良いが、例えば飼料100重量%中、0.00001重量%以上、好ましくは0.0001〜30重量%、さらに好ましくは0.001〜15重量%の割合が好適である。また、本発明の有効成分が高含有されている飼料の場合は、例えば飼料100重量%中、0.0001重量%以上、好ましくは0.0005〜30重量%、さらに好ましくは0.001〜30重量%が好適である。
【0055】
本発明の飼料の製造法に特に限定はなく、また配合も一般の飼料に準ずるものであればよく、製造された飼料中に本発明の前記有効成分が含まれていればよい。生物飼育用剤は、前記飼料の場合に準じて、製造、使用等すればよい。
【0056】
NO産生抑制作用又はアルドースレダクターゼ阻害作用を有する本発明に使用される前記有効成分を含んでなる飼料を摂取させること、またはNO産生抑制作用又はアルドースレダクターゼ阻害作用を有する本発明に使用される前記有効成分の含有液に対象生物を浸漬することにより、家畜、実験動物、家禽、ペット動物などの体調を良好に維持し、または、改善させたりすることができる。なお、ここに例示する態様は、本発明により提供される生物の飼育方法の一態様をなす。
【0057】
本発明において医薬、飲食品、飼料中の本発明の化合物含有量はその投与、摂取等により、生体内で所望の効果が得られ得る濃度であればよく、対応する公知の飲食品等に比べて高含有されているものが好ましい。
【0058】
本発明で使用される前記有効成分は、その作用発現にとっての有効量の投与を行っても毒性は認められない。たとえば経口投与の場合、前述の上記式(1)〜(9)で表される化合物、もしくはこれらの光学活性体又はそれらの塩のいずれかを、それぞれ1g/kg体重でマウスに単回投与しても死亡例は認められない。また、前記有効成分は、ラットへの経口投与において1g/kg体重を経口単回投与しても死亡例は認められない。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。なお、実施例における%は特に記載がなければすべて容量%を意味する。なお、本明細書において、上記式(1)で表される化合物をTB3、上記式(2)で表される化合物をTB4、上記式(3)で表される化合物をTB5、上記式(4)で表される化合物をTB6、上記式(5)で表される化合物をTB7、上記式(6)で表される化合物をTB8、上記式(7)で表される化合物をTB9、上記式(8)で表される化合物を化合物(C081)、上記式(9)で表される化合物を化合物(C042)と称することがある。
【0060】
実施例1 TB3の調製
(1)アシタバ根部の乾燥粉末5kgに15Lのエタノールを加え、室温で30分間抽出を行い、吸引ろ過後、エタノール抽出液と残渣に分けた。残渣に対して同様の抽出を2回行った後、エタノール抽出液を合わせ減圧濃縮し、エタノール抽出濃縮液を得た。
【0061】
(2)実施例1−(1)で得られたエタノール抽出濃縮液を2Lの25%エタノール水溶液に溶解し、ついで逆相クロマトグラフィーを用いて分画した。樹脂はコスモシール140 C18−OPN(ナカライテスク社製:400mL)を用い、1Lの30%エタノール水溶液、5Lの40%エタノール水溶液、4Lの75%エタノール水溶液、3Lの100%エタノール水溶液の順に溶出を行った。
【0062】
(3)実施例1−(2)で得られた75%エタノール水溶液溶出画分を減圧濃縮し、シリカゲル(BW−300SP:富士シリシア化学社製、350mL)に吸着させた。溶出はクロロホルム:ヘキサンの溶媒比を2:1(800mL)、10:4(1800mL)、および酢酸エチル(1400mL)の順に段階的に行った。溶出液はフラクション1から5まで200mLごと、フラクション6は150mL、フラクション7から10は100mLごと、フラクション11から16は200mLごと、フラクション17は1000mLの順に分画した。
【0063】
(4)実施例1−(3)で得られたフラクションの番号17を減圧濃縮し、シリカゲル(350mL)に吸着させた。溶出はクロロホルム:ヘキサンの溶媒比を10:3(1000mL)、10:1(2100mL)、20:1(1000mL)、酢酸エチル(500mL)の順に段階的に行い、最初の2300mLを溶出の後、100mLごとに分画した。
【0064】
(5)実施例1−(4)で得られたフラクションの番号23,24を減圧濃縮後、クロロホルムに溶解し、ヘキサンによる再結晶を行い、黄色物質を得た。
【0065】
(6)実施例1−(5)で得られた黄色物質について、核磁気共鳴(NMR)スペクトル装置(AVANCE600型:ブルカ・バイオスピン社製)を用い、各種NMRスペクトルを測定し構造解析した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの番号は下記式(化11)のとおりである。
【0066】
【化11】

【0067】
H−NMR(重クロロホルム):δ1.34(3H,s,CH−3”),1.57(2H,m,H−4”),1.65(3H,s,CH−7”),1.71(3H,s,CH−7”),1.79(1H,s,OH−3”),2.11(1H,m,H−5”),2.19(1H,m,H−5”),3.19(2H,d,J=8.7Hz,H−1”),4.82(1H,t,J=8.7Hz,H−2”),5.15(1H,t,J=6.7Hz,H−6”),5.21(1H,s,OH−4),6.44(1H,d,J=8.4Hz,H−5’),6.89(2H,d,J=7.2Hz,H−3およびH−5),7.46(1H,d,J=15.0Hz,H−α),7.58(2H,d,J=7.2Hz,H−2およびH−6),7.80(1H,d,J=8.4Hz,H−6’),7.84(1H,d,J=15.0Hz,H−β),13.51(1H,s,OH−2’)
図1にH−NMRスペクトルを示す。
【0068】
13C−NMR(重クロロホルム):δ18.1(CH−7”),22.4(C−5”),23.2(CH−3”),26.1(CH−7”),27.3(C−1”),37.1(C−4”),74.2(C−3”),91.6(C−2”),102.1(C−5’),114.2(C−3’),115.4(C−1’),116.4(C−3およびC−5),118.6(C−α),124.4(C−6”),128.2(C−1),130.9(C−2およびC−6),132.1(C−6’),132.7(C−7”),144.3(C−β),158.3(C−4),161.9(C−2’),167.0(C−4’),192.5(C=O)
図2にC13−NMRスペクトルを示す。
【0069】
次いで、実施例1−(5)で得られた黄色物質の質量スペクトル(MS)を質量分析計(DX302:日本電子社製)によりFAB−MSの手法で測定した。
FAB−MS:m/z 407(M−H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0070】
以上、NMRスペクトル、質量スペクトル解析の結果、実施例1−(5)で得られた黄色物質が1−[2,3−dihydro−4−hydroxy−2−(1−hydroxy−1,5−dimethyl−4−hexenyl)−benzofuran−5−yl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量408,TB3)であることを確定した。
【0071】
実施例2 TB4の調製
(1)実施例1−(2)で得られた40%エタノール水溶液溶出画分を減圧濃縮し、シリカゲル(350mL)に吸着させた。溶出はクロロホルム:メタノールの溶媒比を50:1(960mL)、40:1(520mL)、20:1(1000mL)、10:1(840mL)、5:1(520mL)の順に段階的に行い、溶出液を8mLごとに分画した。
【0072】
(2)実施例2−(1)で得られたシリカフラクションの番号118から132を集めて濃縮乾固して黄色物質を得た。
【0073】
(3)実施例2−(2)で得られた黄色物質のNMRスペクトルと質量スペクトルを実施例1−(6)と同様の方法で測定した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの帰属の番号は以下の下記式(化12)のとおりである。
【0074】
【化12】

【0075】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.18(3H,s,CH−3”),1.28(3H,s,CH−3”),3.07(2H,m,H−1”),3.87(3H,s,OCH−4’),4.72(1H,s,OH−3”),4.78(1H,t,J=8.7Hz,H−2”),6.65(1H,d,J=9.0Hz,H−5’),6.82(2H,d,J=8.4Hz,H−3およびH−5),7.57(2H,d,J=8.4Hz,H−2およびH−6),7.59(1H,d,J=15.6Hz,H−β),7.69(1H,d,J=9.0Hz,H−6’),7.81(1H,d,J=15.6Hz,H−α),10.02(1H,s,OH−4)
図3にH−NMRスペクトルを示す。
【0076】
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ26.2(CH−3”),26.8(CH−3”),27.6(C−1”),56.5(OCH−4’),70.9(C−3”),91.5(C−2”),105.2(C−5’),115.7(C−3’),116.0(C−1’),116.7(C−3およびC−5),123.8(C−α),127.0(C−1),131.0(C−2およびC−6),131.3(C−6’),142.7(C−β),160.5(C−4’),160.6(C−4),161.8(C−2’),186.5(C=O)
図4に13C−NMRスペクトルを示す。
【0077】
FAB−MS:m/z 353(M−H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0078】
以上、NMRスペクトル、質量スペクトル解析の結果、実施例2−(2)で得られた黄色物質が1−[2,3−dihydro−2−(1−hydroxy−1−methylethyl)−4−methoxybenzofuran−7−yl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量354、TB4)であることを確定した。
【0079】
実施例3 TB5の調製
(1)実施例2−(1)で得られたシリカフラクションの番号335から349を集めて減圧濃縮後、逆相クロマトグラフィーを用いて分画した。樹脂はコスモシール140 C18−OPN(30mL)を用いた。それぞれ200mLの10%エタノール水溶液、15%エタノール水溶液、20%エタノール水溶液、25%エタノール水溶液、30%エタノール水溶液、500mLの35%エタノール水溶液、200mLの75%エタノール水溶液の順に溶出を行い、100mLごとに溶出液を分画した。
【0080】
(2)実施例3−(1)で得られたフラクションの番号6、7を集めて濃縮乾固後、黄色物質を得た。
【0081】
(3)実施例3−(2)で得られた黄色物質のNMRスペクトルと質量スペクトルを実施例1−(6)と同様の方法で測定した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの帰属の番号は以下の下記式(化13)のとおりである。
【0082】
【化13】

【0083】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ0.96(3H,s,CH−7”),1.02(3H,s,CH−7”),1.16(1H,m,H−5”),1.61(1H,m,H−5”),1.73(3H,s,CH−3”),1.85(1H,m,H−4”),2.15(1H,m,H−4”),3.01(1H,m,H−6”),3.24(1H,m,H−1”),3.31(1H,m,H−1”),4.00(1H,s,OH−7”),4.23(1H,d,J=6.0Hz,OH−6”),5.19(1H,t,J=7.2Hz,H−2”),6.47(1H,d,J=8.4Hz,H−5’),6.84(2H,d,J=8.4Hz,H−3およびH−5),7.75(1H,d,J=5.4Hz,H−α),7.75(1H,d,J=5.4Hz,H−β),7.75(2H,d,J=8.4Hz,H−2およびH−6),8.03(1H,d,J=8.4Hz,H−6’),10.11(1H,s,OH−4),10.55(1H,s,OH−4’),14.00(1H,s,OH−2’)
図5にH−NMRスペクトルを示す。
【0084】
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ17.0(CH−3”),22.1(C−1”),25.4(CH−7”),27.2(CH−7”),30.3(C−5”),37.5(C−4”),72.4(C−7”),78.0(C−6”),108.2(C−5’),113.6(C−1’),115.4(C−3’),116.7(C−3およびC−5),118.3(C−α),122.4(C−2”),126.7(C−1),130.7(C−6’),132.0(C−2およびC−6),135.7(C−3”),145.0(C−β),161.1(C−4),163.2(C−4’),164.4(C−2’),192.6(C=O)
図6に13C−NMRスペクトルを示す。
【0085】
FAB−MS:m/z 425(M−H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0086】
以上、NMRスペクトル,質量スペクトル解析の結果、実施例3−(2)で得られた黄色物質が1−[2,4−dihydroxy−3−(6,7−dihydroxy−3,7−dimethyl−2−octenyl)phenyl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量426,TB5)であることを確定した。
【0087】
実施例4 TB6の調製
(1)実施例2−(1)で得られたシリカフラクションの番号142から164を集めて濃縮乾固後、酢酸エチルに溶解した。続いてヘキサンによる再結晶を行い、生じた沈殿と上清とを分けた。
【0088】
(2)実施例4−(1)で得られた上清の濃縮物をシリカゲル(100mL)に吸着させた。溶出はヘキサン:酢酸エチル=7:5の溶媒を用い、溶出液を8mLごとに分画した。
【0089】
(3)実施例4−(2)で得られたシリカフラクションの番号41から51を集めて濃縮乾固して黄色物質を得た。
【0090】
(4)実施例4−(3)で得られた黄色物質のNMRスペクトルと質量スペクトルを実施例1−(6)と同様の方法で測定した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの帰属の番号は以下の下記式(化14)のとおりである。
【0091】
【化14】

【0092】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ0.96(3H,s,CH−7”),0.99(3H,t,J=6.9Hz,−O−CH−CH),1.04(3H,s,CH−7”),1.15(1H,m,H−5”),1.60(1H,m,H−5”),1.72(3H,s,CH−3”),1.89(1H,m,H−4”),2.13(1H,m,H−4”),3.18(1H,m,H−6”),3.24(2H,m,H−1”),3.29(2H,m,−O−CH−CH),4.27(1H,d,J=6.0Hz,OH−6”),5.20(1H,t,J=6.9Hz,H−2”),6.47(1H,d,J=9.0Hz,H−5’),6.84(2H,d,J=8.4Hz,H−3およびH−5),7.75(1H,d,J=4.8Hz,H−α),7.75(1H,d,J=4.8Hz,H−β),7.75(2H,d,J=8.4Hz,H−2およびH−6),8.31(1H,d,J=9.0Hz,H−6’),10.11(1H,s,OH−4),10.55(1H,s,OH−4’),14.00(1H,s,OH−2’)
図7にH−NMRスペクトルを示す。
【0093】
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ17.0(CH−3”),17.0(−O−CH−CH),21.1(CH−7”),22.1(C−1”),23.3(CH−7”),29.9(C−5”),37.2(C−4”),56.6(−O−CH−CH),75.1(C−6”),77.5(C−7”),108.2(C−5’),113.6(C−1’),115.4(C−3’),116.7(C−3およびC−5),118.3(C−α),122.7(C−2”),126.7(C−1),130.6(C−6’),132.0(C−2およびC−6),135.5(C−3”),145.0(C−β),161.1(C−4),163.1(C−4’),164.4(C−2’),192.6(C=O)
図8に13C−NMRスペクトルを示す。
【0094】
FAB−MS:m/z 453(M−H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0095】
以上、NMRスペクトル、質量スペクトル解析の結果、実施例4−(3)で得られた黄色物質が1−[3−(7−ethoxy−6−hydroxy−3,7−dimethyl−2−octenyl)−2,4−dihydroxyphenyl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量454、TB6)であることを確定した。
【0096】
実施例5 TB7の調製
(1)実施例1−(4)で得られたフラクションの番号4から22を減圧濃縮後、クロロホルムに溶解した。続いてヘキサンによる再結晶を行い、生じた沈殿と上清とを分けた。
【0097】
(2)実施例5−(1)で得られた上清の濃縮物をシリカゲル(350mL)に吸着させた。溶出はクロロホルム:ヘキサンの溶媒比を100:1(1500mL)、50:1(2600mL)、20:1(2600mL)、酢酸エチル(300mL)の順に段階的に行い、溶出液を8mLごとに分画した。
【0098】
(3)実施例5−(2)で得られたフラクションの21から30を集めて濃縮乾固して黄色物質を得た。
【0099】
(4)実施例5−(3)で得られた黄色物質のNMRスペクトルと質量スペクトルを実施例1−(6)と同様の方法で測定した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの帰属の番号は以下の下記式(化15)のとおりである。
【0100】
【化15】

【0101】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ0.91(3H,s,CH−7”),0.96(3H,s,CH−7”),1.21(3H,s,CH−3”),1.26(1H,m,H−4”),1.43(1H,m,H−4”),1.53(1H,m,H−5”),1.85(1H,m,H−5”),2.12(1H,t,J=7.2Hz,H−2”),2.52(1H,m,H−1”),2.56(1H,m,H−1”),3.62(1H,d,J=5.4Hz,H−6”),3.91(3H,s,OCH−4’),6.67(1H,d,J=9.0Hz,H−5’),6.85(2H,d,J=8.4Hz,H−3およびH−5),7.78(1H,d,J=15.6Hz,H−β),7.78(2H,d,J=8.4Hz,H−2およびH−6),7.83(1H,d,J=15.6Hz,H−α),8.23(1H,d,J=9.0Hz,H−6’),10.15(1H,s,OH−4),13.99(1H,s,OH−2’)
図9にH−NMRスペクトルを示す。
【0102】
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ19.0(CH−3”),21.3(C−1”),24.5(CH−7”),26.0(CH−7”),26.4(C−5”),39.9(C−4”),46.3(C−7”),53.5(C−2”),56.8(OCH−4’),85.8(C−6”),86.9(C−3”),103.7(C−5’),114.8(C−1’),116.7(C−3およびC−5),117.4(C−3’),118.2(C−α),126.6(C−1),131.3(C−6’),132.2(C−2およびC−6),145.7(C−β),161.3(C−4),163.5(C−2’),164.1(C−4’),193.4(C=O)
図10に13C−NMRスペクトルを示す。
【0103】
FAB−MS:m/z 421(M−H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0104】
以上、NMRスペクトル、質量スペクトル解析の結果、実施例5−(3)で得られた黄色物質が1−[3−(2,5−epoxy−2,6,6−trimethyl−cyclohexylmethyl)−2−hydroxy−4−methoxyphenyl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量422、TB7)であることを確定した。
【0105】
実施例6 TB8の調製
(1)実施例1−(3)で得られたシリカフラクションの番号10から15を集めて減圧濃縮後、クロロホルムに溶解した。続いてヘキサンによる再結晶を行い、生じた沈殿と上清とを分けた。
【0106】
(2)実施例6−(1)で得られた上清を減圧濃縮後、逆相クロマトグラフィーを用いて分画した。カラムはTSK gel ODS−80Ts(21.5mm×30cm:東ソー社製)を用いた。溶媒は蒸留水:アセトニトリル=15:85、溶出速度は5mL/分、検出は215nmで行った。溶出液の紫外線吸収を指標に溶出液を分画した。
【0107】
(3)実施例6−(2)で得られた逆相クロマトフラクション2(保持時間57.6分の検出ピークを含むフラクション)を濃縮乾固して黄色物質を得た。
【0108】
(4)実施例6−(3)で得られた黄色物質のNMRスペクトルと質量スペクトルを実施例1−(6)と同様の方法で測定した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの帰属の番号は以下の下記式(化16)のとおりである。
【0109】
【化16】

【0110】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.19(3H,s,CH−7”),1.19(3H,s,CH−7”),1.70(3H,s,CH−3”),2.62(2H,d,J=6.6Hz,H−4”),3.29(1H,m,H−1”),3.31(1H,m,H−1”),3.91(3H,s,OCH−4’),5.19(1H,t,J=6.9Hz,H−2”),5.47(1H,m,H−5”),5.55(1H,d,J=15.6Hz,H−6”),6.68(1H,d,J=9.0Hz,H−5’),6.85(2H,d,J=8.4Hz,H−3およびH−5),7.78(2H,d,J=8.4Hz,H−2およびH−6),7.79(1H,d,J=13.2Hz,H−β),7.83(1H,d,J=13.2Hz,H−α),8.23(1H,d,J=9.0Hz,H−6’),10.14(1H,s,OH−4),10.81(1H,s,OOH−7”),13.81(1H,s,OH−2’)
図11にH−NMRスペクトルを示す。
【0111】
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ16.8(CH−3”),22.1(C−1”),25.5(CH−7”),25.5(CH−7”),43.0(C−4”),56.9(OCH−4’),81.1(C−7”),103.7(C−5’),114.9(C−1’),116.6(C−3’),116.7(C−3およびC−5),118.1(C−α),123.5(C−2”),126.5(C−1),127.9(C−5”),131.4(C−6’),132.3(C−2およびC−6),134.3(C−3”),137.0(C−6”),145.7(C−β),161.3(C−4),163.0(C−2’),163.9(C−4’),193.3(C=O)
図12に13C−NMRスペクトルを示す。
【0112】
FAB−MS:m/z 437(M−H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0113】
以上、NMRスペクトル,質量スペクトル解析の結果、実施例6−(3)で得られた黄色物質が1−[2−hydroxy−3−(7−hydroperoxy−3,7−dimethyl−2,5−octadienyl)−4−methoxyphenyl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量438,TB8)であることを確定した。
【0114】
実施例7 TB9の調製
(1)実施例6−(2)で得られた逆相クロマトフラクション3(保持時間61.2分の検出ピークを含むフラクション)を濃縮乾固して黄色物質を得た。
【0115】
(2)実施例7−(1)で得られた黄色物質のNMRスペクトルと質量スペクトルを実施例1−(6)と同様の方法で測定した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの帰属の番号は以下の下記式(化17)のとおりである。
【0116】
【化17】

【0117】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.40(1H,m,H−5”),1.56(1H,m,H−5”),1.62(3H,s,CH−7”),1.72(3H,s,CH−3”),1.89(2H,m,H−4”),3.27(1H,m,H−1”),3.31(1H,m,H−1”),3.91(3H,s,OCH−4’),4.07(1H,t,J=6.9Hz,H−6”),4.79(1H,s,H−8”),4.84(1H,s,H−8”),5.14(1H,t,J=6.6Hz,H−2”),6.68(1H,d,J=9.0Hz,H−5’),6.85(2H,d,J=8.4Hz,H−3およびH−5),7.78(2H,d,J=8.4Hz,H−2およびH−6),7.78(1H,d,J=15.0Hz,H−β),7.83(1H,d,J=15.0Hz,H−α),8.24(1H,d,J=9.0Hz,H−6’),10.15(1H,s,OH−4),11.25(1H,s,OOH−6”),13.81(1H,s,OH−2’)
図13にH−NMRスペクトルを示す。
【0118】
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ16.7(CH−3”),17.7(CH−7”),22.0(C−1”),29.5(C−5”),36.0(C−4”),56.9(OCH−4’),88.2(C−6”),103.6(C−5’),114.0(C−8”),114.9(C−1’),116.7(C−3’),116.7(C−3およびC−5),118.1(C−α),122.9(C−2”),126.5(C−1),131.3(C−6’),132.3(C−2およびC−6),134.9(C−3”),145.3(C−7”),145.7(C−β),161.3(C−4),163.0(C−2’),163.8(C−4’),193.3(C=O)
図14に13C−NMRスペクトルを示す。
【0119】
FAB−MS:m/z 437(M−H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0120】
以上、NMRスペクトル,質量スペクトル解析の結果、実施例7−(1)で得られた黄色物質が1−[2−hydroxy−3−(6−hydroperoxy−3,7−dimethyl−2,7−octadienyl)−4−methoxyphenyl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量438,TB9)であることを確定した。
【0121】
実施例8 化合物(C081)の調製
(1)実施例6−(3)で得られたTB8 100mgをメタノール50mLに溶解し、トリフェニルホスフィン(東京化成工業社製:60mg)を加え室温で1時間反応した。反応液を減圧濃縮し、クロロホルム:メタノール=10:1を展開溶媒とした薄層クロマトグラフィーに供した。次に、紫外線吸収部分をかきとり、展開溶媒で抽出後、濃縮乾固することにより、黄色物質57.2mgを得た。
【0122】
(2)実施例8−(1)で得られた黄色物質のNMRスペクトルと質量スペクトルを実施例1−(6)と同様の方法で測定した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの帰属の番号は以下の式(化18)のとおりである。
【0123】
【化18】

【0124】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.13(3H,s,CH−7”),1.13(3H,s,CH−7”),1.70(3H,s,CH−3”),2.59(2H,d,J=7.2Hz,H−4”),3.28(2H,d,J=7.2Hz,H−1”),3.91(3H,s,OCH−4’),4.42(1H,s,OH−7”),5.17(1H,t,J=7.2Hz,H−2”),5.42(1H,m,H−5”),5.52(1H,d,J=15.0Hz,H−6”),6.68(1H,d,J=9.0Hz,H−5’),6.85(2H,d,J=9.0Hz,H−3およびH−5),7.77(1H,d,J=15.0Hz,H−β),7.78(2H,d,J=9.0Hz,H−2およびH−6),7.83(1H,d,J=15.0Hz,H−α),8.24(1H,d,J=9.0Hz,H−6’),10.17(1H,s,OH−4),13.80(1H,s,OH−2’)
図15にH−NMRスペクトルを示す。
【0125】
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ16.8(CH−3”),22.1(C−1”),31.0(CH−7”),31.0(CH−7”),42.7(C−4”),56.9(OCH−4’),69.7(C−7”),103.6(C−5’),114.9(C−1’),116.7(C−3’),116.7(C−3およびC−5),118.1(C−α),123.2(C−2”),123.9(C−5”),126.6(C−1),131.3(C−6’),132.3(C−2およびC−6),134.6(C−3”),141.5(C−6”),145.7(C−β),161.3(C−4),163.0(C−2’),163.8(C−4’),193.3(C=O)
図16に13C−NMRスペクトルを示す。
【0126】
FAB−MS:m/z 421(M−H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0127】
以上、NMRスペクトル、質量スペクトル解析の結果、実施例8−(1)で得られた黄色物質が1−[2−hydroxy−3−(7−hydroxy−3,7−dimethyl−2,5−octadienyl)−4−methoxyphenyl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量422、化合物(C081))であることを確定した。
【0128】
実施例9 化合物(C042)の調製
(1)2’,4’−Dihydroxyacetophenone(和光純薬社製)を2M水酸化カリウムメタノール溶液中、氷冷下1−Bromo−2−methyl−2−butene(アルドリッチ社製)で処理した後、メタノール中、パラジウム黒(ナカライテスク社製)存在下、水素還元することで2’,4’−Dihydroxy−3’−(3−methylbutyl)acetophenoneを得た。続いて、2’,4’−Dihydroxy−3’−(3−methylbutyl)acetophenoneと4−Hydroxybenzaldehyde(アルドリッチ社製)とクライゼン縮合することにより、黄色物質を得た。
【0129】
(2)実施例9−(1)で得られた黄色物質のNMRスペクトルと質量スペクトルを実施例1−(6)と同様の方法で測定した。以下にNMRの帰属の信号を示す。なお、ピークの帰属の番号は以下の式(化19)のとおりである。
【0130】
【化19】

【0131】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ0.91(3H,s,CH−3”),0.92(3H,s,CH−3”),1.34(2H,m,H−2”),1.54(1H,m,H−3”),2.55(2H,m,H−1”),6.47(1H,d,J=9.0Hz,H−5’),6.84(2H,d,J=9.0Hz,H−3およびH−5),7.74(2H,d,J=9.0Hz,H−2およびH−6),7.74(2H,s,H−α,H−β),8.02(1H,d,J=9.0Hz,H−6’),10.10(1H,s,OH−4),10.46(1H,s,OH−4’)13.98(1H,s,OH−2’)
図17にH−NMRスペクトルを示す。
【0132】
FAB−MS:m/z 327(M+H)メタニトロベンジルアルコールをマトリックスに用いた。
【0133】
以上、NMRスペクトル、質量スペクトル解析の結果、実施例9−(1)で得られた黄色物質が1−[2,4−dihydroxy−3−(3−methylbutyl)phenyl]−3−(4−hydroxyphenyl)−2−propen−1−one(分子量326、化合物(C042))であることを確定した。
【0134】
実施例10 アルドースレダクターゼ阻害活性
実施例1〜9で調製した化合物(TB3、TB4、TB5、TB6、TB7、TB8、TB9、化合物(C081)又は化合物(C042))のアルドースレダクターゼ阻害活性を以下の方法により測定した。試料(各化合物を50%ジメチルスルホキシド水溶液に溶解したもの)10μL、0.2Mリン酸緩衝液(pH6.2)100μL、1mM NADPH(リン酸緩衝液)20μL、人筋肉細胞由来アルドースレダクターゼ溶液(0.1U/mL、和光純薬工業社製、リン酸緩衝液)10μLに100mMメチルグリオキサール20μLを加え、30秒経過の後より180秒間、NADPHの340nmにおける吸光度の変化を測定した。陰性対照試料として試料の代わりに50%ジメチルスルホキシド水溶液を使用した。また、各試料のブランクとしてメチルグリオキサール溶液の代わりに蒸留水を使用して吸光度を測定した。測定値は2回の実験値の平均値で示した。アルドースレダクターゼ阻害率(%)は以下の式により算出した。
阻害率(%)=[1−(△As−△Asb)/(△Ac−△Acb)]×100
ここで、△As及び△Acはそれぞれ試料溶液、陰性対照溶液の1分間あたりの吸光度変化を示し、△Asb及び△Acbはそれぞれ試料溶液、陰性対照溶液のブランク溶液の1分間あたりの吸光度変化を示す。
試料の添加量は各化合物の最終濃度を表1に示す通りとした。その結果、TB3、TB4、TB5、TB6、TB7、TB8、TB9、化合物(C081)及び化合物(C042)に濃度依存的にアルドースレダクターゼ阻害活性のあることが明らかになった。表1にその結果を示す。
【0135】
【表1】

【0136】
実施例11 NO産生抑制活性
実施例1〜9で調製した化合物(TB3、TB4、TB5、TB6、TB7、TB8、TB9、化合物(C081)及び化合物(C042))のNO産生抑制活性を以下の方法により測定した。10%ウシ胎児血清(バイオウィタカー社製、14−506F)含有、ダルベッコ改良イーグル培地(シグマ社製、D5796)にRAW264.7細胞(ATCC TIB 71)を4x10個/mLになるように懸濁し、48穴マイクロタイタープレートのウェルに500μLずつ加えて5%炭酸ガス存在下、37℃で培養した。24時間後に、10%ウシ胎児血清(バイオウィタカー社製)含有、フェノールレッド不含、2mM L−グルタミン(ライフテックオリエンタル社製、25030−149)含有ダルベッコ改良イーグル培地(バイオウィタカー社製,12−917F)に交換し、各ウェルにそれぞれ1μLの10mM、5mM、2.5mMのTB3、TB4、TB5、TB6、TB7、TB8、TB9、化合物(C081)又は化合物(C042)(いずれもジメチルスルホキシド溶液)を添加した。さらに1時間培養した後、各ウェルに5μLの100μg/mLリポポリサッカライド(LPS、シグマ社製、L−2010)水溶液を添加して16時間培養した後、NOが培地中で酸化されることによって生じるNO濃度を測定した。なお、対照として各化合物の代わりにジメチルスルホキシドを添加した区分を設定した。上記培養後、100μLの培養上清に100μLの4%グリース試薬(シグマ社製、G4410)を加え、室温で15分間放置した後、540nmにおける吸光度を測定した。既知の濃度のNaNO(シグマ社製、S2252)で作製した検量線から培地中のNO濃度を計算した。測定はすべて2連で行った。各化合物のNO産生抑制能は以下の式に従い算出した。
X:各化合物存在下のNO
Y:対照におけるNO
NO産生抑制能(%)=[1−X/Y]×100
その結果、TB3、TB4、TB5、TB6、TB7、TB8、TB9、化合物(C081)及び化合物(C042)はLPSによるNO産生誘導を濃度依存的に抑制した。その結果を表2に示す。
【0137】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明により、新規なカルコン類化合物が提供される。当該化合物はそのNO産生抑制作用又はアルドースレダクターゼ阻害作用を有しており、当該生理活性を利用した医薬、食品、飲料または飼料の有効成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(9)のいずれかで表されるカルコン類化合物、その誘導体又はそれらの塩。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【請求項2】
請求項1記載の化合物、その誘導体又はそれらの塩を有効成分として含有することを特徴とする、当該化合物に感受性を示す疾患の治療剤又は予防剤。
【請求項3】
該化合物に感受性を示す疾患が、治療又は予防に一酸化窒素産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を要する疾患である請求項2記載の治療剤又は予防剤。
【請求項4】
請求項1記載の化合物、その誘導体又はそれらの塩を有効成分として含有することを特徴とする、一酸化窒素産生抑制剤又はアルドースレダクターゼ阻害剤。
【請求項5】
請求項1記載の化合物、その誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とする食品、飲料又は飼料。
【請求項6】
該化合物に感受性を示す疾患の治療用又は予防用である請求項5記載の食品、飲料又は飼料。
【請求項7】
該化合物に感受性を示す疾患が、治療又は予防に一酸化窒素産生抑制又はアルドースレダクターゼ阻害を要する疾患である請求項6記載の食品、飲料又は飼料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【国際公開番号】WO2005/054170
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515950(P2005−515950)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017887
【国際出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】