説明

流体回路用制御弁、およびこの弁を備える回路

【課題】
【解決手段】 本発明は、円筒形ハウジングを形成する円筒形側壁(4)を備える本体(2)を有する流体循環系用の制御弁に関する。また本発明は、流体が前記本体(2)に出入りするための管(50)(52)(60)(62)(58)を備えている。回転調整要素(80)は、本体(2)内に軸(XX)を中心に回転可能に、そして、管同士の間の流体の循環を制御するよう、異なる位置を取ることができるように取り付けられている。前記管は、すべて本体(2)の円筒形側壁(4)を貫通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体回路用、特に自動車の内燃エンジン用の冷却回路用の多方向弁の分野に関する。また、この弁を備える流体循環回路、例えば自動車の内燃エンジン用冷却回路にも関する。
【背景技術】
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、円筒形ハウジングを形成する円筒形側壁を有する本体と、流体が本体に出入りするための少なくとも2本の管と、軸を中心として、本体の円筒形ハウジング内に回転するように取り付けられ、さまざまな角度位置で、管同士の間の流体の循環を制御できるように構成されている回転調整装置とを備える流体循環回路用制御弁に関する。
【0003】
この種の弁は、公知であり、流体吸入口が開口する端壁と、回転軸を中心として、回転可能な調整装置の回転軸に対して選択した軸方向の段位置、および角度位置に、複数の流体出口が開口する円筒形側壁を有する本体を備えている。
【0004】
この種の弁には、多くの不利益な点がある。まず、その全体的な寸法が大きい。さらに、流体用として、多数の循環路を接続することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した不都合を克服した流体循環回路用制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、すべての管が、本体の円筒形側壁に開口している本発明により達成することができる。
【0007】
この特徴により、弁の全体的な寸法、特に全体的な軸方向の寸法が小さくなる。さらに、円筒形の周囲に多数の通路を接続することができる。従って、従来の多数の弁、例えば2つの4方向弁を、本発明による1つの制御弁に置き換えることができる。
【0008】
好ましい実施形態では、管は、円筒形側壁に対して放射状に配置されている。
【0009】
このような配置により、形成可能な弁通路の数を、さらに増加することができる。
【0010】
これら管は、ある1つの段に配設することができる。
【0011】
しかし、ある実施形態では、管を複数段に配設してある。
【0012】
従って、管を、2段、3段、またはそれ以上の段に配設することができる。この実施形態は、弁が多数、例えば、6本以上の通路を有する場合に、特に適している。これにより、軸線方向の全体寸法と、弁の直径方向の全体寸法を小さくすることができる。
【0013】
さらに、本発明は、流体循環回路に関し、特に、自動車の内燃エンジン用冷却回路に関する。この回路には、循環ポンプの動作によって、閉回路で循環する冷却流体が横切っている。この冷却回路は、エンジンを冷却するためのラジエータを有する分岐路と、エンジンを冷却するためのラジエータのバイパスを構成する分岐路と、車室を加温するために使用されるユニットヒータとしても知られる、ラジエータを有する分岐路などを含む、多くの分岐路を有する。
【0014】
本発明は、本発明による制御弁を備える流体回路に関し、その管は、回路の各種分岐路に接続されている。ある実施形態によると、回路は、自動車の内燃エンジンを冷却するための高温回路の形態で提供され、流体を循環させるための主ポンプと、ユニットヒータを含むバイパスラインと加熱ラインと、低温ポンプを備えた低温回路と、高温冷却回路と恒久的に一体化された高温熱交換部と、低温冷却回路と恒久的に一体化された低温熱交換部と、高温熱交換回路または低温熱交換回路のいずれかと一体化可能な割り当て可能部とから構成される熱交換モジュールとを備え、制御弁は、エンジンの動作パラメータによって熱交換モジュールと、高温回路と、低温回路とに、割り当て可能な熱交換部を高温回路または低温回路と一体化できるように接続されている。
【0015】
本発明の付加的または、それに取って代わる特徴について、次に述べる。
−回転調整装置は、互いに連通する2つ以上の管を載置可能なポケットを有している。
−弁は、本体の円筒形側壁と回転調整装置の間に位置する円筒形密封環を備えている。
−回転調整装置は、凸型面取り形状であり、密封環は、回転調整装置と相補形状の凹型面取り形状である。
−環は、弁の本体に対して、環を回転不可能とするための停止手段を有する。
−停止手段は、本体に形成された対応するハウジングに嵌合しうる隆起部を備えている。
−流体回路を互いに隔離するために、回転調整装置の少なくとも1つのポケットの周りに、シール、例えばOリングシールが配設されている。
−弁は、2段に配設されている7本の管を備えている。
−1つの段に、3本の管を備え、もう1つの段に、4本の管を備えている。
−回転調整装置に、3つのポケットを備えている。
−回転調整装置は、別の貫通導管を有する。
【0016】
本発明による弁は、2つの段を有し、それぞれが3つの通路を有し、また、回転調整装置はポケットを有しているので、その角度位置によって、前記通路を対に連通させることができる。前記ポケットの全体または一部は、前記回転調整装置の回転軸に対して、ほぼ平行または傾斜しており、2つの異なる段の通路を連通させている。
【0017】
実施形態によると、放射方向および軸方向の全体寸法において、特に有利な六方向弁を得ることができる。
【0018】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面に基づいて例示する下記の実施の形態の説明によって、明らかとなると思う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1から図4は、本発明による制御弁の第1の実施形態を示す図である。弁は、全体を2で表す本体を有し、円筒形側壁4と端壁6(図4)を備えている。本体2は、軸XXを中心とした回転によって生成される一般的な形状である。本体2は、軸XX(図2)の円筒形ハウジング10内に放射状に開口する6つの管8を有する。
【0020】
ここで示す実施形態では、管8の軸12は、同一平面上に位置している(図3)。さらに管は、円筒形側壁4の円周上に、互いに60度の間隔を空けて均等に配置されている。これらの特徴は、必須ではなく、管8は、同一平面上になくてもよく、また、円筒形側壁4の円周上に均等に配置されていなくてもよい。しかし、本発明の重要な特徴によると、管8は、すべて円筒形側壁4に開口しており、端壁6(図4)に位置するものはない。
【0021】
円筒形ハウジング10内には、回転調整装置14が収容されており、その直径は円筒形ハウジング10(図2〜図4)の内径とほぼ等しい。回転調整装置14からは、軸XXに沿ってロッド16が延出している。このロッド16は、制御弁の本体2のフランジ20に固定ねじ22によって、間にOリングシール24を介してネジ止めされている円形カバー18に属する中央開口を貫通している(図2参照)。
【0022】
回転調整装置14は、例えば、回転調整装置14を逐次増分で、あるいは連続的に、さまざまな異なる位置に移動可能なステッパモータで構成するのが好ましい駆動手段(図示せず)によって、軸XXを中心として回転可能である。
【0023】
回転調整装置14は、互いに連通させて管8を載置できるポケット26(例では3つ)を有する。これらのポケットは、回転調整装置14の周囲で開口するように切り欠くことによって形成される。よって、図3に示すように、管8は、対をなして配置される。これらは、ポケット26を介して互いに連通する。従って、各対のうちの一方の管を、流体の入り口とし、対のうちの他方の管を、この流体の出口とすることができる。回転調整装置をいずれかの方向に60度回転させることにより、隣接する異なる2本の管を連通させることができる。
【0024】
密封環30を、回転調整装置14と本体2(図2)の円筒形側壁4の間に介在させる。回転調整装置14は、凸型面取り形状であり、密封環30は、回転調整装置14と相補形状の凹型面取り形状であると有利である。これにより、弁の本体2に対して、回転調整装置14は、自動的に中心合わせされることになる。
【0025】
自動中心合わせにより、弁を希望の角度位置に位置させることが可能となる。これにより、密封に必要な摩擦面も最低限とすることができ、操作力を制限できる点が有利である。回転調整装置14は、いかなる部分においても本体2と接触することはない。
【0026】
密封環30(図2)は、管8(例では6本)の入り口または出口に対応する円形の開口32を有する。開口32は、環30と本体2との間を密閉するためのリップシールを備えている。さらに、密封環30の非機能部に開口34を設け、回転調整装置14に取り付け、および成形品の型からの取出しがしやすいように構成されている。また、密封環30は、弁の本体2のハウジング(図示せず)に収容される隆起部36を有しており、密封環30が本体に対して回転しないように構成されている。
【0027】
図5〜図11は、本発明による制御弁の第2の実施形態を示す。この弁は、吸入管および排出管が複数段であり、この例では、2段に配設されている点が上記の弁と異なる。
【0028】
第1の実施形態の場合のように、弁は、端壁6と軸XXの円筒形側壁4によって形成される円筒形本体2を有する。円筒形側壁4は、円筒形ハウジング10を形成する。ハウジングは、ねじ32(例では4個)によって、本体2の一部を形成するフランジ、またはカラー20に固定されるカバー18で閉鎖されている。シール、例えばOリングシール24が、カバー18とフランジ20の間に介在されている。
【0029】
本発明の重要な特徴によると、本体2は、円筒形側壁4上にすべて配置された7本の管を有する。この実施形態では、管は、本体の端壁6に近いことから、下段とも呼ばれる第1の段と、本体2の開口およびカバー18により近いことから、上段とも呼ばれる第2の段との2段に配設されている。
【0030】
第1の段には、4本の管が配置されている。これらの管は、図面において、それぞれ50、52、54、56で示してある。3本の管が、第2の段、すなわち上段に配置されている。また、図面では、これら3本の管を、58、60、62で示してある。
【0031】
管50および58は、互いに繋がっている。管50は、下段の一部を形成し、管58は、上段の一部を形成している。従って、これら2本の管は、下段と上段の間を連通することになる。さらに、管60および62は、共に上段に属し、互いに対をなしている。
【0032】
回転調整装置の全体を、80で示してあり(図10および図11)、本体2の円筒形ハウジング10の内側に配置されている。本体2の長手の軸XXを中心に回転するように取り付けられている。
【0033】
装置80は、軸XXのほぼ円筒形の中空本体82を有する。本体82からは、軸XXに沿ってロッド26が延出している。このロッド26は、カバー18に属する中央開口27を貫通している。Oリングシール17(図10参照)が、ロッド26と開口27との間に介在されている。前述のように、回転調整装置80は、逐次増分で、あるいは連続的に、さまざまな異なる角度位置に移動可能な駆動手段(図示せず)によって、軸XXを中心として回転可能である。
【0034】
3つのポケットが、円筒形本体82の内部に形成されている。これらのポケットは、84、86、88で示されている。ポケット84は、2段にわたって存在し、管50および58を互いに連通させることができるようになっている。また、管52とも連通させることができる。
【0035】
同様に、ポケット86も、2段にわたって存在し、略L字型をなしている。管54および62(図14参照)、そして管54および56(図15参照)を、連通させて配設することもできる。
【0036】
第3のポケット88は、回転調整装置80の本体の上段にのみ位置し、管60および62を連通させて配設することができる(図15参照)。
【0037】
最後に、回転調整装置80は、例では、直径方向に貫通する貫通導管90を有する。導管90は、回路のうちの一つを、部分的に別の回路に切り替えるために設けられたものであり(図14、図15参照)、回転調整装置80の下段に位置している。
【0038】
全体を100で示す密封環は、回転調整装置80と本体2の円筒形側壁4の間に介在されている。回転調整装置80に形成されたポケットの数に相当する形状および数の開口が、密封環100(図10)に設けられている。回転調整装置はポケットを3つ有しているため、密封環も、これらのポケットそれぞれに合わせて、3つの開口を有する。
【0039】
これらの開口は、102、104、および106で表してある。開口102は、ポケット84に対応し、開口104は、ポケット86に対応し、開口106は、ポケット88に対応している。さらに、導管90の両端に対応する2つの円形の開口110が、密封環100に設けられている。
【0040】
密閉手段が、上記のそれぞれの開口の周囲に設けられている。これらの密封環は、例えばリップから構成することもできる。しかし、この例では、シール112(図10)のようなOリングシールで構成してある。
【0041】
図12および図13は、流体循環回路を示す。この回路は、一方では、自動車の内燃エンジン121の高温冷却回路120から構成されており、他方では、自動車の設備124、例えば自動車の車室用の空調機回路の一部を形成するインタークーラ、またはコンデンサの冷却を目的とする低温冷却回路122から構成されている。
【0042】
高温冷却回路120には、高温主循環ポンプ126によって循環されるエンジン121を冷却するための流体が流れており、この流体は、エンジンによって加熱され、3方向弁130の吸入口に接続された排出口128を介して、エンジンを出る。弁130は、高温冷却回路の3本の分岐路、すなわち、後で説明する高温冷却ラジエータを備える分岐路132と、冷却ラジエータのバイパスを形成する分岐路134と、車室を加温するために使用されるユニットヒータ138を備える分岐路136に接続された3本の管を有する。
【0043】
弁130により、上記の分岐路に流れる流体の流れを制御して、内燃エンジンの温度と車室の温度を最適にすることができる。エンジンをコールドスタートする場合、流体は、ラジエータを通らずに、バイパス分岐路134内を循環する。この始動段階において、車室を暖めたい場合には、流体の流れの全体もしくは一部を、ユニットヒータ138の中に通すことができる。流体の温度が所定の閾値に達するが、もしくは超えると、流体は高温冷却ラジエータ内に入る。
【0044】
低温冷却回路122は、低温循環ポンプ140によって流体が循環されるループを有する。流体は、例えば自動車の車室用空調機回路の一部を形成するインタークーラ、またはコンデンサなどのような先に説明した熱交換機124を通る。そして低温交換機142で冷却される。
【0045】
図12および図13の流体循環回路は、2列の熱交換チューブによって形成された熱交換モジュールを有する。
【0046】
これらの列のうち第1の列は、上記の低温冷却ラジエータ142を構成している。この列の管は、恒久的に低温冷却回路122と一体化されている。第2の列の管の形成方法は、第2の管の列が2つの部分に分割されているという点が例外的であり、144の部分が、高温冷却回路120、特に内燃エンジン121を冷却するために使用する高温熱交換部を構成する部分となる。区分144は、高温冷却回路120と恒久的に一体化されている。
【0047】
さらに、熱交換モジュールの第2の管の列は、割り当て可能な熱交換部146を備えている。この割り当て可能な部分は、高温冷却回路120または低温冷却回路122のいずれかと一体化することができる。冷却液のある温度の値、例えば105℃以下では、割り当て可能な熱交換部146は、低温冷却回路の一部を形成する。よって、この回路の冷却能力が上がってその出力を改善する、例えば、空調回路の出力を改善することができる。
【0048】
エンジン冷却流体の温度が、限界値を超えると、内燃エンジン121用に冷却能力を上げる必要がある。図13に示すように、割り当て可能な熱交換部146が、高温冷却回路と一体化されているのはそのためである。そのため、流体循環回路は、2つの4方向弁150を有している。
【0049】
図12に示すように、2つの4方向弁150は、ループ122内を巡回する冷却流体が、低温熱交換機を構成する熱交換列142に入る前に、割り当て可能な熱交換部に入るように接続されている。従って、熱交換領域は、割り当て可能な区分146と管142の列の合計からなっている。
【0050】
それとは逆に、冷却流体用の限界温度を超える操作に対応する図13の構成においては、四方向弁150は、低温冷却回路122の流体が割り当て可能な熱交換部146を迂回して、バイパスライン152を通るように方向付けられている。さらに、矢印156で示すように、四方向弁150は、冷却流体の一部を高温冷却回路120から、分岐路154を通って、熱交換部146まで向かうようにすることが可能である。よって、高温部144と割り当て可能な熱交換部146は、平行に取り付けられ、それらの冷却能力を合わせて、自動車の内燃エンジン121を冷却することができる。
【0051】
しかし、図示のように、この実施形態では、高温冷却回路120と低温冷却回路122を相互接続するために、2つの弁150が必要である。そのため、追加のコストがかかり、複雑性が増すとともに、全体的な寸法が大きくなる。
【0052】
本発明の制御弁は、2つの四方向弁150を、単一の弁で置き換え可能であり、コスト、全体的な寸法ともに下げることができるため、この型に適用する際に非常に有利である。
【0053】
図14および図15は、図12および図13に示した回路と類似する高温冷却回路120と、低温冷却回路122を構成する流体循環回路を示しており、流体循環回路における2つの四方向弁150が、本発明による単一の制御弁に代わっている。
【0054】
図12〜図15では、流体循環回路の同一部品には、同じ符号を付してある。
【0055】
本発明の制御弁は、図5〜図11に示した上記の実施形態のようなものである。よって、この弁の管は、2段、すなわち160で示す下段と、162で示す上段(図14および図15)に配設されている。
【0056】
図をわかりやすくするため、段160および162は、互いに離して示してある。これは、あくまでも略図であり、実際これらの2段は、この実施形態による本発明の弁について、これまでの説明で述べてきたように、互いに上下に配置されている。
【0057】
図14は、図12に示す回路の構成に相当している。すなわち、内燃エンジンを冷却するための流体の温度が限界値を、例えば105℃を下回る場合を示している。この構成では、高温冷却ラジエータは、上記の熱交換モジュールの熱交換チューブの第2の列の部分を形成する高温熱交換部144のみからなっている。その結果、熱交換モジュールの管の第2の列を完成させる割り当て可能な熱交換部146は、低温冷却回路122の一部を形成している。
【0058】
三方向温度自動調節弁130は、冷却流体が分岐路132に向かい、本発明の制御弁の下段160の一部を形成する管50に向かうように方向付けられている(矢印133)。冷却流体は下段160から、先に説明したように、これら2段を互いに連通させることができるポケット84を通って、上段162まで通過する。
【0059】
流体は、排出管を構成する管58を通りぬけ、ライン170により、高温熱交換部144に向かって、方向付けられる(矢印172)。冷却されると、流体は、従来のとおり、エンジン121に戻る。このようにして、流体の循環が繰り返される。
【0060】
低温冷却回路122に関する限り、低温循環ポンプ140によって移動した冷却流体は、熱交換機124、例えば、空調回路コンデンサを通り抜ける。この場合には、吸入管を構成する管56を通って、本発明の制御弁の下段160に入る。流体は、導管90を通って、回転調整装置80を通り抜け、矢印174に示すように、排出管を形成する管52に入る。
【0061】
そして、流体は、矢印176で示すように、割り当て可能な熱交換部146に入り、この熱交換部を通り抜けた後、管62を通って、制御弁の上段162に入る。
【0062】
この冷却回路の構成では、回転調整装置80は、ポケット86が吸入管62に対向するように、角度方向が定められている。上記のように、ポケット86は、流体をある段から、別の段に通過させることができる。この例では、上段162から下段160に通過させることができる。よって流体は、矢印178で示すように、排出管を構成する管54を通って排出され、低温熱交換器142、さらに詳しくは、やはり回路122の一部を形成する低温冷却ラジエータを構成する熱交換モジュールの管の列に入る。
【0063】
そして流体は、同じ回路を繰り返し流れる。図示のごとく、また、図12を参照しながら説明したように、管142の束、および割り当て可能な熱交換部146は、直列に取り付けられ、低温冷却流体が連続的に横切るように構成されており、それらの冷却能力は合計される。
【0064】
図16は、回転調整装置80を、図14と同じ角度位置で示した本発明の制御弁の断面図である。図16では、ポケット84によって、管50と管52がどのように連通するかがわかる(矢印180)。
【0065】
図15では、冷却流体の温度が、上記所定の限界値、たとえば105℃を上回る構成にある場合の図14の冷却回路を示している。この構成では、自動車の内燃エンジン121をさらに強力に冷却する必要がある。そのため、割り当て可能な冷却能力146を、低温冷却回路122から高温冷却回路120に移す必要がある。
【0066】
三方向温度自動調節弁130は、流体が分岐路132を通って、本発明の制御弁の下段160の一部を形成する吸入管50に循環するように、方向付けられている(矢印133)。しかし、この構成では、調整装置80の角度方向が異なる。管50および58が、まだポケット84に対向している。
【0067】
しかし、この構成では、ポケット84は、吸入管50を同時に管58および54と連通する。従って、1本の吸入管、すなわち管50と、2本の排出管、すなわち管54および56がある。この例では、管は、排他的に対をなして連通しているのではなく、1本の管が、2本の異なる管と同時に連通して配置されている。
【0068】
他の実施形態では、多数の吸入管が、単一の排出管と連通する逆の状態にすることもできる。一般的に、回転調整装置80の1つのポケットは、1つの吸入管を、2つもしくはそれ以上の排出管と連通させることもできる。結果的に、上記のように、冷却流体は、排出管58を介して、上段162からが出て、高温熱交換部144を通過する。
【0069】
しかし、さらに、冷却流体の一部は、排出管52から出て高温熱交換部144と平行して配置された割り当て可能な熱交換部146を通過する。この循環は、図13に関して説明した状態とまったく同じである。よって、すでに説明したごとく、平行に配置した冷却能力144および146は、合計されて、エンジンをさらに強力に冷却することができる。
【0070】
低温冷却回路122に関する限り、低温循環ポンプ140によって循環される冷却流体は、熱交換機124を通り抜け、吸入管56を通り、回転調整装置80が図15に示すような角度方向に位置する状態で、制御弁の下段160に入る。ポケット86により、管56は管54と連通し、流体は、流体回路の熱交換モジュールの低温加熱部142に入るようになる(矢印178)。
【0071】
図17は、回転調整装置80が、図15と同じ角度位置にある状態における制御弁の断面図である。
【0072】
割り当て可能な熱交換部を通った後、流体は、上段162に位置する吸入管62を通って弁に入り、さらに装置80のポケット88に入り、戻る前に、従来のように排出管を構成する管60を通って出て、高温循環ポンプ126に向かって、もう一度車両の内燃エンジン121を通る。そしてこの流体の循環が、繰り返される。
【0073】
本発明の弁に適用可能なさまざまな実施形態、およびその適用要領は、上記のタイプの流体回路に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の制御弁の斜視図である。
【図2】図1に示した弁の分解図である。
【図3】図1および図2に示す弁の断面図である。
【図4】図3に示す弁の線IV−IVに沿う断面図である。
【図5】管を2段に配置した、本発明による弁の第2の実施形態の外観図である。
【図6】図5に示す弁の左側面図である。
【図7】図5に示す弁の後面図である。
【図8】図5〜図7の弁の斜視図である。
【図9】図5〜図7の弁の斜視図である。
【図10】図5〜図9に示す弁の分解図である。
【図11】図6の線XI−XIに沿って切った断面図である。
【図12】四方向弁を2個備える、自動車の内燃エンジンの冷却回路の図である
【図13】図12に示す冷却回路の別の動作構成を示す図である。
【図14】図12の回路と同じ構成で示す、本発明による制御弁を備える自動車の内燃エンジン用冷却回路の図である。
【図15】図14の冷却回路を、図13の冷却回路と同じ構成で示した図である。
【図16】図6の線XVI−XVIに沿って切った断面図を、図14の構成で示した図である。
【図17】本発明の2方向制御弁を、図15の回路に相当する構成で示した、図16と同等の断面図である。
【符号の説明】
【0075】
2、82 本体
4 円筒形側壁
6 端壁
8、50、52、54、56、58、60、62 管
10 ハウジング
14、80 回転調整装置
16、26 ロッド
17、24 Oリングシール
18 カバー
20 フランジ
22 固定ねじ
27、34、102、104、106、110 開口
36 隆起部
84、86、88 ポケット
90 導管
120 高温冷却回路
121 内燃エンジン
122 低温冷却回路
124 熱交換機
126 高温循環ポンプ
128 排出口
130 三方向温度自動調節弁
132、134、136、154 分岐路
138 ユニットヒータ
140 低温循環ポンプ
142 低温交換機、低温熱交換機、低温冷却ラジエータ、管
144 区分、高温部、高温熱交換部
146 熱交換部
150 四方向弁
152 バイパス線
160 下段
162 上段
170 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形ハウジング(10)を形成する円筒形側壁(4)を有する本体(2)と、流体が本体(2)に出入りするための少なくとも2本の管(8)(50)〜(62)と、本体(2)の円筒形ハウジング(10)に軸(XX)を中心として回転可能に取り付けられ、さまざまな角度位置を取ることにより、管の間の流体の循環を調整しうる回転調整装置(14)(80)とを備え、前記すべての管が、円筒形側壁(4)内に開口していることを特徴とする流体循環回路用制御弁。
【請求項2】
管が、円筒形側壁(4)に対して放射状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弁。
【請求項3】
管が、1段に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
管が、1段以上(160)(162)に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弁。
【請求項5】
回転調整装置(14)(80)が、2本以上の管を互いに連通させることができるためのポケット(26)(84)(86)(88)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の弁。
【請求項6】
本体の円筒形側壁(4)と回転調整装置(14)(80)の間に位置する密封環(30)(100)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の弁。
【請求項7】
回転調整装置(14)(80)が、凸型面取り形状を有し、密封環(30)(100)が、回転調整装置(14)(80)と相補形状の凹型面取り形状を有することを特徴とする請求項6に記載の弁。
【請求項8】
密封環(30)(100)は、本体(2)に対して密封環(30)(100)を回転不可能とするための停止手段(36)を有することを特徴とする請求項6または7に記載の弁。
【請求項9】
停止手段は、本体(2)の対応するハウジングに嵌合する隆起部(36)を備えていることを特徴とする請求項8に記載の弁。
【請求項10】
回路を互いに隔離するために、回転調整装置(14)(80)の少なくとも一つのポケットの周りに、シール(112)、特にOリングシールが配設されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の弁。
【請求項11】
2段(160)(162)に配設されている7本の管(50)(52)(54)(56)(58)(60)(62)を備えている請求項1〜10のいずれかに記載の弁。
【請求項12】
1つの段(160)に、4本の管(50)(52)(54)(56)を備え、他の段(162)に、3本の管(58)(60)(62)を備えていることを特徴とする請求項11に記載の弁。
【請求項13】
回転調整装置(80)は、3つのポケット(84)(86)(88)を備えていることを特徴とする請求項11または12に記載の弁。
【請求項14】
回転調整装置(80)は、追加的に貫通導管(90)を有することを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の弁。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の制御弁を備える流体回路であって、弁の管が、この回路の様々な分岐路に接続されていることを特徴とする流体回路。
【請求項16】
自動車のエンジン(121)の高温冷却回路(160)の形態として形成され、高温循環ポンプ(126)と、ユニットヒータ(138)を有するバイパスライン(134)および加熱ライン(136)と、低温ポンプ(122)を備える低温冷却回路(122)と、高温冷却回路(120)を恒久的に一体化されている熱交換部(144)と、低温冷却回路(122)を恒久的に一体化されている低温熱交換部(142)と、高温冷却回路(120)または低温冷却回路(122)とのいずれかと一体化可能な割り当て部分(146)を有する熱交換モジュールとを備え、弁は、自動車の内燃エンジン(121)の動作パラメータによって、熱交換モジュールと、高温冷却回路(120)と、低温冷却回路(122)とに接続されることにより、割り当て可能な熱交換領域が、高温冷却回路(120)または低温冷却回路(122)のいずれかと一体化されていることを特徴とする請求項15に記載の回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図17】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−512540(P2006−512540A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537226(P2004−537226)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002761
【国際公開番号】WO2004/027269
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(591054082)
【氏名又は名称原語表記】VALEO THERIQUE MOTEUR
【Fターム(参考)】