説明

洗浄装置および洗浄方法

【課題】薬液処理後の水洗処理において、リフターに付着する薬液の水洗槽への持込み量を低減させ、水洗槽でのエッチングを防止できる洗浄装置および洗浄方法を提供する。
【解決手段】半導体基板の洗浄後にリフター2の洗浄を行い、薬液処理時に用いられた薬液および純水を含む溶液の比抵抗とリフター洗浄前の初期比抵抗の差分が予め設定された所定の値になるまで積分演算を行い、リフターに付着している残留薬液量を算出し、算出された残留薬液量からリフターが清浄な状態になるまでの洗浄時間を算出する。前記洗浄時間が経過するまで純水によるリフターの洗浄を行うことで、水洗処理槽でのエッチングを防止し、微細デバイスの品質、信頼性および歩留りを維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板のプロセス処理工程、特にウェット処理の最終洗浄(ファイナルリンス)工程を行う洗浄装置および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、半導体基板の洗浄方法では、塩酸と過酸化水素水との混合水溶液、アンモニアと過酸化水素水との混合水溶液、あるいは濃硫酸と過酸化水素水との混合水溶液等による薬液処理後に、半導体基板に付着した薬液を十分に洗浄して除去することを目的とした超純水リンス(オーバーフローリンス方式)が一般的に行われている。また、特に多槽浸漬式洗浄装置では、半導体基板の洗浄効果を確認するために、ファイナルリンス槽で純水の比抵抗を洗浄工程中に測定,監視し、槽内の純水の比抵抗が十分に上昇(半導体基板の洗浄が十分に進んで槽内の水中に不純物が無くなれば純水の比抵抗が高まる)した時点で洗浄を終了するプロセス制御方式が一般に採用されている。
【0003】
次に従来の洗浄装置の一例として、図5を参照しながら説明する。
【0004】
図5において、水洗槽51はリフター53により保持された半導体基板52が超純水により洗浄されるリンス処理槽である。水洗槽51では、槽内下部から供給される超純水54によって、半導体基板52の表面に付着した薬液が徐々に超純水に置換される。
【0005】
超純水54がオーバーフローしたオーバーフロー溶液は排水ポート55に一旦受け止められ、排水ポート55には比抵抗を測定するために比抵抗測定計56が設置されている。
【0006】
図5に示す洗浄装置により得られた比抵抗測定から、半導体基板52が十分な清浄度になったかを判断する一例を図6に示す。まず得られた比抵抗値を所定の時間での微分値を計算する。
【0007】
求めた微分値が、予め設定された所定の値以下で、かつ、予め設定された所定の時間継続したか否かを判定する。微分値が、予め設定された所定の値以下で、かつ、予め設定された所定の時間継続した場合、半導体基板52に付着している薬液等の汚れが十分に除去されて、半導体基板52が適正な清浄な状態に洗浄されたものとみなす。
【0008】
図6では、微分値がその最大値を過ぎた後、1MΩcm/sec以下の大きさで5秒以上継続したか否かを判定する設定としている。そして、微分値がその最大値を過ぎた後、1MΩcm/sec以下の大きさで5秒以上継続したと判定された場合、半導体基板52が適正な清浄状態に洗浄されたものとみなし、図中Aのタイミングで半導体基板52の超純水洗浄を終了する設定としている。
【0009】
溶液の比抵抗を時間微分した値は、洗浄すべき半導体基板52の枚数や洗浄に用いられる薬液の種類および濃度等に拘らず、その測定を開始する際にはほぼ0である。そして、比抵抗の時間微分値は測定時間が経過するにつれて上昇し、所定の時刻でピークを迎える。その後、比抵抗の時間微分値は測定時間が経過するにつれて下降し、ほぼ0となる。すなわち、溶液の比抵抗を時間で微分した値は、洗浄すべき半導体基板52の枚数や洗浄に用いられる薬液の種類および濃度等に拘らず、上に凸な曲線を描く。比抵抗の時間微分値が、予め実験などにより求めたデータ等に基づいて予め設定された、半導体基板52を適正な清浄な状態に洗浄できる所定の値以下で、かつ、予め設定された所定の時間継続するまで、制御装置により洗浄水供給装置を作動させる。これにより、半導体基板52を清浄な状態に洗浄できた直後に洗浄水供給装置の動作を止めて、半導体基板52の洗浄を終了することができる。
【特許文献1】特開2005-85892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし従来技術では、薬液処理後の水洗処理時に薬液持ち込み量が多い場合、半導体基板52から薬液を除去して水洗槽51が完全に超純水へ置換されるまでの洗浄時間は長くなってしまう。通常、水洗槽51では薬液処理時のように、半導体基板52の表面をエッチング等を行うことはないが、半導体基板52を保持するリフター53に薬液量が多く付着している場合に、水洗処理槽に薬液が多く持ち込まれるために、薬液の濃度が高くなり、かつ洗浄時間が長くなり、水洗処理時にも表面がエッチングされることがある。りん酸等の有機系の薬液を使用する場合、薬液はリフター53に付着し易く、またその量も多いことがわかっている。
【0011】
特に表面に薄い膜を形成した半導体基板52の場合、エッチングされた時の影響が大きく、特性の劣化や歩留りが低下しやすい。すなわち薬液処理槽および水洗槽51で必要以上にエッチングされた半導体基板52を備えた半導体装置は、その性能、品質、信頼性および歩留りが低い。さらに、そのような半導体基板52を備えた半導体装置は生産効率が低く、生産コストも高い。微細な回路パターンを有する半導体基板52においては表面に極薄膜を形成しており、エッチング量の制御は非常に重要である。よってリフター53へ付着している薬液は、半導体基板52の薬液処理時および水洗処理時にはできる限り除去されていることが望ましい。
【0012】
また、洗浄の時間が固定されないため、半導体基板52またはリフター53に付着した薬液の量に応じて洗浄時間が長くなったり、短くなったり変動する。処理時間が変動すると複数の処理槽を備えた洗浄装置の場合、他の処理槽の洗浄完了待ちが発生してしまうため、条件の異なる複数の処理を平行して行うことは困難である。
【0013】
そこで本発明は、上記従来の問題を鑑み、薬液処理後の水洗処理において、リフターに付着する薬液の水洗槽への持込み量を低減させ、水洗処理槽でのエッチングを防止できる洗浄装置および洗浄方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の洗浄方法は、浸漬式洗浄装置における半導体基板を保持するリフターの洗浄方法であって、水洗槽に純水を供給し、該純水の初期比抵抗を測定する工程と、半導体基板を保持して薬液洗浄を行ったリフターを前記水洗槽に投入する工程と、前記水洗槽に投入した前記リフターの純水洗浄時に、前記薬液洗浄時に用いられた薬液および前記純水を含む溶液の比抵抗を時間を空けて複数回測定する工程と、前記純水洗浄時の各比抵抗と前記初期比抵抗との差分値を求め、各差分値の積分演算を行い前記リフターに付着している残留薬液量を算出する工程と、前記残留薬液量から前記リフターが清浄な状態になるまでの洗浄時間を算出する工程と、前記洗浄時間が経過するまで前記リフターの純水洗浄を継続する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0015】
好ましくは、前記リフターの純水洗浄を継続する工程の前に、フッ酸溶液を用いて前記リフターを洗浄する工程をさらに含むものである。
【0016】
本発明の洗浄方法は、浸漬式洗浄装置における半導体基板を保持するリフターの洗浄方法であって、水洗槽に純水を供給し、該純水の初期比抵抗を測定する工程と、半導体基板を保持して薬液洗浄を行ったリフターを前記水洗槽に投入する工程と、前記水洗槽に投入した前記リフターの純水洗浄時に、前記薬液洗浄時に用いられた薬液および前記純水を含む溶液の比抵抗を時間を空けて複数回測定する工程と、前記純水洗浄時の各比抵抗と前記初期比抵抗との差分値を求め、各差分値の積分演算を行い前記リフターに付着している残留薬液量を算出する工程と、前記残留薬液量から固定の洗浄時間となる純水の供給流量を算出する工程と、前記純水の供給流量にて前記固定の洗浄時間が経過するまで前記リフターの純水洗浄を継続する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の洗浄装置は、薬液洗浄された半導体基板を純水で洗浄を行う洗浄装置であって、前記半導体基板または前記半導体基板を保持するリフターを洗浄する水洗槽と、前記リフターの純水洗浄時に前記薬液処理時に用いられた薬液および前記純水を含む溶液の比抵抗を測定する比抵抗測定計と、前記リフターの洗浄前の初期比抵抗と現在の比抵抗の差分が予め設定された所定の値になるまで積分演算を行い前記リフターに付着した残留薬液量を算出し、前記リフターが清浄な状態になるまでの洗浄時間を算出する演算・判定装置と、算出された洗浄時間になるまで前記純水を前記水洗槽に供給させる制御装置とを具備することを特徴とするものである。
【0018】
本発明の洗浄装置は、薬液洗浄された半導体基板を純水で洗浄を行う洗浄装置であって、前記半導体基板または前記半導体基板を保持するリフターを洗浄する水洗槽と、前記リフターの純水洗浄時に前記薬液処理時に用いられた薬液および前記純水を含む溶液の比抵抗を測定する比抵抗測定計と、前記リフターの洗浄前の初期比抵抗と現在の比抵抗の差分が予め設定された所定の値になるまで積分演算を行い前記リフターに付着した残留薬液量を算出し、前記リフターが清浄な状態になるまでの固定の洗浄時間における純水の供給流量を算出する演算・判定装置と、算出された供給流量にて前記純水を固定の洗浄時間、前記水洗槽に供給させる制御装置とを具備することを特徴とするものである。
【0019】
好ましくは、前記リフターの近傍に設けた前記薬液および前記純水を含む溶液をサンプリングするサンプリングチューブと、前記サンプリングチューブに設けたサンプリングした前記溶液の比抵抗を測定する複数の比抵抗測定計とを具備することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の洗浄装置および洗浄方法によると、リフターが清浄な状態になる洗浄時間が経過するまで、またはリフターが清浄な状態になる純水の供給流量で固定の洗浄時間が経過するまで、リフターの純水洗浄を継続することにより、リフターに付着している薬液を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の洗浄装置および洗浄方法によれば、半導体基板を保持するリフターに付着している薬液を低減して、薬液洗浄後の半導体基板の水洗処理を行うことができるため、水洗処理槽への薬液の持ち込みによる半導体基板表面のエッチングを防止することができる。
【0022】
また、表面に薄い膜を形成した半導体基板の場合、エッチングされた時の影響が大きく、特性の劣化や歩留りが低下しやすい。本発明の洗浄装置および洗浄方法によれば、薬液処理槽および水洗槽で必要以上に半導体基板表面をエッチングすることを防止することで、その性能、品質、信頼性および歩留りを維持することができる。
【0023】
また、本発明の洗浄装置および洗浄浄方法によれば、水洗処理の洗浄時間を固定し、残留薬液量に応じて純水の流量を制御して洗浄を行うことができるため、薬液残留量が大きい時に純水の供給流量を増やして、薬液残留量が小さい時に純水の供給流量を減らせば、リフターの清浄度を維持したままで洗浄時間を一定にすることができる。複数の処理槽を備えた洗浄装置においても、洗浄時間を一定にできるため、他の処理槽の処理完了待ちを発生させること無く、パラレルに条件の異なる複数の処理を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態の浸漬式洗浄装置の概略構成を示す。水洗槽1は、薬液洗浄された1枚ないし複数枚の半導体基板がリフター2により保持され収納される洗浄処理槽であり、また同時に半導体基板の洗浄後にリフター2単体を純水で洗浄処理する洗浄処理槽である。水洗槽1の底部には、半導体基板およびリフター2を洗浄するための超純水3を供給するための配管12が設置され、配管12には純水供給バルブ7が設けられている。純水供給バルブ7の開閉により超純水3は供給・停止の制御が行われる。水洗槽1内で半導体基板またはリフター2に付着していた薬液および水洗槽1内に供給された超純水3を含む溶液は、水洗槽1の外部にオーバーフローする。オーバーフローした溶液は排水ポート4に一旦受け止められた後に、排水箇所近くに設置される比抵抗測定計5aにより比抵抗が測定される。またリフター2の近傍に水洗槽1内の薬液および超純水3を含む溶液をサンプリングするためのサンプリングチューブ6が設けられ、リフター2の周辺の溶液が常時一定量サンプリングされて比抵抗測定計5b、5bにより比抵抗が測定される。
【0026】
比抵抗測定計5a〜5cが測定した溶液の比抵抗の測定値は、電気信号として比抵抗測定回路8に送られる。比抵抗測定回路8は、比抵抗測定計5a〜5cから出力された電気信号に基づいて、比抵抗測定計5a〜5cが測定した溶液の比抵抗の測定値を計測する。
【0027】
比抵抗の計測値は、電気信号として比抵抗測定回路8からA/D変換器9に送られる。A/D変換器9は、比抵抗測定回路8から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換した後、このデジタル信号を演算・判定装置10に向けて出力される。
【0028】
演算・判定装置10は、比抵抗測定回路8が計測した溶液の比抵抗の計測値を所定の時間毎に取得するとともに、取得した計測値に対して予め設定した条件を充たした時に積分演算を行う。制御装置11は、比抵抗の積分演算の結果から、リンス処理に必要な洗浄予測時間を算出し、算出された洗浄予測時間の間洗浄を行った後に、超純水供給バルブ7に対してバルブ制御信号を送信して超純水3の供給を停止させる構成となっている。
【0029】
次に図2と図3を用いて、本実施形態における半導体基板の洗浄後にリフター2を洗浄する方法について説明する。本実施形態のリフター2の洗浄方法は具体的には、薬液洗浄時にリフター2に薬液が付着し、半導体基板の洗浄によっても完全に除去できない薬液を半導体基板洗浄後に水洗槽1においてリフター2のみ洗浄・除去する方法であり、以下のように大きく3つのステップに分類される。一つ目のステップは比抵抗の初期値測定である。次に2つ目のステップは残留薬液量測定であり、最後3つ目はリフター洗浄である。このそれぞれのステップの詳細について具体的に説明する。
【0030】
まず比抵抗の初期値測定ステップについて説明する。薬液処理が終了して1枚ないし複数枚の半導体基板の水洗処理が完了した水洗槽1において、純水供給バルブ7を開いて超純水3を満たし、さらにオーバーフローさせて十分に水洗槽1内を清浄な状態にする(S1)。超純水3の供給によるオーバーフローは一定時間行い、その後に比抵抗測定計5aが測定した測定値を比抵抗測定回路8で予め設定した時間の間測定する。ここで測定した値を比抵抗の初期値(初期比抵抗)として演算・判定装置10に記憶しておく(S2)。
【0031】
次に残留薬液量測定ステップについて説明する。既に半導体基板の洗浄処理が完了し保持していた半導体基板をリリースしたリフター2を、超純水3でオーバーフローしている水洗槽1に投入する(S3)。リフター2の純水洗浄時においてはリフター投入後も超純水3によるオーバーフローは継続され同時に比抵抗を測定し(S4)、演算・判定装置10において現在の比抵抗から初期の比抵抗の差分演算する処理を行う(S5)。すなわち、薬液洗浄時に用いられた薬液および超純水3を含む溶液の比抵抗を比抵抗測定計5a〜5cにて測定し、その測定値に基づいて比抵抗測定回路8にて溶液の比抵抗の計測値を計測し、その計測値を演算・判定装置10にて所定の時間毎に取得することで、時間を空けて複数回測定し、純水洗浄時の各比抵抗と初期比抵抗との差分値を求める。現在の比抵抗から初期値の差分演算の結果が、予め設定した値以上かを演算・判定装置10により判定する。本実施形態では、現在の比抵抗から初期値の差分演算結果が−4以上であるか否かを演算・判定装置10により判定する設定とする。比抵抗の差分演算結果が予め設定した値を満たす場合、リフター投入から差分演算結果が予め設定した値を満たすまでの時間で、現在の比抵抗から初期値の差分演算した値に対して、積分演算を演算・判定装置10により行い、残留薬液量が算出される(S6)。
【0032】
最後にリフター洗浄のステップについて説明する。既に算出されている残留薬液量から、制御装置11にてリフター2の洗浄に必要な洗浄時間を以下の算出式を用いて算出する(S7)。
【0033】
【数1】

【0034】
【数2】

【0035】
C:リフター洗浄後のターゲットの残留薬液量・・・初期設定値
0:残留薬液量
F:純水流量(l/min)・・・初期設定値
V:洗浄槽容積(l)・・・初期設定値
t:洗浄時間(min)・・・可変で制御
この算出式では、純水流量Fと洗浄槽容積Vは予め洗浄装置の設定で決めておく必要がある。またリフター洗浄後のターゲット残留薬液量NCは予め実験などによって、生産している半導体基板の特性や品質が劣化しない値を決定しておく。以上が予め決まっていれば残留薬液量N0を算出することで、リフター洗浄後の残留薬液量N0がターゲットの値になるまでの時間を求めることができる。これらの計算は前記した純水流量Fと洗浄槽容積Vとリフター洗浄後のターゲットの残留薬液量NCを、予め初期値として演算・判定装置10に設定しておくことで、リフター2の洗浄時間tが演算・判定装置10で算出される。算出されたリフター洗浄時間tの間、純水洗浄をおこなうことでリフター2の残留薬液が十分に除去されリフター洗浄は完了し(S8)、次の半導体基板の薬液処理および水洗処理が繰り返し継続される。
【0036】
なお、リフター2の洗浄は前記の事例では超純水3を用いて行ったが、フッ酸などの薬液を用いても構わない。リフター2が石英製で、りん酸などの粘度の高い有機系の薬液がリフター2に付着している場合、フッ酸洗浄を用いると付着薬液のリフトオフ効果が期待できるため、リフター2に付着した薬液を除去する時間を短縮することができる。但し、フッ酸等の薬液用いてリフター2の洗浄を行った後は、同様に純水を用いてフッ酸を除去する必要がある。
【0037】
図4に本実施形態における一実施例として、リフター2の洗浄時での比抵抗の推移と、図2での説明した各処理ステップ完了タイミングを示す。例1〜3はそれぞれ残留薬液量が異なるリフター2を洗浄したときのデータである。比抵抗の立ち上がりの状態から、例1〜3のそれぞれ現在の比抵抗から初期の比抵抗の差分が−4以上になったタイミングで残留薬液量の算出が行われる。
【0038】
図4では残留薬液量が例3>例2>例1の順で多く、算出された残留薬液量からそれぞれのリフター洗浄時間が求められ、残留薬液量に応じた洗浄時間でリフター洗浄が行われている。
【0039】
このようにリフター2の残留薬液量に応じてリフター洗浄時間を算出して洗浄を行うことは、超純水3の使用量を必要最低限の使用量で、半導体基板の特性や品質を下げることなくリフター2の清浄度を一定にすることができる。そのことでコストを低減させることが可能である。
【0040】
なお、洗浄時間は固定し、残留薬液量に応じて洗浄水の流量を制御してもよい。具体的には、制御装置11にてリフター2の洗浄の超純水3の流量を以下の算出式を用いて算出する。
【0041】
【数3】

【0042】
【数4】

【0043】
C:リフター洗浄後のターゲットの残留薬液量・・・初期設定値
0:残留薬液量
F:純水流量(l/min)・・・可変で制御
V:洗浄槽容積(l)・・・初期設定値
t:洗浄時間(min)・・・初期設定値
この算出式は、前述した残留薬液量に応じて洗浄時間を求める算出式と同じであるが、予め設定しておく初期値が異なり、洗浄槽容積Vと洗浄時間tとリフター洗浄後のターゲットの残留薬液量NCを初期値として演算・判定装置10に設定しておく。残留薬液量N0を算出し、上記の式に値を代入して、必要なリフター2の純水流量Fを求めることができる。
【0044】
このような制御を行うことで、残留量が大きい時に洗浄水の供給流量を増やして、残留量が小さい時に洗浄水の供給流量を減らせば、リフター2の清浄度を維持したままで洗浄時間を一定にすることができる。図は省略するが、現在、複数の処理槽を備えた洗浄装置が一般的であり、比抵抗の値をリアルタイムに計測しながら洗浄時間の終点を検出する従来の技術では、洗浄の完了する時間が予め見積もれないために、パラレルに条件の異なる複数の処理を行うことは困難である。本実施形態の方法であれば洗浄時間を一定にできるため、容易に条件の異なる複数の処理をスケジューリングすることが可能である。
【0045】
なお、前述した実施形態では、比抵抗測定回路8と演算・判定装置10との間にA/D変換器9を設けたが、A/D変換器9は必ずしも必要ではない。比抵抗測定回路8と演算・判定装置10とが、それぞれアナログまたはデジタルの同じ形式の信号を処理できる設定になっていれば、A/D変換器9を設ける必要はない。
【0046】
また、演算・判定装置10と制御装置11は、その演算部・判定部と制御部とが独立した演算装置となって構成されているが、演算部・判定部と制御部が一体として構成されていても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の洗浄装置および洗浄方法は、リフターの清浄度を向上させ、半導体基板の水洗処理時に残留薬液による半導体基板表面のエッチングを防止することができる。これにより、微細デバイスにおいて品質の低下防止や製造ばらつきを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態における洗浄装置の概略構成図
【図2】本発明の実施形態におけるリフター洗浄方法のフロー図
【図3】本発明の実施形態におけるリフター洗浄時の比抵抗の推移を示す図
【図4】本発明の実施形態におけるリフター洗浄時の一実施例での比抵抗の推移を示す図
【図5】従来例における洗浄装置の概略構成図
【図6】従来例における洗浄方法の比抵抗と比抵抗の微分値の推移を示す図
【符号の説明】
【0049】
1 水洗槽
2 リフター
3 超純水
4 排水ポート
5 比抵抗測定計
6 サンプリングチューブ
7 純水供給バルブ
8 比抵抗測定回路
9 A/D変換器
10 演算・判定装置
11 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬式洗浄装置における半導体基板を保持するリフターの洗浄方法であって、
水洗槽に純水を供給し、該純水の初期比抵抗を測定する工程と、
半導体基板を保持して薬液洗浄を行ったリフターを前記水洗槽に投入する工程と、
前記水洗槽に投入した前記リフターの純水洗浄時に、前記薬液洗浄時に用いられた薬液および前記純水を含む溶液の比抵抗を時間を空けて複数回測定する工程と、
前記純水洗浄時の各比抵抗と前記初期比抵抗との差分値を求め、各差分値の積分演算を行い前記リフターに付着している残留薬液量を算出する工程と、
前記残留薬液量から前記リフターが清浄な状態になるまでの洗浄時間を算出する工程と、
前記洗浄時間が経過するまで前記リフターの純水洗浄を継続する工程と、
を含むことを特徴とするリフターの洗浄方法。
【請求項2】
前記リフターの純水洗浄を継続する工程の前に、フッ酸溶液を用いて前記リフターを洗浄する工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のリフターの洗浄方法。
【請求項3】
浸漬式洗浄装置における半導体基板を保持するリフターの洗浄方法であって、
水洗槽に純水を供給し、該純水の初期比抵抗を測定する工程と、
半導体基板を保持して薬液洗浄を行ったリフターを前記水洗槽に投入する工程と、
前記水洗槽に投入した前記リフターの純水洗浄時に、前記薬液洗浄時に用いられた薬液および前記純水を含む溶液の比抵抗を時間を空けて複数回測定する工程と、
前記純水洗浄時の各比抵抗と前記初期比抵抗との差分値を求め、各差分値の積分演算を行い前記リフターに付着している残留薬液量を算出する工程と、
前記残留薬液量から固定の洗浄時間となる純水の供給流量を算出する工程と、
前記純水の供給流量にて前記固定の洗浄時間が経過するまで前記リフターの純水洗浄を継続する工程と、
を含むことを特徴とするリフターの洗浄方法。
【請求項4】
薬液洗浄された半導体基板を純水で洗浄を行う洗浄装置であって、
前記半導体基板または前記半導体基板を保持するリフターを洗浄する水洗槽と、
前記リフターの純水洗浄時に前記薬液処理時に用いられた薬液および前記純水を含む溶液の比抵抗を測定する比抵抗測定計と、
前記リフターの洗浄前の初期比抵抗と現在の比抵抗の差分が予め設定された所定の値になるまで積分演算を行い前記リフターに付着した残留薬液量を算出し、前記リフターが清浄な状態になるまでの洗浄時間を算出する演算・判定装置と、
算出された洗浄時間になるまで前記純水を前記水洗槽に供給させる制御装置と、
を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
薬液洗浄された半導体基板を純水で洗浄を行う洗浄装置であって、
前記半導体基板または前記半導体基板を保持するリフターを洗浄する水洗槽と、
前記リフターの純水洗浄時に前記薬液処理時に用いられた薬液および前記純水を含む溶液の比抵抗を測定する比抵抗測定計と、
前記リフターの洗浄前の初期比抵抗と現在の比抵抗の差分が予め設定された所定の値になるまで積分演算を行い前記リフターに付着した残留薬液量を算出し、前記リフターが清浄な状態になるまでの固定の洗浄時間における純水の供給流量を算出する演算・判定装置と、
算出された供給流量にて前記純水を固定の洗浄時間、前記水洗槽に供給させる制御装置と、
を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
前記リフターの近傍に設けた前記薬液および前記純水を含む溶液をサンプリングするサンプリングチューブと、
前記サンプリングチューブに設けたサンプリングした前記溶液の比抵抗を測定する複数の比抵抗測定計と、
を具備することを特徴とする請求4または請求項5に記載の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−87138(P2010−87138A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253188(P2008−253188)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】