流体動圧軸受、モータおよび記録媒体駆動装置
【課題】 携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても動圧軸受部の作動液体の飛散を防止できる流体動圧軸受、それを用いたモータおよび記録媒体駆動装置を提供する。
【解決手段】 略円柱状に形成された柱状部を有する軸体と、閉塞端を有し、柱状部を回転可能に収容する円筒部38を有する支持体22と、少なくとも柱状部と円筒部38との隙間に充填された作動液体Fと、を備え、軸体および支持体の作動液体Fの液面近傍に配される接触面43,53には、作動液体Fとの接触角が15°以下となる接触角制御処理が施され、接触面43,53または接触面43,53に隣接する面に軸体と支持体との隙間から作動液体Fが外部へ濡れ広がること防止する漏洩防止手段61,63が備えられていることを特徴とする。
【解決手段】 略円柱状に形成された柱状部を有する軸体と、閉塞端を有し、柱状部を回転可能に収容する円筒部38を有する支持体22と、少なくとも柱状部と円筒部38との隙間に充填された作動液体Fと、を備え、軸体および支持体の作動液体Fの液面近傍に配される接触面43,53には、作動液体Fとの接触角が15°以下となる接触角制御処理が施され、接触面43,53または接触面43,53に隣接する面に軸体と支持体との隙間から作動液体Fが外部へ濡れ広がること防止する漏洩防止手段61,63が備えられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動圧軸受、モータおよび記録媒体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、据え置き型のパーソナルコンピュータに搭載されるハードディスク装置(以下、HDDと呼ぶ。)の軸受には、オイルを潤滑剤として用いた滑り軸受や動圧軸受などが用いられている。特に、軸受として動圧軸受を採用している場合には、オイル量が不足すると動圧を十分に発生できず、HDDの回転軸を回転可能に支持できないため、十分な量のオイルを軸受部に保持する必要があった。
【0003】
しかしながら、上述のHDDは、その性質上、清浄な環境が求められるため、軸受に用いているオイルがHDD内に侵入しないよう防止手段が設けられている。特に、軸受部に比較的多量のオイルを保持する動圧軸受の場合には、HDDの機能保護の観点、および動圧軸受の機能維持の観点から、オイルの軸受部からの漏れ出しを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1から3参照。)。
【特許文献1】特開平8−232966号公報
【特許文献2】特許第2937833号公報
【特許文献3】米国特許5667309号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1から3においては、ラジアル軸受部の軸方向外側に隙間変化部を設けて、この隙間変化部における傾斜角を45度以下に設定する技術思想と、隙間変化部における、回転部材または固定部材とオイルとの接触角が15度以上になるようにする技術思想と、上記接触角を大きくするため、オイルと接触する領域に表面張力を小さくする材料、例えばプラスチックを使用する技術思想と、が開示されている。
【0005】
上述の特許文献1から3で開示された技術思想によれば、オイルが濡れ拡張(はい上がり現象)により軸受部から外部に漏れることを防止できる。
また、HDDを据え置き型パーソナルコンピュータに用いる際に想定される衝撃がHDDに加わっても、軸受部から外部オイルが飛散することを防止できる。
【0006】
しかしながら、据え置き型のパーソナルコンピュータで想定される衝撃(約2000m/s2(約200G))より5倍から7.5倍の強い衝撃(約10000m/s2〜約15000m/s2(約1000G〜約1500G))が想定される携行可能なノートパソコン等の端末装置や、携帯電話機や、デジタルカメラ等の携行可能な情報家電にHDDが搭載された場合には、上述の特許文献1から3で開示された技術では、オイルは軸受部から外部に飛散するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても動圧軸受部の作動液体の飛散を防止できる流体動圧軸受、それを用いたモータおよび記録媒体駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、略円柱状に形成された柱状部を有する軸体と、閉塞端を有し、前記柱状部を回転可能に収容する円筒部を有する支持体と、少なくとも前記柱状部と前記円筒部との隙間に充填された作動液体と、を備え、前記軸体および前記支持体の前記作動液体の液面近傍に配される接触面には、前記作動液体との接触角が15°以下となる接触角制御処理が施され、前記接触面または前記接触面に隣接する面に前記軸体と前記支持体との隙間から前記作動液体が外部へ濡れ広がること防止する漏洩防止手段が備えられている流体動圧軸受を提供する。
【0009】
本発明によれば、軸体および支持体の作動液体の液面近傍に配される接触面に、接触角制御処理を施すことにより、上記接触面における作動液体との接触角を15°以下とすることができる。上記接触角を15°以内とすることにより、外部から流体動圧軸受に衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受から飛び出すことを防止できる。
【0010】
また、接触面または接触面に隣接する面に、漏洩防止手段が備えられているため、作動液体が漏洩防止手段よりも外部へ濡れ広がることを防止できる。また、接触制御処理を施した領域は作動液体の濡れ広がりやすくなるが、漏洩防止手段を設けることにより、作動液体が流体動圧軸受から外部に漏れることを防止できる。
【0011】
また、上記発明においては、前記接触角制御処理が、前記接触面の面粗度を所定値より大きくする表面処理であることが望ましい。
本発明によれば、接触面の面粗度を所定値よりも大きくする表面処理を施すことにより、接触面における作動液体との接触角を15°以下にすることができる。
上記表面処理としては、接触面の切削加工を挙げることができる。具体的には、接触面を旋盤加工などにより形成し、その加工目をそのまま残す方法を例示することができる。この方法によれば、鏡面加工が困難な材料(例えば、ステンレス鋼)であっても、容易に軸体および支持体の材料として用いることができる。
【0012】
さらに、上記発明においては、前記漏洩防止手段が、前記軸体および前記支持体の面の上に設けられた前記作動液体をはじく材料からなる撥液層であることが望ましい。
本発明によれば、撥液層において、軸体および支持体の面を濡れ広がる作動流体を遮ることができるため、撥液層の形成された領域より外部へ作動液体が濡れ広がることを防止できる。
【0013】
上記発明においては、前記漏洩防止手段が、前記軸体および前記支持体の面から凸状に突出した稜線部であることが望ましい。
本発明によれば、凸上に突出した稜線部において、軸体および支持体の面を濡れ広がる作動流体を遮ることができるため、作動液体が稜線部を越えて外部へ濡れ広がることを防止できる。
【0014】
上記発明においては、前記軸体には、前記柱状部に支持されるとともに半径方向に延びる軸体円板部が設けられ、前記支持体には、前記円筒部に支持されるとともに半径方向に延びる支持体円板部が設けられ、前記軸体円板部と前記支持体円板部とが互いに対向するように配置されるとともに、前記軸体円板部または前記支持体円板部の対向面の少なくとも一方に、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向に引き込む動圧発生溝が形成され、前記軸体円板部と前記支持体円板部とが前記接触面に隣接して配置されていることが望ましい。
【0015】
本発明によれば、軸体と支持体とを相対的に回転させた際に、作動液体は動圧発生溝により半径方向へ引き込まれる。さらに、軸体円板部と支持体円板部とが接触面に隣接して配置されていることから、接触面と軸体円板部および支持体円板部との間に存在する作動流体は、軸体円板部と支持体円板部との間に引き込まれる。その結果、軸体と支持体とを相対的に回転している場合には、外部から流体動圧軸受に衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受から飛び出すことを防止できる。
【0016】
上記発明においては、前記動圧発生溝が、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向外方に引き込み、前記軸体円板部と前記支持体円板部とが、前記接触面の半径方向外方に隣接して配置されていることが望ましい。
本発明によれば、軸体と支持体とを相対的に回転させた際に、作動液体は動圧発生溝により半径方向外側へ引き込まれる。
また、軸体円板部と支持体円板部とが接触面の半径方向外方に隣接して配置されているため、動圧発生溝を周速の速い半径方向外方に形成することができ、作動液体の引き込み力を強くすることができる。
【0017】
上記発明においては、前記動圧発生溝が、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向内方に引き込み、前記軸体円板部と前記支持体円板部とが、前記接触面の半径方向内方に隣接して配置されていることが望ましい。
本発明によれば、軸体と支持体とを相対的に回転させた際に、作動液体は動圧発生溝により半径方向内側へ引き込まれる。
【0018】
上記発明においては、前記軸体および前記支持体がステンレス鋼から形成されていることが望ましい。
本発明によれば、軸体および支持体をステンレス鋼から形成することにより、軸体および支持体の腐食や、錆の発生を防止することができる。
【0019】
本発明は、上記本発明の流体動圧軸受と、該流体動圧軸受の前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させる駆動手段と、を備えるモータを提供する。
本発明によれば、上記本発明の流体動圧軸受を用いることにより、外部から衝撃が加えられても流体動圧軸受に用いられている作動液体が外部に漏れることがなく、清浄さが求められる環境にもモータを用いることができる。
【0020】
本発明は、上記本発明のモータを備え、前記軸体または前記支持体に記録媒体を固定する固定部が設けられている記録媒体駆動装置を提供する。
本発明によれば、上記発明の流体動圧軸受を用いたモータを使用することにより、外部から衝撃が加えられても流体動圧軸受に用いられている作動液体が外部に漏れることがない。そのため、記録媒体駆動装置内が作動液体により汚染されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の流体動圧軸受、それを用いたモータおよび記録媒体駆動装置によれば、軸体および支持体の作動液体の液面と接する接触面に接触角制御処理を施し、上記接触面における作動液体との接触角を15°以下とすることにより、携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても動圧軸受部の作動液体の飛散を防止できるという効果を奏する。
また、軸体および支持体の作動液体と接する領域よりも外側の領域に、漏洩防止手段が備えられているため、作動液体が漏洩防止手段よりも外部へ濡れ広がることを防止でき、動圧軸受部の作動液体が外部に漏れることを防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る流体動圧軸受、モータおよび記録媒体駆動装置について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
本実施形態に係る流体動圧軸受10は、図1に示すように、記録媒体駆動装置1に適用されているものである。この記録媒体駆動装置1は、円環状に配列された電磁石13を備えるステータ11と、ステータ11の内側に配置された電磁石13に対向配置される永久磁石14を備えたロータ(軸体)16と、ステータ11に対してロータ16を回転可能に支持する流体動圧軸受10とから構成されるモータ17を備えている。ステータ11に備えられた電磁石13と、ロータ16に備えられた永久磁石14とにより、ステータ11に対してロータ16を回転駆動する駆動手段15が構成されている。
【0023】
ロータ16には、リング板状の記録媒体HDを嵌合させる嵌合部(固定部)18が備えられているとともに、記録媒体HDを固定する押圧部材19を取り付けるネジ20のネジ穴21が形成されている。押圧部材19は断面形状が凸形状に形成された円環状の板材からなり、ネジ20によりロータ16に取り付けられる。記録媒体HDは、ロータ16の嵌合部18に嵌合され、押圧部材19により嵌合部18に押圧されることにより、ロータ16と記録媒体HDとが一体的に構成されるようになっている。
【0024】
ステータ11は、電磁石13の中央に配置されるボス部12を備えている。ボス部12に後述する流体動圧軸受10のスリーブ(支持体)22を嵌合させることにより、ロータ16に備えられた永久磁石14を電磁石13に対向配置させている。電磁石13と記録媒体HDとの間には、電磁石13および永久磁石14により形成される磁界を遮断するシールド板23が配置されている。
また、ステータ11には、後述する電磁石13のコイル25を収納するステータ開口部24が形成されている。
【0025】
電磁石13は、図1に示すように、三相交流を供給されることにより交番磁界を発生するコイル25と、コイル25が巻かれる複数枚の金属板からなるコアプレート26とから構成されている。
【0026】
図2は、図1の記録媒体駆動装置における流体動圧軸受の構成を示す断面図である。
本実施形態に係る流体動圧軸受10は、図2に示すように、上述したロータ16と、ロータ16を回転自在に支持するスリーブ22と、スリーブ22からロータ16が抜けるのを防止する抜け止め部(軸体)33と、から概略構成されている。
少なくとも、これら流体動圧軸受10を構成するロータ16、スリーブ22、抜け止め部33は、ステンレス鋼から形成されている。ロータ16、スリーブ22、抜け止め部33等をステンレス鋼から形成することにより、流体動圧軸受10の腐食や、錆の発生を防止することができる。
【0027】
ロータ16は、略円柱状のシャフト(柱状部)34と、シャフト34の一端において、その外周面に全周にわたって半径方向外方に延びる鍔状の円板部(軸体円板部)35と、が一体的に構成されている。円板部35のスリーブ22と対向する面には、後述するスラスト軸受部を収容する凹部36と、抜け止め部33および永久磁石14を保持するヨーク52と、が形成されている。また、円板部35の上面(図2中の上向きの面)には、記録媒体HDと嵌合する嵌合部18が形成されている。
【0028】
シャフト34の外周面には、へリングボーン溝と呼ばれるラジアル動圧発生溝37がシャフト34の軸線方向に2列並んで形成されている。これらラジアル動圧発生溝37は、シャフト34の一端側からシャフト34外周面を構成する円筒面の母線に対して一方向に傾斜して延びる溝と、円板部35側から逆方向に傾斜して延びる溝とを組み合わせて構成されている。つまり、これら一対の溝は、シャフト34の回転方向に向かって広がるように構成されている。
なお、ラジアル動圧発生溝37は、図1に示すように、交わらず溝同士の間に間隔が形成されているが、これら一対の溝が交わるように形成し、一本の屈曲した溝として形成されてもよい。
【0029】
スリーブ22は、シャフト34を回転自在に支持する円筒部38と、円筒部38の一端において、その外周面に全面にわたって半径方向外方に延びる鍔状のスラスト軸受部(支持体円板部)39と、から構成されている。
円筒部38の下方(図2中の下方向)の端部には、円筒部38の底面を形成する底板40が配置されている。
【0030】
図3は、図2の流体動圧軸受10の構成を説明する拡大断面図である。
円筒部38の下方には、図2および図3に示すように、ステータ11のボス部12に嵌合されるスリーブ嵌合部41が形成され、スラスト軸受部39とスリーブ嵌合部41との間には、後述する抜け止め部シール面53との間にリング状の開放端部42を形成するスリーブシール面(接触面)43が形成されている。スリーブシール面43は、スリーブ嵌合部41に向かって半径方向内方に傾斜する傾斜面として形成されている。
【0031】
スリーブシール面43とスリーブ嵌合部41との境目には、円環状に形成されたスリーブ溝部44が形成され、スリーブシール面43とスリーブ溝部44との境目には稜線部(漏洩防止手段)61が形成されている。また、スリーブ溝部44内には、後述するオイルに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層(漏洩防止手段、撥液層)63が形成されている。
【0032】
なお、スリーブシール面43の傾斜角は、抜け止め部シール面53とのなす角が30°以下となる傾斜角であることが好ましい。さらに、スリーブシール面43の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
【0033】
図4(a)は、本実施形態における流体動圧軸受のスラスト軸受部の上方の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図であり、図4(b)は、本実施形態におけるスラスト軸受部の下方の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図である。
図2に示す、スラスト軸受部39の厚さ方向の上方の端面39aおよび下方の端面39bには、図4(a),(b)にそれぞれ示すように、半径方向内方の全周にわたって形成された円環状のニゲ部45と、ニゲ部45の半径方向外方に隣接配置された円環状のスラスト面46とが備えられている。スラスト面46には、へリングボーン溝と呼ばれる多数のスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)47が形成されている。これらのスラスト動圧発生溝47は、それぞれニゲ部45側から半径方向外方に向かって、半径方向に対し一方向に傾斜して円弧状に延びた後、途中位置(中途部)において屈曲し逆方向に傾斜して外周縁まで延びている。
【0034】
図5は、本実施形態におけるスラスト動圧発生溝の別の形態を説明する平面図である。図5(a)は、スラスト軸受部の上方の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する図であり、図5(b)は、スラスト軸受部の下方の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する図である。
なお、スラスト動圧発生溝47は上述のようにヘリングボーン溝として形成されていてもよいし、図5(a),(b)に示すように、オイルFを半径方向外方にポンプアウトするスパイラル溝として形成されていてもよい。ポンプアウトするスパイラル溝として形成されたスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)47´は、半径方向外方に向かって、回転方向後方へ傾斜して形成されている。また、スラスト動圧発生溝47´は、外周縁の手前まで延びるように形成され、外周縁とは連通されていない。そのため、半径方向外方にポンプアウトされたオイルFは、スラスト動圧発生溝47´の外端において堰き止められることにより圧力を発生する。
なお、上述の回転方向とは、スラスト軸受部39と円板部35との相対的な回転方向、または、スラスト軸受部39と抜け止め円板50との相対的な回転方向のことである。
【0035】
また、スラスト軸受部39には、図2および図4に示すように、スラスト軸受部39を厚さ方向に貫通する2つの貫通孔48が設けられている。これらの貫通孔48は、シャフト34の中心軸線周りに180°の角度間隔をあけて、同一半径方向位置に形成されている。各貫通孔48は、ニゲ部45に隣接する位置のスラスト面46に形成されているとともに、スラスト面に開口する開口部に、開口方向に向かって漸次広がるテーパ状の面取り部49を備えている。面取り部49は、その開口端側において、ニゲ部45に重なる位置に形成されている。その結果、ニゲ部45の溝壁を一部切り欠いて、貫通孔48とニゲ部45とを接続する連通凹部を構成している。
【0036】
抜け止め部33は、図2および図3に示すように、ロータ16がスリーブ22から抜けるのを防止する抜け止め円板50と、スリーブ22との間にリング状の開放端部42を形成するシール円筒51と、から概略構成されている。
抜け止め円板50は、ロータ16のヨーク52に固定されることにより、凹部36との間にスラスト軸受部39を保持するように形成されている。抜け止め円板50とヨーク52とは、接着剤Gにより固定されてもよいし、溶接により固定されてよく、抜け止め円板50とヨーク52とが隙間なく固定されることが好ましい。このように隙間なく固定することにより、後述するオイルが抜け止め円板50とヨーク52との隙間から漏れ出すことがない。
【0037】
シール円筒51は、抜け止め円板50の内周面にステータ11側に向かって略鉛直下方に延びるように配置されている。シール円筒51の内周には、上述したスリーブシール面43に対向する領域に、スリーブシール面43との間にリング状の開放端部42を形成する抜け止め部シール面(接触面)53が形成されている。
抜け止め部シール面53は、ステータ11側に向かって略鉛直下方に延びる面として形成されている。抜け止め部シール面53のステータ11側の端部領域には、断面がV字型の円環状に形成された抜け止め部溝55が形成され、抜け止め部溝55と抜け止め部シール面53との境目には稜線部61が形成されている。
また、抜け止め部溝55よりもステータ11側の抜け止め部シール面53は半径方向外側に離れて配置されている。
【0038】
抜け止め部溝55内には、後述するオイルに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
なお、抜け止め部シール面53の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
【0039】
図2に示すように、シャフト34とスリーブ22との間、およびスリーブ22と抜け止め部33との間には、それぞれ隙間C1かC4が設けられている。すなわち、スラスト動圧発生溝47が形成されたスラスト軸受部39の一方の端面45のスラスト面46と、これに対向するロータ16の凹部36の内面との間、および他方の端面45のスラスト面46と、これに対向する抜け止め部の面との間には、それぞれ隙間C1,C2が形成されている。また、ラジアル動圧発生溝37が形成されたシャフト34の外周面と円筒部38の内周面との間には、円筒部38の中央にシャフト34が配置された状態で、均一な隙間C3が形成されるようになっている。さらに、シャフト34の端面とスリーブ22の底板40との間には、隙間C4が形成されている。
【0040】
これら隙間C1,C2,C3には、オイル(作動流体)Fが充填され、オイルFの液面が開放端部42に位置するように充填されている。そのため、開放端部42は、オイルFをその表面張力によって外部に漏れないように保持するキャピラリーシールが形成される。
【0041】
これにより、ロータ16がスリーブ22に対して、その中心軸線回りに一方向に回転させられると、隙間C3のラジアル動圧発生溝37形成領域では、ラジアル動圧発生溝37に沿って、スリーブ22の底板40側および円板部35側からオイルFが引き込まれる。その結果、引き込まれたオイルFが集まる位置に動圧がピークとなる領域が全周にわたって形成される。この動圧のため、シャフト34がスリーブ22の半径方向略中央に保持される。
【0042】
また、隙間C1および隙間C2には、スラスト動圧発生溝47に沿って、スラスト面46の外周縁側およびニゲ部45側からオイルFが引き込まれる。その結果、動圧が発生する円環状の動圧発生領域Aが全周にわたって形成される。この動圧のため、スラスト軸受部39は、凹部36の内面と抜け止め部33の面との間の軸方向の略中央位置に保持されつつ回転されることができる。
【0043】
さらに、スラスト軸受部39が開放端部42に対して半径方向外方に隣接した位置に配置されているため、スラスト面46の外周縁側からオイルFが引き込まれることにより、開放端部42に存在するオイルFが隙間C2に引き込まれる。そのため、オイルFが開放端部42から外部に飛び出しにくくすることができる。特に、スラスト軸受部39が開放端部42の半径方向外方に隣接して配置されているため、スラスト動圧発生溝47を周速の速い半径方向外方に配置することができる。そのため、オイルFの引き込み力を強くすることができ、オイルFが開放端部42から外部に飛び出しにくくすることができる。
【0044】
このように構成された本実施形態に係る流体動圧軸受10、これを備えるモータ17および記録媒体駆動装置1の作用について、以下に説明する。
記録媒体駆動装置1を起動して、記録媒体HDを回転させるには、まず、モータ17を構成するステータ11のコイル25に三相交流電流を供給することにより、コイル25に交番磁界を発生させる。この交番磁界が永久磁石14に作用することによりロータ16が回転させられる。ロータ16には、記録媒体HDが固定されているので、ロータ16が回転させられると、記録媒体HDがロータ16とともに回転させられる。
【0045】
また、ロータ16が一方向に回転させられると、ロータ16と一体のシャフト34も一方向に回転させられる。このとき、シャフト34に設けられたラジアル動圧発生溝37およびスリーブ22に設けられたスラスト動圧発生溝47により、隙間C1,C2,C3に動圧が発生する。シャフト34の外周面に発生する動圧は、全周にわたって均一に発生するので、シャフト34がスリーブ22の中心軸線位置にバランスして保持される。また、スラスト軸受部39のスラスト面46に発生する動圧は、それぞれが同等の動圧によってスラスト軸受部39を厚さ方向に押圧するので、スラスト軸受部39が、ロータ16の凹部36の内面と抜け止め部33の面との間の空間の軸方向の略中央位置にバランスして保持される。
【0046】
この場合において、モータ17の停止時には、動圧が発生していないため、ロータ16はスリーブ22内において重力方向に下降している。したがって、例えば、図1に示すような上下関係に記録媒体駆動装置1が設置されている場合には、ロータ16がスリーブ22に対して軸方向に下降した状態となり、上側の隙間C1は下側の隙間C2よりも小さくなる。この状態でモータ17を起動すると、各隙間C1,C2においては、スラスト動圧発生溝47によりオイルFがニゲ部45側から半径方向外方に引き込まれる。このとき本実施形態に係る流体動圧軸受10によれば、スラスト面46に開口する貫通孔48が設けられているので、上側の狭い隙間C1には下側の広い隙間C2から貫通孔48を介してオイルFが供給される。
【0047】
その結果、狭い隙間C1においてオイルFが引き込まれることによる過度の負圧状態の発生が防止され、オイルF中における気泡の発生が未然に防がれる。特に、貫通孔48をスラスト面46における、開放端部42に対して半径方向外方に隣接した位置に開口させることにより、オイルFをスラスト面46に直接供給することができ、起動時の急激なオイルFの引き込みによっても気泡の発生を防止することができる。
また、本実施形態によれば、貫通孔48の開口部に面取り部49が設けられることにより、貫通孔48から動圧発生領域Aに供給されるオイルが動圧発生部Aに広がるようにスムーズに供給されることになるので、さらに効果的である。
【0048】
オイルF内における気泡の発生を防止することにより、動圧発生領域Aに発生する動圧の変動を防止して、ロータ16を振動させることなく安定して回転させることができる。また、気泡の発生を防止することにより、ロータ16とスリーブ22との間、およびスリーブ22と抜け止め部33との間に、常にオイルFを介在させておくことができる。その結果、ロータ16とスリーブ22との接触、またはスリーブ22と抜け止め部33との接触による損傷などを防止することができる。
さらに、気泡の発生によりオイルFが隙間C1からC4から追い出されることを防止して、オイル漏れ等の不具合発生を防止することができる。また、オイル漏れの発生を防止できるため、漏れたオイルを吸収する吸収部材を備える必要がなくなり、記録媒体駆動装置1の薄型化を図りやすくすることができる。
【0049】
また、仮に気泡が発生した場合、あるいは、気泡が混入していた場合においては、ロータ16が回転することにより、気泡が貫通孔48内に引き込まれる。引き込まれた気泡は貫通孔48内に留まるため、動圧発生領域Aに気泡が滞留して上述した種々の不都合の発生を防止することができる。
また、本実施形態に係る流体動圧軸受10においては、貫通孔48を中心軸線に対して軸対象の位置に2ヶ所設けたので、動圧発生領域AにオイルFを分配供給することができる。また、ロータ16の重量バランス、回転バランスを図ることもできる。
そして、このようにして構成された本実施形態に係る流体動圧軸受10およびモータ17を備えた記録媒体駆動装置1によれば、記録媒体HDを振動させることなく安定して回転させることができる。そのため、記録媒体HDへの情報の書き込み、および記録媒体HDからの情報の読み出しを正確に行うことができる。
【0050】
スラスト動圧発生溝47は、例えば、スラスト動圧発生溝47の屈曲点を半径方向外方に位置させたり、スラスト動圧発生溝47の高さを半径方向の内方と外方とで変えたりして、動圧発生領域Aの内周縁周辺よりも外周縁周辺の方が、発生する動圧が高くなるように形成されている。そのため、動圧発生領域Aの外周縁におけるロータ16とスリーブ22とを支持する力が強くなる。その結果、ロータ16の回転時にいてロータ16を安定して支持することができ、NRRO(Non−Repeatable Runout)も向上する。
【0051】
また、開放端部42中のオイルFには、表面張力によりその液面面積が小さくなる方向、つまり、スリーブシール面43と抜け止め部シール面53との間隔が狭くなる方向に押込められる力が働く。そのため、開放端部42は、オイルFが外部に漏れないように保持することができる。
【0052】
上記の構成によれば、スリーブシール面43および抜け止め部シール面53の面粗度を所定粗さよりも粗く形成するため、オイルFとの接触角を15°以下にすることができる。オイルFとの接触角Fを15°以下とすることにより、外部から携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受10から飛び出すことを防止できる。
【0053】
スリーブシール面43および抜け止め部シール面53に稜線部61が形成されているため、オイルFが稜線部61よりも外部へ濡れ広がることを防止できる。また、スリーブシール面43のスリーブ溝部44内および抜け止め部シール面53の抜け止め部溝55内に、撥油層63形成されているため、オイルFが撥油層63よりも外側へ濡れ広がることを防止できる。
【0054】
なお、上述のように、スリーブシール面43および抜け止め部シール面53に稜線部61および撥油層63を形成してオイルFの外部への濡れ広がりを防止してもよいし、ロータ16とスリーブ22との相対回転によりオイルFを内側へ押し込む方向に働くらせん状の溝を形成してオイルFの外部への濡れ広がりを防止してもよい。
【0055】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図6および図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
本実施の形態に係る流体動圧軸受113を備えるモータ110は、図6に示される記録媒体駆動装置101に適用されているものである。この記録媒体駆動装置101は、記録媒体HDを回転駆動するモータ110を備えている。
モータ110は、円環状に配列された電磁石120を備えるステータ111と、ステータ111の内側に配置され電磁石120に対向配置される永久磁石114を備えたロータ(軸体)112と、ステータ111に対してロータ112を回転可能に支持する流体動圧軸受113とから概略構成されている。ステータ111に備えられた電磁石120と、ロータ112に備えられた永久磁石114との間に働く磁力により、ステータ111に対してロータ112は回転駆動される。
【0057】
永久磁石114は円環状に形成され、その断面が矩形となるように形成されている。
カップ状に形成されたロータ112には、ロータ112の側壁外周から鍔状に形成されたフランジ115と、フランジ115とともに永久磁石114を保持するヨーク116と、ロータ112の中心軸線上に形成され、後述するシャフト131と嵌合する嵌合孔117と、リング板状の記録媒体HDを嵌合させる嵌合部(固定部)118と、が形成されている。
【0058】
ロータ112の嵌合部118には記録媒体HDが嵌合されることにより、ロータ112と記録媒体HDとが一体的に構成されている。また、ロータ112の嵌合孔117にはシャフト131の一端が嵌合されることにより、ロータ112とシャフト131とが一体的に構成されている。そのため、シャフト131とロータ112と記録媒体HDとが、一体となって回転するように構成されている。
【0059】
ステータ111には、電磁石120の略中心軸上にボス部119が形成されている。ボス部119に後述する流体動圧軸受113のハウジング132が嵌合させることにより、ロータ112に備えられた永久磁石114を電磁石120に対向配置させている。
電磁石120と記録媒体HDとの間には、電磁石120および永久磁石114により形成される磁界を遮断するシールド板121が配置されている。
【0060】
また、ステータ111には、後述する電磁石120のステータコイル123を収納するステータ開口部122が形成されている。このようにステータ開口部122にステータコイル123を収納することにより、電磁石120の配置位置をよりステータ111側(図中下方)に接近させることができ、記録媒体駆動装置101の薄型化を図ることができる。
【0061】
流体動圧軸受113は、図6に示すように、シャフト131と、シャフト131を収容するハウジング(支持体)132とから構成されている。
少なくとも、これら流体動圧軸受113を構成するシャフト131、ハウジング132、および後述するアッパープレートは、ステンレス鋼から形成されている。シャフト131、ハウジング132、アッパープレート等をステンレス鋼から形成することにより、流体動圧軸受113の腐食や、錆の発生を防止することができる。
【0062】
シャフト131は、略円柱状の軸体(柱状部)133と、軸体133の軸線方向の途中位置において、その外周面に全周にわたって半径方向に延びる鍔状のスラスト軸受板(軸体円板部)134とを備えている。ハウジング132はシャフト131の各外面に対して微小間隙をあけて配される内面を備えている。ハウジング132の内面とシャフト131の外面との間隙には、オイルFが充填されている。
【0063】
図7は、図6の流体動圧軸受113の構成を説明する拡大断面図である。
軸体133のスラスト軸受板134より上方(図7中の上方)の側面は後述する貫通孔内周面とともにキャピラリーシールを形成する軸体外周面(接触面)165が形成されている。軸体外周面165には、円環状に形成された軸体溝部166が形成され、軸体溝部166と軸体外周面165との境目には稜線部61が形成されている。また、軸体133の軸体溝部166よりも上方の側面からロータ12の内面(図7中の下面)には、オイルFに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
なお、軸体外周面165の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
【0064】
軸体133とスラスト軸受板134とは一体的に構成され、シャフト131を形成している。軸体133の下端(図7中の下方端)側の外周面には、第1の実施形態と同様にヘリングボーン溝と呼ばれるラジアル動圧溝が複数形成されている。スラスト軸受板134の厚さ方向の両端面にも、第1の実施形態と同様にヘリングボーン溝と呼ばれるスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)が複数形成されている(図4参照)。
なお、スラスト動圧発生溝は上述のようにヘリングボーン溝として形成されていてもよいし、オイルFを半径方向外方にポンプアウトするスパイラル溝として形成されていてもよい(図5参照)。
【0065】
ハウジング132は、図6および図7に示すように、一端を閉塞され、他端を開放された略円筒状のハウジング本体(円筒部)135と、軸体133の一端を突出させた状態で、ハウジング132の開放端を閉鎖するアッパープレート(支持体円板部)136と、から構成されている。ハウジング本体135には、ラジアル動圧発生溝が形成された軸体133の下端側を収容するラジアル部収容穴137と、スラスト軸受板134を収容するスラスト部収容穴138と、が形成されている。
【0066】
アッパープレート136はリング板状に形成され、リング板の略中央には軸体133を通す貫通孔が形成されている。貫通孔は、貫通孔内周面(接触面)139がスラスト部収容穴138から外側に向かって漸次その径が大きくなるテーパ面となるように形成されている。これにより、貫通孔に通された軸体133の軸体外周面165と貫通孔の貫通孔内周面139との間に、外側に向かって間隔の広がる円環状のキャピラリーシールが形成される。キャピラリーシールは、その形状とオイルの表面張力とにより、ハウジング132とシャフト131との間に充填されたオイルFが外部に漏れないように保持することができる。
【0067】
なお、貫通孔内周面139の傾斜角は、軸体外周面165となす角度30°以下となる傾斜角であることが好ましい。さらに、貫通孔内周面139の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
アッパープレート136の上面167と貫通孔内周面139との境目には、稜線部61が形成されている。上面167には、オイルFに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
【0068】
このように構成された本実施形態に係るモータ110およびこれを備える記録媒体駆動装置101の作用について、以下に説明する。
記録媒体駆動装置101を起動して、記録媒体HDを回転させるには、まず、モータ110を構成するステータ111のステータコイル123に三相交流電流を供給することにより、ステータコイル123に交番磁界を発生させる。この交番磁界が永久磁石114に作用することによりロータ112が回転させられる。ロータ112には、記録媒体HDが固定されているので、ロータ112が回転させられると、記録媒体HDがロータ112とともに回転させられる。
【0069】
このように、ロータ112が一方向に回転させられると、ロータ112と一体のシャフト131も一方向に回転させられる。このとき、シャフト131に設けられたラジアル動圧発生溝およびスラスト軸受板134に設けられたスラスト動圧発生溝により、ハウジング132との間隙に動圧が発生する。シャフト131の外周面に発生する動圧は、全周にわたって均一に発生するので、シャフト131がハウジング132の中心軸線位置にバランスして保持される。また、スラスト軸受板134の両端面に発生する動圧は、それぞれが同等の動圧によってスラスト軸受板134を厚さ方向に押圧するので、スラスト軸受板134が、ハウジング132とアッパープレート136との間の軸方向における略中央位置にバランスして保持される。
【0070】
上記の構成によれば、貫通孔内周面139および軸体外周面165の面粗度を所定粗さよりも粗く形成するため、オイルFとの接触角を15°以下にすることができる。オイルFとの接触角Fを15°以下とすることにより、外部から携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受113から飛び出すことを防止できる。
【0071】
貫通孔内周面139および軸体外周面165に稜線部61が形成されているため、オイルFが稜線部61よりも外部へ濡れ広がることを防止できる。また、軸体133の軸体溝部166よりも上方の側面からロータ12の内面、および、アッパープレート136の上面167に、撥油層63形成されているため、オイルFが撥油層63よりも外側へ濡れ広がることを防止できる。
【0072】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図8および図11を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
本実施形態に係る流体動圧軸受210は、図8に示すように、記録媒体駆動装置201に適用されているものである。この記録媒体駆動装置201は、円環状に配列された電磁石213を備えるステータ211と、ステータ211の内側に配置された電磁石213に対向配置される永久磁石214を備えたロータ(軸体)216と、ステータ211に対してロータ216を回転可能に支持する流体動圧軸受210とから構成されるモータ217を備えている。ステータ211に備えられた電磁石213と、ロータ216に備えられた永久磁石214とにより、ステータ211に対してロータ216を回転駆動する駆動手段15が構成されている。
【0074】
ロータ216には、リング板状の記録媒体(図示せず)を嵌合させる嵌合部18が備えられているとともに、記録媒体を固定する押圧部材(図示せず)を取り付けるネジのネジ穴21が形成されている。
【0075】
ステータ211は、電磁石213の中央に配置されるボス部12を備えている。ボス部12に後述する流体動圧軸受210のスリーブ(支持体)222を嵌合させることにより、ロータ216に備えられた永久磁石214を電磁石213に対向配置させている。電磁石213と記録媒体との間には、電磁石213および永久磁石214により形成される磁界を遮断するシールド板223が配置されている。
電磁石213は、図8に示すように、三相交流を供給されることにより交番磁界を発生するコイル25と、コイル25が巻かれる複数枚の金属板からなるコアプレート226とから構成されている。
【0076】
図9は、図8の記録媒体駆動装置における流体動圧軸受の構成を示す断面図である。
本実施形態に係る流体動圧軸受210は、図9に示すように、上述したロータ216と、ロータ216を回転自在に支持するスリーブ222と、から概略構成されている。
少なくとも、これら流体動圧軸受210を構成するロータ216、スリーブ222、ステンレス鋼から形成されている。ロータ216、スリーブ222等をステンレス鋼から形成することにより、流体動圧軸受210の腐食や、錆の発生を防止することができる。
【0077】
ロータ216は、略円柱状のシャフト(柱状部)234と、シャフト234の一端において、その外周面に全周にわたって半径方向外方に延びる鍔状の円板部(軸体円板部)235と、円板部235の外周部から下方に向かって延びるヨーク252と、が一体的に構成されている。
円板部235のスリーブ222と対向する面には、後述するスラスト軸受部と対向するロータ対向面236が形成されている。ヨーク252のスリーブ222と対向する面には、後述するスリーブシール面に対向するロータシール面(接触面)237が形成され、ヨーク252には永久磁石214が保持される。ロータシール面237は、シャフト234の中心軸線と略平行な面として形成されている。
【0078】
ロータシール面237の下方には、後述するオイルに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
なお、ロータシール面237の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
シャフト234の外周面には、第1の実施形態と同様に、へリングボーン溝と呼ばれるラジアル動圧発生溝(図示せず)がシャフト234の軸線方向に2列並んで形成されている。これらラジアル動圧発生溝は、第1の実施形態におけるものと同様に形成されているため、その詳細な説明を省略する。
【0079】
スリーブ222は、シャフト234を回転自在に支持する円筒部238と、円筒部238の一端において、その外周面に全面にわたって半径方向外方に延びる鍔状のスラスト軸受部(支持体円板部)239と、から構成されている。
円筒部238の下方(図9中の下方向)の端部には、円筒部238の内部に袋部を形成するように底面が形成されている。
【0080】
図10は、本実施形態における流体動圧軸受のスラスト軸受部の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図である。
スラスト軸受部239の上端面には、図10に示すように、へリングボーン溝と呼ばれる多数のスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)247が形成されている。これらのスラスト動圧発生溝247は、半径方向内方から半径方向外方に向かって、半径方向に対し一方向に傾斜して円弧状に延びた後、途中位置(中途部)において屈曲し、逆方向に傾斜して外周縁まで延びている。スラスト動圧発生溝247の屈曲は、スラスト軸受部239の上端面における半径方向内方に寄った位置に形成されている。
【0081】
図11は、図10に示すスラスト動圧発生溝の別の実施形態を説明する図である。
なお、スラスト動圧発生溝247は上述のようにヘリングボーン溝として形成されていてもよいし、図11に示すように、オイルFを半径方向内方にポンプインするスパイラル溝として形成されていてもよい。ポンプインするスパイラル溝として形成されたスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)247´は、半径方向内方に向かって、回転方向前方へ傾斜して形成されている。また、スラスト動圧発生溝247´は、内周縁の手前まで延びるように形成され、内周縁とは連通されていない。そのため、半径方向内方にポンプインされたオイルFは、スラスト動圧発生溝247´の内端において堰き止められることにより圧力を発生する。
なお、上述の回転方向とは、スラスト軸受部239と円板部235との相対的な回転方向のことである。
【0082】
円筒部238の下方には、図9に示すように、ステータ211のボス部12に嵌合されるスリーブ嵌合部241が形成され、スラスト軸受部239の外周面には、上述したロータシール面237との間にリング状の開放端部42を形成するスリーブシール面(接触面)243が形成されている。スリーブシール面243は、スリーブ嵌合部241に向かって半径方向内方に傾斜する傾斜面として形成されている。スリーブシール面243とロータシール面237との間には、リング状の開放端部42が形成され、開放端部42は、スラスト軸受部239に対して半径方向外方に隣接した位置に配置されている。
【0083】
スリーブシール面243とスリーブ嵌合部241との境目には、円環状に形成されたスリーブ溝部44が形成され、スリーブシール面243とスリーブ溝部44との境目には稜線部61が形成されている。また、スリーブ溝部44内には、後述するオイルに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
なお、スリーブシール面243の傾斜角は、ロータシール面237とのなす角が30°以下となる傾斜角であることが好ましい。さらに、スリーブシール面243の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
【0084】
このように構成された本実施形態に係る流体動圧軸受210、これを備えるモータ217および記録媒体駆動装置201の作用について、以下に説明する。
まず、モータ217を構成するコイル25に三相交流電流が供給されると、コイル25に交番磁界が発生する。この交番磁界が永久磁石214に作用することによりロータ216が一方向に回転され、ロータ216と一体に形成されたシャフト234および円板部235も一方向に回転される。
【0085】
このとき、シャフト234の周囲には、第1の実施形態と同様に、ラジアル動圧発生溝により動圧が発生し、シャフト234がスリーブ222の中心軸線位置にバランスして保持される。
また、スラスト軸受部239の上端面には、スラスト動圧発生溝247によりオイルFが半径方向内方へ引き込まれ、動圧が発生する。円板部235のロータ対向面236は発生した動圧により支持され、ロータ216が回転可能に支持される。このように、オイルFが半径方向内方に引き込まれることにより、開放端部42に存在するオイルFが半径方向内方へ引き込まれる。そのため、オイルFが開放端部42から外部に飛び出しにくくすることができる。
【0086】
上記の構成によれば、スリーブシール面243およびロータシール面237の面粗度を所定粗さよりも粗く形成するため、オイルFとの接触角を15°以下にすることができる。オイルFとの接触角Fを15°以下とすることにより、外部から携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受210から飛び出すことを防止できる。
【0087】
スリーブシール面243に稜線部61が形成されているため、オイルFが稜線部61よりも外部へ濡れ広がることを防止できる。また、スリーブシール面243のスリーブ溝部44内およびロータシール面237に、撥油層63形成されているため、オイルFが撥油層63よりも外側へ濡れ広がることを防止できる。
【0088】
なお、上述のように、スリーブシール面243およびロータシール面237に稜線部61および撥油層63を形成してオイルFの外部への濡れ広がりを防止してもよいし、ロータ216とスリーブ222との相対回転によりオイルFを内側へ押し込む方向に働くらせん状の溝を形成してオイルFの外部への濡れ広がりを防止してもよい。
【0089】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、流体動圧軸受をインナーロータ型のモータに適用して説明したが、このインナーロータ型のモータに限られることなく、アウターロータ型のモータなど、その他各種のモータに適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
【図2】図1の記録媒体駆動装置における流体動圧軸受の構成を示す断面図である。
【図3】図2の流体動圧軸受の構成を説明する拡大断面図である。
【図4】図1の流体動圧軸受のスラスト軸受部に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図である。
【図5】図4のスラスト動圧発生溝の別の形態を説明する平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
【図7】図6の流体動圧軸受の構成を説明する拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
【図9】図8の記録媒体駆動装置における流体動圧軸受の構成を示す断面図である。
【図10】図8の流体動圧軸受のスラスト軸受部の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図である。
【図11】図10に示すスラスト動圧発生溝の別の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0091】
1,101,201 記録媒体駆動装置
10,113,210 流体動圧軸受
15 駆動手段
16,112,216 ロータ(軸体)
17,110 モータ
18,118 嵌合部(固定部)
22,222 スリーブ(支持体)
33 抜け止め部(軸体)
34,234 シャフト(柱状部)
35,235 円板部(軸体円板部)
38 円筒部
39,239 スラスト軸受部(支持体円板部)
43,243 スリーブシール面(接触面)
47,47´,247,247´ スラスト動圧発生溝(動圧発生溝)
53 抜け止め部シール面(接触面)
61 稜線部(漏洩防止手段)
63 撥油層(漏洩防止手段、撥液層)
132 ハウジング(支持体)
133 軸体(柱状部)
134 スラスト軸受板(軸体円板部)
135 ハウジング本体(円筒部)
136 アッパープレート(支持体円板部)
139 貫通孔内周面(接触面)
165 軸体外周面(接触面)
237 ロータシール面(接触面)
F オイル(作動流体)
HD 記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動圧軸受、モータおよび記録媒体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、据え置き型のパーソナルコンピュータに搭載されるハードディスク装置(以下、HDDと呼ぶ。)の軸受には、オイルを潤滑剤として用いた滑り軸受や動圧軸受などが用いられている。特に、軸受として動圧軸受を採用している場合には、オイル量が不足すると動圧を十分に発生できず、HDDの回転軸を回転可能に支持できないため、十分な量のオイルを軸受部に保持する必要があった。
【0003】
しかしながら、上述のHDDは、その性質上、清浄な環境が求められるため、軸受に用いているオイルがHDD内に侵入しないよう防止手段が設けられている。特に、軸受部に比較的多量のオイルを保持する動圧軸受の場合には、HDDの機能保護の観点、および動圧軸受の機能維持の観点から、オイルの軸受部からの漏れ出しを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1から3参照。)。
【特許文献1】特開平8−232966号公報
【特許文献2】特許第2937833号公報
【特許文献3】米国特許5667309号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1から3においては、ラジアル軸受部の軸方向外側に隙間変化部を設けて、この隙間変化部における傾斜角を45度以下に設定する技術思想と、隙間変化部における、回転部材または固定部材とオイルとの接触角が15度以上になるようにする技術思想と、上記接触角を大きくするため、オイルと接触する領域に表面張力を小さくする材料、例えばプラスチックを使用する技術思想と、が開示されている。
【0005】
上述の特許文献1から3で開示された技術思想によれば、オイルが濡れ拡張(はい上がり現象)により軸受部から外部に漏れることを防止できる。
また、HDDを据え置き型パーソナルコンピュータに用いる際に想定される衝撃がHDDに加わっても、軸受部から外部オイルが飛散することを防止できる。
【0006】
しかしながら、据え置き型のパーソナルコンピュータで想定される衝撃(約2000m/s2(約200G))より5倍から7.5倍の強い衝撃(約10000m/s2〜約15000m/s2(約1000G〜約1500G))が想定される携行可能なノートパソコン等の端末装置や、携帯電話機や、デジタルカメラ等の携行可能な情報家電にHDDが搭載された場合には、上述の特許文献1から3で開示された技術では、オイルは軸受部から外部に飛散するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても動圧軸受部の作動液体の飛散を防止できる流体動圧軸受、それを用いたモータおよび記録媒体駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、略円柱状に形成された柱状部を有する軸体と、閉塞端を有し、前記柱状部を回転可能に収容する円筒部を有する支持体と、少なくとも前記柱状部と前記円筒部との隙間に充填された作動液体と、を備え、前記軸体および前記支持体の前記作動液体の液面近傍に配される接触面には、前記作動液体との接触角が15°以下となる接触角制御処理が施され、前記接触面または前記接触面に隣接する面に前記軸体と前記支持体との隙間から前記作動液体が外部へ濡れ広がること防止する漏洩防止手段が備えられている流体動圧軸受を提供する。
【0009】
本発明によれば、軸体および支持体の作動液体の液面近傍に配される接触面に、接触角制御処理を施すことにより、上記接触面における作動液体との接触角を15°以下とすることができる。上記接触角を15°以内とすることにより、外部から流体動圧軸受に衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受から飛び出すことを防止できる。
【0010】
また、接触面または接触面に隣接する面に、漏洩防止手段が備えられているため、作動液体が漏洩防止手段よりも外部へ濡れ広がることを防止できる。また、接触制御処理を施した領域は作動液体の濡れ広がりやすくなるが、漏洩防止手段を設けることにより、作動液体が流体動圧軸受から外部に漏れることを防止できる。
【0011】
また、上記発明においては、前記接触角制御処理が、前記接触面の面粗度を所定値より大きくする表面処理であることが望ましい。
本発明によれば、接触面の面粗度を所定値よりも大きくする表面処理を施すことにより、接触面における作動液体との接触角を15°以下にすることができる。
上記表面処理としては、接触面の切削加工を挙げることができる。具体的には、接触面を旋盤加工などにより形成し、その加工目をそのまま残す方法を例示することができる。この方法によれば、鏡面加工が困難な材料(例えば、ステンレス鋼)であっても、容易に軸体および支持体の材料として用いることができる。
【0012】
さらに、上記発明においては、前記漏洩防止手段が、前記軸体および前記支持体の面の上に設けられた前記作動液体をはじく材料からなる撥液層であることが望ましい。
本発明によれば、撥液層において、軸体および支持体の面を濡れ広がる作動流体を遮ることができるため、撥液層の形成された領域より外部へ作動液体が濡れ広がることを防止できる。
【0013】
上記発明においては、前記漏洩防止手段が、前記軸体および前記支持体の面から凸状に突出した稜線部であることが望ましい。
本発明によれば、凸上に突出した稜線部において、軸体および支持体の面を濡れ広がる作動流体を遮ることができるため、作動液体が稜線部を越えて外部へ濡れ広がることを防止できる。
【0014】
上記発明においては、前記軸体には、前記柱状部に支持されるとともに半径方向に延びる軸体円板部が設けられ、前記支持体には、前記円筒部に支持されるとともに半径方向に延びる支持体円板部が設けられ、前記軸体円板部と前記支持体円板部とが互いに対向するように配置されるとともに、前記軸体円板部または前記支持体円板部の対向面の少なくとも一方に、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向に引き込む動圧発生溝が形成され、前記軸体円板部と前記支持体円板部とが前記接触面に隣接して配置されていることが望ましい。
【0015】
本発明によれば、軸体と支持体とを相対的に回転させた際に、作動液体は動圧発生溝により半径方向へ引き込まれる。さらに、軸体円板部と支持体円板部とが接触面に隣接して配置されていることから、接触面と軸体円板部および支持体円板部との間に存在する作動流体は、軸体円板部と支持体円板部との間に引き込まれる。その結果、軸体と支持体とを相対的に回転している場合には、外部から流体動圧軸受に衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受から飛び出すことを防止できる。
【0016】
上記発明においては、前記動圧発生溝が、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向外方に引き込み、前記軸体円板部と前記支持体円板部とが、前記接触面の半径方向外方に隣接して配置されていることが望ましい。
本発明によれば、軸体と支持体とを相対的に回転させた際に、作動液体は動圧発生溝により半径方向外側へ引き込まれる。
また、軸体円板部と支持体円板部とが接触面の半径方向外方に隣接して配置されているため、動圧発生溝を周速の速い半径方向外方に形成することができ、作動液体の引き込み力を強くすることができる。
【0017】
上記発明においては、前記動圧発生溝が、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向内方に引き込み、前記軸体円板部と前記支持体円板部とが、前記接触面の半径方向内方に隣接して配置されていることが望ましい。
本発明によれば、軸体と支持体とを相対的に回転させた際に、作動液体は動圧発生溝により半径方向内側へ引き込まれる。
【0018】
上記発明においては、前記軸体および前記支持体がステンレス鋼から形成されていることが望ましい。
本発明によれば、軸体および支持体をステンレス鋼から形成することにより、軸体および支持体の腐食や、錆の発生を防止することができる。
【0019】
本発明は、上記本発明の流体動圧軸受と、該流体動圧軸受の前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させる駆動手段と、を備えるモータを提供する。
本発明によれば、上記本発明の流体動圧軸受を用いることにより、外部から衝撃が加えられても流体動圧軸受に用いられている作動液体が外部に漏れることがなく、清浄さが求められる環境にもモータを用いることができる。
【0020】
本発明は、上記本発明のモータを備え、前記軸体または前記支持体に記録媒体を固定する固定部が設けられている記録媒体駆動装置を提供する。
本発明によれば、上記発明の流体動圧軸受を用いたモータを使用することにより、外部から衝撃が加えられても流体動圧軸受に用いられている作動液体が外部に漏れることがない。そのため、記録媒体駆動装置内が作動液体により汚染されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の流体動圧軸受、それを用いたモータおよび記録媒体駆動装置によれば、軸体および支持体の作動液体の液面と接する接触面に接触角制御処理を施し、上記接触面における作動液体との接触角を15°以下とすることにより、携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても動圧軸受部の作動液体の飛散を防止できるという効果を奏する。
また、軸体および支持体の作動液体と接する領域よりも外側の領域に、漏洩防止手段が備えられているため、作動液体が漏洩防止手段よりも外部へ濡れ広がることを防止でき、動圧軸受部の作動液体が外部に漏れることを防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る流体動圧軸受、モータおよび記録媒体駆動装置について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
本実施形態に係る流体動圧軸受10は、図1に示すように、記録媒体駆動装置1に適用されているものである。この記録媒体駆動装置1は、円環状に配列された電磁石13を備えるステータ11と、ステータ11の内側に配置された電磁石13に対向配置される永久磁石14を備えたロータ(軸体)16と、ステータ11に対してロータ16を回転可能に支持する流体動圧軸受10とから構成されるモータ17を備えている。ステータ11に備えられた電磁石13と、ロータ16に備えられた永久磁石14とにより、ステータ11に対してロータ16を回転駆動する駆動手段15が構成されている。
【0023】
ロータ16には、リング板状の記録媒体HDを嵌合させる嵌合部(固定部)18が備えられているとともに、記録媒体HDを固定する押圧部材19を取り付けるネジ20のネジ穴21が形成されている。押圧部材19は断面形状が凸形状に形成された円環状の板材からなり、ネジ20によりロータ16に取り付けられる。記録媒体HDは、ロータ16の嵌合部18に嵌合され、押圧部材19により嵌合部18に押圧されることにより、ロータ16と記録媒体HDとが一体的に構成されるようになっている。
【0024】
ステータ11は、電磁石13の中央に配置されるボス部12を備えている。ボス部12に後述する流体動圧軸受10のスリーブ(支持体)22を嵌合させることにより、ロータ16に備えられた永久磁石14を電磁石13に対向配置させている。電磁石13と記録媒体HDとの間には、電磁石13および永久磁石14により形成される磁界を遮断するシールド板23が配置されている。
また、ステータ11には、後述する電磁石13のコイル25を収納するステータ開口部24が形成されている。
【0025】
電磁石13は、図1に示すように、三相交流を供給されることにより交番磁界を発生するコイル25と、コイル25が巻かれる複数枚の金属板からなるコアプレート26とから構成されている。
【0026】
図2は、図1の記録媒体駆動装置における流体動圧軸受の構成を示す断面図である。
本実施形態に係る流体動圧軸受10は、図2に示すように、上述したロータ16と、ロータ16を回転自在に支持するスリーブ22と、スリーブ22からロータ16が抜けるのを防止する抜け止め部(軸体)33と、から概略構成されている。
少なくとも、これら流体動圧軸受10を構成するロータ16、スリーブ22、抜け止め部33は、ステンレス鋼から形成されている。ロータ16、スリーブ22、抜け止め部33等をステンレス鋼から形成することにより、流体動圧軸受10の腐食や、錆の発生を防止することができる。
【0027】
ロータ16は、略円柱状のシャフト(柱状部)34と、シャフト34の一端において、その外周面に全周にわたって半径方向外方に延びる鍔状の円板部(軸体円板部)35と、が一体的に構成されている。円板部35のスリーブ22と対向する面には、後述するスラスト軸受部を収容する凹部36と、抜け止め部33および永久磁石14を保持するヨーク52と、が形成されている。また、円板部35の上面(図2中の上向きの面)には、記録媒体HDと嵌合する嵌合部18が形成されている。
【0028】
シャフト34の外周面には、へリングボーン溝と呼ばれるラジアル動圧発生溝37がシャフト34の軸線方向に2列並んで形成されている。これらラジアル動圧発生溝37は、シャフト34の一端側からシャフト34外周面を構成する円筒面の母線に対して一方向に傾斜して延びる溝と、円板部35側から逆方向に傾斜して延びる溝とを組み合わせて構成されている。つまり、これら一対の溝は、シャフト34の回転方向に向かって広がるように構成されている。
なお、ラジアル動圧発生溝37は、図1に示すように、交わらず溝同士の間に間隔が形成されているが、これら一対の溝が交わるように形成し、一本の屈曲した溝として形成されてもよい。
【0029】
スリーブ22は、シャフト34を回転自在に支持する円筒部38と、円筒部38の一端において、その外周面に全面にわたって半径方向外方に延びる鍔状のスラスト軸受部(支持体円板部)39と、から構成されている。
円筒部38の下方(図2中の下方向)の端部には、円筒部38の底面を形成する底板40が配置されている。
【0030】
図3は、図2の流体動圧軸受10の構成を説明する拡大断面図である。
円筒部38の下方には、図2および図3に示すように、ステータ11のボス部12に嵌合されるスリーブ嵌合部41が形成され、スラスト軸受部39とスリーブ嵌合部41との間には、後述する抜け止め部シール面53との間にリング状の開放端部42を形成するスリーブシール面(接触面)43が形成されている。スリーブシール面43は、スリーブ嵌合部41に向かって半径方向内方に傾斜する傾斜面として形成されている。
【0031】
スリーブシール面43とスリーブ嵌合部41との境目には、円環状に形成されたスリーブ溝部44が形成され、スリーブシール面43とスリーブ溝部44との境目には稜線部(漏洩防止手段)61が形成されている。また、スリーブ溝部44内には、後述するオイルに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層(漏洩防止手段、撥液層)63が形成されている。
【0032】
なお、スリーブシール面43の傾斜角は、抜け止め部シール面53とのなす角が30°以下となる傾斜角であることが好ましい。さらに、スリーブシール面43の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
【0033】
図4(a)は、本実施形態における流体動圧軸受のスラスト軸受部の上方の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図であり、図4(b)は、本実施形態におけるスラスト軸受部の下方の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図である。
図2に示す、スラスト軸受部39の厚さ方向の上方の端面39aおよび下方の端面39bには、図4(a),(b)にそれぞれ示すように、半径方向内方の全周にわたって形成された円環状のニゲ部45と、ニゲ部45の半径方向外方に隣接配置された円環状のスラスト面46とが備えられている。スラスト面46には、へリングボーン溝と呼ばれる多数のスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)47が形成されている。これらのスラスト動圧発生溝47は、それぞれニゲ部45側から半径方向外方に向かって、半径方向に対し一方向に傾斜して円弧状に延びた後、途中位置(中途部)において屈曲し逆方向に傾斜して外周縁まで延びている。
【0034】
図5は、本実施形態におけるスラスト動圧発生溝の別の形態を説明する平面図である。図5(a)は、スラスト軸受部の上方の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する図であり、図5(b)は、スラスト軸受部の下方の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する図である。
なお、スラスト動圧発生溝47は上述のようにヘリングボーン溝として形成されていてもよいし、図5(a),(b)に示すように、オイルFを半径方向外方にポンプアウトするスパイラル溝として形成されていてもよい。ポンプアウトするスパイラル溝として形成されたスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)47´は、半径方向外方に向かって、回転方向後方へ傾斜して形成されている。また、スラスト動圧発生溝47´は、外周縁の手前まで延びるように形成され、外周縁とは連通されていない。そのため、半径方向外方にポンプアウトされたオイルFは、スラスト動圧発生溝47´の外端において堰き止められることにより圧力を発生する。
なお、上述の回転方向とは、スラスト軸受部39と円板部35との相対的な回転方向、または、スラスト軸受部39と抜け止め円板50との相対的な回転方向のことである。
【0035】
また、スラスト軸受部39には、図2および図4に示すように、スラスト軸受部39を厚さ方向に貫通する2つの貫通孔48が設けられている。これらの貫通孔48は、シャフト34の中心軸線周りに180°の角度間隔をあけて、同一半径方向位置に形成されている。各貫通孔48は、ニゲ部45に隣接する位置のスラスト面46に形成されているとともに、スラスト面に開口する開口部に、開口方向に向かって漸次広がるテーパ状の面取り部49を備えている。面取り部49は、その開口端側において、ニゲ部45に重なる位置に形成されている。その結果、ニゲ部45の溝壁を一部切り欠いて、貫通孔48とニゲ部45とを接続する連通凹部を構成している。
【0036】
抜け止め部33は、図2および図3に示すように、ロータ16がスリーブ22から抜けるのを防止する抜け止め円板50と、スリーブ22との間にリング状の開放端部42を形成するシール円筒51と、から概略構成されている。
抜け止め円板50は、ロータ16のヨーク52に固定されることにより、凹部36との間にスラスト軸受部39を保持するように形成されている。抜け止め円板50とヨーク52とは、接着剤Gにより固定されてもよいし、溶接により固定されてよく、抜け止め円板50とヨーク52とが隙間なく固定されることが好ましい。このように隙間なく固定することにより、後述するオイルが抜け止め円板50とヨーク52との隙間から漏れ出すことがない。
【0037】
シール円筒51は、抜け止め円板50の内周面にステータ11側に向かって略鉛直下方に延びるように配置されている。シール円筒51の内周には、上述したスリーブシール面43に対向する領域に、スリーブシール面43との間にリング状の開放端部42を形成する抜け止め部シール面(接触面)53が形成されている。
抜け止め部シール面53は、ステータ11側に向かって略鉛直下方に延びる面として形成されている。抜け止め部シール面53のステータ11側の端部領域には、断面がV字型の円環状に形成された抜け止め部溝55が形成され、抜け止め部溝55と抜け止め部シール面53との境目には稜線部61が形成されている。
また、抜け止め部溝55よりもステータ11側の抜け止め部シール面53は半径方向外側に離れて配置されている。
【0038】
抜け止め部溝55内には、後述するオイルに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
なお、抜け止め部シール面53の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
【0039】
図2に示すように、シャフト34とスリーブ22との間、およびスリーブ22と抜け止め部33との間には、それぞれ隙間C1かC4が設けられている。すなわち、スラスト動圧発生溝47が形成されたスラスト軸受部39の一方の端面45のスラスト面46と、これに対向するロータ16の凹部36の内面との間、および他方の端面45のスラスト面46と、これに対向する抜け止め部の面との間には、それぞれ隙間C1,C2が形成されている。また、ラジアル動圧発生溝37が形成されたシャフト34の外周面と円筒部38の内周面との間には、円筒部38の中央にシャフト34が配置された状態で、均一な隙間C3が形成されるようになっている。さらに、シャフト34の端面とスリーブ22の底板40との間には、隙間C4が形成されている。
【0040】
これら隙間C1,C2,C3には、オイル(作動流体)Fが充填され、オイルFの液面が開放端部42に位置するように充填されている。そのため、開放端部42は、オイルFをその表面張力によって外部に漏れないように保持するキャピラリーシールが形成される。
【0041】
これにより、ロータ16がスリーブ22に対して、その中心軸線回りに一方向に回転させられると、隙間C3のラジアル動圧発生溝37形成領域では、ラジアル動圧発生溝37に沿って、スリーブ22の底板40側および円板部35側からオイルFが引き込まれる。その結果、引き込まれたオイルFが集まる位置に動圧がピークとなる領域が全周にわたって形成される。この動圧のため、シャフト34がスリーブ22の半径方向略中央に保持される。
【0042】
また、隙間C1および隙間C2には、スラスト動圧発生溝47に沿って、スラスト面46の外周縁側およびニゲ部45側からオイルFが引き込まれる。その結果、動圧が発生する円環状の動圧発生領域Aが全周にわたって形成される。この動圧のため、スラスト軸受部39は、凹部36の内面と抜け止め部33の面との間の軸方向の略中央位置に保持されつつ回転されることができる。
【0043】
さらに、スラスト軸受部39が開放端部42に対して半径方向外方に隣接した位置に配置されているため、スラスト面46の外周縁側からオイルFが引き込まれることにより、開放端部42に存在するオイルFが隙間C2に引き込まれる。そのため、オイルFが開放端部42から外部に飛び出しにくくすることができる。特に、スラスト軸受部39が開放端部42の半径方向外方に隣接して配置されているため、スラスト動圧発生溝47を周速の速い半径方向外方に配置することができる。そのため、オイルFの引き込み力を強くすることができ、オイルFが開放端部42から外部に飛び出しにくくすることができる。
【0044】
このように構成された本実施形態に係る流体動圧軸受10、これを備えるモータ17および記録媒体駆動装置1の作用について、以下に説明する。
記録媒体駆動装置1を起動して、記録媒体HDを回転させるには、まず、モータ17を構成するステータ11のコイル25に三相交流電流を供給することにより、コイル25に交番磁界を発生させる。この交番磁界が永久磁石14に作用することによりロータ16が回転させられる。ロータ16には、記録媒体HDが固定されているので、ロータ16が回転させられると、記録媒体HDがロータ16とともに回転させられる。
【0045】
また、ロータ16が一方向に回転させられると、ロータ16と一体のシャフト34も一方向に回転させられる。このとき、シャフト34に設けられたラジアル動圧発生溝37およびスリーブ22に設けられたスラスト動圧発生溝47により、隙間C1,C2,C3に動圧が発生する。シャフト34の外周面に発生する動圧は、全周にわたって均一に発生するので、シャフト34がスリーブ22の中心軸線位置にバランスして保持される。また、スラスト軸受部39のスラスト面46に発生する動圧は、それぞれが同等の動圧によってスラスト軸受部39を厚さ方向に押圧するので、スラスト軸受部39が、ロータ16の凹部36の内面と抜け止め部33の面との間の空間の軸方向の略中央位置にバランスして保持される。
【0046】
この場合において、モータ17の停止時には、動圧が発生していないため、ロータ16はスリーブ22内において重力方向に下降している。したがって、例えば、図1に示すような上下関係に記録媒体駆動装置1が設置されている場合には、ロータ16がスリーブ22に対して軸方向に下降した状態となり、上側の隙間C1は下側の隙間C2よりも小さくなる。この状態でモータ17を起動すると、各隙間C1,C2においては、スラスト動圧発生溝47によりオイルFがニゲ部45側から半径方向外方に引き込まれる。このとき本実施形態に係る流体動圧軸受10によれば、スラスト面46に開口する貫通孔48が設けられているので、上側の狭い隙間C1には下側の広い隙間C2から貫通孔48を介してオイルFが供給される。
【0047】
その結果、狭い隙間C1においてオイルFが引き込まれることによる過度の負圧状態の発生が防止され、オイルF中における気泡の発生が未然に防がれる。特に、貫通孔48をスラスト面46における、開放端部42に対して半径方向外方に隣接した位置に開口させることにより、オイルFをスラスト面46に直接供給することができ、起動時の急激なオイルFの引き込みによっても気泡の発生を防止することができる。
また、本実施形態によれば、貫通孔48の開口部に面取り部49が設けられることにより、貫通孔48から動圧発生領域Aに供給されるオイルが動圧発生部Aに広がるようにスムーズに供給されることになるので、さらに効果的である。
【0048】
オイルF内における気泡の発生を防止することにより、動圧発生領域Aに発生する動圧の変動を防止して、ロータ16を振動させることなく安定して回転させることができる。また、気泡の発生を防止することにより、ロータ16とスリーブ22との間、およびスリーブ22と抜け止め部33との間に、常にオイルFを介在させておくことができる。その結果、ロータ16とスリーブ22との接触、またはスリーブ22と抜け止め部33との接触による損傷などを防止することができる。
さらに、気泡の発生によりオイルFが隙間C1からC4から追い出されることを防止して、オイル漏れ等の不具合発生を防止することができる。また、オイル漏れの発生を防止できるため、漏れたオイルを吸収する吸収部材を備える必要がなくなり、記録媒体駆動装置1の薄型化を図りやすくすることができる。
【0049】
また、仮に気泡が発生した場合、あるいは、気泡が混入していた場合においては、ロータ16が回転することにより、気泡が貫通孔48内に引き込まれる。引き込まれた気泡は貫通孔48内に留まるため、動圧発生領域Aに気泡が滞留して上述した種々の不都合の発生を防止することができる。
また、本実施形態に係る流体動圧軸受10においては、貫通孔48を中心軸線に対して軸対象の位置に2ヶ所設けたので、動圧発生領域AにオイルFを分配供給することができる。また、ロータ16の重量バランス、回転バランスを図ることもできる。
そして、このようにして構成された本実施形態に係る流体動圧軸受10およびモータ17を備えた記録媒体駆動装置1によれば、記録媒体HDを振動させることなく安定して回転させることができる。そのため、記録媒体HDへの情報の書き込み、および記録媒体HDからの情報の読み出しを正確に行うことができる。
【0050】
スラスト動圧発生溝47は、例えば、スラスト動圧発生溝47の屈曲点を半径方向外方に位置させたり、スラスト動圧発生溝47の高さを半径方向の内方と外方とで変えたりして、動圧発生領域Aの内周縁周辺よりも外周縁周辺の方が、発生する動圧が高くなるように形成されている。そのため、動圧発生領域Aの外周縁におけるロータ16とスリーブ22とを支持する力が強くなる。その結果、ロータ16の回転時にいてロータ16を安定して支持することができ、NRRO(Non−Repeatable Runout)も向上する。
【0051】
また、開放端部42中のオイルFには、表面張力によりその液面面積が小さくなる方向、つまり、スリーブシール面43と抜け止め部シール面53との間隔が狭くなる方向に押込められる力が働く。そのため、開放端部42は、オイルFが外部に漏れないように保持することができる。
【0052】
上記の構成によれば、スリーブシール面43および抜け止め部シール面53の面粗度を所定粗さよりも粗く形成するため、オイルFとの接触角を15°以下にすることができる。オイルFとの接触角Fを15°以下とすることにより、外部から携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受10から飛び出すことを防止できる。
【0053】
スリーブシール面43および抜け止め部シール面53に稜線部61が形成されているため、オイルFが稜線部61よりも外部へ濡れ広がることを防止できる。また、スリーブシール面43のスリーブ溝部44内および抜け止め部シール面53の抜け止め部溝55内に、撥油層63形成されているため、オイルFが撥油層63よりも外側へ濡れ広がることを防止できる。
【0054】
なお、上述のように、スリーブシール面43および抜け止め部シール面53に稜線部61および撥油層63を形成してオイルFの外部への濡れ広がりを防止してもよいし、ロータ16とスリーブ22との相対回転によりオイルFを内側へ押し込む方向に働くらせん状の溝を形成してオイルFの外部への濡れ広がりを防止してもよい。
【0055】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図6および図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
本実施の形態に係る流体動圧軸受113を備えるモータ110は、図6に示される記録媒体駆動装置101に適用されているものである。この記録媒体駆動装置101は、記録媒体HDを回転駆動するモータ110を備えている。
モータ110は、円環状に配列された電磁石120を備えるステータ111と、ステータ111の内側に配置され電磁石120に対向配置される永久磁石114を備えたロータ(軸体)112と、ステータ111に対してロータ112を回転可能に支持する流体動圧軸受113とから概略構成されている。ステータ111に備えられた電磁石120と、ロータ112に備えられた永久磁石114との間に働く磁力により、ステータ111に対してロータ112は回転駆動される。
【0057】
永久磁石114は円環状に形成され、その断面が矩形となるように形成されている。
カップ状に形成されたロータ112には、ロータ112の側壁外周から鍔状に形成されたフランジ115と、フランジ115とともに永久磁石114を保持するヨーク116と、ロータ112の中心軸線上に形成され、後述するシャフト131と嵌合する嵌合孔117と、リング板状の記録媒体HDを嵌合させる嵌合部(固定部)118と、が形成されている。
【0058】
ロータ112の嵌合部118には記録媒体HDが嵌合されることにより、ロータ112と記録媒体HDとが一体的に構成されている。また、ロータ112の嵌合孔117にはシャフト131の一端が嵌合されることにより、ロータ112とシャフト131とが一体的に構成されている。そのため、シャフト131とロータ112と記録媒体HDとが、一体となって回転するように構成されている。
【0059】
ステータ111には、電磁石120の略中心軸上にボス部119が形成されている。ボス部119に後述する流体動圧軸受113のハウジング132が嵌合させることにより、ロータ112に備えられた永久磁石114を電磁石120に対向配置させている。
電磁石120と記録媒体HDとの間には、電磁石120および永久磁石114により形成される磁界を遮断するシールド板121が配置されている。
【0060】
また、ステータ111には、後述する電磁石120のステータコイル123を収納するステータ開口部122が形成されている。このようにステータ開口部122にステータコイル123を収納することにより、電磁石120の配置位置をよりステータ111側(図中下方)に接近させることができ、記録媒体駆動装置101の薄型化を図ることができる。
【0061】
流体動圧軸受113は、図6に示すように、シャフト131と、シャフト131を収容するハウジング(支持体)132とから構成されている。
少なくとも、これら流体動圧軸受113を構成するシャフト131、ハウジング132、および後述するアッパープレートは、ステンレス鋼から形成されている。シャフト131、ハウジング132、アッパープレート等をステンレス鋼から形成することにより、流体動圧軸受113の腐食や、錆の発生を防止することができる。
【0062】
シャフト131は、略円柱状の軸体(柱状部)133と、軸体133の軸線方向の途中位置において、その外周面に全周にわたって半径方向に延びる鍔状のスラスト軸受板(軸体円板部)134とを備えている。ハウジング132はシャフト131の各外面に対して微小間隙をあけて配される内面を備えている。ハウジング132の内面とシャフト131の外面との間隙には、オイルFが充填されている。
【0063】
図7は、図6の流体動圧軸受113の構成を説明する拡大断面図である。
軸体133のスラスト軸受板134より上方(図7中の上方)の側面は後述する貫通孔内周面とともにキャピラリーシールを形成する軸体外周面(接触面)165が形成されている。軸体外周面165には、円環状に形成された軸体溝部166が形成され、軸体溝部166と軸体外周面165との境目には稜線部61が形成されている。また、軸体133の軸体溝部166よりも上方の側面からロータ12の内面(図7中の下面)には、オイルFに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
なお、軸体外周面165の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
【0064】
軸体133とスラスト軸受板134とは一体的に構成され、シャフト131を形成している。軸体133の下端(図7中の下方端)側の外周面には、第1の実施形態と同様にヘリングボーン溝と呼ばれるラジアル動圧溝が複数形成されている。スラスト軸受板134の厚さ方向の両端面にも、第1の実施形態と同様にヘリングボーン溝と呼ばれるスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)が複数形成されている(図4参照)。
なお、スラスト動圧発生溝は上述のようにヘリングボーン溝として形成されていてもよいし、オイルFを半径方向外方にポンプアウトするスパイラル溝として形成されていてもよい(図5参照)。
【0065】
ハウジング132は、図6および図7に示すように、一端を閉塞され、他端を開放された略円筒状のハウジング本体(円筒部)135と、軸体133の一端を突出させた状態で、ハウジング132の開放端を閉鎖するアッパープレート(支持体円板部)136と、から構成されている。ハウジング本体135には、ラジアル動圧発生溝が形成された軸体133の下端側を収容するラジアル部収容穴137と、スラスト軸受板134を収容するスラスト部収容穴138と、が形成されている。
【0066】
アッパープレート136はリング板状に形成され、リング板の略中央には軸体133を通す貫通孔が形成されている。貫通孔は、貫通孔内周面(接触面)139がスラスト部収容穴138から外側に向かって漸次その径が大きくなるテーパ面となるように形成されている。これにより、貫通孔に通された軸体133の軸体外周面165と貫通孔の貫通孔内周面139との間に、外側に向かって間隔の広がる円環状のキャピラリーシールが形成される。キャピラリーシールは、その形状とオイルの表面張力とにより、ハウジング132とシャフト131との間に充填されたオイルFが外部に漏れないように保持することができる。
【0067】
なお、貫通孔内周面139の傾斜角は、軸体外周面165となす角度30°以下となる傾斜角であることが好ましい。さらに、貫通孔内周面139の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
アッパープレート136の上面167と貫通孔内周面139との境目には、稜線部61が形成されている。上面167には、オイルFに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
【0068】
このように構成された本実施形態に係るモータ110およびこれを備える記録媒体駆動装置101の作用について、以下に説明する。
記録媒体駆動装置101を起動して、記録媒体HDを回転させるには、まず、モータ110を構成するステータ111のステータコイル123に三相交流電流を供給することにより、ステータコイル123に交番磁界を発生させる。この交番磁界が永久磁石114に作用することによりロータ112が回転させられる。ロータ112には、記録媒体HDが固定されているので、ロータ112が回転させられると、記録媒体HDがロータ112とともに回転させられる。
【0069】
このように、ロータ112が一方向に回転させられると、ロータ112と一体のシャフト131も一方向に回転させられる。このとき、シャフト131に設けられたラジアル動圧発生溝およびスラスト軸受板134に設けられたスラスト動圧発生溝により、ハウジング132との間隙に動圧が発生する。シャフト131の外周面に発生する動圧は、全周にわたって均一に発生するので、シャフト131がハウジング132の中心軸線位置にバランスして保持される。また、スラスト軸受板134の両端面に発生する動圧は、それぞれが同等の動圧によってスラスト軸受板134を厚さ方向に押圧するので、スラスト軸受板134が、ハウジング132とアッパープレート136との間の軸方向における略中央位置にバランスして保持される。
【0070】
上記の構成によれば、貫通孔内周面139および軸体外周面165の面粗度を所定粗さよりも粗く形成するため、オイルFとの接触角を15°以下にすることができる。オイルFとの接触角Fを15°以下とすることにより、外部から携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受113から飛び出すことを防止できる。
【0071】
貫通孔内周面139および軸体外周面165に稜線部61が形成されているため、オイルFが稜線部61よりも外部へ濡れ広がることを防止できる。また、軸体133の軸体溝部166よりも上方の側面からロータ12の内面、および、アッパープレート136の上面167に、撥油層63形成されているため、オイルFが撥油層63よりも外側へ濡れ広がることを防止できる。
【0072】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図8および図11を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
本実施形態に係る流体動圧軸受210は、図8に示すように、記録媒体駆動装置201に適用されているものである。この記録媒体駆動装置201は、円環状に配列された電磁石213を備えるステータ211と、ステータ211の内側に配置された電磁石213に対向配置される永久磁石214を備えたロータ(軸体)216と、ステータ211に対してロータ216を回転可能に支持する流体動圧軸受210とから構成されるモータ217を備えている。ステータ211に備えられた電磁石213と、ロータ216に備えられた永久磁石214とにより、ステータ211に対してロータ216を回転駆動する駆動手段15が構成されている。
【0074】
ロータ216には、リング板状の記録媒体(図示せず)を嵌合させる嵌合部18が備えられているとともに、記録媒体を固定する押圧部材(図示せず)を取り付けるネジのネジ穴21が形成されている。
【0075】
ステータ211は、電磁石213の中央に配置されるボス部12を備えている。ボス部12に後述する流体動圧軸受210のスリーブ(支持体)222を嵌合させることにより、ロータ216に備えられた永久磁石214を電磁石213に対向配置させている。電磁石213と記録媒体との間には、電磁石213および永久磁石214により形成される磁界を遮断するシールド板223が配置されている。
電磁石213は、図8に示すように、三相交流を供給されることにより交番磁界を発生するコイル25と、コイル25が巻かれる複数枚の金属板からなるコアプレート226とから構成されている。
【0076】
図9は、図8の記録媒体駆動装置における流体動圧軸受の構成を示す断面図である。
本実施形態に係る流体動圧軸受210は、図9に示すように、上述したロータ216と、ロータ216を回転自在に支持するスリーブ222と、から概略構成されている。
少なくとも、これら流体動圧軸受210を構成するロータ216、スリーブ222、ステンレス鋼から形成されている。ロータ216、スリーブ222等をステンレス鋼から形成することにより、流体動圧軸受210の腐食や、錆の発生を防止することができる。
【0077】
ロータ216は、略円柱状のシャフト(柱状部)234と、シャフト234の一端において、その外周面に全周にわたって半径方向外方に延びる鍔状の円板部(軸体円板部)235と、円板部235の外周部から下方に向かって延びるヨーク252と、が一体的に構成されている。
円板部235のスリーブ222と対向する面には、後述するスラスト軸受部と対向するロータ対向面236が形成されている。ヨーク252のスリーブ222と対向する面には、後述するスリーブシール面に対向するロータシール面(接触面)237が形成され、ヨーク252には永久磁石214が保持される。ロータシール面237は、シャフト234の中心軸線と略平行な面として形成されている。
【0078】
ロータシール面237の下方には、後述するオイルに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
なお、ロータシール面237の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
シャフト234の外周面には、第1の実施形態と同様に、へリングボーン溝と呼ばれるラジアル動圧発生溝(図示せず)がシャフト234の軸線方向に2列並んで形成されている。これらラジアル動圧発生溝は、第1の実施形態におけるものと同様に形成されているため、その詳細な説明を省略する。
【0079】
スリーブ222は、シャフト234を回転自在に支持する円筒部238と、円筒部238の一端において、その外周面に全面にわたって半径方向外方に延びる鍔状のスラスト軸受部(支持体円板部)239と、から構成されている。
円筒部238の下方(図9中の下方向)の端部には、円筒部238の内部に袋部を形成するように底面が形成されている。
【0080】
図10は、本実施形態における流体動圧軸受のスラスト軸受部の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図である。
スラスト軸受部239の上端面には、図10に示すように、へリングボーン溝と呼ばれる多数のスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)247が形成されている。これらのスラスト動圧発生溝247は、半径方向内方から半径方向外方に向かって、半径方向に対し一方向に傾斜して円弧状に延びた後、途中位置(中途部)において屈曲し、逆方向に傾斜して外周縁まで延びている。スラスト動圧発生溝247の屈曲は、スラスト軸受部239の上端面における半径方向内方に寄った位置に形成されている。
【0081】
図11は、図10に示すスラスト動圧発生溝の別の実施形態を説明する図である。
なお、スラスト動圧発生溝247は上述のようにヘリングボーン溝として形成されていてもよいし、図11に示すように、オイルFを半径方向内方にポンプインするスパイラル溝として形成されていてもよい。ポンプインするスパイラル溝として形成されたスラスト動圧発生溝(動圧発生溝)247´は、半径方向内方に向かって、回転方向前方へ傾斜して形成されている。また、スラスト動圧発生溝247´は、内周縁の手前まで延びるように形成され、内周縁とは連通されていない。そのため、半径方向内方にポンプインされたオイルFは、スラスト動圧発生溝247´の内端において堰き止められることにより圧力を発生する。
なお、上述の回転方向とは、スラスト軸受部239と円板部235との相対的な回転方向のことである。
【0082】
円筒部238の下方には、図9に示すように、ステータ211のボス部12に嵌合されるスリーブ嵌合部241が形成され、スラスト軸受部239の外周面には、上述したロータシール面237との間にリング状の開放端部42を形成するスリーブシール面(接触面)243が形成されている。スリーブシール面243は、スリーブ嵌合部241に向かって半径方向内方に傾斜する傾斜面として形成されている。スリーブシール面243とロータシール面237との間には、リング状の開放端部42が形成され、開放端部42は、スラスト軸受部239に対して半径方向外方に隣接した位置に配置されている。
【0083】
スリーブシール面243とスリーブ嵌合部241との境目には、円環状に形成されたスリーブ溝部44が形成され、スリーブシール面243とスリーブ溝部44との境目には稜線部61が形成されている。また、スリーブ溝部44内には、後述するオイルに対して撥油性を示す撥油材がコーティングされた撥油層63が形成されている。
なお、スリーブシール面243の傾斜角は、ロータシール面237とのなす角が30°以下となる傾斜角であることが好ましい。さらに、スリーブシール面243の面粗度は、後述するオイルとの接触角が15°以下となる面粗度に加工されることが望ましい。
【0084】
このように構成された本実施形態に係る流体動圧軸受210、これを備えるモータ217および記録媒体駆動装置201の作用について、以下に説明する。
まず、モータ217を構成するコイル25に三相交流電流が供給されると、コイル25に交番磁界が発生する。この交番磁界が永久磁石214に作用することによりロータ216が一方向に回転され、ロータ216と一体に形成されたシャフト234および円板部235も一方向に回転される。
【0085】
このとき、シャフト234の周囲には、第1の実施形態と同様に、ラジアル動圧発生溝により動圧が発生し、シャフト234がスリーブ222の中心軸線位置にバランスして保持される。
また、スラスト軸受部239の上端面には、スラスト動圧発生溝247によりオイルFが半径方向内方へ引き込まれ、動圧が発生する。円板部235のロータ対向面236は発生した動圧により支持され、ロータ216が回転可能に支持される。このように、オイルFが半径方向内方に引き込まれることにより、開放端部42に存在するオイルFが半径方向内方へ引き込まれる。そのため、オイルFが開放端部42から外部に飛び出しにくくすることができる。
【0086】
上記の構成によれば、スリーブシール面243およびロータシール面237の面粗度を所定粗さよりも粗く形成するため、オイルFとの接触角を15°以下にすることができる。オイルFとの接触角Fを15°以下とすることにより、外部から携行端末装置などで加わると想定される衝撃が加えられても、作動液体が流体動圧軸受210から飛び出すことを防止できる。
【0087】
スリーブシール面243に稜線部61が形成されているため、オイルFが稜線部61よりも外部へ濡れ広がることを防止できる。また、スリーブシール面243のスリーブ溝部44内およびロータシール面237に、撥油層63形成されているため、オイルFが撥油層63よりも外側へ濡れ広がることを防止できる。
【0088】
なお、上述のように、スリーブシール面243およびロータシール面237に稜線部61および撥油層63を形成してオイルFの外部への濡れ広がりを防止してもよいし、ロータ216とスリーブ222との相対回転によりオイルFを内側へ押し込む方向に働くらせん状の溝を形成してオイルFの外部への濡れ広がりを防止してもよい。
【0089】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、流体動圧軸受をインナーロータ型のモータに適用して説明したが、このインナーロータ型のモータに限られることなく、アウターロータ型のモータなど、その他各種のモータに適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
【図2】図1の記録媒体駆動装置における流体動圧軸受の構成を示す断面図である。
【図3】図2の流体動圧軸受の構成を説明する拡大断面図である。
【図4】図1の流体動圧軸受のスラスト軸受部に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図である。
【図5】図4のスラスト動圧発生溝の別の形態を説明する平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
【図7】図6の流体動圧軸受の構成を説明する拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る記録媒体駆動装置の全体の構成を示す断面図である。
【図9】図8の記録媒体駆動装置における流体動圧軸受の構成を示す断面図である。
【図10】図8の流体動圧軸受のスラスト軸受部の端面に形成されたスラスト動圧発生溝を説明する平面図である。
【図11】図10に示すスラスト動圧発生溝の別の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0091】
1,101,201 記録媒体駆動装置
10,113,210 流体動圧軸受
15 駆動手段
16,112,216 ロータ(軸体)
17,110 モータ
18,118 嵌合部(固定部)
22,222 スリーブ(支持体)
33 抜け止め部(軸体)
34,234 シャフト(柱状部)
35,235 円板部(軸体円板部)
38 円筒部
39,239 スラスト軸受部(支持体円板部)
43,243 スリーブシール面(接触面)
47,47´,247,247´ スラスト動圧発生溝(動圧発生溝)
53 抜け止め部シール面(接触面)
61 稜線部(漏洩防止手段)
63 撥油層(漏洩防止手段、撥液層)
132 ハウジング(支持体)
133 軸体(柱状部)
134 スラスト軸受板(軸体円板部)
135 ハウジング本体(円筒部)
136 アッパープレート(支持体円板部)
139 貫通孔内周面(接触面)
165 軸体外周面(接触面)
237 ロータシール面(接触面)
F オイル(作動流体)
HD 記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱状に形成された柱状部を有する軸体と、
閉塞端を有し、前記柱状部を回転可能に収容する円筒部を有する支持体と、
少なくとも前記柱状部と前記円筒部との隙間に充填された作動液体と、を備え、
前記軸体および前記支持体の前記作動液体の液面近傍に配される接触面には、前記作動液体との接触角が15°以下となる接触角制御処理が施され、
前記接触面または前記接触面に隣接する面に前記軸体と前記支持体との隙間から前記作動液体が外部へ濡れ広がること防止する漏洩防止手段が備えられている流体動圧軸受。
【請求項2】
前記接触角制御処理が、前記接触面の面粗度を所定値より大きくする表面処理である請求項1記載の流体動圧軸受。
【請求項3】
前記漏洩防止手段が、前記軸体および前記支持体の面の上に設けられた前記作動液体をはじく材料からなる撥液層である請求項1または2に記載の流体動圧軸受。
【請求項4】
前記漏洩防止手段が、前記軸体および前記支持体の面から凸状に突出した稜線部である請求項1または2に記載の流体動圧軸受。
【請求項5】
前記軸体には、前記柱状部に支持されるとともに半径方向に延びる軸体円板部が設けられ、
前記支持体には、前記円筒部に支持されるとともに半径方向に延びる支持体円板部が設けられ、
前記軸体円板部と前記支持体円板部とが互いに対向するように配置されるとともに、前記軸体円板部または前記支持体円板部の対向面の少なくとも一方に、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向に引き込む動圧発生溝が形成され、
前記軸体円板部と前記支持体円板部とが前記接触面に隣接して配置されている請求項1から4のいずれかに記載の流体動圧軸受。
【請求項6】
前記動圧発生溝が、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向外方に引き込み、
前記軸体円板部と前記支持体円板部とが、前記接触面の半径方向外方に隣接して配置されている請求項5記載の流体動圧軸受。
【請求項7】
前記動圧発生溝が、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向内方に引き込み、
前記軸体円板部と前記支持体円板部とが、前記接触面の半径方向内方に隣接して配置されている請求項5記載の流体動圧軸受。
【請求項8】
前記軸体および前記支持体がステンレス鋼から形成されている請求項1から7のいずれかに記載の流体動圧軸受。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の流体動圧軸受と、
該流体動圧軸受の前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させる駆動手段と、を備えるモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のモータを備え、
前記軸体または前記支持体に記録媒体を固定する固定部が設けられている記録媒体駆動装置。
【請求項1】
略円柱状に形成された柱状部を有する軸体と、
閉塞端を有し、前記柱状部を回転可能に収容する円筒部を有する支持体と、
少なくとも前記柱状部と前記円筒部との隙間に充填された作動液体と、を備え、
前記軸体および前記支持体の前記作動液体の液面近傍に配される接触面には、前記作動液体との接触角が15°以下となる接触角制御処理が施され、
前記接触面または前記接触面に隣接する面に前記軸体と前記支持体との隙間から前記作動液体が外部へ濡れ広がること防止する漏洩防止手段が備えられている流体動圧軸受。
【請求項2】
前記接触角制御処理が、前記接触面の面粗度を所定値より大きくする表面処理である請求項1記載の流体動圧軸受。
【請求項3】
前記漏洩防止手段が、前記軸体および前記支持体の面の上に設けられた前記作動液体をはじく材料からなる撥液層である請求項1または2に記載の流体動圧軸受。
【請求項4】
前記漏洩防止手段が、前記軸体および前記支持体の面から凸状に突出した稜線部である請求項1または2に記載の流体動圧軸受。
【請求項5】
前記軸体には、前記柱状部に支持されるとともに半径方向に延びる軸体円板部が設けられ、
前記支持体には、前記円筒部に支持されるとともに半径方向に延びる支持体円板部が設けられ、
前記軸体円板部と前記支持体円板部とが互いに対向するように配置されるとともに、前記軸体円板部または前記支持体円板部の対向面の少なくとも一方に、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向に引き込む動圧発生溝が形成され、
前記軸体円板部と前記支持体円板部とが前記接触面に隣接して配置されている請求項1から4のいずれかに記載の流体動圧軸受。
【請求項6】
前記動圧発生溝が、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向外方に引き込み、
前記軸体円板部と前記支持体円板部とが、前記接触面の半径方向外方に隣接して配置されている請求項5記載の流体動圧軸受。
【請求項7】
前記動圧発生溝が、前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させた際に作動液体を半径方向内方に引き込み、
前記軸体円板部と前記支持体円板部とが、前記接触面の半径方向内方に隣接して配置されている請求項5記載の流体動圧軸受。
【請求項8】
前記軸体および前記支持体がステンレス鋼から形成されている請求項1から7のいずれかに記載の流体動圧軸受。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の流体動圧軸受と、
該流体動圧軸受の前記軸体と前記支持体とを相対的に回転させる駆動手段と、を備えるモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のモータを備え、
前記軸体または前記支持体に記録媒体を固定する固定部が設けられている記録媒体駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−266367(P2006−266367A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84240(P2005−84240)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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