説明

波長変換デバイス及び波長変換装置

【課題】実装が容易で、入力する光源のパワーの損失を抑え、高いパワー入力が可能な、小型で低価格の波長変換デバイスを提供する。
【解決手段】波長λ1とλ2の入射光または波長λ1とλ3の入射光がマルチモード伝播することにより、内部でのモード干渉によって第1の波長(λ1)の光と第2の波長(λ2またはλ3)の光とが結合され、第1の波長の光と第2の波長とが収束する点に出力端面が設けられた光合波部を備え、出力端面の収束する点に結合された非線形光学媒質から、波長λ1とλ2の入射光に対し波長λ3の変換光を、波長λ1とλ3の入射光に対し波長λ2の変換光が出力され、光合波部と前記非線形光学媒質とが同一基板上に集積されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光合波器、波長変換デバイス及び波長変換装置に関し、より詳細には、マルチモード干渉(MMI:Multi-Mode Interference)を利用した光合波器および光合波器を集積した波長変換デバイスと、波長変換デバイスを用いた波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信における光信号波長変換、光変調、光計測、光加工、医療、生物工学などの応用のための紫外域−可視域−赤外域−テラヘルツ域にわたるコヒーレント光の発生と変調のために、多くの非線形光学デバイス及び電気光学デバイスの開発が進められている。このような素子に用いられる非線形光学媒質および電気光学媒質として、種々の材料が研究開発されている。ニオブ酸リチウム(LiNbO3、以下、LNという)などの酸化物系化合物基板は、2次非線形光学定数・電気光学定数が非常に高く有望な材料として知られている。LNの高い非線形性を用いた光デバイスの一例として、擬似位相整合による差周波発生を利用した波長変換素子が知られている。
【0003】
近年、光通信システムの通信容量の増大を図るために、波長の異なる複数の光を多重化して伝送する波長分割多重(WDM)通信システムが積極的に導入されている。このようなWDM通信システムにおいては、限られた波長数を有効に利用するために、信号波長を任意の信号波長に変換する波長変換デバイスの実用化が求められている。
【0004】
従来、光の波長を変換する波長変換素子としては、半導体光増幅器を用いるもの、四光波混合を利用するもの等が知られている。しかしながら、これらの波長変換素子においては光通信システムにおいて求められる、高効率、高速、広帯域、低ノイズ、偏波無依存などの条件を満足させることはできていなかった。
【0005】
図1に、従来のLNを用いた擬似位相整合型の波長変換素子の構成を示す。比較的小さな光強度を持つ信号光Aと、比較的大きな光強度を持つ励起光Bは、合波器1により合波され、分極反転構造を有する非線形光学媒質の光導波路2に入射される。光導波路2中で信号光Aは、非線形光学効果による差周波波発生により別の波長を持つ変換光Cへと変換される。変換光Cは、励起光Bと共に光導波路2から出射される。出射された変換光Cと励起光Bは、分波器3により分離される。信号光A、励起光Bの波長をそれぞれλ1、λ3とすると変換光Cの波長λ2は、
1/λ2=1/λ3−1/λ1
を満足する。変換光Cの波長λ2は、信号光の波長λ1を励起光波長λ3の2倍の波長を軸に折り返した波長となる。例えば、励起光Bの波長λ1=0.78μmとした場合、波長λ1=1.54μmの信号光Aを、波長λ2=1.58μmの差周波光である変換光Cへと変換することができる。
【0006】
信号光A及び変換光Cに対する変換帯域は、励起光の波長に対して±30nm以上と広く、例えば、波長分割多重(WDM)光通信に用いられる波長帯域C帯に束ねられたWDM信号をL帯へ、またはL帯からC帯へといった波長群の一括変換が可能である。
【0007】
このような擬似位相整合を利用した波長変換素子を作製する従来の方法においては、LNなどの非線形光学結晶基板に周期分極反転構造を作製した後、プロトン交換導波路を作製することによって波長変換素子を作製していた。これに対して、光導波路中への光閉じ込めを改善し、バルクもしくはバルクに近い非線形効果を利用した高効率な波長変換を実現するために、リッジ型の光導波路構造を有する波長変換素子が提案されている。
【0008】
リッジ型光導波路を作製する方法を説明する。まず、Mg添加LN基板に周期分極反転構造を作製した後、別に用意したLN基板に接着剤を用いて接着する。Mg添加LN基板の基板厚さを平面研削加工によって薄くした後、ダイシングソーを用いた精密研削加工によってリッジ型導波路を作製する(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
このような擬似位相整合を利用したLNを用いた波長変換の励起光として、差周波発生による1.5μm帯の波長変換を行なうために必要な励起波長の2倍の波長を持つ光が用いられることが多かった。図1で説明した波長変換の例では、波長λ3=0.78μmの代わりに波長λ3’=1.56μmの励起光が用いられることになる。これは、カスケード励起と呼ばれる手法で、図1で励起光Bの波長λ3’=1.56μmとした場合、非線形光学媒質内部で励起光の第二高調波(波長:0.78μm)が発生する。非線形光学媒質で発生した第二高調波と信号光Aとの差周波発生により、さらに変換光Cを得ることができる。
【0010】
励起光に0.78μm帯を用いる方法では、0.78μmの安定で波長精度が高く、高出力な光源が広く普及しておらず、簡単に準備することが困難であった。また、信号光と励起光の波長が半分も異なることから、光導波路の最適サイズが異なる。これにより導波路へ光を入射する際に、所望のモード以外の励振の抑制が必要となるなどの困難があった。一方、カスケード励起法では、励起光の光源として、広く普及している安定で信頼性の高い1.5μm帯の光源を用いることができる。さらに、光ファイバアンプなどを用いることにより、簡単に高出力光を得ることができることから、従来、広く用いられてきた。(例えば、非特許文献2参照)
しかしながら、カスケード励起による波長変換においては、変換光の品質が劣化しやすいという問題があった。カスケード励起法では、励起光に1.5μm帯の光源を用いるため、波長の近い励起光と信号光・変換光の分離が困難となるので、ガードバンドと呼ばれる励起光波長と信号光・変換光との間に一定の帯域を設ける必要があった。この帯域を確保することにより、利用できる波長変換帯域が狭まり、一括変換できる波長数が少なくなってしまうという問題があった。
【0011】
また、ガードバンドを設けると、信号光に近接する波長への変換が不可能になるという問題もあった。さらに、高い励起光を得るために光ファイバアンプを使用すると、ASEノイズの増加により信号光・変換光の品質が劣化するという問題があった。また、カスケード励起では、励起光・信号光間の和周波発生によるクロストーク光が増加し、信号の品質が劣化するという問題もあった。(例えば、非特許文献3参照)
従って、0.78μm帯光の励起による波長変換が望まれる。しかし、この波長変換方法は、信号光・励起光の入力が低損失かつ所望のモード以外のモードを励振することなく簡易に行なうことのできる手法が必要であった。
【0012】
一方、通信波長帯における波長変換器のほか、擬似位相整合型の波長変換素子を用いて、半導体レーザで実現されていない可視域または中赤外域でのレーザ光源の実用化が行なわれている。
【0013】
現在、実用化されているレーザには、He−Neレーザ、Arレーザなどのガスレーザ、Nd:YAGレーザなどの固体レーザ、色素レーザおよび半導体レーザが知られている。近年、可視および近赤外領域の波長帯を中心に、小型・軽量、安価な半導体レーザが普及している。特に、光通信の分野では、信号光源用の1.3μm帯および1.5μm帯半導体レーザと、ファイバアンプ励起用の0.98μm帯および1.48μm帯半導体レーザとが普及している。また、光記録媒体の読取装置のピックアップ用の光源として、CD(0.78μm帯)、DVD(0.65μm帯)・ブルーレイ(0.4μm帯)の半導体レーザも普及している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】川口竜生他「LiNbO3エピタキシャル成長と超精密加工技術による導波路型SHGデバイス」、レーザ研究、第28巻第9号、2000年9月、p.601-603
【非特許文献2】M.H.Chou et al.,“Optical Signal processing and Switching with Second-Order Nonlinearities in Waveguides,”IEICE Trans. Electorn., E83-C, 2000, p.869-874
【非特許文献3】J.Yamawaku et al.“Low-Crosstalk 103 Channel × 10 Gb/s (1.03 Tb/s) Wavelength Conversion With a Quasi-Phase-Matched LiNbO3 Waveguide,”IEEE J. Select. Topics Quantum Electron., Vol.12, No.4, 2006, p.521-528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、緑・黄緑・橙といった波長0.5〜0.6μmのレーザを、半導体で実現することは難しく、高効率な非線形光学媒質と半導体レーザを組み合わせたレーザ光源装置の開発が行われている。
【0016】
図2に、従来の緑色光源の構成を示す。レーザ光源は、2つの励起レーザ20、21と、周期的に分極反転させたLN非線形光学結晶24と、励起レーザ20、21から出力されたレーザ光を合波する合波器23と、合波された光をコリメートするレンズ22a、22bと、LN非線形光学結晶24を透過した励起レーザのレーザ光とLN非線形光学結晶24で発生した和周波光とを分離するフィルタ25とから構成されている。
【0017】
励起レーザ20の波長λ1と、励起レーザ21の波長λ2とは、
1/λ1+1/λ2=1/λ3
を満足するような組合せとする。例えば、励起レーザ20の波長λ1=980nm、励起レーザ21の波長λ2=1300nmとすることにより、波長λ3=559nmの変換光を得ることができる。半導体レーザと波長変換素子とを組み合わせることにより、高効率・高安定な波長変換光源を実現できる。
【0018】
通常、合波器23には光ファイバ型の方向性結合器が用いられる。しかしながら、入力光を従来の合波器を用いて結合し波長変換素子に入力する方法では、波長変換装置(波長変換光源)の小型化が困難であるという課題があった。合波器は、単体で数cm程度の大きさをもっており、さらに光ファイバ型の方向性結合器の入出力ファイバを取り回す領域を確保する必要があり、小型化の大きな障害となっていた。
【0019】
次に、通常の合波器は、波長の大きく異なる光を結合させる場合、合波器の出力ファイバにおいて、少なくとも1つの波長の光の損失が大きくなるという問題があった。これは、波長によって最適な光ファイバのコアサイズが異なることに起因する。例えば、1300nmと980nmの2つの光の和周波発生を用いて、560nmの緑色光を波長変換によって取り出す場合を考える。1300nmのシングルモード光ファイバのコア径は約9μm、一方、980nmのシングルモード光ファイバのコア径は約6μmと異なる。合波器の入力ファイバには、各波長のシングルモード光ファイバを用いることができるが、合波後の出力ファイバにはどちらか一方、または両ファイバのコア径の中間のコア径の光ファイバを用いることになる。これにより、どちらか一方のシングルモード光ファイバを選んだ場合、もう一方の光伝播時の損失が増大する。中間のコア径の光ファイバを選んだ場合は、両波長の光に対して伝播損失が増大する。
【0020】
上述したように、通常の合波器の出力ファイバ、すなわち非線形光学結晶への入力ファイバが、少なくとも一方の波長の光に対してシングルモード光ファイバを用いることができない。このため、波長変換における所望のモードを励振することができず波長変換効率が低下するという問題があった。
【0021】
波長変換素子は、ある特定のモード(通常は基本モード)で変換が行われるように設計されている。シングルモードではない光ファイバを伝播してきた光は、光ファイバの取り回しなどによってはモード変換が起こり、別のモードで光ファイバ中を伝播してくる場合がある。特定のモードの光を波長変換素子に入射することができないと、波長変換効率が著しく低下する。また、シングルモードで伝播してきた光に対しても、導波路への入射条件によっては所望のモード以外が励振され効率が低下する。
【0022】
変換効率の低下を抑制するために他のモードの励振を抑制するためには、まず、出力側ファイバの曲率を大きく取り、次に、入力時に励起光のみならず変換光もモニターしながら調芯するなどの複雑な調整が必要になってしまうという課題があった。ここでは、1300nmと980nmの入力光の例を用いて説明をしたが、上述した通信用の波長変換においては、入力光が1560nmと780nmとより波長差が大きく、シングルモード光ファイバの径の差が大きく、問題が顕著になる。
【0023】
波長変換装置(波長変換光源)は、医療・バイオ・環境計測への利用が広がっており、産業応用としてもニーズが高く小型化への期待は大きい。これまでの通常の合波器を用いる場合には、合波器のコスト・実装のコストがかかっており低価格化が困難であるという問題もあった。さらに計測応用に留まらず、レーザーディスプレイなどのハイパワーの出力が必要な装置への適用も考えられている。しかしながら、通常の方向性結合器型の合波器は、光ファイバ融着を用いているため、ワット級のハイパワーの入力が難しいという問題があった。
【0024】
近年、光通信網において波長変換を用いた光アクセスの可視化技術が提案されている。この技術は、通信帯域の光を人間が視認できる可視光へ変換することにより、開通試験・サービス種別確認・障害原因の切り分けといった光アクセス網における保守・運用の作業効率を向上させコストを削減できると期待されている。しかしながら、上述した従来型の波長変換素子の構成では、デバイスの低コスト化が難しいという問題があった。
【0025】
本発明の目的は、変換光のパワーモニタなどの複雑な調整が不要であり、実装が容易で、入力する光源のパワーの損失を抑え、高いパワー入力が可能な、小型で低価格の波長変換デバイス及び波長変換装置を提供することにある。特に、通信用波長帯域の光の変換において、高品質な波長変換を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、このような目的を達成するために、1/λ3=1/λ2+1/λ1の関係を有する波長のうち、波長λ1とλ2または波長λ1とλ3の2つの入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λ3またはλ2の変換光をそれぞれ出力する波長変換デバイスであって、波長λ1とλ2の入射光または波長λ1とλ3の入射光がマルチモード伝播することにより、内部でのモード干渉によって第1の波長(λ1)の光と第2の波長(λ2またはλ3)の光とが結合され、前記第1の波長の光と前記第2の波長とが収束する点に出力端面が設けられた光合波部を備え、前記出力端面の前記収束する点に結合された非線形光学媒質から、波長λ1とλ2の入射光に対し波長λ3の変換光が、波長λ1とλ3の入射光に対し波長λ2の変換光が出力され、前記光合波部と前記非線形光学媒質とが同一基板上に集積されていることを特徴とする。
【0027】
本発明にかかる波長変換装置は、前記波長変換デバイスと、前記波長λ1の入射光を前記光合波部の入力端面から入力する第1のレーザと、前記波長λ1またはλ3の入射光を前記光合波部の入力端面から入力する第2のレーザと、前記非線形光学媒質から出力された、波長λ3またはλ2の変換光を分離するフィルタとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、波長変換に必要な合分波機能とモードフィルタ機能を同一波長変換デバイス上に集積できるため、実装が容易で光損失が少なく、高パワー入力への耐性が強く、小型な波長変換デバイスを低価格に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のLNを用いた擬似位相整合型の波長変換素子の構成を示す概略図である。
【図2】従来の緑色光源の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる光合波器を集積した波長変換デバイスの構成を示す図である。
【図4】図3に示したモード干渉導波路における光の結合を示すシミュレーション結果の図である。
【図5】図3に示した波長変換導波路を作製する工程を示す図である。
【図6】本発明の一実施例にかかる波長変換デバイスの寸法を示す図である。
【図7】本発明の一実施例にかかる波長変換デバイスの入力導波路を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施例にかかる波長変換デバイスの作製方法を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施例にかかる波長変換デバイスの第1の実験結果を示すスペクトル図である。
【図10】本発明の一実施例にかかる波長変換デバイスの第2の実験結果を示すスペクトル図である。
【図11】本発明の第2の実施形態にかかる緑色光源の構成を示す概略図である。
【図12】図11に示したモード干渉導波路における光の結合を示すシミュレーション結果の図である。
【図13】本発明の第3の実施形態にかかる青色・緑色光源の構成を示す概略図である。
【図14】図13に示したモード干渉導波路における光の結合を示すシミュレーション結果の図である。
【図15】本発明の第4の実施形態にかかるインライン型波長変換装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図3に、本発明の第1の実施形態にかかる光合波器を集積した波長変換デバイスの構成を示す。光合波器を集積した波長変換デバイスは、基板30上に、第1の入力導波路31と第2の入力導波路32と、光合波器として機能するモード干渉導波路33と、波長変換導波路34とを備える。入力導波路31、32は、モード干渉導波路33の光軸を示す中心線35から軸ズレした位置で、モード干渉導波路33の入力側と結合している。第1の入力導波路31は、波長1.56μmの信号光を誘導し、第2の入力導波路32は、波長0.78μmの励起光を誘導する。
【0031】
図4は、図3に示したモード干渉導波路における光の結合を示すシミュレーション結果である。波長1.56μmの信号光と波長0.78μmの励起光とが結合する様子を、BPM(Beam Propagation Method)によるシミュレーションによって示した。ここで、図4(a)に示すように、モード干渉導波路33の幅Wm=30μm、入力導波路の軸ズレ量Δ1=5μm、出力導波路軸ズレ量Δ2=5μm、クラッドの屈折率=1.0、コアの屈折率=約2.1である。
【0032】
図4(b)は、波長0.78μmの励起光の振る舞いを示す図である。モード干渉導波路33の中心から軸ズレ(Δ1)した位置に接続されている第2の入力導波路32から入射した2つの励起光は、モード干渉導波路33に固有の複数のモードに展開され、モード干渉導波路33内をマルチモード伝播する。このとき、各モードの伝播定数が異なるために生じるモード干渉によって、波長0.78μmの光量がある光路長を伝播した後、極値(収束点)を取る。
【0033】
図4(c)は、波長1.56μmの信号光の振る舞いを示す図である。モード干渉導波路33の中心から軸ズレ(Δ1)した位置に接続されている第1の入力導波路31から入射した信号光は、モード干渉導波路33に固有の複数のモードに展開され、モード干渉導波路33内をマルチモード伝播する。このとき、各モードの伝播定数が異なるために生じるモード干渉によって、波長1.56μmの光量がある光路長を伝播した後、極値(収束点)を取る。
【0034】
収束点から次の収束点までの光路長をビート長と呼び、その長さをLπとすると、ほぼ以下の式に従う。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、Weは光の感じる実効的なモード干渉導波路の幅、ngは実効屈折率、λ0は入力光の波長である。ビート長は各波長に対し逆数で影響するため、本実施形態のように波長が半分異なる場合は、0.78μmが1回ビートを打つ間に1.56μmが2回ビートを打つ。両者が収束する点の近傍に出力端面を設け、出力導波路34を結合することにより0.78μmの光と1.56μmの光とを結合することができる。
【0037】
図4に示したシミュレーション結果では、出力導波路軸ズレ量Δ2は入力導波路軸ズレ量Δ1と同じである。これは、2つの入力導波路が、モード干渉導波路33の幅Wm=30μmを3等分する位置に設置されているためであり、収束点は入力導波路の延長上に収束する。一般に、収束点の位置(出力導波路軸ズレ量Δ2)は、入力導波路の位置(入力導波路のズレ量Δ1)に依存する。また、収束点は1つとは限らず、複数の収束点を持つ位置に出力導波路を設ける場合、どの収束点を用いるかによっても設置する出力導波路の軸ズレ量は異なる。従って、出力導波路の設置位置(軸ズレ量Δ2)は、波長・入力導波路の位置、合波分波の数等の条件を考慮し所望の収束位置に合わせて決める。このようにして、導波路のみの簡単な構成で容易に波長0.78μmと1.56μmの光を合波することができる。
【0038】
図5に、図3に示した波長変換導波路を作製する工程を示す。第1の実施形態においては、非線形光学媒質である第一の基板11は、液相エピタキシャル法によって成長された結晶膜からなるZカットZn添加LN基板である。第一の基板11には、あらかじめ1.5μm帯で位相整合条件が満たされるように、周期分極反転構造が作製されている。第二の基板12としてZカットLiTaO3基板を用いる。なお、非線形光学媒質として、LNの他に、KNbO3、LiTaO3、LiNb(x)Ta(1-x)3(0≦x≦1)、KTiOPO4、または、それらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有している材料を用いることができる。
【0039】
第一の基板11と第二の基板12とは、熱膨張係数がほぼ一致している。また、第一の基板11の屈折率よりも第二の基板12の屈折率のほうが小さい。なお、第一及び第二の基板11,12は何れも、両面が光学研磨されてある3インチウエハである。第一の基板11の厚さは300μm、第二の基板12の厚さは500μmである。
【0040】
用意した第一及び第二の基板11,12の表面を、通常の酸洗浄あるいはアルカリ洗浄によって親水性にした後、これら二つの基板をマイクロパーティクルが極力存在しない清浄雰囲気中で重ね合わせる。そして、重ね合わせた第一及び第二の基板11,12を電気炉に入れ、400℃で3時間熱処理することにより拡散接合を行う。接合された基板は、接合面にマイクロパーティクル等の挟み込みがなく、ボイドフリーであり、室温に戻したときにおいてもクラックなどは発生しない。
【0041】
次に、研磨定盤の平坦度が管理された研磨装置を用いて、接着された基板の第一の基板11の厚さが20μmになるまで研磨加工を施す。研磨加工の後に、ポリッシング加工を行うことにより、鏡面の研磨表面を得ることができる。基板の平行度(最大高さと最小高さとの差)を光学的な平行度測定機を用いて測定したところ、3インチウエハの周囲を除き、ほぼ全体にわたってサブミクロンの平行度が得られ、波長変換素子の作製に好適な薄膜基板13を作製することができる。この薄膜基板13は、接着剤を用いず、第一の基板11と第二の基板12とを熱処理による拡散接合によって直接貼り合わせることにより作製したため、3インチウエハの全面積にわたって均一な組成、膜厚を有する。
【0042】
その後、光導波路の作製手段としてはドライエッチングプロセスを用いて、波長変換導波路を作製する。薄膜基板13のうち、第一の基板11の表面に通常のフォトリソグラフィのプロセスによって導波路パターンを作製する。その後、ドライエッチング装置に基板をセットし、Arガスをエッチングガスとして薄膜基板13の第一の基板11の表面をエッチングすることによりリッジ型光導波路を作製する(後述の図7参照)。
【0043】
図6に、本発明の一実施例にかかる波長変換デバイスの寸法を示す。波長1.56μmの信号光用の入力導波路61および波長0.78μmの励起光用の入力導波路62の導波路幅は5μmである。入力導波路間隔は、光ファイバアレイのハーフピッチにあうように127μmになっている。波長1.56μmの信号光用の入力導波路61は直線導波路であり、波長0.78μmの励起光用の入力導波路62は、曲率5mmの緩やかなカーブを描いて波長1.56μmの光用の入力導波路61に漸近する。入力導波路間隔が10μmの所でモード干渉導波路63と結合している。モード干渉導波路の幅63は30μmであり、モード干渉導波路63の光路長を3.5mmとしている。波長1.56μmの信号光用の入力導波路61の光軸と同じ光軸上にモード干渉導波路の出力導波路を接続している。出力導波路である波長変換導波路64の幅は5μmとなっている。波長変換導波路64には、あらかじめ分極反転構造が付されており、その長さは45mmである。
【0044】
図7に、波長変換デバイスの入力導波路を示す。高さ5μm、導波路幅およそ5μmのリッジ型光導波路14を、薄膜基板13の第一の基板11に作製する。図示されているように、ドライエッチングのプロセスにおいてはマスクと膜のエッチング選択比が大きくないために、リッジ型光導波路14がメサ形状となる。
【0045】
図8に、波長変換デバイスの作製方法を示す。図8(a)は、図5に示した方法により作製した、周期分極反転構造が形成されている第一の基板11(ZカットZn添加LN基板)と第二の基板12(ZカットLiTaO3基板)とが接合された薄膜基板13である。なお、図に示したように、第一の基板11には、周期分極反転構造が形成された部分と形成されていない部分とが作り込まれている。
【0046】
第一の基板11の表面に通常のフォトリソグラフィのプロセスによって、入力導波路15,16、モード干渉導波路17および波長変換導波路18のパターンを作製する。入力導波路15,16およびモード干渉導波路17は、周期分極反転構造が形成されていない部分に作製し、波長変換導波路18は、周期分極反転構造が形成された部分に作製し、3インチウエハである薄膜基板13に平行に複数本作製する。その後、ドライエッチング装置に基板をセットし、Arガスをエッチングガスとして薄膜基板13の第一の基板11の表面をエッチングすることにより、複数の波長変換デバイスを作製する(図8(b))。
【0047】
これら波長変換デバイスごとに薄膜基板13を短冊状に切り出し、入力光導波路15,16の端面14aと、波長変換導波路18の端面14bとを光学研磨することによって長さ51mmの波長変換デバイスを作製する(図8(c))。
【0048】
波長変換デバイスに集積された合波器の特性を評価するために、分岐比の測定を行う。以下、図6を用いて説明する。分岐比とは、合波器に出力導波路である波長変換導波路64から光を入力した際の入力導波路ポート61、62に出力される光の分波の比である。分岐比の値が小さいほど合波(分波)器の特性が良いことを表す。1.56μmの光を波長変換導波路64から入力し、入力導波路61、62に出力された光パワーの和に対して、第2の入力導波路62から出力された光パワーの比を分岐比と定義する。このとき、分岐比の値は2%と十分小さいものであった。
【0049】
同様に、0.78μmの励起光を波長変換導波路64から入力し、入力導波路61、62に出力された光パワーの和に対して、第1の入力導波路61から出力された光パワーの比を分岐比と定義する。このとき、分岐比の値は2%と十分小さいものであり、良好な合波器が作製できていることを確認することができる。
【0050】
続いて、光ファイバ芯線が127μm間隔で配置されている光ファイバアレイを用いて、第1の入力導波路61に1.56μmの信号光を、第2の入力導波路62に0.78μmの励起光を入射した。光ファイバアレイに用いた2本の光ファイバ芯線は、それぞれモード径が異なり、1.56μm、078μmのそれぞれにおいてシングルモードとなる光ファイバ芯線を用いている。
【0051】
合波器として機能するモード干渉導波路63による光過剰損失を評価したところ、1.56μm光が0.5dB、078μm光が1.0dBと非常に小さい損失で光が合波されていた。1.56μm帯の光源に波長可変光源を用いて、合波器による光過剰損失の波長依存性を測定した。ピークの出力光量と比較して、追加の過剰損失が1dB以内となる波長範囲は、約40nmと広い。
【0052】
次に、波長変換デバイスとしての特性を得るために、第1の入力導波路61から1.56μm帯の信号光を入力し、第二高調波発生から波長変換の効率を評価した。規格化変換効率は波長1555.4nmにおいて1300%/Wと高い値が得られた。
【0053】
合波器で合波した2波を用いた差周波発生による波長変換実験を行なった。第1の入力導波路61に、100GHz間隔で配置された8波のC帯の信号光群を入力する。第2の入力導波路62に、波長777.7nmの励起光を入力する。信号光群および励起光は、合波器として機能するモード干渉導波路63にて合波され、波長変換導波路64に入力されて、差周波発生によりL帯への波長変換光群が得られる。
【0054】
モード干渉導波路63は、モード間の干渉により光合波を行なうため、入力導波路61、62からの入力光が所定のモード以外のモードで伝播してきた場合、モード干渉導波路63の損失が増大する。これは、モード干渉導波路63が合波の機能を有すると共に、モードフィルタの役割を担っているからである。従って、本実施形態によれば、変換光のパワーをモニターするなどの特別な調整を行うことなく、励起光・信号光の透過光が最大になるように、入力導波路に光を入力すればよい。これにより、波長変換デバイスへの最適な入射条件が得られる。
【0055】
図9に、波長変換デバイスの第1の実験結果を示す。130mWの励起光を入力した時の信号光と変換光の出力スペクルである。パラメトリック利得により変換光は、入力した信号光に対して利得を持っていることがわかる。これは、波長変換デバイスの変換効率が高いことに加えて、波長変換デバイス全体が直接接合リッジ型導波路であり、高パワーの入力に対してフォトリフラクティブ効果などの光損傷を起こすことなく、良好な波長変換特性を得られていることに起因する。また、カスケード励起のように、1.56μm帯の強励起光を使う必要がないため、ASEノイズの影響が少なく、SNRが40dB以上の品質のよい変換光を得ることができる。
【0056】
図10に、波長変換デバイスの第2の実験結果を示す。信号光の波長を1490nmから1555.2nmまで変えたときの出力スペクルである。30nmにわたって利得を持った波長変換が可能であることがわかる。また、カスケード励起のように、1.56μm帯の強励起光を使う必要がないため、信号光―変換光の差が50GHzの近接の波長変換であっても可能であり、かつ高いSNRを得ることができる。
【0057】
(第2の実施形態)
図11に、本発明の第2の実施形態にかかる緑色光源の構成を示す。光合波器を集積した波長変換デバイスは、第1の入力導波路111と第2の入力導波路112と、モード干渉導波路113と、波長変換導波路114とを備える。入力導波路111、112は、モード干渉導波路113の入力側と結合している。第1の入力導波路111は、波長1.3μmの信号光を誘導し、第2の入力導波路112は、波長0.98μmの励起光を誘導する。
【0058】
図12は、図11に示したモード干渉導波路における光の結合を示すシミュレーション結果である。波長0.98μmの励起光と波長1.3μmの信号光とが結合する様子を、BPMによるシミュレーションによって示した。ここで、図12(a)に示すように、モード干渉導波路113の幅Wm=11μm、入力導波路の軸ズレ量Δ1=3.5μm、出力導波路軸ズレ量Δ2=3.5μm、クラッドの屈折率=1.0、コアの屈折率=約2.1である。
【0059】
図12(b)は、波長0.98μmの励起光の振る舞いを示す図である。モード干渉導波路113の中心から軸ズレ(Δ1)した位置に接続されている第2の入力導波路112から入射した励起光は、モード干渉導波路113に固有の複数のモードに展開され、モード干渉導波路113内をマルチモード伝播する。このとき、各モードの伝播定数が異なるために生じるモード干渉によって、波長0.98μmの光量がある光路長を伝播した後、極値(収束点)を取る。
【0060】
図12(c)は、波長1.3μmの信号光の振る舞いを示す図である。モード干渉導波路113の中心から軸ズレ(Δ1)した位置に接続されている第1の入力導波路111から入射した信号光は、モード干渉導波路113に固有の複数のモードに展開され、モード干渉導波路113内をマルチモード伝播する。このとき、各モードの伝播定数が異なるために生じるモード干渉によって、波長1.3μmの光量がある光路長を伝播した後、極値(収束点)を取る。
【0061】
ビート長は各波長に対し逆数で影響するため、本実施形態のように励起光と信号光との比が3:4となる場合は、0.98μmの励起光が3回ビートを打つ間に1.3μmの信号光が4回ビートを打つ。両者が収束する点の近傍に出力端面を設け、出力導波路114を結合することにより0.98μmの励起光と1.3μmの信号光とを結合することができる。
【0062】
複数回ビートを打ったのち結合する場合、合波器長が長くなってしまう。これを解決するために、(式1)の通りビート長はモード干渉導波路の幅に対して2乗で大きくなるため、入力導波路111、112をモード干渉導波路113の両端に配置し、モード干渉導波路113の幅を小さくし、ビート長を短くしている。計算結果より、波長0.98μmの励起光と1.3μmの信号光が合波されるモード干渉導波路113の長さは、3.3mmと見積もられる。このように導波路のみの簡単な構成で容易に波長0.98μmと1.3μmの光を合波することができる。
【0063】
第1の実施形態と同様に、図5に示した作製工程を用いて薄膜基板を作製し、ドライエッチングにより合波器を集積した波長変換導波路を作製する。図8に示すように、これらの光導波路を短冊状に切り出し、光導波路の両端面を光学研磨することによって波長変換導波路を作製した。作製した波長変換導波路を実装し、図11に示す緑色光源を作製する。波長変換装置は、2つの励起レーザ117、118と、波長変換デバイスと、励起レーザのレーザ光を波長変換デバイスに入力するファイバアレイ119とを備える。ファイバアレイ119は調芯後、UV硬化型の接着剤で固定する。波長変換装置は、波長変換デバイスを透過した励起レーザ117、118のレーザ光と波長変換デバイスで発生した和周波光とを分離するフィルタ115も備えている。
【0064】
励起レーザ117の波長λ1と、励起レーザ118の波長λ2とは、
1/λ1+1/λ2=1/λ3
を満足するような組合せとする。励起レーザ117の波長λ1=980nm、励起レーザ118の波長λ2=1300nmの場合、波長λ3=559nmの緑色の変換光を得ることができる。
【0065】
このとき、例えば、波長変換導波路をλ2=1300nmでシングルモードとなるように設計してもλ1=980nmではマルチモードとなる。このため、従来技術では、波長変換に必要な基底モードのみの励振が困難であり、入射光のアライメントに多大な時間が必要となり低コスト化が困難であった。本実施形態では、モード干渉による合波器がモードフィルタの役割を果たすため、信号光と励起光の透過パワーが最大になるように、ファイバアレイ119を調芯し、励起光の透過パワーを最大にするだけで波長変換に必要な基底モードの励振が可能である。その結果、良好な波長変換効率が得られるため、装置の組み立てを簡素化することが可能である。また、本実施形態の効果により、従来の波長変換レーザ光源に用いられていたファイバ型の方向性結合器が不要となり、波長変換レーザ光源の小型化を実現することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
図13に、本発明の第3の実施形態にかかる青色・緑色光源の構成を示す。光合波器を集積した波長変換デバイスは、第1の入力導波路131と第2の入力導波路132と、モード干渉導波路133と、波長変換導波路134A、134Bとを備える。入力導波路131、132は、モード干渉導波路133の中心軸からずれた位置で、モード干渉導波路133の入力側と結合している。第1の入力導波路131は、波長1.3μmの信号光を誘導し、第2の入力導波路132は、波長0.98μmの励起光を誘導する。
【0067】
図14は、図13に示したモード干渉導波路における光の結合を示すシミュレーション結果である。0.98μmの信号光と1.3μmの励起光の分岐・結合する様子を、BPMによるシミュレーションによって示した。ここで、図14(a)に示すように、モード干渉導波路133の幅Wm=30μm、入力導波路軸ズレ量Δ1=5μm、出力導波路軸ズレ量Δ2=5μm、クラッドの屈折率=1.0、コアの屈折率=約2.1である。
【0068】
図14(b)は、波長0.98μmの励起光の振る舞いを示す図である。モード干渉導波路133の中心から軸ズレ(Δ1)した位置に接続されている第2の入力導波路132から入射した励起光は、モード干渉導波路133に固有の複数のモードに展開され、モード干渉導波路133内をマルチモード伝播する。このとき、各モードの伝播定数が異なるために生じるモード干渉によって、波長0.98μmの光量がある光路長を伝播した後、極値(収束点)を取る。
【0069】
図14(c)は、波長1.3μmの信号光の振る舞いを示す図である。モード干渉導波路133の中心から軸ズレ(Δ1)した位置に接続されている第1の入力導波路131から入射した信号光は、モード干渉導波路133に固有の複数のモードに展開され、モード干渉導波路133内をマルチモード伝播する。このとき、各モードの伝播定数が異なるために生じるモード干渉によって、波長1.3μmの光量がある光路長を伝播した後、極値(収束点)を取る。
【0070】
各波長に対しビート長が異なるため、本実施形態のように適当なモード干渉導波路の長さを選ぶことにより、1点に収束する収束点と2点で収束する収束点とが現れる。2点で収束するということは、信号光または励起光が2分岐されていることになる。そこで、波長0.98μmの励起光を2分岐し、分岐された一方の波長0.98μmの光と、波長1.3μmの信号光とを結合させることができる。計算結果により、波長0.98μmの励起光が2分岐され、一方の0.98μmの光と1.3μmの信号光が合波されるためのモード干渉導波路133の長さは、4.0mmと見積もられる。このように導波路のみの簡単な構成で容易に波長0.98μmと1.3μmの光の分岐・結合をすることができる。
【0071】
第1の実施形態と同様に、図5に示した作製工程を用いて薄膜基板を作製し、ドライエッチングにより合波器を集積した波長変換導波路を作製する。図8に示すように、これらの光導波路を短冊状に切り出し、光導波路の両端面を光学研磨することによって波長変換導波路を作製した。作製した波長変換素子を実装し、図13に示す青色・緑色光源を作製する。波長変換装置は、2つの励起レーザ137、138と、波長変換デバイスと、励起レーザのレーザ光を波長変換デバイスに入力するファイバアレイ139とを備える。ファイバアレイ139は調芯後、UV硬化型の接着剤で固定する。波長変換装置は、波長変換素デバイスを透過した励起レーザ137、138のレーザ光と波長変換デバイスで発生した和周波光とを分離するフィルタ135も備えている。
【0072】
波長変換デバイスは、2本の波長変換導波路134Aおよび134Bを有している。波長変換導波路134Aにおいては、励起レーザ137の波長λ1と、励起レーザ138の波長λ2とは、
1/λ1+1/λ2=1/λ3
を満足するような変換光を得る。励起レーザ137の波長λ1=980nm、励起レーザ138の波長λ2=1300nmの場合、波長λ3=559nmの緑色の変換光を得ることができる。
【0073】
波長変換導波路134Bにおいては、分岐された励起レーザ138の波長λ1の光が入射され、
2/λ1=1/λ3
を満足するような変換光を得る。励起レーザ137の波長λ1=980nmの場合、波長λ3=490nmの青色の変換光を得ることができる。
【0074】
励起光と信号光の透過パワーを最大にすることにより、良好な波長変換効率が得られるため、市販の調芯装置を用いることが可能であった。また、本実施形態の効果により、従来波長変換レーザ光源に用いられていたファイバ型の方向性結合器が不要となり、さらにモード干渉導波路133が合波および分波の機能も有することにより、2波長出力の波長変換レーザ光源を小型にすることができる。
【0075】
(第4の実施形態)
図15に、本発明の第4の実施形態にかかるインライン型波長変換装置の構成を示す。光分波器を集積した波長変換デバイスは、波長変換導波路154と、モード干渉導波路153、第1の出力導波路151と第2の出力導波路152とを備える。出力導波路151、152は、モード干渉導波路153の中心軸からずれた位置で、モード干渉導波路153の出力側と結合している。第1の出力導波路151は、波長0.65μmの光を誘導し、第2の出力導波路152は、波長1.3μmの光を誘導する。
【0076】
波長変換導波路154において、入力された波長1.3μmの光の第二高調波発生により波長0.65μmの光を得る。入力された波長1.3μmの光と波長変換によって得られた波長0.65μmの光が波長変換導波路154から出力される。波長変換導波路154から出力された光は、モード干渉導波路153に入力され、それぞれの波長に分離され、出力導波路151および152にそれぞれ出力される。
【0077】
このように導波路のみの簡単な構成で容易に波長0.65μmと1.3μmの光を分波することができる。第4の実施形態にかかる光分波器を集積した波長変換デバイスは、ファイバ型の方向性結合器、分波フィルタが必要であった従来型の波長変換デバイスに比べて、低価格に提供される。また、モード干渉導波路が分波の機能だけでなく、モードフィルタの機能も担うため、ファイバ調芯は励起光のパワーモニタのみで、波長変換導波路の最大効率が得られるため、実装コストを抑えることができたる。
【符号の説明】
【0078】
1、23 合波器
2 光導波路
3 分波器
11 第一の基板
12 第二の基板
13 薄膜基板
14 リッジ型光導波路
15、31、61、111、131 第1の入力導波路
16、32、62、112、132 第2の入力導波路
17、33、63、113、133、153 モード干渉導波路
18、34、64、114、134 波長変換導波路
20、21、117、118、137、138 励起レーザ
22a、22b レンズ
24 LN非線形光学結晶
25、115、135 フィルタ
30 基板
35 中心線
119、139、159 ファイバアレイ
151 第1の出力導波路
152 第2の出力導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1/λ3=1/λ2+1/λ1の関係を有する波長のうち、波長λ1とλ2または波長λ1とλ3の2つの入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λ3またはλ2の変換光をそれぞれ出力する波長変換デバイスであって、
波長λ1とλ2の入射光または波長λ1とλ3の入射光がマルチモード伝播することにより、内部でのモード干渉によって第1の波長(λ1)の光と第2の波長(λ2またはλ3)の光とが結合され、前記第1の波長の光と前記第2の波長とが収束する点に出力端面が設けられた光合波部を備え、
前記出力端面の前記収束する点に結合された非線形光学媒質から、波長λ1とλ2の入射光に対し波長λ3の変換光が、波長λ1とλ3の入射光に対し波長λ2の変換光が出力され、前記光合波部と前記非線形光学媒質とが同一基板上に集積されていることを特徴とする波長変換デバイス。
【請求項2】
1/λ3=1/λ2+1/λ1の関係を有する波長のうち、波長λ1=λ2の1つの入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λ3の変換光を出力し、波長λ1とλ2または波長λ1とλ3の2つ入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λ3またはλ2の変換光をそれぞれ出力する波長変換デバイスであって、
波長λ1とλ2の入射光または波長λ1とλ3の入射光がマルチモード伝播することにより、内部でのモード干渉によって第1の波長(λ1)の光が分岐され、分岐された一方の第1の波長(λ1)の光と第2の波長(λ2またはλ3)の光とが結合され、分岐された他方の第1の波長の光が収束する第1の収束点と、前記分岐された一方の第1の波長の光と前記第2の波長とが収束する第2の収束点とに出力端面が設けられた光合波部を備え、
前記第1の収束点に結合された第1の非線形光学媒質から波長λ3の変換光が出力され、前記第2の収束点に結合された第2の非線形光学媒質から、波長λ1とλ2の入射光に対し波長λ3の変換光が、波長λ1とλ3の入射光に対し波長λ2の変換光が出力され、
前記光合波部と前記第1および第2の非線形光学媒質とが同一基板上に集積されていることを特徴とする波長変換デバイス。
【請求項3】
前記光合波部の伝播方向における光路長は、前記出力端面で、前記第1の波長の光または第2の波長の光のうち、少なくともいずれか一方の光量が極値となるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の波長変換デバイス。
【請求項4】
1/λ3=1/λ2+1/λ1の関係を有する波長のうち、波長λ1=λ2の1つの入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λ3の変換光を出力する波長変換デバイスであって、
入力端面に前記非線形光学媒質の出力端が接続され、第1の波長(λ1=λ2)の光と第2の波長(λ3)の光とがマルチモード伝播することにより、前記第1の波長の光と前記第2の波長とが収束する点に出力端面が設けられた光合波部を備え、
前記出力端面の前記収束する点に結合された出力導波路から、前記第1の波長の光と前記第2の波長とが出力され、前記光合波部と前記非線形光学媒質とが同一基板上に集積されていることを特徴とする波長変換デバイス。
【請求項5】
前記光合波部の幅は、5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の波長変換デバイス。
【請求項6】
前記非線形光学媒質は、LiNbO3、KNbO3、LiTaO3、LiNb(x)Ta(1-x)3(0≦x≦1)、KTiOPO4、または、それらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の波長変換デバイス。
【請求項7】
前記非線形光学媒質は、液相エピタキシャル法によって成長された結晶膜であることを特徴とする請求項6に記載の波長変換デバイス。
【請求項8】
前記非線形光学媒質は、非線形光学効果を有する第一の基板と、第一の基板に比べ屈折率の小さい第二の基板とを貼り合わせることによって作製された薄膜基板であることを特徴とする請求項6または7に記載の波長変換デバイス。
【請求項9】
前記第一の基板は、非線形定数が周期的に反転された構造を有することを特徴とする請求項8に記載の波長変換デバイス。
【請求項10】
前記第一の基板と前記第二の基板とは、熱処理による拡散接合によって直接貼り合わされていることを特徴とする請求項8または9に記載の波長変換デバイス。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の波長変換デバイスと、
前記波長λ1の入射光を前記光合波部の入力端面から入力する第1のレーザと、
前記波長λ1またはλ3の入射光を前記光合波部の入力端面から入力する第2のレーザと、
前記非線形光学媒質から出力された、波長λ3またはλ2の変換光を分離するフィルタと
を備えたことを特徴とする波長変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−64895(P2011−64895A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214620(P2009−214620)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】