説明

流体の混合装置

【課題】複数種の取扱流体をシリンダ型のポンプにおけるピストンの往復動を制御して吐出量を設定し、定量供給される取扱流体を攪拌混合して合理的に送出すことができる構成の混合装置を提供する。
【解決手段】任意の設定ストロークで往復動する電動駆動手段により作動する前後一対のポンプシリンダを複数組と、前記電動駆動手段によるポンプシリンダの作動ストロークを設定する制御手段と、それらポンプシリンダから送られる少なくとも二種類の液体を混合し送出するミキシングポンプおよび支持フレームを含み、前記ミキシングポンプで混合された液体を送出するように前記各機器を配管接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液以上の流体を定量的に取扱い、その流体を効率よく混合して供給できる流体の混合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば腐食性を有して粘性の高い二液以上の流体を混合供給する場合、取扱う流体に応じて少なくとも二台のケミカルポンプあるいは多連式のプランジャポンプなどを使用して液体を個々に供給し、混合槽などによって攪拌混合して調整し、使用に供する方式が多く採用されている。その一例として、土木工事における薬液注入工法で使用される薬液材の供給には、主に往復動式のポンプが使用され、混合する流体を混合槽において攪拌混合して硬化材液を調整し、別途作成したグラウト材とを、それぞれ注入管に送り込んで地中に注入するようにされている。
【0003】
通常、土木工事で採用される薬液注入工法において使用される注入薬液材は、瞬結性注入材(例えば水ガラス系薬液材)と硬化材を混合調整された薬液材(A液と称する。以下、同様)と一般的なグラウト材(セメント系材料(B液と称する。以下、同様))が使用されており、主にプランジャポンプによってそれぞれ別個に注入管(二重管ロッド)へ送られ、その注入管先端の吐出部で混合されて地盤中に注入され、地盤を改良している。
【0004】
前記薬液材(A液)の混合調整には、攪拌翼を用いた混合槽(グラウトミキサー)が主に使用されており、この種混合調整に使用される装置としは構造的に大型化し、主に仮設して使用されるので市街地など狭隘な作業現場では設置場所の設定に際して不都合であるという問題点がある。
【0005】
一方、プランジャポンプを駆動する駆動シリンダの作動を制御装置によって制御して混合比の精度を高めるようにした先行技術が、特許文献1によって知られている。この先行技術にあっては、混合する流体のうち一方の流体を供給するプランジャポンプについて駆動シリンダの作動ストロークをロータリーエンコーダによるパルスカウントで計測して他方のプランジャポンプの吐出作動を行わせるように形成されている。したがって、この先行技術に記載されているプランジャポンプの制御では、異なるプランジャポンプを相対的に動作させるものであり、混合比に大きな差がある二液の混合を合理化しようとするもので、一般的ではない。
【0006】
また、取扱う流体を合理的に圧送できるようにするのに、二つのプランジャポンプを一軸上に組み合わせて駆動できるようにしたものがある。この形式のポンプでは、その両プランジャポンプを、その中間位置に配した駆動体(シリンダ)で一軸上にて連結し、前後両プランジャポンプを駆動体で一方が吸引動作を行うとき、他方のポンプが吐出動作をするという具合にし、交互に往復動させて連続送液する構成とされている。このような往復動容積型ポンプは、たとえば特許文献2あるいは3などによって知られている。
【0007】
しかしながら、前記先行技術の往復動容積型ポンプにあって、たとえば特許文献2に記載のものでは、二つのプランジャポンプと駆動シリンダ(油圧シリンダ)とを一軸に直結するピストンロッドの隔壁貫通箇所におけるシール構造に特徴を有するものであり、二液体をコンスタントに圧送できるものであるが、ポンプとして一定量の二液体の供給に限定されるものである。また、特許文献3に記載のものでは、両ポンプに直結する往復動駆動部を制御部に繋いでポンプ室の吸引・吐出量を制御できる構成が概念的に示されているもので、両ポンプ室は軸で直結されるために取扱流体が腐食性である場合の対策について考慮されていない。
【0008】
一方、化学品や食品の製造工程で耐薬品性あるいはサニタリー性を要求される二種類以上の流体(液体)を混合調整して供給する場合では、液体の移送に一般的にケミカルポンプ(遠心ポンプ)と攪拌混合装置とが用いられている。しかしながら、この種のケミカルポンプと攪拌混合装置を使用する設備では、所定量の液体を調整するのにどうしても定量調製することが難しく、一部液体が余剰となる場合が生じる。そのほかに、回転ポンプを使用する場合、取扱う流体に空気の混入を予防する手段を講じなければならないので設備が大掛りになり、設備費が嵩み、かつランニングコストが高くなるという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−337459号公報
【特許文献2】特開2000−87847号公報
【特許文献3】特開平2−125978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の流体の混合装置は、複数種の取扱流体をシリンダ型のポンプ(以下、単に「ポンプシリンダユニット」いう。)におけるピストンの往復動を制御して吐出量を任意設定し、定量供給される取扱流体を攪拌混合して合理的に送り出すことができ、しかも省スペースで使用することができる構成の混合装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の混合装置は、
任意の設定ストロークで往復動する電動駆動手段により作動する前後一対のポンプシリンダを複数組と、前記駆動機構によるポンプシリンダの作動ストロークを設定する制御手段と、それらポンプシリンダから送られる少なくとも二種類の液体を混合し送出するミキシングポンプおよび支持フレームを含み、前記ミキシングポンプで混合された液体を送出するように前記各機器を配管接続されていることを特徴とするものである(第1発明)。
【0012】
前記発明において、前記ポンプシリンダは、前後一対のシリンダを直列に配して一台の電動駆動手段により往復動させて同時に吸入・吐出操作が交互に行われるように連結され、前記一対のシリンダからの吐出流体を合流させて前記ミキシングポンプに連続供給するように構成されていることを特徴とするものである(第2発明)。
【0013】
前記発明において、前記ポンプシリンダの電動駆動手段は、電動スクリュー式アクチュエータであって、内蔵する回転エンコーダの制御によってポンプシリンダの作動ストロークが任意設定できるようにされているのがよい(第3発明)。
【0014】
また、前記発明において、前記ミキシングポンプは、回転ポンプであって、その吸込み側に被混合液の分別吸込手段が直結され、吸込み部における回転中心箇所で分別供給される流体を合流して攪拌混合される構成であるのがよい(第4発明)。
【0015】
またさらに、前記ポンプシリンダおよびミキシングポンプの吸込み側には、吸入管路の切換により連通する水供給配管が接続されているのが好ましい(第5発明)。
【0016】
前記発明において、各ポンプシリンダおよびミキシングポンプは、多段構造に枠組み構成された支持フレーム内に設置され、その支持フレームの上部に水貯槽と薬液材貯槽とが搭載されているのが好ましい(第6発明)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の流体の混合装置によれば、電動駆動手段を動力源とする複数組のポンプシリンダを連動させ、供給する少なくとも二種類の液体を任意設定した供給量でミキシングポンプによって混合調整して合目的に混合流体を調製することができ、効率よく供給することができるという効果を奏する。そして、取扱液体は、制御手段によって各電動駆動手段を操作してポンプシリンダのストロークを任意選定作動させることができ、簡単に取扱う液体の吐出量を変えることができるので、運転中においても容易に混合条件を変更することができる利点がある。
【0018】
また、本発明によれば、ポンプシリンダの作動による移送流体は、一対のシリンダにおけるピストンの進退により交互に流体を常時加圧して吐出流体を合流して送出するので連続的に効率よく供給することができる。また、取扱う流体は、気密性を保って加圧送出できるので加圧力が維持でき、外気の影響を受けることなく操作できる。もちろん、耐薬品性の確保を図ることができるとともに、管路中に設けた弁の切換で管路の水洗浄を行えて、薬液材などの使用後における装置の洗浄処理が簡単容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明による混合装置の一実施形態の概要図である。
【図2】図2はミキシングポンプにおける被混合液の分別吸込手段の一部縦断面図である。
【図3】図3は本発明による混合装置の一実施形態の配管系を省略して表す正面図である。
【図4】図4は図3の一部を断面にして表す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明による流体の混合装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1によって示される本発明の混合装置1は、土木工事における薬液注入工法に使用される薬液材を調整する混合装置に適用したものである。この混合装置1は、薬液注入に使用する薬液材(主としてシリカゾルを調整して供給するものであり、例えば水ガラスと硬化材(例えば希硫酸)とを、ともに加圧して効率よく混合調整して貯留供給できるように構成されている。
【0022】
まず、前記混合装置1は、交互に往復動するように直列配置した一対のポンプシリンダユニット10(全ポンプシリンダを代表して表示する場合は、符号10で表している。)を複数組と、これら各一対のポンプシリンダユニット10を往復動させる電動駆動手段としての電動アクチュエータ5と、この電動アクチュエータ5の駆動を制御する制御手段40と、前記ポンプシリンダユニット10により圧送される複数種類の流体(例えば水ガラスと希硫酸および清水)を攪拌混合して送り出すミキシングポンプ20と、このミキシングポンプ20のサクション側に付設して前記ポンプシリンダユニット10によって送り出される各流体をミキシングポンプ20の攪拌室21(回転室)内まで別個に供給できるようにする被混合液の分別吸込手段22および前記各機器を接続する配管類(後述)とで構成されている。なお、この混合装置1には、支持フレーム50の上部に攪拌混合する二種類の流体の貯槽60,62と水貯槽61とが分別して搭載されている。
【0023】
前記ポンプシリンダユニット10は、所要寸法のシリンダ10A,10B(以下、各ポンプシリンダユニットの各シリンダについては、一方のシリンダにその組の符号に「A」を、他方のシリンダにその組の符号に「B」を付して表示する。)を一対、ピストンロッド10b側が相対向させて同一軸心線上に位置するようにして配置され、この両シリンダ10A,10Bの共通するピストンロッド10bを電動アクチュエータ5の出力部5aと連結して所要距離(所要ストローク)進退するように構成されている。そして、このポンプシリンダユニット10は、ベースフレーム(後述)に一対のシリンダ10A,10Bと電動アクチュエータ5とが一体的に組み立てられており、一組ごとにユニット構造とされている(ただし、これに限定されるものではない)。
【0024】
この実施形態における電動アクチュエータ5は、詳細構造について図示省略するが、サーボモータにより回転駆動される所要長さ寸法のボールスクリューによって往復作動される操作部片を備え、この操作部片と前記両シリンダ10A,10Bのピストンロッド10bとがブラケット5a(出力部)を介して連結され、電動アクチュエータ5の駆動によってポンプシリンダユニット10のピストン10c,10cを往復動させるように構成されている。なお、前記ポンプシリンダユニット10は、シリンダの本体並びにピストン10c・ロッド10bなどが耐蝕性材料で形成されている。
【0025】
このように構成されたポンプシリンダユニット10は、複数組、移動可能に形成された支持フレーム50に上下二段で搭載支持されている(図3参照)。前記各ポンプシリンダユニット10における電動アクチュエータ5は、回転エンコーダを備えており、制御手段40において設定したプログラムによって前記回転エンコーダによるパルス信号を受けて制御し、それぞれの駆動条件(作動ストローク)を設定できるようにされている。したがって、各ポンプシリンダユニット10のピストン10cの1ストローク、言い換えると吐出量を任意に設定することができる。
【0026】
前記ポンプシリンダユニット10のシリンダピストン室10aには、流体の出入口10eが設けられ、この出入口10eには吸入側配管31と吐出側配管34とが接続されている。前記吸入側配管31には流体タンク(貯槽62)から吸込みのみを許容する逆止弁33aを介して接続され、吐出側配管34は吐出のみを許容する逆止弁33bを介してミキシングポンプ20に接続されている。
【0027】
前記ミキシングポンプ20は、図2に例示するように、回転ポンプであって、サクション部に被混合液の分別吸込手段22が直結されたものである。このミキシングポンプ22としては、モータ部がマグネットドライブ形式で、ポンプ部が耐薬品性構造にされたものが用いられる(ただし、これに限定されるものではない)。
【0028】
また、前記分別吸込手段22は、図2に示すように、二種類の被混合液(例えば水ガラスと希硫酸)の各流入区画22A,22Bと、この二種類の流体を前記サクション部へ導入する流路および水導入部とが直列に組合わされて形成されている。なお、混合前の一方の流体(例えば希硫酸)の流入区画22Aは、中心位置で軸線方向に注入管23が配置され、この注入管23には先端を閉鎖する開閉弁構造24が設けられて、他方の流体(例えば水ガラス)の流入区画22Bと分離されてポンプのインペラー27における回転中心部27aにおいて両流体が合流するように構成されている。また、前記二種類の流体の流入区画以外に水流入区画22Cが設けられ、この水流入区画22Cは前記他の流体(例えば水ガラス)の流入区画22Bと連通する構造になっている。そして、前記注入管23の先端部に設けられた開閉弁構造24は、注入管23側の流体に注入圧が作用した場合のみサクション部(回転中心部27a)内に流体が送られ、加圧力が作用しないときは注入管23側を閉じるようにされている。前記開閉弁構造24としては、一実施形態として、注入管23の先端部に液出口孔25が複数設けられ、この液出口孔25を開閉する軟質のチューブ26が注入管23の先端部に被覆装着されており、液出口孔25に液圧が作用すると前記チューブ26を膨張させて管外周に隙間を形成し、この隙間を通じて液が流出できるようにされている。なお、図中符号21は回転室である。
【0029】
これら前述の各機器は、図1に示されるように、配管接続されている。まず、一組のポンプシリンダユニット10のシリンダ10A,10Bは、各ピストン室10aの出入口10eに、水ガラス供給配管31が三方切換弁32から分岐して吸入側でそれぞれ逆止弁33aを介して接続され、吐出側はそれぞれ逆止弁33bを介して合流後、ミキシングポンプ20への分別吸込手段22に配管34で接続されている。
【0030】
また、もう一組のポンプシリンダユニット11は、各シリンダ11A,11Bのピストン室11aの出入口11eに、希硫酸供給配管36が三方切換弁32aから分岐して吸入側でそれぞれ逆止弁33dを介して接続され、吐出側にはそれぞれ逆止弁33eを介して合流後ミキシングポンプ20に付設の分別吸込み手段22に配管37にて接続されている。
【0031】
前記水ガラス供給配管31および希硫酸供給配管36中に設けられた各三方切換弁32,32aは、いずれも切換によって水貯槽61から洗浄水がポンプシリンダユニット10,11に供給されて洗浄できるように洗浄水配管38,38′が接続されている。
【0032】
さらにもう一組のポンプシリンダユニット12は、前記同様に各ピストン室12aの出入口12eに水供給配管37が吸入側でそれぞれ逆止弁33fを介して接続され、吐出側にはそれぞれ逆止弁33gを介して合流後ミキシングポンプ20に付設の分別吸込み手段22へ配管37′にて接続されている。
【0033】
このように配管接続されている各ポンプシリンダユニット10,11,12は、制御手段40によってそれぞれの電動アクチュエータ5の運転条件を制御して、ピストンのストローク設定並びに駆動を管理される。したがって、各ポンプシリンダユニット10,11,12の吐出量、言い換えると、供給液の混合調整を電動アクチュエータ5の制御によって簡単に混合比率や給液量を任意に設定することができる。図中符号45は開閉弁、39はミキシングポンプ20の吐出配管である。そして、ミキシングポンプ20によって混合された注入薬液は、一旦支持フレーム50の上部に設置された貯槽65に送られて別途配管により薬液注入箇所へ供給できるようにされる。
【0034】
前記制御手段40は、図示省略しているが、前記支持フレーム50の側面部に取り付けられていて、所要寸法のボックス内部に所要の条件を設定できるプログラムを備えたマイクロコンピュータと、各ポンプシリンダユニットを操作する制御回路や電動アクチュエータへの電源操作機器などを備え、前記各電動アクチュエータ内蔵の回転エンコーダの信号を受けてシリンダピストンのストロークが任意に設定できるように制御できる。
【0035】
このように構成される混合装置1は、所要の注入材料をそれぞれの貯槽に準備して制御手段40により各組の電動アクチュエータ5の駆動条件を設定し、その後設定条件に応じて各電動アクチュエータ5を作動してポンプシリンダユニット10,11,12を一斉に駆動すれば、その電動アクチュエータ5によって各ポンプシリンダユニット10,11,12の各ピストンロッド10b、11b、12bが進退し、一方のシリンダのピストンが前進すると他方のシリンダのピストンが後退し、一対のシリンダにおけるピストンが1ストローク交互に往復動する。なお、このポンプユニットにおける液体の吐出量は、前記制御手段40においてピストンの1ストロークを所要の吐出量となるように設定することにより、ポンプの供給量を設定できる。
【0036】
すると、一方の組のシリンダ10A,10Bでは、一方のピストン10cが後退することによりシリンダ10B内から出入口10eを経て逆止弁33bを押し開いて水ガラス材が配管34に送出される。これに対して、連動する他方のシリンダ10Aでは、ピストン10cが前進することにより、そのピストン室10a内の水ガラス材が出入口10eから逆止弁33bを押し開いて接続されている配管を通じて加圧送出され、ミキシングポンプ20への配管34に送り出される。
【0037】
前記両シリンダ10A,10Bでは、前記電動アクチュエータ5の作動によって、同時に操作される両ピストン室10a,10a′に水ガラス材が吸入されときには、吐出側に位置する逆止弁33b,33bは閉じ、水ガラス材の供給側に対して逆止弁33a,33aが押し開かれてピストン室10a,10a′に供給される。逆にピストン室10a,10a′から加圧送出されるときには、吸入側の逆止弁33a,33aの働きで逆流が阻止され、送出側の逆止弁33b,33bが押し開かれて配管を通じてミキシングポンプ20への管路34に送り込まれる。こうして、ポンプシリンダユニット10では、その一対のシリンダ10A,10Bの作動で交互に送り出される水ガラス材が合流して連続的にミキシングポンプ20に供給されることになる。
【0038】
他の一組のポンプシリンダユニット11は、前記ポンプシリンダユニット10と同様に、電動アクチュエータ5により駆動されるピストンロッド11bの進退駆動により、一方のピストン11cが後退するとピストン室11aに希硫酸が吸引流入される。また、他方のピストン11cが前進するとシリンダ11Bのピストン室11a内から希硫酸が加圧送出される。この際、両シリンダ11A,11Bの吸入・吐出口11eから供給側配管36へは、いずれも逆止弁33dの作動によって逆流が阻止され、逆止弁33eを押し開いて希硫酸が吐出側配管35を経てミキシングポンプ20に供給されることになる。
【0039】
さらに、もう1組のポンプシリンダユニット12では、前記2組のポンプシリンダユニット10,11と同様に、電動アクチュエータ5により駆動されるピストンロッド12bの進退駆動により、一方のピストン12cが後退するとピストン室12aに水貯槽61から水が吸引流入される。また、他方のピストン12cが前進するとピストン室12a内から配管37′に水が加圧送出される。この吐出の際、両シリンダ12A,12Bの吐出側配管37′では、いずれも逆止弁33fの作動によって供給側への水の逆流は阻止され、吐出側の逆止弁33gを押し開いて送出される。こうして水の送出配管37′から加圧送出された水はミキシングポンプ20に付設の分別吸込み手段22を介してミキシングポンプ20のサクション部(回転中心部27a)に送り込まれる。
【0040】
ミキシングポンプ20では、分別吸込み手段22を介してサクション部に水ガラスと希硫酸および水が個々に供給される。前記分別吸込み手段22では、流入区画22Aから中心部の注入管23に希硫酸が流入し、その外側に水ガラスが流入区画22Bを通じて、また水が流入区画22Cを通じてそれぞれ注入されるようになっている。前記各流体は、このミキシングポンプ20の回転中心部27a内に至って全液体が合流すると同時に、インペラー27による遠心力で回転室21内に放出され、高速攪拌されて混合される。この攪拌混合に際しては、サクション部内で高速流動する水ガラスに希硫酸が注入され、これに水が合わさって回転室21で混合する状態を呈することになるので、三者の合流による急激な結合反応が回避され、インペラー27による攪拌混合でゲル化を抑えて硬化材液として調製される。こうして調製された硬化材液は、送出配管39を通じて支持フレーム50上部に搭載の貯槽65に供給され貯留される。貯留された硬化材液は別途ポンプによって例えば注入管ロッドに送り出され、薬液注入作業に供される。なお、この混合装置1において、調製される前記硬化材液は、前記制御手段40における各ポンプユニットでのピストンのストロークの設定変更で混合比や吐出量を任意に設定できる。
【0041】
前記ポンプシリンダユニット10,11には、各ピストン室10a,11aへの配管中における三方切換弁32a,32bに水供給源(水貯槽61)から水供給配管38,38′がそれぞれ接続されているので、その三方切換弁32a,32bを水供給配管38,38′に切換え運転すれば、両ポンプシリンダユニット10,11とこれに繋がる各配管およびミキシングポンプ20とを水洗浄することができる。
【0042】
一方、水ガラス,水,希硫酸の各貯槽60,61,62は、それぞれに区画した貯槽にして、かつ各貯槽60,61,62には液レベル検出器(図示省略)および液出口が設けられ、このようにされた貯槽60,61,62を前述の混合装置1の上部に設置できるように構成して各配管を接続すれば、水頭圧を利用して各流体を円滑に機器へ供給することができる。しかも、各ポンプシリンダユニット10,11,12やポンプ機器および前記貯槽を積み重ねる立体構造に配置することにより、設置スペースを小さくして狭隘な場所でも使用することができ、薬液注入工法などでの薬液注入材調製用混合装置としての使用を容易にする。
【0043】
また、本実施形態の混合装置1は、各ポンプシリンダユニットを駆動する電動アクチュエータが、前述のように、組み込まれている回転エンコーダを制御手段によって予め設定されているプログラムに基づきピストンの移動を制御することで、所要のストロークに設定すれば、その設定によって任意の吐出量を得ることができる。また、その吐出量の設定は、運転中において自由に行えるので、薬液注入材の調製条件を作業現場において注入作業の条件に応じ任意に設定・変更することも可能である。したがって、使用状況に即応した運転ができるという利点を有する。
【0044】
前記実施形態の説明においては、ポンプシリンダユニットについてピストン式のシリンダとして記載したが、プランジャ式のシリンダを採用することもでき、同様の効果が得られる。また、設置したポンプシリンダユニットが3組の場合について記載したが、3組以上であってもよい。
【0045】
以上は、本発明混合装置を土木工事の薬液注入工法の施工に使用する場合について記載したが、本発明の趣旨に則すれば、このほかの流体の混合手段として使用することができる。
【0046】
本発明による混合装置は、二種類以上の流体を取扱って混合供給する場合として、例えば化学品の製造工程における二種類以上の液体の混合処理や、食品工業における原料液の移送などに活用することができる。また、取扱う流体が多種にわたる場合、必要に応じてポンプシリンダユニットを二組以上配置して組合わせ使用することも可能である。なお、本発明の混合装置では、取扱う流体の粘度調製が必要な場合、管路中に熱交換機器(ヒータまたはクーラ)を介在配置させて粘性を調整することによって混合操作を円滑にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の混合装置は、二種類以上の流体を混合して加圧供給する作業を合理的に実施することができる。したがって、土木工事における薬液注入工法での薬液の供給、化学品や化学薬品あるいは食品原料などの製造工程での流体の混合移送に定量的に使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 混合装置
5 電動アクチュエータ
10,11,12 ポンプシリンダユニット
10A,10B,11A,11B,12A,12B シリンダ
10a,11a,12a ピストン室
10b,11b,12b ピストンロッド
20 ミキシングポンプ
22 分別吸込手段
23 注入管
24 開閉弁構造
27 インペラー
27a 回転中心部
31,34,35,36,37 配管
32a,32b 三方切換弁
33a,33b,33d,33e,33f,33g 逆止弁
40 制御手段
50 支持フレーム
60,61,62 貯槽
65 混合流体の貯槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の設定ストロークで往復動する電動駆動手段により作動する前後一対のポンプシリンダを複数組と、前記駆動機構によるポンプシリンダの作動ストロークを設定する制御手段と、それらポンプシリンダから送られる少なくとも二種類の液体を混合し送出するミキシングポンプおよび支持フレームを含み、前記ミキシングポンプで混合された液体を送出するように前記各機器を配管接続されていることを特徴とする流体の混合装置。
【請求項2】
前記ポンプシリンダは、前後一対のシリンダを直列に配して一台の電動駆動手段により往復動させて同時に吸入・吐出操作が交互に行われるように連結され、前記一対のシリンダからの吐出流体を合流させて前記ミキシングポンプに連続供給するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項3】
前記ポンプシリンダの電動駆動手段は、電動スクリュー式アクチュエータであって、内蔵する回転エンコーダの制御によってポンプシリンダの作動ストロークが任意設定できるようにされている請求項1または2に記載の流体の混合装置。
【請求項4】
前記ミキシングポンプは、回転ポンプであって、その吸込み側に被混合液の分別吸込手段が直結され、吸込み部における回転中心箇所で分別供給される流体を合流して攪拌混合される構成である請求項1または2に記載の流体の混合装置。
【請求項5】
前記ポンプシリンダおよびミキシングポンプの吸込み側には、吸入管路の切換により連通する水供給配管が接続されている請求項1に記載の流体の混合装置。
【請求項6】
前記各ポンプシリンダおよびミキシングポンプは、多段構造に枠組み構成された支持フレーム内に設置され、その支持フレームの上部に水貯槽と薬液材貯槽とが搭載されている構成である請求項1に記載の流体の混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−255281(P2011−255281A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130418(P2010−130418)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(592072920)平成テクノス株式会社 (7)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【出願人】(509023447)強化土株式会社 (31)
【Fターム(参考)】