説明

洗浄具及び自動洗浄装置並びに洗浄方法

【課題】高圧水でも落とすことができない汚れを自動で洗浄して落とす。
【解決手段】スポンジ等の弾性材を軸回転可能に円柱体状に形成する。かかる軸回転は、洗浄対象物30との接触摩擦で回転するように構成する。例えば、このようにして構成されたスポンジロール10aを、所定の接触圧で洗浄対象物30の洗浄面に押し当てる。その状態を維持したまま、洗浄対象物30を移動させる。洗浄対象物30の移動に基づきスポンジロール10aは接触回転する。接触回転に際して潰されたスポンジロール10aの動きで、高圧水でも落とすことができなかった汚れをきれいに落とすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水の吹きつけでも落とすことができない汚れを落とすのに適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
電車、汽車等のいわゆる車両の清掃には、洗浄対象物が大きいため、どうしても自動洗浄を行わざるを得ない。自動車等の場合とは異なり、洗浄対象物が大きく、さらに多数ある場合には、人が一両ずつ手作業で洗車することは、基本的に不可能である。
【0003】
かかる自動洗浄に使用される洗浄装置には、従来、ブラシ式洗浄装置が多用されていた。かかるブラシ式洗浄装置は、電車や汽車等の車両基地等に設置されている。基地に帰ってきた車両は、基地に待機している間に、かかるブラシ式洗浄装置により洗浄されるようになっている。かかるブラシ式洗浄装置は、例えば、ガソリンスタンド等の洗車機等でも見かけることができる。ブラシ式洗浄部の基本的構成は、ほぼ同一である。
【0004】
かかるブラシ式洗浄装置は、ブラシが、モーターで自動回転可能に設けられている。かかるブラシは、回転軸を中心として放射状にブラシが設けられ、ブラシ全体が円柱状に形成されている。かかるブラシの先端側を、洗浄対象物に接触させる構成である。ブラシは自動回転可能に構成されている。そのため、基本的には、回転するブラシの先端側が、洗浄対象物に回転接触して、洗浄対象物のブラシ接触面側の汚れが落とされるのである。
【0005】
しかし、ブラシ洗浄は、上記の如く、回転するブラシが洗浄対象物に回転接触するため、表面に傷が付き易いという問題点が指摘されていた。特に、ナイロン製のブラシを使うと、傷が付き易いと言われている。かかる問題点を解消するために、水を吹きつけることで汚れを落とす方式が開発された。所謂、水圧で、水をジェット式に高圧噴出させて、その勢いで汚れを落とす方式である。かかる技術は、例えば、特開平7−329737号公報(特許文献1)に記載されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−329737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の如く、現状の自動洗浄装置は、水圧を用い、洗剤と共に水を噴射して汚れを落とすのが一般的である。それまでのブラシ洗浄は、洗浄に際しての傷付き等の問題で敬遠された。しかし、洗剤を噴霧し汚れを分解した後に、高圧水又は温水で洗い流す水圧式の場合でも、表面についている汚れを完全に落とすことはできない。自動洗浄装置を用いても、かかる汚れまでも完全に落とすことはできないのである。
【0008】
かかる汚れは、自動洗浄装置の水圧が低いために落とすことができないのではない。水圧を高くしても、落とすことができないのである。例えば、水圧を150気圧と高圧にしても、汚れが落ちないのである。このように高い水圧でも落ちない汚れとは、洗浄対象物の表面に形成された薄皮状の汚れであることが分かった。かかる薄皮状の汚れを落とすためにさらに水圧を上げて高圧にすると、塗装面のピンホールにかかる高圧の水がかかり、塗装面を剥がすこととなる。かかる高圧になっても取れない車両の汚れが、指先を軽く押し当てて触るだけで容易に落ちることを、本発明者は見出した。これは、意外な事実であった。本発明者は、かかる汚れをさらに詳細に検討した。その結果、この軽く触るだけで落ちる汚れの膜厚は、計測できない程の薄膜で、チョーキング劣化現象の一部と考えられる汚れであることを突き止めた。
【0009】
勿論、指で触れば落ちる汚れであるならば、人手で柔らかい布等で拭き作業を行えば、落ちる筈ではある。しかし、何せ、洗浄対象物が電車等と大きく、さらに台数も多数とのことでは、基本的に人手で作業を行うことはできない。あくまで、自動洗浄装置に頼らざるを得ないのが実情である。
【0010】
本発明の目的は、高圧水でも落とすことができない汚れを自動で落とす技術を提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。すなわち、スポンジ等の弾性部材で形成された洗浄具本体を洗浄対象物に所定圧力で押し当てて、自身では回転せずに前記洗浄対象物との接触で回転させることで、高圧水の吹きつけでも落とすことができなかった汚れを落とす。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。すなわち、これまで高圧水を吹きつけても落とすことができなかった電車等の車両の汚れを、塗装面に目視で確認できる程の傷を付けることなく、自動洗浄装置で落とすことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)はスポンジロールの概要を模式的に示す説明図であり、(b)はスポンジロールが移動する洗浄対象物と当接する状態を模式的に示す説明図であり、(c)はスポンジロールが洗浄対象物に接触回転している場合を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)〜(c)は、スポンジロールの洗浄対象物との接触時の状況を模式的に示す説明図である。
【図3】(a)〜(f)は、接触圧の規定方法を模式的に示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、周面に切れ目を設けた変形例を模式的に示す説明図である。
【図5】スポンジロールの周面に回転軸方向に対して交差する方向に切れ目を入れた様子を模式的に示す説明図である。
【図6】スポンジロールの周面に回転軸方向に対して交差する方向にらせん状の切れ目を入れた様子を模式的に示す説明図である。
【図7】スポンジロールの周面に回転軸方向に対して交差する方向にらせん状の切れ目を入れた様子を模式的に示す説明図である。
【図8】スポンジロールの回転軸方向に沿った方向と、交差方向とに、それぞれ切れ目を設けた様子を模式的に示す説明図である。
【図9】(a)〜(c)は、それぞれ図8に示す凸面部を切れ目を入れたスポンジロールにより洗浄する様子を示す説明図である。
【図10】スポンジロールの設置角度による効果を示す説明図である。
【図11】ブレーキシューを設けた状態でスポンジロールの設置角度による効果を示す説明図である。
【図12】(a)、(b)は、スポンジロールの設置角度の大小による効果を示す説明図である。
【図13】(a)〜(c)は、線路の両脇にスポンジロールを設けて自動洗浄装置を構成した場合を模式的に示す説明図である。
【図14】図13に示す自動洗浄装置に洗浄対象物としての車両をかけた状態を模式的に示す斜視図である。
【図15】(a)、(b)は、スポンジロールを有する自動洗浄装置の変形例である。
【図16】自家用に自動洗浄装置を設けた場合を模式的に示した説明図である。
【図17】(a)、(b)は、自動車を自動洗浄装置にかける様子を模式的に示した説明図である。
【図18】(a)、(b)は、角材、丸材等の資材をスポンジロールで洗浄する場合を模式的に示す説明図である。
【図19】(a)、(b)は、スポンジロールを有する自動洗浄装置の変形例である。
【図20】(a)、(b)は、スポンジロールを有する自動洗浄装置の変形例である。
【図21】回転ブラシの構成例を示す説明図である。
【図22】(a)〜(d)は、本発明の洗浄具本体の変形例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
本発明は、自動洗車装置に関しての技術である。特に、電車や汽車等の車両の汚れで、高圧水の吹きつけでは落とすことができなかった汚れの除去に適用して有効な技術である。かかる汚れを落とすための本発明に係る技術では、極めて特異な構成の洗浄具を用いる。かかる洗浄具を用いることにより、洗浄対象物に傷を付けることなく、高圧水の吹きつけでも落ちない汚れを容易に落とすことができるのである。
【0017】
本発明者は、先に述べた通り、高圧水を吹きつけることでも落とすことができなかった汚れが、指で軽く触れるだけで汚れを落とすことができることを見出した。かかる指で軽く触れるだけで汚れを落とすことができる方法として、スポンジによる洗浄物表面の擦り現象(縦横斜)を作り出して、落とすことを着想した。かかる手段を用いることで、確実に従来の高圧水の吹きつけ洗浄よりも洗浄効果を増大させて、高圧水の吹きつけでも落とすことができなかった汚れを落とすことができるのである。スポンジによる擦りの振幅で、落とすことができるものと推察される。かかる擦りは、スポンジに入れた切り込み角度等でより増大させることができる。ミリ単位等の微小ではあるが、洗浄効果として十分に機能するのである。かかる構成のスポンジは、洗浄対象物としての洗浄物の形状により、スポンジの形状を簡単に変えることができる。そのため、洗浄物に傷をつけることもないのである。
【0018】
かかるスポンジは、例えば、円筒状に形成して中心にシャフトを入れ、シャフトを中心にして回転する構造にすればよい。動力源は、必要とせず、シンプルで取り扱いが簡単である。この円筒状のスポンジは接触する物体の移動に追随して回転し、その物体の表面にわずかな刺激(上記擦りの振幅)を与え、汚れを分解するのである。すなわち、スポンジの回転と、洗浄面の移動距離は比例し、動力を使用した方法等とは異なり、余分な接触抵抗は発生しない。スポンジの回転と洗浄面との余分な接触抵抗が発生しないことは、スポンジの摩耗を少なくすることにも通じる。そのため、スポンジを長期使用に耐えることができるようにできる。
【0019】
また、スポンジによる接触抵抗の強弱は、接触圧力よる方法と、円筒スポンジの接触角度の変更によって目的に合った方法等を選択できる。円筒状に形成したスポンジの角度により、汚れの分解方向(上面に分解・下方に分解)が自由に選べるのである。
【0020】
また、スポンジには、上記の如く、色々な角度の亀裂を入れることにより、洗浄面と接触した場合のスポンジを色々な潰れかたにすることで、目的の洗浄レベルを設定できる。すなわち、スポンジの亀裂の角度を変えることにより、スポンジの車両に対する接触抵抗を、車両の汚染ないし汚れに応じた値に調整することができるのである。また、円筒状のスポンジの割り込みの形状により、スポンジの圧縮及びねじれにより振動が発生し、汚れの分解を促進させることにもなる。
【0021】
従来の自動洗浄装置では、ブラシや皮革・ゴム紐等を円形のブラシのように加工して用いていた。かかるブラシを、前述の如く、電動モーターで適度な回転速度で回転させ、車両表面に回転接触させて洗浄するのである。かかる方法では、洗浄による擦り傷が車両塗装面のトップコート(メタリック塗装のクリヤー)を徐々に削り、外観を著しく害するのである。そのため、例えば、自家用車等の高級車は手洗い方式を要求し、その障害を回避しているのである。
【0022】
本発明者は、長らく塗装関係の仕事を携わり、経験的に種々の事実を知見として有していた。何故、ブラシによる洗車方式は塗装面を削ってしまうのか、再度検討した。現状の自動洗浄装置では、洗浄時には、洗浄剤と撥水剤を同じブラシで作業している。そのため、ブラシの先端にガム質状の物質が汚れとして付着してくる。かかる汚れは、砂や泥が、ブラシ先端にできたガム質状の物質に付着してできるものである。かかるブラシ先端に形成されたガム質状物質に砂や泥を付けたまま、ブラシが回転して、洗浄対象物に回転接触することで塗装面を擦って行く。この結果、塗装面を削り、塗面膜厚を著しく損傷させるのである。
【0023】
従来のブラシ洗浄方法を改善するために、羽ブラシ、柔らか不織布等の使用も当然に考えられる。しかし、本発明者の試した範囲では、どれも洗剤、ワックス、洗剤、ワックスの繰り返しによって、ガム質状物質の汚れの発生からは逃げられない。すなわち、ガム質状物質の汚れが発生するのである。ガム質状物質の汚れが発生すると、上記のように、砂や泥等を付着させて塗装面を傷つけることとなる。
【0024】
そこで、洗剤用ブラシとワックス用ブラシとを別々に用いることを考えた。確かに、かかる方式に変更することで、汚れの発生は著しく改善される。当然に、洗浄対象物の傷つきも顕著に改善される。しかし、逆に、自動洗浄装置の機器コストが倍にもなり、自動洗浄装置の導入自体が困難となるのである。通常、車両の洗浄は、ある意味では、保守・整備費等の部門で会計処理される。低コスト化が叫ばれる昨今、保守・整備費もその対象の例外ではない。切り詰められる予算のうち、安全にかかわる保守、点検部門の予算は削れない。畢竟、清掃関係の予算の切り詰めが行われるのが現状である。かかる現場の事情を考慮すれば、機器コストの増大は避けたい問題である。
【0025】
また、ブラシによる洗浄でトラブルになる問題は、上記の傷だけではない。突起部品の破損がある。例えば、自動車等では、ブラシを回転させることによりミラーやワイパー、アンテナ等にブラシが絡みつき破損させてしまうのである。さらには、完全には、前記傷付きは解消しないのである。
【0026】
回転ブラシをモーターで回転させているが、例えば、水切りのシロッコファン・駆動用のコンプレッサー・散水ポンプ等、起動させるたるめの動力(一般的なガソリンスタンドで使用している小型の物)は、最低でも200V・22kwの電力を必要とするとも言われている。また、必要な水量は、一台当り約180Lにもなるとの試算もある。
【0027】
このように回転ブラシを用いる洗浄では、トラブルや破損及び経費上の問題があり、例えばエコ化という時代の流れにはそぐわないものになってきているのが現状である。かかる問題点は、自動洗浄装置の製造に際しての基本的な考え方に、ケミカル上の反応技術が取り入れられていない部分が問題をさらに増大させているものと、本発明者は考えた。すなわち、従来の洗浄システムでは、洗浄に用いられる洗剤の汚れ分解能力に関し、汚れによる洗剤のPH(水素イオン指数)と濃度との関係、洗剤を塗布してから汚れを洗い落とす迄の時間設定、洗剤の濃度と気温の関係による汚れの分解時間の変化、地域による水質の相違に対する洗剤の濃度の調整、作業時間に応じた洗剤の濃度の調整および気温や湿度の変化に対する洗剤の濃度の調整等、が成されていないのである。本発明は、かかる問題点を回避し得る洗浄技術についての発明である。また、ある意味で極めて省エネルギー的に取り組みが行える経済的洗浄技術とも言えるものである。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る自動洗浄装置で使用する洗浄具について、具体的に説明する。本実施の形態で説明する洗浄具Aは、図1に示すように、外形が円柱状に形成された洗浄具本体10を有している。かかる円柱状の洗浄具本体10は、基本的には水等の液体を含ませておくことができる物質で形成されている。かかる含ませた水等の液体は、洗浄具本体10を押圧することで外部に液体を出す機能を有している。例えば、外部に滲み出すことができるように形成されている。また、かかる物質は、弾性変形可能な物質でもある。かかる物質としては、例えば、スポンジが挙げられる。化学合成品のスポンジが用いられている。勿論、耐薬品性等の性質が適すれば、海綿としての本来のスポンジを使用しても構わない。すなわち、洗浄具本体10は、スポンジロール10aに構成されている。
【0029】
かかる洗浄具本体10を構成するスポンジロール10aは、図1(a)に示すように、円柱体の芯方向に回転軸20が設けられている。回転軸20は、例えば、端部20aが、図1(a)に示すように、円柱体の両端側に突出するように突き出している。かかる構成のスポンジロール10aを用いて、円柱体側面を洗浄対象物30に接触させて洗浄する。洗浄に際しては、所定の圧力で洗浄対象物をスポンジロール10aで押圧することで、スポンジロール10aの円柱体側面を洗浄対象物30に接するようにしている。
【0030】
図1(b)に示す場合には、洗浄対象物30は矢印に示すように、紙面右方向から左方向に移動しているものとする。そこに、スポンジロール10aが当接する。当接したスポンジロール10aは、図1(c)に示すように、所定圧力で洗浄対象物30表面の洗浄面30aに接している。かかるスポンジロール10aは、例えば、回転軸20の回りに自由回転可能に設けられている。すなわち、洗浄対象物30の洗浄面30aへの接触抵抗により回転するように構成されているのである。スポンジロール10a自身では、何の回転も生じないようになっているのである。モータ等の駆動装置は一切取り付けられていないのである。
【0031】
かかる状態で、スポンジロール10aが洗浄対象物30に接すると、スポンジロール10aは、図1(c)に示すように、所定圧力で押圧されて凹んだ円弧状体11aになる。すなわち、図2(a)に示すように、洗浄対象物30への接触圧力で、スポンジロール10aが収縮させられて凹み、円弧状体11aとなるのである。一方、接触圧力が凹まされた部分、すなわち収縮させられた部分も、図2(b)に示すようにやはり円弧状体11bである。
【0032】
かかる接触圧である押圧で凹んで形成された円弧状体11aは、図2(a)に示すように、押圧力が一定であれば、円弧状体11aを形成する弦部分12の長さL1は一定である。このように円弧状体11aの弦部分12の長さL1を一定に保った状態で、スポンジロール10aは、図1(c)に示すように、洗浄対象物30との摩擦接触で矢印のように回転しているのである。すなわち、洗浄対象物30の進行方向と同速で回転しているのである。図1(b)に示すように、停止しているスポンジロール10aに、洗浄対象物30の端が当ると、スポンジロール10aは洗浄対象物30との摩擦抵抗で回転するのである。回転するに際しては、円弧状体11aの弦部分12の一方の端点は、回転するスポンジロール10aの接触開始点Pとなっている。一方、弦部分12の他の端点は、図1(c)に示すように、接触開放点Qとなっている。弦部分12の中心点12Mが、最大の押圧力を示す最大圧力点Mとなる。
【0033】
洗浄対象物30の洗浄面30aに汚れが付着している場合には、その汚れに対しては、スポンジロール10aは接触開始点Pで接触することとなる。その後徐々に接触圧力は増し、最大圧力点Mで接触圧が最大となる。その後、接触開放点Qに向けて徐々に接触圧が減少する。最大圧力点Mから接触開放点Qに至るまでは、スポンジロール10aと汚れはとはその接触状態の押圧力が徐々に緩和されてゆく。かかる最大圧力点Mを過ぎて接触圧が徐々に弱まっていく間に、スポンジロール10aの弾性力による反発が徐々に高まる。接触開放点Qで、接触圧が開放された状態となり、反発が最大となる。
【0034】
一方、スポンジロール10aは、小さな空隙があるスポンジ状に構成されている。そのため、押圧力により収縮させられた円弧状体11bは、一様に反発するのではなく、不規則な状態の空隙に構造に基づいて、不規則な反発を行うこととなる。さらには、スポンジロール10aは、洗浄対象物30と共に同じ速度が回転しているのである。その結果、洗浄対象物30とスポンジロール10aとの接触面では、微視的には、極めて微小な不規則な動きである振幅が発生しているものと思われる。かかる微小な動きが、水圧で落とすことができない汚れに対して、あたかも指で軽く触れるような作用を及ぼすものと思われる。その結果、水圧で落とすことができない汚れを、かかるスポンジロール10aを所定押圧力で洗浄対象物30に接触させることで落とし得るのである。かかる現象は、本発明のスポンジロール10aで初めて見られたものである。
【0035】
かかるスポンジロール10aの洗浄対象物30との接触面での汚れ落としの機構は、上記の如く、所定押圧力で収縮されたスポンジロール10aの反発力の開放に基づく運動が関与しているものと思われる。かかるスポンジロール10aの反発力の開放に基づく運動は、収縮させられた円弧状体11bの逃げ及び移動に関与しているものと推察される。かかる逃げ及び移動の距離は、円弧状体11bの円周部分の長さL2と、弦部分12の長さL1との差に基づくものである。なお、洗浄対象物30と接したスポンジロール10aは、図2(b)に示すように、その接触開始点Pと最大圧力点Mの間では洗浄対象物30に押されて洗浄対象物30の進行方向とは逆向きに逃げる形となり、その逃げが最大圧力点Mで終わった後は、最大圧力点Mから接触開放点Qまでの間で洗浄対象物30の進行方向に向けて逃げとは逆方向の開放方向に移動する。
【0036】
さらには、かかるスポンジロール10aにより、高圧水でも落とすことができなかった汚れを落とす際には、目視で確認できる程の傷は付けないで済むことである。同じスポンジロール10aを複数回使用しても、洗浄対象物30の洗浄面30aには、目視で確認できる程の傷が付かない。
【0037】
かかるスポンジロール10aと、洗浄対象物30との接触圧の大きさは、上記高圧水でも落とすことができなかった汚れ落としに際して、影響を及ぼす。例えば、硬さ11.0〜17.0kgf(107.9〜166.7N)、伸び250%以上、引っ張り強さ2.0kg/cm(0.196Mpa)以上、密度0.026g/cmのポリウレタンフォームにより直径1000mm、長さ2000mmの円柱状に形成されたスポンジロール10aを用いる場合には、スポンジロール10aは、弦部分12の長さL1が300mmとなるように、洗浄対象物30に対して0.67kPaの接触圧で押し付けられる。
【0038】
本発明者の詳細な検討では、かかる接触圧、すなわち押圧力は、0.50kPa以上、0.70kPa以下が好ましいことが分かった。より好ましくは、0.55kPa以上、0.65kPa以下であった。0.50kPa未満では、汚れを落とすことができない場合があるためである。0.70kPaを超えると、洗浄対象物の塗装の状態によっては、目視確認できる程の微小な傷付きが発生する場合があることを確認したからである。0.55kPa以上、0.65kPa以下であれば、洗浄対象物の表面には、裸眼での目視確認では確認できる程の傷付きはなかった。
【0039】
実際のスポンジロール10aに対しての接触圧の設定は、例えば、次のようにして行えばよい。すなわち、図3(a)に示すように、スポンジロール10aの側面の一点を中心側に向けて最大圧力で押す。最大圧力Mで押した状態で、図3(b)に示すように、凹み位置の点Rまでのスポンジロール10aの中心からの距離Sとすれば、かかる距離Sでスポンジロール10aへの接触圧を規定することができる。スポンジロール10aは、かかる距離Sまで凹んだら、最大圧力Mがかかっていると想定することができる。凹み具合が距離Sより凹んだ場合には、最大圧力Mより大きい圧力がかかっていると推定できる。あるいは、凹み具合が距離Sに満たない程である場合には、最大圧力Mより小さい圧力しかかかっていないと推定することができる。
【0040】
例えば、最大圧力が上記のように所定の範囲で示される場合には、図3(c)、(e)のように、最大圧力の上限値M1でスポンジロール10aの側面を押す。押した状態での凹み位置の点を、R1とする。また、スポンジロール10aの中心から点R1までの距離をS1とする。このようにすれば、スポンジロール10aが洗浄対象物30と接触して円弧状体11aになった場合に、弦部分12の中心点12Mまでの距離がS1であれば、接触圧が最大圧力M1であることが分かる。同様に、図3(d)、(f)のように、最大圧力の上限値M1でスポンジロール10aの側面を押す。押した状態での凹み位置の点を、R2とする。また、スポンジロール10aの中心から点R2までの距離をS2とする。このようにすれば、スポンジロール10aが洗浄対象物30と接触して円弧状体11aになった場合に、弦部分12の中心点12Mまでの距離がS2であれば、接触圧が最大圧力Mの下限値であるM2であることが分かる。
【0041】
本発明者は、上記スポンジロール10aに、さらなる改良を試みた。すなわち、変形例を考えたのである。上記図2(b)では、逃げ及び移動距離が、高圧水でも落とすことができなかった汚れ落としに有効に作用することを説明した。そこで、基本的には、かかる逃げ及び移動距離を大きくできれば、さらに汚れ落としには有効であると考えたのである。図2(c)に示すように、押圧力で潰される円弧状体11bの円周周囲に、切れ目13を入れることを発想した。実際に切れ目13を入れることで、円弧状体11bの円周の長さと収縮した長さの差に対して、逃げ移動の範囲が大幅に拡大した。すなわち、切れ目13のない平滑なスポンジロール10aは、その表面全体が回転方向に繋がっているため、接触部分は周りの部分との連結により逃げ移動の距離が小さくなるが、切れ目13を入れたスポンジロール10aでは、接触部分は周りからの影響を受けないので逃げ移動の範囲が拡大するのである。
【0042】
そこで、洗浄具本体10であるスポンジロール10aは、例えば、図4(a)のように、円柱体側面に、図2(c)に示すような楔型の切れ目13a(13)を全周に設けておけばよい。あるいは、図4(b)に示すように、切れ目13を敢えて楔型に形成せずに、スリット状の切れ目13b(13)に構成しても構わない。さらには、図4(c)に示すように、切れ目13bの隣接ピッチを狭くしたりして、ピッチの変更を適宜にすればよい。
【0043】
また、図5に示すように、スポンジロール10aの側面に、切れ目14を設ける変形例を考えた。すなわち、回転軸20の軸方向に対して横切るように、リング状に切れ目14を入れて、溝を設けたのである。紙面右側のスポンジロール10aの側面には、紙面左上から紙面右下に向けて斜めにリング状に切れ目14a(14)が設けられている。かかる切れ目14aは、間隔をあけて平行に複数本設けられている。一方、紙面左側のスポンジロール10aには、紙面右上から紙面左下にかけて、複数本の切れ目14b(14)が、平行に設けられている。
【0044】
かかるスポンジロール10aに切れ目14を入れることで、例えば、洗浄対象物30との間に付着物等がある場合に、かかる付着物を回転軸20の軸方向に沿って上下に移動させることができる。かかる付着物とは、例えば、汚れ、あるいは洗剤等種々のものを考えることができる。紙面右側のスポンジロール10aでは、例えば、洗浄対象物30に対してスポンジロール10aに保持した洗剤を、上方に移動させることができる。あるいは、紙面左側のスポンジロール10aでは、例えば、洗浄対象物30表面の汚れを下方に移動させることもできる。
【0045】
図4では、切れ目14は、複数本平行になるように設けた場合を示した。しかし、かかる斜めの切れ目14は、図6の変形例に示すように、らせん状に形成しても構わない。紙面右側のスポンジロール10aは、紙面左上から紙面右下にかけてらせん状に切れ目14cを設けた場合を示したものである。図6の紙面左側のスポンジロール10aでは、紙面右上から紙面左下にかけてらせん状に、切れ目14dが設けられている場合を示した。尚、スポンジロール10aと洗浄対象物30との間にあって本来見えない切れ目14c、14dを、破線で示した。
【0046】
切れ目14c、14dの構成の場合は、図6に示すように、スポンジロール10aと洗浄対象物30との間にある汚れ、洗剤等は、図5の場合とは逆方向に移動することに注意すべきである。すなわち、切れ目14cで移動する洗剤は、図6の紙面左側のスポンジロール10aに示すように、下方に向けて移動することとなる。切れ目14dで移動する汚れは、図5の左側のスポンジロール10aに示すように、上に移動することとなる。図7には、スポンジロール10aに、切れ目14c、14dと平行ならせん状の切れ目14e(14)、14f(14)が設けられた場合を示した。図中、切れ目14e、14fは、二点鎖線で示した。
【0047】
図8の紙面右、左側にそれぞれ、回転軸20の軸方向に設けた切れ目13と、回転軸20に対して横切るように設けた切れ目14とを有する場合を示した。紙面右側に示す場合は切れ目14aを有し、左側は切れ目14bを有する場合である。かかる縦方向に切れ目13と、斜め方向の切れ目14を一緒に設けることで、より汚れを落とし易くなり、さらにその汚れを移動させ易くなる。例えば、洗浄対象物30に設けられる垂直方向に延びる凸面部30bの部分を洗浄する際には、図9(a)に示すように、スポンジロール10aは回転軸20の軸方向に設けた切れ目13を境に変形して洗浄面30aから突出する凸面部30bの周りを隅々まで洗浄することができるのである。また、洗浄対象物30の図8中の左下方側に設けられる水平方向に延びる凸面部30cの部分を洗浄する際には、図9(b)に示すように、スポンジロール10aは回転軸20に対して横切るように設けた切れ目14(14b)により変形して洗浄面30aから突出する凸面部30cの周りを隅々まで洗浄することができるのである。さらに、洗浄対象物30の図8中の右上方側に設けられる水平方向に延びる凸面部30dの部分を洗浄する際には、図9(c)に示すように、スポンジロール10aは回転軸20に対して横切るように設けた切れ目14(14a)により変形して洗浄面30aから突出する凸面部30dの周りを隅々まで洗浄することができるのである。
【0048】
図10に示す場合は、スポンジロール10aの設置角度の変形例を示したものである。図5等には、スポンジロール10aの回転軸20の軸方向を、鉛直方向に配置した場合を例に上げて説明した。すなわち、設置角度が90度の場合である。しかし、かかる設置角度を変更することで、スポンジロール10aの洗浄対象物30に対する擦り抵抗を増大させる効果がある。
【0049】
スポンジロール10aが洗浄対象物30に最初に接触する位置を線分L3上とすると、移動して開放されたときに接触する位置は線分L3よりも下方の線分L4上となる。したがって、これらの線分L3、L4の間の距離Bだけスポンジロール10aが洗浄対象物30に対して擦ったことになる。かかる距離Bを増加させることにより、スポンジロール10aの洗浄対象物30に対する擦り抵抗を増大させることができるのである。なお、擦り抵抗が大きくなるとスポンジロール10aの摩耗が大きくなるので、当該摩擦状況を見ながら、スポンジロール10aの回転軸20の角度を増減させて、距離Bすなわちスポンジロール10aの洗浄対象物30に対する擦り抵抗が調整される。
【0050】
図11に示す場合は、図10に示す構成で、回転軸20にブレーキシューDを設けた場合である。本発明では、基本的には、スポンジロールは、所定の押圧力により洗浄対象物に接触し、そのときの接触抵抗によって回転する構成になっている。しかし、洗浄対象物の移動速度が速いために、スポンジロールが十分に汚れを落とせない場合も発生する。さらには、洗浄対象物の移動速度を遅くすることができない場合も十分に想定できる。かかる場合には、スポンジロールの回転速度をブレーキシューDを設けることで、意図的に遅くするのである。このように意図的に遅くすることで、洗浄対象物とスポンジロールの接触摩擦を大きくすることができる。このようにして、汚れを落とし易くすることもできる。
【0051】
図12(a)、(b)には、スポンジロール10aの設置角度を90度より小さい角度で、傾けた場合を示した。図12(a)に示す設置角度θ1は、図12(b)に示す設置角度θ2よりも小さく、より傾きが大きく設定されている。かかる図12(a)と、図12(b)との差は、洗浄対象物に与える力の差となって現れる。すなわち、図12(a)の場合の方が、図12(b)の場合よりも、洗浄対象物に与える力は大きいのである。例えば、同じ付着力で付着している汚れに対しては、図12(a)のようにスポンジロールを大きく傾けた方が、小さく傾けた場合よりも容易に落とすことができるのである。
【0052】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、前記実施形態1で説明した洗浄具本体10であるスポンジロール10aを用いて、自動洗浄装置を構成した場合について説明する。
【0053】
図13(a)に示す構成は、スポンジロール10aが、線路の両脇に設けられた構成である。かかる図13(a)に示す構成は、本発明の要点を簡潔に模式的に示した図である。例えば、実際には、図13(a)に示す構成を、例えば従来の門型外形の構成の自動洗浄装置に構成しても構わないことは言うまでもない。
【0054】
図13(a)では、スポンジロール10aが一対、線路50の両脇に所定間隔離されて設けられている。かかる構成では、基本的には、スポンジロール10aの間隔は、固定されており、変更できないように構成されている。かかるスポンジロール10aは、回転軸20に回転可能に設けられている。かかるスポンジロール10aは、例えば、図13(a)に示すように、ベース40に設置されている。勿論、ベース40を使用せずに、他の部材、あるいは問題がなければ直接地盤面に設置することも可能である。
【0055】
線路50を通って、電車や汽車等の車両60が洗浄対象物30として、一対のスポンジロール10aの間にやってくる。一対のスポンジロール10aの間隔は、図13(b)に示すように、線路50を通る車両60の幅より狭く設定されている。すなわち、洗浄対象物30の車両60に接触できるように、予めスポンジロール10a間の間隔を狭めて設けられているのである。図13(b)では、かかる様子が分かるように、洗浄対象物30の車両を二点鎖線で表示してある。かかるスポンジロール10a間の間隔は、洗浄対象物30の車両60の側面に、予め設定した接触圧で接触できるように設定されている。
【0056】
かかる接触圧は、前記の最大圧力点Mでの最大圧力で示しておけばよい。かかる最大圧力は、0.50kPa以上、0.70kPa以下である。より好ましくは、0.55kPa以上、0.65kPa以下である。
【0057】
なお、スポンジロール10aに、図4に示すような切れ目13(13a,13b)や図5〜図7に示すような切れ目14(14a〜14f)を設けた場合には、スポンジロール10aの接触圧で潰される形状が変化するので、切れ目の入れ方によって接触圧を変化させることになる。スポンジロール10aに切れ目13,14が設けられる場合の接触圧つまり最大圧力は、0.20kPa以上、0.50kPa以下の範囲とするのが好ましい。
【0058】
かかる範囲内の最大圧力であれば、高圧水の吹きつけで落とすことができなかった汚れを、落とすことができる。また、このように最大圧力を所定の範囲で示すことで、一定間隔のスポンジロール10aの間に入る洗浄対象物30である車両60の幅のある程度の変化を許容し得るようになっている。車幅は、規格等である程度の許容範囲内で変更できうるように設計されているのが常である。
【0059】
かかる対応で不適な時は、スポンジロール10aのベース40への取付位置をずらすことで、簡単に対応することもできる。場合によっては、スポンジロール10aのベース40への設置位置を、当初より可変に構成しておいても構わない。場合によって適宜に、スポンジロール10aの位置を調整して、接触圧の最適化を図れるようにしても構わない。
【0060】
図13(c)には、上記のようにして所定間隔に設定したスポンジロール10a間に、洗浄対象物30の車両60が入ってきた状態を示している。このように車両60がスポンジロール10a間に入った状態では、車両60の洗浄面側に接触するスポンジロール10aは、所定の接触圧で潰されている。
【0061】
接触圧の設定は、最大圧力の所定範囲内で設定するが、スポンジロール10a自体の弾性率でもその圧縮状態は異なる。そこで、最大圧力の上限値、下限値で、スポンジロール10aの側面を押圧した状態での凹み状態で設定しても構わない。すなわち、スポンジロール10aの中心から、最大圧力の上限、下限値で押した場合の凹んだ位置までの距離で設定すればよい。このようにして洗浄対象物30の車両60に対して所定の接触圧で接触できるように設定した自動洗浄装置のスポンジロール10a間に、洗浄対象物の車両60が入ってきた様子を分かり易いように、図14では斜視図として模式的に示した。図中、車両側面の網かけで示した箇所が、高圧水の吹きつけでは落とすことができない汚れを示している。かかる車両60の側面の汚れが、スポンジロール10aを通過することで、汚れが落とされていることを示している。
【0062】
スポンジロール10aは、図13、14に示す場合には、線路50の両脇に一対設けた場合を示した。しかし、洗浄対象物30の状況によっては、洗剤等を用いる場合も十分に想定できる。洗剤等で汚れを落とし、さらにその後に残る高圧水等でも落ちない汚れを押すように、洗浄作業を一貫した流れとして捉えて自動洗浄装置を構成することも考えられる。かかる場合には、例えば、図15(a)に示すように、スポンジロール10aを複数本設けるようにしても構わない。複数本のスポンジロール10aは、それぞれ用途が異なるように構成されている。複数本のスポンジロール10aを、順に、図15(a)に示すように、スポンジロール10a1(10a)、10a2(10a)、10a3(10a)とする。
【0063】
1本目のスポンジロール10a1は、洗浄対象物30の車両60に、洗浄剤を塗布する。かかるスポンジロール10a1には、図15(a)に示すように、側面に平行な切れ目14a(14)が設けられている。このように切れ目14aを設けることで、洗剤を下から上へ塗布することができる。図示はしないが、回転軸20に沿って洗剤供給主管が配管され、洗剤供給主管の途中で、洗剤供給枝管が放射状に設けられて、洗剤供給枝管の管端がわから洗剤がスポンジロール10a1の周面に洗剤が供給できるようになっている。
【0064】
2本目のスポンジロール10a2では、洗浄対象物30の車両60側面に塗布された洗剤で汚れを分解する。すなわち、塗布された洗剤を洗浄面に擦り込みつつ、汚れを分解させるのである。かかるスポンジロール10a2は、洗剤塗布のためのスポンジロール10a1とは、逆の角度で側面に切れ目14b(14)が設けられている。分解した汚れは、下方に落とされるのである。
【0065】
3本目のスポンジロール10a3は、側面に切れ目14が設けられていない。かかるスポンジロール10a3は、洗剤と汚れを水で洗い流す役目を担っている。かかるスポンジロール10a3には、回転軸20に沿って給水主管が配管され、かかる給水主管から給水枝管が放射状に配管されて、スポンジロール10a3の周面に水が供給できるように構成されている。
【0066】
かかる構成のスポンジロール10a1、10a2は、図15(b)に示すように、洗浄対象物30の移動方向に沿って、傾けて設けても構わない。図15(b)に示す場合は、スポンジロール10a1と、スポンジロール10a2とは、互いに逆の方向を向けて倒された形で設けられている。
【0067】
このように自動洗浄装置は、スポンジロール10aの設置の仕方で、種々の変形例が考えられる。かかる自動洗浄装置は、電車や汽車、あるいは乗合自動車やバス等の洗浄に適用することができる。電車や汽車等のようにレールを用いる場合を除いて、洗浄ラインには、洗浄対象物をスポンジロール間に自動的に送り出すベルトコンベアー等の自動送り装置を設ければよい。このようにすれば、スポンジロールを移動させることがなくて済む。
勿論、電車や汽車等の車両と同様に、乗合自動車やバス等の洗浄対象物を移動させても構わない。
【0068】
上記説明では、電車等の車両の洗浄に際しては、自動洗浄装置の構成の主要部のスポンジロールの構成を模式的に示したが、図示はしないが、門型に構成しても一向に構わない。2門か、3門を設置し、最初の門は洗剤塗布、次の門は汚れの分解、3門目は水洗いに設定するのが好ましい。また、洗剤の塗布、及び汚れ分解の部門は、洗剤が、洗浄対象物から垂れる。すなわち、剰余洗剤が発生するのである。
【0069】
しかし、かかる洗剤を垂れ流しにして廃棄するのではなく、例えば、回収して砂等を除いた後に、スポンジロール10a1等に再利用して循環させるようにしても構わない。例えば、図示はしないが、洗浄具本体10の洗浄対象物30に接触しない部分に、液配管と廃液溜まりを設け、廃液溜まりに溜められた洗浄に使用した廃液を、液配管を通して洗剤供給枝管に戻し、再度スポンジロール10a1の周面に供給するように構成してもよい。また、廃液溜まりから液配管への廃液の供給は、電動ポンプ等を用いることなく、洗浄対象物30との接触で行われるスポンジロール10a1の回転により駆動されるポンプなど、洗浄対象物30との接触で回転するスポンジロール10a1のエネルギーで循環させるように構成してもよい。
【0070】
なお、図15(b)に示すように、スポンジロール10aに所定の角度が付けられた場合や切れ目13,14が設けられた場合には、当該角度や切れ目に応じて、スポンジロール10aの洗浄対象物30に対する接触圧は適宜、調整されることになる。
【0071】
このように、洗剤を極力外部に排出しないように設置することで、余分な環境汚染を防ぐことができる。尚、洗剤には、水素脆弱性テストに合格した物を使用する。洗剤を循環させる装置では、汚れの粒子をフィルターでろ過する。洗浄能力が劣ってきた場合は、適宜に新しい洗剤の自動で追加できるようにしても構わない。
【0072】
図15(b)等に示すように、スポンジロールの角度調整は、移動物体に対して角度を大きくすると摺動抵抗が高くなる。角度を小さくすると摺動抵抗は低くなる。このように、角度調整を適宜に行うことで、洗浄対象物の移動物体の速度により摺動抵抗を変化させて、適切な洗浄が行えるようにすればよい。
【0073】
図16は、自動洗浄装置を、自家用車に適用した場合を示す。例えば、図16に示すように、家庭の庭先に自動洗浄装置を設置することもできる。庭先に設けた駐車スペースの横等に設置することができる。基本的には、スポンジロール10aを回転させる動力が不要であるため、スポンジロール10a自体を軽くすることができる。その結果、自動洗浄装置自体も、持ち運び可能に構成することができる。そのため、自家用として、個人で設置することができるのである。例えば、駐車スペースの横に置いておき、必要に応じて設置すればよい。今まで、基本的には、そのように個人で自動洗浄装置を持つことは行われていなかった。
【0074】
かかる構成の自動洗浄装置は、図17(a)に示すようにして、例えば、自動車をバックで駐車スペースに入れる際に、スポンジロール10aの間を通すようにすればよい。図17(b)に示すように、スポンジロール10a間を抜ける際に、網かけで示した汚れが落とされることとなる。
【0075】
本発明の自動洗浄装置を、上の説明では、車両、自動車等を洗浄対象物とした場合について説明したが、例えば、図18(a)に示すように、角材等の資材の汚れ除去にも勿論利用することができる。資材としては、角材以外に、図18(b)に示すように、丸材の洗浄等にも利用することができる。図18(a)、(b)に示す場合には、複数本のスポンジロール10aを用いて、枠状形成する。かかる枠状のスポンジロール10aの枠内を、角材や丸材を通すことで、側面に所定接触圧でスポンジロールを接触させて汚れを落とすことができる。但し、丸材等の断面丸みを帯びた形状部材は、スポンジロールが接触しない部分もでるため、必要に応じて例えば、円断面を回転するようにして再度スポンジロールの枠内を通す等すればよい。
【0076】
図18(a)、(b)に示す構成では、基本的には、枠状に複数のスポンジロール10aを組み合わせて、その枠内を、洗浄対象物30である角材や丸材を通すようにして洗浄する構成であった。角材や丸材自体が比較的に小さく、スポンジロールで構成した空間内を通過できる場合である。しかし、かかる枠内を通れない程に大きい場合も想定される。
かかる場合には、複数のスポンジロールを使用することなく、且つ枠内を通過させることなく、洗浄する構成も考えられる。
【0077】
例えば、図19(a)に示すように、角材の側面をスポンジロールが所定の押圧力で接触しながら、自身で移動する構成である。自身で移動するに際して、勿論スポンジロール10aは、洗浄対象物30との接触摩擦で自動回転して移動するのである。あるいは、図19(b)に示す場合は、相対して設けた角形のフレーム70に、スポンジロール10aがかけ渡されている。スポンジロール10aは、一方のフレーム70上をモーター等で移動する案内部材71が設けられている。かかる案内部材71で、フレーム70内に固定した洗浄対象物の側面を、洗浄することができるように構成されている。図20(a)、(b)に示す場合は、図19(a)、(b)に示した構成の角形を丸型に構成変更したものである。
【0078】
このように本発明で使用する自動洗浄装置は、スポンジロール10aを有しているので、例えば図21に示すような従来型の回転ブラシ100を用いる場合とは異なり、洗浄対象物に傷を付けることなく、且つ高圧水の吹きつけでも落とすことができなかった汚れを、きれいに落とすことができる。
【0079】
本発明で使用する洗浄具本体10の変形例として、スポンジロール10aとは異なる構成を考えた。すなわち、洗浄具本体10は、例えば、図22(a)に示すように、球状スポンジ200に構成しても構わない。かかる構成では、例えば、図22(b)に示すように、球状スポンジ200の全球は、半球状に覆うように設けたカバー201内で、自由回転可能に保持されている。図22(c)に示す構成は、かかる球状スポンジ200の断面の様子を示したものである。かかる球状スポンジ200を、図22(d)に示すように、洗浄対象物30に所定の接触圧で接触させて移動させれば、前記説明と同様に汚れを落とすことができる。
【0080】
(実施の形態3)
本実施の形態では、前記実施の形態で述べた自動洗浄装置を用いて、洗浄する方法について説明する。前記自動洗浄装置を用いて洗浄するに際して、洗剤を用いる場合に有効に適用できる技術である。洗剤は、洗浄対象物の下から上に向けて、洗浄対象物に付けるようにするのが、本実施の形態で説明する洗浄方法の特徴である。
【0081】
図15(a)に示すように、スポンジロール10aの側面に平行な切れ目14a(14)を設けることで、洗剤を下から上へ向けて洗浄対象物に塗布することができる。上から先に洗浄対象物に洗剤を塗布すると、塗布した洗剤が下に垂れて、未だ汚れが落とされていない部分の汚れを目視しづらくなる。これに対して、下から上に向けて洗剤を塗布することにより、汚れた部分を確実に目視することができるのである。
【0082】
また、洗浄対象物から垂れて廃液溜まりに溜められた余剰洗剤つまり廃液は、洗浄対象物30との接触で回転するスポンジロール10a1によって駆動されるポンプにより、液配管を通して洗剤供給枝管に戻される。これにより、電動ポンプ等を用いることなく、スポンジロール10a1の回転エネルギーで廃液を再利用可能に循環させることができる。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、高圧水の吹きつけでは落ちない汚れを、洗浄対象物に目視でみた場合に傷を付けることなく落とす洗浄分野で有効に使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 洗浄具本体
10a スポンジロール
10a1 スポンジロール
10a2 スポンジロール
10a3 スポンジロール
11a 円弧状体
11b 円弧状体
12 弦部分
12M 中心点
13 切れ目
13a 切れ目
13b 切れ目
14 切れ目
14a 切れ目
14b 切れ目
14c 切れ目
14d 切れ目
14e 切れ目
14f 切れ目
20 回転軸
20a 端部
30 洗浄対象物
30a 洗浄面
30b〜30d 凸面部
40 ベース
50 線路
60 車両
70 フレーム
100 回転ブラシ
200 球状スポンジ
201 カバー
A 洗浄具
B 距離
P 接触開始点
Q 接触開放点
M 最大圧力点
M1 上限値
M2 下限値
R 点
R1 点
R2 点
S 距離
S1 距離
S2 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄対象物に接触して前記洗浄対象物を洗浄する洗浄具本体を有する洗浄具であって、
前記洗浄具本体は、弾性部材で形成され、自身では回転せずに前記洗浄対象物との接触で回転し得ることを特徴とする洗浄具。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄具において、
前記洗浄具本体は、前記洗浄対象物に側面で接触する軸回転可能な円柱体に形成されていることを特徴とする洗浄具。
【請求項3】
請求項2に記載の洗浄具において、
前記円柱体には、前記洗浄対象物に接触する面に切れ目が設けられていることを特徴とする洗浄具。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄具において、
前記切れ目は、前記円柱体の軸方向に沿って設けられていることを特徴とする洗浄具。
【請求項5】
請求項3に記載の洗浄具において、
前記切れ目は、前記円柱体の軸方向に対して交差方向に設けられていることを特徴とする洗浄具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄具において、
前記弾性部材とは、スポンジであることを特徴とする洗浄具。
【請求項7】
洗浄対象物に接触して前記洗浄対象物を洗浄する洗浄具本体を有する自動洗浄装置であって、
前記洗浄具本体は、弾性部材で形成され、自身では回転せずに前記洗浄対象物との接触で軸に対して回転可能に設けられ、
洗浄に際しては、前記洗浄対象物には、0.50kPa以上、0.70kPa以下の範囲の接触圧で前記洗浄具本体を接触させることを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項8】
洗浄対象物に接触して前記洗浄対象物を洗浄する洗浄具本体を有する自動洗浄装置であって、
前記洗浄具本体は、弾性部材により、自身では回転せずに前記洗浄対象物との接触で軸に対して回転可能な円柱体に形成され、
前記円柱体には、前記洗浄対象物に接触する面に切れ目が設けられており、
洗浄に際しては、前記洗浄対象物には、0.20kPa以上、0.50kPa以下の範囲の接触圧で前記洗浄具本体を接触させることを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の自動洗浄装置において、
前記洗浄具本体は、間に前記洗浄対象物を挟むことができるように相対して設けられていることを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の自動洗浄装置において、
前記洗浄具本体は、前記洗浄対象物の移動方向に対して、0度を含まない90度未満の角度で前記軸が設けられていることを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の自動洗浄装置において、
前記洗浄具本体は、3個以上設けられていることを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項12】
請求項7〜11のずれか1項に記載の自動洗浄装置において、
前記洗浄具本体には、前記洗浄対象物に接触しない部分に液配管と、廃液溜まりとが設けられ、前記廃液溜まりに溜められた洗浄に使用した液の廃液を、前記洗浄対象物との接触で回転するエネルギーで再度洗浄具本体で使用することを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の自動洗浄装置において、
前記洗浄具本体には、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄具本体が用いられていることを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項14】
洗浄対象物に接触して前記洗浄対象物を洗浄する洗浄具本体を用いた洗浄方法であって、
前記洗浄具本体は、弾性部材で形成され、自身では回転せずに前記洗浄対象物との接触で回転させられ、
前記洗浄具本体の前記洗浄対象物との接触部に付けた洗剤は、前記洗浄対象物の下方から上方に向けて塗布されることを特徴とする洗浄方法。
【請求項15】
請求項14に記載の洗浄方法において、
前記洗浄対象物に塗布された洗剤の内、前記洗浄対象物から垂れた剰余洗剤は、前記洗浄具本体で再利用されることを特徴とする洗浄方法。
【請求項16】
請求項15に記載の洗浄方法において、
前記剰余洗剤の前記洗浄具本体での再利用には、前記洗浄具本体自身では回転せずに前記洗浄対象物との接触で回転させられる際に発生するエネルギーを用いて、前記洗浄具本体へ再利用可能に循環されることを特徴とする洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−221811(P2010−221811A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70403(P2009−70403)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(598096245)ジョイボンド株式会社 (5)
【Fターム(参考)】