説明

流路切替弁及びそれを備えた内燃機関

【課題】比較的高圧の駆動用ガスを用いて、第1流路と第2流路とを高速で選択的に切り替えて第3流路に連通させることができる流路切替弁及びそれを備えた内燃機関を提供する。
【解決手段】第1流路51と第2流路52をケース54内の一方側に設け、第3流路53を前記第1流路51と前記第2流路52の両方に対向して前記ケース内54の他方側に設けると共に、前記第1流路51と前記第3流路53との間と、前記第2流路52と前記第3流路53との間を交互に連通及び閉鎖するようにスライドするシャッター部材55を設け、該シャッター部材55を駆動用ガスApで駆動するピストン56でスライドさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動用の高圧ガスを用いて、高圧側ガスの流路と低圧側ガスの流路とを高速で切り替えることができる流路切替弁及びそれを備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減するEGR(排気再循環)においては、過給システムを備えた内燃機関では、高圧EGR方式と低圧EGR方式とがある。この高圧EGR方式では、例えば、図16に示すように、高圧EGRシステムを備えた内燃機関1Xでは、ターボ式過給機14よりもエンジン本体11側にEGR通路17が設けられており、エンジン本体11の排気マニホールド11bから吸気マニホールド11aにEGR通路17経由でEGRガスGeを還流している。また、低圧EGR方式では、例えば、図17に示すように、低圧EGRシステムを備えた内燃機関1Yでは、ターボ式過給機14よりもエンジン本体11とは反対側にEGR通路17が設けられており、タービン14bの下流側からコンプレッサ14aの上流側にEGR通路17経由でEGRガスGeを還流している。
【0003】
これらのいずれのEGR方式でも、EGRガス量の制御には、MAF制御方式が一般的に使用されている。このMAF制御方式では、EGR無しでエンジンのシリンダ内に吸入される新気量(空気量)をMoとし、EGRを行うことでシリンダ内に吸入される新気量をMeとすると、還流されるEGRガス量のMegrがMegr=Mo−Meとなるので、これに基づいて、EGR弁21の弁開度により新気量Meを制御することで、EGRガス量Megrを制御している。
【0004】
つまり、エンジンの回転速度Neと燃料負荷Qをパラメータにして、各エンジンの運転状態に対する新気量Meを予め設定して作成した新気量Meのデータマップを基に、実際のエンジン運転時の回転速度Neと燃料負荷Qから目標の新気量Metを算出して、実際の新気量Meをこの目標の新気量Metになるように制御することで、EGRガス量Megrを制御している。
【0005】
しかしながら、ターボ式過給機を使用する場合には排気ガスのエネルギー(エンタルピ)を用いて過給を行うため、ターボ式過給機の応答遅れ(ターボラグ)を無くすことは不可能であり、このMAF制御方式では、このターボラグに起因する次のような問題がある。ターボラグにより負荷が急激に増加する過渡運転状態では、過給圧が定常運転時に設定した圧力まで上昇しないため、エンジンの吸入空気量が低下する。つまり、ターボ式過給機付きエンジンでも無過給エンジンと同程度の吸気量となってしまう。
【0006】
従って、定常運転条件で設定した目標のEGR量に達成することができず、図18に示すように、急激な過渡運転を行う際にNOxの排出量が増加する。また、煤の発生量を制限するために、過給圧があるレベルより上がらない場合には燃料の投入量が煤が増加しない領域内に抑えられるというスモークリミット制御が行われる。その結果、図19及び図20に示すように、燃料噴射量Qと空気量(Mo、Me)が共に点線で示されるように抑えられ、加速時のパワーが抑えられてしまうという問題がある。そのために、加速時等の負荷が急激に増加する過渡運転時には、NOx排出量の増加や燃費の悪化が発生する。
【0007】
一方、エンジンのクランクシャフト等によって、過給機を直接駆動して過給を行う機械式過給装置を使用する場合では、過給の応答遅れをなくす事ができるが、エンジンの回転速度が決まると燃料量の多少に関わらず、過給量が決まるために、また、駆動に要する仕事量が大きいために、燃費が悪化するという問題がある。
【0008】
この対策として、近年では、図21に示すような蓄ガス供給システムを備えた内燃機関1Zが研究されており、この蓄ガス供給システムでは、内燃機関1Zから排出される排気ガスGの一部Gpを空気Aaと混合した混合ガスCを容積型コンプレッサ(排気圧縮器)25で圧縮して高圧化し、この高圧化した混合ガスCを蓄ガス容器(圧力容器)27内に溜め込み、過渡時に放出電磁弁36を開弁して混合ガスCを調圧弁29経由で吸気弁(吸気スロットル)35の下流の吸気通路12に放出し、これにより、内燃機関1Zのシリンダ内への吸気量を過給機付きエンジン並みに増加させると共に、EGRの効果によるNOxの低減を図り、ターボラグの問題を解消している過給制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この蓄ガス供給システムを採用した場合は、過渡時に加圧された混合ガスCをエンジン1Zの吸気通路12内に放出することで過給圧を上げて、シリンダ内への空気量を増加させることができるので燃料量も増やすことができる。その結果、加速性能が向上し、煤の排出も抑えることができる。また、過給圧は排気マニホールド11bの内圧よりも高くなるので、内燃機関1Zのポンピング損失が低下し燃費の向上を図ることができる。
【0010】
この蓄ガス供給システムにおける技術的に最も重要な点の一つに、蓄ガス供給通路側と吸気通路との合流部で、蓄ガス供給通路側と吸気通路の下流側との連通から、吸気通路の上流側と吸気通路の下流側との連通へ、または、逆に、切り替えるための流路切替弁がある。
【0011】
この流路切替弁では、蓄ガス容器からエンジンのシリンダ内へ蓄圧されたガスを供給する場合には、吸気通路の上流側を確実に閉じる必要があり、蓄ガス供給通路側の弁が開き出したときに吸気通路の上流側の弁が高速で閉まらないと、つまり、二箇所の弁が同時に開いている時間が長い程、蓄圧されたガスが吸気通路の上流側の弁の隙間を通じて大気側に逃げてしまうので、エンジンの吸気通路の下流側の過給圧が上がらなくなってしまう。
【0012】
また、蓄ガス容器の蓄圧されたガスを用いた過給条件が解除されて、通常の吸気通路の上流側と吸気通路の下流側を連通させた状態に戻る場合には、蓄ガス供給通路側の弁が閉じたときに吸気通路の上流側の弁がまだ全開にならないと、吸気通路の上流側の吸気抵抗が増加してエンジンの吸気量が大幅に低下するので、エンジンのパワー、燃費、排ガス等に関するエンジン性能が悪化する。
【0013】
流路切替弁でこれらの状態が、車両が他の車線に合流するために加速したときに発生すると、車両の加速性能が低下してしまうので、これを回避する必要がある。このように、蓄ガス供給通路側と吸気通路の上流側のラインを遮断する二箇所の弁の切替を高速で行うことが重要な課題となっている。
【0014】
なお、三方切替弁として、例えば、一つの駆動手段と複数の三方切替手段の弁体を連結し、駆動手段により複数の弁体を連動して動かす一体式切替弁がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2011−21558号公報
【特許文献2】特開2000−193127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
一方、本発明者は、次のような知見を得た。つまり、実際の車両に、蓄ガス供給システムを搭載する場合に、流路切替弁の駆動を高速で行うためには、圧縮空気等の比較的高圧のガスを用いることが有効であり、駆動源となるガスとして過給に用いる蓄ガス容器内に蓄圧されたガスを用いることが有効である。
【0017】
この場合に、蓄ガス供給通路からガスをエンジンのシリンダ内に供給するときには蓄ガス容器内は高圧であるが、このガスの供給を終了するときには蓄ガス容器内のガスがシリンダ内に供給された後であり、相当量のガスが消費されているので、蓄ガス容器内の圧力は降下して比較的低圧になっている。
【0018】
従って、この低圧のガスでも二箇所の連通と閉鎖を行う切替部材を高速で作動させる必要がある。なお、ここで述べる高速作動とは、二箇所の連通と閉鎖の切替開始から切替完了までの時間が約30/1000秒(30ms)程度の短時間で完了することをいう。
【0019】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的高圧の駆動用ガスを用いて、第1流路と第2流路とを高速で選択的に切り替えて第3流路に連通させることができ、ガス圧縮装置を用いて、排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に前記ガスをシリンダ内に一時的に供給して過渡運転時のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させる蓄ガス供給システムを備えた内燃機関等で使用できる流路切替弁及びそれを備えた内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するための本発明の流路切替弁は、第1流路と第2流路を切り替えて、第1流路側のガスと第2流路側のガスのいずれか一方を第3流路に流す流路切替弁において、前記第1流路と前記第2流路をケース内の一方側に設け、前記第3流路を前記第1流路と前記第2流路の両方に対向して前記ケース内の他方側に設けると共に、前記第1流路と前記第3流路との間と、前記第2流路と前記第3流路との間を交互に連通及び閉鎖するようにスライドするシャッター部材を設け、前記シャッター部材を駆動用ガスで駆動するピストンでスライドさせるように構成される。
【0021】
この構成によれば、駆動ガスで駆動させるピストンの移動でスライドするシャッター部材で、第1流路と第3流路との間の連通と第2流路と第3流路との間の閉鎖、及び、第1流路と第3流路との間の閉鎖と第2流路と第3流路との間の連通を行うので、比較的高圧の駆動用ガスを用いて、第1流路と第2流路とを高速で選択的に切り替えて第3流路に連通させることができる。
【0022】
しかも、第1流路と第2流路の両方の流路を一つのシャッター部材で交互に開閉するので、高速で且つ両方の開閉が同期した動きを与えることができる。その結果、第1流路と第2流路を切り替える条件下で、この流路切替弁を備えた装置の性能悪化を防止することができる。
【0023】
従って、ガス圧縮装置を用いて、排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に前記ガスをシリンダ内に一時的に供給して過渡運転時のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させる蓄ガス供給システムを備えた内燃機関等で使用できる。
【0024】
上記の流路切替弁において、前記ピストンを収納し、前記ピストンを駆動させるための第1ガス室と第2ガス室を有するシリンダを有すると共に、前記第1流路と前記第3流路との間を連通し、前記第2流路と前記第3流路との間を閉鎖する操作を第1切替操作とし、前記第1流路と前記第3流路との間を閉鎖し、前記第2流路と前記第3流路との間を連通する操作を第2切替操作としたときに、前記第1切替操作時には、第1圧力の駆動用ガスを前記第1ガス室に供給すると共に前記第2ガス室のガスを抜き、前記第2切替操作時には、前記第1圧力より低い第2圧力の駆動用ガスを前記第2ガス室に供給すると共に前記第1ガス室のガスを抜くように構成し、前記第1ガス室のガス抜き通路の最小面積をBH、前記第2ガス室のガス抜き通路の最小面積をBLとし、駆動用ガスを前記第1ガス室に供給するガス供給通路の最小面積をAHとし、駆動用ガスを前記第2ガス室に供給するガス供給通路の最小面積をALとしたときに、BH>AL、且つ、BL>AH、且つ、BH>BLとする。
【0025】
この構成によれば、第1切替操作時で、第1圧力の駆動用ガスを第1ガス室に供給する場合にこの入口側の最小面積AHよりも第2ガス室のガスの出口側の最小面積BLの方が大きいので、ガスの出入りが円滑に行われ易くなり、また、第2切替操作時で、第2圧力の駆動用ガスを第2ガス室に供給する場合にこの入口側の最小面積ALよりも第1ガス室のガスの出口側の最小面積BHの方が大きいので、ガスの出入りが円滑に行われ易くなる。また、第2ガス室のガスの出口側の最小面積BLより第1ガス室のガスの出口側の最小面積BHの方が大きいので、第2ガス室よりも高圧で第1ガス室に供給されたガスをより円滑に排出できる。
【0026】
上記の流路切替弁において、前記ピストンを前記第1ガス室側に移動するように付勢する弾性体を設けることにより、第2圧力のガスで第2切替操作をする際に、ピストンの移動を助ける方向の弾性力を付勢しているので、第1圧力のガスで第1切替操作をする際と同様な速度でシャッター部材をスライドさせて、流路を切り替えることができるようになる。
【0027】
上記の流路切替弁において、前記ピストンの移動を停止するための緩衝部材を設けると、この緩衝部材でピストンの制動のためのエネルギーを吸収して強制停止させることができる。つまり、高速で動くシャッター部材を必要量動かした後では、ピストンとシャッター部材に大きな慣性力がつくので、非駆動側にゴム等の柔らかい衝突部となる緩衝部材を設けて、流路切替弁が破損しないように、ピストンの一部を緩衝部材に衝突させて停止させる。
【0028】
上記の流路切替弁において、可動する前記シャッター部材と前記ピストンの材料として、ジュラルミン、超ジュラルミン、超超ジュラルミン、窒素ケイ素のいずれか又は幾つかの組み合わせを用いると、シャッター部材を低比重で強度の高い材料で軽量に形成することができるので、小さい駆動力で高速でシャッター部材をスライドさせて、高速で流路を切り替えることができるようになる。
【0029】
そして、上記の流路切替弁を備えた内燃機関は、内燃機関の排気ガスの一部をシリンダ内に再循環するためのEGR通路と、内燃機関の排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを圧縮するガス圧縮装置と、該ガス圧縮装置で圧縮された前記ガスを貯蓄する蓄ガス容器と、該蓄ガス容器と吸気系通路を接続する蓄ガス供給通路を備えた内燃機関において、上記の流路切替弁の前記第1流路に前記蓄ガス供給通路を接続し、前記第2流路に前記吸気系通路の上流側を接続し、前記第3流路に前記吸気系通路の下流側を接続して、前記流路切替弁を介して前記吸気系通路と前記蓄ガス供給通路とを接続し、前記流路切替弁を、前記吸気系通路の下流側の通路側に連通する先を、前記蓄ガス供給通路側と前記吸気系通路の上流側の通路側とに選択的に切り替えるように構成される。
【0030】
この構成によれば、流路切替弁で、比較的高圧の駆動用ガスを用いて、蓄ガス供給通路に接続する第1流路と、上流側の吸気通路に接続する第2流路とを高速で選択的に切り替えて、下流側の吸気通路に接続する第3流路に連通させることができる。
【0031】
従って、ガス圧縮装置を用いて、排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に前記ガスをシリンダ内に一時的に供給して過渡運転時のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させることができる。
【0032】
上記の内燃機関において、前記流路切替弁の前記ピストンの駆動用ガスとして、前記蓄ガス容器の前記ガスを用いるように構成すると、ピストンの駆動用ガスを供給するための装置が不要になり、内燃機関の構造が複雑化するのを防止できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る流路切替弁によれば、比較的高圧の駆動用ガスを用いて、第1流路と第2流路とを高速で選択的に切り替えて第3流路に連通させることができ、ガス圧縮装置を用いて、排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に前記ガスをシリンダ内に一時的に供給して過渡運転時のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させる蓄ガス供給システムを備えた内燃機関等で使用できる。
【0034】
また、本発明に係る流路切替弁を備えた内燃機関によれば、急加速時等の過渡運転において、ターボラグに起因する加速性能の低下を防止することができ、PM(粒子状物質)とNOx(窒素酸化物)の排出量の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る実施の形態の流路切替弁の構成を示す図で、第1流路が第3流路に連通している状態を示す図である。
【図2】図1の流路切替弁で、第2流路が第3流路に連通している状態を示す図である。
【図3】図1の流路切替弁のケースの図1のX1−X1断面を示す平断面図である。
【図4】流路切替弁のシャッター部材の構成を示す平面図である。
【図5】流路切替弁のシャッター部材の構成を示す図4のY1−Y1断面図である。
【図6】第1流路が連通する場合のシャッター部材とケースの位置関係を示す横断面図である。
【図7】第2流路が連通する場合のシャッター部材とケースの位置関係を示す横断面図である。
【図8】ピストンとシリンダの構成を示す横断面図である。
【図9】緩衝部材の構成を示す図である。
【図10】ピストンの駆動を説明するための図である。
【図11】本発明に係る実施の形態の内燃機関の構成を示す図である。
【図12】蓄ガス用のガス圧縮装置の駆動を説明するための図である。
【図13】高圧側駆動時のピストンのストロークの経過時間による変化を示す図である。
【図14】第1ガス室のガス抜き通路の最小面積BHが狭い場合の低圧側駆動時のピストンのストロークの経過時間による変化を示す図である。
【図15】第1ガス室のガス抜き通路の最小面積BHが広い場合の低圧側駆動時のピストンのストロークの経過時間による変化を示す図である。
【図16】従来技術の高圧EGR方式の内燃機関の構成を示す図である。
【図17】従来技術の低圧EGR方式の内燃機関の構成を示す図である。
【図18】車速の変化と瞬時NOx排出量の関係を示す図である。
【図19】全負荷における燃料噴射量の特性と過渡時の動きを示す図である。
【図20】過渡時のターボ式過給機の応答遅れとEGRの関係を示す図である。
【図21】先行技術の内燃機関の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る実施の形態の流路切替弁及びそれを備えた内燃機関について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
本発明に係る実施の形態の流路切替弁は、図1に示すように、第1流路51と第2流路52を切り替えて、第1流路51側のガスCと第2流路52側のガスAのいずれか一方を第3流路53に流す流路切替弁50である。
【0038】
この第1流路51と第2流路52をケース54内の一方側に設け、第3流路53を第1流路51と第2流路52の両方に対向してケース54内の他方側に設ける。それと共に、第1流路51と第3流路53との間と、第2流路52と第3流路53との間を交互に連通及び閉鎖するようにスライドするシャッター部材55を設ける。このシャッター部材55を駆動用ガスApで駆動するピストン56でスライドさせるように構成する。更に、ピストン56を収納し、ピストン56を駆動させるための第1ガス室57aと第2ガス室57bを有するシリンダ57を有して、ピストン駆動部を構成する。
【0039】
そして、図1に示すように、第1圧力の駆動用ガスApを第1ガス室57aに供給すると共に第2ガス室57bのガスAeを抜くことで、第1流路51と第3流路53との間を連通し、第2流路52と第3流路53との間を閉鎖する第1切替操作を行うように構成する。また、図2に示すように、第1圧力より低い第2圧力の駆動用ガスApを第2ガス室57bに供給すると共に第1ガス室57aのガスAeを抜くことで、第1流路51と第3流路53との間を閉鎖し、第2流路52と第3流路53との間を連通する第2切替操作を行うように構成する。
【0040】
この流路切替弁50のケース54は、図3に示すように、第1流路51と第3流路53とを連通するための第1孔54aと、第2流路52と第3流路53とを連通するための第2孔54bを有している。これらの第1孔54aの周囲と第2孔54bの周囲にはOリング溝54cと必要に応じてグリス溜り54dが設けられ、組み付け時にはそのリング溝54cにOリング54eを挿入する。この第1孔54aと第2孔54bは図3に示すように、偏平に形成し、シャッター部材55の移動量(ストローク)が少なくても大きな断面積の通路を遮断及び連通できるように構成する。
【0041】
この流路切替弁50では、図6及び図7に示すように、このケース54の間にシャッター部材55が挿入される。このシャッター部材55には、貫通孔55aが開口され、図6に示すように、シャッター部材55がスライドした時に、貫通孔55aがケース54の第1孔54aと重なりあうように構成する。
【0042】
ピストン駆動部は、シャッター部材55の高速移動を行うためのものであり、図8に示すように、ピストン56、第1ガス室57aと第2ガス室57bを有するシリンダ57を有して構成される。ピストン56はピストンロッド56aと受圧部56bを一体化して形成し、この受圧部56bをシリンダ57内を摺動可能に構成する。また、第1ガス室57aと第2ガス室57bとの間のシールを行うために、受圧部56bにはOリング溝56cを設け、Oリング56dを挿入する。
【0043】
また、ピストン56が高速で移動するとピストン56の移動先のガス室57b(又は57a)ではガス室57b(又は57a)内のガスAeが圧縮されて、ピストン56の動きを阻害するので、圧力抜きの経路として、第1ガス室57aには第1連通路57cを、第2ガス室57bには第2連通路57dをそれぞれ形成する。
【0044】
ピストン56が高速で移動することで大きな慣性力が生じ、ロッド56aを必要なストローク動かした後に停止させるためには大きな制動力が必要になり、機械的に止めることは難しくなる。そのため、緩衝部材57eをストッパーとして、第1ガス室57aの内側と第2ガス室57bの内側にそれぞれ配設する。この緩衝部材57eにピストン56の受圧部56bを衝突させることで、ピストン56の制動に必要なエネルギーを緩衝部材57eで吸収して強制停止させる。
【0045】
つまり、高速で動くシャッター部材55を必要量動かした後では、ピストン56とシャッター部材55に大きな慣性力が付くので、非駆動側にゴム等の柔らかい衝突部となる緩衝部材57eを設けて、流路切替弁50が破損しないように、緩衝部材57eに受圧部56bを衝突させて停止させる。
【0046】
この緩衝部材57eは、ゴム等の軟質材で形成し、図9に示すようにリング形状に形成する。また、この緩衝部材57eには、第1連通路57c、又は、第2連通路57dに対向する部分に切り欠き57eaを設ける。なお、この緩衝部材57eに使用するゴム等軟質材の厚さは実験的に設定する。
【0047】
更に、ピストン56を第1ガス室57a側に移動するように付勢するスプリング(弾性体)58を設けて、第2切替操作をする際に、ピストン56の移動を助ける方向に弾性力を付勢する。これにより、比較的低い圧力の駆動用ガスApで第2切替操作をする際に、比較的高い圧力の駆動用ガスApで第1切替操作をする際と同様な速度で、シャッター部材55をスライドさせて、流路を切り替えることができるようになる。
【0048】
また、シャッター部材55とピストン56等の可動部分に、ジュラルミン、超ジュラルミン、超超ジュラルミン、窒素ケイ素等の低比重で強度の高い材料を用いると、シャッター部材55を軽量に形成できるので、小さい駆動力で、且つ、高速でシャッター部材55をスライドさせて、高速で流路を切り替えることができるようになる。
【0049】
図10に示すように、このピストン56を駆動させる駆動システム60は、駆動用ガスApを貯蔵する蓄ガス容器61を設けて構成する。更に、第1切替操作時に駆動用ガスApを第1ガス室57aに供給するために、第1駆動用ガス供給路62と第1三方弁63と第1駆動用ガス供給補助路62aと第1大気解放補助路62bを設ける。また、第2切替操作時に駆動用ガスApを第2ガス室57bに供給するために、第2駆動用ガス供給路64と第2三方弁65と第2駆動用ガス供給補助路64aと第2大気解放補助路64bを設ける。
【0050】
次に、上記の本発明に係る実施の形態の流路切替弁を備えたエンジン(内燃機関)1について説明する。図11に示すように、このエンジン1は、エンジン本体11と吸気マニホールド11aに接続する吸気通路12と排気マニホールド11bに接続する排気通路13を有して構成する。この吸気マニホールド11aと吸気通路12とで吸気系通路を形成し、排気マニホールド11bと排気通路13とで排気系通路を形成する。
【0051】
吸気通路12には、ターボ式過給機14のコンプレッサ14aを設け、排気通路13には、ターボ式過給機14のタービン14bと、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)装置15とNOx吸蔵還元型触媒等で形成されるNOx浄化触媒16を設ける。
【0052】
また、タービン14bの上流側の排気通路13からEGR通路17を分岐し、コンプレッサ14aの下流側の吸気通路12にEGR合流部18で合流させる。このEGR通路17に、上流側から、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)装置19とEGRクーラ20とEGR弁21を設ける。
【0053】
更に、NOx浄化触媒16の下流側の排気通路13から分岐して、排気ガス導入通路22を設ける。この排気ガス導入通路22にはEGRクーラ23と三方弁24を設け、この排気ガス導入通路22を機械式の容積型過給機(往復動式が望ましい)等で形成されるガス圧縮装置25に接続する。このガス圧縮装置25を、圧縮ガス供給通路26で圧力容器等で形成される蓄ガス容器27に接続する。また、この蓄ガス容器27を蓄ガス供給通路28で吸気通路12に接続する。この排気ガス導入通路22と圧縮ガス供給通路26と蓄ガス供給通路28で蓄圧ガス系通路を形成する。
【0054】
図12に示すように、このガス圧縮装置25は、エンジン1を搭載した車両の車軸31から歯車32、33と、電磁クラッチ34を経由してガス圧縮装置25の駆動軸に動力を伝達する。この電磁クラッチ34をONにして接続することにより、ガス圧縮装置25を駆動して、排気ガスGの一部Gpと空気Aaとこれらの混合ガスのいずれかのガスCを、圧縮して高圧化して蓄ガス容器27に供給し、貯蔵する。
【0055】
なお、図11に示すように、蓄ガス供給通路28には、調圧弁29を配置し、流路切替弁50に供給されるガスCの圧力を調整する。このとき、三方弁24で、排気ガスGの一部Gpの量と空気Aaの量を調整して、蓄ガス容器27で貯蔵されるガスCにおける酸素濃度を略一定に保つことが好ましく、これにより、EGRを行うときの制御を単純化することができる。
【0056】
そして、上記の機器類の制御を行うために、エンジンコントロールユニット(ECU)と呼ばれるエンジン1の運転の全般を制御する制御装置40を設け、この制御装置40で蓄ガス容器27内の圧力Ptやエンジン回転速度Neやアクセル開度Ac等を検出して、その結果に基づいて電磁クラッチ34や三方弁24を制御して、蓄ガス容器27内のガスCの量(圧力)と排気ガスGpと空気Aaの混合比率を調整制御する。
【0057】
なお、図11に示すように、この蓄ガス容器27の内部の最大圧を調整する調整弁27aを、蓄ガス容器27に設けて、ガス圧縮装置25を駆動している時には、常に仕事が発生するように調整弁27aを調整する。なお、図11では、調整弁27aを蓄ガス容器27に設けているが、調整弁27aを蓄ガス容器27とガス圧縮装置25の間の圧縮ガス供給通路26に設けてもよい。
【0058】
つまり、エンジン1は、排気ガスGの一部Geをシリンダ内に再循環するためのEGR通路17と、エンジン1の排気ガスGの一部Gpと空気Aaとこれらの混合ガスのいずれかのガスCを圧縮するガス圧縮装置25と、このガス圧縮装置25で圧縮されたガスCを貯蓄する蓄ガス容器27と、この蓄ガス容器27と吸気通路12を接続する蓄ガス供給通路28を備えて構成される。
【0059】
そして、吸気通路12と蓄ガス供給通路28を、上記の実施の形態の流路切替弁50を介して接続する。この流路切替弁50では、蓄ガス供給通路28が第1流路51に、吸気通路12の上流側の通路が第2流路52に、吸気通路12の下流側の通路側が第3流路53にそれぞれ接続され、吸気通路12の下流側の通路側を開放したまま、蓄ガス供給通路28側と吸気通路12の上流側の通路側とを切り替えるように構成される。
【0060】
この流路切替弁50の図10に示す蓄ガス容器61を図11に示す蓄ガス容器27で兼用して、第1ガス室57aと第2ガス室57bを第1駆動用ガス供給路62等と第2駆動用ガス供給路64等で接続する。これにより、蓄ガス容器27からのガスCを、駆動用ガスApとして使用する。なお、詳細は図10のような構成になるが、図11では、図面が複雑になるのを避けるため、簡略化して示してある。
【0061】
次に、本発明に係る内燃機関1の過給補助方法について説明する。この過給補助方法は、上記の構成の内燃機関1で実施できる方法である。この過給補助方法は、エンジン(内燃機関)1の排気通路(排気系通路)13の排気ガスGの一部Gpと空気Aaとこれらの混合ガスのいずれかのガスCを圧縮して貯蓄する。
【0062】
それと共に、この過給補助方法では、エンジン1の過渡運転でないときには、エンジン1の排気ガスGの一部Geを、EGR通路17を経由してシリンダ内に再循環し、過渡運転であるときには、ガスCを一時的に吸気通路(吸気系通路)12に供給する。
【0063】
これらの制御においては制御装置40で、エンジン回転速度Ne、エンジン空気量Mo、エンジン燃料量(燃料噴射量)Q、蓄ガス容器27の内部の圧力Pt等の検出値等に基づいて、調圧弁29とEGR弁21と流路切替弁50を制御する。
【0064】
この過給補助方法によれば、急加速等の過渡運転時においてターボラグに起因するEGR不足を解消し、過渡運転時のNOx排出を低減することができると共に加速性能の向上とPMの低減を図ることができる。
【0065】
次に、上記の実施の形態のエンジン(内燃機関)1で上記の実施の形態の流路切替弁50を用いる場合の、流路切替弁50の作動と、この流路切替弁50の流路の連通状態を、高速(30/1000秒程度以内)で切り替えるための、より好ましい形態について説明する。
【0066】
流路切替弁50を、上記のエンジン1に用いる場合には、図10に示すように蓄ガス容器27と第1駆動用ガス供給路62等と第2駆動用ガス供給路64に接続する。 エンジン1が過渡状態ではなく、通常ラインで給気しているとき、即ち、第2流路52が第3流路53と連通しているときには、蓄ガス容器27内のガスCは消費されていないので、蓄ガス容器27の内部の圧力は、設定された高圧状態(例えば、設定圧力を600kPa.absとする。)となっている(以後、この状態を高圧側と称する)。
【0067】
また、エンジン1を搭載している車両が急加速である等のエンジン1が過渡状態になって、蓄ガス容器27内の蓄圧されたガスCがエンジン1のシリンダ内に供給されて消費されると、蓄ガス容器27の内部の圧力は低下し低圧状態(例えば設定圧力を300kPa.abs)となる(以後、この状態を低圧側と称する)。この低圧側で駆動する時のピストン56の動きを補助するために、流路切替弁50では、図10に示すように、低圧側でピストン56を駆動する際に付勢できるようにスプリング58を第2ガス室57bに配置する。
【0068】
更に、ピストン56が動きだした初期に加圧側の第1ガス室57a(又は第2ガス室57b)の隙間によって生じる容積変化で駆動圧力の低下の変化分を最小にして、最速のピストン平均速度を得るように、ピストン56の受圧部56bが片側の緩衝部材57eに接触している移動開始前の初期状態においては、図10に示すように、加圧側の第1ガス室57a(又は第2ガス室57b)のピストン56の受圧部56bとは反対側の壁面と、受圧部56bの加圧側の壁面と間にできる隙間Sが10〜15mm程度となるように構成する。
【0069】
更に、第1ガス室57aのガスAeを抜くために、第1駆動用ガス供給補助路62aと第1三方弁63(連通時)と第1大気解放補助路62bとから形成されるガス抜き通路の最小面積をBHとし、第2ガス室57bのガスAeを抜くために、第2駆動用ガス供給補助路64aと第2三方弁65(連通時)と第2大気解放補助路64bとから形成されるガス抜き通路の最小面積をBLとする。
【0070】
また、図10に示すように、駆動用ガスApを第1ガス室57aに供給するために、第1駆動用ガス供給路62と第1三方弁63(連通時)と第1駆動ガス供給補助路62aとから形成されるガス供給通路の最小面積をAHとし、駆動用ガスApを第2ガス室57bに供給するために、第2駆動用ガス供給路64と第2三方弁65(連通時)と第2駆動ガス供給補助路64aとから形成されるガス供給通路の最小面積をALとする。
【0071】
このとき、ピストンを高速で動かすために、BHはALより大きく(BH>AL)、且つ、BLはAHより大きく(BL>AH)なるように形成することが好ましく。また、BHはBLより大きく(BH>BL)なるようにすることがより好ましい。
【0072】
一例として、第1ガス室57aに供給される駆動用ガスAp(高圧側)の圧力が500kPaで、第2ガス室57bに供給される駆動用ガスAp(低圧側)の圧力が300kPaの場合で、BLを2.27mm2(φ1.7mm)、BHを8.04mm2(φ3.2mm)とし、AL、AHはいずれも2.27mm2(φ1.7mm)とした時のピストンのストロークの経過時間による変化を図13に示す。
【0073】
この図13は、第2ガス室57bにスプリング58を設けた場合A(太線)と、スプリング58を設けない場合B(細線)とで、第1ガス室57aの圧力を500kPaにして駆動したピストンのストロークの時間的な変化を示す。また、BHの面積の違いによる第2ガス室57bの圧力を300kPaにして駆動したピストンのストロークの経過時間による変化を図14と図15に示す。図14は、BHが2.27mm2(φ1.7mm)の場合を示し、図15は、BHが8.04mm2(φ3.2mm)の場合を示す。これによると、BHを大きくすることで、少ない経過時間で大きなピストンのストロークを得ることができることが分かる。
【0074】
上記の流路切替弁50によれば、駆動ガスで駆動させるピストン56の移動でスライドするシャッター部材55で、第1流路51と第3流路53との間の連通と第2流路52と第3流路53との間の閉鎖、及び、第1流路51と第3流路53との間の閉鎖と第2流路52と第3流路53との間の連通を行うので、比較的高圧の駆動用ガスApを用いて、第1流路51と第2流路52とを高速で選択的に切り替えて第3流路53に連通させることができる。
【0075】
しかも、第1流路51と第2流路52の両方の流路を一つのシャッター部材55で交互に開閉するので、高速で且つ両方の開閉が同期した動きを与えることができる。その結果、第1流路51と第2流路52を切り替える条件下で、この流路切替弁50を備えた装置の性能悪化を防止することができる。
【0076】
従って、ガス圧縮装置25を用いて、排気ガスGの一部Gpと空気Aaとこれらの混合ガスのいずれかのガスCを蓄ガス容器27に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に蓄圧されたガスCをシリンダ内に一時的に供給して過渡運転時のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させる蓄ガス供給システムを備えた内燃機関1で使用できる。
【0077】
更に、流路の最小面積の関係をBH>AL、且つ、BL>AHとすることにより、第1切替操作時で、第1圧力の駆動用ガスApを第1ガス室57aに供給する場合にこの入口側の最小面積AHよりも第2ガス室57bのガスAeの出口側の最小面積BLの方が大きいので、ガスAeの出入りが円滑に行われ易くなり、また、第2切替操作時で、第2圧力の駆動用ガスApを第2ガス室57bに供給する場合にこの入口側の最小面積ALよりも第1ガス室57aのガスの出口側の最小面積BHの方が大きいので、ガスAeの出入りが円滑に行われ易くなる。
【0078】
また、第2ガス室57bのガスAeの出口側の最小面積BLより第1ガス室57aのガスAeの出口側の最小面積BHの方が大きいので、第2ガス室57bよりも高圧で第1ガス室57aに供給されたガスAeをより円滑に排出できる。
【0079】
また、ピストン56を第1ガス室57a側に移動するように付勢するスプリング(弾性体)58を設けることにより、第2圧力の駆動用ガスApで第2切替操作をする際に、ピストン56の移動を助ける方向の弾性力を付勢しているので、第1圧力の駆動用ガスApで第1切替操作をする際と同様な速度でシャッター部材55をスライドさせて、流路を切り替えることができるようになる。
【0080】
また、ピストン56の移動を停止するための緩衝部材57eを設けているので、この緩衝部材57eでピストン56の制動のためのエネルギーを吸収して強制停止させることができる。
【0081】
また、可動するシャッター部材55とピストン56の材料として、ジュラルミン、超ジュラルミン、超超ジュラルミン、窒素ケイ素のいずれか又は幾つかの組み合わせを用いると、シャッター部材を軽量に形成することができ、小さい駆動力で高速でシャッター部材55をスライドさせて、高速で流路を切り替えることができる。
【0082】
そして、上記の内燃機関1によれば、流路切替弁50で、比較的高圧の駆動用ガスApを用いて、蓄ガス供給通路28に接続する第1流路51と、上流側の吸気通路12に接続する第2流路52とを高速で選択的に切り替えて、下流側の吸気通路12に接続する第3流路54に連通させることができる。
【0083】
従って、ガス圧縮装置25を用いて、排気ガスGの一部Gpと空気Aaとこれらの混合ガスのいずれかのガスCを蓄ガス容器27に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に蓄圧されたガスCをシリンダ内に一時的に供給して過渡運転時のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させることができる。
【0084】
その結果、いずれの吸気ラインを用いる条件やラインを切り替える条件下での性能悪化を防止することができる。
【0085】
また、流路切替弁50のピストン56の駆動用ガスApとして、蓄ガス容器27の蓄圧されたガスCを用いるように構成すると、ピストン56の駆動用ガスApを供給するための装置が不要になり、エンジン1の構造が複雑化するのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の流路切替弁は、比較的高圧の駆動用ガスを用いて、第1流路と第2流路とを高速で選択的に切り替えて第3流路に連通させることができ、ガス圧縮装置を用いて、排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に前記ガスをシリンダ内に一時的に供給して過渡運転時のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させることができるので、ガス圧縮装置を用いて、ガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に蓄圧されたガスをシリンダ内に一時的に供給する、トラックやバスや乗用車等に搭載する内燃機関で利用できる。
【0087】
また、本発明の流路切替弁を備えた内燃機関によれば、急加速時等の過渡運転において、ターボラグに起因する加速性能の低下を防止することができ、PM(粒子状物質)とNOx(窒素酸化物)の排出量の低減が可能となるので、トラックやバスや乗用車等に搭載する内燃機関として利用できる。
【符号の説明】
【0088】
1、1A、1X、1Y、1Z エンジン(内燃機関)
11 エンジン本体
11a 吸気マニホールド(吸気系通路)
11b 排気マニホールド(排気系通路)
12 吸気通路(吸気系通路)
13 排気通路(排気系通路)
14 ターボ式過給機
14a コンプレッサ
14b タービン
17 EGR通路
21 EGR弁
22 排気ガス導入通路
24 三方弁
25 ガス圧縮装置
26 圧縮ガス供給通路
27 蓄ガス容器
28 蓄ガス供給通路
40 制御装置
50 流路切替弁
51 第1流路
52 第2流路
53 第3流路
54 ケース
55 シャッター部材
56 ピストン
57 シリンダ
57a 第1ガス室
57b 第2ガス室
57c 第1連通路
57d 第2連通路
57e 緩衝部材
58 スプリング(弾性体)
62 第1駆動用ガス供給路
62a 第1駆動用ガス供給補助路
62b 第1大気解放補助路
63 第1三方弁
64 第2駆動用ガス供給路
64a 第2駆動用ガス供給補助路
64b 第2大気解放補助路
65 第2三方弁
A 新気
Aa 空気
Ae 抜きガス
Ap 駆動用ガス
AH 第1ガス室側のガス供給通路の最小面積
AL 第2ガス室側のガス供給通路の最小面積
BH 第1ガス室側のガス抜き通路の最小面積
BL 第2ガス室側のガス抜き通路の最小面積
C ガス
G 排気ガス
Ge EGRガス
Gp 排気ガスの一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路と第2流路を切り替えて、第1流路側のガスと第2流路側のガスのいずれか一方を第3流路に流す流路切替弁において、
前記第1流路と前記第2流路をケース内の一方側に設け、前記第3流路を前記第1流路と前記第2流路の両方に対向して前記ケース内の他方側に設けると共に、前記第1流路と前記第3流路との間と、前記第2流路と前記第3流路との間を交互に連通及び閉鎖するようにスライドするシャッター部材を設け、
前記シャッター部材を駆動用ガスで駆動するピストンでスライドさせるように構成したことを特徴とする流路切替弁。
【請求項2】
前記ピストンを収納し、前記ピストンを駆動させるための第1ガス室と第2ガス室を有するシリンダを有すると共に、
前記第1流路と前記第3流路との間を連通し、前記第2流路と前記第3流路との間を閉鎖する操作を第1切替操作とし、前記第1流路と前記第3流路との間を閉鎖し、前記第2流路と前記第3流路との間を連通する操作を第2切替操作としたときに、
前記第1切替操作時には、第1圧力の駆動用ガスを前記第1ガス室に供給すると共に前記第2ガス室のガスを抜き、前記第2切替操作時には、前記第1圧力より低い第2圧力の駆動用ガスを前記第2ガス室に供給すると共に前記第1ガス室のガスを抜くように構成し、
前記第1ガス室のガス抜き通路の最小面積をBH、前記第2ガス室のガス抜き通路の最小面積をBLとし、駆動用ガスを前記第1ガス室に供給するガス供給通路の最小面積をAHとし、駆動用ガスを前記第2ガス室に供給するガス供給通路の最小面積をALとしたときに、BH>AL、且つ、BL>AH、且つ、BH>BLとすることを特徴とする請求項1に記載の流路切替弁。
【請求項3】
前記ピストンを前記第1ガス室側に移動するように付勢する弾性体を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の流路切替弁。
【請求項4】
前記ピストンの移動を停止するための緩衝部材を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流路切替弁。
【請求項5】
可動する前記シャッター部材と前記ピストンの材料として、ジュラルミン、超ジュラルミン、超超ジュラルミン、窒素ケイ素のいずれか又は幾つかの組み合わせを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流路切替弁。
【請求項6】
内燃機関の排気ガスの一部をシリンダ内に再循環するためのEGR通路と、
内燃機関の排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを圧縮するガス圧縮装置と、
該ガス圧縮装置で圧縮された前記ガスを貯蓄する蓄ガス容器と、
該蓄ガス容器と吸気系通路を接続する蓄ガス供給通路を備えた内燃機関において、 請求項1〜5のいずれか1項に記載の流路切替弁の前記第1流路に前記蓄ガス供給通路を接続し、前記第2流路に前記吸気系通路の上流側を接続し、前記第3流路に前記吸気系通路の下流側を接続して、前記流路切替弁を介して前記吸気系通路と前記蓄ガス供給通路とを接続し、
前記流路切替弁を、前記吸気系通路の下流側の通路側に連通する先を、前記蓄ガス供給通路側と前記吸気系通路の上流側の通路側とに選択的に切り替えるように構成したことを特徴とする内燃機関。
【請求項7】
前記流路切替弁の前記ピストンの駆動用ガスとして、前記蓄ガス容器の前記ガスを用いることを特徴とする請求項6記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−251622(P2012−251622A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125681(P2011−125681)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】