説明

浄化装置

【課題】浄化性能を確保しつつ小型化可能な浄化装置を提供する。
【解決手段】汚泥成分を含有するトイレ50等の家庭排水や工場、ホテル、病院等からの排水を段階的に浄化する複数の浄化処理室2〜8を有する浄化処理槽10と、前記排水をろ過処理するろ過処理槽20とを有し、前記複数の浄化処理室が、前記排水中の浮遊物等を吸着除去する吸着材8dを有する吸着処理室8を備えるとともに、前記ろ過処理槽20が、前記浄化処理室のうち前記吸着処理室8の上流に設けられた浄化処理室5に連結されて、この浄化処理室5内の処理水を吸引する吸引手段21と、ろ材24を有し前記吸引された処理水をろ過するろ過槽22と、当該ろ過された処理水を前記吸着処理室8の上流の浄化処理室5に還流させる還流手段23とを備え、このろ過処理槽20によって、前記浄化処理室5内の処理水を繰り返しろ過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥成分を含有するトイレ等の家庭排水や工場、ホテル、病院等からの排水を浄化処理する浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前記浄化装置としては、沈殿分離室や接触ばっ気槽等を有した合併浄化槽が用いられており、特許文献2には、この合併浄化槽の下流に砂ろ過装置を設け、さらにその下流に膜分離装置等を設けた浄化装置が開示されている。この浄化装置では、合併浄化槽から排出される浄化水を砂ろ過装置に導入してろ過した後、その処理水を膜分離装置等に導入して浄化処理している。
【特許文献1】特開2003−126893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の浄化装置は、合併浄化槽から排出された浄化水を砂ろ過装置に導入し、砂ろ過装置でろ過処理された処理水を下流の膜分離装置等に導出するというものであり、砂ろ過装置におけるろ過処理は1回しかなされない。そのため、大量の排水を処理する場合には、砂ろ過装置を大型化する必要がありコストがかかってしまうという問題がある。
【0004】
本発明は前記の点に鑑みてなされたものであり、ろ過装置を小型化することで省スペース化を図りつつ浄化性能を確保することのできる浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、汚泥成分を含有するトイレ等の家庭排水や工場、ホテル、病院等からの排水を段階的に浄化する複数の浄化処理室を有する浄化処理槽と、前記排水をろ過処理するろ過処理槽とを有し、前記複数の浄化処理室が、前記排水中の浮遊物等を吸着除去する吸着材を有する吸着処理室を備えるとともに、前記ろ過処理槽が、前記浄化処理室のうち前記吸着処理室の上流に設けられた浄化処理室に連結されて、この浄化処理室内の処理水を吸引する吸引手段と、ろ材を有し前記吸引された処理水をろ過するろ過槽と、当該ろ過された処理水を前記吸着処理室の上流の浄化処理室に還流させる還流手段とを備え、このろ過処理槽によって、前記浄化処理室の処理水が繰り返しろ過されることを特徴とする浄化装置を提供する。
【0006】
このような構成によれば、吸着処理室の上流に設けられた浄化処理室の処理水が繰り返しろ過処理されるので、ろ過処理槽を大型化せずに処理水中の浮遊物等を十分に除去することができるとともに、吸着処理室に設けられる吸着材が目詰まりするのを抑止することができる。さらに、ろ材に付着した微生物と処理水が繰り返し接触することで、処理水中の有機性浮遊物等の微生物による分解処理が促進されるので、浄化性能を高めることができる。
【0007】
また本発明において、前記吸着処理室が、前記吸着材として活性炭収容体を有するのが好ましい。
【0008】
このような構成によれば、活性炭収容体の目詰まりを抑止でき、比較的高価な活性炭のランニングコストを低く抑えることが可能になる。
【0009】
また本発明において、前記ろ過処理槽が、前記ろ材に付着した浮遊物等を除去するための逆洗水として、外部から水道水等を前記ろ過槽に導入するための逆洗水導入口を有するのが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、逆洗水導入口から水道水等を逆洗水として導入してろ材を逆洗することで、ろ材の処理能力を確保してろ材を繰り返し使用することが可能になる。
【0011】
また本発明において、前記ろ過処理槽が、前記ろ過槽の下流側の圧力を検出する圧力検出手段と、当該圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記逆洗水導入口から逆洗水を導入するタイミングあるいは導入する逆洗水の量を制御する制御手段とを有するのが好ましい。
【0012】
前記ろ材に処理水中の浮遊物が付着して閉塞すると、ろ過槽の下流側圧力は低下する。従って、この下流側圧力を検出してやれば、ろ材の閉塞具合を判断することができるので、この検出結果に基づいて逆洗水を導入するタイミングや導入する逆洗水の量を制御してやれば、適切なタイミングで効率よくろ材を逆洗することが可能になる。
【0013】
また本発明において、前記複数の浄化処理室のうち最下流の位置に、前記排水から生成された浄化水を貯留可能な浄化水貯留室が設けられるとともに、前記ろ過処理槽が、前記逆洗水導入口に接続されて、前記浄化水貯留室に貯留された浄化水を前記ろ過槽に逆洗水として供給する浄化水供給手段を有するのが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、浄化水貯留室に貯留される浄化水を逆洗水として利用することができるので、逆洗水として水道水等を利用する場合に比べてコスト面で有利になる。
【0015】
また本発明において、前記ろ材を逆洗する際に生じる浮遊物等を含む処理水を、前記複数の浄化処理室のうち最上流に設けられた浄化処理室に導出する処理水導出手段を前記ろ過処理槽に設けるのが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、前記浮遊物等を浄化処理室内に還流して再処理することができ、浮遊物等を含む汚水が外部に流出するのを抑止することができる。
【0017】
また本発明において、前記ろ過処理槽としてろ材を砂や石とする砂ろ過装置を用いれば、処理水中のSSを効率よく除去することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば汚泥成分を含有するトイレ等の家庭排水や工場、ホテル、病院等からの排水を、装置を大型化することなく効率よく浄化できる浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1よび図2は、本発明に係る浄化装置の実施形態を示している。
【0020】
この浄化装置1は、複数の浄化処理室2〜8を有する浄化処理槽10と、ろ過処理槽20とを備えている。この浄化処理槽10は、鋼板材、アルミニウム合金材、ステンレス鋼材、プラスチック材、PC(プレストレスコンクリート)材、鉄筋コンクリート材、FRP(繊維強化プラスチック)材またはプラスチック材等からなり、地中に埋設され、あるいは地上に立設された状態で使用されるものである。また、浄化処理室2〜8は、上流側から、沈殿分離室2、接触ばっ気室3、沈殿室4、第一接触ろ過室5、第二接触ろ過室6、沈殿ろ過室7および浄化水貯留室8(吸着処理室)となっており、その上面には各々清掃または点検用の開口部30〜34が形成されている。さらに前記開口部30〜34を開閉可能に閉止する閉止蓋が設置されている。前記ろ過処理槽20は前記第一接触ろ過室5、沈殿分離室2および浄化水貯留室8に連設されている。
【0021】
最上流に設けられた沈殿分離室2には、配管11を介して水洗トイレ50や浴室等の排水口に連結されて、汚水等を導入する導入口2aが設けられている。そして、この沈殿分離室2は、導入された汚水中の紙および粗大異物等の汚泥成分を沈殿させて分離した後に、その処理水を下流の接触ばっ気室3にオーバーフローさせて導出するよう構成されている。また、沈殿分離室2にはバッフルプレート2bが設けられており、前記接触ばっ気室3に浮遊物が流出するのを阻止するように区画されている。なお、前記沈殿分離室2において沈殿した固形分は、定期的(例えば1年毎)に外部に吸い出されて処理される。
【0022】
また、前記配管11には、後述するろ過処理槽20の処理水導出手段26が連結されており、ろ過処理槽20から導出される逆洗後の処理水が沈殿分離室2に導入されるよう構成されている。
【0023】
沈殿分離室2の下流に設けられた接触ばっ気室3には、従来周知のプラスチック製接触材3aが充填されるとともに、ブロア60から供給された空気を放出する散気管3bが前記プラスチック製接触材3aの下方に配設されている。そして、前記沈殿分離室2の上部からオーバーフローすることにより導入された処理水に含まれる汚泥成分が、散気管3bから放出された空気によって撹拌されて、前記プラスチック製接触材3aに付着して生息する微生物により分解処理されるように構成されている。
【0024】
前記接触ばっ気室3で処理された処理水は、下方に設けられた連通路3cを介して沈殿室4に導入される。沈殿室4では、前記接触ばっ気室3から導入された処理水中に含まれる前記微生物のかたまり等が沈殿し、その処理水が連結管12を介して第一接触ろ過室5にオーバーフローするよう構成されている。
【0025】
第一接触ろ過室5内には、メッシュ状の袋体内にカキ、ホタテ貝、ホッキ貝、真珠貝、アサリ、シジミ、はまぐり、アオヤギ、カラス貝、サザエ、ミル貝もしくは貝化石等からなる貝殻、または死滅して白化した珊瑚が収容されてなる貝殻・珊瑚製接触材5aが充填されるとともに、その下方にブロア60から供給された空気を放出する散気管5bが配設されている。そして、この貝殻・珊瑚製接触材5aには微生物が付着した状態で生息しており、前記沈殿室4からこの第一接触ろ過室5に導入された処理水中の汚泥成分が、散気管5bから放出された空気によって攪拌されつつ、前記貝殻・珊瑚製接触材5aに付着した微生物により分解処理されるように構成されている。
【0026】
また、この第一接触ろ過室5には、ろ過処理槽20が連結されており、第一接触ろ過室5に導入された処理水は、前記のように貝殻・珊瑚製接触材5aにより分解処理されるとともに、このろ過処理槽20によってろ過処理されるよう構成されている。
【0027】
ろ過処理槽20は、前記第一接触ろ過室5から処理水を吸引するための吸引ポンプ(吸引手段)21と、吸引された処理水をろ過処理するろ過槽22と、ろ過処理後の処理水を第一接触ろ過室5に還流する還流手段23とを備えている。また、ろ過槽22の内部には、図3に示すように、ろ材24として粒子の異なる複数種類の砂が充填されており、この砂は上方に向かうほど粒子が小さくなるように積層している。
【0028】
吸引ポンプ21により吸引された処理水はろ過槽22の上方に設けられた導入口22aからろ過槽22内に導入され、ろ材24内を下方に向けて通過することでろ過されていく。そして、このろ材24でろ過された処理水はろ過槽22の下方に設けられた還流手段23によって再び第一接触ろ過室5に導入され、前記貝殻・珊瑚製接触材5aにより分解処理されるとともに、再び、吸引ポンプ21によってろ過処理槽20内に導入される。このように、第一接触ろ過室5内の処理水は貝殻・珊瑚製接触材5aにより分解処理されつつ、繰り返しろ過処理槽20でろ過されることにより浄化されていく。特に、ろ過処理では、処理水に含まれるSSが除去される。従って、前記第一接触ろ過室5に充填された貝殻・珊瑚製接触材5aに対するSSの付着が抑止されるので、貝殻・珊瑚製接触材5aの浄化機能の低下を抑止することができる。
【0029】
また、ろ材24の表面には処理水に含まれていた微生物が付着して繁殖するため、処理水をろ材24に繰り返し導入することで、処理水に含まれる汚泥成分が微生物によって分解処理されるという効果がある。例えば、第一接触ろ過室5に3mの処理水が導入され、ろ過槽22の容量が0.9mの場合には、1日にろ過処理を7.2回繰り返すことができ、処理水を十分に浄化することができる。また、このように一つのろ過処理槽20でろ過処理を繰り返すよう構成することで、ろ過処理槽20を小型化することができ、装置全体の省スペース化を図ることができる。
【0030】
前記のようにろ過処理および貝殻・珊瑚製接触材5aにより浄化された処理水は、次に第二接触ろ過室6に導入される。この第二接触ろ過室6は、第一接触ろ過室5と同様にメッシュ状の袋体内に貝殻等が収容されてなる貝殻・珊瑚製接触材6aが充填されるとともに、下方に設けられた散気管6bによって空気が供給されている。そして、導入された処理水中の汚泥成分が貝殻・珊瑚製接触材6aに付着する微生物によって分解処理されるよう構成されている。ここで、この第二接触ろ過室6に導入される処理水は、前記のようにろ過処理槽20によりSSが十分に除去された処理水であるため、貝殻・珊瑚製接触材6aの目詰まりが抑止され、浄化機能を十分に発揮することができる。
【0031】
第二接触ろ過室6で分解処理された処理水は、沈殿ろ過室7に導出される。沈殿ろ過室7は、多孔質体からなるゼオライトが収容されたろ過体7aを有し、導入された処理水中の不純物を沈殿させて汚水と上澄み水に分離するとともに、この上澄み水中の微細な不純物を前記ろ過体7aによりろ過して浄化水を生成するよう構成されている。そして、このろ過体7aも前記貝殻・珊瑚製接触材6aと同様にSSによる目詰まりが抑止されることで、十分な浄化機能を発揮することができる。
【0032】
前記沈殿ろ過室7で生成された浄化水は、最後に、浄化水貯留室8にオーバーフローして導出される。この浄化水貯留室8には、図4に示すように、複数の透孔が形成された仕切り板8a,8bが上下に設置された吸着筒8cと、この吸着筒8c内の仕切り板8a,8b間に配設された吸着材である活性炭収容体8dと、浄化水貯留室8内の処理水を吸引して前記活性炭収容体8dの下方部に吐出する循環ポンプ40aおよび循環パイプ40bを有する循環手段40とが設けられている。前記活性炭収容体8dは、布材等からなる袋体内に石炭系の活性炭が充填されることにより構成されている。
【0033】
そして、前記循環手段40により活性炭収容体8dの下方部に吐出された処理水が、前記吸着筒8c内を通って前記浄化水貯留室8内を循環するとともに、その際に、活性炭収容体8d内の石炭系活性炭により色素成分が吸着されて効果的に脱色されるようになっている。脱色処理された浄化水は、図1に示すように、その一部がトイレ50の給水タンクに供給されるとともに、残りが、浄化水貯留室8内に貯留される。そして、この活性炭収容体8dも、前記貝殻・珊瑚製接触材6aおよび前記ろ過体7aと同様に、ろ過処理槽20のろ過作用により処理水中のSSが十分に除去されることで、目詰まりが抑止され浄化機能が長期に亘り確保されている。このため、活性炭収容体8dを頻繁に交換することに起因したランニングコストの増大を抑制できるという利点がある。
【0034】
ここで、図4に示すように、前記循環手段40の途中には微細気泡発生装置41が設けられている。この微細気泡発生装置41は、処理水にオゾンを供給する気体供給部41aと、供給されたオゾンを剪断しマイクロバブルと呼ばれる超微細気泡を発生させる気泡発生部41bとからなっている。前記気体供給部41aにはオゾン発生装置と接続可能な気体吸入口41dが設けられており、このオゾン発生装置で発生したオゾンを気体供給部41aに供給するよう構成されている。また、前記気泡発生部41bにはマイクロバブルを発生させる気泡発生部41cが設けられており、この気泡発生部41cにより前記供給されたオゾンがマイクロバブルとして処理水中に混入するようになっている。この気泡発生部41bで発生したマイクロバブルは処理水とともに浄化水貯留室8内に導入される。
【0035】
マイクロバブルは泡径が10μm〜20μmほどの気泡であり水中での溶存効果が高い。また、オゾンには脱色効果があるので、このオゾンを含むマイクロバブルによって処理水の脱色が促進される。従って、浄化水貯留室8内の活性炭収容体8dの負担が軽減でき活性炭収容体8dの交換回数を減少できるので、ランニングコストの増大をさらに抑制することができる。また、この微細気泡発生装置41で発生するマイクロバブルには汚泥成分を除去する効果があるので、活性炭収容体8dに付着したSSが効果的に除去される。
【0036】
以上のようにして、水洗トイレ50等から排出された汚水は各浄化処理室2〜8およびろ過処理槽20によって浄化され再び利用可能な浄化水となり、水洗トイレ50に還流される。特に、前記のように浄化水にマイクロバブルを含有させた場合には、このマイクロバブルによる汚泥成分除去作用により水洗トイレ50の汚れを効果的に除去することができる。
【0037】
ここで、前記貝殻・珊瑚製接触材5a,6aに含まれる貝殻は、炭酸カルシウムを主成分とし、リン酸カルシウムやカリウムおよび炭酸マグネシウム等の成分を含有したものであり、その真珠層が除去された状態で袋体内に収容されている。特に、真珠層を除去して多孔質の角柱層を露出させたカキ殻を使用すれば、カキ殻に付着した微生物と処理水中の汚泥成分との親和性が高まるので、前記微生物が好適に繁殖できる。そして、多孔質の角柱層において繁殖したこの微生物により、処理水中の汚泥成分を効果的に分解処理して排水を効率よく浄化することができる。
【0038】
ただし、真珠層を予め除去しない場合であっても、真珠層は浄化装置1の稼動中に自然と除去されるので、予め真珠層を除去した場合とほぼ同等の効果を得ることは可能である。
【0039】
次に、ろ材24を逆洗し、ろ材24からSS等の浮遊物を剥離させてろ過槽22のろ過性能を回復する方法について説明する。
【0040】
ろ過処理槽20は、前記吸引ポンプ21と還流手段23の他に、前記浄化水貯留室8に連結されて、この浄化水貯留室8に貯留される浄化水を前記ろ過槽22に供給するための浄化水吸引ポンプ25(浄化水供給手段)と、前記沈殿分離室2に接続される配管11に連結されて、ろ過槽22の逆洗後の排水をこの沈殿分離室2に排出する処理水導出手段26とを備えている。また、ろ過槽22の上方および下方には逆洗水導入口25a,25bが設けられており、それぞれ前記浄化水吸引ポンプ25に連結されている。
【0041】
浄化水吸引ポンプ25により吸引された浄化水は、ろ過槽22の上方に設けられた逆洗水導入口25aからろ過槽22に導入され、ろ材24の表面を洗浄する。また、前記浄化水はろ過槽22の下方に設けられた逆洗水導入口25bからろ過槽22に導入され、ろ過槽22内をろ過方向とは逆方向に流れ、ろ材24に付着した浮遊物等を剥離させていく。そして、この剥離した浮遊物等を含む処理水は、ろ過槽22の上方に設けられた処理水導出口26aから前記処理水導出手段26によってろ過槽22の外部に導出される。さらに、この浮遊物等を含む処理水は、処理水導出手段26によって沈殿分離室2に還流されるよう構成されており、浮遊物等は沈殿分離室2で沈殿分離され、前記のように定期的に外部に吸い出されて処理される。
【0042】
ここで、前記のようなろ材24の逆洗は適宜実施すればよいが、本実施形態では、ろ過槽22の下方に圧力センサ(圧力検出手段)27設けるとともに、この圧力センサ27の出力に基づいて前記逆洗のタイミングや逆洗水の量を制御する制御装置(制御手段)28を設けて、自動的に逆洗できるように構成している。
【0043】
すなわち、ろ材24が目詰まりして処理水が流れ難くなるとろ過槽22の下流側の圧力は低下していくので、この圧力を前記圧力センサ27で検出し、この検出値が所定値以下になった時に、前記浄化水吸引ポンプ25を駆動して逆洗水をろ過槽22に導入するように制御している。また、ろ過槽22に導入される逆洗水の導入量を調整する調整弁29を設け、この調整弁29の開度を制御することで浄化水の導入量を制御している。このようにすれば、ろ材24への浮遊物の付着度合いに応じて最適な条件で効率よく逆洗することができる。
【0044】
ここで、前記逆洗を行う際には、前記吸引ポンプ21による処理水の吸引を停止させ、ろ過槽22に第一接触ろ過室5からの処理水が導入されないようにしておく。また、本実施形態では、前記ろ過槽22の下方に設けられた逆洗水導入口25bと、ろ過処理後の処理水を還流手段23によって第一接触ろ過室5に還流する還流口とが共通化されているが、前記浄化水吸引ポンプ25と逆洗水導入口25bとを連結する配管および前記還流手段23が接続される配管とに各々逆止弁を設けることで、逆洗時に浄化水が還流手段23を介して第一接触ろ過室5に導出されることを抑制している。
【0045】
以上のように、本発明に係る前記実施形態によれば、第一接触ろ過室5にろ過処理槽20を連結し、第一接触ろ過室5内の処理水を繰り返しろ過することで、浄化機能を確保しつつろ過処理槽20を小型化することができる。また、処理水を繰り返しろ過処理することで、ろ材24に付着した微生物による処理水中の汚泥成分の分解処理が促進される。さらに、このろ過処理により処理水中のSSが除去されるので、第一接触ろ過室5に設けられた貝殻・珊瑚製接触材5aと、これより下流に設けられた第二接触ろ過室6の貝殻・珊瑚製接触材6a、沈殿ろ過室7のろ過体7aおよび浄化水貯留室8の活性炭収容体8dへのSSの付着が抑制され、これら接触材等の浄化機能を向上させることができる。また、この接触材等の交換期間を長くすることができるのでコスト面でも有利となる。
【0046】
ここで、前記実施形態では、沈殿分離室2の導入口2aを水洗トイレ50の排水口に接続して水洗トイレ50からの排水を浄化処理する場合について示したが、この水洗トイレ50の代わりに、工場、ホテル、病院等の排水設備に接続して工場等から排出される汚水を浄化処理するようにしたり、雨水集水桝や用水路等に接続して雨水等を浄化処理するようにしてもよい。
【0047】
また、ろ過処理槽20を第一接触ろ過室5に連結した場合について示したが、これに限らず、他の浄化処理室に連結させてもよい。
【0048】
また、前記ろ過処理槽20の逆洗水導入口25a,25bを浄化水貯留室8に接続した場合について示したが、この逆洗水導入口25a,25bを水道の蛇口等に接続して、水道水を逆洗水として供給するようにしてもよい。さらに、逆洗後の処理水を沈殿分離室2に導出する場合について示したが、外部へ排出するよう構成してもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、浄化装置1で処理された浄化水を水洗トイレ50の給水タンクに供給する場合について示したが、浄化水の利用方法はこれに限らず、農業用水や洗車用水や打ち水としての利用等、種々の方面での利用が可能である。
【0050】
また、前記実施形態では微細気泡発生装置41を浄化水貯留室8の循環手段40に接続した場合について示したが、この微細気泡発生装置41を、前記沈殿ろ過室7と浄化水貯留室8との間に設け、沈殿ろ過室7から導出される処理水にマイクロバブルを発生させ、マイクロバブルを含んだ処理水を浄化水貯留室8に導入するようにしてもよい。また、微細気泡発生装置41を前記沈殿ろ過室7や第一接触ろ過室5、第二接触ろ過室6等に接続してもよい。そして、このように微細気泡発生装置41を沈殿ろ過室7等に接続した場合には、沈殿ろ過室7のろ過体7aや第一接触ろ過室5および第二接触ろ過室6の貝殻・珊瑚製接触材5aおよび6a等に付着したSSが効果的に除去され、浄化性能が高められる。さらに、この微細気泡発生装置41の前記気体吸引口41dを大気開放にして気体供給部41aに空気を供給するようにしてもよい。この場合には、処理水中の溶存酸素が増加するため、浄化水を植物への散水等に用いる場合に植物の成長に有効に作用する。
【0051】
また、浄化処理室の組み合わせおよび各浄化処理室での処理手段は、前記に限らない。例えば、最上流の浄化処理室を、沈殿分離を行う沈殿分離室2に代えて嫌気性処理を行う嫌気性処理室としてもよい。
【0052】
また、前記浄化水貯留室8内の浄化水を貯留する浄化水貯留タンクを別途設けて、前記浄化水吸引ポンプ25をこの浄化水貯留タンクに連結し、浄化水貯留タンク内の浄化水を逆洗水としてろ過槽22に供給するようにしてもよい。
【0053】
また、ろ過処理槽20は砂をろ材とする砂ろ過装置に限らず、他のろ材を用いるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る浄化装置の実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る浄化装置の断面図である。
【図3】本発明に係るろ過処理槽の断面図である。
【図4】浄化水貯留室に設けられた循環手段の具体的構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 浄化装置
2 沈殿分離室
3 接触ばっ気室
4 沈殿室
5 第一接触ろ過室
5a 貝殻・珊瑚製接触材
6 第二接触ろ過室
6a 貝殻・珊瑚製接触材
7 沈殿ろ過室
8 浄化水貯留室(吸着処理室)
8d 活性炭収容体(吸着材)
10 浄化処理槽
20 ろ過処理槽
21 吸引ポンプ(吸引手段)
22 ろ過槽
23 還流手段
24 ろ材
25 浄化水吸引ポンプ(浄化水供給手段)
25a 逆洗水導入口
26 処理水導出手段
27 圧力センサ(圧力検出手段)
28 制御装置(制御手段)
50 水洗トイレ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥成分を含有するトイレ等の家庭排水や工場、ホテル、病院等からの排水を段階的に浄化する複数の浄化処理室を有する浄化処理槽と、
前記排水をろ過処理するろ過処理槽とを有し、
前記複数の浄化処理室が、前記排水中の浮遊物等を吸着除去する吸着材を有する吸着処理室を備えるとともに、
前記ろ過処理槽が、前記浄化処理室のうち前記吸着処理室の上流に設けられた浄化処理室に連結されて、この浄化処理室内の処理水を吸引する吸引手段と、ろ材を有し前記吸引された処理水をろ過するろ過槽と、当該ろ過された処理水を前記吸着処理室の上流の浄化処理室に還流させる還流手段とを備え、
このろ過処理槽によって、前記浄化処理室の処理水が繰り返しろ過されることを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の浄化装置であって、
前記吸着処理室が、前記吸着材として活性炭収容体を有することを特徴とする浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浄化装置であって、
前記ろ過処理槽が、前記ろ材に付着した浮遊物等を除去するための逆洗水として、外部から水道水等を前記ろ過槽に導入するための逆洗水導入口を有することを特徴とする浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の浄化装置であって、
前記ろ過処理槽が、前記ろ過槽の下流側の圧力を検出する圧力検出手段と、当該圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記逆洗水導入口から逆洗水を導入するタイミングあるいは導入する逆洗水の量を制御する制御手段とを有することを特徴とする浄化装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の浄化装置であって、
前記複数の浄化処理室のうち最下流の位置に、前記排水から生成された浄化水を貯留可能な浄化水貯留室が設けられるとともに、
前記ろ過処理槽が、前記逆洗水導入口に接続されて、前記浄化水貯留室に貯留された浄化水を前記ろ過槽に逆洗水として供給する浄化水供給手段を有することを特徴とする浄化装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の浄化装置であって、
前記ろ材を逆洗する際に生じる浮遊物等を含む処理水を、前記複数の浄化処理室のうち最上流に設けられた浄化処理室に導出する処理水導出手段を前記ろ過処理槽に設けたことを特徴とする浄化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の浄化装置であって、
前記ろ過処理槽が、ろ材を砂や石とする砂ろ過装置であることを特徴とする浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−720(P2008−720A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174473(P2006−174473)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(595173145)永和国土環境株式会社 (6)
【Fターム(参考)】