説明

洗浄装置

【課題】この発明は、水に注入する薬剤を取り間違えることなく、確実に洗浄効果のある洗浄水を生成できる洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の洗浄システム1は、洗浄水103を生成する洗浄水生成装置10の本体10aに、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を貯蔵する第1タンク11と、粉末状の酢酸ナトリウムを水に溶かして構成する酢酸水溶液102を貯蔵する第2タンク12と、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を注入する注入ポンプP1,P2と、注入ポンプP1,P2の注入を制御する洗浄制御部CPUとを備え、第1タンク11を本体10aの下方位置に配置し、第2タンク12を本体10aの上方位置に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば食品を洗浄するための次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜や果物を加熱せずに提供する場合の洗浄方法として、洗浄対象物を、200mg/L濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に5分間、或いは、100mg/L濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間漬けおいて、その後十分に流水ですすぎ洗うように規定され、その方法で洗浄されている。
しかし、上記規定どおりに洗浄した場合であっても、洗浄対象物の菌数はそれほど減らず、さらには、洗浄対象物である商品に塩素の臭いが付着して商品価値が下がるといった問題があった。
【0003】
これは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHによって、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの存在比が変化し、微生物の細胞の外側を覆っている細胞膜を通過し、細胞内部で殺菌効果を得ることのできる次亜塩素酸の存在比の少ない状態で長時間洗浄しても殺菌効果を得ることができないためである。
【0004】
そこで、酸水溶液と塩素系水溶液を水に混入させた洗浄水を用いる食品の洗浄水(殺菌水)が提案されている(特許文献1参照)。
この特許文献1の洗浄水は、酸水溶液と塩素系水溶液とが混入された水のpH値を測定することで、洗浄水中に次亜塩素酸が多く存在するよう設定している。これにより、洗浄効果の高い洗浄水を得ることができる。
【0005】
しかし、この特許文献1の洗浄水を生成するために、水に混入させる酸水溶液と塩素系水溶液とはともに無色の水溶液であるため、酸水溶液と塩素系水溶液とを取り間違う可能性が高く、酸水溶液と塩素系水溶液とを取り間違えた場合、逆の水溶液を水に混入させることとなるため、所望の洗浄効果のある洗浄水を生成することはできないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−305428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、水に混入する薬剤を取り間違えることなく、確実に洗浄効果のある洗浄水を生成できる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、本体部に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を貯蔵する第1タンクと、粉末状の酢酸ナトリウムを水に溶かして構成する酢酸水溶液を貯蔵する第2タンクと、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び前記酢酸水溶液を注入する注入ポンプと、該注入ポンプの注入を制御する制御手段とを備えた洗浄装置であることを特徴とする。
【0009】
なお、上記洗浄は、殺菌効果、滅菌効果、消毒効果、或いは洗浄効果のある洗浄であることを含む。
上記次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液又は通常の次亜塩素酸ナトリウム水溶液であることを含む。
【0010】
これにより、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酢酸水溶液とが注入された洗浄水を生成することができる。なお、粉末状の酢酸ナトリウムを水に溶かして酢酸水溶液を構成するため、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酢酸水溶液と取り間違えて、タンクに貯蔵することがなく、確実に洗浄効果のある洗浄水を生成することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記第1タンクを前記本体部の下方位置に配置し、前記第2タンクを前記本体部の上方位置に配置することができる。
これにより、液体状で重量のある次亜塩素酸ナトリウム水溶液を下方の第1タンクに投入し、こぼれても問題のない水を先ず上方の第2タンクに投入して、その第2タンクに軽量な粉末状の酢酸ナトリウムを投入することで各タンクにそれぞれの水溶液を貯蔵できる。
【0012】
このように、前記第1タンクを下方位置に、前記第2タンクを上方位置に配置したことにより、安全かつ容易に、取り間違うことなく水溶液をそれぞれのタンクに貯蔵し、確実に洗浄効果のある洗浄水を生成することができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び前記酢酸水溶液を注入して生成した洗浄水をためて洗浄対象物を洗浄する洗浄槽と、前記洗浄水の次亜塩素酸濃度を測定する次亜塩素酸濃度測定手段とを備え、前記制御手段を、該次亜塩素酸濃度測定手段の測定結果に応じて、前記注入ポンプが次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び前記酢酸水溶液を注入する構成とすることができる。
【0014】
上記次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び酢酸水溶液を注入して生成した洗浄水は、洗浄槽に貯めた水に次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び酢酸水溶液を注入して生成した洗浄水、或いは洗浄層へ送水する送水管に次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び酢酸水溶液を注入した洗浄水であることを含む。
【0015】
これにより、微生物の細胞の外側を覆っている細胞膜を通過し、細胞内部で殺菌効果を得ることのできる次亜塩素酸の存在比の高い洗浄水、すなわち洗浄効果の高い洗浄水を洗浄槽にためて、洗浄洗浄対象物を洗浄することができる。
また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酢酸水溶液とを取り間違う可能性がなく、確実に洗浄効果の高い洗浄水を生成して洗浄対象物を洗浄することができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記洗浄槽に、あふれた洗浄水を、回収して洗浄槽に再給水して洗浄水を循環させる洗浄水循環手段を備えることができる。
洗浄水循環手段は、オーバーフローした洗浄水を貯めるオーバーフロータンクと、オーバーフロータンクに貯まった洗浄水を洗浄槽に再給水するためのポンプで構成し、該ポンプを高圧ポンプ、揚水ポンプ或いは水中ポンプで構成することを含む。
【0017】
これにより、洗浄水を有効に利用することができるとともに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酢酸水溶液の注入量も低減できる。したがって、洗浄対象物を洗浄するためのコストを低減できるとともに、環境に優しい洗浄を実現することができる。
【0018】
また、洗浄水循環手段によって、洗浄層内の洗浄水に水流が生じるため、洗浄水による洗浄効果を向上することができる。さらに、洗浄水循環手段に高圧ポンプを用いた場合、洗浄槽内の洗浄水にジェット水流が生じるため、例えば、刻みネギの内部や、白菜の葉の裏側等の表面に露出していない込み入った箇所も洗浄することができ、洗浄水による洗浄効果をより向上することができる。
【0019】
また、この発明の態様として、本体外部から水を給水し、本体外部に送水する給送水配管と、該給送水配管を流れる水の流量を計測する流量計とを備え、前記注入ポンプを、前記給送水配管に接続するとともに、前記制御手段を、該流量計が計測した流量に応じて、前記注入ポンプが次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び前記酢酸水溶液を前記給送水配管に注入する構成とすることができる。
【0020】
これにより、給送水管内で水に次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び酢酸水溶液を注入して洗浄水を生成し、給送水管から洗浄水を流出させて洗浄対象物を洗浄することができる。したがって、例えば、手洗い等に洗浄水を用いることもでき、さらには、洗浄槽を備えずとも、例えば桶等の洗浄水をためることのできる容器に洗浄対象物を入れて手軽に洗浄水で洗浄することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、水に注入する薬剤を取り間違えることなく、洗浄効果のある洗浄水を確実に生成し、その洗浄水で洗浄する洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の一実施の形態を以下図面に基づいて詳述する。
低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を用いた洗浄システム1の全体概要図を示す図1と、洗浄システム1の構成図を示す図2と、洗浄水生成装置10について説明図を示す図3と、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101の次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの存在比とpH値との関係グラフを示す図4と、洗浄水生成装置10で生成した洗浄水103の効果確認試験結果を示す図5とともに、洗浄システム1及び洗浄水生成装置10について説明する。
【0023】
洗浄システム1は、洗浄水生成装置10と、洗浄槽20と、洗浄水測定器30と、レコーダ40と、単水栓50とで構成し、刻みネギ61をザル60に入れて洗浄する装置である。なお、洗浄する洗浄対象物は刻みネギ61に限定されず、きゅうりのスライス、角切り白菜などのカット野菜や果物等の飲食物であってもよい。
【0024】
洗浄水生成装置10は、図2に示すように、本体10aの内部に低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を入れる第1タンク11と、酢酸水溶液102を入れる第2タンク12と、第1タンク11の低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を注入する第1注入ポンプP1と、第2タンク12の酢酸水溶液102を注入する第2注入ポンプP2と、注入ポンプP1,P2の注入先を切り替える切替弁B1,B2と、第1タンク11内の液量を検出する液量センサS1と、第2タンク12内の液量を検出する液量センサS2と、第2タンク12に給水する給水管202の給水と停止とを切り替える仕切弁B3と、洗浄水生成装置10の状態を出力する出力画面LCDと、単水栓50に接続された給送水管201を流れる水道水の流量を計測する流量計Mと、これらを制御する洗浄制御部CPUとを備えている。
【0025】
また、洗浄水生成装置10には、洗浄水測定器30で出力された測定結果の入力を受け付けるための接続を許容するインターフェイス(図示省略)を備え、洗浄水測定器30が接続されて、その測定結果が洗浄制御部CPUに入力される構成である。
【0026】
なお、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101は洗浄水の原料として一般的に使用されている次亜塩素酸ナトリウムより発がん性が低く、塩素臭の少ない水溶液である。また、酢酸水溶液102は低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101のpH調整剤として用いられ、所定量の水に適宜の配合比で粉末状の酢酸ナトリウムを溶かして形成している。
【0027】
図3に示すように、第2タンク12は本体10aの正面視右側上方に配置し、第1タンク11は本体10aの正面視左側下方に配置し、第1タンク11の上方に出力画面LCDが配置されている。
【0028】
なお、第1タンク11の上面には、本体10aの水平幅方向の枢動軸を中心として開閉して第1タンク11内への低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101の投入を許容する投入蓋11aを備えるとともに(図3(a)参照)、第1タンク11内の低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101の残量を目視確認する残量確認窓11bを第1タンク11の正面に備えている。
【0029】
また、第1タンク11と同様に第2タンク12にも、内部に酢酸水溶液102を形成するための粉末状の酢酸ナトリウムの投入を許容する投入蓋12aを備えるとともに(図3(a)参照)、第2タンク12の正面に、第2タンク12内の酢酸水溶液102の残量を目視確認する残量確認窓12bを備えている。
【0030】
洗浄槽20は、作業台24の設置箇所を除いて上面が開放された水槽部21と、水槽部21でオーバーフローした循環洗浄水103aが貯まるオーバーフロータンク25と、オーバーフロータンク25に貯まった循環洗浄水103aを毎分200Lの水量で水槽部21に高圧で循環させる循環装置23とで構成するとともに、水槽部21上方には、水槽部21に毎分10L程度の水量で給水する給水管203と、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を注入する注入口101a,102aが配置されている。
【0031】
水槽部21は、作業台24の下方に備えた第1堰プレート21aによって仕切られ、第1第1堰プレート21aをオーバーフローした洗浄水103が流入する第1キャッチタンク22を備えている。
【0032】
オーバーフロータンク25は、水槽部21の下側に配置され、第1キャッチタンク22に流入した循環洗浄水103aが排出口22aを通過して落下してくる構成である。なお、水槽部21において第1堰プレート21aが設置された側と反対側のオーバーフロータンク25に第2堰プレート25aが設けられ、その反対側に第2堰プレート25aをオーバーフローした循環洗浄水103aが流入する第2キャッチタンク25bを配置している。なお、第2キャッチタンク25bに貯まった循環洗浄水103aを他の装置に使用するために送水する送水管26に接続された水中ポンプP4が装備されている。
【0033】
循環装置23は、オーバーフロータンク25に貯まった循環洗浄水103aを水槽部21に循環するための循環用配管23aと、該循環用配管23aの途中に配置された高圧揚水ポンプP3とで構成している。また、図2中a部拡大図に示すように、循環用配管23aの送水先である水槽部21内部に、高圧揚水ポンプP3によって加圧された循環洗浄水103aをザル60に向かってジェット噴流として噴出させる噴出口23bbを備えた噴出配管23bを、2つのザル60に応じて2箇所備えている。
【0034】
洗浄水測定器30は、図2に示すように、水槽部21の洗浄水103内に漬ける濃度センサS3と、該濃度センサS3による測定結果を出力する出力画面LCDとが接続され、これらを制御する測定制御部CPUとを備えている。
【0035】
また、洗浄水測定器30には、測定制御部CPUで算出された測定結果を洗浄水生成装置10やレコーダ40に出力するインターフェイス(図示省略)を備え、洗浄水生成装置10及びレコーダ40に接続されている。
なお、洗浄水測定器30は、濃度センサS3により、洗浄水103中の次亜塩素濃度(HOCL)、pH値及び水温を測定している。
レコーダ40は、洗浄水測定器30から出力された測定結果を記録用紙にペンレコーダがリアルタイムに記録するレコーダであり、レコーダ40によって洗浄水103の濃度、pH値及び水温を記録することができる。
【0036】
単水栓50は、流量計Mが装備された給送水管201において切替弁B1,B2を通過した低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102が注入される注入部101b,102bより送水先に設置された複数の蛇口で構成されている。
【0037】
このように構成された洗浄システム1でザル60に詰められた刻みネギ61を洗浄する場合の使用方法について、以下で説明する。
先ず、洗浄水生成装置10は、第1タンク11及び第2タンク12に装備した液量センサS1,S2により、洗浄水103の原料となる低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102の残量をチェックし、残量が少ない場合に、洗浄水生成装置10の出力画面LCDに、利用者に低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を形成するための粉末状の酢酸ナトリウムを投入する旨を出力する。
【0038】
このとき、水溶液状態の低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101は本体10a下部に配置した第1タンク11の投入蓋11aから投入できるため、利用者は重たい水溶液状態の低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を高く持ち上げずとも容易に第1タンク11に投入できる。
【0039】
これに対し、第2タンク12への酢酸ナトリウムの投入は、給水管202から給水が完了した旨のLCDの出力があってから、軽量な粉末状の酢酸ナトリウムを本体10aの上方に配置した第2タンク12の投入蓋12aから投入する。
【0040】
これにより、重たい液状の酢酸水溶液を第2タンク12に投入する場合や、第1タンク11を本体10aの上方に配置して低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を投入する場合と比較して容易に第2タンク12で酢酸水溶液102を形成することができる。
【0041】
また、重たい低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を本体10aの下方に配置した第1タンク11に投入し、軽い粉末状の酢酸ナトリウムを本体10aの上方に配置した第2タンク12に投入して酢酸水溶液102を形成する構成としたことによって、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101と酢酸水溶液102を形成する粉末状の酢酸ナトリウムを取り間違えて第1タンク11及び第2タンク12に投入することを防止している。
【0042】
そして、上述した洗浄水生成装置10への低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102の投入と独立して、洗浄槽20の水槽部21に給水管203から水道水を給水して貯めておき、貯まった水道水に濃度センサS3を漬け、洗浄水測定器30の測定を開始する。
【0043】
洗浄水測定器30は水槽部21に貯まった水道水の次亜塩素濃度(HOCL)、pH値及び水温を測定し、測定結果を洗浄水生成装置10及びレコーダ40に送信する。なお、水温が高すぎたり、低すぎたりすることで刻みネギ61が劣化するため、本実施例においては15℃程度の水道水を給水管203から給水し、水槽部21に貯めた洗浄水103も15℃程度に保っている。
【0044】
洗浄水測定器30からの測定結果を受信した洗浄水生成装置10は、洗浄水103として、次亜塩素濃度(HOCL)が所定濃度になるように、注入ポンプP1,P2を作動させるとともに、切替弁B1,B2を注入口101a,102a側に切替え、水槽部21内の水道水に低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を注入して洗浄水103を生成する。
【0045】
なお、本実施形態例において、洗浄水103は、pH5前後の状態における次亜塩素濃度が30(下限濃度)乃至50ppm(上限濃度)を所定濃度とし、洗浄水103のpH値が5前後になるように低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101と酢酸水溶液102との注入比率を決定している。
【0046】
本実施例において、次亜塩素濃度の所定濃度の範囲を、30(下限濃度)乃至50ppm(上限濃度)に設定したが、洗浄水生成装置10に、例えば0乃至200ppmの範囲で濃度を設定できるような濃度設定装置を装備して、調整可能に構成してもよい。これにより、洗浄対象とする食材の種類や、食材自体の状態に応じて濃度を調整し、例えば、食材にとって負担の少ない、すなわち洗浄によって損傷しないような最適な洗浄を実現することができる。
【0047】
これは、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101中の次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの存在比とpH値との関係グラフを表す図4に示すように、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101において、中性・弱酸性域の次亜塩素酸(HOCL)はアルカリ域では次亜塩素イオン(OCl−)となって存在し、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101のpH値によってこの次亜塩素酸と次亜塩素イオンとの存在比が変わるため、洗浄水103のpH値が5前後になるように上記注入比率で注入している。
【0048】
さらに詳しくは、この次亜塩素イオンは微生物の細胞の外側を覆っている細胞膜を通過できず、細胞膜を通過して、細胞内部で殺菌効果を発揮できる次亜塩素酸と比較して、およそ1/80の殺菌効果しかなく、洗浄水103が微生物を殺菌して洗浄する洗浄効果を向上するために、洗浄水103中の次亜塩素酸の存在比が高いpH値5前後となるように低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び洗浄水103を所定配合比率で注入している。
【0049】
これにより、洗浄水103は、pH値が8.6乃至9.5であり、次亜塩素酸の存在比率が5乃至15%でしかない、通常使用されている200mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液より高い洗浄効果を得ることができる。
【0050】
このようにして、水槽部21内部に貯められた水道水に低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102が注入され上限濃度の洗浄水103が生成されると、洗浄水測定器30は洗浄水103が所定濃度に達したことを出力画面LCDに出力するとともに、測定結果を洗浄水生成装置10に送信する。所定濃度に達した測定結果を受信した洗浄水生成装置10は注入ポンプP1,P2を停止し、次の注入に備える。
【0051】
この状態において、利用者は刻みネギ61を詰めたザル60を水槽部21に漬けおいて洗浄する。なお、水槽部21には2つのザル60を漬けおくことができ、洗浄完了したザル60を作業台24上に載置して、刻みネギ61に付着した洗浄水103を水切りすることができる。
【0052】
また、ザル60の洗浄中は、刻みネギ61を洗浄して汚れた洗浄水103に常に給水管203から毎分10L程度の水量の水道水を給水している。これにより、洗浄水103の汚れ度合いを低減するとともに水温を保っている。
【0053】
この給水管203からの給水によって、水槽部21の容積を越えた余剰分の洗浄水103(以下において「循環洗浄水103a」という)は第1堰プレート21aをオーバーフローしてキャッチタンク22に流入し、キャッチタンク22の底部に備えた排出口22aを通過してオーバーフロータンク25に流入し、循環装置23によって水槽部21に戻される。
【0054】
このとき、循環装置23の高圧揚水ポンプP3は、循環洗浄水103aを毎分200Lの水量を循環させ、噴出口23bbから循環洗浄水103aを噴出させるため、循環洗浄水103aが混入する水槽部21内の洗浄水103にジェット水流が生じる。
したがって、水槽部21内に漬けおいたザル60内の刻みネギ61の内部まで洗浄水103が浸入した状態で刻みネギ61を洗浄することができる。
【0055】
なお、循環装置23によって循環される洗浄水103に、給水管203から毎分10L程度の水量の水道水を給水されることによって、洗浄水103の汚れ度合いを低減するとともに水温を保っているが、その給水された分の循環洗浄水103aが第2堰プレート25aを超えて第2キャッチタンク25bに流入する。この第2堰プレート25aを超えて第2キャッチタンク25bに流入した循環洗浄水103aは第2キャッチタンク25bに装備された水中ポンプP4によって、他の装置まで送水管26を介して送水され、再利用することができる。
【0056】
なお、上述したように、洗浄中の水槽部21には毎分200Lの水量の循環洗浄水103aが循環するとともに、給水管203から毎分10Lの水量の水道水が給水されるため、水槽部21に貯まった洗浄水103の次亜塩素酸(HOCL)の濃度が低下するが、常に、洗浄水測定器30によって水槽部21内の洗浄水103の濃度を測定しているため、洗浄水103の濃度が下限濃度を下回る測定結果を受信した洗浄水生成装置10は、洗浄水103の濃度が上限濃度を上回る測定結果を受信するまで注入ポンプP1,P2及び切替弁B1,B2を再稼動させて、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を水槽部21に注入して、水槽部21内の洗浄水103の次亜塩素酸濃度が所定範囲内となるように設定している。
【0057】
また、洗浄水生成装置10には単水栓50が接続されており、単水栓50が開放されると、給送水管201を通って水道水が流れ、流量計Mがその流量を計測し、計測結果を流量計Mから受信した洗浄制御部CPUは、所定流量ごとに低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を注入する。
【0058】
詳しくは、流量計Mの作動を検知すると、洗浄制御部CPUは低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102が注入部101b,102bに流れるように切替弁B1,B2を切替え、流量計Mが所定流量を検知する毎に、注入ポンプP1,P2がそれぞれワンショットずつ低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を注入する構成である。
【0059】
給送水管201を流れる水道水に注入される低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102は、次亜塩素濃度が30乃至50ppmとなるとともに、pH値が5前後の洗浄水103を形成する比率で注入されている。なお、上述したように、次亜塩素濃度は、30乃至50ppmに限定されず、洗浄対象物や使用方法等に応じて適宜の濃度に設定すればよい。
【0060】
これにより、所定量の水道水に対してワンショットずつ注入された低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102が注入部101b,102bで給送水管201を流れる水道水に注入され、pH値が5前後の次亜塩素濃度が30乃至50ppmとなる洗浄水103を単水栓50から流出させることができる。
したがって、利用者は、洗浄槽20まで行かずとも、単水栓50から洗浄性能の高い洗浄水103を得ることができるため、利便性が向上する。
【0061】
このように構成した洗浄システム1で生成される洗浄水103の洗浄効果確認試験について図5とともに、以下に説明する。洗浄効果確認試験は、未洗浄の刻みネギ61と、従来の洗浄方法で用いられる200mg/L濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬させた刻みネギ61と、本実施例の洗浄水103に2分間浸漬させた刻みネギ61とのそれぞれの一般生菌と、大腸菌群とを寒天培養して比較した。
【0062】
一般生菌についての培養結果を示す図5(a)に示すように、未洗浄の刻みネギ61に対して、200mg/L濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液での洗浄によって、わずかに生菌数が減少していることは確認できるものの、その減少率はわずかである。
【0063】
それに対して、洗浄水103で洗浄した結果、一般生菌をほとんど確認することはできず、従来から用いられている200mg/L濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液より大幅に高い洗浄効果を確認することができた。
【0064】
大腸菌群についての培養結果を示す図5(b)に示すように、一般生菌の場合と同様に、洗浄水103で洗浄した結果、大腸菌群をほとんど確認することはできず、従来から用いられている200mg/L濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液より大幅に高い洗浄効果を確認することができた。
【0065】
このように、洗浄効果の高い洗浄水103を生成することのできる洗浄システム1により、次亜塩素濃度が30乃至50ppmとなるとともに、pH値が5前後の洗浄水103を水槽部21に貯めて、ザル60に詰め込んだ刻みネギ61に対して高い洗浄効果のある洗浄をすることができる。
【0066】
より詳しくは、殺菌効果の高い次亜塩素酸の存在比率が高いpH値5前後の洗浄水103を形成することができる。したがって、短時間で高い洗浄効果を得ることができるため、刻みネギ61を洗浄水103に長時間浸漬することによる刻みネギ61の劣化を防止するとともに、洗浄水103の臭いが刻みネギ61に移ることを防止できる。
【0067】
また、循環装置23で循環洗浄水103a循環させ、給水管203からの水道水を水槽部21に給水するとともに、洗浄水測定器30で水槽部21内に貯めた洗浄水103の次亜塩素濃度を測定しながら洗浄しているため、所定水温を保ちながら清潔な洗浄水103を使用して洗浄でき、さらには洗浄水103を上記濃度及びpH値に保って洗浄効果の高い洗浄を実施することができる。
【0068】
また、循環洗浄水103aを循環させて再利用しているため、洗浄のために使用する水道水、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102の使用量を低減することができる。
【0069】
さらには、循環装置23の高圧揚水ポンプP3で循環洗浄水103aを噴出させることで洗浄水103にジェット水流を生じさせて洗浄しているため、例えば刻みネギ61の内部等の隠れた箇所まで洗浄水103が浸入して洗浄することができる。
【0070】
また、洗浄水生成装置10において、重たい低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を投入する第1タンク11を本体10a下部に配置し、酢酸水溶液102を形成するための粉末状の酢酸ナトリウムを投入する第2タンク12を本体10a上部に配置したことにより、手軽に第1タンク11に低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を投入するとともに、第2タンク12に酢酸水溶液102を形成することができる。
【0071】
また、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101と酢酸水溶液102を形成する粉末状の酢酸ナトリウムを取り間違えて第1タンク11及び第2タンク12に投入することを防止しているため、上述した様な洗浄効果の高い洗浄水103を確実に生成して用いることができる。
【0072】
さらには、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101を用いたことによって一般的に用いられている次亜塩素酸ナトリウム水溶液と比べて、発がん性を低減できるとともに、塩素臭の少ない洗浄水103を生成することができる。
【0073】
また、pH調整剤として、酢酸ナトリウムを溶かした酢酸水溶液102を用いたことにより、例えば間違って、酢酸水溶液102を注入しすぎた場合であっても、洗浄水103はpH値が4以下となることはなく、安全な洗浄水103を生成することができる。
【0074】
なお、本実施例においては、洗浄水測定器30で次亜塩素酸濃度を測定し、洗浄水103の次亜塩素酸濃度が下限濃度を下回った際に、pH値が5前後となる所定比率の低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を注入する構成であったが、洗浄水測定器30で測定された洗浄水103のpH値に応じて、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102の注入比率を調整する構成であってもよい。
【0075】
これにより、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を、洗浄水103の次亜塩素酸濃度及びpH値に応じて、それぞれ適宜の注入量を注入することができ、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102の使用量を抑えながら、適切な次亜塩素酸濃度及びpH値を保った洗浄水103を生成して、洗浄することができる。したがって、洗浄コストを抑制することができる。
【0076】
また、本実施例の洗浄システム1においては第1タンク11及び第2タンク12内の低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101及び酢酸水溶液102を、洗浄水測定器30からの測定結果に応じて、切替弁B1,B2を切り替えて注入ポンプP1,P2を稼動させて注入し、単水栓50が稼動する際には、流量計Mに応じて切替弁B1,B2を切り替え、注入ポンプP1,P2を稼動させて注入する構成であるが、洗浄槽20にも注入ポンプP1,P2を設置し、洗浄水生成装置10に設置した注入ポンプP1,P2を単水栓50専用に作動させる構成であってもよい。
これにより、同時に、洗浄槽20と単水栓50に洗浄水103を効率的に供給できるため、利用者の満足度を向上することができる。
【0077】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、
本発明の本体部は、洗浄水生成装置10の本体10aに対応し、
以下同様に、
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液101に対応し、
第1タンクは、第1タンク11に対応し、
酢酸ナトリウムは、酢酸ナトリウムに対応し、
酢酸水溶液は、酢酸水溶液102に対応し、
第2タンクは、第2タンク12に対応し、
注入ポンプは、注入ポンプP1,P2に対応し、
制御手段は、洗浄制御部CPUに対応し、
洗浄装置は、洗浄システム1に対応し、
洗浄水は、洗浄水103に対応し、
洗浄対象物は、刻みネギ61に対応し、
洗浄槽は、水槽部21に対応し、
次亜塩素酸濃度測定手段は、洗浄水測定器30に対応し、
洗浄水循環手段は、循環装置23に対応し、
給送水配管は、給送水管201に対応し、
流量計は、流量計Mに対応するも、
この発明は、前述の実施態様の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び酢酸水溶液を用いた洗浄システムの全体概要図。
【図2】洗浄システムの構成図
【図3】洗浄水生成装置について説明図。
【図4】洗浄水の次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの存在比とpH値との関係グラフ。
【図5】洗浄水生成装置で生成した洗浄水の効果確認試験結果の説明図。
【符号の説明】
【0079】
1…洗浄システム
10…洗浄水生成装置
10a…本体
11…第1タンク
12…第2タンク
21…水槽部
23…循環装置
30…洗浄水測定器
61…刻みネギ
101…低臭素酸次亜塩素酸ナトリウム水溶液
102…酢酸水溶液
103…洗浄水
201…給送水管
CPU…洗浄制御部
M…流量計
P1,P2…注入ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に、
次亜塩素酸ナトリウム水溶液を貯蔵する第1タンクと、
粉末状の酢酸ナトリウムを水に溶かして構成する酢酸水溶液を貯蔵する第2タンクと、
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び前記酢酸水溶液を注入する注入ポンプと、
該注入ポンプの注入を制御する制御手段とを備えた
洗浄装置。
【請求項2】
前記第1タンクを前記本体部の下方位置に配置し、
前記第2タンクを前記本体部の上方位置に配置した
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び前記酢酸水溶液を注入して生成した洗浄水をためて洗浄対象物を洗浄する洗浄槽と、
前記洗浄水の次亜塩素酸濃度を測定する次亜塩素酸濃度測定手段とを備え、
前記制御手段を、
該次亜塩素酸濃度測定手段の測定結果に応じて、前記注入ポンプが次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び前記酢酸水溶液を注入する構成とした
請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄槽に、
あふれた洗浄水を、回収して洗浄槽に再給水して洗浄水を循環させる洗浄水循環手段を備えた
請求項3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
本体外部から水を給水し、本体外部に送水する給送水配管と、
該給送水配管を流れる水の流量を計測する流量計とを備え、
前記注入ポンプを、前記給送水配管に接続するとともに、
前記制御手段を、
該流量計が計測した流量に応じて、前記注入ポンプが次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び前記酢酸水溶液を前記給送水配管に注入する構成とした
請求項1から4のうちいずれかに記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−106184(P2009−106184A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281163(P2007−281163)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(598147891)株式会社ユーキケミカル (3)
【Fターム(参考)】