説明

流れ指数が低い射出−延伸−ブロー成形用樹脂

【課題】二段階の射出−延伸−ブロー成形で小びんを製造する方法。
【解決手段】メルトインデックスMI2が1〜3dg/分で、エチレン含有量が樹脂重量の2〜3.5重量%であるチーグラー−ナッタ触媒系を用いて製造されたプロピレンとエチレンとのランダム共重合体を用い、プレフォームの射出温度が少なくとも280℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二段階の射出−延伸−ブロー成形(ISBM)用の溶融流動性の低いポリプロピレンのプレフォーム(preform、予備成形体)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記文献にはISBMで一段階で物品を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】欧州特許第EP-A-151741号公報(三井)
【0003】
この物品はメルトフローインデックスが4〜50dg/分の核剤を含むプロピレン−エチレンランダム共重合体から製造される。射出成形温度は200〜260℃で、全ての実施例の射出成形温度は220℃である。
下記文献ではISBMで二段階法で物品を製造している。
【特許文献2】国際特許第WO95/11791号公報(Bekum)
【0004】
好ましい樹脂はポリエチレン-プロピレンで、50重量%以上のプロピレンをみ、メルトインデックスは10〜20dg/分である。射出キャビティーへの充填速度は3〜5グラム/秒で、射出温度は約210℃である。
下記文献ではISBMで二段階法で物品を製造している。
【特許文献3】国際特許第WO05/074428号公報(Milliken)
【0005】
樹脂は公知方法で製造されたメルトフローインデックスが6〜50dg/分、好ましくは13〜35dg/分のポリプロピレン組成物である。金型充填速度は5グラム/秒以上で、側壁の最大厚さが3.5mm以下のプレフォーム物品が作られる。実施例で用いている射出温度は230℃と240℃である。
下記文献にはメタロセン触媒を使用して作ったプロピレンのホモ−またはコポリマーをISBMで使用することが開示されている。
【特許文献4】国際特許第WO99/41293号公報(BASF)
【0006】
溶融指数範囲は0.1〜1000dg/分までと広く定義されており、射出温度は200〜280℃である。メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレンの多分散性指数は非常に狭い。
上記の樹脂では特性が理想的にバランスした物品を作ることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、2段階の射出−延伸−ブロー成形(injection-stretch-blow-moulding、ISBM)で医薬用バイアル(小びん)作ることにある。
本発明の他の目的は、2軸延伸後に優れた光学特性を有する医薬用小びんを製造するための、射出−延伸−ブロー成形法用プレフォームでの低溶融流動性ポリプロピレン樹脂の使用方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、厚さ分布の良い医薬用小びんを製造することにある。
本発明のさらに他の目的は、積み重ね特性に優れた医薬用小びんを製造することにある。
本発明のさらに他の目的は、特に低温での耐落下試験性に優れた医薬用小びんを製造することにある。
上記目的の少なくとも一つの少なくとも一部は本発明によって達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、メルトインデックスMI2が1〜3dg/分で、エチレン含有量が樹脂重量の2〜3.5重量%であるチーグラー−ナッタ触媒系を用いて製造されたプロピレンとエチレンとのランダム共重合体を用い、プレフォームの射出温度が少なくとも280℃である、二段階の射出−延伸−ブロー成形で小びん、特に医薬用小びんを製造する方法を提供する。
本発明はさらに、プレフォームの製造方法と、この方法で得られるプレフォームと、このプレフォームの医薬用小びんの製造での使用と、プレフォームから製造した医薬用小びんとに関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
メルトフローインデックスMI2はISO 1133規格のテスト方法に従って2.16kgの荷重下で230℃の温度で測定される。
本発明で使用するポリプロピレン樹脂はチーグラー−ナッタ(ZN)触媒系で製造したものが好ましい。ZN触媒系では本来的に多分散性指数が広いポリマーが作られる。多分散性指数は数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnで定義される。分子量はゲル浸透クロマトグラフ(Gel Permeation Chromatography、GPC)で測定する。チーグラー−ナッタ触媒系では一般に多分散性指数が少なくとも6のポリマーが得られる。メタロセン触媒およびシングルサイト触媒はZN触媒でないということは明らかである。
【0010】
樹脂はプロピレンのランダム共重合体である。好ましいコモノマーはエチレンで、樹脂中のエチレンの量は3.5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。好ましい最小値は1重量%である。
メルトインデックスは3dg/分以下である。好ましい最低MI2は1.5dg/分で、好ましい最大MI2は2.5dg/分、好ましくは2dg/分である。
一般に、このタイプの低溶融流動性樹脂は射出−延伸−ブロー成形の用途では使用されない。従って、射出−延伸−ブロー成形条件をこの樹脂で実施するのに合わせる。
樹脂は5000ppm以下の核剤を含むことができる。核剤が存在する場合、その量は200〜2500ppmにするのが好ましい。
さらに、この分野で一般的に使用される他の添加剤、例えば抗酸化剤または静電気防止剤を加えられることもできる。
【0011】
本発明の樹脂は医薬用途に許容されている数少ない樹脂の一つである。本発明を医薬用小びんの製造で用いる場合には、核剤は医薬用途で許容されているもの、例えばタルクおよび安息香酸ナトリウムの中から選択しなければならない。核剤はないのが好ましい。他の添加剤、例えば欧州医薬方(Pharmacopoeia)3.1.6に記載のような医学用途で許容されるものを加えられることもできる。
【0012】
プレフォームを製造するための射出温度は少なくとも280℃、好ましくは少なくとも320 ℃、より好ましくは少なくとも330℃である。添加剤パッケージを加える場合、この値が最高値ではない、ということは一般に知られている。しかし、350℃を超えることはないであろう。低メルトインデックスの場合には過大な応力を避けるために射出温度は上げるのが好ましい。射出温度を上げると、応力を増加させずに、射出速度を上げることができる。
【0013】
上記射出温度で、ゲート直径に対する金型充填速度は10cc/秒/mm以下、好ましくは8cc/秒/mm以下にする。この金型充填速度は少なくとも5cc/秒/mm以上にする。当該分野で一般に使用されているゲート直径は1.2〜4mmである。本発明では1.25〜3mmのゲート直径を使用するのが好ましい。
プレフォームに生じる応力が最終製品の透明性および衝撃特性に大きな影響を与える。
【0014】
射出−延伸−ブロー成形は2つの別体の機械で行なう二段階法(コールドサイクル)か、単一機械で実行する一段階法(ホットサイクル)のいずれでも実行できる。本発明では二段階法が使われ、一般には2つの別々の位置で実行される。本発明方法は下記の工程から成る:
(1)多重キャビティー金型で射出成形してプレフォームを作る。
(2)得られたプレフォームを室温に冷却する。
(3)プレフォームを延伸−ブロー成形機まで移動させる。
(4)延伸−ブロー成形機中でプレフォームを再加熱する。
(5)必要な場合には、加熱されたプレフォームを平衡化帯域を通してプレフォーム壁に熱を均一に分散させる。
(6)必要な場合にはさらに、プレフォームを予備延伸階段で延伸する。
(7)中心ロッドでプレフォームを軸線方向に延伸すると同時にプレフォームを高圧空気によって放射方向に延伸する。
【0015】
上記の再加熱階段はプレフォームに適した所定温度プロフィルを有する反射型放射熱オーブンで実行するのが好ましい。
上記方法では延伸階段がクリティカルな階段である。最終製品で最高特性を得るためには最適化されたプロセスでプレフォームを製造する必要がある。
プレフォームは所定加熱プロフィルを有する赤外線オーブンで再加熱する。再加熱階段に必要なエネルギーは、一つのキャビティーで1時間当り約1500個の物品を生産するシステムの場合、一般に28〜40kW、好ましくは30〜36kWである。典型的な再加熱温度は90〜140℃である。
【0016】
プレ・ブロー圧力は一般に2〜8バール、好ましくは4〜6バールである。次に、一般に5〜40バール、好ましくは8〜30バール、さらに好ましくは15〜20バールのブロー圧力で延伸させる。延伸ロッドの速度は1000〜2000mm/秒、好ましくは1400〜1800mm/秒、さらに好ましくは約1600mm/秒である。延伸ロッドの直径はプレフォームの寸法に依存する。延伸ロッドの直径がプレフォームの約2/3の時に最終物品の材料分布が最高になるという結果が得られる。例えば、25mmの直径のプレフォームの場合、好ましい延伸ロッドの直径は約16mmである。
【0017】
スチフネスおよび透明性に優れ、衝撃強度が改良された小びん(バイアル)は医学用途に特に適している。本発明の新規なビンは標準ガラス瓶の代わりとして使用でき、生産および運送のための重量およびエネルギーを節約することができる。さらに、本発明方法で得られる容器とガラス品質(glass-clear品質)を有するので医薬用小びん中に含まれる溶液をインラインで光学的に管理する方法を簡単に適用することができる。さらに、本発明の新規なビンは一般的なブロー成形で生じる漏れの原因となる小びんの底の溶着ラインが生じないので、従来のポリプロピレンをブロー成形して得たビン容器より安全であり、追加のQCを必要としない。ポリプロピレン樹脂はその高い溶融温度のために溶着特性が悪い。
【0018】
本発明のプレフォームから作られた医薬用小びんは著しく高い光学特性を有し、その本体全体にわたってまたは少なくとも本体の大部分の透明性に優れている。さらに、肉厚分布が均一で、耐落下試験強度に優れ、頂部荷重および積重ね特性に優れている。また、低水蒸気透過性、深絞り可能性、優れた耐熱性、例えばホット充填、マイクロ波加熱または殺菌可能といった多くの望ましい特性を有している。
以下、医薬用小びんの特性を示すが、本発明が下記実施例に示すものに限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
複数のチーグラー−ナッタ触媒系を用いて製造したプロピレンのランダム共重合体をテストした。R1はISBMで典型的に使用されている基準樹脂であり、R2は本発明の低溶融流動樹脂である。これらの特性は[表1]に要約してある。
【0020】
【表1】

【0021】
TmおよびTcはそれぞれ融点および結晶化温度を表す。
単一キャビティー金型を有するArburg 370機械で上記樹脂からプレフォームを作った。プレフォームの重量は16.5gで、このプレフォームから約300マイクロメートルの壁厚さを有する50OmLのビンを製造した。
メルトインデックスを下げ、従って、射出温度を上げたことによって壁厚分布の均一性が改善された。壁厚さはビンの高さに沿って互いに異なる3つの位置で測定し、ビンの円周に沿って互いに90度異なる4つの位置で測定した。
【0022】
従来法のポリプロピレンで作ったビンは全て不均一な壁厚さ分布を示し、厚さはビンの円周に沿ってほぼ一定であるが、高さ方向で変化した。それに対して本発明のビンは高さを関数とする厚さの変動が大幅に減少し、従来法のものより厚さ分布がはるかに良い。従って、積み重ねまたは動的圧縮に対してより抵抗性がある。結果は[表2]に示してある。
【0023】
【表2】

【0024】
動的圧縮試験はASTM D 2659-95規格のテスト方法を用いて同じ空の開いたビンで実行した。結果は[表3]に示してある。
落下試験は最高6mの高さから落下させて行なった。ビンを垂直に対して15度傾けた金属プレート上に落下させた。水を充填したビンを室温中に48時間放置した後に室温(23 ℃)でテストを実行した。破壊しない最高高H(m)を[表3]に示す。また、テストしたサンプルの50%が壊れた高さも記載した。
透明性は約300マイクロメートルの壁厚さを有するビンでASTM D 1003規格のテスト方法を用いて測定したヘイズで定量化した。結果は[表3]に示した。
【0025】
【表3】

【0026】
低溶融流動性樹脂から製造した本発明ビンは従来法のものよりはるかに優れた壁厚さ分布を有し、光学特性および機械特性は従来法のものに匹敵する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトインデックスMI2が1〜3dg/分で、エチレン含有量が樹脂重量の2〜3.5重量%であるチーグラー‐ナッタ触媒系を用いて製造されたプロピレンとエチレンとのランダム共重合体を用い、プレフォームの射出温度が少なくとも280℃で、ゲート直径に対する金型充填速度を10cc/秒/mm以下にして、二段階の射出−延伸−ブロー成形で小びんを製造する方法。
【請求項2】
メルトインデックスが1.5〜2.5dg/分である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プレフォームの射出温度が少なくとも320℃である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プレフォームを28〜40kWのエネルギーを有する赤外線オーブン中で、1500ビン/時の生産性で再加熱する請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法で得られる小びん。
【請求項6】
チーグラー‐ナッタ触媒系を用いて製造したメルトフローインデックスが2〜3dg/分で、エチレン含有量が樹脂重量の2〜3.5重量%であるプロピレンのランダム共重合体の、医薬用小びんを二段階で射出−延伸−ブロー成形で製造するための使用。

【公表番号】特表2009−541082(P2009−541082A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515869(P2009−515869)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056129
【国際公開番号】WO2007/147845
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】